【実施例】
【0036】
次に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の単なる例示であって、本発明の限定を意図するものではない。
なお、本発明における1Uは、1分間当たりに1μモルのグルコース(または還元糖)を遊離する酵素活性の意味である。
【0037】
<草本系バイオマス糖化酵素を有する微生物の探索と同定>
腐食を多く含む土壌サンプル、約800サンプルから菌を採取し、稲わらを唯一の炭素源とする集積培養を行った。この集積培養には、表1の組成の培地を使用した。粉砕稲わらは、長野県産稲わら(有限会社宮原商店製、長野市)をハサミで5mm程度にカットしてからセラミックミル(パナソニック製EU6820P−G)にて粉砕したものを用いた。
【0038】
前記集積培養の結果、草本系バイオマスの糖化効率が高い菌株(A592−4B株。「A株」と略す。)が得られ、その同定試験を業者(株式会社テクノスルガ・ラボ、静岡市)に委託した。ITS−5.8S rDNA(配列番号1)および28S rDNA−D1/D2(配列番号2)をアポロンDB−FUおよびBLAST相同性検索した結果、菌株はペニシリウム・オキサリクム(Penicillium oxalicum)に属する菌株と同定された。A株をポテトデキストロース寒天培地平板上で培養したときのコロニーは濃緑色で、その形状は真円形で平坦かつ均一に広がった。A株を種々の培地上で25℃にて1週間培養した後の巨視的観察結果を表2に示す。
【0039】
なお、表の色調欄の()内の数値は、Kornerup and Wanscher(1978)で用いられている色のコード番号を示す。
【0040】
A株の微視的観察結果は以下の通りである。
・栄養菌糸:菌糸は寒天表面上または寒天内に形成され、無色、有隔壁菌糸の形成が認められた。
・無性生殖器官
(1)分生子柄および分生子形成細胞:分生子柄は栄養菌糸より直生し、分生子柄の先端部から円筒形のメトレが形成され、その先に分生子形成細胞であるフィアライドが形成される二輪性ペニシルスが主に観察された(
図1、2)。フィアライドは皮針形を示した(
図2)。
(2)分生子:フィアロ型分生子で、フィアライドから鎖状に連なって形成され、楕円形、1細胞、表面は平滑〜粗面(
図3)。
・有性生殖器官:約2週間の培養検体からは有性生殖器官の形成は確認できなかった。
【0041】
[実施例1]<A酵素の取得と活性測定>
(前培養)
小麦ふすま質量2%を含む液体培地10mLを25mm径のガラス試験管に分注し、シリコセン(登録商標)をして高圧蒸気滅菌器(平山製作所製、HVA−110)で121℃、15分間滅菌した後、常温にして前培養用の液体培地を調製した。これに、PDA培地上のA菌株を無菌的に1白金耳植菌し、培養恒温反応器(タイテック株式会社製、BR−43FL)で30℃にて3日間、250spmで往復振盪して、前培養を行った。
【0042】
(A酵素液の調製)
表1の組成の液体培地1Lを、2Lのバッフル付きフラスコ(柴田科学製)に調製し、シリコセン(登録商標、アズワン製C−65)を装着して高圧蒸気滅菌器(平山製作所製、HVA−110)で121℃、15分間滅菌して培養液を調製した。常温の培養液に前培養液10mLを植菌し、これを培養器(ブリス株式会社製、TB−25RS)中100rpmで回転させながら、30℃にて7日間培養した。得られたA菌株培養液を遠心分離器(日立製作所製、himac CF15R)で8000rpm、10分間遠心分離し、上清約900mLを得、これをA酵素液とした。
【0043】
(A酵素の安定性の検討)
粉砕稲わらを基質として、温度30〜60℃、pH3〜7の条件下でA酵素による糖化反応を行い、反応後に上清中の還元糖量をソモギーネルソン法で測定することによりA酵素の活性を求めたところ、A酵素の至適温度は50℃、至適pHは5であった。また、pH5.0として30〜70℃で30分間保った後に酵素活性を測定することでA酵素液の温度安定性を調べたところ、50℃以下では安定であった。また、pH2〜11で30分間保った後の酵素活性を測定した結果、A酵素の活性はpH3〜10の範囲で安定であった。pH安定性については、pH5とpH9で活性が高い二峰性を示したが、本発明者らは、A酵素液中に複数存在する酵素の安定性の違いに起因するものと考えている。結果をグラフとしたものを
図4a〜dに示す。
【0044】
(酵素活性の測定)
1gの粉砕稲わらと10mLの1M酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)に蒸留水を添加して95mLにメスアップして基質液を調製した。この基質液を96穴マイクロプレートの各ウェルに190μLずつ分注し、プレートシールを貼ってからサーモシェーカー(バイオサン製PST−60HL−4)にセットした。15分間保温した後、各ウェルにA酵素を含む酵素液を10μLずつ添加し、30分間850rpmで回転振盪して酵素反応させた。その後、各ウェルに1M NaOHを15μL添加し、酵素反応を止めた。次いで、マイクロプレートをマイクロプレート遠心機(クボタ製、PlateSpinII)にて4000rpmで10分間遠心分離し、上清中の遊離還元糖濃度を後述するDNS法で測定した。この結果、A酵素の比活性は、18.2U/mgであった。
