特許第6202724号(P6202724)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱マテリアルテクノ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6202724-缶搬送装置 図000002
  • 特許6202724-缶搬送装置 図000003
  • 特許6202724-缶搬送装置 図000004
  • 特許6202724-缶搬送装置 図000005
  • 特許6202724-缶搬送装置 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202724
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】缶搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 47/84 20060101AFI20170914BHJP
【FI】
   B65G47/84 C
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-99168(P2013-99168)
(22)【出願日】2013年5月9日
(65)【公開番号】特開2014-218340(P2014-218340A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2016年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】390004879
【氏名又は名称】三菱マテリアルテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100129403
【弁理士】
【氏名又は名称】増井 裕士
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(72)【発明者】
【氏名】松尾 昭二
(72)【発明者】
【氏名】荻原 将
(72)【発明者】
【氏名】清田 伸一
【審査官】 岡崎 克彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−001349(JP,A)
【文献】 特開昭55−022372(JP,A)
【文献】 特開平04−201833(JP,A)
【文献】 特開2012−254831(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 47/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
間欠的に回転される複数のターレット間で被搬送物の受け渡しを行う缶搬送装置であって、
前記複数のターレットと、
前記ターレット毎に設けられ、連続回転させる入力軸部、前記ターレットに一体に取り付けられる出力軸部、及び、前記入力軸部の連続回転を前記出力軸部の間欠回転に変換する回転運動変換機構、を有する複数の回転運動変換部と、
前記入力軸部を回転駆動する駆動源と、
前記駆動源の駆動力を複数の前記入力軸部に伝達する回転伝達機構と、を備え、
前記回転伝達機構は、
互いに隣接配列される複数のターレットの入力軸部の間に巻回される複数の伝達用タイミングベルトを備え、前記複数の伝達用タイミングベルトによって前記駆動源の駆動力を隣接配列されたターレットの入力軸部の間で伝達することを特徴とする缶搬送装置。
【請求項2】
前記伝達用タイミングベルトのテンションを調整するテンション調整機構を備えることを特徴とする請求項1に記載の缶搬送装置。
【請求項3】
複数の前記回転運動変換部の相対的な位置を調整する位置調整機構を備えることを特徴とする請求項1から請求項1又は2に記載の缶搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状の缶等の被搬送物を搬送する缶搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲料缶等の製造工程において使用する缶(缶胴)の塗装装置や検査装置等の処理装置では、缶を搬送する搬送装置として、例えば特許文献1のように、駆動装置(駆動源)によって一定の角度ずつ間欠的に回転することで缶を周方向に搬送する複数のターレットが採用されている。複数のターレットは、互いの間で缶の受け渡しを行うため、互いの回転が同期させられている。
