(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
水を含有する水相と、カチオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤を含有する油相とを、連続式攪拌装置を用いて攪拌混合して乳化物(a)を調製する工程(1)と、前記乳化物(a)とカプセル粒子とを混合する工程(2)とを有し、
前記工程(1)は、下記混合条件(A)及び(B)で攪拌混合する工程を有する、カプセル粒子含有乳化物の製造方法。
混合条件(A):攪拌の剪断速度γが8500〜41000[s−1]である。
混合条件(B):剪断速度γ[s−1]と、剪断速度8500〜41000[s−1]で攪拌する攪拌装置における滞留時間t[s]との比(γ/t)が8000〜90000の範囲である。
水を含有する水相と、カチオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤を含有する油相とを、バッチ式攪拌装置を用いて攪拌混合して乳化物(a)を調製する工程(1’)と、前記乳化物(a)とカプセル粒子とを混合する工程(2)とを有し、
前記工程(1’)は、下記混合条件(A)及び(B’)で攪拌混合する工程を有する、カプセル粒子含有乳化物の製造方法。
混合条件(A):攪拌の剪断速度γが8500〜41000[s−1]である。
混合条件(B’):剪断速度γ[s−1]と、剪断速度8500〜41000[s−1]で攪拌する攪拌装置における攪拌時間t’[s]との比(γ/t’)が8000〜90000の範囲である。
乳化物(a)の粘度を50〜700mPa・s、チキソトロピーインデックスを2.0〜5.0にする、請求項1〜8のいずれか1項に記載のカプセル粒子含有乳化物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<カプセル粒子含有乳化物>
本発明におけるカプセル粒子含有乳化物は、水とカチオン界面活性剤とノニオン界面活性剤と含む乳化物にカプセル粒子が分散した液状物である。また、本発明におけるカプセル粒子含有乳化物は、香料組成物、シリコーン化合物等を含有してもよい。
【0010】
(カチオン界面活性剤)
カチオン界面活性剤としては、炭素数12〜36の炭化水素基を分子内に1つ以上有する3級アミン化合物もしくはその塩又は該3級アミン化合物の4級化物が挙げられる。炭素数12〜36の炭化水素基は、アミド基、エステル基及びエーテル基から選ばれる1種以上の基で分断されていてもよい。
このようなカチオン界面活性剤としては、例えば、下記一般式(III)〜(X)に示す3級アミン化合物又はその有機酸もしくは無機酸による中和物、該3級アミン化合物の4級化物が挙げられる。
【0012】
上記一般式(III)中、R
3は、それぞれ独立にアミド基、エステル基及びエーテル基から選ばれる1種以上の基で分断されていてもよい、炭素数12〜36の炭化水素基を示す。上記一般式(IV)〜(X)中、R
4は、それぞれ独立にアミド基、エステル基及びエーテル基から選ばれる1種以上の基で分断されていてもよい、炭素数12〜36の炭化水素基を示す。
【0013】
前記3級アミン化合物(III)を構成するR
3は、炭素数12〜36の炭化水素基である。不飽和基を有する場合、シス体とトランス体が存在するが、この質量比はシス/トランス=25/75〜100/0が好ましく、40/60〜80/20が特に好ましい。
また、飽和と不飽和炭化水素基の質量比は95/5〜50/50であることが好ましい。
【0014】
また、前記3級アミン化合物(IV)〜(X)を構成するR
4は、炭素数12〜36の脂肪酸からカルボキシ基を除いた残基であり、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、直鎖脂肪酸又は分岐脂肪酸から誘導される炭化水素基である。不飽和脂肪酸の場合、シス体とトランス体が存在するが、この質量比はシス/トランス=25/75〜100/0が好ましく、40/60〜80/20が特に好ましい。
R
4のもととなる脂肪酸は、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、オレイン酸、エライジン酸、部分水添パーム油脂肪酸(ヨウ素価10〜60)、部分水添牛脂脂肪酸(ヨウ素価10〜60)等が挙げられる。なかでも好ましいのは、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、エライジン酸を所定量組み合わせ、飽和/不飽和の質量比が95/5〜50/50、シス/トランス体質量比が40/60〜80/20、ヨウ素価が10〜50、炭素数18の含有率が80質量%以上であり、炭素数20の脂肪酸を2質量%以下、炭素数22の脂肪酸が1質量%以下となるように調整した脂肪酸組成物である。ここで、式中に存在するR
4は、すべて同一であってもよいし、それぞれ異なっていても構わない。
【0015】
