特許第6202686号(P6202686)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6202686収縮領域と膨張領域を持つ多孔質基材を有する組織治療システムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202686
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】収縮領域と膨張領域を持つ多孔質基材を有する組織治療システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 27/00 20060101AFI20170914BHJP
【FI】
   A61M27/00
【請求項の数】62
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-542468(P2014-542468)
(86)(22)【出願日】2012年11月15日
(65)【公表番号】特表2014-533555(P2014-533555A)
(43)【公表日】2014年12月15日
(86)【国際出願番号】US2012065342
(87)【国際公開番号】WO2013074829
(87)【国際公開日】20130523
【審査請求日】2015年11月12日
(31)【優先権主張番号】61/561,631
(32)【優先日】2011年11月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508268713
【氏名又は名称】ケーシーアイ ライセンシング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ロック,クリストファー,ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ロビンソン,ティモシー,マーク
【審査官】 安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/130570(WO,A1)
【文献】 特表2011−525386(JP,A)
【文献】 特表2008−507380(JP,A)
【文献】 特表平09−503923(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/059612(WO,A2)
【文献】 国際公開第2010/078349(WO,A2)
【文献】 特表2010−508961(JP,A)
【文献】 特表2011−521742(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/130246(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 27/00
A61M 1/00
A61F 13/00−13/02
A61L 15/00−15/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の組織部位を治療するシステムにおいて、
前記組織部位に設置されるようになされたドレッシング充填材であって、少なくとも1つの圧縮領域と少なくとも1つの膨張領域を有する多孔質基材からなるドレッシング充填材を含み、
前記多孔質基材の前記少なくとも1つの圧縮領域が、流体が存在すると溶解可能な第一の被膜によって圧縮状態に保持され、
前記多孔質基材の前記少なくとも1つの膨張領域が第二の被膜によって膨張状態に保持されることを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記ドレッシング充填材を覆って設置されるようになされたカバーをさらに含み、前記カバーの下に密閉空間が作られることを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1または2に記載のシステムにおいて、
前記密閉空間と流体連通するように構成された負圧源をさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載のシステムにおいて、
前記少なくとも1つの圧縮領域が、前記第一の被膜が溶解すると膨張することを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載のシステムにおいて、
前記少なくとも1つの膨張領域が、前記第二の被膜が溶解すると収縮することを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載のシステムにおいて、
前記第一の被膜前記第二の被膜が取り除かれたときに、前記少なくとも1つの圧縮領域の前記膨張と前記少なくとも1つの膨張領域の前記収縮により前記多孔質基材の正味体積変化がゼロになることを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載のシステムにおいて、
前記多孔質基材がオープンセル構造の網目状発泡材であることを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載のシステムにおいて、
前記多孔質基材がポリウレタン発泡材であることを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項に記載のシステムにおいて、
前記多孔質基材が等しい数の前記少なくとも1つの圧縮領域と前記少なくとも1つの膨張領域を含むことを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか1項に記載のシステムにおいて、
前記流体が前記組織部位からの滲出液であることを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか1項に記載のシステムにおいて、
前記第一と第二の被膜のうちの少なくとも一方がデンプンであることを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項1乃至10の何れか1項に記載のシステムにおいて、
前記第一と第二の被膜のうちの少なくとも一方がポリビニルアルコールであることを特徴とするシステム。
【請求項13】
請求項1乃至10の何れか1項に記載のシステムにおいて、
前記第一と第二の被膜のうちの少なくとも一方がポリマーであることを特徴とするシステム。
【請求項14】
請求項1乃至13の何れか1項に記載のシステムにおいて、
前記第一と第二の被膜が同じ被膜であることを特徴とするシステム。
【請求項15】
請求項1乃至14の何れか1項に記載のシステムにおいて、
前記多孔質基材が複数の小孔を含み、
前記少なくとも1つの圧縮領域の前記小孔が前記少なくとも1つの膨張領域の前記小孔より小さいことを特徴とするシステム。
【請求項16】
請求項1乃至15の何れか1項に記載のシステムにおいて、
前記少なくとも1つの圧縮領域が垂直の層状に配置され、前記少なくとも1つの圧縮領域が前記多孔質基材の創傷対向面から前記多孔質基材の反対面にわたり、
前記少なくとも1つの膨張領域が垂直の層状に配置され、前記少なくとも1つの膨張領域が前記創傷対向面から前記反対面にわたることを特徴とするシステム。
【請求項17】
請求項1乃至15の何れか1項に記載のシステムにおいて、
前記少なくとも1つの圧縮領域と前記少なくとも1つの膨張領域の一方が水平の層状に配置され、前記多孔質基材の前記創傷対向面に設置され、
前記少なくとも1つの圧縮領域と前記少なくとも1つの膨張領域の他方が水平の層状に配置され、前記多孔質基材の前記創傷対向面と接触しないことを特徴とするシステム。
【請求項18】
患者の組織部位を治療するシステムにおいて、
前記組織部位に設置されるようになされたドレッシング充填材であって、凹凸のある創傷対向面を有する多孔質発泡材からなり、前記凹凸のある創傷対向面が、前記発泡材が第一の被膜によって圧縮状態に保持される少なくとも1つの圧縮領域を有し、前記凹凸のある創傷対向面が、前記発泡材が圧縮様態でも膨張状態でもなく、弛緩状態にある少なくとも1つの弛緩領域を有するドレッシング充填材を含み、
前記多孔質発泡材が、前記少なくとも1つの弛緩領域の上方に位置する少なくとも1つの膨張領域を含み、前記少なくとも1つの膨張領域が第二の被膜によって膨張状態に保持されることを特徴とするシステム。
【請求項19】
請求項18に記載のシステムにおいて、
