(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記スリットを形成している外周によって得られる電気長が、送信又は受信される前記信号の波長の1/2となることを特徴とする請求項1に記載のMIMOアンテナ装置。
前記第1短絡部と、前記第2短絡部と、前記第1給電部と、前記第2給電部と、前記第1開放端部と、前記第2開放端部とが、前記第1近接対向部及び前記第2近接対向部に対して垂直に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のMIMOアンテナ装置。
前記第1開放端部と平行に隣接する位置に前記第1アンテナの電気長を調整する第1調整部が設けられ、前記第2開放端部と平行に隣接する位置に前記第2アンテナの電気長を調整する第2調整部が設けられていることを特徴とする請求項3に記載のMIMOアンテナ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されたアンテナ装置900の場合、小型化は可能であるが、電界強度の弱いショートスタブ911Aとショートスタブ911Bとを近接させていて、電界強度の比較的強い部分を近接させずに構成させているため、アンテナ間アイソレーション特性に対する効果が弱く、必要とされるアンテナ間アイソレーションを得ることが困難であった。
【0009】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、小型化に適すると共に、必要とされるアンテナ間アイソレーション特性を得ることができるMIMOアンテナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題を解決するために、本発明のMIMOアンテナ装置は、それぞれ同一の周波数帯域の信号を送信及び又は受信する第1アンテナ及び第2アンテナと、前記第1アンテナ及び前記第2アンテナが載置された絶縁基板と、を備え、前記絶縁基板にはグランドパターンと、第1給電点と、第2給電点と、前記グランドパターンに接続された接地点とが設けられ、前記第1アンテナ及び前記第2アンテナが、それぞれ逆F型アンテナを構成しており、前記第1アンテナが前記第1給電点に接続される第1給電部及び前記接地点に接続される第1短絡部を有し、前記第2アンテナが前記第2給電点に接続される第2給電部及び前記接地点に接続される第2短絡部を有したMIMOアンテナ装置であって、前記第1アンテナと前記第2アンテナとは、前記第1短絡部と前記第2短絡部との間を通る仮想中心線に対して線対称であり、前記第1アンテナの開放端を含む第1開放端部と前記第2アンテナの開放端を含む第2開放端部とが互いに離間して配置されていて、前記第1アンテナと前記第2アンテナとの間に前記仮想中心線を挟んでスリットが形成されていて、前記第1アンテナ及び前記第2アンテナが、前記スリットを隔てて近接して対向している第1近接対向部及び第2近接対向部を有していると共に、前記第1近接対向部及び前記第2近接対向部が、前記第1アンテナ及び前記第2アンテナのそれぞれの中央部より前記第1開放端部の側又は前記第2開放端部の側に位置して
おり、前記第1短絡部と前記第2短絡部とが接続されていると共に、前記第1アンテナと前記第2アンテナとが1枚の金属板によって形成されている、という特徴を有する。
【0011】
このように構成されたMIMOアンテナ装置では、第1アンテナと第2アンテナとの間の仮想中心線を挟んでスリットを形成させ、このスリットを隔てて近接して対向している第1近接対向部及び第2近接対向部を、第1アンテナ及び第2アンテナのそれぞれの中央部より第1開放端部の側又は第2開放端部の側に位置させるようにしたので、電界強度の比較的強い部分を近接対向させることができる。その結果、アンテナ間アイソレーション特性に対する効果を強めることができる。そのため、小型化に適すると共に、必要とされるアンテナ間アイソレーション特性を得ることができる。
