特許第6202728号(P6202728)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202728
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】地下部形成方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/34 20060101AFI20170914BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20170914BHJP
   E02D 29/045 20060101ALI20170914BHJP
   E21D 13/00 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   E02D27/34 B
   E04H9/02 331Z
   E02D29/04 Z
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-134175(P2013-134175)
(22)【出願日】2013年6月26日
(65)【公開番号】特開2015-10325(P2015-10325A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2016年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100126930
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】長澤 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】久世 尚之
(72)【発明者】
【氏名】國岡 潤
(72)【発明者】
【氏名】横並 努
【審査官】 苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−179161(JP,A)
【文献】 実開平05−077321(JP,U)
【文献】 特開2011−190656(JP,A)
【文献】 特開2009−102804(JP,A)
【文献】 特開2003−138782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/00〜 27/52
E02D 29/045〜 37/00
E04H 9/00〜 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
土留め壁の内側にPCa製の地下外壁を設置し、前記地下外壁の内側に間隔をあけて免震装置設置部を形成し、前記地下外壁と前記免震装置設置部との上部にわたってPCa製の床版を配置する地下部形成方法において、
前記地下外壁を前記土留め壁に隣り合う状態で配置し、前記地下外壁の上部を前記土留め壁の上部に支持する地下部形成方法。
【請求項2】
土留め壁の内側にPCa製の地下外壁を設置し、前記地下外壁の内側に間隔をあけて免震装置設置部を形成し、前記地下外壁と前記免震装置設置部との上部にわたってPCa製の床版を配置する地下部形成方法において、
前記床版は、一端側を前記免震装置設置部における側部型枠上に載置するとともに、他端側を前記地下外壁の上端部に載置する地下部形成方法。
【請求項3】
前記床版は、一端側を前記免震装置設置部と剛接合し、他端側を前記地下外壁上に張り出した犬走りとして形成する請求項1または2に記載の地下部形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、地下に形成した免震ピット(地下室)に免震装置を設置し、その免震装置の上方に免震建物を構築する際の地下部形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地下室を形成する場合、形成すべき地下室周囲の地盤中に土留め壁を構築し、その土留め壁の内側の地盤を所定の深さまで掘削して土壌を取り除き、土留め壁の内側に地下外壁を設置するのが一般的であり、その地下外壁としてPCa製(プレキャスト製)の地下外壁を設置する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、免震装置を設置する免震ピットにおいて、地下外壁の内側に間隔をあけて免震装置設置部を形成し、その地下外壁と免震装置設置部との上部にわたって床版を配置する方法も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−77321号公報(図1参照)
【特許文献2】特開2006−104883号公報(図5参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献2に記載の方法では、地下外壁と免震装置設置部との上部にわたって配置する床版が、現場打ちによる鉄筋コンクリート製であるため、床版を構築するに際して、コンクリートを養生するための期間が必要となるばかりか、床版用の型枠を組む必要がある。そして、その型枠を支持するための支保工を型枠の下方、つまり、地下外壁と免震装置設置部との間隔内に設置する必要があり、コンクリートの養生期間中、支保工が邪魔になって、地下外壁と免震装置設置部との間の空間を有効に利用することができないという問題があった。
【0005】
本発明は、このような従来の問題点に着目したもので、その目的は、地下外壁や床版を効率よく設置することができるとともに、例えば、地下外壁と免震装置設置部との間の空間を作業用の空間として有効に利用して、全体として施工効率の向上を図り得る地下部形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1発明による地下部形成方法は、
土留め壁の内側にPCa製の地下外壁を設置し、前記地下外壁の内側に間隔をあけて免震装置設置部を形成し、前記地下外壁と前記免震装置設置部との上部にわたってPCa製の床版を配置する地下部形成方法において、
前記地下外壁を前記土留め壁に隣り合う状態で配置し、前記地下外壁の上部を前記土留め壁の上部に支持するものである。
また、本発明の第2発明による地下部形成方法は、
土留め壁の内側にPCa製の地下外壁を設置し、前記地下外壁の内側に間隔をあけて免震装置設置部を形成し、前記地下外壁と前記免震装置設置部との上部にわたってPCa製の床版を配置する地下部形成方法において、
前記床版は、一端側を前記免震装置設置部における側部型枠上に載置するとともに、他端側を前記地下外壁の上端部に載置するものである。
【0007】