特許文献1には、モータの駆動力によって連続回転駆動される伝達軸と、各ターレットに取り付けられた複数の従動軸との各間に、伝達軸の連続回転運動を従動軸の間欠回転運動に変換する複数の変換機構を設けた搬送装置が開示されている。この構成では、複数のターレットの高速間欠回転が可能であり、近年要求が高まっている缶の処理装置の処理能力向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−1349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のように、複数の変換機構により複数の従動軸を単一の伝達軸に連結させる構造では、伝達軸に対する複数の従動軸との相対的な配置に制限があるため、複数のターレットのレイアウトに制約が生じてしまう、という問題がある。
【0005】
また、複数の変換機構により単一の伝達軸に対して複数の従動軸を連結させる構造は複雑であり、特に、複数のターレットの相対的な回転位置を一致させる(適切に設定する)ためには、変換機構を複数のターレットのレイアウト等に合わせて高精度に製造する必要がある。また、複数の従動軸を変換機構によって伝達軸に対して高精度に組み付ける必要があるため、搬送装置が高価となる、という問題もある。
【0006】
さらに、特許文献1の構造では、一部部品(例えば一つの従動軸)を交換する場合でも、伝達軸、全ての従動軸及び変換機構を一括して交換する必要があるため、メンテナンスが面倒であり、また、メンテナンス費用も高くなる、という問題がある。
【0007】
なお、特許文献1に記載の搬送装置において、複数のターレットのレイアウト自由度を向上させるために、例えば、間欠回転する従動軸とターレットとを、ギヤやタイミングベルトにより接続することも考えられる。
【0008】
しかしながら、従動軸とターレットとをギヤで接続した場合、間欠回転に基づくギヤのバックラッシュによって複数のターレットの相対的な回転位置がずれる虞がある。また、ギヤの破面に繰り返し負荷(衝撃)が加わるため、耐久性に限界がある、という問題もある。
また、従動軸とターレットとをタイミングベルトで接続した場合でも、タイミングベルトに繰り返し負荷が加わることで、タイミングベルトが伸び易くなるため、複数のターレットの相対的な回転位置がずれる、という問題がある。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みたものであって、複数のターレットのレイアウト自由度を向上できると共に、安価に製造及びメンテナンスすることが可能な缶搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題を解決するために、本発明の缶搬送装置は、間欠的に回転される複数のターレット間で被搬送物の受け渡しを行う缶搬送装置であって、前記複数のターレットと、前記ターレット毎に設けられ、連続回転させる入力軸部、前記ターレットに一体に取り付けられる出力軸部、及び、前記入力軸部の連続回転を前記出力軸部の間欠回転に変換する回転運動変換機構、を有する複数の回転運動変換部と、前記入力軸部を回転駆動する駆動源と、前記駆動源の駆動力を複数の前記入力軸部に伝達する回転伝達機構と、を備え、前記回転伝達機構は、互いに隣接配列される複数のターレットの入力軸部の間に巻回される複数の伝達用タイミングベルトを備え、前記複数の伝達用タイミングベルトによって前記駆動源の駆動力を隣接配列されたターレットの入力軸部の間で伝達することを特徴とする。
【0011】
上記構成では、単一の駆動源により複数の入力軸部を連続回転させることができる。すなわち、複数の入力軸部の連続回転を同期させることができる。したがって、複数のターレットの間欠回転も同期させることができる。
また、回転伝達機構は複数の入力軸部を連続回転させるように駆動源の駆動力を伝達するため、間欠回転を伝達する場合と比較して、回転伝達機構にかかる負荷を低減することができる。
【0012】