前記3級アミン化合物の中和に用いる酸としては、塩酸、硫酸、メチル硫酸が挙げられる。本発明で用いる3級アミンは、塩酸、硫酸、メチル硫酸によって中和されたアミン塩の形で用いることが好ましい。この中和工程は、3級アミンを予め中和したものを水に分散してもよく、酸水溶液中に3級アミンを液状又は固体状で投入してもよく、3級アミンと酸成分を同時に投入してもよい。また、上記3級アミンの4級化に用いる4級化剤としては、塩化メチルやジメチル硫酸が挙げられる。
【0016】
一般式(IV)、(V)の化合物は、上記脂肪酸組成物、又は脂肪酸メチルエステル組成物とメチルジエタノールアミンとの縮合反応により合成することができる。分散安定性を良好にする観点から、(IV)/(V)で表される存在比率が質量比で99/1〜50/50となるように、合成することが好ましい。さらに、これらの4級化物を用いる場合には、4級化剤として塩化メチルやジメチル硫酸等を用いるが、低分子量であり4級化に所要する4級化剤の質量が少ない点で塩化メチルがより好ましい。合成の際、分散安定性の観点から、(IV)と(V)で示されるエステルアミンの4級化物の存在比率を質量比で99/1〜50/50とすることが好ましい。また、(IV)と(V)を4級化する場合、一般的に4級化反応後も4級化されていないエステルアミンが残留する。[4級化物]/[4級化されていないエステルアミン]の質量比は、エステル基の加水分解安定性の観点から、99/1〜70/30の範囲内であることが好ましい。
【0017】
一般式(VI)、(VII)、(VIII)の化合物は、上記脂肪酸組成物、又は脂肪酸メチルエステル組成物とトリエタノールアミンとの縮合反応により合成することができる。合成の際、分散安定性を良好にする観点から、[(VI)+(VII)]/(VIII)で表される存在比率を質量比で99/1〜50/50とすることが好ましい。さらに、この4級化物を用いる場合には、4級化剤として塩化メチルやジメチル硫酸等を用いるが、反応性の観点からジメチル硫酸がより好ましい。分散安定性の観点から、[(VI)の4級化物+(VII)の4級化物]/[(VIII)の4級化物]で示されるエステルアミンの4級化物の存在比率は質量比で99/1〜50/50とすることが好ましい。また、(VI)、(VII)及び(VIII)を4級化する場合、一般的に4級化反応後も4級化されていないエステルアミンが残留する。[4級化物]/[4級化されていないエステルアミン]で表される質量比は、エステル基の加水分解安定性の観点から、99/1〜70/30であることが好ましい。
【0018】
一般式(IX)、(X)の化合物は、上記脂肪酸組成物とN−メチルエタノールアミンとアクリロニトリルの付加物より、「J.Org.Chem.,26,3409(1960)」に記載の公知の方法で合成したN−(2−ヒドロキシエチル)−N−メチル−1,3−プロピレンジアミンとの縮合反応により合成することができる。合成の際、(IX)/(X)で表される存在比率を質量比で99/1〜50/50とすることが好ましい。さらに、この4級化物を用いる場合には塩化メチルで4級化するが、[(IX)の4級化物]/「(X)の4級化物」で示されるエステルアミンの4級化物の存在比率が質量比で99/1〜50/50となるように、合成することが好ましい。また、(IX)、(X)を4級化する場合、一般的に4級化反応後も4級化されていないエステルアミンが残留する。[4級化物]/[4級化されていないエステルアミン]で表される質量比は、エステル基の加水分解安定性の観点から、99/1〜70/30であることが好ましい。
【0019】
また、例えば、カチオン界面活性剤として、以下に示す炭素数が12〜36の高級脂肪酸由来の脂肪酸アミドアルキル3級アミン又はその塩を用いることもでき、該脂肪酸は飽和でも不飽和であってもよい。
脂肪酸アミドアルキル3級アミンとしては、例えば、カプリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ラウリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ミリスチン酸ジメチルアミノプロピルアミド、パルミチン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ベヘニン酸ジメチルアミノプロピルアミド、オレイン酸ジメチルアミノプロピルアミド等の脂肪酸アミドアルキル3級アミン又はその塩等が挙げられる。
なかでも、それ自体の臭気が低く良好なことから、カプリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ラウリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ミリスチン酸ジメチルアミノプロピルアミド、パルミチン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ベヘニン酸ジメチルアミノプロピルアミド、オレイン酸ジメチルアミノプロピルアミドが好ましく、パルミチン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミドがより好ましく、パルミチン酸ジメチルアミノプロピルアミドとステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミドとの混合物がさらに好ましい。