【0045】
(DNS法の手順)
DNS法の手順は以下のとおりである。
1.まず、96穴PCRプレートの各ウェルにサンプル20μLを入れる。
2.次いで、サンプルを入れたウェルに表3の組成のDNS試薬を40μL添加し、プレートの表面にプレートシール(株式会社バイオクロマト製、タイタースティックHC)を貼って密封した後、プレートを沸騰水に入れて5分間反応させる。
3.プレートを氷水中で5分間冷却してから、プレートシールを剥がし、各ウェルに蒸留水180μLを加える。
4.各ウェルに発色液180μLを加えたのち、プレートリーダー(大日本住友製薬製、Viento)で540nmの吸光度を測定し、この吸光度から遊離還元糖濃度を求める。
【0046】
表3にDNS試薬の組成を示す。DNS試薬は褐色瓶に入れて使用するまで室温で保存した。
【0047】
[実施例2]<1LスケールでのA株の培養モニタリング>
表1の組成の液体培地1Lを、2Lのバッフル付きフラスコ(柴田科学製)に計3サンプル調製し、実施例1と同様にして滅菌して培養液を調製した。これにA株の前培養液10mLを植菌し、このフラスコを培養器(ブリス株式会社製、TB−25RS)中90rpmで回転させ、30℃にて7日間培養しながら、1日ごとに培養液中の酵素活性、タンパク質濃度、還元糖濃度およびpHを測定した。
【0048】
その結果、還元糖濃度については実験開始直後0.7mg/mL程度であったが、24時間後には0.2mg/mLまで下がり、以後ほとんど変化しなかった。これは、粉砕稲わらに含まれる可溶性の還元糖が調製直後の培地に溶解するものの、菌体が生育のために利用・吸収し、その後もA酵素の作用で生成した還元糖を、菌体がすぐに取り込むためと考えられる。
【0049】
pHは24時間で3.5付近まで急激に下がるが、その後徐々に上昇し、培養4日目でpH5.5付近まで戻った。
タンパク質量は、培養開始直後は0.1mg/mL未満であったが、24〜96時間後にかけてなだらかに上昇した。
稲わら分解活性については、培養直後はほぼ0であったが、24時間後から上昇しはじめ、96時間後に最大値となった。稲わら分解活性の推移は、タンパク質量およびpHの推移と正の相関を示した。結果をグラフにしたものを
図5に示す。
なお、タンパク質濃度の測定はBSAを標準としてブラッドフォード法により測定した。測定には子牛血清アルブミンプロテインアッセイキットII(バイオラッド製、500−0002JA)を用いた。酵素活性の測定は上記DNS法で行った。
【0050】
<各種基質に対するA酵素の糖化活性>
[実施例3]
酵素溶液を適宜希釈し、表4の組成の反応溶液を調製し、170spmで往復振盪させながら、45℃にて30分反応させた。その後、氷冷して反応を止め、4℃にて14000rpmで10分間遠心分離し、上清の還元糖濃度を実施例1の(DNS法の手順)と同様にして測定した。その結果、粉砕稲わらに対するA酵素の糖化酵素活性は13.4±0.53U/mgであった。
【0051】
【0052】
[比較例1]
反応溶液中のA酵素の代わりにノボザイムズ社(デンマーク)のCellic(登録商標)CTecとCellic(登録商標)HTecを9:1の割合で混合したもの(CTecと略す。)を用いたこと以外は、実施例3と同様にして糖化酵素活性を測定した。その結果、CTecの糖化酵素活性は2.70±0.02U/mgであった。
【0053】
[比較例2]
反応溶液中のA酵素の代わりにノボザイムズ社(デンマーク)のCellic(登録商標)CTec2とCellic(登録商標)HTec2を9:1の割合で混合したもの(CTec2と略す。)を用いたこと以外は、実施例3と同様にして糖化酵素活性を測定した。その結果、CTec2の糖化酵素活性は5.10±0.01U/mgであった。
【0054】
[実施例4、比較例3、4]
粉砕稲わらの代わりにカルボキシメチルセルロース(CMC;Wako製)を用い、遠心分離を行わなかったこと以外はそれぞれ実施例3、比較例1、2と同様にして各酵素のCMC糖化活性を測定した。
【0055】
[実施例5、比較例5、6]
粉砕稲わらの代わりにアビセル(登録商標)PH−101(Fluka製)を用いたこと以外はそれぞれ実施例3、比較例1、2と同様にして各酵素のアビセル(登録商標)糖化活性を測定した。
【0056】
[実施例6、比較例7、8]
粉砕稲わらの代わりにブナ材キシラン(SIGMA−ALDRICH製)を用いたこと以外はそれぞれ実施例3、比較例1、2と同様にして各酵素のブナ材キシラン糖化活性を測定した。
【0057】
[実施例7]
表4中、10mgの粉砕稲わらの代わりに終濃度0.25mMのp−ニトロフェノール−β−グルコピラノシド(PNPG;和光純薬工業製)を用いて反応溶液を調製し、これを170rpmで回転振盪させながら、45℃にて15分反応させた。その後、反応溶液に2mLの0.2M炭酸ナトリウム溶液を加え、アルカリ性にすることで反応を停止するとともに遊離のパラニトロフェノール(PNP)を発色させ、プレートリーダーで500nmの吸光度を測定し、標準曲線と比較することによりA酵素のPNPG分解活性を求めた。
