特許第6202738号(P6202738)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202738
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】液体現像剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/12 20060101AFI20170914BHJP
   G03G 9/13 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   G03G9/12
   G03G9/12 321
【請求項の数】6
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2013-265915(P2013-265915)
(22)【出願日】2013年12月24日
(65)【公開番号】特開2014-142624(P2014-142624A)
(43)【公開日】2014年8月7日
【審査請求日】2016年9月14日
(31)【優先権主張番号】特願2012-286767(P2012-286767)
(32)【優先日】2012年12月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】山田 達也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 拡美
(72)【発明者】
【氏名】花田 洋子
【審査官】 福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−145535(JP,A)
【文献】 特開平01−299632(JP,A)
【文献】 特開昭54−037082(JP,A)
【文献】 特開平11−197485(JP,A)
【文献】 特開2002−294121(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/12−9/135
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルを含む樹脂及び顔料を含有するトナー粒子が絶縁性液体中に分散してなる液体現像剤の製造方法であって、
工程1:樹脂及び顔料を溶融混練し、粉砕してトナー粒子を得る工程、
工程2:工程1で得られたトナー粒子を塩基性分散剤の存在下で絶縁性液体中に分散させ、トナー粒子分散液を得る工程、及び
工程3:工程2で得られたトナー粒子分散液を湿式粉砕し、液体現像剤を得る工程
を含み、
前記塩基性分散剤が、ポリエチレンイミンと、12-ヒドロキシステアリン酸の自己縮合により得られるポリエステル(D)との反応により得られるアミド化合物であり、
ポリエチレンイミンの数平均分子量が1000以上2600以下であり、
ポリエステル(D)の数平均分子量が1000以上2500以下であり、
ポリエチレンイミンとポリエステル(D)とのモル比(ポリエチレンイミン/ポリエステル(D))が1/1〜1/5であり、
アミド化合物の重量平均分子量が2000以上7500以下である、
液体現像剤の製造方法。
【請求項2】
樹脂中のポリエステルが、酸価が3mgKOH/g以上100mgKOH/g以下であるポリエステル(R)を含有する、請求項1記載の液体現像剤の製造方法。
【請求項3】
塩基性分散剤の使用量が、トナー粒子100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下である、請求項1又は2記載の液体現像剤の製造方法。
【請求項4】
ポリエステル(R)の含有量が、樹脂中90質量%以上である、請求項2又は3記載の液体現像剤の製造方法。
【請求項5】
ポリエステル(R)の酸価が、8mgKOH/g以上20mgKOH/g以下である、請求項2〜4いずれか記載の液体現像剤の製造方法。
【請求項6】
ポリエステル(D)の酸価が、50mgKOH/g以上110mgKOH/g以下である、請求項1〜5いずれか記載の液体現像剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられる液体現像剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真用現像剤には、着色剤及び結着樹脂を含む材料からなるトナー成分を乾式状態で用いる乾式現像剤と、トナー成分が絶縁性の担体液中に分散した液体現像剤がある。
【0003】
液体現像剤は、トナー粒子の小粒径化が可能であることから画質の面で優れており、商業印刷用途に適している。また、近年、高速化への要求が高まっていることから、液体現像剤の低粘度化も求められている。つまり、小粒径、低粘度で安定に分散した液体現像剤が求められているが、通常は、分散剤を用いることにより、このような分散安定性を確保している。
【0004】
特許文献1には、固体を有機液体中に分散させる分散剤として、ポリ(低級アルキレンイミン)と、遊離のカルボン酸基を有するポリエステルとの反応により形成されたアミド又は塩よりなり、その中でそれぞれのポリ(低級アルキレンイミン)連鎖に最低2つのポリエステル連鎖が結合されている分散剤が開示されている。
【0005】
特許文献2には、絶縁性液体中にトナー粒子が分散しており、前記絶縁性液体が、第1の植物油と、第2の植物油と1価のアルコールとのエステル交換反応により生成される反応生成物とを含むことを特徴とする液体現像剤が、記録媒体へのトナー粒子の定着特性に優れることが開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、液体現像剤の電気抵抗やトナー粒子の帯電特性への悪影響を最小限に抑え、顔料の分散性とトナー粒子の分散安定性が改善された液体現像剤として、分散剤を用いて、湿式粉砕法により顔料内包着色樹脂粒子を絶縁性炭化水素系有機溶剤中に分散させてなる液体現像剤において、前記分散剤が、カルボジイミド化合物の分子内に、カルボジイミド基との反応を介してポリエステル側鎖を導入したポリエステル側鎖含有カルボジイミド系化合物であることを特徴とする液体現像剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭63−30057号公報
【特許文献2】特開2008−46596号公報
【特許文献3】国際公開2006/118201号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、トナー粒子の分散安定性が高い液体現像剤は、定着時にトナー粒子が凝集しにくく、トナー層を形成しにくいため、定着性が低下するという課題がある。従来の技術では、分散安定性、即ち保存安定性を確保しつつ、高い定着性を示す液体現像剤としては、いまだ不十分である。
【0009】
本発明は、トナー粒子の分散安定性と定着性に優れた液体現像剤の製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ポリエステルを含む樹脂及び顔料を含有するトナー粒子が絶縁性液体中に分散してなる液体現像剤の製造方法であって、
工程1:樹脂及び顔料を溶融混練し、粉砕してトナー粒子を得る工程、
工程2:工程1で得られたトナー粒子を塩基性分散剤の存在下で絶縁性液体中に分散させ、トナー粒子分散液を得る工程、及び
工程3:工程2で得られたトナー粒子分散液を湿式粉砕し、液体現像剤を得る工程
を含み、
前記塩基性分散剤が、ポリエチレンイミンと、12-ヒドロキシステアリン酸の自己縮合により得られるポリエステル(D)との反応により得られるアミド化合物であり、
ポリエチレンイミンの数平均分子量が1000以上2600以下であり、
ポリエステル(D)の数平均分子量が1000以上2500以下であり、
ポリエチレンイミンとポリエステル(D)とのモル比(ポリエチレンイミン/ポリエステル(D))が1/1〜1/5であり、
アミド化合物の重量平均分子量が2000以上7500以下である、
液体現像剤の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の方法により、トナー粒子の分散安定性と定着性に優れた液体現像剤が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、樹脂及び顔料を含有するトナー粒子が絶縁性液体中に分散した液体現像剤の製造方法において、ポリエステルを含有する樹脂を用い、トナー粒子を絶縁性液体中に分散させる際に、ポリエチレンイミンと、12-ヒドロキシステアリン酸の自己縮合により得られるポリエステル(D)との反応により得られるアミド化合物を用いる点に特徴を有しており、本発明の方法により、トナー粒子の分散安定性と定着性に優れた液体現像剤を得ることができる。
【0013】