前記ドレッシング充填材を覆って設置されるようになされたカバーをさらに含み、前記カバーの下に密閉空間が作られることを特徴とするシステム。
【請求項20】
請求項18または19に記載のシステムにおいて、
前記密閉空間と流体連通するように構成された負圧源をさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項21】
請求項18乃至20の何れか1項に記載のシステムにおいて、
前記少なくとも1つの膨張領域が、前記少なくとも1つの弛緩領域であって前記少なくとも1つの膨張領域がその上方に設置されている前記少なくとも1つの弛緩領域と略同じ大きさと形状であることを特徴とするシステム。
【請求項22】
請求項18乃至21の何れか1項に記載のシステムにおいて、
前記少なくとも1つの圧縮領域が、前記第一の被膜を取り除くと膨張することを特徴とするシステム。
【請求項23】
請求項18乃至22の何れか1項に記載のシステムにおいて、 前記少なくとも1つの膨張領域が、前記第二の被膜を取り除くと収縮することを特徴とするシステム。
【請求項24】
請求項18乃至23の何れか1項に記載のシステムにおいて、
前記多孔質発泡材がオープンセル構造の網目状発泡材であることを特徴とするシステム。
【請求項25】
請求項18乃至24の何れか1項に記載のシステムにおいて、
前記多孔質発泡材がポリウレタン発泡材であることを特徴とするシステム。
【請求項26】
請求項18乃至25の何れか1項に記載のシステムにおいて、
前記多孔質発泡材が同じ数の前記少なくとも1つの弛緩領域と前記少なくとも1つの膨張領域を含むことを特徴とするシステム。
【請求項27】
請求項18乃至26の何れか1項に記載のシステムにおいて、
前記第一の被膜前記第二の被膜が、前記組織部位からの滲出液が存在すると溶解可能であることを特徴とするシステム。
【請求項28】
請求項18乃至27の何れか1項に記載のシステムにおいて、
前記第一と第二の被膜の少なくとも一方がデンプンであることを特徴とするシステム。
【請求項29】
請求項18乃至27の何れか1項に記載のシステムにおいて、
前記第一と第二の被膜の少なくとも一方がポリビニルアルコールであることを特徴とするシステム。
【請求項30】
請求項18乃至27の何れか1項に記載のシステムにおいて、
前記第一と第二の被膜の少なくとも一方がポリマーであることを特徴とするシステム。
【請求項31】
請求項18乃至30の何れか1項に記載のシステムにおいて、
前記第一と第二の被膜が同じ被膜であることを特徴とするシステム。
【請求項32】
請求項18乃至31の何れか1項に記載のシステムにおいて、
前記多孔質発泡材が複数の小孔を含み、
前記少なくとも1つの圧縮領域の前記小孔が前記少なくとも1つの膨張領域の前記小孔より小さいことを特徴とするシステム。
【請求項33】
請求項18乃至32の何れか1項に記載のシステムにおいて、
前記少なくとも1つの膨張領域が前記少なくとも1つの弛緩領域の上方に位置する水平の層状に配置され、前記少なくとも1つの膨張領域が収縮すると、前記少なくとも1つの弛緩領域もまた収縮することを特徴とするシステム。
【請求項34】
請求項18乃至32に記載のシステムにおいて、
前記少なくとも1つの膨張領域が前記少なくとも1つの弛緩領域の上方に位置する水平の層状に配置され、前記少なくとも1つの膨張領域が収縮すると、前記少なくとも1つの弛緩領域もまた収縮し、
前記少なくとも1つの圧縮領域が、前記第一の被膜が取り除かれると膨張することを特徴とするシステム。
【請求項35】
患者の組織部位を治療するシステムにおいて、
前記組織部位に設置するようになされたドレッシング充填材であって、流体が存在すると取り除くことができる被膜によって圧縮状態に保持される少なくとも1つの圧縮領域と、流体が存在すると溶解可能な第二の被膜によって膨張状態に保持される少なくとも1つの膨張領域とを有する多孔質基材からなるドレッシング充填材と、
前記ドレッシング充填材を覆って設置されるようになされたカバーであって、前記カバーの下に密閉空間が作られるカバーと、
前記密閉空間と流体連通するように構成された負圧源と、
を含むことを特徴とするシステム。
【請求項36】
請求項35に記載のシステムにおいて、
前記少なくとも1つの圧縮領域が、前記被膜が溶解すると膨張することを特徴とするシステム。
【請求項37】
請求項35または36に記載のシステムにおいて、
前記被膜が取り除かれたときに、前記少なくとも1つの圧縮領域の前記圧縮により前記多孔質基材の体積が増大することを特徴とするシステム。
【請求項38】
請求項35乃至37の何れか1項に記載のシステムにおいて、
前記多孔質基材がオープンセル構造の網目状発泡材であることを特徴とするシステム。
【請求項39】
請求項35乃至38の何れか1項に記載のシステムにおいて、
前記多孔質基材がポリウレタン発泡材であることを特徴とするシステム。
【請求項40】
請求項35乃至39の何れか1項に記載のシステムにおいて、
前記多孔質基材が同じ数の前記少なくとも1つの圧縮領域と前記少なくとも1つの膨張領域を含むことを特徴とするシステム。
【請求項41】
請求項35乃至40の何れか1項に記載のシステムにおいて、
前記流体が前記組織部位からの滲出液であることを特徴とするシステム。
【請求項42】
請求項35乃至41の何れか1項に記載のシステムにおいて、
前記第一と第二の被膜の少なくとも一方がデンプンであることを特徴とするシステム。
【請求項43】
請求項35乃至41の何れか1項に記載のシステムにおいて、
前記第一と第二の被膜の少なくとも一方がポリビニルアルコールであることを特徴とするシステム。
【請求項44】
請求項35乃至41の何れか1項に記載のシステムにおいて、
前記第一と第二の被膜の少なくとも一方がポリマーであることを特徴とするシステム。
【請求項45】
請求項35乃至44の何れか1項に記載のシステムにおいて、
前記少なくとも1つの圧縮領域が水平の層状に配置され、膨張すると、前記多孔質基材の、前記組織部位の方向への力が増大することを特徴とするシステム。
【請求項46】
患者の組織部位を治療するシステムにおいて、
前記組織部位に設置されるようになされたドレッシング充填材であって、少なくとも1つの圧縮領域と、少なくとも1つの膨張領域とを有する多孔質基材からなるドレッシング充填材を含み、
前記多孔質基材の前記少なくとも1つの圧縮領域が、流体が存在すると溶解可能な第一の被膜によって圧縮状態に保持され
前記少なくとも1つの膨張領域が、流体が存在すると溶解可能な第二の被膜によって膨張状態に保持されることを特徴とするシステム。
【請求項47】
請求項46に記載のシステムにおいて、
前記少なくとも1つの圧縮領域が、前記第一の被膜が溶解すると膨張することを特徴とするシステム。
【請求項48】
患者の組織部位を治療するシステムにおいて、
前記組織部位に設置されるようになされたドレッシング充填材であって、少なくとも1つの膨張領域を有する多孔質基材からなるドレッシング充填材を含み、
前記多孔質基材の前記少なくとも1つの膨張領域が、流体が存在すると溶解可能な第二の被膜によって膨張状態に保持されることを特徴とするシステム。
【請求項49】
請求項48に記載のシステムにおいて、
前記少なくとも1つの膨張領域が、前記第二の被膜が溶解すると収縮することを特徴とするシステム。
【請求項50】
請求項48または49に記載のシステムにおいて、
前記多孔質基材が少なくとも1つの圧縮領域を有し、前記少なくとも1つの圧縮領域が、流体が存在すると溶解可能な第一の被膜によって圧縮状態に保持されることを特徴とするシステム。
【請求項51】
請求項48または50に記載のシステムにおいて、
前記第一の被膜と前記第二の被膜が取り除かれたときに、前記少なくとも1つの圧縮領域の前記膨張と前記少なくとも1つの膨張領域の前記収縮により前記多孔質基材の正味体積変化がゼロとなることを特徴とするシステム。
【請求項52】
請求項48乃至51の何れか1項に記載のシステムにおいて、
前記多孔質基材がオープンセル構造の網目状発泡材であることを特徴とするシステム。
【請求項53】
請求項48または50に記載のシステムにおいて、
前記多孔質基材が同じ数の前記少なくとも1つの圧縮領域と前記少なくとも1つの膨張領域を含むことを特徴とするシステム。
【請求項54】
請求項48乃至53の何れか1項に記載のシステムにおいて、
前記流体が前記組織部位からの滲出液であることを特徴とするシステム。
【請求項55】
請求項48乃至53の何れか1項に記載のシステムにおいて、