そして、上記構成によれば、連続回転する入力軸部がターレット毎に設けられているため、ターレットと共に入力軸部(回転運動変換部)を自由に配置することが可能となる。したがって、複数のターレットのレイアウト自由度を向上できると共に、複数のターレットのレイアウト変更も容易に行うことができる。
【0013】
また、上記構成では、入力軸部及び出力軸部を一つずつ備える簡素な構造の回転運動変換部がターレット毎に設けられるため、市販品の回転運動変換部を用いて缶搬送装置を製造することが可能である。さらに、上記構成の缶搬送装置を製造する際には、複数のターレットの相対的な回転位置を適切に設定した後に、複数の入力軸部や駆動源を回転伝達機構により連結すればよいため、缶搬送装置の組み立てが容易となる。したがって、缶搬送装置を安価に製造することが可能である。
【0014】
さらに、上記構成の缶搬送装置によれば、その組み立てが容易であることから、仮に缶搬送装置の一部部品(例えば一つの回転運動変換部)が故障しても、該当する故障部品のみを交換するだけでよい。したがって、缶搬送装置のメンテナンスが容易となり、また、メンテナンス費用も低く抑えることができる。
【0016】
上記構成によれば、駆動源の駆動力が各入力軸部に直接伝達される場合と比較して、複数の入力軸部の相対的な配置をさらに容易かつ自由に設定することが可能となる。すなわち、複数のターレットのレイアウト自由度をさらに向上でき、また、複数のターレットのレイアウト変更もさらに容易に行うことができる。
【0018】
上記構成によれば、伝達用タイミングベルトの長さを調整するだけで、複数の入力軸部の相対的な配置を自由かつ容易に設定することが可能となる。すなわち、回転伝達機構がギヤ等により構成される場合と比較して、複数のターレットの相対的な位置調整を容易に行うことができる。
【0019】
さらに、前記缶搬送装置は、前記伝達用タイミングベルトのテンションを調整するテンション調整機構を備えることが好ましい。
【0020】
上記構成によれば、テンション調整機構によって伝達用タイミングベルトに弛みが生じることを抑制して、複数のターレットの相対的な回転位置がずれることを確実に防止できる。
また、上記構成によれば、隣り合う入力軸部間の距離が変化しても、これら入力軸部に同一の伝達用タイミングベルトを容易に巻き回すことができる。したがって、複数のターレットの位置調整をさらに容易に行うことができる。
【0021】
また、前記缶搬送装置において、複数の前記回転運動変換部の相対的な位置を調整する位置調整機構を備えるとよい。
【0022】
上記構成では、位置調整機構により複数の回転運動変換部の相対的な位置を調整できるため、缶搬送装置の組み立て及びメンテナンスをさらに容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、缶搬送装置において複数のターレットのレイアウト自由度を向上できると共に、缶搬送装置を安価に製造及びメンテナンスすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係る搬送装置を採用した缶の塗装装置を基台の表側から見た状態を示す概略平面図である。
図2図1の塗装装置に備える搬送装置を基台の裏側から見た状態を示す概略平面図である。
図3図2の搬送装置に備える回転運動変換部の一例を示す図である。
図4図2の搬送装置に備える位置調整機構及び位置決め機構を示しており、(a)は概略平面図、(b)は概略断面図である。
図5図2の搬送装置に備えるテンション調整機構を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図1〜4を参照して本発明の一実施形態について説明する。
図1に示すように、この実施形態に係る搬送装置1(缶搬送装置)は、例えば円筒状に形成された缶(被搬送物)Cの外面や内面に塗装処理を施す塗装装置2に採用したものであり、塗装装置2の一部を構成している。
【0026】
本実施形態の塗装装置2は、缶Cに塗装を施す塗装部3を複数備えている。すなわち、本実施形態の塗装装置2では、缶Cの塗装が複数回に分けて実施される。図示例では、二つの塗装部3が設けられている。第一塗装部3Aでは例えば缶Cの内面に塗装が施され、第二塗装部3Bでは例えば缶Cの缶底外面に塗装が施される。各塗装部3においては、例えば缶Cをその軸線周りに回転させながら、塗料噴霧手段(不図示)により缶Cの内面や缶底外面に塗料が吹き付けられる。
