特許第6202709号(P6202709)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6202709-水陸両用車 図000002
  • 特許6202709-水陸両用車 図000003
  • 特許6202709-水陸両用車 図000004
  • 特許6202709-水陸両用車 図000005
  • 特許6202709-水陸両用車 図000006
  • 特許6202709-水陸両用車 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202709
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】水陸両用車
(51)【国際特許分類】
   B60F 3/00 20060101AFI20170914BHJP
   B63H 23/30 20060101ALI20170914BHJP
   B63H 21/17 20060101ALI20170914BHJP
   B60W 10/00 20060101ALI20170914BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20170914BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20170914BHJP
   B60W 10/26 20060101ALI20170914BHJP
   B60W 20/00 20160101ALI20170914BHJP
   B60K 6/46 20071001ALI20170914BHJP
   B60K 6/36 20071001ALI20170914BHJP
   B60K 6/442 20071001ALI20170914BHJP
【FI】
   B60F3/00 A
   B63H23/30
   B63H21/17
   B60W10/00 900
   B60W10/06 900
   B60W10/08 900
   B60W10/26 900
   B60W20/00 900
   B60K6/46
   B60K6/36
   B60K6/442
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-251104(P2012-251104)
(22)【出願日】2012年11月15日
(65)【公開番号】特開2014-97742(P2014-97742A)
(43)【公開日】2014年5月29日
【審査請求日】2015年9月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078499
【弁理士】
【氏名又は名称】光石 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】230112449
【弁護士】
【氏名又は名称】光石 春平
(74)【代理人】
【識別番号】100102945
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100120673
【弁理士】
【氏名又は名称】松元 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100182224
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲三
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 進一
(72)【発明者】
【氏名】松永 高志
【審査官】 常盤 務
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−067122(JP,A)
【文献】 特開2009−056968(JP,A)
【文献】 特開2012−171363(JP,A)
【文献】 特表2004−524204(JP,A)
【文献】 特開2009−067121(JP,A)
【文献】 特開2009−067207(JP,A)
【文献】 特表2007−503360(JP,A)
【文献】 特表2008−525265(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60F 3/00
B63H 23/30
B63H 21/17
B60W 10/00
B60W 10/06
B60W 10/08
B60W 10/26
B60W 20/00
B60K 6/46
B60K 6/36
B60K 6/442
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陸上を走行する陸上走行と、水上を航行する水上航行と、水際を走行する水際走行とを行うことが可能な水陸両用車であって、
ガスタービンと、
前記ガスタービンの出力が第1クラッチを介して伝達される発電機と、
前記発電機が発生する電力を充放電する蓄電池と、
前記蓄電池の蓄電量を検出する蓄電量検出手段
前記蓄電池から供給される電力により回転駆動するモータと、
前記モータの回転駆動により回転駆動する車輪と、
前記ガスタービンの出力が第2クラッチを介して伝達される水上推進手段と、
前記ガスタービン、前記第1クラッチ、前記第2クラッチ、前記発電機、前記蓄電池、および前記モータを制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
陸上を走行するときに、
前記蓄電量検出手段により検出した蓄電量が上限設定値より大きい場合に、前記ガスタービンを停止するように当該ガスタービンを制御し、
前記蓄電量検出手段により検出した蓄電量が下限設定値より小さい場合に、前記ガスタービンと前記水上推進手段とを切断するように前記第2クラッチを制御する一方、前記ガスタービンと前記発電機とを接続するように前記第1クラッチを制御すると共に、前記ガスタービンを高負荷率で運転するように当該ガスタービンを制御し、前記ガスタービンの出力を前記発電機に伝達し当該発電機が発生する電力を前記蓄電池に充電し、
前記蓄電池から前記モータに電力を供給し前記モータにより前記車輪を回転駆動する
ことを特徴とする水陸両用車。
【請求項2】