前記第一と第二の被膜の少なくとも一方がデンプン、ポリビニルアルコール、ポリマーから選択されることを特徴とするシステム。
【請求項56】
請求項48または50に記載のシステムにおいて、
前記第一の被膜前記第二の被膜が同じ被膜であることを特徴とするシステム。
【請求項57】
請求項48または50に記載のシステムにおいて、
前記多孔質基材が複数の小孔を含み、
前記少なくとも1つの圧縮領域の前記小孔が前記少なくとも1つの膨張領域の前記小孔より小さいことを特徴とするシステム。
【請求項58】
請求項48または50に記載のシステムにおいて、
前記少なくとも1つの圧縮領域が垂直の層状に配置され、前記少なくとも1つの圧縮領域が前記多孔質基材の前記創傷対向面から前記多孔質基材の反対面にわたり、
前記少なくとも1つの膨張領域が垂直の層状に配置され、前記少なくとも1つの膨張領域が創傷対向面から前記反対面にわたることを特徴とするシステム。
【請求項59】
請求項48または50に記載のシステムにおいて、
前記少なくとも1つの圧縮領域または前記少なくとも1つの膨張領域の一方のある表面が前記多孔質基材の創傷対向面内に配置されることを特徴とするシステム。
【請求項60】
請求項48または50に記載のシステムにおいて、
前記少なくとも1つの圧縮領域または前記少なくとも1つの膨張領域の一方が前記ドレッシング充填材の内部にあり、前記多孔質基材の創傷対向面と接触していないことを特徴とするシステム。
【請求項61】
請求項48乃至60の何れか1項に記載のシステムにおいて、
前記ドレッシング充填材の創傷対向面が平坦でないことを特徴とするシステム。
【請求項62】
請求項48乃至61の何れか1項に記載のシステムにおいて、
前記ドレッシング充填材の創傷対向面が突出部を含むことを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2011年11月18日に出願された、“TISSUE TREATMENT SYSTEMS AND METHODS HAVING A POROUS SUBSTRATE WITH A COMPRESSED REGION AND AN EXPANDED REGION”と題する米国仮特許出願第61/561,631号明細書の優先権を主張するものであり、その開示の全文を参照によって本願に援用する。
【0002】
本明細書は概して、組織治療システムに関し、より詳しくは、収縮領域と膨張領域を持つ多孔質基材を有する負圧組織治療システムに関するが、これに限定されない。
【背景技術】
【0003】
臨床的研究と臨床診療から、組織部位付近に負圧をかけることによって、その組織部位での新組織の増殖が促進され、加速することがわかっている。この現象の応用は多岐にわたるが、負圧の1つの特別な応用は創傷治療に関する。この治療(医療界ではしばしば「陰圧創傷治療」、「負圧治療」または「真空治療」と呼ばれる)は多数の利益をもたらし、その中には上皮および皮下組織の移動、血流の改善、創傷部位における組織の微小変形が含まれる。これらの利益が合算されて、肉芽組織形成の増進と治癒時間の短縮がもたらされる。通常、負圧は負圧源から多孔質パッドまたはその他の多分岐部材を通じて組織にかけられる。多孔質パッドはセル、すなわち小孔を含み、これらは負圧を組織に分散させ、組織から吸引された流体を通すことができる。多孔質パッドは多くの場合、治療を促すその他の構成要素を有するドレッシングの中に組み込まれる。
【発明の概要】
【0004】
既存の負圧創傷治療システムにより呈される問題は、本明細書に記載される例示的実施形態のシステムと方法によって解決される。1つの例示的実施形態において、患者の組織部位を治療するためのシステムが提供される。このシステムは、組織部位に設置されるようになされたドレッシング充填材を含む。このドレッシング充填材は、少なくとも1つの圧縮領域と少なくとも1つの膨張領域を有する多孔質基材からなる。多孔質基材の圧縮領域は、流体が存在すると溶解しうる第一の被膜によって圧縮状態に保持され、多孔質基材の膨張領域は第二の被膜によって膨張状態に保持される。
【0005】
他の実施形態において、患者の組織部位を治療するシステムは、組織部位に設置されるようになされたドレッシング充填材を含む。このドレッシング充填材は、凹凸のある創傷対向面を有する多孔質発泡材からなり、この創傷対向面は少なくとも1つの圧縮領域を有し、そこでは発泡材が第一の被膜によって圧縮状態に保持される。創傷対向面は少なくとも1つの弛緩領域を含み、そこでは発泡材が圧縮も膨張もしておらず、弛緩状態にある。多孔質発泡材は、この少なくとも1つの弛緩領域の上方に設置された少なくとも1つの膨張領域を含む。膨張領域は、第二の被膜によって膨張状態に保持される。
【0006】
また別の実施形態において、患者の組織部位を治療するシステムは、組織部位に設置されるようになされたドレッシング充填材を含む。このドレッシング充填材は多孔質基材からなり、これは流体が存在すると取り除くことのできる被膜によって圧縮状態に保持される少なくとも1つの圧縮領域を有する。このシステムは、ドレッシング充填材を覆うように配置されてカバーの下に密閉空間を作るようになされたカバーと、その密閉空間と流体連通するように構成された負圧源と、をさらに含む。
【0007】
例示的な実施形態の上記以外の目的、特徴、利点は、図面と以下の詳細な説明を参照することによって明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1Aおよび図1Bは、ある例示的実施形態による組織治療システムの一部断面斜視図を示し、この組織治療システムはドレッシング充填材を有する。
図2図2は、図1Aの組織治療システムのドレッシング充填材の正面図を示し、このドレッシング充填材は圧縮された状態の複数の圧縮領域と膨張した状態の複数の膨張領域を有する。
図3図3は、図2のドレッシング充填材の正面図を示し、圧縮領域と膨張領域の両方が弛緩状態として示されている。
図4図4は、ある例示的実施形態によるドレッシング充填材の概略正面図を示し、このドレッシング充填材は圧縮状態の圧縮領域と膨張状態の膨張領域を有する。
図5図5は、図4のドレッシング充填材の概略正面図を示し、圧縮領域と膨張領域が弛緩状態として示されている。
図6図6は、多孔質基材に挿入して、多孔質基材内に圧縮領域または膨張領域を形成する複数のピンを有するラックの正面斜視図を示す。
図7図7は、圧縮領域が圧縮される前および膨張領域が膨張する前にラックのピンが多孔質基材に挿入されている、図6のラックを示す。
図8図8は、ラックのピンが多孔質基材に挿入されている、図6のラックを示し、多孔質基材は圧縮領域が圧縮された後、および膨張領域が膨張した後の状態で示されている。
図9図9は、ある例示的実施形態によるドレッシング充填材の正面図を示し、このドレッシング充填材は、圧縮された状態の複数の圧縮領域と膨張した状態の複数の膨張領域を有する。
図10図10は、図9のドレッシング充填材の正面図を示し、圧縮および膨張領域が弛緩状態として示されている。
図11図11は、ある例示的実施形態によるドレッシング充填材の正面図を示し、このドレッシング充填材は圧縮された状態の圧縮領域を有する。
図12図12は、図11のドレッシング充填材の正面図を示し、圧縮領域が弛緩状態として示されている。
【発明を実施するための形態】
【0009】
いくつかの例示的実施形態に関する以下の詳細な説明では、その一部を構成する添付の図面を参照するが、図には本明細書の主旨が実施されうる具体的な好ましい実施形態が例として示されている。これらの実施形態は、開示された主旨を当業者が実施できる程度に詳しく説明されており、当然のことながら、他の実施形態も利用でき、また、本明細書の範囲から逸脱せずに、論理的、構造的、機械的、電気的、化学的変更を加えることができる。当業者が本明細書に記載された実施形態を実施するのに不必要な細部を回避するために、説明文では当業者に知られている特定の情報が割愛されていることもある。したがって、以下の詳細な説明は限定的な意味に解釈されるべきではなく、例示的実施形態の範囲は付属の特許請求の範囲によってのみ定義される。別段のことわりがなければ、本明細書において使用されるかぎり、「または(or)」は、相互の排他性を要求しない。
【0010】