[比較例9、10]
A酵素の代わりにそれぞれCTec、CTec2を用いたこと以外は実施例7と同様にしてPNPG分解活性を求めた。
【0058】
実施例3〜7および比較例1〜10の結果をグラフにしたものを、
図6に示す。CTec2はすべての基質でCTecより優れていたので、本発明のA酵素とCTec2を比較すると、CMC、アビセル(登録商標)およびPNPGに対する活性は、CTec2の方がA酵素より高く、CMCで2.3倍、アビセル(登録商標)で5.2倍、PNPGで8.9倍であった。しかし、草本系バイオマスである粉砕稲わらについては、本発明のA酵素の方がCTec2よりも2.6倍も活性が高かった。これらの結果から、A酵素は自然物であるバイオマス原料に対して優れた糖化活性を持っていると考えられる。
また、ブナ材キシランに対する活性はA酵素とCTec2とで同程度であった。この結果から、A酵素は木質系バイオマスの糖化活性も十分に有していることが明らかである。
【0059】
<A酵素とCTec、CTec2との相互作用の検討>
実施例8、9および比較例11、12では、本発明のA酵素と、市販の複合酵素であるCTecおよびCTec2との相互作用を検討した。
[実施例8]
4.5mg/mLのA酵素液を用いて表4の組成の溶液を調製し、170rpmで回転振盪させながら、45℃にて反応させた。所定時間後に氷冷して反応を止め、4℃にて14000rpmで10分間遠心分離し、上清の還元糖濃度を実施例1の(DNS法の手順)と同様にして測定することにより、実験開始から120時間後までの溶液中の還元糖濃度を測定した。結果を
図7に三角(△)で示す。
【0060】
[実施例9]
4.5mg/mLのA酵素液100μLに加えて、4.5mg/mLのCTec2を100μL同時に添加したこと以外は、実施例8と同様の手順で溶液中の還元糖濃度を測定した。結果を
図7に(×)で示す。
【0061】
[比較例11]
A酵素液の代わりに、CTecを用いたこと以外は、実施例8と同様の手順で溶液中の還元糖濃度を測定した。結果を
図7にひし形(◇)で示す。
【0062】
[比較例12]
A酵素液の代わりに、CTec2を用いたこと以外は、実施例8と同様の手順で溶液中の還元糖濃度を測定した。結果を
図7に四角(□)で示す。
【0063】
実施例8、9および比較例11、12の結果から、驚くべきことに本発明のA酵素とCTec2とを混合した場合に、粉砕稲わらの糖化率が向上することが明らかとなった。なお、A酵素とCTecを混合した酵素の粉砕稲わら糖化率は、A酵素のみを用いた実施例8と同程度であった(不図示)。また、実施例8、9および比較例11、12の中では、実施例9のみ酵素添加量が他の倍の0.9mgとなっているが、酵素量は0.45mgでも大過剰であり、各酵素を単独で使用した場合、酵素量を0.45mgより増やしても粉砕稲わらの糖化率に変化は見られなかった(不図示)。
A酵素とCTec2を混合して用いた場合(実施例9)の粉砕稲わら糖化率は、A酵素を単独で用いた場合(実施例8)やCTec2を単独で用いた場合(比較例11)の約1.3倍であった。この結果から、粉砕稲わら基質中にA酵素のみが糖化できる成分と、CTec2のみが糖化できる成分とが存在することが示唆される。すなわち、本発明のZ酵素とCTec2とを混合して用いることにより、稲わらをより効率的に糖化できるとともに、糖化に伴い発生する廃棄物を減少できる可能性がある。
【0064】
[実施例10]
A酵素の密度勾配等電点電気泳動を行い、得られた各フラクションについて280nmの吸光度(A280nm)の測定、並びに、フラクションのCMC糖化(CMCase)活性、アビセル糖化(Avicelase)活性、PNPG糖化(PNPGase)活性およびキシラン糖化(キシラナーゼ)活性を測定した。結果を各フラクションの溶出時のpHと併せて
図8に示す。
【0065】
A280nmのピークは、大きい方からpH2.5、pH4.5、pH7.0の3カ所に見られた。しかし、pH2.5付近のフラクションには酵素活性が全くみられないことから、雑タンパク質と考えられる。
一方、pH4.5とpH7.0付近のどちらかのフラクションに各酵素の活性が見られた。具体的には、CMCase活性はpH4.2およびpH6.5付近に極大が見られた。Avicelase活性もCMCase活性と同様でpH4.5付近およびpH6.3に極大が見られた。PNPGase活性は、pH4付近にのみ極大が見られた。キシラナーゼ活性は、pH4から9にわたり広範に活性が見られ、pH6.7付近に最大の活性が見られた。
【0066】
上記の結果と、ペニシリウム属のキシラナーゼにはアイソザイムが存在するとの報告があること、リグノセルロースの分解には複数の酵素の関与が必要とされていることを考慮すると、本発明のA酵素液には少なくとも2種の酵素が存在し、これらの酵素がエンド−β−グルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼおよびキシラナーゼ活性を発揮していることが示唆される。
