特許第6202740号(P6202740)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202740
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】液体現像剤
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/12 20060101AFI20170914BHJP
   G03G 9/13 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   G03G9/12
   G03G9/12 321
【請求項の数】7
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2013-269980(P2013-269980)
(22)【出願日】2013年12月26日
(65)【公開番号】特開2015-125297(P2015-125297A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年9月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】神吉 伸通
(72)【発明者】
【氏名】山田 達也
【審査官】 福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−190657(JP,A)
【文献】 特開2008−299142(JP,A)
【文献】 特開2013−130791(JP,A)
【文献】 特開2009−145535(JP,A)
【文献】 特開2009−217050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/12−9/135
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルを含む樹脂及び顔料を含有するトナー粒子が分散剤の存在下で絶縁性液体中に分散してなる液体現像剤であって、
前記ポリエステルが、1,2-プロパンジオールを50モル%以上含有するアルコール成分とカルボン酸成分との重縮合物であり、
前記絶縁性液体が、ナフテン系炭化水素を5質量%以上含有し、初留点が190℃以上300℃以下であり、
前記分散剤が、ポリイミンとカルボン酸の縮合物を含有する、
液体現像剤。
【請求項2】
ポリイミンとカルボン酸の縮合物の含有量が、分散剤中、50質量%以上である、請求項1記載の液体現像剤。
【請求項3】
液体現像剤の25℃における粘度が、3mPa・s以上50mPa・s以下である、請求項1又は2記載の液体現像剤。
【請求項4】
絶縁性液体の25℃における粘度が、1.0mPa・s以上30mPa・s以下である、請求項1〜3いずれか記載の液体現像剤。
【請求項5】
ポリエステルの含有量が、樹脂中90質量%以上である、請求項1〜4いずれか記載の液体現像剤。
【請求項6】
ポリエステルの酸価が、3mgKOH/g以上110mgKOH/g以下である、請求項1〜5いずれか記載の液体現像剤。
【請求項7】
ポリエステルを含む樹脂及び顔料を含有するトナー粒子が分散剤の存在下で絶縁性液体中に分散してなる液体現像剤の製造方法であって、
工程1:樹脂及び顔料を溶融混練し、粉砕してトナー粒子を得る工程、
工程2:工程1で得られたトナー粒子に分散剤を加え、絶縁性液体中に分散させ、トナー粒子分散液を得る工程、及び
工程3:工程2で得られたトナー粒子分散液を湿式粉砕し、液体現像剤を得る工程
を含み、
前記ポリエステルが、1,2-プロパンジオールを50モル%以上含有するアルコール成分とカルボン酸成分との重縮合物であり、
前記絶縁性液体が、ナフテン系炭化水素を5質量%以上含有し初留点が190℃以上300℃以下であり、
前記分散剤が、ポリイミンとカルボン酸の縮合物を含有する、
液体現像剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられる液体現像剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真用現像剤には、着色剤及び結着樹脂を含む材料からなるトナー成分を乾式状態で用いる乾式現像剤と、トナー成分が絶縁性の担体液中に分散した液体現像剤がある。
【0003】
液体現像剤は、トナー粒子の小粒径化が可能であることから画質の面で優れており、商業印刷用途に適している。また、近年、高速化への要求が高まっていることから、液体現像剤の低粘度化も求められている。つまり、トナー粒子が小粒径、低粘度で安定に分散した液体現像剤が求められている。
【0004】
また、近年では環境意識の高まりから、液体現像剤の分散媒として揮発性の低い絶縁性液体が用いられている。
【0005】
特許文献1には、良好に分散され、画像濃度が高く、安定して高解像、高色彩の画像が得られ、定着時の溶剤蒸気の発生を抑えた液体現像剤を提供することを目的として、高抵抗低誘電率の担体液中に、着色剤と樹脂とからなるトナー粒子を分散してなる静電写真用液体現像剤において、前記担体液が(a)初留点150℃以上のナフテン系溶媒及び(b)炭素数3以上のアルコールと炭素数5以上の脂肪酸のモノエステルの中から選ばれる少なくとも1つの有機媒体を含有することを特徴とする静電荷像用液体現像剤が開示されている。
【0006】
特許文献2には、発色性、色再現性に優れ、印刷枚数や印刷面積が増加しても液体現像剤中のトナー粒子の分散状態や画像濃度が安定し、長期にわたって現像剤組成の変化のない画像濃度が安定した液体現像剤として、少なくとも、結着樹脂、着色剤、高分子分散剤、及びキャリア液からなる液体現像剤であって、高分子分散剤が少なくとも、アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体と、炭素数9〜24のアルキル基を含有するエチレン性不飽和単量体と、炭素数1〜8のアルキル基を含有するエチレン性不飽和単量体とを特定の比率で共重合してなり、アミン価が5〜150mgKOH/gであることを特徴とする液体現像剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−251040号公報
【特許文献2】特開2013−130791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の技術では、低揮発性の絶縁性液体を用いた際に、分散安定性、即ち保存安定性と、低温定着性を両立するのは困難である。
【0009】
本発明は、低揮発性の絶縁性液体を用いた場合でも、分散安定性と低温定着性に優れた液体現像剤及びその製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
〔1〕 ポリエステルを含む樹脂及び顔料を含有するトナー粒子が分散剤の存在下で絶縁性液体中に分散してなる液体現像剤であって、
前記絶縁性液体が、ナフテン系炭化水素を5質量%以上含有し、初留点が190℃以上300℃以下であり、
前記分散剤が、ポリイミンとカルボン酸の縮合物を含有する、
液体現像剤、並びに
〔2〕 ポリエステルを含む樹脂及び顔料を含有するトナー粒子が分散剤の存在下で絶縁性液体中に分散してなる液体現像剤の製造方法であって、
工程1:樹脂及び顔料を溶融混練し、粉砕してトナー粒子を得る工程、
工程2:工程1で得られたトナー粒子に分散剤を加え、絶縁性液体中に分散させ、トナー粒子分散液を得る工程、及び
工程3:工程2で得られたトナー粒子分散液を湿式粉砕し、液体現像剤を得る工程
を含み、
前記絶縁性液体が、ナフテン系炭化水素を5質量%以上含有し初留点が190℃以上300℃以下であり、
前記分散剤が、ポリイミンとカルボン酸の縮合物を含有する、
液体現像剤の製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の液体現像剤は、低揮発性の絶縁性液体を用いた場合でも、分散安定性と低温定着性に優れるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の液体現像剤は、ポリエステルを含む樹脂及び顔料を含有するトナー粒子が分散剤の存在下で絶縁性液体中に分散した液体現像剤であり、絶縁性液体が、ナフテン系炭化水素を5質量%以上含有し、初留点が190℃以上300℃以下であり、分散剤がポリイミンとカルボン酸の縮合物を含有する点に特徴を有しており、低揮発性の絶縁性液体を用いた場合でも、分散安定性と低温定着性に優れる。