「負圧」という用語は、本明細書において使用されるかぎり、治療対象の組織部位における周囲圧力より低い圧力を概して指す。ほとんどの場合、この負圧は患者が置かれている大気圧より低い。あるいは、負圧は組織部位における組織に関連する静水圧より低くてもよい。「真空」および「陰圧」という用語を使って組織部位にかけられる圧力を説明する場合もあるが、組織部位にかけられる実際の減圧は、完全真空に通常関連する減圧よりずっと小さくてもよい。負圧はまず、組織部位のその領域内での流体流を発生させうる。組織部位周辺の静水圧が所望の負圧に到達するにつれて、流れが弱まる可能性があり、その後、負圧が保持される。別段のことわりがなければ、本明細書に明記されている圧力の数値はゲージ圧である。同様に、負圧の増大への言及は通常、絶対圧力の低下を指し、その一方で負圧の減少は通常、絶対圧力の上昇を指す。
【0011】
本明細書に記載される組織治療システムと方法は、負圧組織治療に関連して使用される多孔質基材を提供することによって、組織部位の治療を改善する。多孔質基材は、組織部位と接触し、組織部位で微小ひずみを生じさせることのできる創傷対向面を含む。微小ひずみは、多孔質基材の創傷対向面が組織部位に加える力によって生じる。多孔質基材がオープンセル構造の発泡材である場合、力は発泡材のセル壁、すなわちストラットによって組織部位に伝達される。多孔質基材に力が加えられると力が分散し、多孔質基材と接触するどの地点においても力が組織部位に供給される。したがって、この力の分散によって特定の微小ひずみの分散が生じ、これは当然、多孔質基材の空隙率とその他の特性および多孔質基材が組織部位にどのように設置されているかによって異なる。組織部位での微小ひずみが新たな肉芽組織の形成を助けるため、治療中に力と微小ひずみの分散を変化させて、肉芽組織の形成をより均一にすることが有益である。
【0012】
図1Aと1Bを参照すると、患者の組織部位101を治療する、ある例示的実施形態による負圧組織治療システム100は、組織部位101の付近に設置されたドレッシング102と、ドレッシング102に流体連結された治療ユニット104と、を含む。本明細書において使用されるかぎり、「組織部位」という用語は創傷、たとえばあらゆる組織の表面または内部に存在する創傷または欠陥を指し、これは骨組織、脂肪組織、筋組織、神経組織、皮膚組織、血管組織、結合組織、軟骨、腱、靭帯を含むが、これらに限定されない。「組織部位」という用語はさらに、あらゆる組織の、必ずしも創傷または欠陥があるとはかぎらず、追加組織の増殖を付加または促進することが望ましい領域を指す場合もある。たとえば、負圧組織治療を特定の組織領域で使用し、摘出して他の組織位置に移植できる追加の組織を増殖させてもよい。
【0013】
ドレッシング102は、組織部位101での新組織の増殖を促進するように構成され、組織部位101の付近に、またはいくつかの実施形態においては、それと接触して設置されるドレッシング充填材106を含む。ドレッシング102はさらに、カバー110またはドレープを含んでいてもよく、これはドレッシング充填材106を覆うように設置されて、ドレッシング充填材106を組織部位101に固定し、カバーの下にあり、少なくとも部分的にドレッシング充填材106によって占有される空間を密閉する。1つの実施形態において、カバー110は組織部位101の周辺からはみ出す範囲にまで及び、患者の上皮113と接触するか、またはその付近に設置されて、カバー110と上皮113の間の流体シールを形成する。カバー110は、カバー110を上皮113に固定するための接着剤115または結合剤を含んでいてもよい。1つの実施形態において、接着剤115を使って、カバー110と上皮113を密着させて、負圧が組織部位101から漏れるのを防止してもよい。他の実施形態において、たとえばヒドロゲルまたはその他の材料のシール層(図示せず)をカバー110と上皮113の間に配置して、接着剤115の密着特性を増大させるか、またはその代わりとしてもよい。本明細書において使用されるかぎり、「流体シール」とは、関係する特定の負圧源と望ましい特定の治療を考えて、十分に所望の部位での負圧を保持できるシールを意味する。1つの実施形態において、カバー110とカバー110の結合特性は、125mmHgの負圧下で0.5L/分より大きな漏出を防止するのに十分なシールを提供する。
【0014】
ドレッシング102は、カバー110の下の空間に流体結合された減圧アダプタまたは接合部材116をさらに含んでいてもよい。1つの実施形態において、接合部材116は、カバー110の付近に設置され、またはこれに結合されて、ドレッシング充填材106と組織部位101への流体通路を提供してもよい。カバー110は、接合部材116への流体通路を提供するための穴118を含む。導管120が治療ユニット104と接合部材116を流体連結させる。接合部材116は、負圧を組織部位101に送達することができる。
【0015】
1つの実施形態において、治療ユニット104は、負圧源124と流体連通する流体収容部材122を含む。図1に示される実施形態において、流体収容部材122は回収容器であり、これは組織部位101からの流体を回収するための小室を含む。流体収容部材122はあるいは、吸収性材料または、流体を回収できる、その他のどのような容器、器材、または材料とすることもできる。
【0016】
導管120は、負圧をドレッシング102に送達する1つまたは複数の導管と、組織部位101における圧力量を感知する1つまたは複数の導管を提供できる多腔チューブであってもよい。ドレッシング充填材106から導管120を通って運ばれる液体または滲出液は導管120から除去されて、回収キャニスタ122の中に保持される。
【0017】
引き続き図1Aを参照すると、負圧源124は電気駆動式真空ポンプであってもよい。他の実施例において、負圧源124はその代わりに、電力を必要としない手動式または手動充電ポンプであってもよい。1つの実施形態において、負圧源124は1つまたは複数の圧電式マイクロポンプであってもよく、これはドレッシング102から離れた場所に、またはカバー110の下の、またはそれに隣接するドレッシングに設置されてもよい。負圧源124はその代わりに、他の何れの種類のポンプであってもよく、あるいは、病院やその他の医療機関で利用できるものなどの、壁に埋め込まれた吸引ポートまたは空気吐出しポートであってもよい。負圧源124は治療ユニット104の中に格納されていても、またはそれと一緒に使用されてもよく、これはまた、センサ、処理ユニット、アラーム表示装置、メモリ、データベース、ソフトウェア、表示ユニット、ユーザインタフェース126も含んでいてよく、これらは組織部位101への減圧治療の施行をさらに容易にする。一例では、圧力検出センサ(図示せず)を負圧源124に、またはその付近に配置してもよい。圧力検出センサは、接合部材116からの圧力データを、導管120の中の、圧力検出センサに負圧データを送達するための専用の管路を介して受信してもよい。圧力検出センサは、負圧源124によって送達される減圧をモニタし、制御する処理ユニットと通信してもよい。
【0018】
図1Aと1Bに示される実施形態において、ドレッシング充填材106は多孔質基材を含み、これは、1つの実施形態では多孔質発泡材であってもよい。より詳しくは、多孔質基材はオープンセル構造の発泡材であってもよく、これはたとえば、Texas、San AntonioのKinetic Concepts,Inc.からGRANUFOAM(登録商標)の名称で販売されているオープンセル構造の網目状ポリウレタン発泡材である。あるいは、非網目状発泡材や、ポリウレタン以外の生体適合性材料からなる発泡材を使用してもよい。1つの実施形態において、生体吸収性発泡材またはその他の多孔質基材を使用してもよい。適当な多孔質発泡材または多孔質基材となりうるその他の材料の例には、アクリル樹脂、アクリル酸塩、熱可塑性エラストマ(たとえば、スチレンエチレンブテンスチレン(SEBS)とその他のブロックコポリマー)、ポリエーテルブロックポリアミド(PEBAX)、シリコーンエラストマ、ポリカプロラクタム、ポリ乳酸、およびポリテンやポリプロピレン等のポリオレフィンから形成されるものが含まれる。さらに別の生体適合性材料も、本明細書に記載されているような多孔質基材に形成して、またはその他の方法でこれを作ることができれば、使用してもよい。
【0019】
多孔質基材は好ましくは、カバーの下方の密閉空間内の流体の移動と負圧の分散を促す複数の開口部またはその他の流路を含む。網目状のポリウレタン発泡材等の発泡材を利用する実施形態において、流路は発泡材の中の開口部125、すなわちセルによって提供される。発泡材はセル壁、すなわちストラット126をさらに含んでいてもよく、これらは開口部125のための枠組を形成する(図1B参照)。ストラット126は、ドレッシング充填材106に力が加えられると組織部位101を圧迫し、それによって、ストラット126の局所的位置付けに応じて、組織部位101に力と微小ひずみを分散させる。