陸上を走行する陸上走行と、水上を航行する水上航行と、水際を走行する水際走行とを行うことが可能な水陸両用車であって、
ガスタービンと、
前記ガスタービンの出力が第1クラッチを介して伝達される発電機と、
前記発電機が発生する電力を充放電する蓄電池と、
前記蓄電池から供給される電力により回転駆動するモータと、
前記モータの回転駆動により回転駆動する車輪と、
前記ガスタービンの出力が第2クラッチを介して伝達される水上推進手段と、
前記モータの出力を前記車輪側および前記水上推進手段側へ分配するモータ出力分配手段と、
前記モータ出力分配手段により分配した前記モータの出力を第3クラッチを介して前記車輪側へ伝達する車輪側モータ出力伝達手段と、
前記モータ出力分配手段により分配した前記モータの出力を第4クラッチを介して前記水上推進手段側へ伝達する水上推進手段側モータ出力伝達手段と、
前記ガスタービン、前記第1クラッチ、前記第2クラッチ、前記第3クラッチ、前記第4クラッチ、前記発電機、前記蓄電池、および前記モータを制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
陸上を走行するときに、前記水上推進手段側モータ出力伝達手段と前記水上推進手段とを切断するように前記第4クラッチを制御する一方、前記車輪側モータ出力伝達手段と前記車輪とを接続するように前記第3クラッチを制御し、前記蓄電池から前記モータに電力を供給し前記モータにより前記車輪を回転駆動する
ことを特徴とする水陸両用車。
【請求項3】
請求項に記載された水陸両用車であって、
前記制御手段は、
水上を低速で航行するときに、前記ガスタービンと前記水上推進手段とを切断するように前記第2クラッチを制御すると共に、前記車輪側モータ出力伝達手段と前記車輪とを切断するように前記第3クラッチを制御する一方、前記水上推進手段側モータ出力伝達手段と前記水上推進手段とを接続するように前記第4クラッチを制御し、前記蓄電池から前記モータに電力を供給し前記モータにより前記水上推進手段を駆動する
ことを特徴とする水陸両用車。
【請求項4】
請求項または請求項に記載された水陸両用車であって、
前記制御手段は、
水際を走行するときに、前記ガスタービンと前記水上推進手段とを切断するように前記第2クラッチを制御する一方、前記車輪側モータ出力伝達手段と前記車輪とを接続するように前記第3クラッチを制御すると共に、前記水上推進手段側モータ出力伝達手段と前記水上推進手段とを接続するように前記第4クラッチを制御し、前記蓄電池から前記モータに電力を供給し前記モータにより前記車輪および前記水上推進手段を駆動する
ことを特徴とする水陸両用車。
【請求項5】
請求項から請求項の何れか一項に記載された水陸両用車であって、
前記蓄電池の蓄電量を検出する蓄電量検出手段を備え、
前記制御手段は、陸上を走行するとき、水上を低速で航行するとき、または、水際を走行するとき、
前記蓄電量検出手段により検出した蓄電量が上限設定値より大きい場合に、前記ガスタービンを停止するように当該ガスタービンを制御し、
前記蓄電量検出手段により検出した蓄電量が下限設定値より小さい場合に、前記ガスタービンと前記水上推進手段とを切断するように前記第2クラッチを制御する一方、前記ガスタービンと前記発電機とを接続するように前記第1クラッチを制御すると共に、前記ガスタービンを高負荷率で運転するように当該ガスタービンを制御し、前記ガスタービンの出力を前記発電機に伝達し当該発電機が発生する電力を前記蓄電池に充電する
ことを特徴とする水陸両用車。
【請求項6】
陸上を走行する陸上走行と、水上を航行する水上航行と、水際を走行する水際走行とを行うことが可能な水陸両用車であって、
ガスタービンと、
前記ガスタービンの出力が第1クラッチを介して伝達される発電機と、
前記発電機が発生する電力を充放電する蓄電池と、
前記蓄電池の蓄電量を検出する蓄電量検出手段
前記蓄電池から供給される電力により回転駆動するモータと、
前記モータの回転駆動により回転駆動する車輪と、
前記ガスタービンの出力が第2クラッチを介して伝達される水上推進手段と、
前記ガスタービンと前記発電機および前記水上推進手段との断続を行う第5クラッチと、
前記ガスタービン、前記第1クラッチ、前記第2クラッチ、前記第5クラッチ、前記発電機、前記蓄電池、および前記モータを制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
陸上を走行するときに、
前記蓄電量検出手段により検出した蓄電量が上限設定値より大きい場合に、前記ガスタービンを停止するように当該ガスタービンを制御し、
前記蓄電量検出手段により検出した蓄電量が下限設定値より小さい場合に、前記ガスタービンと前記水上推進手段とを切断するように前記第2クラッチを制御する一方、前記ガスタービンと前記発電機とを接続するように前記第1クラッチおよび前記第5クラッチを制御すると共に、前記ガスタービンを高負荷率で運転するように当該ガスタービンを制御し、前記ガスタービンの出力を前記発電機に伝達し当該発電機が発生する電力を前記蓄電池に充電し、
前記蓄電池から前記モータに電力を供給し前記モータにより前記車輪を回転駆動する
ことを特徴とする水陸両用車。
【請求項7】
陸上を走行する陸上走行と、水上を航行する水上航行と、水際を走行する水際走行とを行うことが可能な水陸両用車であって、
ガスタービンと、
前記ガスタービンの出力が第1クラッチを介して伝達される発電機と、
前記発電機が発生する電力を充放電する蓄電池と、
前記蓄電池から供給される電力により回転駆動するモータと、
前記モータの回転駆動により回転駆動する車輪と、
前記ガスタービンの出力が第2クラッチを介して伝達される水上推進手段と、
前記ガスタービンと前記発電機および前記水上推進手段との断続を行う第5クラッチと、
前記ガスタービン、前記第1クラッチ、前記第2クラッチ、前記第5クラッチ、前記発電機、前記蓄電池、および前記モータを制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
陸上を走行するときに、前記蓄電池から前記モータに電力を供給し前記モータにより前記車輪を回転駆動し、
水上を航行している場合、前記水上推進手段の駆動を停止する操作が行われたときに、