【0013】
このような効果を奏する理由は定かではないが、以下のように考えられる。
ナフテン系炭化水素は、1分子中に少なくとも1個の飽和環(ナフテン環)を含む炭化水素のことであり、鎖式飽和炭化水素(パラフィン)と比較して極性が高く、ポリエステルとの親和性が高い。そのため、ナフテン系炭化水素を特定量含有することにより、定着時により低い温度でもトナー粒子を可塑化又は膨潤しやすくするため、低温定着性が向上するものと考えられる。一方、保存中の液体現像剤においては、トナー粒子の過度の可塑化は分散安定性に不利となるが、本発明においては、ナフテン系炭化水素を含有し初留点が一定の範囲内である絶縁性液体と、トナー粒子に強固に吸着し炭化水素中への分散力に優れるポリイミンとカルボン酸の縮合物を分散剤として使用することで、トナー粒子の分散安定性が向上し保存安定性が向上するとともに、製造時の湿式粉砕工程においては、トナー粒子が適度に可塑化されるためトナー粒子の粉砕性が向上し、小粒径の液体現像剤が得られやすくなるものと考えられる。また、使用時に分散媒蒸気の発生も抑制される。
【0014】
[樹脂]
本発明の液体現像剤における樹脂はトナー粒子の結着樹脂となる樹脂であり、トナー粒子の粉砕性を向上させ小粒径の液体現像剤を得る観点、液体現像剤の低温定着性を向上させる観点、及び液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、ポリエステルを含有する。ポリエステルの含有量は、樹脂中、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、実質的に100質量%がさらに好ましく、100質量%、即ち樹脂として、ポリエステルのみを用いることがさらに好ましいが、本願の効果が損なわれない範囲において、ポリエステル以外の他の樹脂が含有されていてもよい。ポリエステル以外の樹脂としては、例えば、ポリスチレン、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体等のスチレン又はスチレン置換体を含む単重合体又は共重合体であるスチレン系樹脂、エポキシ樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、ポリウレタン、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族又は脂環式炭化水素樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0015】
本発明において、ポリエステルは、2価以上のアルコールを含むアルコール成分と2価以上のカルボン酸化合物を含むカルボン酸成分とを重縮合することにより得られるものが好ましい。
【0016】
2価のアルコールとしては、例えば、炭素数2以上20以下、好ましくは炭素数2以上15以下のジオールや、式(I):
【0017】
【化1】
【0018】
(式中、RO及びORはオキシアルキレン基であり、Rはエチレン及び/又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の平均値は好ましくは1以上16以下、より好ましくは1以上8以下、さらに好ましくは1.5以上4以下である。)
で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。炭素数2以上20以下のジオールとして、具体的には、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。
【0019】
アルコール成分としては、トナー粒子の粉砕性を向上させ小粒径の液体現像剤を得る観点、液体現像剤の低温定着性を向上させる観点、及び液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、1,2-プロパンジオール及び式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が好ましく、1,2-プロパンジオールがより好ましい。1,2-プロパンジオールの含有量は、アルコール成分中、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは実質的に100モル%、さらに好ましくは100モル%である。
【0020】
3価以上のアルコールとしては、炭素数3以上20以下、好ましくは炭素数3以上10以下の3価以上の多価アルコールが挙げられる。具体的には、ソルビトール、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、グリセロール、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0021】
2価のカルボン酸化合物としては、例えば、炭素数3以上30以下、好ましくは炭素数3以上20以下、より好ましくは炭素数3以上10以下のジカルボン酸、及びそれらの無水物、炭素数1以上3以下のアルキルエステル等の誘導体等が挙げられる。具体的には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸や、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸等の脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。
【0022】
3価以上のカルボン酸化合物としては、例えば、炭素数4以上20以下、好ましくは炭素数6以上20以下、より好ましくは炭素数9以上10以下の3価以上の多価カルボン酸、及びそれらの無水物、炭素数1以上3以下のアルキルエステル等の誘導体等が挙げられる。具体的には、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸(ピロメリット酸)等が挙げられる。
【0023】
カルボン酸成分としては、液体現像剤の低温定着性を向上させる観点、及び液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、テレフタル酸及びフマル酸が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。テレフタル酸の含有量は、カルボン酸成分中、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは実質的に100モル%、さらに好ましくは100モル%である。
【0024】
なお、アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸化合物が、ポリエステルの分子量及び軟化点を調整する観点から、適宜含有されていてもよい。
【0025】
ポリエステルにおけるカルボン酸成分とアルコール成分との当量比(COOH基/OH基)は、ポリエステルの軟化点を調整する観点から、好ましくは0.70以上、より好ましくは0.75以上であり、また、好ましくは1.10以下、より好ましくは1.05以下である。
【0026】
ポリエステルは、例えば、アルコール成分とカルボン酸成分とを不活性ガス雰囲気中、必要に応じてエステル化触媒、エステル化助触媒、重合禁止剤等の存在下、130℃以上250℃以下の温度で重縮合させて製造することができる。
【0027】
エステル化触媒としては、酸化ジブチル錫、2-エチルヘキサン酸錫(II)等の錫化合物、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物等が挙げられる。エステル化触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、また、好ましくは1.5質量部以下、より好ましくは1.0質量部以下である。エステル化助触媒としては、没食子酸等が挙げられる。エステル化助触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、また、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下である。重合禁止剤としては、t-ブチルカテコール等が挙げられる。重合禁止剤の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、また、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下である。