また、このように構成されたMIMOアンテナ装置では、第1アンテナと第2アンテナとの相対的な位置精度を高くすることができるため、設計通りの特性を出しやすい。
【0012】
また、上記の構成において、前記スリットを形成している外周によって得られる電気長が、送信又は受信される前記信号の波長の1/2となる、という特徴を有する。
【0013】
このように構成されたMIMOアンテナ装置では、スリットを形成している外周によって得られる電気長を送信又は受信される信号の波長の1/2としたので、第1アンテナと第2アンテナとを隔てているスリットを最適の大きさにすることができる。そのため、アンテナ間アイソレーションを最大に得ることができる。
【0018】
また、上記の構成において、前記第1短絡部と、前記第2短絡部と、前記第1給電部と、前記第2給電部と、前記第1開放端部と、前記第2開放端部とが、前記第1近接対向部及び前記第2近接対向部に対して垂直に設けられている、という特徴を有する。
【0019】
このように構成されたMIMOアンテナ装置では、第1アンテナ及び第2アンテナを立体的に形成したので、平面視におけるMIMOアンテナ装置の寸法を小さくすることができる。そのため小型化に最適となる。
【0020】
また、上記の構成において、前記第1開放端部と平行に隣接する位置に前記第1アンテナの電気長を調整する第1調整部が設けられ、前記第2開放端部と平行に隣接する位置に前記第2アンテナの電気長を調整する第2調整部が設けられている、という特徴を有する。
【0021】
このように構成されたMIMOアンテナ装置では、MIMOアンテナ装置を第1の帯域以外に第1の帯域より周波数の高い第2の帯域でも動作させようとした場合、第1調整部と第1開放端部との間、及び第2調整部と第2開放端部との間の、それぞれの容量結合の度合いを調整することができるため、第2の帯域におけるアンテナ長を容易に調整することができる。
【0022】
また、上記の構成において、前記絶縁基板には、前記第1アンテナの開放端が接続される第1接続ランドと、前記第2アンテナの開放端が接続される第2接続ランドとが設けられており、前記第1接続ランドが前記第1調整部と対向していると共に、前記第2接続ランドが前記第2調整部と対向している、という特徴を有する。
【0023】
このように構成されたMIMOアンテナ装置では、第1接続ランドが第1調整部と対向し、第2接続ランドが第2調整部と対向しているため、第1接続ランド及び第2接続ランドをそれぞれ第1アンテナ及び第2アンテナの一部として機能させることができる。そのため、MIMOアンテナ装置の寸法をより小さくすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のMIMOアンテナ装置は、第1アンテナと第2アンテナとの間の仮想中心線を挟んでスリットを形成させ、このスリットを隔てて近接して対向している第1近接対向部及び第2近接対向部を、第1アンテナ及び第2アンテナのそれぞれの中央部より第1開放端部の側又は第2開放端部の側に位置させるようにしたので、電界強度の比較的強い部分を近接対向させることができる。その結果、アンテナ間アイソレーション特性に対する効果を強めることができる。そのため、小型化に適すると共に、必要とされるアンテナ間アイソレーション特性を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照しながら説明する。尚、本明細書では、特に断りの無い限り、各図面のX1側を右側、X2側を左側、Y1側を奥側、Y2側を手前側、Z1側を上側、Z2側を下側として説明する。
【0027】
最初に、実施形態に係るMIMOアンテナ装置100の外観形状、絶縁基板4の構成、及び第1アンテナ10と第2アンテナ20それぞれにおける構造について
図1乃至
図4を用いて説明する。
【0028】
図1は、第1実施形態に係るMIMOアンテナ装置100の外観を示す斜視図であり、
図2は、絶縁基板4の構成を示す拡大斜視図である。
図3は、MIMOアンテナ装置100の拡大斜視図であり、
図4は、MIMOアンテナ装置100の(a)平面図、(b)正面図、(c)背面図、(d)右側面図、及び(e)左側面図である。