前記ガスタービンと前記水上推進手段および前記発電機とを切断するように前記第5クラッチを制御し、前記水上推進手段と前記発電機とを接続するように前記第1クラッチおよび前記第2クラッチを制御して、水上航行で生じる前記水上推進手段の回転運動を前記発電機に伝達し、前記発電機が発生する電力を前記蓄電池に充電する
ことを特徴とする水陸両用車。
【請求項8】
請求項7に記載された水陸両用車であって、
前記蓄電池の蓄電量を検出する蓄電量検出手段を備え、
前記制御手段は、陸上を走行するとき、
前記蓄電量検出手段により検出した蓄電量が上限設定値より大きい場合に、前記ガスタービンを停止するように当該ガスタービンを制御し、
前記蓄電量検出手段により検出した蓄電量が下限設定値より小さい場合に、前記ガスタービンと前記水上推進手段とを切断するように前記第2クラッチを制御する一方、前記ガスタービンと前記発電機とを接続するように前記第1クラッチおよび前記第5クラッチを制御すると共に、前記ガスタービンを高負荷率で運転するように当該ガスタービンを制御し、前記ガスタービンの出力を前記発電機に伝達し当該発電機が発生する電力を前記蓄電池に充電する
ことを特徴とする水陸両用車。
【請求項9】
請求項に記載された水陸両用車であって、
前記制御手段は、
水上を航行している場合、前記水上推進手段の駆動を停止する操作が行われたときに、
前記ガスタービンと前記水上推進手段および前記発電機とを切断するように前記第5クラッチを制御し、前記水上推進手段と前記発電機とを接続するように前記第1クラッチおよび前記第2クラッチを制御して、水上航行で生じる前記水上推進手段の回転運動を前記発電機に伝達し、前記発電機が発生する電力を前記蓄電池に充電する
ことを特徴とする水陸両用車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水陸両用車に関する。
【背景技術】
【0002】
水陸両用車は、当該水陸両用車に装備される車輪等によって陸上を走行することと、当該水陸両用車に装備される推進器によって水上を航行することと、前記車輪等および前記推進器の両方によって、水上から陸上に向けて水際を走行することができるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2007−503360号公報
【特許文献2】特開2010−269764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ガスタービンは、図4に示すように、ディーゼルエンジンと比べ同一出力にて軽量であり、また小型で、加速性に優れているという特性を有している。そのため、前記ガスタービンは、主として高速航行や即時応答が必要な船舶の駆動源(機関)として利用されている。
【0005】
一方、前記ガスタービンは、図5に示すように、船舶の駆動源として一般的に利用されるディーゼルエンジンと比べ、燃費率が悪くなるという特性を有し、特に負荷率が50%以下にあっては、前記ガスタービンの燃費率が前記ディーゼルエンジンの燃費率と比べて急激に悪くなるという特性を有している。
【0006】
水陸両用車において、図6に示すように、水上航行では速度の上昇に伴って水による抵抗が急激に大きくなることから高速航行を行うには駆動源として大出力機関が必要となるが、陸上走行では水上航行と比べ抵抗が小さく、速度が上昇しても抵抗の増加が小さいことから駆動源として小出力機関で良いことになる。
【0007】
また、前記駆動源として、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンを用いた場合であっても、これら機関を低負荷率で運転したときには、当該機関を高負荷率で運転するときと比べて燃費率が悪化することが知られている。
【0008】
よって、水陸両用車の駆動源として、前記ガソリンエンジン、前記ディーゼルエンジン、または前記ガスタービンなどの機関を用いることができるが、前記機関を駆動源として備える水陸両用車が前記陸上、前記水上、または前記水際を走行するときに、負荷率によっては燃費率が悪化してしまう可能性があった。
【0009】
なお、上記特許文献1,2には、水上モードと陸上モードを切り換え可能な水陸両用車用の推進(制御)システムについて記載されているが、燃費率の悪化を抑制した水陸両用車については記載されていない。
【0010】
このようなことから、本発明は、前述した課題を解決するために為されたものであって、低負荷率での運転に起因する燃費率の悪化を抑制することができる水陸両用車を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決する第1の発明に係る水陸両用車は、陸上を走行する陸上走行と、水上を航行する水上航行と、水際を走行する水際走行とを行うことが可能な水陸両用車であって、ガスタービンと、前記ガスタービンの出力が第1クラッチを介して伝達される発電機と、前記発電機が発生する電力を充放電する蓄電池と、前記蓄電池の蓄電量を検出する蓄電量検出手段と、前記蓄電池から供給される電力により回転駆動するモータと、前記モータの回転駆動により回転駆動する車輪と、前記ガスタービンの出力が第2クラッチを介して伝達される水上推進手段と、前記ガスタービン、前記第1クラッチ、前記第2クラッチ、前記発電機、前記蓄電池、および前記モータを制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、陸上を走行するときに、前記蓄電量検出手段により検出した蓄電量が上限設定値より大きい場合に、前記ガスタービンを停止するように当該ガスタービンを制御し、前記蓄電量検出手段により検出した蓄電量が下限設定値より小さい場合に、前記ガスタービンと前記水上推進手段とを切断するように前記第2クラッチを制御する一方、前記ガスタービンと前記発電機とを接続するように前記第1クラッチを制御すると共に、前記ガスタービンを高負荷率で運転するように当該ガスタービンを制御し、前記ガスタービンの出力を前記発電機に伝達し当該発電機が発生する電力を前記蓄電池に充電し、前記蓄電池から前記モータに電力を供給し前記モータにより前記車輪を回転駆動することを特徴とする。
【0012】