【0027】
搬送装置1は、図1,2に示すように、箱型の基台4に設けられており、基台4の外側(外面4a上)に配される複数のターレット5と、基台4の内側に配されるモータ(駆動源)6、複数の回転運動変換部7、及び、回転伝達機構8とを備えている。
【0028】
各ターレット5は、平面視で略円形状に形成され、その周縁部に缶Cを保持できるように構成されている。なお、図示例では、各ターレット5が、その周方向に間隔をあけて配列された複数の保持凹部51を備え、吸着手段(例えばエアーの吸引を利用した手段)により缶Cを保持凹部51内に保持するように構成されているが、これに限ることはない。
また、各ターレット5は、その軸線周り(図1における矢印方向)に間欠的に回転することで、缶Cをターレット5の周方向に搬送するように構成されている。複数のターレット5は、缶Cが全てのターレット5間で受け渡されて搬送されるように、複数のターレット5の回転軸線を互いに平行させた状態で配列されている。
【0029】
本実施形態の複数のターレット5には、供給側ターレット5A、第一塗装ターレット5B、乾燥用ターレット5C、第二塗装ターレット5D、及び、送出側ターレット5Eがある。
供給側ターレット5Aは、前段の工程(例えば缶Cの成形工程)からの缶Cを取り入れて、第一塗装ターレット5Bに受け渡すものである。第一塗装ターレット5Bは、供給側ターレット5Aから受け渡された缶Cを第一塗装部3Aまで搬送すると共に、缶内面塗装が終了した缶Cを第一塗装部3Aから乾燥用ターレット5Cに受け渡すものである。乾燥用ターレット5Cは、第一塗装ターレット5Bから受け渡された缶Cを搬送しながら、缶Cの内面に塗装された塗料を乾燥させ、第二塗装ターレット5Dに受け渡す役割を果たす。なお、図示例における乾燥用ターレット5Cは一つだけであるが、例えば複数であってもよい。第二塗装ターレット5Dは、乾燥用ターレット5Cから受け渡された缶Cを第二塗装部3Bまで搬送すると共に、缶底外面塗装が終了した缶Cを第二塗装部3Bから送出側ターレット5Eに受け渡すものである。送出側ターレット5Eは、第二塗装ターレット5Dから受け渡された缶Cを後段の工程(例えば缶Cの検査処理工程)に送出するものである。
【0030】
回転運動変換部7は、上述したターレット5毎に設けられている。すなわち、回転運動変換部7の数はターレット5の数に一致している。
各回転運動変換部7は、図2,3に示すように、モータ6の駆動力によって連続回転させる入力軸部12、ターレット5に一体に取り付けられる出力軸部13、及び、入力軸部12の連続回転を出力軸部13の間欠回転に変換する回転運動変換機構14を備える。
【0031】
本実施形態の回転運動変換部7では、入力軸部12及び出力軸部13の軸方向が互いに直交している。また、本実施形態の回転運動変換部7は、入力軸部12、出力軸部13及び回転運動変換機構14を収容するハウジング11を備えており、入力軸部12及び出力軸部13の一部(軸方向端部)がハウジング11の外側に突出している。
【0032】
回転運動変換機構14には、従来周知の機構(例えば特許文献1に記載の構造)を採用することが可能である。本実施形態の回転運動変換機構14は、例えば図3に示すように、入力軸部12に設けられたカム部15と、出力軸部13に設けられたカムフォロワ部16とを備える。
カム部15は、入力軸部12の回転方向に対して傾斜する傾斜部15Aと、傾斜部15Aの両端に連ねて回転方向に延びる平行部15Bとを有している。このカム部15は入力軸部12の回転方向に等間隔で複数配列されている。また、複数のカム部15は、入力軸部12の回転方向に隣り合う二つのカム部15の平行部15Bが、入力軸部12の軸方向に対向するように配されている。カムフォロワ部16は、入力軸部12の回転方向に隣り合う二つのカム部15の間に挟み込むことが可能なブロック状に形成されている。このカムフォロワ部16は、出力軸部13の周方向に等間隔で複数配列されている。
【0033】