【0029】
図1に示すように、MIMOアンテナ装置100は、金属板で立体的に構成された第1アンテナ10及び第2アンテナ20と、第1アンテナ10及び第2アンテナ20が載置された絶縁基板4と、によって構成されている。第1アンテナ10及び第2アンテナ20は、矩形状をした絶縁基板4の奥側(Y1側)の短辺に沿って載置されており、第1アンテナ10及び第2アンテナ20それぞれの一部が絶縁基板4に固定されている。絶縁基板4の手前側(Y2側)には、矩形状をしたグランドパターン8が形成されている。また、同じく、手前側(Y2側)には、通信回路60が搭載されていて、第1アンテナ10及び第2アンテナ20は、それぞれ通信回路60に接続されている。通信回路60は、無線LAN回路が組み込まれた集積回路(図示せず)やその他の電子部品(図示せず)で構成されていて、高周波信号入出力端子(図示せず)を有している。尚、通信回路60は、絶縁基板4の上側(Z1側)の面だけでなく、絶縁基板4の下側(Z2側)の面や内層面に構成されていても良い。
【0030】
図2に示すように、絶縁基板4上には、前述したグランドパターン8と、グランドパターン8に接続された接地点3と、第1給電点1と、第2給電点2と、第1接続ランド6と、第2接続ランド7とが設けられている。
【0031】
接地点3は、矩形状をしたグランドパターン8の一方の短辺のほぼ中央の位置に設けられている。また、第1給電点1と第2給電点2とは、接地点3の両側の位置に設けられていて、前述した通信回路60の高周波信号入出力端子(図示せず)にそれぞれ接続されている。第1給電点1と接地点3には第1アンテナ10が取り付けられ、第2給電点2と接地点3には第2アンテナ20が取り付けられる。また、第1接続ランド6には第1アンテナ10が取り付けられ、第2接続ランド7には第2アンテナ20が取り付けられる。
【0032】
第1アンテナ10及び第2アンテナ20が絶縁基板4に取り付けられている様子を
図3に示す。第1アンテナ10と第2アンテナ20とは、それぞれ逆F型アンテナを構成していると共に、それぞれ無線LANで使用される同一の周波数帯域の信号を送信及び又は受信するように構成されている。また、それぞれ第1の帯域である2.4GHz帯の信号、及び第1の帯域より周波数の高い第2の帯域である5GHz帯の信号を送信及び又は受信することができるように形成されている。尚、2.4GHz帯とは、2.40GHz〜2.49GHzを指し、5GHz帯とは、5.17GHz〜5.83GHzを指す。
【0033】
第1アンテナ10は第1給電部11及び第1短絡部12を有し、第2アンテナ20は第2給電部21及び第2短絡部22を有していて、第1アンテナ10及び第2アンテナ20は、第1短絡部12と第2短絡部22との間を通る仮想中心線R1に対して線対称に構成されている。また、第1アンテナ10及び第2アンテナ20には、第1給電点1及び第2給電点2を介して、前述した通信回路60からそれぞれ給電される。
【0034】
第1給電部11は、その先端部となる第1給電端11aが絶縁基板4に対して平行に形成されていて、第1給電点1に半田等によって電気的に接続されると共に絶縁基板4に固着される。第2給電部21も、その先端部となる第2給電端21aが絶縁基板4に対して平行に形成されていて、第2給電点2に半田等によって電気的に接続されると共に絶縁基板4に固着される。
【0035】
図3、
図4(a)、及び
図4(b)に示すように、MIMOアンテナ装置100は、第1短絡部12と第2短絡部22とが仮想中心線R1を挟んで接続されていると共に、第1アンテナ10と第2アンテナ20とが1枚の金属板によって形成されている。
図3に示すように、第1短絡部12及び第2短絡部22は、その共通の先端部となる第1短絡端12a及び第2短絡端22aが絶縁基板4に対して平行に形成されていて、接地点3に半田等によって電気的に接続されると共に絶縁基板4に固着される。
【0036】
図3及び
図4(a)、