上述した課題を解決する第の発明に係る水陸両用車は、陸上を走行する陸上走行と、水上を航行する水上航行と、水際を走行する水際走行とを行うことが可能な水陸両用車であって、ガスタービンと、前記ガスタービンの出力が第1クラッチを介して伝達される発電機と、前記発電機が発生する電力を充放電する蓄電池と、前記蓄電池から供給される電力により回転駆動するモータと、前記モータの回転駆動により回転駆動する車輪と、前記ガスタービンの出力が第2クラッチを介して伝達される水上推進手段と、前記モータの出力を前記車輪側および前記水上推進手段側へ分配するモータ出力分配手段と、前記モータ出力分配手段により分配した前記モータの出力を第3クラッチを介して前記車輪側へ伝達する車輪側モータ出力伝達手段と、前記モータ出力分配手段により分配した前記モータの出力を第4クラッチを介して前記水上推進手段側へ伝達する水上推進手段側モータ出力伝達手段と、前記ガスタービン、前記第1クラッチ、前記第2クラッチ、前記第3クラッチ、前記第4クラッチ、前記発電機、前記蓄電池、および前記モータを制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、陸上を走行するときに、前記水上推進手段側モータ出力伝達手段と前記水上推進手段とを切断するように前記第4クラッチを制御する一方、前記車輪側モータ出力伝達手段と前記車輪とを接続するように前記第3クラッチを制御し、前記蓄電池から前記モータに電力を供給し前記モータにより前記車輪を回転駆動することを特徴とする。
上述した課題を解決する第の発明に係る水陸両用車は、前述した第の発明に係る水陸両用車であって、前記制御手段が、水上を低速で航行するときに、前記ガスタービンと前記水上推進手段とを切断するように前記第2クラッチを制御すると共に、前記車輪側モータ出力伝達手段と前記車輪とを切断するように前記第3クラッチを制御する一方、前記水上推進手段側モータ出力伝達手段と前記水上推進手段とを接続するように前記第4クラッチを制御し、前記蓄電池から前記モータに電力を供給し前記モータにより前記水上推進手段を駆動することを特徴とする。
【0013】
上述した課題を解決する第の発明に係る水陸両用車は、前述した第または第の発明に係る水陸両用車であって、前記制御手段が、水際を走行するときに、前記ガスタービンと前記水上推進手段とを切断するように前記第2クラッチを制御する一方、前記車輪側モータ出力伝達手段と前記車輪とを接続するように前記第3クラッチを制御すると共に、前記水上推進手段側モータ出力伝達手段と前記水上推進手段とを接続するように前記第4クラッチを制御し、前記蓄電池から前記モータに電力を供給し前記モータにより前記車輪および前記水上推進手段を駆動することを特徴とする。
【0015】
上述した課題を解決する第の発明に係る水陸両用車は、前述した第から第の何れか一つの発明に係る水陸両用車であって、前記蓄電池の蓄電量を検出する蓄電量検出手段を備え、前記制御手段が、陸上を走行するとき、水上を低速で航行するとき、または、水際を走行するとき、前記蓄電量検出手段により検出した蓄電量が上限設定値より大きい場合に、前記ガスタービンを停止するように当該ガスタービンを制御し、前記蓄電量検出手段により検出した蓄電量が下限設定値より小さい場合に、前記ガスタービンと前記水上推進手段とを切断するように前記第2クラッチを制御する一方、前記ガスタービンと前記発電機とを接続するように前記第1クラッチを制御すると共に、前記ガスタービンを高負荷率で運転するように当該ガスタービンを制御し、前記ガスタービンの出力を前記発電機に伝達し当該発電機が発生する電力を前記蓄電池に充電することを特徴とする。
【0016】
上述した課題を解決する第の発明に係る水陸両用車は、陸上を走行する陸上走行と、水上を航行する水上航行と、水際を走行する水際走行とを行うことが可能な水陸両用車であって、ガスタービンと、前記ガスタービンの出力が第1クラッチを介して伝達される発電機と、前記発電機が発生する電力を充放電する蓄電池と、前記蓄電池の蓄電量を検出する蓄電量検出手段と、前記蓄電池から供給される電力により回転駆動するモータと、前記モータの回転駆動により回転駆動する車輪と、前記ガスタービンの出力が第2クラッチを介して伝達される水上推進手段と、前記ガスタービンと前記発電機および前記水上推進手段との断続を行う第5クラッチと、前記ガスタービン、前記第1クラッチ、前記第2クラッチ、前記第5クラッチ、前記発電機、前記蓄電池、および前記モータを制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、陸上を走行するときに、前記蓄電量検出手段により検出した蓄電量が上限設定値より大きい場合に、前記ガスタービンを停止するように当該ガスタービンを制御し、前記蓄電量検出手段により検出した蓄電量が下限設定値より小さい場合に、前記ガスタービンと前記水上推進手段とを切断するように前記第2クラッチを制御する一方、前記ガスタービンと前記発電機とを接続するように前記第1クラッチおよび前記第5クラッチを制御すると共に、前記ガスタービンを高負荷率で運転するように当該ガスタービンを制御し、前記ガスタービンの出力を前記発電機に伝達し当該発電機が発生する電力を前記蓄電池に充電し、前記蓄電池から前記モータに電力を供給し前記モータにより前記車輪を回転駆動することを特徴とする。
上述した課題を解決する第7の発明に係る水陸両用車は、陸上を走行する陸上走行と、水上を航行する水上航行と、水際を走行する水際走行とを行うことが可能な水陸両用車であって、ガスタービンと、前記ガスタービンの出力が第1クラッチを介して伝達される発電機と、前記発電機が発生する電力を充放電する蓄電池と、前記蓄電池から供給される電力により回転駆動するモータと、前記モータの回転駆動により回転駆動する車輪と、前記ガスタービンの出力が第2クラッチを介して伝達される水上推進手段と、前記ガスタービンと前記発電機および前記水上推進手段との断続を行う第5クラッチと、前記ガスタービン、前記第1クラッチ、前記第2クラッチ、前記第5クラッチ、前記発電機、前記蓄電池、および前記モータを制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、陸上を走行するときに、前記蓄電池から前記モータに電力を供給し前記モータにより前記車輪を回転駆動し、水上を航行している場合、前記水上推進手段の駆動を停止する操作が行われたときに、前記ガスタービンと前記水上推進手段および前記発電機とを切断するように前記第5クラッチを制御し、前記水上推進手段と前記発電機とを接続するように前記第1クラッチおよび前記第2クラッチを制御して、水上航行で生じる前記水上推進手段の回転運動を前記発電機に伝達し、前記発電機が発生する電力を前記蓄電池に充電することを特徴とする。