また、A280nmを総計したうちの約3分の1がpH2.5付近に存在していたことから、この分画を除去することでA酵素液の比活性を1.5倍程度向上できると考えられる。
【0067】
[実施例11]<Z酵素の取得と活性測定>
A菌株胞子にUV照射することによって変異株であるZ株を得た。
そして、A菌株の代わりにZ菌株を用いたこと以外は実施例1と同様にしてZ酵素液を取得し、その活性を測定したところ、Z酵素の比活性は30.6U/mgであった。すなわち、Z酵素はA酵素に対し約1.7倍の比活性を有している。
このペニシリウム・オキサリクムSA57−2株(Z株)を2012年2月20日(受領日)に独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託し、受託番号:FERM P−22221が付与された。
【0068】
[比較例13]<粉砕稲わらの完全糖化率の測定>
粉砕稲わらを硫酸で完全分解して、その糖組成を調べた。具体的には、300mgの粉砕稲わらに72%硫酸3mLを加え、30℃にて1時間保温し、この間10分に1回撹拌した。その後、蒸留水84mLを加え、オートクレーブに入れて121℃にて1時間保った。溶液に炭酸カルシウムを加えて中和した後、0.2μmのフィルターに通し、ろ液をHPLC分析用試料とした。
HPLCの溶離液として蒸留水を0.5mL/分で流し、これに前記HPLC分析用試料を10μL注入し、RI検出器(日本分光株式会社製RI−2031 Plus)を用いて遊離糖を測定した。この結果、HPLC分析用試料の糖組成は、稲わら重量に対してグルコース24.7%、キシロース10.8%、アラビノース2.0%、ガラクトース1.8%で、前記稲わらを完全分解したときの遊離糖の割合は稲わら重量の39.3%であった。なお、カラムはアジレントテクノロジー社製PL Hi−Plex Pb 300×7.7mmを使用し、カラム温度は80℃とした。
【0069】
[実施例12]<Z酵素による限界糖化率の測定>
表5の組成の反応溶液を調製し、45℃にて250spmで往復振盪し5日間保った。その後、溶液を14000rpmで10分間遠心分離し、上清を100℃で5分間加熱処理してから0.2μm径のHPLC前処理フィルター(アドバンテック社製、25HP020AN)に通してHPLC分析用試料とした。
【0070】
HPLCの溶離液として蒸留水を0.5mL/分で流し、これに前記HPLC分析用試料を10μL注入し、RI検出器(日本分光製RI−2031 Plus)を用いて遊離糖を測定した。その結果、前記試料中の遊離糖濃度は3.40mg/mLであった。また、比較例13の稲わらを完全分解したときの糖組成の結果を用いて計算したところ、Z酵素による稲わらの糖化率は86.6%であった。
なお、カラムはアジレントテクノロジー社製PL Hi−Plex Pb 300×7.7mmを使用し、カラム温度は80℃とした。
【0071】
[実施例13]<A酵素による限界糖化率の測定>
前記反応溶液中のZ酵素の代わりにA酵素を用いたこと以外は実施例12と同様にして、HPLC分析用試料中の遊離糖を測定した。その結果、試料中の遊離糖濃度は3.13mg/mL、稲わらの糖化率は79.6%であった。
【0072】
[比較例14]<CTec2による限界糖化率の測定>
前記溶液中のZ酵素を、ノボザイムズ社(デンマーク)のCellic(登録商標)CTec2とCellic(登録商標)HTec2を9:1の割合で混合したもの(CTec2)に代えたこと以外は、実施例12と同様にしてHPLC分析用試料中の遊離糖を測定した。その結果、試料中の遊離糖濃度は2.55mg/mL、稲わらの糖化率は64.8%であった。
【0073】
上記実施例12、13および比較例14の結果をまとめたグラフを
図9に示す。図中の数字は稲わらの糖化率である。この図から、Z酵素およびA酵素がともに、市販の強力なセルラーゼであるCellic(登録商標)CTec2よりも稲わら糖化率が高いこと、Z酵素はA酵素よりも稲わら糖化活性も稲わら糖化率も高い有用な変異株であることが明らかである。
【0074】
<20%稲わら糖化活性の比較>
[実施例14]
前記実施例12、13および比較例14の結果から、Z酵素およびA酵素の両方がCellic(登録商標)CTec2よりも高い稲わら糖化率を示すことが分かったが、稲わら添加濃度が1質量%と低く、稲わらの完全分解率を測定するために酵素添加量が多かった。実用的には、高濃度の稲わらを含む溶液から高濃度の糖液を得ることが好ましく、また、酵素添加量を少なくし高い酵素活性を発揮させることが好ましい。
このため、粉砕稲わら濃度を20質量%、酵素添加量を10mg酵素/g稲わら、100mM(終濃度)酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)を含むZ酵素反応溶液を調製し、酵素反応を行った。
【0075】