【0028】
ポリエステルの軟化点は、液体現像剤の低温定着性を向上させる観点から、好ましくは160℃以下、より好ましくは130℃以下、さらに好ましくは120℃以下、さらに好ましくは110℃以下である。また、液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、好ましくは70℃以上、より好ましくは75℃以上である。
【0029】
ポリエステルのガラス転移温度は、液体現像剤の低温定着性を向上させる観点から、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下、さらに好ましくは60℃以下である。また、液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは45℃以上である。
【0030】
ポリエステルの酸価は、液体現像剤の粘度を低減する観点、及び液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、好ましくは110mgKOH/g以下、より好ましくは70mgKOH/g以下、さらに好ましくは50mgKOH/g以下、さらに好ましくは30mgKOH/g以下である。また、同様の観点から、好ましくは3mgKOH/g以上、より好ましくは5mgKOH/g以上、さらに好ましくは8mgKOH/g以上である。ポリエステルの酸価は、カルボン酸成分とアルコール成分の当量比を変化させる、樹脂製造時の反応時間を変化させる、3価以上のカルボン酸化合物の含有量を変化させる、等の方法で調整することができる。
【0031】
なお、本発明において、ポリエステルは、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステルであってもよい。変性されたポリエステルとしては、例えば、特開平11−133668号公報、特開平10−239903号公報、特開平8−20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステルをいう。
【0032】
[顔料]
顔料としては、トナー用着色剤として用いられている顔料のすべてを使用することができ、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、イソインドリン、ジスアゾエロー等を用いることができる。本発明において、トナー粒子は、黒トナー、カラートナーのいずれであってもよい。
【0033】
顔料の含有量は、トナー粒子の粉砕性を向上させ小粒径の液体現像剤を得る観点、液体現像剤の低温定着性を向上させる観点、及び液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、樹脂100質量部に対して、好ましくは100質量部以下、より好ましくは70質量部以下、さらに好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは25質量部以下である。また、液体現像剤の画像濃度を向上させる観点から、樹脂100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、さらに好ましくは15質量部以上である。
【0034】
本発明では、トナー原料として、さらに、離型剤、荷電制御剤、荷電制御樹脂、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤を適宜使用してもよい。
【0035】
[トナー粒子の製造方法]
トナー粒子を得る方法としては、樹脂や顔料を含有するトナー原料を溶融混練し、得られた溶融混練物を粉砕して得る方法、水系樹脂分散液と水系顔料分散液を混合し樹脂粒子と顔料粒子を合一させる方法、及び水系樹脂分散液と顔料を高速攪拌する方法等が挙げられる。液体現像剤の現像性及び定着性を向上させる観点から、トナー原料を溶融混練した後に粉砕する方法が好ましい。
【0036】
トナー原料の溶融混練は、密閉式ニーダー、一軸もしくは二軸の混練機、連続式オープンロール型混練機等の公知の混練機を用いて行うことができるが、本発明の液体現像剤の製造方法においては、顔料の樹脂中での分散性を向上させる観点、及び粉砕後のトナー粒子の収率を向上させる観点から、オープンロール型混練機を用いて行うことが好ましい。
【0037】
樹脂、顔料を含有するトナー原料は、あらかじめヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、ボールミル等の混合機で混合した後、混練機に供給することが好ましい。これらの混合機の中では、顔料の樹脂中での分散性を向上させる観点から、ヘンシェルミキサーが好ましい。
【0038】
ヘンシェルミキサーでのトナー原料の混合は、攪拌の周速度、及び混合時間を調整することで行う。攪拌の周速度は、顔料の樹脂中での分散性を向上させる観点から、好ましくは10m/sec以上30m/sec以下である。また、攪拌時間は、顔料の樹脂中での分散性を向上させる観点から、好ましくは1分以上10分以下である。
【0039】
オープンロール型混練機とは、溶融混練部が密閉されておらず開放されているものをいい、溶融混練の際に発生する混練熱を容易に放熱することができる。本発明で使用するオープンロール型混練機は、ロールの軸方向に沿って設けられた複数の原料供給口と混練物排出口を備えており、生産効率の観点から、連続式オープンロール型混練機であることが好ましい。
【0040】
本発明で用いるオープンロール型混練機は、少なくとも温度の異なる2本の混練用ロールを有していることが好ましい。ロール温度は、例えば、ロール内部に通す熱媒体の温度により調整することができ、各ロールには、ロール内部を2箇所以上に分割して温度の異なる熱媒体を通じてもよい。
【0041】
本発明において、混練機の混練物排出部の温度は、トナー原料の混合性を向上させる観点から、いずれのロールにおいても、樹脂の軟化点より10℃高い温度以下に設定することが好ましい。
【0042】
加熱ロールにおける混練の上流側と混練の下流側の設定温度は、上流側で混練物のロールへの張り付きを良好にして、下流側で強く混練する観点から、上流側の設定温度が下流側よりも高いことが好ましい。
【0043】
混練の上流側の設定温度が低い方のロール(冷却ロールともいう)において、混練の上流側の設定温度は、混練の下流側の設定温度と同じであっても異なっていてもよい。
【0044】
オープンロール型混練機のロールは、互いに周速度が異なっていることが好ましく、前記の2本のロールを備えたオープンロール型混練機においては、液体現像剤の定着性を向上させる観点から、温度の高い加熱ロールが周速度の高い方のロール(高回転側ロール)、温度の低い冷却ロールが周速度の低い方のロール(低回転側ロール)であることが好ましい。
【0045】
高回転側ロールの周速度は、好ましくは2m/min以上、より好ましくは5m/min以上であり、また、好ましくは100m/min以下、より好ましくは75m/min以下である。低回転側ロールの周速度は、好ましくは2m/min以上、より好ましくは4m/min以上であり、また、好ましくは100m/min以下、より好ましくは60m/min以下、さらに好ましくは50m/min以下である。また、2本のロールの周速度の比(低回転側ロール/高回転側ロール)は、好ましくは1/10〜9/10、より好ましくは3/10〜8/10である。
【0046】
2本のロールの間隙(クリアランス)は、混練の上流側端部で好ましくは0.1mm以上であり、また、好ましくは3mm以下、より好ましくは1mm以下である。
【0047】