【0020】
長鎖脂肪酸アミドアルキル3級アミンの具体的な商品としては、例えば、東邦化学株式会社製のカチナールMPAS−R(商品名、パルミチン酸ジメチルアミノプロピルアミド/ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド(質量比)=3/7の混合物)、ライオンアクゾ株式会社製のアーミンAPA168−65E(商品名、パルミチン酸ジメチルアミノプロピルアミド/ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド(質量比)=30/70の混合物65質量%のエタノール溶液)等が挙げられる。
【0021】
上記の「脂肪酸アミドアルキル3級アミン又はその塩」は、例えば、脂肪酸あるいは脂肪酸低級アルキルエステル、動・植物性油脂等の脂肪酸誘導体と、ジアルキルアミノアルキルアミンとを縮合反応させた後、未反応のジアルキルアミノアルキルアミンを、減圧又は窒素ブローにて留去することにより得られる。
【0022】
脂肪酸又は脂肪酸誘導体としては、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸、エルカ酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、とうもろこし油脂肪酸、牛脂脂肪酸、パーム核油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、オリーブ油脂肪酸等、又はこれらのメチルエステル、エチルエステル、グリセライド等が挙げられる。中でも、繊維製品処理剤に配合した際、繊維製品への吸着性能に優れることから、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸が好ましい。これら脂肪酸又は脂肪酸誘導体は、1種単独又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0023】
上述したカチオン界面活性剤の中でも、上記式(III)〜(X)に示す3級アミン化合物又はその有機酸もしくは無機酸による中和物、該3級アミンの4級化物が好ましい。
繊維製品処理剤に配合した際、カプセル粒子の繊維製品への吸着効率及び吸着の持続性の向上が図れることから、上記式(VI)〜(VIII)で表される3級アミンの4級化物の一種以上を用いることがより好ましい。
【0024】
上述したカチオン界面活性剤における炭化水素基の炭素数は、12〜24であることが好ましい。炭素数が12未満であると、充分な柔軟効果が得られないおそれがあり、炭素数が24超であると、疎水性が強くなり水への分散が著しく低下し、繊維製品処理剤に配合した際、繊維に対する吸着が不均一となって充分な柔軟効果が得られないおそれがある。
また、カチオン界面活性剤に生分解性を付与するため、前記R
3及び前記R
4がエステル基を有することが好ましい。具体的には、柔軟効果と生分解性との両立を図る観点から、カチオン界面活性剤は、分断基としてエステル基を有する炭素数12〜24の炭化水素基を1以上含有するカチオン界面活性剤であることが好ましい。
上述したカチオン界面活性剤は、1種単独又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。2種以上のカチオン界面活性剤を組み合わせる場合、特に繊維製品処理剤に配合した際、処理した繊維製品の柔軟性を良好にするために、長鎖炭化水素基(炭素数12以上)を2つ又は3つ有する化合物をカチオン界面活性剤中に50質量%以上配合することが好ましい。
【0025】
本発明の製造方法により製造されるカプセル粒子含有乳化物中のカチオン界面活性剤の含有量は、所望とする機能に応じて決定でき、例えば、好ましくは5〜20質量%、より好ましくは8〜18質量%、さらに好ましくは10〜15質量%である。
カチオン界面活性剤の含有量が前記下限値以上であれば、カチオン界面活性剤の配合効果(例えば衣料用柔軟剤として用いた場合、柔軟効果や抗菌効果など)が充分に得られる。また、カプセル粒子の繊維製品等への吸着を充分に促進できる。前記上限値以下であれば、水中油型の乳化物が良好に形成される。
また、カプセル粒子含有乳化物においては、カチオン界面活性剤/カプセル粒子で表される質量比が、好ましくは5〜200、より好ましくは10〜150、さらに好ましくは10〜30である。
カチオン界面活性剤/カプセル粒子で表される質量比が前記下限値未満であると、カプセル粒子の繊維製品等への吸着量が不充分となるおそれがあり、前記上限値超としても、カプセル粒子の繊維製品等への吸着性向上の効果が飽和し、さらなる吸着量の向上が図れないことがある。
【0026】
(ノニオン界面活性剤)
ノニオン界面活性剤は、主に、カプセル粒子含有乳化物中でのカチオン界面活性剤の乳化分散安定性を向上する目的で用いられる。特に、ノニオン界面活性剤を配合すると、商品価値上、充分なレベルの凍結復元安定性が確保されやすい。