前記Z酵素反応溶液を調製後、恒温反応器で45℃にて7日間、250spmで往復振盪した。その後、溶液を14000rpmで10分間遠心分離し、上清を100℃で5分間加熱処理してから0.2μm径のHPLC前処理フィルター(アドバンテック社製、25HP020AN)に通してHPLC分析用試料とした。
HPLCの溶離液として、アセトニトリルと蒸留水を3:1の容積比で混合したものを0.5mL/分で流し、これに前記HPLC分析用試料を注入し、RI検出器(日本分光製RI−2031 Plus)を用いてグルコース、キシロースおよび全遊離糖を測定した。その結果、前記試料中のグルコース濃度は48.34mg/mL、キシロース濃度は13.66mg/mL、全遊離糖濃度は65.71mg/mLであった。また、比較例13で得られた糖組成に基づいて完全糖化率に対する各糖への分解率を求めたところ、グルコース:97.9%、キシロース:63.2%、糖全体:92.5%であった。結果を
図10にグラフとして示す。図中の数字は、完全糖化率に対する各糖への分解率を示す。
【0076】
[比較例15]
Z酵素の代わりに、CTec2を用いたこと以外は実施例14と同様にして実験を行った。その結果、試料中のグルコース濃度は42.39mg/mL、キシロース濃度は8.89mg/mL、全遊離糖濃度は55.00mg/mLであった。また、完全糖化率に対する各糖への分解率は、グルコース:85.8%、キシロース:41.2%、糖全体:77.5%であった。結果を
図10に示す。
【0077】
実施例14および比較例15の結果から、本発明者らが見いだしたZ酵素は、20質量%という高い基質濃度、10mg酵素/g稲わらの酵素添加量でも高い稲わら糖化率を維持しており、最新市販酵素CTec2よりも高い糖化率を示すことが明らかである。
【0078】
<粗粉砕稲わらの糖化活性測定>
[実施例15]
長野県産稲わら(有限会社宮原商店、長野市)をハサミで5cm程度にカットしてから家庭用ミキサー(パナソニック製MJ−M3)にて30秒程度粉砕し、粗粉砕稲わらを調製した。粗粉砕稲わら1gを50mL遠心チューブに入れ、これにZ酵素5mg、1M酢酸緩衝液(pH5.0)1mLを入れて、脱イオン水で10mLにメスアップして密栓した。このチューブを振盪培養器(タイテック製BR−43FL)に直立にセットし、300rpmで回転振盪して45℃にて7日間反応させた。その後、反応液を8000rpmで10分間遠心分離し、上清を100℃で5分間加熱処理してから0.2μm径のHPLC前処理フィルター(アドバンテック社製、25HP020AN)に通してHPLC分析用試料とした。
【0079】
HPLCの溶離液として、アセトニトリルと蒸留水を3:1の容積比で混合したものを0.5mL/分で流し、これに前記HPLC分析用試料を注入し、RI検出器(日本分光製RI−2031 Plus)を用いてグルコース、キシロースおよび全遊離糖を測定した。この測定結果と比較例13で得られた糖組成に基づいて完全糖化率に対する各糖への分解率を求めたところ、グルコース:75.13%、キシロース:36.28%、遊離糖全体:64.40%であった。結果を
図11にグラフとして示す。なお、カラムは昭和電工製Asahipak NH2P−50 4E 250×4.6mmを使用し、カラム温度は26℃とした。
【0080】
[比較例16]
Z酵素の代わりに、CTec2を用いたこと以外は実施例15と同様にして実験を行った。その結果、各糖への分解率は、グルコース:52.34%、キシロース:37.93%、遊離糖全体:46.61%であった。結果を
図11に示す。
【0081】
[比較例17]
Z酵素の代わりに、単一菌株由来酵素の市販製品で、最も強いバイオマス糖化活性を持っているとされるアクレモニウムセルラーゼ(明治製菓製)を用いたこと以外は実施例15と同様にして実験を行った。その結果、各糖への分解率は、グルコース:48.41%、キシロース:11.22%、遊離糖全体:37.33%であった。結果を
図11に示す。
【0082】
実施例15、比較例16、17の結果から、本発明のZ酵素が、現在市販されている酵素の中でも高いセルラーゼ活性を持つとされるCellic(登録商標)CTec2や高いバイオマス糖化活性を持つアクレモニウムセルラーゼと比べても、ミキサー処理しただけの粗粉砕稲わらを、化学的な前処理をすることなく64.4%という高い分解率で糖化できることが示された。
従来、稲わら等のバイオマスを糖化する際には、酵素による糖化に先立ち酸やアルカリあるいは高温高圧の水による前処理が必要とされてきた。アルカリ法や高温高圧の水を用いる方法による前処理では黒液が発生し、別途黒液等の廃液処理が必要であるが、本発明のZ酵素は粗粉砕稲わらを高い分解率で直接糖化できるため、黒液等の廃液処理を必要とせず、バイオマス糖化の実用化に当たり非常に有利である。
【0083】
<アンモニア処理わらの糖化活性比較>
[実施例16]
(アンモニア処理わらの調製)
実施例15に記載の手順で調製した粗粉砕稲わらに28%アンモニア水を稲わら重量の2.5倍量加え、それを60℃にて3時間振盪反応器で振盪した。その後、粉砕稲わらを乾燥し、製粉機(マルマス機械製、商品名:マルマスホーミル)でさらに粉砕して、アンモニア処理わらとした。
【0084】