本発明によれば、土留め壁の内側に設置する地下外壁、および、地下外壁と免震装置設置部との上部にわたって配置する床版が、いずれもPCa製であるため、養生期間などが不要となり、これら地下外壁と床版を効率よく設置することができる。
特に、床版に関しては、PCa製にすることで、型枠を組む必要がなく、その型枠を支持するための支保工を地下外壁と免震装置設置部との間隔内に設置する必要もない。
したがって、例えば、地下外壁と免震装置設置部との間の空間を各種の作業用の空間として有効に利用することができ、全体として施工効率の向上を図ることができる。
さらに、本発明の第2発明によれば、床版の一端側を免震装置設置部における側部型枠上、つまり、施工に必要な側部型枠上に載置し、他端側を地下外壁の上端部に載置するので、床版を載置するための特別な専用の支持部材を必要とせず、その結果、材料コストの低減と設置作業コストの低減を図りながら、床版を所望の位置に配置することができる。
【0008】
【0009】
【0010】
本発明による地下部形成方法の更なる特徴構成は、前記床版は、一端側を前記免震装置設置部と剛接合し、他端側を前記地下外壁上に張り出した犬走りとして形成する点にある。
【0011】
上記特徴構成によれば、床版の一端側を免震装置設置部と剛接合するので、床版の一端側は免震装置設置部に対して強固に接合される。そして、床版の他端側を地下外壁上に張り出した犬走りとして形成するので、一連の施工工程の中で犬走りを確実に形成することができ、設置作業コストの更なる低減化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】地下部形成方法の工程を示す要部の縦断面図
図2】地下部形成方法の工程を示す要部の縦断面図
図3】地下部形成方法の工程を示す要部の縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明による地下部形成方法の実施形態を図面に基づいて説明する。
この地下部形成方法は、例えば、地下に多数の免震装置を設置し、その免震装置の上方に免震建物を構築する際の地下部形成方法に関し、まず、図1に示すように、免震装置1(図2図3参照)を設置する免震装置設置部2の周囲の地盤G中に土留め壁3を構築する。この土留め壁3は、例えば、SMW(ソイルセメント柱列壁)であるが、その他、鋼矢板などを打ち込んで構築するなど、種々の構成の土留め壁を採用することができる。
土留め壁3を構築した後、必要に応じて、土留め壁3の内側の地盤Gに現場打ちによる基礎杭4を打設し、その後、その地盤Gを所定の深さまで掘削して土壌を取り除く。
【0014】
その後、土留め壁3の内側に土留め壁3に沿って多数のPCa製(プレキャスト製)の地下外壁5を並べて設置する。この地下外壁5は、例えば、鉄筋コンクリート製で、その上部は前記土留め壁3の上面に位置決め用の接合金具3aを介してボルト接合により固定され、その下方からは後述する耐圧板7との連結用の鉄筋5aが突設されている。
地下外壁5は、雨水や地下水の免震ピット内への侵入を防ぐため、各地下外壁5の間にゴムや合成樹脂製のシール材(図示せず)を挟み込んだ状態で設置し、必要に応じて、土留め壁3と地下外壁5の間に裏込めコンクリート6を打設する。
その後、地下外壁5から突設の鉄筋5aを連結用の鉄筋として鉄筋コンクリート製の耐圧板7を構築すると同時に、地下外壁5の内側に間隔Sをあけて鉄筋コンクリート製の免震装置1用の下部基礎8を構築し、かつ、隣接する下部基礎8どうしを接続する基礎梁9を構築する。
なお、図示はしないが、地下外壁5と耐圧板7との間には、雨水や地下水の免震ピット内への侵入を防ぐため、ゴムや合成樹脂製の止水板を介在させるのが好ましい。
【0015】
その後、図2に示すように、下部基礎8上に免震装置1を設置して固定するとともに、その免震装置1の上に免震装置1用の上部基礎10(図3参照)の型枠を組み付ける。この上部基礎10用の型枠は、上部基礎10の一部となるPCa製の下部型枠(図示せず)と側部型枠11からなり、図示はしないが、下部型枠には上方に向けて多数の鉄筋が突設されている。
そのPCa製の下部型枠を下部基礎8上に設置した支保工12に支持させた状態で、上部基礎10用の鉄筋(図示せず)を配筋し、側部型枠11を組み付ける。
なお、支保工12は、パイプ材により枠状に構成され、そのパイプ材の一部12aが地下外壁5側へ延出されて、その延出パイプ12a上に足場用の板材などを載置できるように構成されている。
【0016】
上部基礎10用の型枠を組み付けた後、地下外壁5の内側に間隔Sをあけて形成される免震装置設置部2、具体的には、免震装置1とその免震装置1用の上下の基礎8、10などからなる免震装置設置部2において、その免震装置設置部2の上部に位置する上部基礎10用の側部型枠11のうち、地下外壁5側に位置する側部型枠11上と地下外壁5上とにわたって、例えば、鉄筋コンクリートからなるPCa製の床版13を配置する。つまり、PCa製の床版13の一端側を免震装置設置部2における側部型枠11上に載置し、他端側を地下外壁5上端部に載置する。
床版13の一端側には連結用の鉄筋13aが突設されていて、図3に示すように、コンクリートを打設して上部基礎10を構築した状態では、床版13から突設の鉄筋13aを連結用の鉄筋として、床版13の一端側が免震装置設置部2の上部基礎10と剛接合され、床版13の他端側は、地下外壁5上に載置されて、地下外壁5上に張り出した犬走り14として形成される。
そして、上部基礎10の上に免震建物(図示せず)用の柱15やPCa製の1階用の小梁16などを順次構築し、最終的に、免震建物を構築するのである。
【0017】
〔別実施形態〕
(1)先の実施形態では、床版13の一端側を免震装置設置部2における上部基礎10用の側部型枠11上に載置し、他端側を地下外壁5の上端部に載置した例を示したが、例えば、免震装置設置部2と地下外壁5との上部にそれぞれ床版13を載置するための専用の支持部材を設けて、その支持部材間にわたって床版13を載置することもできる。
更に、床版13の一端側、つまり、免震装置設置部2側の端部に関しては、例えば、上部基礎10をPCa製にして、そのPCa製上部基礎10の上に床版13の一端側を載置することも可能であり、必要な場合には、例えば、コンクリートの打設によって床版13の一端側とPCa製上部基礎10を剛接合することもできる。
【0018】
(2)先の実施形態では、床版13の他端側を地下外壁5上に張り出した犬走りとして形成した例を示したが、特に犬走りに限るものではなく、例えば、地下外壁5上に張り出した床版13上に花壇などを設置することもできる。
【符号の説明】
【0019】
1 免震装置
2 免震装置設置部
3 土留め壁
5 PCa製の地下外壁
11 側部型枠
13 PCa製の床版
14 犬走り
S 間隔
図1
図2
図3