このような効果を奏する理由は定かではないが、以下のように考えられる。
ポリエチレンイミンと12-ヒドロキシステアリン酸の自己縮合により得られるポリエステル(D)との反応により得られるアミド化合物は、ポリエステルを含有するトナー粒子に対し、絶縁性液体中ではポリエチレンイミン由来の成分がポリエステル吸着基となり、12-ヒドロキシステアリン酸の自己縮合により得られるポリエステルが分散基として作用すると考えられる。このとき、低分子量のポリエチレンイミンを用いることで、アミド化合物がトナー粒子の表面から浮き上がることなく吸着することができ、ポリエチレンイミンを介する粒子間の橋かけ凝集等が抑えられることにより、トナー粒子の分散安定性が向上する。また、12-ヒドロキシステアリン酸の自己縮合物を分散基とすることで、絶縁性液体中でトナー粒子の分散安定性の向上に寄与するとともに、適度な分子量を有することで、加熱による定着時にトナー粒子のポリエステルと相溶し、アミド化合物の分散剤としての機能が消失し、トナー粒子間の凝集を促進することにより高い定着性が得られると考えられる。
【0014】
本発明の液体現像剤の製造方法は、以下の工程1〜3を含むものである。
【0015】
[工程1]
工程1は樹脂及び顔料を溶融混練し、粉砕してトナー粒子を得る工程である。
【0016】
[樹脂]
本発明において用いる樹脂は、液体現像剤の定着性を向上させる観点、及び液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させる観点から、ポリエステルを含有する。ポリエステルの含有量は、樹脂中、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、実質的に100質量%がさらに好ましく、100質量%、即ち樹脂として、ポリエステルのみを用いることがさらに好ましいが、本願の効果が損なわれない範囲において、ポリエステル以外の他の樹脂が含有されていてもよい。ポリエステル以外の樹脂としては、例えば、ポリスチレン、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体等のスチレン又はスチレン置換体を含む単重合体又は共重合体であるスチレン系樹脂、エポキシ樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、ポリウレタン、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族又は脂環式炭化水素樹脂等が挙げられる。
【0017】
ポリエステルは、2価以上のアルコールからなるアルコール成分と2価以上のカルボン酸化合物からなるカルボン酸成分とを重縮合させて得られるものが好ましい。
【0018】
2価のアルコールとしては、炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜15のジオールや、式(I):
【0019】
【化1】
【0020】
(式中、RO及びORはオキシアルキレン基であり、Rはエチレン及び/又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の平均値は1〜16が好ましく、1〜8がより好ましく、1.5〜4がさらに好ましい)
で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。炭素数2〜20の2価のアルコールとして、具体的には、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。
【0021】
アルコール成分としては、液体現像剤の定着性を向上させる観点、及び液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、1,2-プロパンジオール及び式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が好ましく、式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物がより好ましい。式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量は、アルコール成分中、50モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましく、実質的に100モル%がさらに好ましく、100モル%がさらに好ましい。
【0022】
3価以上のアルコールとしては、炭素数3〜20、好ましくは炭素数3〜10の3価以上の多価アルコールが挙げられる。具体的には、ソルビトール、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、グリセロール、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0023】
2価のカルボン酸化合物としては、例えば、炭素数3〜30、好ましくは炭素数3〜20、より好ましくは炭素数3〜10のジカルボン酸、及びそれらの酸無水物、炭素数1〜3のアルキルエステル等の誘導体等が挙げられる。具体的には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸や、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸等の脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。
【0024】
3価以上のカルボン酸化合物としては、例えば、炭素数4〜30、好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数9〜10の3価以上の多価カルボン酸、及びそれらの酸無水物、炭素数1〜3のアルキルエステル等の誘導体等が挙げられる。具体的には、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸(ピロメリット酸)等が挙げられる。
【0025】
液体現像剤の定着性を向上させる観点から、カルボン酸成分としては、テレフタル酸、フマル酸、及び無水トリメリット酸が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。
【0026】
なお、アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸化合物が、ポリエステルの軟化点を調整する観点から、適宜含有されていてもよい。
【0027】
ポリエステルにおけるカルボン酸成分とアルコール成分との当量比(COOH基/OH基)は、ポリエステルの軟化点を調整する観点から、0.70〜1.10が好ましく、0.75〜1.00がより好ましい。
【0028】
ポリエステルは、例えば、アルコール成分とカルボン酸成分とを不活性ガス雰囲気中、必要に応じてエステル化触媒、エステル化助触媒、重合禁止剤等の存在下、180〜250℃程度の温度で重縮合させて製造することができる。
【0029】
エステル化触媒としては、酸化ジブチル錫、2-エチルヘキサン酸錫(II)等の錫化合物、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物等が挙げられ、エステル化助触媒としては、没食子酸等が挙げられる。また、エステル化触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、0.01〜1.5質量部が好ましく、0.1〜1.0質量部がより好ましい。エステル化助触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、0.001〜0.5質量部が好ましく、0.01〜0.1質量部がより好ましい。また、重合禁止剤としては、t-ブチルカテコール等が挙げられ、重合禁止剤の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、0.001〜0.5質量部が好ましく、0.01〜0.1質量部がより好ましい。
【0030】
本発明において、樹脂中のポリエステルは、特定の酸価を有するポリエステル(R)を含有していることが好ましい。ポリエステル(R)の含有量は、樹脂中、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、実質的に100質量%がさらに好ましく、100質量%、即ち樹脂として、ポリエステル(R)のみを用いることがさらに好ましい。
【0031】