【0020】
引き続き図1Aと1Bと、さらに図2と3も参照すると、ドレッシング充填材106は、複数の第一の、すなわち圧縮領域130と、複数の第二の、すなわち膨張領域134と、を含み、これらは多孔質ドレッシング充填材106の創傷対向面138から反対面142に至る垂直方向の層状に配置されている。図1A、1B、2に示される圧縮領域130は圧縮状態にあり、その一方で、図3に示される同じ圧縮領域130は弛緩状態にある。同様に、図1A、1B、2に示される膨張領域134は膨張状態にあり、その一方で、図3に示される同じ膨張領域134は弛緩状態にある。図1Bをより詳しく見ると、ドレッシング充填材106の圧縮または膨張の効果が示されている。圧縮領域130が圧縮状態にあり、膨張領域134が膨張状態にあると(図1Bに示されるとおり)、圧縮領域130の単位体積当たりのストラット密度は膨張領域134の単位体積当たりのストラット126の密度より大きい。圧縮領域130と膨張領域134が弛緩状態にあると(図3に示されるとおり)、圧縮領域130の単位体積当たりのストラット密度は膨張領域134の単位体積当たりのストラット126の密度は略等しい。
【0021】
「圧縮領域」という語句は、ドレッシング充填材106のうちの、ある場合に圧縮される特定の領域を説明するために使用されているが、この語句はまた、圧縮状態から弛緩状態となった領域を説明することもできる。ある状況では、負圧組織治療中にドレッシング充填材106の圧縮によって、本明細書でより詳しく説明されているように、特定の圧縮領域は実際には、当初の圧縮状態と比較して特定の方向に膨張してもよい。同様に、「膨張領域」は複数の状態で存在でき、少なくともそのうちの2つが膨張状態と弛緩状態である。再び、ドレッシング充填材106に負圧をかけている間に、特定の膨張領域がカバー110の下である程度圧縮されることもありうる。
【0022】
一般に、ドレッシング充填材106が圧縮状態である、または膨張状態であるとの記述は、発泡材に作用する力を説明するものである。ドレッシング充填材106の中のある領域が圧縮状態にあるとき、図2の矢印150で表される、その領域に作用する力は外側方向に向かい、その領域は、拘束されていなければ、少なくとも1方向に膨張するであろう。ドレッシング充填材106の中のある領域が膨張状態にあるとき、図2の矢印154で表される、その領域に作用する力は内側方向に向かい、その領域は、拘束されていなければ、少なくとも1方向に収縮する。ドレッシング充填材106の中のある領域が弛緩状態にあるとき、その領域には有意な力が作用していない。
【0023】
引き続き図1A、1B、2を参照すると、圧縮領域130は第一の被膜によって圧縮状態に保持または固定される。同様に、膨張領域134は第二の被膜によって膨張状態に保持または固定される。1つの実施形態において、第一と第二の被膜は同じ被膜である。第一と第二の被膜は、ドレッシング充填材106を圧縮状態または膨張状態に固定でき、その後、取り除いてドレッシング充填材106が弛緩状態へと変化するようにできる、どのような材料であってもよい。1つの実施形態において、第一と第二の被膜は流体が存在すると溶解できてもよい。溶解可能な被膜によって、組織部位101からの滲出液がドレッシング充填材106に進入すると、被膜を取り除くことができる。あるいは、第一と第二の被膜を取り除くことが望ましくなったときに、生理食塩水等の液体またはその他何れかの生体適合性溶媒または液体をドレッシング充填材106に送達してもよい。使用可能な被膜の例には、デンプンまたはその他の糖類、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース(CMC)およびその塩類とエステル類、アルギン酸塩、グアおよびキサンタン等のゴム、またはその他のポリマーが含まれるが、これらに限定されない。水溶性塩類または起泡用混合材料(酒石酸および炭酸塩または重炭酸塩類)を非水溶性ポリマーに取り入れてもよい。水に曝されると水溶性塩類はポリマーから濾過され、または起泡用混合材料の場合はガスが放出され、どちらの場合も担体となるポリマー内に空隙率を生じさせ、それを弱体化させ、ドレッシング充填材の物理的形態を変化させる。本明細書に記載される被膜がなくなるまでの時間の長さは、所望の治療計画に応じて異なる。1つの実施形態において、被膜は、数時間(たとえば4時間)以内のように素早く、または1日またはそれを超える時間でなくなるように構成されてもよい。
【0024】
被膜はドレッシング充填材106の外面上に設置されてもよく、あるいはドレッシング充填材106の外面と内部通路の両方を被覆するために使用されてもよい。1つの実施形態において、ドレッシング充填材106の外部と内部の両方を均一に被覆することが望ましいこともある。ドレッシング充填材106への被膜の提供は、被膜材料へのドレッシング充填材106の浸漬、または被膜材料の噴霧、刷毛塗り、ローラによる塗布またはその他の塗布によって行われてもよい。1つの実施形態において、被膜材料を圧縮された領域と膨張した領域を含む一体のドレッシング充填材106に塗布してもよい。あるいは、被膜材料を圧縮された、または膨張した材料の別々の断片に塗布してから、これらを組み立ててドレッシング充填材106を構築してもよい。複数の断片の接着によるドレッシング充填材106の構築は、ボンディング、機械的固定、溶接、または他のあらゆる接着手段により実現されてもよい。
【0025】
図3を参照すると、被膜が取り除かれると圧縮領域と膨張領域の両方が解放され、図3に示されるような弛緩状態へと移動する。弛緩状態では、圧縮領域と膨張領域の両方に同じ種類のドレッシング充填材が使用されていると仮定すると、圧縮領域の単位体積当たりの開口部とセルストラットの密度は、膨張領域の単位体積当たりの開口部とセルストラットの密度と略等しくなる。特定の圧縮領域を、対応する膨張領域が膨張するのと同じ概算量だけ圧縮することによって、圧縮領域の弛緩状態への膨張は膨張領域の弛緩状態への収縮によって相殺されてもよい。換言すれば、膨張および圧縮領域を有するドレッシングが弛緩状態になるときのドレッシングの正味体積変化はゼロである。
【0026】
被膜の代わりに、取り除き可能な外被またはその他の被覆材を、各種の領域がその適当な圧縮または膨張状態をとらされているときに、ドレッシング充填材106の周囲に設置してもよい。外被は溶解可能または生体吸収性物質であってもよく、たとえば織布または不織布、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース(CMC)およびその塩類とエステル類、アルギン酸塩、グアおよびキサンタン等のゴム、ポリビニルアルコール、ポリカプロラクタム、ポリ乳酸およびそのコポリマーまたはブレンド、またはその他のポリマーまたは材料である。1つの実施形態において、外被またはその他の被覆材が使用される場合、外被はドレッシング充填材106を完全に取り囲んでも、またはドレッシング充填材106の一部を部分的に取り囲んでもよい。溶解可能または生体吸収性外被が使用される場合、使用される特定の材料とその厚さは、所望の時間に基づいてなくなるように選択されてもよい。たとえば、12時間以内に溶解する外被は、ドレッシング充填材106の領域が圧縮または膨張状態のままで最大12時間までの治療を提供するために選択してもよい。この特定の例において、12時間で、または約12時間で外被が溶解すると、ドレッシング充填材106のその領域が弛緩状態に変化でき、それによって組織部位101での微小ひずみのプロファイルが変化する。他の実施形態では、外被はその代わりに、微小ひずみのプロファイルを変化させることが望ましくなったときに、介護者または患者がドレッシング充填材106から手で取り除いてもよい。
【0027】