図4(b)に示すように、第1給電部11と第2給電部21と第1短絡部12と第2短絡部22とは、絶縁基板4に対して垂直に形成されており、それらの上端部が絶縁基板4に対して平行に形成された第1天板部16及び第2天板部26に繋がっている。第1天板部16及び第2天板部26は、
図4(a)に示すように、それぞれミアンダ状に形成されている。
【0037】
ミアンダ状に形成されている第1天板部16及び第2天板部26はそれぞれ、
図3及び
図4(a)、
図4(d)、
図4(e)に示すように、それぞれの端部に第1開放端部13及び第2開放端部23を有すると共に、第1開放端部13及び第2開放端部23は、絶縁基板4の方向に垂直に折り曲げられて形成されている。第1開放端部13及び第2開放端部23は、それぞれ第1開放端13a及び第2開放端23aを有し、絶縁基板4上の第1接続ランド6及び第2接続ランド7に半田等によって電気的に接続されると共に絶縁基板4に固着される。第1アンテナ10の第1開放端13aを含む第1開放端部13と第2アンテナ20の第2開放端23aを含む第2開放端部23とは互いに離間して配置されている。
【0038】
MIMOアンテナ装置100は、
図3及び
図4(a)、
図4(c)に示すように、第1アンテナ10と第2アンテナ20との間の仮想中心線R1を挟んでスリット19を形成している。スリット19は、第1アンテナ10及び第2アンテナ20それぞれのミアンダ形状を組み合わせることによって形成される。スリット19を形成している外周(
図4(a)、
図4(c)に破線で表示)によって得られる電気長L1は、送信又は受信される信号の周波数によって決まり、その電気長L1の大きさによって、アンテナ間アイソレーションの最も良くなる周波数を設定することができる。尚、その詳細については後述する。
【0039】
第1天板部16及び第2天板部26はそれぞれ、スリット19を隔てて近接して対向している第1近接対向部14及び第2近接対向部24を有している。そして、
図4(a)に示すように、第1近接対向部14及び第2近接対向部24は、ミアンダ形状をした第1天板部16における経路の中央部16a又は第2天板部26における経路の中央部26aより第1開放端部13の側又は第2開放端部23の側に位置している。言い換えれば、第1近接対向部14及び第2近接対向部24は、第1アンテナ10及び第2アンテナ20それぞれの、第1短絡端12a又は第2短絡端22aから第1開放端13a又は第2開放端23aまでの経路における中央部より第1開放端部13の側又は第2開放端部23の側に位置している。従って、第1アンテナ10及び第2アンテナ20は、それぞれの電界強度の比較的強い部分を近接対向させていることになる。そして、
図4(a)に示す第1近接対向部14及び第2近接対向部24の間の離間距離D1の大きさは、スリット19を形成している外周によって得られる電気長L1と併せて、送信又は受信する信号の周波数、特に第1の帯域である2.4GHz帯の周波数におけるアンテナ間アイソレーションを考慮して決定される。
【0040】
図3及び
図4(c)、
図4(d)、
図4(e)に示すように、MIMOアンテナ装置100は、更に、第1調整部15、第1側板部17、第2調整部25、第2側板部27を有している。第1調整部15は第1天板部16の右側(X1側)の端部から絶縁基板4の方向に垂直に折り曲げられて形成されており、第2調整部25は第2天板部26の左側(X2側)の端部から絶縁基板4の方向に垂直に折り曲げられて形成されている。また、第1側板部17は第1天板部16の奥側(Y1側)の端部から絶縁基板4の方向に垂直に折り曲げられて形成されており、第2側板部27は第2天板部26の奥側(Y1側)の端部から絶縁基板4の方向に垂直に折り曲げられて形成されている。従って、第1短絡部12と、第2短絡部22と、第1給電部11と、第2給電部21と、第1開放端部13と、第2開放端部23と、第1調整部15と、第1側板部17と、第2調整部25と、第2側板部27とは、第1アンテナ10の第1近接対向部14及び第2アンテナ20の第2近接対向部24に対して垂直に設けられていることになる。
【0041】
第1調整部15は、