以上のように構成される回転運動変換機構14において、カムフォロワ部16がカム部15の傾斜部15Aに案内される状態では、入力軸部12の回転に伴ってカム部15が入力軸部12の周方向に移動することにより、カムフォロワ部16が傾斜部15Aに沿って入力軸部12の軸方向に案内される。これにより、出力軸部13が回転する。一方、カムフォロワ部16がカム部15の平行部15Bに案内されている状態では、入力軸部12が回転してもカムフォロワ部16が入力軸部12の軸方向に移動しないため、出力軸部13の回転が停止する。すなわち、回転運動変換機構14では、入力軸部12の連続回転が出力軸部13の間欠回転に変換される。
【0034】
そして、各回転運動変換部7は、図1,2,4に示すように、対応するターレット5の配置に合わせて基台4に取り付けられる。
本実施形態では、図4に示すように、各回転運動変換部7が複数の取付ねじ31(雄ねじ部品)により基台4の内面4bに固定される。一方、基台4の壁部には、回転運動変換部7に螺着される取付ねじ31の軸部を挿通させる挿通孔32が形成されている。挿通孔32の内径寸法は、取付ねじ31の軸部の直径寸法よりも大きく、かつ、取付ねじ31の頭部の直径寸法よりも小さく設定されている。これにより、各回転運動変換部7を基台4に固定する際、基台4に対する各回転運動変換部7の位置を調整することが可能となる。
【0035】
具体的に説明すれば、取付ねじ31の頭部と回転運動変換部7とにより基台4の壁部を挟み込む力が弱い仮止めの状態では、回転運動変換部7を基台4の内面4bに沿って移動できる、すなわち、基台4に対する各回転運動変換部7の位置を調整できる。なお、各回転運動変換部7の位置調整の終了後には、回転運動変換部7が基台4に対して移動しないように取付ねじ31を締め付ければよい。
以上のことから、本実施形態の搬送装置1では、基台4に形成された挿通孔32及びこれに挿通させた上で各回転運動変換部7に螺着させる取付ねじ31によって、複数の回転運動変換部7の相対的な位置を調整する位置調整機構30が構成されている。
【0036】
また、本実施形態の搬送装置1は、上記位置調整機構30により位置調整された各回転運動変換部7が取付ねじ31の緩み等によって動くことを防ぐ位置決め機構40も備えている。
本実施形態では、位置決め機構40が、棒状の位置決めピン41と、基台4及び回転運動変換部7に形成された複数のピン孔42A,42Bとにより構成されている。基台4のピン孔42Aは、前述した挿通孔32と同様に基台4の壁部を貫通して形成されている。位置決めピン41は、基台4のピン孔42Aに挿通された上で、回転運動変換部7のピン孔42Bに挿入される。これにより、仮に取付ねじ31の緩み等が生じても、回転運動変換部7が基台4の内面4bに沿って移動することを防止できる。すなわち、各々の回転運動変換部7に取り付けられた複数のターレット5の相対的な配置にズレが生じることを防止できる。
なお、基台4及び回転運動変換部7のピン孔42A,42Bは、搬送装置1の製造段階において、位置調整機構30による各回転運動変換部7の位置調整の終了後に形成される。
【0037】
図2に示すように、モータ6は、複数の入力軸部12を回転駆動するものであり、基台4に固定される本体部17と、本体部17から延びて軸周りに連続回転する駆動軸18とを備えている。
【0038】
回転伝達機構8は、モータ6の駆動力を複数の入力軸部12に伝達するものである。本実施形態の回転伝達機構8は、駆動軸18の連続回転を一つの入力軸部12に伝達して連続回転させると共に、一つの入力軸部12の連続回転を他の入力軸部12に伝達する複数の伝達部21により構成されている。
【0039】
具体的に説明すれば、本実施形態の回転伝達機構8は、駆動軸18の連続回転を、第一塗装ターレット5Bに対応する第二回転運動変換部7Bの入力軸部12B(第二入力軸部12B)に伝達する第一伝達部21Aと、第二入力軸部12Bの連続回転を、供給側ターレット5Aに対応する第一回転運動変換部7Aの入力軸部12A(第一入力軸部12A)に伝達する第二伝達部21Bと、を備える。また、回転伝達機構8は、第二入力軸部12Bの連続回転を、乾燥用ターレット5Cに対応する第三回転運動変換部7Cの入力軸部12C(第三入力軸部12C)、及び、第二塗装ターレット5Dに対応する第四回転運動変換部7Dの入力軸部D12(第四入力軸部12D)に伝達する第三伝達部21Cと、第四入力軸部12Dの連続回転を、送出側ターレット5Eに対応する第五回転運動変換部7Eの入力軸部12E(第五入力軸部12E)に伝達する第四伝達部21Dと、を備える。
【0040】