また、各ロールの構造、大きさ、材料等について特に限定はない。ロール表面は、混練に用いられる溝を有しており、この形状は直線状、螺旋状、波型、凸凹型等が挙げられる。
【0048】
原料混合物の供給速度及び平均滞留時間は、用いるロールのサイズや原料の組成等により異なるので、これらの条件により最適な条件を選択すればよい。
【0049】
オープンロール型混練機による溶融混練により得られた溶融混練物を粉砕が可能な程度に冷却した後、粉砕工程、及び必要に応じて分級工程等の通常の方法を経て、本発明のトナー粒子を得ることができる。
【0050】
粉砕工程は、多段階に分けて行ってもよい。例えば、溶融混練物を、1〜5mm程度に粗粉砕した後、さらに微粉砕してもよい。また、粉砕工程時の生産性を向上させるために、溶融混練物を疎水性シリカ等の無機微粒子と混合した後、粉砕してもよい。
【0051】
粉砕工程に用いられる粉砕機は特に限定されないが、例えば、粗粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、アトマイザー、ロートプレックス等が挙げられるが、ハンマーミル等を用いてもよい。また、微粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、流動層式ジェットミル、気流式ジェットミル、機械式ミル等が挙げられる。
【0052】
前記粉砕物は必要に応じて分級機を用いて分級してもよい。分級工程に用いられる分級機としては、気流式分級機、慣性式分級機、篩式分級機等が挙げられる。分級工程の際、粉砕が不十分で除去された粉砕物は再度粉砕工程に供してもよく、必要に応じて粉砕工程と分級工程とを繰り返してもよい。
【0053】
前記粉砕工程及び必要に応じて行う分級工程で得られるトナー粒子の体積中位粒径(D50)は、後述の湿式粉砕工程の生産性を向上させる観点から、好ましくは3μm以上、より好ましくは4μm以上であり、また、好ましくは15μm以下、より好ましくは12μm以下である。なお、本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。
【0054】
[液体現像剤の製造方法]
トナー粒子を分散剤の存在下で絶縁性液体中に分散させて液体現像剤が得られる。液体現像剤中のトナー粒子の粒径を小さくする観点、及び液体現像剤の粘度を低減する観点から、トナー粒子を絶縁性液体中に分散させた後、トナー粒子を湿式粉砕して液体現像剤を得るのが好ましい。
【0055】
[絶縁性液体]
絶縁性液体の25℃における粘度は、液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点、及び湿式粉砕時にトナー粒子の粉砕性を向上させ小粒径の液体現像剤を得る観点から、好ましくは1.0mPa・s以上、より好ましくは1.2mPa・s以上、さらに好ましくは1.3mPa・s以上である。また、液体現像剤の低温定着性を向上させる観点、及び湿式粉砕時にトナー粒子の粉砕性を向上させ小粒径の液体現像剤を得る観点から、好ましくは30mPa・s以下、より好ましくは10mPa・s以下、さらに好ましくは5mPa・s以下、さらに好ましくは3mPa・s以下である。絶縁性液体を2種以上組み合わせて用いる場合には、組み合わせた絶縁性液体混合物の粘度が上記範囲内であればよい。なお、絶縁性液体の25℃における粘度は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0056】
絶縁性液体とは、電気が流れにくい液体のことを意味するが、本発明においては、誘電率3.5以下、体積抵抗率107Ωcm以上の液体が好ましい。
【0057】
本発明の液体現像剤における絶縁性液体は、ナフテン系炭化水素(以下、単にナフテンともいう)を5質量%以上含有し、初留点が190℃以上300℃以下である。
【0058】
ナフテン系炭化水素とは、1分子中に少なくとも1個の飽和環(ナフテン環)を含む炭化水素のことである。具体的には、シクロペンタン(C5H10,5員環1個)、シクロヘキサン(C6H12,6員環1個)等が知られているが、石油製品中には、ナフテン環が複数個結合したものや、さらに種々のパラフィン側鎖を伴っているもの等があり、フィヒテライト(C19H34,6員環3個縮合)、オレアナン(C30H52,6員環5個縮合)等もナフテン系炭化水素に含まれる。
【0059】
本発明の液体現像剤における絶縁性液体は、前記のナフテン系炭化水素を含有するが、液体現像剤の低温定着性を向上させる観点、及び分散媒蒸気の発生を抑制する観点から、ナフテン系炭化水素の含有量は、絶縁性液体中、5質量%以上であり、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは35質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは45質量%以上である。また、液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させて保存安定性を向上させる観点、入手性の観点から、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。
【0060】
ナフテン系炭化水素を5質量%以上含有する絶縁性液体の市販品としては、「ナフテゾール200」、「ナフテゾール220」(以上、いずれもJX日鉱日石エネルギー社製)、「エクソールD80」、「エクソールD110」「エクソールD130」(以上、いずれもエクソンモービル社製)等が挙げられる。これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0061】
ナフテン系炭化水素以外の絶縁性液体の具体例としては、例えば、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、ポリシロキサン、植物油等が挙げられる。これらの中で、液体現像剤の粘度を低減する観点、臭気、無害性及びコストの観点から、流動パラフィン、イソパラフィン等の脂肪族炭化水素が好ましい。
【0062】
脂肪族炭化水素の市販品としては、アイソパーM(エクソンモービル社製)、シェルゾールTM(シェルケミカルズジャパン社製)、IPソルベント2028、IPソルベント2835(以上、いずれも出光興産社製)、アイソゾール400(JX日鉱日石エネルギー社製)等が挙げられる。
【0063】
ナフテン系炭化水素を含有する絶縁性液体の初留点は、液体現像剤の低温定着性を向上させる観点、液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させて保存安定性を向上させる観点、湿式粉砕時にトナー粒子の粉砕性を向上させ小粒径の液体現像剤を得る観点及び分散媒蒸気の発生を抑制する観点から、190℃以上であり、好ましくは200℃以上、より好ましくは203℃以上であり、また、300℃以下であり、好ましくは290℃以下、より好ましくは285℃以下、さらに好ましくは280℃以下である。
【0064】
ナフテン系炭化水素を含有する絶縁性液体の乾点は、液体現像剤の低温定着性を向上させる観点、液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させて保存安定性を向上させる観点、湿式粉砕時にトナー粒子の粉砕性を向上させ小粒径の液体現像剤を得る観点及び分散媒蒸気の発生を抑制する観点から、好ましくは200℃以上、より好ましくは220℃以上であり、また、好ましくは350℃以下、より好ましくは330℃以下、さらに好ましくは320℃以下である。
【0065】
[分散剤]
本発明の液体現像剤は、分散剤として、液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点、及び湿式粉砕時にトナー粒子の粉砕性を向上させ小粒径の液体現像剤を得る観点から、塩基性分散剤であるポリイミンとカルボン酸の縮合物を含有する。分散剤は、トナー粒子を絶縁性液体中に安定に分散させるために用いるもので、本発明の液体現像剤は、樹脂、特にポリエステルへの吸着性を向上させる観点から、吸着基として塩基性吸着基を有する塩基性分散剤を含有することが好ましく、上記ポリイミンとカルボン酸の縮合物も塩基性分散性の1種である。
【0066】