(アンモニア処理わらの酵素処理)
アンモニア処理わら260mg、1M酢酸緩衝液(pH5.0)100μLおよびZ酵素2.6mgにイオン交換水を添加して全量1mLの酵素反応液を調製し、この反応液をマイクロチューブ(ザルスタット社製、72.694.007)に入れた。マイクロチューブを振盪培養器(タイテック社製、BR−43FL)に横向きにセットし、45℃にて7日間、300spmで往復振盪して、酵素反応させた。
その後、酵素反応液を14000rpmで10分間遠心分離し、上清を100℃で5分間加熱処理してから0.2μm径のHPLC前処理フィルター(アドバンテック社製、25HP020AN)に通してHPLC分析用試料とした。
【0085】
(反応液のHPLC分析)
HPLCの溶離液として、アセトニトリルと蒸留水を3:1の容積比で混合したものを0.5mL/分で流し、これに前記HPLC分析用試料を注入し、RI検出器(日本分光製RI−2031 Plus)を用いてキシロースとキシロビオースを測定した。その結果、酵素反応液中のキシロースの濃度は34.08mg/mL、キシロビオースの濃度は8.10mg/mLであった。別に行った組成成分分析では、アンモニア処理わらを完全に分解すると、その重量のうち20%がキシロースとなったことから、本実施例で使用したアンモニウム処理わら260mgを完全に糖化したときのキシロースの理論値は52mgである。この値を元に、酵素反応液におけるキシロースとキシロビオースへの分解率を算出した。分解率を
図12のグラフ中に示す。キシロースとキシロビオースを合わせると生成率は理論値の81.1%であった。なお、カラムはアジレントテクノロジー社製PL Hi−Plex Pb 300×7.7mmを使用し、カラム温度は26℃とした。
【0086】
[比較例18]
Z酵素の代わりに、CTec2を用いたこと以外は実施例16と同様にして実験を行った。その結果、酵素反応液中のキシロースの濃度は32.43mg/mL、キシロビオースの濃度は9.47mg/mL、キシロースとキシロビオースを合わせると生成率は理論値の80.6%であった。結果を
図12に示す。
【0087】
[比較例19]
Z酵素の代わりに、単一菌株由来酵素の市販製品で、最も強いバイオマス糖化活性を持っているとされるアクレモニウムセルラーゼ(明治製菓製)を用いたこと以外は実施例16と同様にして実験を行った。その結果、酵素反応液中のキシロースの濃度は16.23mg/mL、キシロビオースの濃度は15.70mg/mL、キシロースとキシロビオースを合わせると生成率は理論値の61.4%であった。結果を
図12に示す。
【0088】
実施例16および比較例18、19の結果から、本発明のZ酵素は単一菌株由来酵素でありながら、複数種の酵素を組み合わせた複合酵素製剤であるCellic(登録商標)CTec2とほぼ互角の糖化率を示した。また、単一菌(アクレモニウム・セルロリティカス;Acremonium cellulolyticus)由来のアクレモニウムセルラーゼ(明治製菓製)を遙かにしのぐ糖化率を示した。アクレモニウムセルラーゼは、単一菌株由来酵素としては最も優れたセルラーゼ活性を持つといわれているが、本発明のZ酵素はそれに勝っているため、単一菌株由来酵素で最強であると考えられる。さらに、本発明のZ酵素は、上記CTec2やアクレモニウムセルラーゼと比較して、分解中間物であるキロビオースが残りにくく、単糖であるキシロースに効率よく分解できることが示された。
【0089】
<Z酵素とアクレモニウムセルラーゼとの比較>
[実施例17]
実施例16の(アンモニア処理わらの調製)の手順にてアンモニア処理わらを得、これに脱イオン水を加えて9000rpmで5分間遠心分離した。上清を捨ててから再度脱イオン水を加えて洗浄し、4000rpmで15分間遠心分離して沈殿を得、これを乾燥して洗浄微粉砕稲わらを得た。
【0090】
上記表6の組成の基質液を調製し、これをマイクロプレートに450μL/ウェル分注した。このプレートをプレートシェイカーにセットし30℃に予備加熱した後、Z酵素濃度が20mg/mLのZ酵素液を1ウェルあたり50μL加え、850rpmで回転振盪して2時間酵素反応させた。その後に1ウェルあたり25μLの1M NaOHを加えて撹拌し、酵素反応を止めた。次いで、マイクロプレートをマイクロプレート遠心機(クボタ製、PlateSpinII)にて1500gで10分間、室温にて遠心分離し、上清を回収し、これにアセトニトリルを加えて2倍に希釈してからフィルタープレート濾過(3μmガラスフィルター/0.2μmフィルター)したサンプルをHPLC分析用試料とした。
【0091】
上記HPLC分析用試料について、実施例15と同様にしてHPLCで試料中のグルコース濃度、キシロース濃度およびアラビノース濃度を求めた。結果を
図13に示す。
【0092】
[実施例18〜22、比較例20]
酵素反応液中の全酵素濃度を2mg/mLとしたまま、Z酵素濃度とアクレモニウムセルラーゼ(明治製菓製)濃度を表7に記載の濃度としたこと以外は、実施例17と同様にして酵素反応を行い、試料中のグルコース濃度、キシロース濃度およびアラビノース濃度を求めた。結果を