ポリエステル(R)の酸価は、液体現像剤の定着性を向上させる観点、液体現像剤の粘度を低減する観点、及び液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、120mgKOH/g以下が好ましく、100mgKOH/g以下がより好ましく、80mgKOH/g以下がさらに好ましく、60mgKOH/g以下がさらに好ましく、40mgKOH/g以下がさらに好ましく、20mgKOH/g以下がさらに好ましい。また、同様の観点から、1mgKOH/g以上が好ましく、3mgKOH/g以上がより好ましく、5mgKOH/g以上がさらに好ましく、8mgKOH/g以上がさらに好ましく、10mgKOH/g以上がさらに好ましい。ポリエステルの酸価は、カルボン酸成分とアルコール成分の当量比を変化させる、樹脂製造時の反応時間を変化させる、3価以上のカルボン酸化合物の含有量を変化させる、等の方法で調整することができる。
【0032】
ポリエステル(R)の軟化点は、液体現像剤の定着性を向上させる観点から、160℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましく、120℃以下がさらに好ましく、100℃以下がさらに好ましい。また、液体現像剤の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、70℃以上が好ましく、75℃以上がより好ましい。
【0033】
ポリエステル(R)のガラス転移温度は、液体現像剤の定着性を向上させる観点から、80℃以下が好ましく、70℃以下がより好ましく、65℃以下がさらに好ましい。また、液体現像剤の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、40℃以上が好ましく、45℃以上がより好ましい。
【0034】
なお、本発明において、ポリエステルは、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステルであってもよい。変性されたポリエステルとしては、例えば、特開平11−133668号公報、特開平10−239903号公報、特開平8−20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステルをいう。
【0035】
[顔料]
顔料としては、トナー用着色剤として用いられている顔料のすべてを使用することができ、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、イソインドリン、ジスアゾエロー等を用いることができる。本発明において、トナー粒子は、黒トナー、カラートナーのいずれであってもよい。
【0036】
顔料の含有量は、液体現像剤の定着性を向上させる観点から、樹脂100質量部に対して、100質量部以下が好ましく、70質量部以下がより好ましく、50質量部以下がさらに好ましく、25質量部以下がさらに好ましい。また、液体現像剤の画像濃度を向上させる観点から、樹脂100質量部に対して、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、15質量部以上がさらに好ましい。
【0037】
本発明では、トナー材料として、さらに、離型剤、荷電制御剤、荷電制御樹脂、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤を適宜使用してもよい。
【0038】
[トナー粒子の製造方法]
工程1において、トナー粒子を得る方法としては、樹脂や顔料を含有するトナー原料を溶融混練し、得られた溶融混練物を粉砕して得る方法、水系樹脂分散液と水系顔料分散液を混合し樹脂粒子と顔料粒子を合一させる方法、及び水系樹脂分散液と顔料を高速攪拌する方法等が挙げられる。液体現像剤の現像性及び定着性を向上させる観点から、トナー原料を溶融混練した後に粉砕する方法が好ましい。
【0039】
トナー原料の溶融混練は、密閉式ニーダー、一軸もしくは二軸の混練機、連続式オープンロール型混練機等の公知の混練機を用いて行うことができるが、本発明の液体現像剤の製造方法においては、顔料の樹脂中での分散性を向上させる観点、及び粉砕後のトナー粒子の収率を向上させる観点から、オープンロール型混練機を用いて行うことが好ましい。
【0040】
樹脂、顔料を含有するトナー原料は、あらかじめヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、ボールミル等の混合機で混合した後、混練機に供給することが好ましい。これらの混合機の中では、顔料の樹脂中での分散性を向上させる観点から、ヘンシェルミキサーが好ましい。
【0041】
ヘンシェルミキサーでのトナー原料の混合は、攪拌の周速度、及び混合時間を調整することで行う。攪拌の周速度は、顔料の樹脂中での分散性を向上させる観点から、10〜30m/secが好ましい。また、攪拌時間は、顔料の樹脂中での分散性を向上させる観点から、1〜10分が好ましい。
【0042】
オープンロール型混練機とは、溶融混練部が密閉されておらず開放されているものをいい、溶融混練の際に発生する混練熱を容易に放熱することができる。本発明で使用するオープンロール型混練機は、ロールの軸方向に沿って設けられた複数の原料供給口と混練物排出口を備えており、生産効率の観点から、連続式オープンロール型混練機であることが好ましい。
【0043】
本発明で用いるオープンロール型混練機は、少なくとも温度の異なる2本の混練用ロールを有していることが好ましい。ロール温度は、例えば、ロール内部に通す熱媒体の温度により調整することができ、各ロールには、ロール内部を2以上に分割して温度の異なる熱媒体を通じてもよい。
【0044】
本発明において、混練機の混練物排出部の温度は、トナー原料の混合性を向上させる観点から、いずれのロールにおいても、樹脂の軟化点より10℃高い温度以下に設定することが好ましい。
【0045】
加熱ロールにおける混練の上流側と混練の下流側の設定温度は、上流側で混練物のロールへの張り付きを良好にして、下流側で強く混練する観点から、上流側の設定温度が下流側よりも高いことが好ましい。
【0046】
混練の上流側の設定温度が低い方のロール(冷却ロールともいう)において、混練の上流側の設定温度は、混練の下流側の設定温度と同じであっても異なっていてもよい。
【0047】
オープンロール型混練機のロールは、互いに周速度が異なっていることが好ましく、前記の加熱ロールと冷却ロールを備えたオープンロール型混練機においては、液体現像剤の定着性を向上させる観点から、加熱ロールが周速度の高い方のロール(高回転側ロール)、冷却ロールが周速度の低い方のロール(低回転側ロール)であることが好ましい。
【0048】
高回転側ロールの周速度は、2〜100m/minであることが好ましく、5〜75m/minがより好ましい。低回転側ロールの周速度は2〜100m/minが好ましく、4〜60m/minがより好ましく、4〜50m/minがさらに好ましい。また、2本のロールの周速度の比(低回転側ロール/高回転側ロール)は、1/10〜9/10が好ましく、3/10〜8/10がより好ましい。
【0049】
2本のロールの間隙(クリアランス)は、混練の上流側端部で好ましくは0.1〜3mm、より好ましくは0.1〜1mmである。
【0050】
また、各ロールの構造、大きさ、材料等について特に限定はない。ロール表面は、混練に用いられる溝を有しており、この形状は直線状、螺旋状、波型、凸凹型等が挙げられる。
【0051】
原料混合物の供給速度及び平均滞留時間は、用いるロールのサイズや原料の組成等により異なるので、これらの条件により最適な条件を選択すればよい。
【0052】
オープンロール型混練機による溶融混練により得られた溶融混練物を粉砕が可能な程度に冷却した後、粉砕工程、及び必要に応じて分級工程等の通常の方法を経て、本発明のトナー粒子を得ることができる。
【0053】
粉砕工程は、多段階に分けて行ってもよい。例えば、溶融混練物を、1〜5mm程度に粗粉砕した後、さらに微粉砕してもよい。また、粉砕工程時の生産性を向上させるために、溶融混練物を疎水性シリカ等の無機微粒子と混合した後、粉砕してもよい。
【0054】
粉砕工程に用いられる粉砕機は特に限定されないが、例えば、粗粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、アトマイザー、ロートプレックス等が挙げられるが、ハンマーミル等を用いてもよい。また、微粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、流動層式ジェットミル、気流式ジェットミル、機械式ミル等が挙げられる。
【0055】
前記粉砕物は必要に応じて分級機を用いて分級してもよい。分級工程に用いられる分級機としては、気流式分級機、慣性式分級機、篩式分級機等が挙げられる。分級工程の際、粉砕が不十分で除去された粉砕物は再度粉砕工程に供してもよく、必要に応じて粉砕工程と分級工程とを繰り返してもよい。
【0056】