図4と5を参照すると、ある例示的実施形態によるドレッシング充填材406は、図1〜3に関して上述した多孔質基材と同様の多孔質基材を含む。ドレッシング充填材406は、前述のものと同様の圧縮領域430と膨張領域434をさらに含む。ドレッシング充填材406はまた、節点412も含み、これは突出して組織部位に力を伝達し、それゆえ微小ひずみを生じさせてもよい。節点412はまた、ドレッシング充填材106のストラットを表していてもよい。図4と5に示される節点412を視覚化することによって、圧縮領域430の膨張と膨張領域434の収縮がどのように組織部材の治療と創傷治癒に有利となるかを理解できる。図4において、節点412は節点412aで示される第一の位置を有する。圧縮および膨張領域430、434を固定する被膜が取り除かれると、圧縮領域430は膨張し、膨張領域434は収縮し、それによって節点412を節点412bによって示される第二の位置へと移動させる。図5に示されるように、ドレッシング充填材406の特定の領域の膨張および収縮中の節点412の移動によって、節点412が組織部材に加える点負荷の空間的分散が可能となる。これが次に、組織部位における微小ひずみの異なるプロファイル(すなわち、微小ひずみの分散)を生じさせ、それによって肉芽組織の均一な形成を助け、増殖した新組織がドレッシング充填材406に付着するのを防止する。
【0028】
図6〜8を参照すると、ドレッシング充填材106、406と同様のドレッシング充填材606の、圧縮または膨張状態とされる前の様子が示されている。組織治療に使用されるドレッシング充填材606を作製するためには、ドレッシング充填材606をある区分または領域ごとに圧縮、または膨張させる。図6において、第一の領域、すなわち圧縮領域610と第二の領域、すなわち膨張領域614が両方とも弛緩した状態で示されている。各々が複数のピン626を有する複数のラック622が、ドレッシング充填材606を必要なだけ圧縮、または膨張させるために提供される。ラック622は1つまたは複数の水平材630の上に摺動可能に設置され、これらはラック622を支持し、ラックを1つの軸に沿った移動に拘束する。他の実施形態においては、複数の軸に沿ったドレッシング充填材の移動、およびそれゆえ、圧縮または膨張を可能にするラックが提供されてもよい。
【0029】
図6と7により具体的に示されているように、ドレッシング充填材はラック622のピン626の上に、ラックのうちの少なくとも2つのラックのピン626が各領域610、614を貫通するように設置される。各領域610、614を圧縮、または膨張させるために、ラック622が水平材630に沿って、図7において矢印640、644により示される方向に摺動式に移動される。ドレッシング充填材606の圧縮領域610を圧縮領域に移動させるためには、圧縮領域610に関連する2つのラック622は矢印640により示されるように相互に向かって移動される。ドレッシング充填材606の膨張領域614を膨張状態へと移動させるために、膨張領域614に関連する2つのラック622が矢印644により示されるように相互から離れるように移動される。ラック622の移動は手作業で実行されてもよく、またはその代わりに、油圧式、空気圧式、電気的または機械的に駆動されてもよい。
【0030】
ラック622を矢印640、644により示される方向に移動させると、圧縮領域610は圧縮状態になり、膨張領域614は膨張状態となる(図8参照)。ドレッシング充填材606の領域610、614は、本明細書ですでに説明したように、ドレッシング充填材606に取り除き可能な被膜または外被を設けることによって、圧縮および膨張状態に保持または固定されてもよい。ドレッシング充填材606が被膜または外被によってロックされた後、ラック622のピン626をドレッシング充填材606から外してよい。
【0031】
図6〜8は、本明細書に記載のドレッシング充填材の各種の領域を圧縮または膨張できる方法の一例のみを提供している。ドレッシング充填材の領域を貫通する、またはそれと接触するその他の器具を使ってドレッシング充填材を圧縮、または膨張させてもよい。上記の例は発泡材または多孔質基材の一体の断片の中の異なる部分を圧縮し、膨張させる方法を提供したが、圧縮または膨張を必要とする各種の領域はその代わりに、相互に別々に圧縮しても、膨張させてから、一体に結合してドレッシング充填材を形成してもよい。たとえば、1つの実施形態において、弛緩状態の多孔質発泡材の2つの断片が提供されてもよい。多孔質発泡材の断片の1つは圧縮され、圧縮状態に圧縮されて固定されてもよい。多孔質発泡材のもう一方の断片は膨張させられ、膨張状態に固定されてもよい。発泡材の各断片を個々に圧縮、または膨張させるステップの後に、発泡材の2つの断片を接着剤により結合し、加熱して連結し、機械的に取り付け、超音波溶接、またはその他の方法で接続して一体のドレッシング充填材を形成してもよい。
【0032】
図9と10を参照すると、ある例示的実施形態によるドレッシング充填材906は、図1の負圧治療システム100と同様の負圧治療システムに使用できる。ドレッシング充填材906は多孔質基材を含み、これは1つの実施形態において多孔質発泡材であってもよい。より詳しくは、多孔質基材はオープンセル構造の発泡材であってもよく、これはたとえば、Texas、San AntonioのKinetic Concepts,Inc.からGRANUFOAM(登録商標)の名称で販売されているオープンセル構造の網目状ポリウレタン発泡材である。あるいは、非網目状発泡材や、ポリウレタン以外の生体適合性材料からなる発泡材を使用してもよい。1つの実施形態において、生体吸収性発泡材またはその他の多孔質基材を使用してもよい。適当な多孔質発泡材または多孔質基材となりうるその他の材料の例には、アクリル樹脂、アクリル酸塩、熱可塑性エラストマ(たとえば、スチレンエチレンブテンスチレン(SEBS)とその他のブロックコポリマー)、ポリエーテルブロックポリアミド(PEBAX)、シリコーンエラストマ、ポリカプロラクタム、ポリ乳酸、およびポリテンやポリプロピレン等のポリオレフィンから形成されるものが含まれる。さらに別の生体適合性材料も、本明細書に記載されているような多孔質基材に形成して、またはその他の方法でこれを作ることができれば、使用できる。
【0033】
多孔質基材は好ましくは、カバーの下方の密閉空間内の流体の移動と負圧の分散を促す複数の開口部またはその他の流路を含む。網目状のポリウレタン発泡材等の発泡材を利用する実施形態において、流路は、図1Aと1Bに関して前述したものと同様の、発泡材の中の開口部、すなわちセルによって提供される。発泡材はセル壁またはストラットをさらに含んでいてもよく、これらは前述のように、開口部のための枠組を形成する。
【0034】
ドレッシング充填材906は、複数の第一の、すなわち圧縮領域930と複数の第二の、すなわち膨張領域934を含み、これらは多孔質ドレッシング充填材906の創傷対向面938と反対面942との間に配置された水平方向の層状に配置されている。図9に示される圧縮領域930は圧縮状態にあり、その一方で、図10に示される同じ圧縮領域930は弛緩状態にある。同様に、図9に示される膨張領域934は膨張状態にあり、その一方で、図10に示される同じ膨張領域934は弛緩状態にある。
【0035】
圧縮状態にある圧縮領域930に作用する力は、図9の矢印950により表される。これらの特定の力は外側方向に向かい、それによって圧縮状態にある圧縮領域930は、拘束されていなければ、少なくとも1つの方向に膨張するであろう。膨張状態にある膨張領域934に作用する力は、図9の矢印954により表される。これらの力は内側方向に向かい、それによって膨張状態にある膨張領域934は、拘束されていなければ、少なくとも1つの方向に収縮するであろう。ドレッシング充填材906の圧縮領域930または膨張領域934が弛緩状態にあると(図10参照)、これらの領域に有意な力は作用しない。
【0036】
引き続き図9を参照すると、圧縮領域930は第一の被膜によって圧縮状態に保持または固定される。同様に、膨張領域934は第二の被膜によって膨張状態に保持または固定される。1つの実施形態において、第一および第二の被膜は同じ被膜である。第一と第二の被膜は、ドレッシング充填材906を圧縮状態または膨張状態に固定することができ、また、その後、取り除いてドレッシング充填材906を弛緩状態に変化させることのできるどのような材料であってもよい。1つの実施形態において、第一と第二の被膜は、流体が存在すると溶解できてもよい。溶解可能な被膜によって、組織部位からの滲出液がドレッシング充填材906に進入すると、被膜を取り除くことができる。あるいは、第一と第二の被膜を除去することが望ましくなったときに、生理食塩水等の液体またはその他何れかの生体適合性溶媒または液体をドレッシング充填材906に送達してもよい。使用可能な被膜の例には、デンプンまたはその他の糖類、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース(CMC)およびその塩類とエステル類、アルギン酸塩、グアおよびキサンタン等のゴム、またはその他のポリマーが含まれるが、これらに限定されない。水溶性塩類または起泡用混合材料(酒石酸および炭酸塩または重炭酸塩類)を非水溶性ポリマーに取り入れてもよい。水に曝されると水溶性塩類はポリマーから濾過され、または起泡用混合材料の場合はガスが放出され、どちらの場合も担体となるポリマー内に空隙率を生じさせ、それを弱体化させ、ドレッシング充填材の物理的形態を変化させる。本明細書に記載される被膜がなくなるまでの時間の長さは、所望の治療計画に応じて異なる。1つの実施形態において、被膜は、数時間(たとえば4時間)以内のように素早く、または1日またはそれを超える時間でなくなるように構成されてもよい。