ポリイミンとカルボン酸の縮合物の原料となるポリイミンとしては、液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、ポリアルキレンイミンが好ましい。ポリアルキレンイミンの具体例としては、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン、ポリブチレンイミン等が挙げられるが、液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、ポリエチレンイミンがより好ましい。
【0067】
ポリイミンとカルボン酸の縮合物の原料となるカルボン酸としては、液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、好ましくは炭素数10以上30以下、より好ましくは炭素数12以上24以下、さらに好ましくは炭素数16以上22以下の飽和又は不飽和の脂肪族カルボン酸が好ましく、直鎖の飽和又は不飽和の脂肪族カルボン酸がより好ましい。具体的なカルボン酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の直鎖飽和脂肪族カルボン酸;オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の直鎖不飽和脂肪族カルボン酸等が挙げられる。
【0068】
また、ポリイミンとカルボン酸の縮合物の原料となるカルボン酸は、ヒドロキシ基等の置換基を有していてもよく、液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、ヒドロキシ基を置換基として有する、ヒドロキシカルボン酸であることが好ましい。ヒドロキシカルボン酸としては、メバロン酸、リシノール酸、12-ヒドロキシステアリン酸等のヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。ヒドロキシカルボン酸はその縮合体であってもよい。
【0069】
上記観点から、ポリイミンとカルボン酸の縮合物の原料となるカルボン酸としては、好ましくは炭素数10以上30以下、より好ましくは炭素数12以上24以下、さらに好ましくは炭素数16以上22以下のヒドロキシ脂肪族カルボン酸、及びその縮合体が好ましく、12-ヒドロキシステアリン酸及びその縮合体がより好ましい。
【0070】
ポリイミンとカルボン酸の縮合物の具体例としては、ソルスパース11200、ソルスパース13940(以上、いずれも日本ルーブリゾール社製)等が挙げられる。
【0071】
ポリイミンとカルボン酸の縮合物の重量平均分子量は、液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、好ましくは2000以上、より好ましくは4000以上、さらに好ましくは8000以上である。また、液体現像剤の定着性を向上させる観点から、好ましくは50000以下、より好ましくは40000以下、さらに好ましくは30000以下である。なお、ポリイミンとカルボン酸の縮合物の重量平均分子量は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0072】
分散剤の添加量は、トナー粒子の凝集を抑制し、液体現像剤の粘度を低減する観点から、トナー粒子100質量部に対して、有効分として好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは2質量部以上である。また、液体現像剤の現像性及び定着性を向上させる観点から、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。
【0073】
また、分散剤中のポリイミンとカルボン酸の縮合物の含有量は、トナー粒子の凝集を抑制し、液体現像剤の粘度を低減する観点、及び湿式粉砕時にトナー粒子の粉砕性を向上させ小粒径の液体現像剤を得る観点から、分散剤の有効分中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは実質的に100質量%、さらに好ましくは100質量%である。
【0074】
トナー粒子、絶縁性液体、及び分散剤の混合方法としては、攪拌混合装置により攪拌する方法等が好ましい。
【0075】
撹拌混合装置は、特に限定はされないが、トナー粒子分散液の生産性及び保存安定性を向上させる観点から、高速攪拌混合装置が好ましく、具体的には、デスパ(浅田鉄工社製)、T.K.ホモミクサー、T.K.ホモディスパー、T.K.ロボミックス(以上、いずれもプライミクス社製)、クレアミックス(エム・テクニック社製)、ケイディーミル(ケイディー・インターナショナル社製)等が好ましい。
【0076】
トナー粒子と絶縁性液体及び分散剤を高速攪拌混合装置により混合することによって、トナー粒子が予備分散され、トナー粒子分散液を得ることができ、次の湿式粉砕による液体現像剤の生産性が向上する。
【0077】
トナー粒子分散液の固形分濃度は、液体現像剤の画像濃度を向上させる観点から、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは33質量%以上である。また、液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。なお、トナー粒子分散液の固形分濃度は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0078】
[湿式粉砕]
湿式粉砕とは、絶縁性液体中に分散させたトナー粒子を、絶縁性液体に分散した状態で機械的に粉砕処理する方法である。
【0079】
湿式粉砕に使用する装置としては、例えば、アンカー翼等の一般に用いられている撹拌混合装置を用いることができる。撹拌混合装置の中では、デスパ(浅田鉄工社製)、T.K.ホモミクサー(プライミクス社製)等の高速攪拌混合装置、ロールミル、ビーズミル、ニーダー、エクストルーダ等の粉砕機及び混練機等が挙げられる。これらの装置は複数を組み合わせることもできる。
【0080】
これらの中では、液体現像剤中のトナー粒子の粒径を小さくする観点、及び液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点、及びトナー粒子分散液の粘度を低減する観点から、ビーズミルの使用が好ましい。
【0081】
ビーズミルでは、用いるメディアの粒径や充填率、ローターの周速度、滞留時間等を制御することにより所望の粒径、粒径分布を持ったトナー粒子を得ることができる。
【0082】
以上のように、本発明の液体現像剤は、
工程1:樹脂及び顔料を溶融混練し、粉砕してトナー粒子を得る工程、
工程2:工程1で得られたトナー粒子に分散剤を加え、絶縁性液体中に分散させ、トナー粒子分散液を得る工程、及び
工程3:工程2で得られたトナー粒子分散液を湿式粉砕し、液体現像剤を得る工程
を含む方法により製造することが好ましい。
【0083】
液体現像剤の固形分濃度は、液体現像剤の画像濃度を向上させる観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上である。また、液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。なお、液体現像剤の固形分濃度は、後述の実施例に記載の方法により測定される。トナー粒子分散液調製後、希釈、濃縮等の操作がなければ、トナー粒子分散液の固形分濃度が液体現像剤の固形分濃度となる。
【0084】
液体現像剤中のトナー粒子の体積中位粒径(D50)は、液体現像剤中のトナー粒子の粒径を小さくし、液体現像剤の画質を向上させる観点から、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下、さらに好ましくは2.5μm以下である。また、液体現像剤の粘度を低減する観点から、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1.0μm以上、さらに好ましくは1.5μm以上である。なお、液体現像剤中のトナー粒子の体積中位粒径(D50)は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0085】