工程1で得られるトナー粒子の体積中位粒径(D50)は、工程3の湿式粉砕工程の生産性を向上させる観点から、3〜15μmが好ましく、4〜12μmがより好ましい。なお、本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。
【0057】
[工程2]
工程2は、工程1で得られたトナー粒子を塩基性分散剤の存在下で絶縁性液体中に分散させ、トナー粒子分散液を得る工程である。
【0058】
工程1で得られたトナー粒子を塩基性分散剤の存在下で絶縁性液体中に分散させて液体現像剤が得られる。液体現像剤中のトナー粒子の粒子径を小さくする観点、及びトナー粒子の液体現像剤への分散性を向上させ液体現像剤の粘度を低減する観点から、トナー粒子を絶縁性液体中に分散させた後、トナー粒子を湿式粉砕して液体現像剤を得るのが好ましい。
【0059】
[塩基性分散剤]
分散剤は、トナー粒子を絶縁性液体中に安定に分散させるために用いるもので、本発明では、樹脂、特にポリエステルへの吸着性を向上させる観点、液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点、及び液体現像剤の定着性を向上させる観点から、ポリエチレンイミンと、12-ヒドロキシステアリン酸の自己縮合により得られるポリエステル(D)との反応により得られるアミド化合物を使用する。
【0060】
ポリエチレンイミンと、12-ヒドロキシステアリン酸の自己縮合により得られるポリエステル(D)との反応により得られるアミド化合物は、ポリエチレンイミンとポリエステル(D)を、必要に応じて80〜170℃程度の加熱下で混合し反応させることで得ることができる。
【0061】
ポリエチレンイミンの数平均分子量は、分散剤のトナー粒子への吸着力を高める観点、液体現像剤の定着性を向上させる観点及び液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、1000以上であり、1200以上が好ましく、1400以上がより好ましい。また、トナー粒子の凝集を抑制する観点、液体現像剤の定着性を向上させる観点及び液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、2600以下であり、2580以下が好ましく、2500以下がより好ましく、2000以下がさらに好ましく、1800以下がさらに好ましい。なお、ポリエチレンイミンの数平均分子量は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0062】
12-ヒドロキシステアリン酸の自己縮合により得られるポリエステル(D)は、例えば、12-ヒドロキシステアリン酸を不活性ガス雰囲気中、必要に応じてエステル化触媒、エステル化助触媒、溶媒等の存在下、180〜250℃程度の温度で自己縮合させて製造することができる。
【0063】
12-ヒドロキシステアリン酸の自己縮合体(ポリエステル(D))の数平均分子量は、液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、1000以上であり、1100以上が好ましく、1200以上がより好ましく、1500以上がさらに好ましい。また、液体現像剤の定着性を向上させる観点から、2500以下であり、2200以下が好ましく、2000以下がより好ましく、1800以下がさらに好ましい。なお、12-ヒドロキシステアリン酸の自己縮合体(ポリエステル(D))の数平均分子量は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0064】
12-ヒドロキシステアリン酸の自己縮合体(ポリエステル(D))の酸価は、液体現像剤の定着性を向上させる観点から、10mgKOH/g以上が好ましく、30mgKOH/g以上がより好ましく、50mgKOH/g以上がさらに好ましく、60mgKOH/g以上がさらに好ましい。また、液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、150mgKOH/g以下が好ましく、130mgKOH/g以下がより好ましく、110mgKOH/g以下がさらに好ましく、90mgKOH/g以下がさらに好ましい。
【0065】
ポリエチレンイミンとポリエステル(D)との反応により得られるアミド化合物における、ポリエチレンイミンとポリエステル(D)のモル比(ポリエチレンイミン/ポリエステル(D))は、液体現像剤の定着性を向上させる観点及び液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、1/1〜1/5であり、1/1〜1/4が好ましく、1/1.3〜1/3がより好ましく、1/1.5〜1/2.5がさらに好ましい。
【0066】
ポリエチレンイミンとポリエステル(D)との反応により得られるアミド化合物の重量平均分子量は、液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、2000以上であり、3000以上が好ましく、4000以上がより好ましく、4200以上がさらに好ましい。また、液体現像剤の定着性を向上させる観点から、7500以下であり、6000以下が好ましく、5500以下がより好ましく、5000以下がさらに好ましく、4800以下がさらに好ましい。なお、アミド化合物の重量平均分子量は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0067】
塩基性分散剤の使用量は、トナー粒子の凝集を抑制し、液体現像剤の粘度を低減する観点、及び液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、トナー粒子100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上がさらに好ましく、4質量部以上がさらに好ましい。また、液体現像剤の現像性及び定着性を向上させる観点、及び液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、12質量部以下がさらに好ましく、10質量部以下がさらに好ましく、8質量部以下がさらに好ましい。
【0068】
[絶縁性液体]
絶縁性液体の25℃における粘度は、液体現像剤の定着性を向上させる観点、及び液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、1mPa・s以上が好ましく、2mPa・s以上がより好ましく、3mPa・s以上がさらに好ましい。また、液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、55mPa・s以下が好ましく、30mPa・s以下がより好ましく、20mPa・s以下がさらに好ましく、10mPa・s以下がさらに好ましい。絶縁性液体を2種以上組み合わせて用いる場合には、組み合わせた絶縁性液体混合物の粘度が上記範囲内であればよい。なお、絶縁性液体の25℃における粘度は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0069】
絶縁性液体とは、電気が流れにくい液体のことを意味するが、本発明においては、誘電率3.5以下、体積抵抗率107Ωcm以上の液体が好ましい。
【0070】
絶縁性液体の具体例としては、例えば、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、ポリシロキサン、植物油等が挙げられる。特に、臭気、無害性及びコストの点から、流動パラフィン、イソパラフィン等の脂肪族炭化水素が好ましい。脂肪族炭化水素の市販品としては、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーK(以上、いずれもエクソンモービル社製)、シェルゾール71(シェルケミカルズジャパン社製)、IPソルベント1620、IPソルベント2080(以上、いずれも出光興産社製)、モレスコホワイトP-55、モレスコホワイトP-70、モレスコホワイトP-100、モレスコホワイトP-150、モレスコホワイトP-260(以上、いずれもMORESCO社製)、コスモホワイトP-60、コスモホワイトP-70(以上、いずれもコスモ石油ルブリカンツ社製)、ライトール(Sonneborn社製)等が挙げられる。これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0071】
トナー粒子、絶縁性液体、及び塩基性分散剤の混合方法としては、攪拌混合装置により攪拌する方法等が好ましい。
【0072】