【0037】
被膜はドレッシング充填材906の外面上に設置されてもよく、あるいはドレッシング充填材906の外面と内部通路の両方を被覆するために使用されてもよい。1つの実施形態において、ドレッシング充填材906の外部と内部の両方を均一に被覆することが望ましいこともある。ドレッシング充填材906への被膜の提供は、被膜材料へのドレッシング充填材906の浸漬、または被膜材料の噴霧、刷毛塗り、ローラによる塗布またはその他の塗布によって行われてもよい。1つの実施形態において、被膜材料を圧縮された領域と膨張した領域を含む一体のドレッシング充填材906に塗布してもよい。あるいは、被膜材料を圧縮された、または膨張した材料の別々の断片に塗布してから、これらを組み立ててドレッシング充填材906を構築してもよい。複数の断片の接着によるドレッシング充填材906の構築は、ボンディング、機械的固定、溶接、または他のあらゆる接着手段により実現されてもよい。
【0038】
被膜を取り除く前に、ドレッシング充填材906の創傷対向面938は不規則または非平面であり、圧縮領域930の圧縮によって陥入部962が作られている。創傷対向面938はさらに、膨張領域934の膨張によって作られた突出部966を含む。創傷対向面に沿った陥入部962と突出部966の位置は、規則的な格子型またはその他のパターンを形成してもよく、またはその代わりに、よりランダムな性質であってもよい。圧縮領域930は創傷対向面938に隣接して配置され、それを一部に含めているが、圧縮領域930はその代わりに、創傷対向面938から分離され、より反対面942の近くに配置されてもよい。同様に、膨張領域934は創傷対向面938から分離され、より反対面942の近くに配置されているが、膨張領域934はその代わりに、創傷対向面938に隣接して配置され、これをその一部に含めてさえいてもよい。
【0039】
図10を参照すると、被膜が取り除かれると、圧縮および膨張領域はどちらも解放され、図10に示されるような弛緩状態に向かって移動する。弛緩状態では、圧縮領域と膨張領域の両方に同じ種類のドレッシング充填材が使用されていると仮定すると、圧縮領域の単位体積当たりの開口部とセルストラットの密度は、膨張領域の単位体積当たりの開口部とセルストラットの密度と略等しくなる。膨張領域934の高さは通常、膨張領域934が弛緩状態に移動すると低くなり、その一方で圧縮領域930の高さは通常、圧縮領域930が弛緩状態に移動すると高くなる。圧縮および膨張領域の高さの変化によって、創傷対向面938の高低が変化する。圧縮領域930はそれまで陥入部962に関連付けられていたが(図9参照)、圧縮領域930が弛緩状態に膨張すると、突出部970が形成される(図10参照)。膨張領域934は、それまで突出部966に関連付けられていたが(図9参照)、弛緩状態へと収縮して、陥入部974が形成される(図10参照)。創傷対向面938の突出部と陥入部がこのように逆転することにより、ドレッシング充填材906と組織部位との界面が変化し、したがって、治療中の組織部位での負荷と微小ひずみの分散を変化させることができる。
【0040】
被膜の代わりに、取り除き可能な外被またはその他の被覆材を、各種の領域がそれぞれその圧縮または膨張状態をとらされているときに、ドレッシング充填材906の周囲に設置してもよい。外被は溶解可能または生体吸収性物質であってもよく、たとえば織布または不織布、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース(CMC)およびその塩類とエステル類、アルギン酸塩、グアおよびキサンタン等のゴム、ポリビニルアルコール、ポリカプロラクタム、ポリ乳酸およびそのコポリマーまたはブレンド、またはその他のポリマーまたは材料である。1つの実施形態において、外被またはその他の被覆材が使用される場合、外被はドレッシング充填材906を完全に取り囲んでも、またはドレッシング充填材906の一部を部分的に取り囲んでもよい。溶解可能または生体吸収性外被が使用される場合、使用される特定の材料とその厚さは、所望の時間に基づいてなくなるように選択されてもよい。他の実施形態において、シースはその代わりに、微小ひずみのプロファイルを変化させることが望ましくなったときに、介護者または患者がドレッシング充填材906を手で取り除いてもよい。
【0041】
図11と12を参照すると、ある例示的実施形態によるドレッシング充填材1106は、図1の負圧治療システム100と同様の負圧治療システムに使用することができる。ドレッシング充填材1106は多孔質基材を含み、これは、1つの実施形態においては多孔質発泡材であってもよい。より具体的には、多孔質基材はオープンセル構造の発泡材であってもよく、これはたとえば、Texas、San AntonioのKinetic Concepts,Inc.からGRANUFOAM(登録商標)の名称で販売されているオープンセル構造の網目状ポリウレタン発泡材である。あるいは、非網目状発泡材や、ポリウレタン以外の生体適合性材料からなる発泡材を使用してもよい。1つの実施形態において、生体吸収性発泡材またはその他の多孔質基材を使用してもよい。適当な多孔質発泡材または多孔質基材となりうるその他の材料の例には、アクリル樹脂、アクリル酸塩、熱可塑性エラストマ(たとえば、スチレンエチレンブテンスチレン(SEBS)とその他のブロックコポリマー)、ポリエーテルブロックポリアミド(PEBAX)、シリコーンエラストマ、ポリカプロラクタム、ポリ乳酸、およびポリテンやポリプロピレン等のポリオレフィンから形成されるものが含まれる。さらに別の生体適合性材料も、本明細書に記載されているような多孔質基材に形成して、またはその他の方法でこれを作ることができれば、使用できる。
【0042】
多孔質基材は好ましくは、カバーの下方の密閉空間内の流体の移動と負圧の分散を促す複数の開口部またはその他の流路を含む。網目状のポリウレタン発泡材等の発泡材を利用する実施形態において、流路は、図1Aと1Bに関して前述したものと同様の、発泡材の中の開口部、すなわちセルによって提供される。発泡材はセル壁またはストラットをさらに含んでいてもよく、これらは前述のように、開口部のための枠組を形成する。
【0043】
ドレッシング充填材1106は1つまたは複数の圧縮領域1130を含み、これらは多孔質ドレッシング充填材1106の創傷対向面1138と反対面1142の間に配置される水平方向の層状に配置されている。図11に示される圧縮領域1130は圧縮状態にあるが、図12に示される同じ圧縮領域1130は弛緩状態にある。圧縮状態にある圧縮領域1130に作用する力は、図11の矢印1150により表される。これらの特定の力は外側方向に向かい、それによって圧縮状態にある圧縮領域1130は、拘束されていなければ、少なくとも1つの方向に膨張するであろう。ドレッシング充填材1106の圧縮領域1130が弛緩状態にあると(図12参照)、圧縮領域1130に有意な力は作用していない。
【0044】