上述した課題を解決する第8の発明に係る水陸両用車は、前述した第7の発明に係る水陸両用車であって、前記蓄電池の蓄電量を検出する蓄電量検出手段を備え、前記制御手段は、陸上を走行するとき、前記蓄電量検出手段により検出した蓄電量が上限設定値より大きい場合に、前記ガスタービンを停止するように当該ガスタービンを制御し、前記蓄電量検出手段により検出した蓄電量が下限設定値より小さい場合に、前記ガスタービンと前記水上推進手段とを切断するように前記第2クラッチを制御する一方、前記ガスタービンと前記発電機とを接続するように前記第1クラッチおよび前記第5クラッチを制御すると共に、前記ガスタービンを高負荷率で運転するように当該ガスタービンを制御し、前記ガスタービンの出力を前記発電機に伝達し当該発電機が発生する電力を前記蓄電池に充電することを特徴とする。
上述した課題を解決する第9の発明に係る水陸両用車は、前述した第6の発明に係る水陸両用車であって、前記制御手段は、水上を航行している場合、前記水上推進手段の駆動を停止する操作が行われたときに、前記ガスタービンと前記水上推進手段および前記発電機とを切断するように前記第5クラッチを制御し、前記水上推進手段と前記発電機とを接続するように前記第1クラッチおよび前記第2クラッチを制御して、水上航行で生じる前記水上推進手段の回転運動を前記発電機に伝達し、前記発電機が発生する電力を前記蓄電池に充電することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る水陸両用車によれば、機関を低負荷率で運転して当該機関により車輪を駆動する必要が無く、蓄電池からモータに電力を供給し前記モータにより前記車輪を回転駆動することで、陸上を走行することができることから、前記機関の低負荷率での運転に起因する燃費率の悪化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る水陸両用車の第一番目の実施形態の概略構成図である。
図2】本発明に係る水陸両用車の第二番目の実施形態の概略構成図である。
図3】本発明に係る水陸両用車の第三番目の実施形態の概略構成図である。
図4】ガスタービンおよびディーゼルエンジンにおける出力と機関重量との関係を示すグラフである。
図5】ガスタービンおよびディーゼルエンジンにおける負荷率と燃費率との関係を示すグラフである。
図6】水陸両用車の水上航行時および陸上走行時における速度と抵抗との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る水陸両用車の実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明は、図面に基づいて説明する以下の実施形態のみに限定されるものではない。
【0021】
[第一番目の実施形態]
本発明に係る水陸両用車の第一番目の実施形態を図1に基づいて説明する。
【0022】
本実施形態に係る水陸両用車100は、図1に示すように、当該水陸両用車100に装備される前輪111および後輪113によって陸上を走行する陸上走行と、当該水陸両用車100に装備される水上推進器120によって水上を航行する水上航行と、前記前輪111および前記後輪113ならびに前記水上推進器120によって水際を走行する水際走行とを行うことが可能である。
【0023】
前記前輪111の車軸111aは、モータ112の出力軸112aと接続している。よって、前記前輪111は、前記モータ112により回転駆動する。前記モータ112は、発電機140に接続される蓄電池142と接続している。つまり、前記蓄電池142は、前記発電機140が発生する電力を充放電可能になっている。よって、前記蓄電池142から前記モータ112に電力を供給すると、前記モータ112の出力軸112aが回転駆動し、当該モータ112の出力軸112aの回転により前記前輪111が回転駆動することになる。
【0024】
前記水上推進器120は、プロペラ121と、前記プロペラ121が取り付けられるプロペラ軸122とを備える。前記プロペラ軸122が回転し前記プロペラ121が回転することで、前記水陸両用車100は当該水陸両用車100の推進力を得ている。
【0025】
前記水陸両用車100は、駆動源(機関)をなし、軽油などの燃料の供給により出力軸131が回転駆動するガスタービン130を備えると共に、前記出力軸131の回転運動を前記発電機140の入力軸141側と、動力分配軸151等を介して前記水上推進器120のプロペラ軸122側とに分配して伝達する動力分配装置150を備える。
【0026】
前記発電機140の前記入力軸141に第1クラッチ161が設けられており、前記出力軸131の回転運動が、当該出力軸131から前記発電機140の前記入力軸141に断続して伝わるようになっている。前記動力分配装置150の前記動力分配軸151に第2クラッチ162が設けられており、前記出力軸131の回転運動が、前記動力分配装置150の前記動力分配軸151等を介して前記プロペラ軸122に断続して伝わるようになっている。
【0027】
さらに、前記水陸両用車100は、前記モータ112、前記ガスタービン130、前記発電機140、前記第1クラッチ161、前記第2クラッチ162、および前記蓄電池142等を制御する制御手段をなす制御装置170を備える。前記制御装置170の入力側には、前記蓄電池142の蓄電量を検出する蓄電量検出器171が接続している。
【0028】
このような本実施形態において、前記水上推進器120等が水上推進手段を構成し、前記蓄電量検出器171等が蓄電量検出手段を構成している。
【0029】
次に、上述した水陸両用車100が具備する前記制御装置170による当該水陸両用車100の作動を説明する。
【0030】