撹拌混合装置は、特に限定はされないが、トナー粒子分散液の生産性を向上させる観点から、高速攪拌混合装置が好ましく、具体的には、デスパ(浅田鉄工社製)、T.K.ホモミクサー、T.K.ホモディスパー、T.K.ロボミックス(以上、いずれもプライミクス社製)、クレアミックス(エム・テクニック社製)、ケイディーミル(ケイディー・インターナショナル社製)等が好ましい。
【0073】
トナー粒子と絶縁性液体及び塩基性分散剤を高速攪拌混合装置により混合することによって、トナー粒子が予備分散され、トナー粒子分散液を得ることができ、次の湿式粉砕による液体現像剤の生産性が向上する。
【0074】
トナー粒子分散液の固形分濃度は、液体現像剤の現像性を向上させる観点から、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、35質量%以上がさらに好ましい。また、液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましい。なお、トナー粒子分散液の固形分濃度は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0075】
[工程3]
工程3は、工程2で得られたトナー粒子分散液を湿式粉砕し、液体現像剤を得る工程である。
【0076】
[湿式粉砕]
湿式粉砕とは、絶縁性液体中に分散させたトナー粒子を、絶縁性液体に分散した状態で機械的に粉砕処理する方法である。
【0077】
湿式粉砕に使用する装置としては、例えば、アンカー翼等の一般に用いられている撹拌混合装置を用いることができる。撹拌混合装置の中では、デスパ(浅田鉄工社製)、T.K.ホモミクサー(プライミクス社製)等の高速攪拌混合装置、ロールミル、ビーズミル、ニーダー、エクストルーダ等の粉砕機及び混練機等が挙げられる。これらの装置は複数を組み合わせることもできる。
【0078】
これらの中では、液体現像剤中のトナー粒子の粒子径を小さくする観点、及びトナー粒子の絶縁性液体への分散性を向上させ保存安定性を向上させる観点、及びトナー粒子分散液の粘度を低減する観点から、ビーズミルの使用が好ましい。
【0079】
ビーズミルでは、用いるメディアの粒径や充填率、ローターの周速度、滞留時間等を制御することにより所望の粒径、粒径分布を持ったトナー粒子を得ることができる。
【0080】
工程3で得られる液体現像剤の固形分濃度は、液体現像剤の現像性を向上させる観点から、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、35質量%以上がさらに好ましい。また、液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましい。なお、液体現像剤の固形分濃度は、後述の実施例に記載の方法により測定される。トナー粒子分散液調製後、希釈、濃縮等の操作がなければ、トナー粒子分散液の固形分濃度が液体現像剤の固形分濃度となる。
【0081】
工程3で得られる液体現像剤中のトナー粒子の体積中位粒径(D50)は、液体現像剤中のトナー粒子の粒子径を小さくし、液体現像剤の画質を向上させる観点から、5μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましく、2.5μm以下がさらに好ましい。また、液体現像剤の粘度を低減する観点から、0.5μm以上が好ましく、1.0μm以上がより好ましく、1.5μm以上がさらに好ましい。なお、液体現像剤中のトナー粒子の体積中位粒径(D50)は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0082】
液体現像剤の25℃における粘度は、液体現像剤の現像性を向上させる観点から、200mPa・s以下が好ましく、150mPa・s以下がより好ましく、100mPa・s以下がさらに好ましく、80mPa・s以下がさらに好ましく、60mPa・s以下がさらに好ましく、50mPa・s以下がさらに好ましい。また、液体現像剤中でのトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、2mPa・s以上が好ましく、5mPa・s以上がより好ましく、10mPa・s以上がさらに好ましく、20mPa・s以上がさらに好ましい。なお、液体現像剤の粘度は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0083】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の液体現像剤を開示する。
【0084】
<1> ポリエステルを含む樹脂及び顔料を含有するトナー粒子が絶縁性液体中に分散してなる液体現像剤の製造方法であって、
工程1:樹脂及び顔料を溶融混練し、粉砕してトナー粒子を得る工程、
工程2:工程1で得られたトナー粒子を塩基性分散剤の存在下で絶縁性液体中に分散させ、トナー粒子分散液を得る工程、及び
工程3:工程2で得られたトナー粒子分散液を湿式粉砕し、液体現像剤を得る工程
を含み、
前記塩基性分散剤が、ポリエチレンイミンと、12-ヒドロキシステアリン酸の自己縮合により得られるポリエステル(D)との反応により得られるアミド化合物であり、
ポリエチレンイミンの数平均分子量が1000以上2600以下であり、
ポリエステル(D)の数平均分子量が1000以上2500以下であり、
ポリエチレンイミンとポリエステル(D)とのモル比(ポリエチレンイミン/ポリエステル(D))が1/1〜1/5であり、
アミド化合物の重量平均分子量が2000以上7500以下である、
液体現像剤の製造方法。
【0085】
<2> ポリエステルの含有量は、樹脂中、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、実質的に100質量%がさらに好ましく、100質量%、即ち樹脂として、ポリエステルのみを用いることがさらに好ましい、前記<1>記載の製造方法。
【0086】
<3> ポリエステルは、2価以上のアルコールからなるアルコール成分と2価以上のカルボン酸化合物からなるカルボン酸成分とを重縮合させて得られるものが好ましい、前記<1>又は<2>記載の製造方法。
【0087】
<4> アルコール成分が式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含有する、前記<3>記載の製造方法。
【0088】
<5> 式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量は、アルコール成分中、50モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましく、実質的に100モル%がさらに好ましく、100モル%がさらに好ましい、前記<4>記載の製造方法。
【0089】
<6> カルボン酸成分は、テレフタル酸、フマル酸、及び無水トリメリット酸からなる群より選ばれた少なくとも1種を含有することが好ましく、テレフタル酸を含有することがより好ましい、前記<3>〜<5>いずれか記載の製造方法。
【0090】
<7> 樹脂中のポリエステルが、酸価が3mgKOH/g以上100mgKOH/g以下であるポリエステル(R)を含有する、前記<1>〜<6>いずれか記載の製造方法。
【0091】
<8>ポリエステル(R)の含有量は、樹脂中、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、実質的に100質量%がさらに好ましく、100質量%、即ち樹脂として、ポリエステル(R)のみを用いることがさらに好ましい、前記<7>記載の製造方法。
【0092】
<9> ポリエステル(R)の酸価は、120mgKOH/g以下が好ましく、100mgKOH/g以下がより好ましく、80mgKOH/g以下がさらに好ましく、60mgKOH/g以下がさらに好ましく、40mgKOH/g以下がさらに好ましく、20mgKOH/g以下がさらに好ましく、1mgKOH/g以上が好ましく、3mgKOH/g以上がより好ましく、5mgKOH/g以上がさらに好ましく、8mgKOH/g以上がさらに好ましく、10mgKOH/g以上がさらに好ましい、前記<7>又は<8>記載の製造方法。
【0093】
<10> ポリエステル(R)の軟化点は、160℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましく、120℃以下がさらに好ましく、100℃以下がさらに好ましく、70℃以上が好ましく、75℃以上がより好ましい、前記<7>〜<9>いずれか記載の製造方法。
【0094】
<11> ポリエステル(R)のガラス転移温度は、80℃以下が好ましく、70℃以下がより好ましく、65℃以下がさらに好ましく、40℃以上が好ましく、45℃以上がより好ましい、前記<7>〜<10>いずれか記載の製造方法。
【0095】