図4(d)に示すように、前述した第1開放端部13と平行に隣接する位置に設けられており、第2調整部25は、
図4(e)に示すように、前述した第2開放端部23と平行に隣接する位置に設けられている。第1調整部15及び第2調整部25は、第1の帯域である2.4GHz帯より周波数の高い第2の帯域である5GHz帯でも動作させるため、5GHz帯でのアンテナ長を調整する目的で設けられている。第1調整部15及び第2調整部25を設けることにより、第1調整部15と第1開放端部13との間、及び第2調整部25と第2開放端部23との間のそれぞれの容量結合の度合いを調整することができる。そのため、第2の帯域即ち5GHz帯におけるアンテナ長を容易に調整することができる。
【0042】
また、第1側板部17及び第2側板部27は、第1天板部16及び第2天板部26それぞれの第1開放端部13及び第2開放端部23に比較的近い位置にあり、その位置の導体幅を大きくするために設けられている。この位置の導体幅を大きくすることにより、第1アンテナ10及び第2アンテナ20の第1開放端部13側及び第2開放端部23側それぞれとグランドとの間に静電容量を持たすことができる。そのことによって第2の帯域即ち5GHz帯におけるそれぞれの共振周波数を下側にずらす働きをするため、結果的にMIMOアンテナ装置100の小型化に貢献させることができる。
【0043】
次に、実施形態に係るMIMOアンテナ装置100の動作について
図5乃至
図7を用いて説明する。
【0044】
図5は、MIMOアンテナ装置100の2.4GHz帯におけるアンテナ電流経路を示し、
図6は、5GHz帯におけるアンテナ電流経路を示す。
図7は、MIMOアンテナ装置100の2.4GHz帯におけるリターンロス特性及びアンテナ間アイソレーション特性を示すグラフである。ここで、
図7(a)は、スリット19を形成している外周によって得られる電気長L1を、送信又は受信される信号の波長(λ)の1/2より小さくした場合、即ちL1<λ/2の時の特性を示し、
図7(b)は、L1=λ/2の時の特性を示し、
図7(c)は、L1>λ/2の時の特性を示している。
【0045】
図5に示すように、第1アンテナ10の2.4GHz帯におけるアンテナ電流の電流経路J1は、第1短絡端12aを始点とし、第1開放端13aを終点とした経路となる。また、第2アンテナ20の2.4GHz帯におけるアンテナ電流の電流経路J2は、第2短絡端22aを始点とし、第2開放端23aを終点とした経路となる。第1短絡端12a及び第2短絡端22aにおいてはアンテナ電流が最大となっていると共に電界強度、即ちアンテナ電圧が最小となっており、第1開放端13a及び第2開放端23aにおいてはアンテナ電流が最小となっていると共に電界強度が、即ちアンテナ電圧最大となっている。従って、第1アンテナ10及び第2アンテナ20の中央部16a及び26aより第1開放端部13の側又は第2開放端部23の側に位置している第1近接対向部14及び第2近接対向部24は、前述したように、電界強度が比較的強い位置に配置されていることになる。そのため、アンテナ間アイソレーション特性に対するより強い効果が期待できる。尚、電流経路J1及び電流経路J2それぞれの長さは、第1アンテナ10及び第2アンテナ20の2.4GHz帯における電気長に対応した長さに設定されている。
【0046】
図6に示すように、5GHz帯における第1アンテナ10の電流経路K1及び第2アンテナ20の電流経路K2はそれぞれ複数存在しており、2.4GHz帯における場合とはその動作状態が異なっている。第1アンテナ10及び第2アンテナ20の電流経路K1及び電流経路K2の始点は、それぞれ仮想中心線R1の近傍付近にあると考えられる。前述したように、第1アンテナ10及び第2アンテナ20は、2.4GHz帯における電気長に対応した長さを有しているため、周波数の高い5GHz帯においては、第1アンテナ10及び第2アンテナ20それぞれの導体の途中で電界が最小になる点、即ちアンテナ電圧がほぼ0Vとなる点が生じる。その点が仮想中心線R1の近傍付近の第1近接対向部14及び第2近接対向部24の近辺にも存在する。言い換えれば、第1アンテナ10及び第2アンテナ20それぞれの導体の途中でアンテナ電圧がほぼ0Vとなる点の位置を、仮想中心線R1の近傍付近の第1近接対向部14及び第2近接対向部24の近辺になるように設定している。