図13に示す。
【0093】
アクレモニウムセルラーゼによる遊離糖濃度の合計が7mg/mLであるのに対して、本発明のZ酵素は9mg/mLと多く、本発明のZ酵素が反応開始から2時間という短時間で草本系バイオマスを単糖に分解する能力に優れていることが示された。Z酵素は特にキシロース、アラビノースへの分解が迅速である。また、Z酵素とアクレモニウムセルラーゼを混合して用いることにより、Z酵素やアクレモニウムセルラーゼをそれぞれ単独で用いた場合よりも、グルコースへの分解が迅速であることが示された。
【0094】
[実施例23]
酵素反応時間を6日間とし、遠心分離後に得られた上清を水で3倍に希釈した後、さらにアセトニトリルを加えて2倍に希釈(最終的に6倍希釈)したこと以外は実施例17と同様にして酵素反応を行い、試料中のグルコース濃度、キシロース濃度およびアラビノース濃度を求めた。結果を
図14に示す。
【0095】
[実施例24〜28、比較例21]
酵素反応液中の酵素濃度を2mg/mLとしたまま、Z酵素濃度とアクレモニウムセルラーゼ(明治製菓製)濃度を表7に記載の濃度としたこと以外は、実施例23と同様にして酵素反応を行い、試料中のグルコース濃度、キシロース濃度およびアラビノース濃度を求めた。結果を
図14に示す。
【0096】
本発明のZ酵素による遊離糖濃度の合計は52mg/mLで、アクレモニウムセルラーゼの48mg/mLより糖化率が高いことが示された。アクレモニウムセルラーゼと比べて、Z酵素は特にキシロースへの糖化力が優れている。また、Z酵素とアクレモニウムセルラーゼを混合して用いることにより、Z酵素やアクレモニウムセルラーゼをそれぞれ単独で用いた場合よりも、稲わらの分解率を向上し得ることが示された。
【0097】
<ヘミセルラーゼ活性の測定>
[実施例29]
A酵素の代わりにZ酵素を用い、反応温度を30℃としたこと以外は実施例6と同様にして、Z酵素のキシラナーゼ活性を求めた。また、A酵素の代わりにZ酵素を用い、反応温度を30℃とし、PNPGの代わりにp−ニトロフェニル−β−D−キシロピラノシド(PNPX)を用いたこと以外は実施例7と同様にして、Z酵素のキシロシダーゼ活性を求めた。その結果、Z酵素のキシラナーゼ活性は20.3U/mg、キシロシダーゼ活性は56.1U/mgであった。
【0098】
[比較例22]
Z酵素の代わりにアクレモニウムセルラーゼ(明治製菓製)を用いて実施例29と同様の実験を行い、酵素活性を求めたところ、アクレモニウムセルラーゼのキシラナーゼ活性は8.7U/mg、キシロシダーゼ活性は2.2U/mgであった。
【0099】
[比較例23]
Z酵素の代わりにCTec2を用いて実施例29と同様の実験を行い、酵素活性を求めたところ、CTec2のキシラナーゼ活性は8.2U/mg、キシロシダーゼ活性は33.0U/mgであった。
【0100】
実施例29および比較例22、23の結果から、本発明のZ酵素は、アクレモニウムセルラーゼと比較してキシラナーゼ活性は2.3倍、キシロシダーゼ活性は25.5倍と優れた酵素活性を示した。
また、本発明のZ酵素はCTec2に対しても、キシラナーゼ活性、キシロシダーゼ活性のいずれもが優れていた。
【0101】
<酵素活性の濃度依存性の確認>
[実施例30]
粉砕稲わら1gあたりZ酵素を10mg含む、表8の組成の反応溶液を調製し、45℃にて4日間900rpmで撹拌した。その後、溶液を14000rpmで10分間遠心分離し、上清を100℃で5分間加熱処理してから0.2μm径のHPLC前処理フィルター(アドバンテック社製、25HP020AN)に通してHPLC分析用試料とした。
【0102】
HPLCの溶離液として、アセトニトリルと蒸留水を3:1の容積比で混合したものを0.5mL/分で流し、これに前記HPLC分析用試料を注入し、RI検出器(日本分光製RI−2031 Plus)を用いてグルコース、キシロースおよび全遊離糖を測定した。比較例13で得られた遊離糖の量に基づいて完全糖化率に対する分解率を求めたところ、63.0%であった。また、Z酵素を5mg、2.5mgとして同様の測定を行った。結果を
図15に黒菱形(◆)で示す。
【0103】
[比較例24〜26、実施例31]
Z酵素の代わりに、それぞれCTec(比較例24)、CTec2(比較例25)、GC220(ジェネンコア社製セルラーゼ;比較例26)またはZ酵素とCTec2とをタンパク質量として1:1の割合で混合したもの;実施例31)を用いたこと以外は実施例30と同様にして測定を行った。
図15に、CTecの結果を黒四角(■)、CTec2の結果を黒三角(▲)、GC220の結果を黒丸(●)、Z酵素:CTec2=1:1の結果を(×)で示す。
【0104】
これらの結果から、本発明のZ酵素が、市販のセルラーゼであるCTec、CTec2およびGC220より高い稲わら糖化率を示すこと、並びに、希釈をした場合でも、市販のセルラーゼよりも高い酵素活性を維持することが明らかである。また、10mg酵素/g稲わらの際の糖化率を100%としたときの、2.5mg酵素/g稲わらの糖化率は、CTec2が約74%であるのに対し、本発明のZ酵素は約86%であり、濃度希釈による酵素活性の低下が少なかった。特に、酵素濃度が10mg/mLとなるようにZ酵素とCTec2を1:1の割合で混合して使用した混合製剤の糖化率は53.3%であり、CTec2のみを用いた場合(38.8%)の1.38倍の糖化率を示した。