<12> 顔料の含有量は、樹脂100質量部に対して、100質量部以下が好ましく、70質量部以下がより好ましく、50質量部以下がさらに好ましく、25質量部以下がさらに好ましく、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、15質量部以上がさらに好ましい、前記<1>〜<11>いずれか記載の製造方法。
【0096】
<13> ポリエチレンイミンの数平均分子量は、1200以上が好ましく、1400以上がより好ましく、2580以下が好ましく、2500以下がより好ましく、2000以下がさらに好ましく、1800以下がさらに好ましい、前記<1>〜<12>いずれか記載の製造方法。
【0097】
<14> ポリエステル(D)の数平均分子量は、1100以上が好ましく、1200以上がより好ましく、1500以上がさらに好ましく、2200以下が好ましく、2000以下がより好ましく、1800以下がさらに好ましい、前記<1>〜<13>いずれか記載の製造方法。
【0098】
<15> ポリエステル(D)の酸価は、10mgKOH/g以上が好ましく、30mgKOH/g以上がより好ましく、50mgKOH/g以上がさらに好ましく、60mgKOH/g以上がさらに好ましく、150mgKOH/g以下が好ましく、130mgKOH/g以下がより好ましく、110mgKOH/g以下がさらに好ましく、90mgKOH/g以下がさらに好ましい、前記<1>〜<14>いずれか記載の製造方法。
【0099】
<16> ポリエチレンイミンとポリエステル(D)との反応により得られるアミド化合物における、ポリエチレンイミンとポリエステル(D)のモル比(ポリエチレンイミン/ポリエステル(D))は、1/1〜1/4が好ましく、1/1.3〜1/3がより好ましく、1/1.5〜1/2.5がさらに好ましい、前記<1>〜<15>いずれか記載の製造方法。
【0100】
<17> ポリエチレンイミンとポリエステル(D)との反応により得られるアミド化合物の重量平均分子量は、3000以上が好ましく、4000以上がより好ましく、4200以上がさらに好ましく、6000以下が好ましく、5500以下がより好ましく、5000以下がさらに好ましく、4800以下がさらに好ましい、前記<1>〜<16>いずれか記載の製造方法。
【0101】
<18> 塩基性分散剤の使用量は、トナー粒子100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上がさらに好ましく、4質量部以上がさらに好ましく、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、12質量部以下がさらに好ましく、10質量部以下がさらに好ましく、8質量部以下がさらに好ましい、前記<1>〜<17>いずれか記載の製造方法。
【0102】
<19> 絶縁性液体の25℃における粘度は、1mPa・s以上が好ましく、2mPa・s以上がより好ましく、3mPa・s以上がさらに好ましく、55mPa・s以下が好ましく、30mPa・s以下がより好ましく、20mPa・s以下がさらに好ましく、10mPa・s以下がさらに好ましい、前記<1>〜<18>いずれか記載の製造方法。
【0103】
<20> 絶縁性液体は、脂肪族炭化水素を含むことが好ましい、前記<1>〜<19>いずれか記載の製造方法。
【0104】
<21> トナー粒子分散液の固形分濃度は、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、35質量%以上がさらに好ましく、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましい、前記<1>〜<20>いずれか記載の製造方法。
【0105】
<22> 工程3で得られる液体現像剤の固形分濃度は、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、35質量%以上がさらに好ましく、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましい、前記<1>〜<21>いずれか記載の製造方法。
【0106】
<23> 工程3で得られる液体現像剤中のトナー粒子の体積中位粒径(D50)は、5μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましく、2.5μm以下がさらに好ましく、0.5μm以上が好ましく、1.0μm以上がより好ましく、1.5μm以上がさらに好ましい、前記<1>〜<22>いずれか記載の製造方法。
【0107】
<24> 液体現像剤の25℃における粘度は、200mPa・s以下が好ましく、150mPa・s以下がより好ましく、100mPa・s以下がさらに好ましく、80mPa・s以下がさらに好ましく、60mPa・s以下がさらに好ましく、50mPa・s以下がさらに好ましく、2mPa・s以上が好ましく、5mPa・s以上がより好ましく、10mPa・s以上がさらに好ましく、20mPa・s以上がさらに好ましい、前記<1>〜<23>いずれか記載の製造方法。
【0108】
<25> ポリエステルを含む樹脂及び顔料を含有するトナー粒子が絶縁性液体中に分散してなる液体現像剤の製造方法であって、
工程1:樹脂及び顔料を溶融混練し、粉砕及び分級してトナー粒子を得る工程、
工程2:工程1で得られたトナー粒子を塩基性分散剤の存在下で絶縁性液体中に分散させ、トナー粒子分散液を得る工程、及び
工程3:工程2で得られたトナー粒子分散液を湿式粉砕し、液体現像剤を得る工程
を含み、
前記塩基性分散剤が、ポリエチレンイミンと、12-ヒドロキシステアリン酸の自己縮合により得られるポリエステル(D)との反応により得られるアミド化合物であり、
ポリエチレンイミンの数平均分子量が1000以上2600以下であり、
ポリエステル(D)の数平均分子量が1000以上2500以下であり、
ポリエチレンイミンとポリエステル(D)とのモル比(ポリエチレンイミン/ポリエステル(D))が1/1〜1/5であり、
アミド化合物の重量平均分子量が2000以上7500以下である、
液体現像剤の製造方法。
【実施例】
【0109】
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター「CFT-500D」(島津製作所社製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出す。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
【0110】
〔樹脂のガラス転移温度〕
示差走査熱量計「DSC210」(セイコー電子工業社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで昇温し、吸熱ピークを測定する。吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度とする。
【0111】
〔樹脂の酸価(AV)〕
JIS K0070の方法により測定する。但し、測定溶媒のみJIS K0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更する。
【0112】
〔ポリエチレンイミンの数平均分子量(Mn)〕
以下に示す、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により分子量分布を測定し、数平均分子量を求める。
(1) 試料溶液の調製
濃度が0.2g/100mlになるように、ポリエチレンイミンを0.15mol/LでNa2SO4を1%酢酸水溶液に溶解させた溶液に溶解させる。次いで、この溶液をポアサイズ0.2μmのフッ素樹脂フィルター「FP-200」(住友電気工業社製)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とする。
(2) 分子量測定
下記の測定装置と分析カラムを用い、溶離液として0.15mol/LでNa2SO4を1%酢酸水溶液に溶解させた溶液を、毎分1mlの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させる。そこに試料溶液100μlを注入して測定を行う。試料の分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出する。このときの検量線には、数種類の標準プルラン(昭和電工社製のP-5(5.9×103)、P-50(4.73×104)、P-200(2.12×105)、P-800(7.08×105))を標準試料として作成したものを用いる。
測定装置:HLC-8320GPC(東ソー社製)
分析カラム:α+α-M+α-M(東ソー社製)
【0113】
〔12-ヒドロキシステアリン酸の自己縮合体の数平均分子量(Mn)〕