【0047】
従って、第1アンテナ10及び第2アンテナ20の5GHz帯における電流経路K1及び電流経路K2の始点は第1短絡部12及び第2短絡部22以外に第1近接対向部14及び第2近接対向部24近辺にもあり、電流経路K1及び電流経路K2の終点は第1開放端部13、第1調整部15、第2開放端部23、及び第2調整部25それぞれの端部にある。尚、電流経路K1及び電流経路K2それぞれの長さは、第1アンテナ10及び第2アンテナ20の5GHz帯における電気長に対応した長さに設定されている。
【0048】
前述したように、MIMOアンテナ装置100は、第1アンテナ10と第2アンテナ20との間にスリット19を形成しており、
図4(a)、
図4(c)に破線で表示したスリット19を形成している外周によって得られる電気長L1は、送信又は受信される信号の周波数によって決定される。そして、その電気長L1によって、アンテナ間アイソレーションが最も良くなる周波数を設定することができる。尚、リターンロス特性及びアンテナ間アイソレーション特性は、周波数が高ければ比較的容易に改善できるが、周波数が低くなればなるほど改善が困難になる。従って、MIMOアンテナ装置100では、スリット19を形成している外周によって得られる電気長L1を、5GHz帯ではなく、2.4GHz帯のアンテナ特性を改善するために設定することとした。そのため、5GHz帯においては、特に本発明の適用を行わない。
【0049】
図7(a)、
図7(b)、
図7(c)には、MIMOアンテナ装置100の、スリット19を形成している外周によって得られる電気長L1を変えた場合の、2.4GHz帯におけるリターンロス特性及びアンテナ間アイソレーション特性を示している。
【0050】
図7(a)に示すように、スリット19を形成している外周によって得られる電気長L1を、2.4GHz帯の信号の波長の1/2より小さく設定した場合、即ちL1<λ/2の時、アンテナ間アイソレーション特性の最良の周波数は、2.6GHz付近にあり、2.4GHz帯においては悪化している。従って、電気長L1が短過ぎることが分かる。
【0051】
また、
図7(c)に示すように、スリット19を形成している外周によって得られる電気長L1を、2.4GHz帯の信号の波長の1/2より大きく設定した場合、即ちL1>λ/2の時、アンテナ間アイソレーション特性の最良の周波数は、2.3GHz付近にあり、この場合も、2.4GHz帯においては悪化している。従って、電気長L1が長過ぎるすぎることが分かる。
【0052】
そして、
図7(b)に示すように、スリット19を形成している外周によって得られる電気長L1を、2.4GHz帯の信号の波長の1/2に設定した場合、即ちL1=λ/2の時、アンテナ間アイソレーション特性の最良の周波数は、2.4GHz〜2.5GHzの間にあり、2.4GHz帯において最良の値を示している。また、リターンロス特性もこの帯域で良い値を示している。従って、電気長L1としては、L1=λ/2が最適であることが分かる。
【0053】
図7(a)、
図7(b)、
図7(c)に示したように、スリット19を形成している外周によって得られる電気長L1によって、アンテナ間アイソレーションが最も良くなる周波数を設定することができる。また、スリット19を形成している外周によって得られる電気長L1を、送信又は受信される信号の波長の1/2となるように設定すれば、アンテナ間アイソレーションを最大に得ることができる。
【0054】
このように、MIMOアンテナ装置100では、第1アンテナ10と第2アンテナ20との間の仮想中心線R1を挟んでスリット19を形成させた。そして、このスリット19を隔てて近接して対向している第1近接対向部14及び第2近接対向部24を、第1アンテナ10及び第2アンテナ20のそれぞれの中央部より第1開放端部13の側又は第2開放端部23の側に位置させるようにしたので、電界強度の比較的強い部分を近接対向させることができる。その結果、アンテナ間アイソレーション特性に対する効果を強めることができる。そのため、小型化に適すると共に、必要とされるアンテナ間アイソレーション特性を得ることができる。