セルロース系バイオマスから1リットルのバイオエタノールを製造するときの酵素費用は約25円とされており、高額な酵素費用がバイオエタノール製造の障壁となっているが、本発明のZ酵素は低濃度であっても従来市販されているセルラーゼよりも高い酵素活性を示すことから、バイオエタノールの製造コスト低減に極めて有効である。
【0105】
<粉砕小麦わらに対する糖化活性の測定>
[比較例27]
粉砕稲わらの代わりに、粉砕小麦わらを用いたこと以外は比較例13と同様にして、粉砕小麦わらを硫酸で完全分解したときの、遊離糖の量と糖組成を測定した。
【0106】
[実施例32]
粉砕稲わらの代わりに、粉砕小麦わらを用いたこと以外は実施例30と同様にして、Z酵素を粉砕小麦わらに作用させたときに発生する遊離糖の量を測定した。この結果、遊離糖の濃度は14.8mg/Lであった。また、比較例27で得られた遊離糖の測定値に基づいて、完全糖化率に対する分解率を求めたところ69.3%であった。また、Z酵素を5mg、2.5mgとして同様の測定を行った。結果を
図16に黒菱形(◆)で示す。
【0107】
[比較例28〜30、実施例33]
Z酵素の代わりに、それぞれCTec(比較例28)、CTec2(比較例29)、GC220(比較例30)またはZ酵素とCTec2とをタンパク質量として1:1の割合で混合したもの(実施例33)を用いたこと以外は実施例32と同様にして測定を行った。
図16に、CTecの結果を黒四角(■)、CTec2の結果を黒三角(▲)、GC220の結果を黒丸(●)、Z酵素:CTec2=1:1の結果を(×)で示す。
【0108】
これらの結果から、本発明のZ酵素が、稲わらだけでなく小麦わらに対しても、市販のセルラーゼであるCTec、CTec2およびGC220より高い糖化活性を持つことが明らかである。本発明のZ酵素は希釈をした場合でも、同様に市販のセルラーゼよりも高い糖化活性を示した。また、酵素濃度が10mg/mLとなるようにZ酵素とCTec2を1:1の割合で混合して使用した場合、完全糖化率に対する分解率は75.4%であり、Z酵素の約1.1倍、CTec2の約1.3倍であった。
本発明のZ酵素は、稲わらのみならず、全世界では稲わらよりも賦存量の多い小麦わらに対しても優れた糖化酵素活性を有することから、バイオ燃料の製造に極めて有用である。
【0109】
<粉砕葦に対する糖化活性の測定>
[比較例31]
粉砕稲わらの代わりに、粉砕葦を用いたこと以外は比較例13と同様にして、粉砕葦を硫酸で完全分解したときの、遊離糖の量と糖組成を測定した。
【0110】
[実施例34]
粉砕稲わらの代わりに、粉砕葦を用いたこと以外は実施例30と同様にして、粉砕葦1gに対して10mgのZ酵素を作用させたときに発生する遊離糖(グルコース、キシロース、アラビノースおよびセロビオース)の量を測定した。結果を
図17に示す。また、比較例31で得られた遊離糖の測定値に基づいて、完全糖化率に対する分解率を求めたところ、特にアラビノースへの変換率は24.7%と高い値であった。
【0111】
[比較例32〜34、実施例35]
Z酵素の代わりに、それぞれCTec(比較例32)、CTec2(比較例33)、GC220(比較例34)またはZ酵素とCTec2とをタンパク質量として1:1の割合で混合したもの(実施例35)を用いたこと以外は実施例34と同様にして測定を行った。結果を
図17に示す。
【0112】
これらの結果から、本発明のZ酵素が、市販のセルラーゼと同程度の粉砕葦に対する糖化活性を持つことが明らかとなった。市販のセルラーゼがアラビノースへの糖化酵素活性を全く持たないのに対し、Z酵素はアラビノースへの高い糖化酵素活性を示した。アラビノースへの変換率は、Z酵素とCTec2を1:1の割合で混合して用いた実施例35でも21.0%と高いことから、バイオ燃料製造用の複合酵素群の一成分としても非常に有用である。
【0113】
<粉砕イネ籾殻に対する糖化活性の測定>
[実施例36]
粉砕稲わらの代わりに、粉砕イネ籾殻を用いたこと以外は実施例30と同様にして、粉砕イネ籾殻1gに対して10mgのZ酵素を作用させたときに発生する遊離糖(グルコース、キシロース、アラビノースおよびセロビオース)の量を測定した。結果を
図18に示す。
【0114】
[比較例35〜37、実施例37]
Z酵素の代わりに、それぞれCTec(比較例35)、CTec2(比較例36)、GC220(比較例37)またはZ酵素とCTec2とをタンパク質量として1:1の割合で混合したもの;実施例37)を用いたこと以外は実施例36と同様にして測定を行った。結果を
図18に示す。
【0115】
これらの結果から、本発明のZ酵素が粉砕イネ籾殻に対し市販のセルラーゼと同程度の糖化活性を持ち、イネ籾殻からバイオ燃料を製造するにあたっても非常に有用な糖化酵素であることが明らかとなった。