液体現像剤の25℃における粘度は、液体現像剤の定着性を向上させる観点から、好ましくは50mPa・s以下、より好ましくは40mPa・s以下、さらに好ましくは37mPa・s以下、さらに好ましくは35mPa・s以下である。また、液体現像剤中でのトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、好ましくは3mPa・s以上、より好ましくは5mPa・s以上、さらに好ましくは6mPa・s以上、さらに好ましくは7mPa・s以上である。なお、液体現像剤の粘度は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0086】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の液体現像剤及びその製造方法を開示する。
【0087】
<1> ポリエステルを含む樹脂及び顔料を含有するトナー粒子が分散剤の存在下で絶縁性液体中に分散してなる液体現像剤であって、
前記絶縁性液体が、ナフテン系炭化水素を5質量%以上含有し、初留点が190℃以上300℃以下であり、
前記分散剤が、ポリイミンとカルボン酸の縮合物を含有する、
液体現像剤。
【0088】
<2> ポリエステルの含有量は、樹脂中、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、実質的に100質量%がさらに好ましく、100質量%、即ち樹脂として、ポリエステルのみを用いることがさらに好ましい、前記<1>記載の液体現像剤。
<3> ポリエステルのアルコール成分が、1,2-プロパンジオール及び/又は式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含有することが好ましく、1,2-プロパンジオールを含有することがより好ましい、前記<1>又は<2>記載の液体現像剤。
<4> 1,2-プロパンジオールの含有量が、アルコール成分中、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは実質的に100モル%、さらに好ましくは100モル%である、前記<3>記載の液体現像剤。
<5> ポリエステルのカルボン酸成分が、テレフタル酸及び/又はフマル酸を含有することが好ましく、テレフタル酸を含有することがより好ましい、前記<1>〜<4>いずれか記載の液体現像剤。
<6> テレフタル酸の含有量が、カルボン酸成分中、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは実質的に100モル%、さらに好ましくは100モル%である、前記<5>記載の液体現像剤。
<7> ポリエステルの軟化点が、好ましくは160℃以下、より好ましくは130℃以下、さらに好ましくは120℃以下、さらに好ましくは110℃以下であり、好ましくは70℃以上、より好ましくは75℃以上である、前記<1>〜<6>いずれか記載の液体現像剤。
<8> ポリエステルのガラス転移温度が、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下、さらに好ましくは60℃以下であり、好ましくは40℃以上、より好ましくは45℃以上である、前記<1>〜<7>いずれか記載の液体現像剤。
<9> ポリエステルの酸価が、好ましくは110mgKOH/g以下、より好ましくは70mgKOH/g以下、さらに好ましくは50mgKOH/g以下、さらに好ましくは30mgKOH/g以下であり、好ましくは3mgKOH/g以上、より好ましくは5mgKOH/g以上、さらに好ましくは8mgKOH/g以上である、前記<1>〜<8>いずれか記載の液体現像剤。
<10> 顔料の含有量が、樹脂100質量部に対して、好ましくは100質量部以下、より好ましくは70質量部以下、さらに好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは25質量部以下であり、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、さらに好ましくは15質量部以上である、前記<1>〜<9>いずれか記載の液体現像剤。
<11> トナー粒子が、トナー原料を溶融混練した後に粉砕する工程を含む方法により得られる、前記<1>〜<10>いずれか記載の液体現像剤。
<12> 絶縁性液体の25℃における粘度が、好ましくは1.0mPa・s以上、より好ましくは1.2mPa・s以上、さらに好ましくは1.3mPa・s以上であり、好ましくは30mPa・s以下、より好ましくは10mPa・s以下、さらに好ましくは5mPa・s以下、さらに好ましくは3mPa・s以下である、前記<1>〜<11>いずれか記載の液体現像剤。
<13> ナフテン系炭化水素の含有量が、絶縁性液体中、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは35質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは45質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下である、前記<1>〜<12>いずれか記載の液体現像剤。
<14> 絶縁性液体が、さらに、脂肪族炭化水素を含有することが好ましい、前記<1>〜<13>いずれか記載の液体現像剤。
<15> 絶縁性液体の初留点が、好ましくは200℃以上、より好ましくは203℃以上であり、好ましくは290℃以下、より好ましくは285℃以下、さらに好ましくは280℃以下である、前記<1>〜<14>いずれか記載の液体現像剤。
<16> 絶縁性液体の乾点が、好ましくは200℃以上、より好ましくは220℃以上であり、好ましくは350℃以下、より好ましくは330℃以下、さらに好ましくは320℃以下である、前記<1>〜<15>いずれか記載の液体現像剤。
<17> ポリイミンとカルボン酸の縮合物の原料となるポリイミンは、ポリアルキレンイミンが好ましく、ポリエチレンイミンがより好ましい、前記<1>〜<16>いずれか記載の液体現像剤。
<18> ポリイミンとカルボン酸の縮合物の原料となるカルボン酸は、好ましくは炭素数10以上30以下、より好ましくは炭素数12以上24以下、さらに好ましくは炭素数16以上22以下のヒドロキシ脂肪族カルボン酸、及び/又はその縮合体が好ましく、12-ヒドロキシステアリン酸及び/又はその縮合体がより好ましい、前記<1>〜<17>いずれか記載の液体現像剤。
<19> ポリイミンとカルボン酸の縮合物の重量平均分子量が、好ましくは2000以上、より好ましくは4000以上、さらに好ましくは8000以上であり、好ましくは50000以下、より好ましくは40000以下、さらに好ましくは30000以下である、前記<1>〜<18>いずれか記載の液体現像剤。
<20> 分散剤の添加量が、トナー粒子100質量部に対して、有効分として好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは2質量部以上であり、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である、前記<1>〜<19>いずれか記載の液体現像剤。
<21> ポリイミンとカルボン酸の縮合物の含有量が、分散剤の有効分中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは実質的に100質量%、さらに好ましくは100質量%である、前記<1>〜<20>いずれか記載の液体現像剤。
<22> 液体現像剤の固形分濃度が、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である、前記<1>〜<21>いずれか記載の液体現像剤。
<23> 液体現像剤中のトナー粒子の体積中位粒径(D50)が、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下、さらに好ましくは2.5μm以下であり、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1.0μm以上、さらに好ましくは1.5μm以上である、前記<1>〜<22>いずれか記載の液体現像剤。