【0055】
また、スリット19を形成している外周によって得られる電気長L1を信号の波長の1/2としたので、第1アンテナ10と第2アンテナ20とを隔てているスリット19を最適の大きさにすることができる。そのため、アンテナ間アイソレーションを最大に得ることができる。
【0056】
また、第1アンテナ10と第2アンテナ20とを1枚の金属板によって形成したので、第1アンテナ10と第2アンテナ20との相対的な位置精度を高くすることができる。そのため、設計通りの特性を出しやすい。
【0057】
また、第1短絡部12と、第2短絡部22と、第1給電部11と、第2給電部21と、第1開放端部13と、第2開放端部23とを、第1アンテナ10の第1近接対向部14及び第2アンテナ20の第2近接対向部24に対して垂直に設けた。そのため、第1アンテナ10及び第2アンテナ20を立体的に形成できるので、平面視におけるMIMOアンテナ装置100の寸法を小さくすることができる。そのため小型化に最適となる。
【0058】
また、MIMOアンテナ装置100を第1の帯域以外に第1の帯域より周波数の高い第2の帯域でも動作させようとした場合、第1調整部15及び第2調整部25を設けたので、第1調整部15と第1開放端部13との間、及び第2調整部25と第2開放端部23との間の、それぞれの容量結合の度合いを調整することができる。そのため、第2の帯域におけるアンテナ長を容易に調整することができる。
【0059】
また、第1接続ランド6が第1調整部15と対向し、第2接続ランド7が第2調整部25と対向しているため、第1接続ランド6及び第2接続ランド7をそれぞれ第1アンテナ10及び第2アンテナ20の一部として機能させることができる。そのため、MIMOアンテナ装置100の寸法をより小さくすることができる。
【0060】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0061】
第2実施形態に係るMIMOアンテナ装置200の第1アンテナ30と第2アンテナ40それぞれにおける構造について
図8及び
図9を用いて説明する。
【0062】
図8は、MIMOアンテナ装置200の拡大斜視図であり、
図9は、MIMOアンテナ装置200の(a)平面図、(b)正面図、(c)背面図、(d)右側面図、及び(e)左側面図である。
【0063】
前述したMIMOアンテナ装置100とMIMOアンテナ装置200との構造的な相違点は、MIMOアンテナ装置100における第1短絡部12及び第2短絡部22の部分だけであるので、構造的又は機能的に同一の部分については同一の符号を使用する。また、共通する箇所については説明を省略する場合がある。
【0064】
図8に示すように、MIMOアンテナ装置200は、金属板で立体的に構成された第1アンテナ30及び第2アンテナ40と、第1アンテナ30及び第2アンテナ40が載置された絶縁基板5と、によって構成されている。第1アンテナ30及び第2アンテナ40は、矩形状をした絶縁基板5の一方の短辺側(Y1側)に載置されており、その一部が絶縁基板5上で接続固定されている。
【0065】
2つの接地点9は、矩形状をしたグランドパターン8の一方の短辺のほぼ中央の位置に、2つ並べて設けられている。また、第1給電点1と第2給電点2とは、接地点9の両側の位置に設けられていて、前述した通信回路60の高周波信号入出力端子(図示せず)にそれぞれ接続されている。右側の接地点9と第1給電点1とには第1アンテナ30が取り付けられ、左側の接地点9と第2給電点2とには第2アンテナ40が取り付けられる。また、第1接続ランド6には第1アンテナ30が取り付けられ、第2接続ランド7には第2アンテナ40が取り付けられる。
【0066】