まず、水上を航行するときには、前記制御装置170は、前記ガスタービン130の前記出力軸131と前記発電機140の前記入力軸141とを切断するように前記第1クラッチ161を制御する一方、前記動力分配軸151と前記プロペラ軸122とを接続するように前記第2クラッチ162を制御すると共に、前記ガスタービン130を高負荷率、例えば負荷率100%で運転するように当該ガスタービン130を制御し、前記ガスタービン130の前記出力軸131の回転運動を、前記動力分配軸151、および第2クラッチ162等を介して前記プロペラ軸122に伝達している。これにより、前記プロペラ軸122が回転駆動し、前記プロペラ121が回転することで、前記水陸両用車100は、水上航行時の推進力を得ている。
【0031】
陸上を走行するときには、前記制御装置170は、前記蓄電池142から前記モータ112に電力を供給している。これにより、前記モータ112の前記出力軸112aが回転駆動し、前記前輪111が回転することで、前記水陸両用車100は、陸上走行時の推進力(走行力)を得ている。
【0032】
また、陸上を走行しているとき、前記制御装置170は、前記蓄電量検出器171で検出した蓄電量(検出値)が上限設定値より大きいと判定した場合に、前記ガスタービン130の運転を停止するように当該ガスタービン130を制御している。他方、前記制御装置170は、前記蓄電量検出器171で検出した蓄電量(検出値)が前記上限設定値より小さい下限設定値より小さいと判定した場合に、前記動力分配軸151と前記プロペラ軸122とを切断するように前記第2クラッチ162を制御する一方、前記ガスタービン130の前記出力軸131と前記発電機140の前記入力軸141とを接続するように前記第1クラッチ161を制御すると共に、前記ガスタービン130を低燃費率、例えば負荷率100%で運転するように当該ガスタービン130を制御して、前記ガスタービン130の前記出力軸131の回転運動を前記発電機140に伝達し、前記発電機140が発生する電力を前記蓄電池142に充電している。これにより、前記蓄電池142に電力を充電する場合であっても、前記ガスタービン130を低負荷率で運転することに起因する燃費率の悪化を抑制することができる。
【0033】
したがって、本実施形態に係る水陸両用車100によれば、前記ガスタービン130を低負荷率で運転して当該ガスタービン130により前記前輪111等を駆動する必要が無く、前記蓄電池142から前記モータ112に電力を供給し前記モータ112により前記前輪111を回転駆動することで、陸上を走行することができることから、前記ガスタービン130の低負荷率での運転に起因する燃費率の悪化を抑制することができる。
【0034】
[第二番目の実施形態]
本発明に係る水陸両用車の第二番目の実施形態を図2に基づいて説明する。なお、前述した実施形態の場合と同様な部分については、前述した実施形態の説明で用いた符号と同様な符号を用いることにより、前述した実施形態での説明と重複説明を省略する。
【0035】
本実施形態に係る水陸両用車200は、図2に示すように、前記モータ112の出力を前記前輪111側と前記水上推進器120側とに分配して伝達するモータ出力分配伝達装置210を備える。前記モータ出力分配伝達装置210は、前記モータ112の前記出力軸112aに接続して設けられ、前記モータ112の前記出力軸112aの回転運動を前記前輪111側と前記水上推進器120側とに分配するギア(図示せず)を有するモータ出力分配装置214を備える。
【0036】
前記モータ出力分配伝達装置210は、前記モータ112の前記出力軸112aの回転運動を前記前輪111側に伝達する前輪側モータ出力伝達軸215と、前記モータ112の前記出力軸112aの回転運動を前記プロペラ軸122側に伝達する水上推進器側モータ出力伝達軸216とを備える。
【0037】
前記前輪側モータ出力伝達軸215と前記前輪111の前記車軸111aとは第3クラッチ263を介して連結している。よって、前記モータ出力分配装置214により前記前輪111側へ分配した出力、すなわち、前記出力軸112aの回転運動は、前記第3クラッチ263により、前記前輪側モータ出力伝達軸215、および前記車軸111a等を介して前記前輪111に断続して伝わることになる。
【0038】
前記水上推進器側モータ出力伝達軸216と連結軸217とは第4クラッチ264を介して連結している。前記連結軸217は前記プロペラ軸122に連結している。よって、前記モータ出力分配装置214により前記水上推進器120側へ分配した出力、すなわち、前記出力軸112aの回転運動は、前記第4クラッチ264により、前記水上推進器側モータ出力伝達軸216、および前記連結軸217等を介して前記プロペラ軸122に断続して伝わるようになっている。
【0039】
前記水陸両用車200は、前記モータ112、前記ガスタービン130、前記発電機140、前記第1クラッチ161、前記第2クラッチ162、および前記蓄電池142に加え、前記モータ出力分配伝達装置210、すなわち、前記モータ出力分配装置214、前記第3クラッチ263、前記第4クラッチ264等も制御する制御手段をなす制御装置270を備える。なお、制御装置270の入力側には、前記蓄電池142の蓄電量を検出する蓄電量検出器171が接続している。
【0040】
このような本実施形態において、前記モータ出力分配伝達装置210(前記モータ出力分配装置214、前記前輪側モータ出力伝達軸215、前記推進器側モータ出力伝達軸216、前記連結軸217、前記第3クラッチ263、前記第4クラッチ264)等はモータ出力分配伝達手段を構成し、前記モータ出力分配装置214等がモータ出力分配手段を構成し、前記前輪側モータ出力伝達軸215等が車輪側モータ出力伝達手段を構成し、前記推進器側モータ出力伝達軸216および前記連結軸217等が水上推進手段側モータ出力伝達手段を構成している。
【0041】
次に、上述した水陸両用車200が具備する前記制御装置270による当該水陸両用車200の作動を説明する。
【0042】
まず、水上を高速航行または即時応答が必要な航行を行う場合、すなわち、大出力が必要な場合、前記制御装置270は、前記ガスタービン130の前記出力軸131と前記発電機140の前記入力軸141とを切断するように前記第1クラッチ161を制御すると共に、前記水上推進器側モータ出力伝達軸216と前記連結軸217とを切断するように前記第4クラッチ264を制御する一方、前記動力分配軸151と前記プロペラ軸122とを接続するように前記第2クラッチ162を制御すると共に、前記ガスタービン130を高負荷率、例えば負荷率100%で運転するように当該ガスタービン130を制御し、前記ガスタービン130の前記出力軸131の回転運動を、前記動力分配軸151、および第2クラッチ162等を介して前記プロペラ軸122に伝達している。これにより、前記プロペラ軸122が回転駆動し、前記プロペラ121が回転することで、前記水陸両用車200は、大出力が必要となる、水上を高速航行または即時応答が必要な航行を行うときの推進力を得ている。