引き続き図11を参照すると、圧縮領域1130は被膜によって圧縮状態に保持または固定される。被膜は、ドレッシング充填材1106を圧縮状態に固定することができ、また、その後、取り除いてドレッシング充填材1106を弛緩状態に変化させることのできるどのような材料であってもよい。1つの実施形態において、被膜は、流体が存在すると溶解できてもよい。溶解可能な被膜によって、組織部位からの滲出液がドレッシング充填材1106に進入すると、被膜を取り除くことができる。あるいは、被膜を除去することが望ましくなったときに、生理食塩水等の液体またはその他何れかの生体適合性溶媒または液体をドレッシング充填材1106に送達してもよい。使用可能な被膜の例には、デンプンまたはその他の糖類、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース(CMC)およびその塩類とエステル類、アルギン酸塩、グアおよびキサンタン等のゴム、またはその他のポリマーが含まれるが、これらに限定されない。水溶性塩類または起泡用混合材料(酒石酸および炭酸塩または重炭酸塩類)を非水溶性ポリマーに取り入れてもよい。水に曝されると水溶性塩類はポリマーから濾過され、または起泡用混合材料の場合はガスが放出され、どちらの場合も担体となるポリマー内に空隙率を生じさせ、それを弱体化させ、ドレッシング充填材の物理的形態を変化させる。本明細書に記載される被膜がなくなるまでの時間の長さは、所望の治療計画に応じて異なる。1つの実施形態において、被膜は、数時間(たとえば4時間)以内のように素早く、または1日またはそれを超える時間でなくなるように構成されてもよい。
【0045】
被膜はドレッシング充填材1106の外面上に設置されてもよく、あるいはドレッシング充填材1106の外面と内部通路の両方を被覆するために使用されてもよい。1つの実施形態において、ドレッシング充填材1106の外部と内部の両方を均一に被覆することが望ましいこともある。ドレッシング充填材1106への被膜の提供は、被膜材料へのドレッシング充填材1106の浸漬、または被膜材料の噴霧、刷毛塗り、ローラによる塗布またはその他の塗布によって行われてもよい。1つの実施形態において、被膜材料を圧縮された領域と膨張した領域を含む一体のドレッシング充填材1106に塗布してもよい。あるいは、被膜材料を圧縮された材料の別々の断片に塗布してから、これらを組み立ててドレッシング充填材1106を構築してもよい。複数の断片の接着によるドレッシング充填材1106の構築は、ボンディング、機械的固定、溶接、または他のあらゆる接着手段により実現されてもよい。
【0046】
図12を参照すると、被膜が取り除かれると、圧縮領域が解放されて図12に示されるような弛緩状態に移動する。弛緩状態では、同じ種類のドレッシング充填材が圧縮領域とドレッシング充填材1106の残りの部分に使用されていると仮定すると、圧縮領域の単位体積当たりの開口部およびセルストラットの密度は、ドレッシング充填材1106の残りの部分の単位体積当たりの開口部とセルストラットの密度と略等しくなる。圧縮領域1130の高さは通常、圧縮領域1130が弛緩状態に移動すると高くなる。
【0047】
正味体積利得がゼロでありうるドレッシング充填材106と異なり、ドレッシング充填材1106の中に膨張領域がなく、圧縮領域1130が存在する場合、圧縮領域1130が弛緩状態に移動するとき、正味体積利得はプラスとなる。ドレッシング充填材1106が組織治療中にカバー110と同様のカバーの下で密閉されると、圧縮領域の高さが変化し、それゆえドレッシング充填材1106の体積が増大すると、組織部位に加えられる力が増大する。このような力の増大は、治療開始時に組織部位に加えられる力を徐々に大きくすることによって、患者の快適さを確保するために利用できる。あるいは、力を増大させると、新組織の増殖を促進する、より幅広い治療計画が可能となる。
【0048】
被膜の代わりに、取り除き可能な外被またはその他の被覆材を、圧縮領域がその圧縮状態をとらされているときに、ドレッシング充填材1106の周囲に設置してもよい。外被は溶解可能または生体吸収性物質であってもよく、たとえば織布または不織布、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース(CMC)およびその塩類とエステル類、アルギン酸塩、グアおよびキサンタン等のゴム、ポリビニルアルコール、ポリカプロラクタム、ポリ乳酸およびそのコポリマーまたはブレンド、またはその他のポリマーまたは材料である。1つの実施形態において、外被またはその他の被覆材が使用される場合、外被はドレッシング充填材1106を完全に取り囲んでも、またはドレッシング充填材1106の一部を部分的に取り囲んでもよい。溶解可能または生体吸収性外被が使用される場合、使用される特定の材料とその厚さは、所望の時間に基づいてなくなるように選択されてもよい。他の実施形態では、外被はその代わりに、治療力を変化させることが望ましくなったときに、介護者または患者がドレッシング充填材1106から手で取り除いてもよい。
【0049】
本明細書で説明したドレッシング充填材106、406、606、906、1106の各々は、図1の負圧治療システム100または、組織部位での新組織増殖を促進する同様の負圧治療システムに使用されてもよい。負圧治療中、負圧がカバーの下の密閉空間にかけられると、カバーはドレッシング充填材を圧迫し、それによってドレッシング充填材を組織部位に向かって付勢する。ドレッシング充填材の構造的構成要素(たとえばストラット126または節点412)のいくつかは、組織部位と接触し、これらの構造的構成要素は組織部位に点負荷をかけ、それによって組織部位全体にわたって微小ひずみが特定の分布で発生する。ドレッシング充填材に関連する被膜が取り除かれると、ドレッシング充填材のうち、それまで膨張していた、または圧縮されていた各種の領域が状態を変化させ、これがドレッシング充填材とそれに関連する構造的構成要素の移動を促す。ドレッシング充填材106、406、606、906の場合、この移動によって構造的構成要素が組織部位に加える点負荷の空間分布が変化する。これが次に、組織部位における微小ひずみのプロファイル(すなわち、微小ひずみの分布)を変化させ、増殖した新組織がドレッシング充填材に付着するのを防止する。ドレッシング充填材906、1106の場合、ドレッシング充填材の移動は、組織部位に加えられる点負荷の大きさを変化させることができる。それによって微小ひずみのプロファイルも変化し、これは創傷治癒にとって有利である。
【0050】
本明細書に記載されたシステムと方法によって、組織部位でのドレッシングを変えることなく、組織部位が受ける微小ひずみを変調させることができる。ある場合には、微小ひずみの変調は単に微小ひずみのプロファイルの分布の変更が関わり、また別の場合には、微小ひずみの大きさが増大または縮小されてもよい。本明細書に記載されているドレッシングは各々、節点、ストラット、またはその他のひずみ誘発構造を組み込んでおり、これは選択的に圧縮状態に保持される少なくとも1つの圧縮領域または選択的に膨張状態に保持される膨張領域を含む。圧縮または膨張領域は、解放されると弛緩状態に移動し、その結果、組織部位にかかる微小ひずみの分布または量が変化する。本明細書に記載されたドレッシングの各々は、したがって、負圧組織治療を使用した組織部位の治療を改善すると考えられ、これは、負圧治療中の微小ひずみのプロファイルを変化させることによって、肉芽組織がより均一に形成され、新組織のドレッシングへの付着が防止されるからである。
【0051】
本明細書に記載のシステムの多くが、患者の上皮の、またはその付近の組織部位または創傷に使用されているように示されているが、このシステムと方法は、皮下組織部位、トンネル状の創傷、またはその他の組織の穿掘された状態の領域の治療にも同様に使用できる。
【0052】
多数の異なる実施形態を説明したが、各実施形態の態様はその実施形態のみに特定されるのではなく、実施形態の特徴がその他の実施形態の特徴と組み合わされることも明確に想定される。本明細書の主旨がその形態のわずか数個でのみ示されているが、その範囲から逸脱することなく、様々な変更と改良を加えることもできる。
【0053】
本明細書に記載された圧縮および膨張領域の両方を含む実施形態の変形形態を、1つの膨張領域のみまたは1つの圧縮領域のみを利用することによって提供してもよい。たとえば、図1の実施形態は、垂直方向の圧縮領域または膨張領域だけを利用して、両方の種類の領域を用いないように改変してもよい。
【0054】
ある寸法、部分、または領域が水平であると言及されている場合、これはドレッシングの創傷対向面に実質的に平行な平面を意味する。同様に、垂直はこの平面に関しており、それゆえ、創傷対向面に実質的に垂直に存在する平面を指す。ある部分が他の部分の「上方」または「下方」であると言及されている場合、これはドレッシングの「底面」である創傷対向面に関して言及されている。
【0055】
圧縮および膨張領域を固定するための被膜は、第一と第二の被膜が異なる時期に取り除けるように、異なっていてもよい。たとえば被膜は異なる材料であっても、または異なる時間で溶解するように構成されてもよい。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12