第1アンテナ30と第2アンテナ40とは、それぞれ逆F型アンテナを構成していると共に、第1アンテナ30と第2アンテナ40とは、それぞれ無線LANで使用される同一の周波数帯域の信号を送信及び又は受信するように構成されている。取り扱う周波数としては、それぞれ2.4GHz帯の信号及び5GHz帯の信号を送信及び又は受信することができるように形成されている。第1アンテナ30及び第2アンテナ40には、第1給電点1及び第2給電点2を介して、前述した通信回路60からそれぞれ給電される。
【0067】
第1アンテナ30は第1給電点1に接続される第1給電部11及び右側の接地点9に接続される第1短絡部32を有し、第2アンテナ40は第2給電点2に接続される第2給電部21及び左側の接地点9に接続される第2短絡部42を有している。また、第1アンテナ30と第2アンテナ40とは、第1短絡部12と第2短絡部22との間を通る仮想中心線R2に対して線対称に構成されている。
【0068】
図8、
図9(a)、及び
図9(b)に示すように、MIMOアンテナ装置200は、第1短絡部32と第2短絡部42とが切り離されていると共に、第1アンテナ30と第2アンテナ40とが別々の金属板によって形成されている。MIMOアンテナ装置100とMIMOアンテナ装置200との構造的な相違点は、この箇所だけである。
図8、及び
図9(a)に示すように、第1短絡部32及び第2短絡部42は、それぞれの先端部となる第1短絡端32a及び第2短絡端42aが絶縁基板5に対して平行に形成されていて、2つの接地点9にそれぞれ半田等によって電気的に接続されると共に絶縁基板5に固着される。
【0069】
MIMOアンテナ装置200は、
図8、
図9(a)、
図9(b)、及び
図9(c)に示すように、第1アンテナ30と第2アンテナ40との間にスリット39を形成している。スリット39は、第1アンテナ30及び第2アンテナ40それぞれのミアンダ形状を組み合わせることによって形成される。スリット39を形成している外周(
図9(a)、
図9(b)、
図9(c)に破線で表示)によって得られる電気長L2は、送信又は受信される信号の周波数によって決定され、その電気長L2の大きさによって、アンテナ間アイソレーションが最も良くなる周波数を設定することができる。
【0070】
MIMOアンテナ装置200のスリット39の外周によって得られる電気長L2の大きさによるアンテナ間アイソレーションへの効果は、
図7に示したMIMOアンテナ装置100における電気長L2の大きさによるアンテナ間アイソレーションへの効果と同等であるため、その説明を省略する。尚、MIMOアンテナ装置200においては、第1アンテナ30と前記第2アンテナ40とをスリット39によって物理的に隔てることができるため、MIMOアンテナ装置100に比較してアンテナ間アイソレーションをより改善することができる。
【0071】
このように、MIMOアンテナ装置200では、第1アンテナ30と第2アンテナ40とを別々の金属板によって形成したので、第1アンテナ30と第2アンテナ40とを物理的に隔てることができる。従って、アンテナ間アイソレーションをより大きく得ることができる。
【0072】
以上説明したように、本発明のMIMOアンテナ装置は、第1アンテナと第2アンテナとの間の仮想中心線を挟んでスリットを形成させ、このスリットを隔てて近接して対向している第1近接対向部及び第2近接対向部を、第1アンテナ及び第2アンテナのそれぞれの中央部より第1開放端部の側又は第2開放端部の側に位置させるようにしたので、電界強度の比較的強い部分を近接対向させることができる。その結果、アンテナ間アイソレーション特性に対する効果を強めることができる。そのため、小型化に適すると共に、必要とされるアンテナ間アイソレーション特性を得ることができる。
【0073】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施することが可能である。例えば、本発明ではアンテナの構成材料として金属板を使用したが、アンテナの構成材料として絶縁基板に形成された導体パターンを使用するようにしても良い。