以下に示す、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により分子量分布を測定し、数平均分子量を求める。
(1) 試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mlになるように、縮合体をテトラヒドロフランに、溶解させる。次いで、この溶液をポアサイズ0.2μmのフッ素樹脂フィルター「FP-200」(住友電気工業社製)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とする。
(2) 分子量測定
下記の測定装置と分析カラムを用い、溶離液としてテトラヒドロフランを、毎分1mlの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させる。そこに試料溶液100μlを注入して測定を行う。試料の分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出する。このときの検量線には、数種類の単分散ポリスチレン(東ソー社製のA-500(5.0×102)、A-1000(1.01×103)、A-2500(2.63×103)、A-5000(5.97×103)、F-1(1.02×104)、F-2(1.81×104)、F-4(3.97×104)、F-10(9.64×104)、F-20(1.90×105)、F-40(4.27×105)、F-80(7.06×105)、F-128(1.09×106))を標準試料として作成したものを用いる。
測定装置:HLC-8220GPC(東ソー社製)
分析カラム:GMHXL+G3000HXL(東ソー社製)
【0114】
〔分散剤(アミド化合物)の重量平均分子量(Mw)〕
以下に示す、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により分子量分布を測定し、重量平均分子量を求める。
(1) 試料溶液の調製
濃度が0.2g/100mlになるように、分散剤をクロロホルムに溶解させる。次いで、この溶液をポアサイズ0.2μmのフッ素樹脂フィルター「FP-200」(住友電気工業社製)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とする。
(2) 分子量測定
下記の測定装置と分析カラムを用い、溶離液として100mmol/LのファーミンDM2098(花王社製)のクロロホルム溶液を、毎分1mlの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させる。そこに試料溶液100μlを注入して測定を行う。試料の分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出する。このときの検量線には、数種類の単分散ポリスチレン(東ソー社製のA-500(5.0×102)、A-5000(5.97×103)、F-2(1.81×104)、F-10(9.64×104)、F-40(4.27×105))を標準試料として作成したものを用いる。
測定装置:HLC-8220GPC(東ソー社製)
分析カラム:K-804L(昭和電工社製)
【0115】
〔絶縁性液体及び液体現像剤の25℃における粘度〕
6mL容のガラス製サンプル管「スクリューNo.2」(マルエム社製)に測定液を4〜5mL入れ、回転振動式粘度計「ビスコメイトVM-10A-L」(セコニック社製)を用いて、25℃にて粘度を測定する。
【0116】
〔工程1で得られるトナー粒子の体積中位粒径〕
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター社製)
アパチャー径:100μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマンコールター社製)
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター社製)
分散液:エマルゲン109P(花王社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB:13.6)を5質量%の濃度となるよう前記電解液に溶解させる。
分散条件:前記分散液5mlに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、前記電解液25mlを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製する。
測定条件:前記電解液100mlに、3万個の粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度となるように、前記試料分散液を加え、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
【0117】
〔トナー粒子分散液及び液体現像剤中の固形分濃度〕
トナー粒子分散液又は液体現像剤10質量部をヘキサン90質量部で希釈し、遠心分離装置「H-201F」(コクサン社製)を用いて、回転数25000r/minにて、20分間回転させる。静置後、上澄み液をデカンテーションにて除去した後、90質量部のヘキサンで希釈し、同様の条件で再び遠心分離を行う。上澄み液をデカンテーションにて除去した後、下層を真空乾燥機にて0.5kPa、40℃にて8時間乾燥させ、以下の式より固形分濃度を計算する。
【0118】
【数1】
【0119】
〔液体現像剤中のトナー粒子の体積中位粒径(D50)〕
レーザー回折/散乱式粒径測定装置「マスターサイザー2000」(マルバーン社製)を用いて、測定用セルにアイソパーG(エクソンモービル社製、イソパラフィン)を加え、散乱強度が5〜15%になる濃度で、粒子屈折率1.58(虚数部0.1)、分散媒屈折率1.42の条件にて、体積中位粒径(D50)を測定する。
【0120】
樹脂製造例1
表1に示す原料モノマーと、エステル化触媒及びエステル化助触媒を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、230℃に昇温して反応率が90%に達するまで反応させ、さらに8.3kPaにて反応を行い、軟化点が80℃に達した時点で反応を終了し、表1に示す物性を有する樹脂Aを得た。なお、反応率とは、生成反応水量(mol)/理論生成水量(mol)×100の値をいう。
【0121】
樹脂製造例2
表1に示す原料モノマーと、エステル化触媒及びエステル化助触媒を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、230℃に昇温して反応率が90%に達するまで反応させ、さらに8.3kPaにて反応を行い、軟化点が99℃に達した時点で反応を終了し、表1に示す物性を有する樹脂Bを得た。
【0122】
樹脂製造例3
表1に示す無水トリメリット酸以外の原料モノマーと、エステル化触媒及びエステル化助触媒を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、230℃に昇温して反応率が90%に達するまで反応させ、さらに8.3kPaにて1時間反応を行った。210℃まで冷却した後、無水トリメリット酸を添加し、210℃で反応を行い、軟化点が104℃に達した時点で反応を終了し、表1に示す物性を有する樹脂Cを得た。
【0123】
樹脂製造例4
表1に示す原料モノマーと、エステル化触媒及びエステル化助触媒を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、230℃に昇温して反応率が90%に達するまで反応させ、さらに8.3kPaにて反応を行い、軟化点が103℃に達した時点で反応を終了し、表1に示す物性を有する樹脂Dを得た。
【0124】
樹脂製造例5
表1に示す無水トリメリット酸以外の原料モノマーと、エステル化触媒及びエステル化助触媒を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、230℃に昇温して反応率が90%に達するまで反応させ、さらに8.3kPaにて1時間反応を行った。210℃まで冷却した後、無水トリメリット酸を添加し、210℃で反応を行い、軟化点が99℃に達した時点で反応を終了し、表1に示す物性を有する樹脂Eを得た。
【0125】
樹脂製造例6
キシレン1567gを窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5L容の四つ口フラスコに入れ、130℃に昇温した。表2に示す原料モノマー及び重合開始剤の混合液を130℃で攪拌しながら1.5時間かけて滴下し、さらに1.5時間同温度を保持して付加重合反応を行った。160℃に昇温し、1時間反応を行った後、200℃に昇温し、1時間保持してキシレンを除去した。さらに8.3kPaにて残りのキシレンを除去し、表2に示す物性を有する樹脂Fを得た。