<24> 液体現像剤の25℃における粘度が、好ましくは50mPa・s以下、より好ましくは40mPa・s以下、さらに好ましくは37mPa・s以下、さらに好ましくは35mPa・s以下であり、好ましくは3mPa・s以上、より好ましくは5mPa・s以上、さらに好ましくは6mPa・s以上、さらに好ましくは7mPa・s以上である、前記<1>〜<23>いずれか記載の液体現像剤。
<25> ポリエステルを含む樹脂及び顔料を含有するトナー粒子が分散剤の存在下で絶縁性液体中に分散してなる液体現像剤の製造方法であって、
工程1:樹脂及び顔料を溶融混練し、粉砕してトナー粒子を得る工程、
工程2:工程1で得られたトナー粒子に分散剤を加え、絶縁性液体中に分散させ、トナー粒子分散液を得る工程、及び
工程3:工程2で得られたトナー粒子分散液を湿式粉砕し、液体現像剤を得る工程
を含み、
前記絶縁性液体が、ナフテン系炭化水素を5質量%以上含有し初留点が190℃以上300℃以下であり、
前記分散剤が、ポリイミンとカルボン酸の縮合物を含有する、
液体現像剤の製造方法。
<26> トナー粒子分散液の固形分濃度が、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは33質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である、前記<25>記載の液体現像剤。
<27> 湿式粉砕に、ビーズミルを使用することが好ましい、前記<25>又は<26>記載の液体現像剤の製造方法。
【実施例】
【0089】
樹脂等の物性は、以下の方法により測定した。
【0090】
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター「CFT-500D」(島津製作所社製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出す。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
【0091】
〔樹脂のガラス転移温度〕
示差走査熱量計「DSC210」(セイコー電子工業社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで昇温し、吸熱ピークを測定する。吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とする。
【0092】
〔樹脂の酸価〕
JIS K0070の方法により測定する。但し、測定溶媒のみJIS K0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更する。
【0093】
〔絶縁性液体と混合する前のトナー粒子の体積中位粒径〕
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター社製)
アパチャー径:100μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマンコールター社製)
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター社製)
分散液:エマルゲン109P(花王社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB:13.6)を5質量%の濃度となるよう前記電解液に溶解させる。
分散条件:前記分散液5mlに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、前記電解液25mlを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製する。
測定条件:前記電解液100mlに、3万個の粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度となるように、前記試料分散液を加え、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
【0094】
〔絶縁性液体及び液体現像剤の25℃における粘度〕
6mL容のガラス製サンプル管「スクリューNo.2」(マルエム社製)に測定液を4〜5mL入れ、回転振動式粘度計「ビスコメイトVM-10A-L」(セコニック社製)を用いて、25℃にて粘度を測定する。
【0095】
〔絶縁性液体の初留点及び乾点〕
ASTM D86に規定される方法により測定する。
【0096】
〔絶縁性液体中のナフテン系炭化水素の含有量〕
JIS K2536-2に規定される方法により測定する。
【0097】
〔分散剤溶液の固形分濃度〕
分散剤溶液10質量部を真空乾燥機にて8.3kPa、100℃にて4時間乾燥させ、以下の式より固形分濃度を計算する。
【0098】
【数1】
【0099】
〔ポリイミンとカルボン酸の縮合物の重量平均分子量(Mw)〕
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により分子量分布を測定し、重量平均分子量を求める。
(1) 試料溶液の調製
濃度が0.2g/100mlになるように、分散剤をクロロホルムに溶解させる。次いで、この溶液をポアサイズ0.2μmのフッ素樹脂フィルター「FP-200」(住友電気工業社製)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とする。
(2) 分子量測定
下記の測定装置と分析カラムを用い、溶離液として100mmol/LのファーミンDM2098(花王社製)のクロロホルム溶液を、毎分1mlの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させる。そこに試料溶液100μlを注入して測定を行う。試料の分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出する。このときの検量線には、数種類の単分散ポリスチレン(東ソー社製のA-500(Mw 5.0×102)、A-5000(Mw 5.97×103)、F-2(Mw 1.81×104)、F-10(Mw 9.64×104)、F-40(Mw 4.27×105))を標準試料として作成したものを用いる。
測定装置:HLC-8220GPC(東ソー社製)
分析カラム:K-804L(昭和電工社製)
【0100】
〔分散剤Aの重量平均分子量(Mw)〕
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により分子量分布を測定し、重量平均分子量を求める。
(1) 試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mlになるように、分散剤(分散剤溶液から絶縁性液体を留去)をテトラヒドロフランに溶解させた。次いで、この溶液をポアサイズ0.2μmのフッ素樹脂フィルター「FP-200」(住友電気工業社製)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とした。
(2) 分子量測定
下記の測定装置と分析カラムを用い、溶離液としてテトラヒドロフランを、毎分1mlの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させる。そこに試料溶液100μlを注入して測定を行う。試料の分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出する。このときの検量線には、数種類の単分散ポリスチレン(東ソー社製のA-500(Mw 5.0×102)、A-1000(Mw 1.01×103)、A-2500(Mw 2.63×103)、A-5000(Mw 5.97×103)、F-1(Mw 1.02×104)、F-2(Mw 1.81×104)、F-4(Mw 3.97×104)、F-10(Mw 9.64×104)、F-20(Mw 1.90×105)、F-40(Mw 4.27×105)、F-80(Mw 7.06×105)、F-128(Mw 1.09×106))を標準試料として作成したものを用いる。