【0043】
水上を低速で航行する場合、すなわち、大出力が不要な場合、前記制御装置270は、前記動力分配軸151と前記プロペラ軸122とを切断するように前記第2クラッチ162を制御すると共に、前記前輪側モータ出力伝達軸215と前記前輪111の前記車軸111aとを切断するように前記第3クラッチ263を制御する一方、前記水上推進器側モータ出力伝達軸216と前記連結軸217とを接続するように前記第4クラッチ264を制御して、前記蓄電池142から前記モータ112に電力を供給し、前記モータ112の前記出力軸112aを回転駆動し、前記モータ112の前記出力軸112aの回転運動を、前記モータ出力分配装置214、前記水上推進器側モータ出力伝達軸216、前記第4クラッチ264、および前記連結軸217等を介して、前記プロペラ軸122に伝達している。これにより、前記プロペラ軸122が回転駆動し、前記プロペラ121が回転することで、前記水陸両用車200は、大出力が不要であり、水上を低速で航行するときの推進力を得ている。
【0044】
水際を走行するときには、前記制御装置270は、前記動力分配軸151と前記プロペラ軸122とを切断するように前記第2クラッチ162を制御する一方、前記前輪側モータ出力伝達軸215と前記前輪111の前記車軸111aとを接続するように前記第3クラッチ263を制御すると共に、前記水上推進器側モータ出力伝達軸216と前記連結軸217とを接続するように前記第4クラッチ264を制御し、前記蓄電池142から前記モータ112に電力を供給し、前記モータ112の前記出力軸112aを回転駆動し、前記モータ112の前記出力軸112aの回転運動を、前記モータ出力分配装置214、前記前輪側モータ出力伝達軸215、および前記第3クラッチ263等を介して前記前輪111に伝達すると共に、前記モータ出力分配装置214、前記水上推進器側モータ出力伝達軸216、前記第4クラッチ264、前記連結軸217を介して前記プロペラ軸122に伝達している。これにより、前記前輪111が回転駆動し、前記プロペラ軸122の回転駆動により前記プロペラ121が回転することで、前記水陸両用車200は、大出力が不要であり、水際を走行するときの推進力を得ている。
【0045】
陸上を走行するときには、前記制御装置270は、前記水上推進器側モータ出力伝達軸216と前記連結軸217とを切断するように前記第4クラッチ264を制御する一方、前記前輪側モータ出力伝達軸215と前記前輪111の前記車軸111aとを接続するように前記第3クラッチ263を制御し、前記蓄電池142から前記モータ112に電力を供給している。これにより、前記モータ112の前記出力軸112aが回転駆動し、前記モータ出力分配装置214、前記前輪側モータ出力伝達軸215、前記車軸111a等を介して前記前輪111に伝達し、前記前輪111が回転することで、前記水陸両用車200は、陸上走行時の推進力(走行力)を得ている。
【0046】
また、水上を低速にて航行しているとき、陸上を走行しているとき、または水際を走行しているとき、前記制御装置270は、前記蓄電量検出器171で検出した蓄電量(検出値)が上限設定値より大きいと判定した場合に、前記ガスタービン130の運転を停止するように当該ガスタービン130を制御している。他方、前記制御装置270は、前記蓄電量検出器171で検出した蓄電量(検出値)が前記上限設定値より小さい下限設定値より小さいと判定した場合に、前記動力分配軸151と前記プロペラ軸122とを切断するように前記第2クラッチ162を制御する一方、前記ガスタービン130の前記出力軸131と前記発電機140の前記入力軸141とを接続するように前記第1クラッチ161を制御すると共に、前記ガスタービン130を低燃費率、例えば負荷率100%で運転するように当該ガスタービン130を制御して、前記ガスタービン130の前記出力軸131の回転運動を前記発電機140に伝達し、前記発電機140が発生する電力を前記蓄電池142に充電している。これにより、前記蓄電池142に電力を充電する場合であっても、前記ガスタービン130を低負荷率で運転することに起因する燃費率の悪化を抑制することができる。
【0047】
したがって、本実施形態に係る水陸両用車200によれば、前述した実施形態に係る水陸両用車100と同様な作用効果を奏することに加え、前記蓄電池142から前記モータ112に電力を供給し前記モータ112により前記水上推進器120を駆動することによって、低速で水上を航行することができることから、前記ガスタービン130の低負荷率での運転に起因する燃費率の悪化を抑制することができる。
【0048】
[第三番目の実施形態]
本発明に係る水陸両用車の第三番目の実施形態を図3に基づいて説明する。なお、前述した実施形態の場合と同様な部分については、前述した実施形態の説明で用いた符号と同様な符号を用いることにより、前述した実施形態での説明と重複説明を省略する。
【0049】
本実施形態に係る水陸両用車300では、図3に示すように、前記ガスタービン130の前記出力軸131に第5クラッチ365が設けられており、前記ガスタービン130の出力軸131の回転運動が、前記第5クラッチ365により前記発電機140の前記入力軸141および前記動力分配軸151に断続して伝わるようになっている。
【0050】
前記水陸両用車300は、前記モータ112、前記ガスタービン130、前記発電機140、前記第1クラッチ161、前記第2クラッチ162、および前記蓄電池142に加え、前記第5クラッチ365等も制御する制御手段をなす制御装置370を備える。なお、制御装置370の入力側には、前記蓄電池142の蓄電量を検出する蓄電量検出器171が接続している。
【0051】
次に、上述した水陸両用車300が具備する前記制御装置370による当該水陸両用車300の作動を説明する。
【0052】