第一伝達部21Aは、ギヤやタイミングベルト等を用いた任意の構成であってよい。本実施形態では、駆動軸18及び第二入力軸部12Bの軸方向が互いに直交しているため、第一伝達部21Aがべベルギヤによって構成されている。
第二〜第四伝達部21B〜21Dは、複数の入力軸部12の連続回転を同期させるように連続回転を伝達する構成であれば、ギヤやタイミングベルト等を用いた任意の構成であってよい。本実施形態では、第二〜第四伝達部21B〜21Dのそれぞれが、ハウジング11から突出する入力軸部12の端部に設けられた伝達用歯付プーリ23と、複数の伝達用歯付プーリ23に巻回された伝達用タイミングベルト24とを備えている。本実施形態では、いずれの伝達用歯付プーリ23も伝達用タイミングベルト24の内周面に当接するため、伝達用タイミングベルト24の内周面には伝達用歯付プーリ23に噛み合う歯が形成されている。
【0041】
伝達用歯付プーリ23は、第一、第三、第五入力軸部12A,12C,12Eの一端部、及び、第二、第四入力軸部12B,12Dの両端部にそれぞれ設けられている。
そして、第一入力軸部12Aの一端部及び第二入力軸部12Bの一端部に設けられた伝達用歯付プーリ23には、第一伝達用タイミングベルト24Bが巻回されている。また、第二入力軸部12Bの他端部、第三入力軸部12Cの一端部、及び、第四入力軸部12Dの一端部に設けられた伝達用歯付プーリ23には、第二伝達用タイミングベルト24Cが巻回されている。さらに、第四入力軸部12Dの他端部及び第五入力軸部12Eの一端部に設けられた伝達用歯付プーリ23には、第三伝達用タイミングベルト24Dが巻回されている。
【0042】
また、伝達用タイミングベルト24を採用した各伝達部21(第二〜第四伝達部21B〜21D)は、図2,5に示すように、伝達用タイミングベルト24のテンションを調整するテンション調整機構25を備えている。テンション調整機構25は、伝達用タイミングベルト24に当接する回転自在なテンションプーリ26と、テンションプーリ26を付勢して伝達用タイミングベルト24に張力を付与する付勢機構(不図示)とを備える。また、本実施形態では、テンション調整機構25が回転運動変換部7のハウジング11に取り付けられている。
なお、図示例では、第一、第三伝達用タイミングベルト24B,24D用のテンションプーリ26が、第一、第三伝達用タイミングベルト24B,24Dの内周面に当接し、第二伝達用タイミングベルト24C用のテンションプーリ26が、第二伝達用タイミングベルト24Cの外周面に当接しているが、これに限ることはない。
【0043】
次に、上記のように構成される搬送装置1の動作について説明する。
モータ6の駆動軸18が連続回転した際には、回転伝達機構8によりモータ6の駆動力が複数の入力軸部12に伝達されて、複数の入力軸部12が連続回転する。
本実施形態では、駆動軸18の連続回転が第一伝達部21Aによって第二入力軸部12Bに伝達され、第二入力軸部12Bが連続回転する。また、第二入力軸部12Bの連続回転がそれぞれ第二、第三伝達部21B,21Cによって第一、第三、第四入力軸部12A,12C,12Eに伝達され、第一、第三、第四入力軸部12A,12C,12Eが連続回転する。さらに、第四入力軸部12Dの連続回転が第四伝達部21Dによって第五入力軸部12Eに伝達され、第五入力軸部12Eが連続回転する。すなわち、末端の入力軸部12(第五入力軸部12E)は、基端の入力軸部12(第二入力軸部12B)の連続回転が中間の入力軸部12(第四入力軸部12D)を介して末端の入力軸部12に伝達されることで連続回転する。
【0044】
そして、本実施形態では、駆動軸18の連続回転が伝達用タイミングベルト24によって複数の入力軸部12に伝達されるため、複数の入力軸部12の連続回転は同期する。また、伝達用タイミングベルト24には、テンション調整機構25によって張力が付与されているため、複数の入力軸部12の同期回転を長時間維持することが可能である。