ノニオン界面活性剤としては、例えば、高級アルコール、高級アミン又は高級脂肪酸から誘導されるものを用いることができる。なかでも、高級アルコールのアルキレンオキシド付加物が好ましい。
【0027】
高級アルコールは一級でも二級でもよく、その長鎖炭化水素鎖部分は、分岐鎖状であっても直鎖状であってもよく、不飽和があってもよく、炭素鎖長に分布があってもよい。
炭素鎖長は、好ましくは炭素数8〜20、より好ましくは10〜18である。炭化水素鎖が不飽和基を含む場合には、炭素数は16〜18であるものが好ましく、不飽和基の立体異性体構造は、シス体もしくはトランス体でもよく、又は両者の混合物でもよい。
ノニオン界面活性剤として好適な高級アルコールアルキレンオキシド付加物の原料アルコールとしては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、2−ブチルオクタノール、イソトリデシルアルコール、イソヘキサデシルアルコール、2−ブチルデカノール、2−ヘキシルオクタノール、2−ヘキシルデカノール、2−オクチルデカノール、2−ヘキシルドデカノール、2−オクタデカノール、2−ドデシルヘキサデカノールなどの天然系もしくは合成系の高級アルコールを使用することができる。
【0028】
一方、高級アルコールに付加するアルキレンオキシドは、エチレンオキシド(EO)単独が好ましいが、エチレンオキシドにプロピレンオキシド(PO)又はブチレンオキシド(BO)を併用してもよく、これらアルキレンオキシドの平均付加モル数は10〜100モルが好ましく、より好ましくは20〜80モルである。
【0029】
アルキレンオキシド付加物のノニオン界面活性剤として、より具体的には、ラウリルアルコールの平均EO20モル付加物、オレイルアルコールの平均EO50モル付加物(日光ケミカルズ株式会社製)、一級イソデシルアルコールの平均EO20モル付加物、一級イソトリデシルアルコールの平均EO40モル付加物(ライオン株式会社製のTDA400−75)、一級イソトリデシルアルコールの平均EO60モル付加物(ライオン株式会社製のTA600−75)、一級イソへキサデシルアルコールの平均EO60モル付加物(ライオン株式会社製のエソミンT70)、二級の炭素数12〜14のアルコールの平均EO30モル付加物(株式会社日本触媒製のソフタノール300)、牛脂アルキルアミンの平均EO60モル付加物、ラウリン酸の平均EO30モル付加物などが挙げられる。
それらの具体例として、日本エマルジョン株式会社のエマレックスシリーズ、三洋化成株式会社のエマルミンシリーズ、ライオン株式会社のTAシリーズ、TDAシリーズ、エソミンシリーズ、株式会社日本触媒製ソフタノール300などのソフタノールシリーズ、BASF社製Lutensolシリーズなどを使用することができる。
また、上記化合物には、原料であるアルコール、アミン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどのポリアルキレングリコール等が未反応分としてノニオン界面活性剤中に10質量%以下で含まれてもよい。
【0030】
上述したノニオン界面活性剤は、1種単独又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
上述したノニオン界面活性剤の中でも、カプセル粒子含有乳化物の分散安定性が良好となることから、高級アルコールのエチレンオキシド付加物が好ましく、一級イソトリデシルアルコールの平均EO60モル付加物(ライオン株式会社製のTA600−75)が特に好ましい。
本発明の製造方法により製造されるカプセル粒子含有乳化物中のノニオン界面活性剤の含有量は、所望とする機能に応じて決定でき、例えば、好ましくは0.1〜5質量%、より好ましくは0.5〜4質量%、さらに好ましくは0.5〜3質量%である。
ノニオン界面活性剤の含有量が前記下限値以上であると、カプセル粒子含有乳化物中でのカチオン界面活性剤の乳化分散安定性、カプセル粒子含有乳化物の凍結復元安定性がより向上する。前記上限値以下であれば、カプセル粒子含有乳化物の粘度の上昇を抑えて使用性の面で良好なものとすることができる。
【0031】
(カプセル粒子)
カプセル粒子は、有効成分を含有する芯物質(c1)(以下「(c1)成分」ということがある)を、水不溶性の高分子化合物(c2)(以下「(c2)成分」ということがある)で内包したものである。有効成分を、カプセル粒子の形態で乳化物に含有することで、有効成分の有する効果を持続させることができる。
【0032】
カプセル粒子の比重(25℃、水を基準)は、0.80〜1.20が好ましく、0.85〜1.15がより好ましく、0.90〜1.10がさらに好ましい。カプセル粒子の比重が前記範囲であると、カプセル粒子含有乳化物中でのカプセル粒子の分散安定性がより良好となる。
【0033】