陸上を走行するときには、前記制御装置370は、前記蓄電池142から前記モータ112に電力を供給している。これにより、前記モータ112の前記出力軸112aが回転駆動し、前記前輪111が回転することで、前記水陸両用車300は、陸上走行時の推進力(走行力)を得ている。
【0053】
また、陸上を走行しているとき、前記制御装置370は、前記蓄電量検出器171で検出した蓄電量(検出値)が上限設定値より大きいと判定した場合に、前記ガスタービン130の運転を停止するように当該ガスタービン130を制御している。他方、前記制御装置370は、前記蓄電量検出器171で検出した蓄電量(検出値)が前記上限設定値より小さい下限設定値より小さいと判定した場合に、前記動力分配軸151と前記プロペラ軸122とを切断するように前記第2クラッチ162を制御する一方、前記ガスタービン130の前記出力軸131と前記発電機140の前記入力軸141とを接続するように前記第1クラッチ161および前記第5クラッチ365を制御すると共に、前記ガスタービン130を低燃費率、例えば負荷率100%で運転するように当該ガスタービン130を制御して、前記ガスタービン130の前記出力軸131の回転運動を前記発電機140に伝達し、前記発電機140が発生する電力を前記蓄電池142に充電している。これにより、前記蓄電池142に電力を充電する場合であっても、前記ガスタービン130を低負荷率で運転することに起因する燃費率の悪化を抑制することができる。
【0054】
水上を航行するときには、前記制御装置370は、前記ガスタービン130の前記出力軸131と前記発電機140の前記入力軸141とを切断するように前記第1クラッチ161を制御する一方、前記ガスタービン130の前記出力軸131と前記動力分配軸151とを接続するように前記第5クラッチ365を制御し、前記動力分配軸151と前記プロペラ軸122とを接続するように前記第2クラッチ162を制御すると共に、前記ガスタービン130を高負荷率、例えば負荷率100%で運転するように当該ガスタービン130を制御し、前記ガスタービン130の前記出力軸131の回転運動を、前記動力分配軸151、および第2クラッチ162等を介して前記プロペラ軸122に伝達している。これにより、前記プロペラ軸122が回転駆動し、前記プロペラ121が回転することで、前記水陸両用車300は、水上航行時の推進力を得ている。
【0055】
また、水上を航行しているときに、前記水上推進器120を停止する操作が行われたときには、前記制御装置370は、前記ガスタービン130の前記出力軸131と前記発電機140の前記入力軸141および前記動力分配軸151とを切断するように前記第5クラッチ365を制御する一方、前記プロペラ軸122と前記動力分配軸151とを接続するように前記第2クラッチ162を制御すると共に、前記発電機140の前記入力軸141と前記動力分配軸151を接続するように前記第1クラッチ161を制御し、前記プロペラ121の回転運動を、前記プロペラ軸122、前記動力分配軸151を介して、前記発電機140の前記入力軸141に伝達し、前記入力軸141が回転することにより前記発電機140で電力が発生し、前記電力を前記蓄電池142に充電している。
【0056】
したがって、本実施形態に係る水陸両用車300によれば、上述した実施形態に係る水陸両用車100と同様な作用効果を奏することに加え、水上航行中に前記水上推進器120を停止する操作が行われたときにおいても、前記プロペラ121の回転運動により前記発電機140で回生エネルギを発生し当該回生エネルギを前記蓄電池142に充電することができることから、燃費率の悪化を抑制することができる。
【0057】
[他の実施形態]
なお、上記では、駆動源としてガスタービン130を備える水陸両用車100,200,300を用いて説明したが、前記ガスタービン130の代わりに、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの機関を備える水陸両用車とすることも可能である。このような水陸両用車によれば、前記ガソリンエンジンや前記ディーゼルエンジン自体が前記ガスタービン130と比べて、低負荷時の燃費率と高負荷時の燃費率との差が小さいことから、前述した水陸両用車100,200,300と比べて、前記燃費率の悪化を抑制する効果が小さいものの、前記ガソリンエンジンや前記ディーゼルエンジンを低負荷率で運転することに起因する燃費率の悪化を抑制することができる。
【0058】
上記では、前記モータ112を2つ備える水陸両用車100,200,300を用いて説明したが、1つのモータで前記前輪111,111を回転駆動したり、1つまたは2つのモータで前記後輪113,113を回転駆動したり、前記前輪111,111および前記後輪113,113をそれぞれモータで回転駆動したりする水陸両用車とすることも可能である。
【0059】
上述した第二番目の実施形態に係る水陸両用車200と上述した第三番目の実施形態に係る水陸両用車300とを組み合わせた構成をなす水陸両用車とすることも可能である。このような水陸両用車であっても、上述した水陸両用車200,300と同様な作用効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明に係る水陸両用車は、低負荷率での運転に起因する燃費率の悪化を抑制することができるので、極めて有益に利用することができる。
【符号の説明】
【0061】
100 水陸両用車
111 前輪
112 モータ
113 後輪
120 水上推進器
121 プロペラ
122 プロペラ軸
130 ガスタービン
131 出力軸
140 発電機
141 入力軸
142 蓄電池
150 動力分配装置
151 動力分配軸
161 第1クラッチ
162 第2クラッチ
170 制御装置
171 蓄電量検知器
200 水陸両用車
210 モータ出力分配伝達装置
214 モータ出力分配装置
215 前輪側モータ出力伝達軸
216 水上推進器側モータ出力伝達軸
217 連結軸
250 動力分配装置
263 第3クラッチ
264 第4クラッチ
270 制御装置
300 水陸両用車
350 動力分配装置
365 第5クラッチ
370 制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6