以上のように複数の入力軸部12が互いに同期して連続回転するため、各回転運動変換機構14によって入力軸部12の連続回転が出力軸部13の間欠回転に変換されても、複数の出力軸部13及びターレット5の間欠回転を互いに同期させることができる。したがって、互いに隣り合うターレット5間で缶Cの受け渡しを正しく行うことができる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態に係る搬送装置1では、回転伝達機構8が複数の入力軸部12を連続回転させるようにモータ6の駆動力を伝達するため、従来のように間欠回転を伝達する場合と比較して、回転伝達機構8にかかる負荷を低減することができる。
本実施形態の場合、伝達用タイミングベルト24にかかる負荷が低減されるため、伝達用タイミングベルト24が間欠回転を伝達する場合と比較して、伝達用タイミングベルト24が伸び難くなる。さらに、本実施形態では、単一の伝達用タイミングベルト24が互いに隣り合う入力軸部12に巻回されるため、単一の伝達用タイミングベルト24が全ての入力軸部12に巻回される場合よりも、その長さが短くなることでも、伝達用タイミングベルト24の伸びが抑制される。また、本実施形態では、テンション調整機構25によって伝達用タイミングベルト24に弛みが生じることを抑制できる。以上のことから、複数のターレット5の相対的な回転位置がずれることを確実に防止することができる。
【0046】
そして、本実施形態の搬送装置1によれば、連続回転する入力軸部12がターレット5毎に設けられているため、各ターレット5と共に各入力軸部12(回転運動変換部7)を自由に配置することが可能となる。したがって、複数のターレット5のレイアウト自由度を向上できると共に、複数のターレット5のレイアウト変更も容易に行うことができる。
特に、本実施形態の搬送装置1では、第二〜第四伝達部21B〜21Dによってモータ6の駆動力が互いに隣り合う入力軸部12の間で伝達されるため、モータ6の駆動力(駆動軸18の連続回転)が全ての入力軸部12に直接伝達される場合と比較して、複数の入力軸部12(回転運動変換部7)の相対的な配置をさらに容易かつ自由に設定することが可能となる。すなわち、複数のターレット5のレイアウト自由度をさらに向上でき、また、複数のターレット5のレイアウト変更も容易に行うことができる。
【0047】
また、本実施形態の搬送装置1によれば、入力軸部12及び出力軸部13を一つずつ備える簡素な構造の回転運動変換部7がターレット5毎に設けられるため、市販品の回転運動変換部7を用いて搬送装置1を製造することが可能である。さらに、搬送装置1を製造する際には、複数のターレット5の相対的な回転位置を適切に設定した後に、複数の入力軸部12やモータ6を回転伝達機構8により連結すればよいため、搬送装置1の組み立てが容易となる。したがって、搬送装置1を安価に製造することが可能である。
【0048】
さらに、本実施形態の搬送装置1によれば、その組み立てが容易であることから、仮に搬送装置の一部部品(例えば一つの回転運動変換部7、伝達用タイミングベルト24)が故障しても、該当する故障部品のみを交換することが可能となる。したがって、搬送装置のメンテナンスが容易となり、また、メンテナンス費用も低く抑えることができる。
【0049】
また、本実施形態の搬送装置1では、第二〜第四伝達部21B〜21Dが伝達用タイミングベルト24によって構成されるため、伝達用タイミングベルト24の長さを調整するだけで、複数の入力軸部12の相対的な配置を自由かつ容易に設定することが可能となる。すなわち、第二〜第四伝達部21B〜21Dがギヤ等によって構成される場合と比較して、複数のターレット5の相対的な位置調整を容易に行うことができる。
【0050】
さらに、搬送装置1が伝達用タイミングベルト24のテンションを調整するテンション調整機構25を備えることで、隣り合う入力軸部12間の距離が変化しても、これら入力軸部12に同一の伝達用タイミングベルト24を容易に巻き回すことができる。したがって、複数のターレット5の位置調整をさらに容易に行うことができる。
【0051】
また、本実施形態では、テンション調整機構25が回転運動変換部7に取り付けられていることで、複数のターレット5の相対的な配置を調整する際に、テンション調整機構25を回転運動変換部7と一体に移動させることができるため、複数のターレット5の位置調整をさらに容易に行うことが可能となる。
【0052】
さらに、本実施形態の搬送装置1は位置調整機構30を備えるため、搬送装置1を製造する際、あるいは、搬送装置1の一部部品を交換する際には、位置調整機構30により各回転運動変換部7を基台4の内面4bに配した状態で各回転運動変換部7の位置調整を容易に行うことができる。