測定装置:HLC-8220GPC(東ソー社製)
分析カラム:GMHXL+G3000HXL(東ソー社製)
【0101】
〔トナー粒子分散液及び液体現像剤の固形分濃度〕
試料10質量部をヘキサン90質量部で希釈し、遠心分離装置「H-201F」(コクサン社製)を用いて、回転数25000r/minにて、20分間回転させる。静置後、上澄み液をデカンテーションにて除去した後、90質量部のヘキサンで希釈し、同様の条件で再び遠心分離を行う。上澄み液をデカンテーションにて除去した後、下層を真空乾燥機にて0.5kPa、40℃にて8時間乾燥させ、以下の式より固形分濃度を計算する。
【0102】
【数2】
【0103】
〔液体現像剤中のトナー粒子の体積中位粒径(D50)〕
レーザー回折/散乱式粒径測定装置「マスターサイザー2000」(マルバーン社製)を用いて、測定用セルにアイソパーG(エクソンモービル社製、イソパラフィン、25℃における粘度1mPa・s)を加え、散乱強度が5〜15%になる濃度で、粒子屈折率1.58(虚数部0.1)、分散媒屈折率1.42の条件にて、体積中位粒径(D50)を測定する。
【0104】
樹脂製造例
表1に示す原料モノマーと、エステル化触媒を、窒素導入管、98℃の熱水を通した分留管を装備した脱水管、攪拌機及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、180℃まで昇温した後、210℃まで5時間かけて昇温を行い、反応率が90%に達するまで反応させ、さらに8.3kPaにて反応を行い、軟化点が87℃に達した時点で反応を終了し、樹脂Aを得た。樹脂Aの物性を表1に示す。なお、反応率とは、生成反応水量(mol)/理論生成水量(mol)×100の値をいう。
【0105】
【表1】
【0106】
分散剤製造例
絶縁性液体「エクソールD110」(エクソンモービル社製)90.5gを、冷却管、窒素導入管、撹拌機及び熱電対を装備した2L容の四つ口フラスコに入れ、窒素ガスで反応容器内を置換した。反応容器内を95℃に加温して、表2に示す原料モノマーと重合開始剤の混合物を2時間かけて滴下し、重合反応を行った。滴下終了後、95℃でさらに3時間反応させて、分散剤Aの溶液を得た。分散剤Aの重量平均分子量は9600、分散剤A溶液の固形分濃度は62質量%であった。なお、ポリイミンとカルボン酸の縮合物と同様に、溶剤としてクロロホルムを用いて測定した分散剤Aの重量平均分子量は1200であった。
【0107】
【表2】
【0108】
実施例及び比較例で用いた絶縁性液体を表3に示す。
【0109】
【表3】
【0110】
実施例1〜5及び比較例1、3
樹脂A 85質量部及び顔料「ECB-301」(大日精化社製、フタロシアニンブルー15:3)15質量部を、予め20L容のヘンシェルミキサーを使用し、回転数1500r/min(周速度21.6m/sec)で3分間攪拌混合後、以下に示す条件で溶融混練した。
【0111】
〔溶融混練条件〕
連続式二本オープンロール型混練機「ニーデックス」(日本コークス工業社製、ロール外径:14cm、有効ロール長:55cm)を使用した。連続式二本オープンロール型混練機の運転条件は、高回転側ロール(フロントロール)回転数75r/min(周速度32.4m/min)、低回転側ロール(バックロール)回転数35r/min(周速度15.0m/min)、原料投入側端部のロール間隙0.1mmであった。ロール内の加熱媒体温度及び冷却媒体温度は、高回転側ロールの原料投入側が90℃及び混練物排出側が85℃であり、低回転側ロールの原料投入側が35℃及び混練物排出側が35℃であった。また、原料混合物の上記混練機への供給速度は10kg/h、上記混練機中の平均滞留時間は約3分間であった。
【0112】
上記で得られた混練物を冷却ロールで冷却した後、ハンマーミルを用いて1mm程度に粗粉砕した。得られた粗粉砕物を気流式ジェットミル「IDS」(日本ニューマチック社製)により微粉砕及び分級し、体積中位粒径(D50)が10μmのトナー粒子を得た。
【0113】
得られたトナー粒子105gと表4に示す絶縁性液体187.1g、及び分散剤「ソルスパース13940」(ルーブリゾール社製、ポリイミンとカルボン酸の縮合物、有効分40%、重量平均分子量24200)7.9gを2L容のポリエチレン製容器に入れ、「T.K.ロボミックス」(プライミクス社製)を用いて、氷冷下、回転数7000r/minにて30分間攪拌を行い、固形分濃度36.1質量%のトナー粒子分散液を得た。
【0114】
次に、得られたトナー粒子分散液を、直径0.8mmのジルコニアビーズを用いて、体積充填率60体積%にて、6筒式サンドミル「TSG-6」(アイメックス社製)で回転数1300r/min(周速度4.8m/sec)にて4時間湿式粉砕した。ビーズをろ過により除去し、絶縁性液体で固形分濃度を25質量%に希釈して、表4に示す物性を有する液体現像剤を得た。
【0115】
実施例6
実施例1において、分散剤を「ソルスパース11200」(ルーブリゾール社製、ポリイミンとカルボン酸の縮合物、有効分50%、重量平均分子量10400)6.3gに、表4に示す絶縁性液体の使用量を188.7gに、それぞれ変更した以外は実施例1と同様にして、表4に示す物性を有する液体現像剤を得た。
【0116】
比較例2
実施例4において、絶縁性液体の使用量を189.9gに、分散剤とその使用量を分散剤A 5.1gに、それぞれ変更した以外は実施例4と同様にして、表4に示す物性を有する液体現像剤を得た。
【0117】
【表4】
【0118】
試験例1〔粉砕性〕
表4に示す、4時間湿式粉砕した後の液体現像剤中のトナー粒子の体積中位粒径(D50)の値から粉砕性を、以下の評価基準に従って評価した。結果を表5に示す。数値が小さいほど粉砕性(分散剤の分散性能)に優れることを示す。
【0119】
A:体積中位粒径が2.0μm未満
B:体積中位粒径が2.0μm以上2.5μm未満
C:体積中位粒径が2.5μm以上3.0μm未満
D:体積中位粒径が3.0μm以上
【0120】
試験例2〔保存安定性〕
液体現像剤10gを20mLのガラス製サンプル管「スクリューNo.5」(マルエム社製)に入れ、40℃の恒温槽にて12時間保存した。保存前後の体積中位粒径を測定し、その差分の値から保存安定性を評価した。結果を表5に示す。数値が0に近いほど保存安定性に優れることを示す。
【0121】
試験例3〔低温定着性〕
「PODグロスコート紙」(王子製紙社製)に液体現像剤を滴下し、ワイヤーバーにより乾燥後の質量が1.2g/m2になるように薄膜を作製した。
【0122】
作製した薄膜を、60℃の恒温槽中で10秒間保持した後、「OKI MICROLINE 3010」(沖データ社製)の定着機を外部に取り出した外部定着機にて、定着ロールの温度を90℃に設定し、140mm/secの定着速度で定着させた。その後、定着ロール温度を100℃に設定し、同様の操作を行った。これを160℃まで10℃ずつ上昇させながら、各温度で未定着画像の定着処理を行い、定着画像を得た。
【0123】
得られた定着画像にメンディングテープ「Scotchメンディングテープ810」(3M社製、幅18mm)を貼り付け、500gの荷重がかかるようにローラーでテープに圧力をかけた後、テープを剥離した。テープ剥離前と剥離後の画像濃度を、色彩計「Spectroeye」(X-Rite社製)にて測定した。画像印字部は各3点測定し、その平均値を画像濃度として算出した。剥離後の画像濃度/剥離前の画像濃度×100の値から定着率(%)を算出し、定着率が最初に90%以上となる定着ロールの温度を最低定着温度とし、低温定着性を評価した。結果を表5に示す。数値が小さいほど低温定着性に優れることを示す。なお、定着率が90%以上となるとともに定着ロールへのオフセットを生じた場合には、「定着窓なし」とする。
【0124】
【表5】
【0125】
表5の結果から明らかなように、比較例1〜3と対比して、実施例1〜6の液体現像剤は、粉砕性、低温定着性に優れ、保存安定性にも優れることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明の液体現像剤は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像等に好適に用いられるものである。