【0126】
樹脂製造例7
表1に示す原料モノマーと、エステル化触媒及びエステル化助触媒を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、180℃まで昇温した後、210℃まで5時間かけて昇温を行い、反応率が90%に達するまで反応させた。さらに8.3kPaにて反応を行い、軟化点が86℃に達した時点で反応を終了し、表1に示す物性を有する樹脂Gを得た。
【0127】
【表1】
【0128】
【表2】
【0129】
12-ヒドロキシステアリン酸の自己縮合体(ポリエステル(D))の製造例
12-ヒドロキシステアリン酸(東京化成工業社製)250gと、反応溶媒としてキシレン55g、エステル化触媒として酸化ジブチル錫2.5gを、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した500mL容の四つ口フラスコに入れ、190℃に昇温して反応させ、表3に示す酸価に達した時点で反応を終了し、縮合体a〜eを得た。
【0130】
【表3】
【0131】
アミド化合物の製造例1
ポリエチレンイミン300(純正化学社製、数平均分子量1500)6.4gと縮合体a 68.6gを、100mL容の三つ口フラスコに入れ、150℃に昇温して反応率が90%に達するまで反応させ、分散剤aを得た。なお、反応率とは、(反応前の酸価−反応後の酸価)/反応前の酸価×100の値をいう。
【0132】
アミド化合物の製造例2
ポリエチレンイミン300(純正化学社製、数平均分子量1500)の代わりに、ポリエチレンイミン900(純正化学社製、数平均分子量2580)16.5gを使用し、縮合体aの使用量を58.5gに変更した以外は、製造例1と同様にして、分散剤bを得た。
【0133】
アミド化合物の製造例3
ポリエチレンイミン300(純正化学社製、数平均分子量1500)の代わりに、ポリエチレンイミン1200(純正化学社製、数平均分子量2640)20.5gを使用し、縮合体aの使用量を54.5gに変更した以外は、製造例1と同様にして、分散剤cを得た。
【0134】
アミド化合物の製造例4
ポリエチレンイミン300の使用量を3.9gに変更し、縮合体aの代わりに、縮合体b 71.1gを使用した以外は、製造例1と同様にして、分散剤dを得た。
【0135】
アミド化合物の製造例5
ポリエチレンイミン300の使用量を11.8gに変更し、縮合体aの代わりに、縮合体c 63.2gを使用した以外は、製造例1と同様にして、分散剤eを得た。
【0136】
アミド化合物の製造例6
ポリエチレンイミン300(純正化学社製、数平均分子量1500)3.4gと縮合体a71.6gを、100mL容の三つ口フラスコに入れ、150℃に昇温して12時間反応させて、分散剤fを得た。
【0137】
アミド化合物の製造例7
ポリエチレンイミン300の使用量を2.3gに、縮合体aの使用量を72.7gに変更した以外は、製造例6と同様にして、分散剤gを得た。
【0138】
アミド化合物の製造例8
テトラエチレンペンタミン(関東化学社製、分子量189)4.2gと、縮合体a 70.8gを、100mL容の三つ口フラスコに入れ、150℃に昇温して12時間反応させて、分散剤hを得た。
【0139】
アミド化合物の製造例9
ポリエチレンイミン300の使用量を9.0gに変更し、縮合体aの代わりに、縮合体d 66.0gを使用した以外は、製造例1と同様にして、分散剤iを得た。
【0140】
アミド化合物の製造例10
ポリエチレンイミン300の使用量を5.2gに変更し、縮合体aの代わりに、縮合体e 69.8gを使用した以外は、製造例1と同様にして、分散剤jを得た。
【0141】
実施例及び比較例で用いた分散剤を表4に示す。
【0142】
【表4】
【0143】
実施例1〜3、6〜12及び比較例1〜6、8
[工程1]
表5に示す樹脂を各85質量部及び顔料「ECB-301」(大日精化社製、フタロシアニンブルー15:3)15質量部を、予め20L容のヘンシェルミキサーを使用し、回転数1500r/min(周速度21.6m/sec)で3分間攪拌混合後、以下に示す条件で溶融混練した。
【0144】
〔溶融混練条件〕
連続式二本オープンロール型混練機「ニーデックス」(日本コークス工業社製、ロール外径:14cm、有効ロール長:55cm)を使用した。連続式二本オープンロール型混練機の運転条件は、高回転側ロール(フロントロール)回転数75r/min(周速度32.4m/min)、低回転側ロール(バックロール)回転数35r/min(周速度15.0m/min)、原料投入側端部のロール間隙0.1mmであった。ロール内の加熱媒体温度及び冷却媒体温度は、高回転側ロールの原料投入側が90℃及び混練物排出側が85℃であり、低回転側ロールの原料投入側が35℃及び混練物排出側が35℃であった。また、原料混合物の上記混練機への供給速度は10kg/h、上記混練機中の平均滞留時間は約3分間であった。
【0145】
上記で得られた混練物を冷却ロールで冷却した後、ハンマーミルを用いて1mm程度に粗粉砕した。得られた粗粉砕物を気流式ジェットミル「IDS」(日本ニューマチック社製)により微粉砕及び分級し、体積中位粒径(D50)が10μmのトナー粒子を得た。
【0146】
[工程2]
工程1で得られたトナー粒子35質量部と絶縁性液体「ライトール」(Sonneborn社製、流動パラフィン、粘度:5mPa・s)63.25質量部、表5に示す分散剤1.75質量部を1L容のポリエチレン製容器に入れ、「T.K.ロボミックス」(プライミクス社製)を用いて、氷冷下、回転数7000r/minにて30分間攪拌を行い、固形分濃度37質量%のトナー粒子分散液を得た。
【0147】
[工程3]
工程2で得られたトナー粒子分散液を、直径0.8mmのジルコニアビーズを用いて、体積充填率60体積%にて、6筒式サンドミル「TSG-6」(アイメックス社製)で回転数1300r/min(周速度4.8m/sec)にて表5に示す体積中位粒径(D50)になるまで湿式粉砕した。ビーズをろ過により除去し、表5に示す物性を有する液体現像剤を得た。
【0148】
実施例4
実施例1の工程2において、絶縁性液体の使用量を64.125質量部に、分散剤aの使用量を0.875質量部に、それぞれ変更した以外は実施例1と同様に工程2を行い、表5に示す物性を有する液体現像剤を得た。
【0149】
実施例5
実施例1の工程2において、絶縁性液体の使用量を61.5質量部に、分散剤aの使用量を3.5質量部に、それぞれ変更した以外は実施例1と同様に工程2を行い、表5に示す物性を有する液体現像剤を得た。
【0150】
比較例7
実施例1の工程2において、絶縁性液体の使用量を58.875質量部に、分散剤a 1.75質量部を分散剤k 4.375質量部(有効分40%)に、それぞれ変更した以外は実施例1と同様に工程2を行い、表5に示す物性を有する液体現像剤を得た。
【0151】
【表5】
【0152】
試験例1〔保存安定性〕
液体現像剤10gを20mLのガラス製サンプル管「スクリューNo.5」(マルエム社製)に入れ、40℃の恒温槽にて24時間保存した。保存前後の粘度を測定し、保存後の粘度/保存前の粘度の値から保存安定性を評価した。結果を表6に示す。数値が1に近いほど保存安定性に優れることを示す。
【0153】
試験例2〔定着性〕
6cm四方に裁断した「PODグロスコート紙」(王子製紙社製)に液体現像剤を滴下し、スピンコーター「MS-A150」(ミカサ社製)を用いて回転させ、薄膜を作製した。紙上に載った液体現像剤が0.05g±0.003gになるように滴下量や回転数、回転時間を調整した。
【0154】
作製した薄膜を、150℃の恒温槽中で1分間保持し、非接触定着させた。得られた定着画像にメンディングテープ「Scotchメンディングテープ810」(3M社製、幅18mm)を貼り付け、500gの荷重がかかるようにローラーでテープに圧力をかけた後、テープを剥離した。テープ剥離前と剥離後の画像濃度を、色彩計「Spectroeye」(X-Rite社製)にて測定した。画像印字部は各3点測定し、その平均値を画像濃度として算出した。剥離後の画像濃度/剥離前の画像濃度×100の値から定着率(%)を算出し、定着性を評価した。結果を表6に示す。数値が大きいほど定着性に優れることを示す。
【0155】
【表6】
【0156】
表6から明らかなように、比較例1〜8と対比して、実施例1〜12の液体現像剤は、定着性に優れ、保存安定性にも優れることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0157】
本発明の方法により得られる液体現像剤は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像等に好適に用いられるものである。