なお、各回転運動変換部7を基台4に取り付ける際には、例えば、位置調整機構30の取付ねじ31により各回転運動変換部7を基台4に仮止めすると共に、缶Cと同サイズの芯出し用治具を隣り合う二つのターレット5の受け渡し位置に配しておけばよい。本実施形態の搬送装置1では、同一の芯出し治具を隣り合う二つのターレット5の両方の保持凹部51内に保持させればよい。これにより、複数のターレット5の相対的な位置を容易かつ高精度に設定することが可能となる。
以上のことから、搬送装置1の組み立て及びメンテナンスをさらに容易に行うことができる。
【0053】
さらに、本実施形態の搬送装置1は、複数の回転運動変換部7の相対的な位置を固定する位置決め機構40を備えるため、特に搬送装置1のメンテナンス(部品交換)を行う際に、複数の回転運動変換部7及びターレット5の高い位置精度の取り付けを容易に行うことが可能となる。
具体的に説明すれば、搬送装置1の製造段階において、位置調整機構30により基台4に対して複数の回転運動変換部7を位置調整した後に、基台4及び複数の回転運動変換部7にピン孔42A,42Bが形成されるため、搬送装置1のメンテナンスにおいて回転運動変換部7を基台4に取り付ける際には、前述した芯出し用治具を用いることなく、位置決めピン41をピン孔42A,42Bに挿入するだけで、回転運動変換部7を容易かつ高精度に位置決めできる。したがって、搬送装置1のメンテナンス時には、複数のターレット5を高い精度で容易に位置決めできる。
【0054】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、ターレット5の数は上記実施形態のものに限らず、任意であってよい。例えば塗装用のターレット5は、塗装部3の数に合わせて一つあるいは三つ以上設けられてよい。なお、塗装用のターレット5が三つ以上設けられる場合には、上記実施形態の場合と同様に、隣り合う二つの塗装用のターレット5の間に乾燥用ターレット5Cが設けられることが好ましい。
【0055】
さらに、上記実施形態の第二〜第四伝達部21B〜21Dでは、単一の伝達用タイミングベルト24により、一つの入力軸部12の連続回転を一つあるいは二つの入力軸部12に伝達しているが、例えば一つの入力軸部12の連続回転を三つ以上の入力軸部12に伝達してもよい。
また、上記実施形態では、いずれの伝達用歯付プーリ23も伝達用タイミングベルト24の内周面に当接しているが、例えば、単一の伝達用タイミングベルト24を掛け回した複数(三つ以上)の伝達用歯付プーリ23のうち一部が、伝達用タイミングベルト24の外周面に当接してもよい。この場合には、伝達用タイミングベルト24として、内周面及び外周面の両方に歯が形成された両歯付タイミングベルトを採用すればよい。
【0056】
さらに、回転伝達機構8は、上記実施形態のように構成されることに限らず、例えば、駆動軸18の連続回転を各入力軸部12に直接伝達するように構成されてもよい。具体的には、駆動軸18と各入力軸部12とをギヤやタイミングベルト等の構成によりそれぞれ連結すればよい。
また、上記実施形態では、回転運動変換部7の入力軸部12及び出力軸部13の軸方向が互いに直交しているが、例えば互いに平行したり傾斜したりしてもよい。この場合、回転運動変換部7は、上記実施形態のものと異なる構造の回転運動変換機構14を備えていればよい。
【0057】
そして、本発明の搬送装置は、上記実施形態のような塗装装置2に限らず、缶Cの表面の検査処理を実施する検査装置や、缶Cの塗装処理及び検査処理の両方を実施する処理装置に採用することも可能である。また、本発明は、缶用の搬送装置に限らず、間欠回転する複数のターレット5間で被搬送物の受け渡しを行うように構成された被搬送物の搬送装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 搬送装置(缶搬送装置)
5 ターレット
6 モータ(駆動源)
7 回転運動変換部
8 回転伝達機構
12 入力軸部
13 出力軸部
14 回転運動変換機構
23 伝達用歯付プーリ
24 伝達用タイミングベルト
25 テンション調整機構
30 位置調整機構
C 缶(被搬送物)
図1
図2
図3
図4
図5