カプセル粒子の粒径は、特に制限されるものではなく、例えば単芯型構造の場合、平均粒径は1〜10μmが好ましく、1〜6μmがより好ましく、2〜5μmがさらに好ましい。平均粒径が小さすぎると、有効成分の対象物への吸着性が低減し、充分な効果が得られにくい。例えば、繊維製品処理剤に配合した際、繊維製品への吸着量が低減し、繊維製品を乾燥した直後の香りが低下する場合がある。平均粒径が大きすぎると、カプセル粒子含有乳化物中でのカプセル粒子の分散安定性が低下することがある。
本発明において「平均粒径」は、島津製作所製の粒度分布測定装置SALD−7100、高濃度サンプル測定システムSALD−HC71、測定・解析ソフトWing SALDII−7100HCを用い、カプセル粒子含有乳化物の液温25℃で、屈折率2.65−0.20i、測定吸光度範囲0.01−0.20にて、体積基準のメジアン径(μm)により測定される値である。
また、単芯型構造とは、芯物質の塊が、カプセル粒子中に1つだけ存在する構造をいう。
【0034】
(c1)成分は、香り付与を目的として香料組成物や、日焼け止め成分として紫外線吸収剤又は紫外線散乱剤等を含有してもよい。加えて、芯物質には、必要に応じて酸化防止剤、防腐剤等の添加剤を含有してもよい。
紫外線吸収剤としては、サリチル酸フェニル、シノキサート、パラアミノ安息香酸エステル、又はこれらのいずれか1種以上を含む組成物などが挙げられる。
紫外線散乱剤としては、酸化チタン、酸化亜鉛、又はこれらのいずれか1種以上を含む組成物などが挙げられる。
【0035】
カプセル粒子全体に占める(c1)成分の含有割合は、芯物質の種類等を勘案して適宜決定でき、好ましくは30〜95質量%、より好ましくは45〜90質量%、さらに好ましくは70〜85質量%である。
カプセル粒子全体に占める(c1)成分の含有割合が前記下限値以上であれば、カプセル粒子含有乳化物の使用中に、カプセル粒子のカプセル壁が崩壊し、芯物質中の有効成分を放出させることができる。カプセル粒子全体に占める(c1)成分の含有割合が前記上限値以下であれば、芯物質をカプセル壁で容易に内包することができる。
【0036】
(c2)成分は、(c1)成分を内包するためのカプセル粒子のカプセル壁を構成する物質で、水不溶性の高分子化合物である。
本発明において、「水不溶性」とは、25℃の水100gへの溶解度が1g未満であることをいう。また、「高分子」は、ポリエチレングリコールを標準物質としてゲルパーメーションクロマトグラフィーで測定される重量平均分子量が1,000〜5,000,000のものをいう。
【0037】
(c2)成分の質量平均分子量は、好ましくは3,000〜1,000,000、より好ましくは5,000〜500,000である。これにより、有効成分の効果を持続させることができる。
【0038】
(c2)成分としては、芯物質の性状、製造性、適度なカプセル壁の強度、コスト等を勘案して決定でき、例えば、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ポリビニル樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ポリメタクリル酸樹脂等の合成高分子化合物;油脂、ワックス等の油性膜形成物質等を挙げることができる。これらの(c2)成分は、1種単独又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0039】
ウレタン樹脂は、多官能性イソシアネート化合物とポリオールもしくはポリアミン化合物との縮合反応により得られるものである。
多官能性イソシアネート化合物としては、ポリフェニルイソシアネート、トルエンジイソシアネート等が挙げられる。ポリオール化合物としては、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。ポリアミン化合物としては、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
なかでも、ポリフェニルイソシアネートとヘキサメチレンジアミン、トルエンジイソシアネートとジエチレングリコールの組み合わせを好適に用いることができる。
メラミン樹脂は、メラミンとホルムアルデヒドから誘導されるメチロールメラミンからなるプレポリマーを加熱硬化して得られるものである。
ポリアクリル酸樹脂を構成するモノマーとしては、アクリル酸、もしくはその低級アルキルエステル等が挙げられる。
ポリビニル樹脂を構成するモノマーとしては、エチレン、無水マレイン酸、スチレン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
ポリメタクリル酸樹脂を構成するモノマーとしては、メタクリル酸、もしくはその低級アルキルエステル等が挙げられる。
油脂としては、硬化油、固形脂肪酸及び金属塩等が挙げられる。
ワックスとしては、密ロウ、木ロウ、パラフィン等が挙げられる。
【0040】
(c2)成分としては、ポリアクリル酸樹脂、ポリメタクリル酸樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂が好ましく、ウレタン樹脂、メラミン樹脂がより好ましく、ポリフェニルイソシアネートとヘキサメチレンジアミンとから誘導されるポリウレタン樹脂、メラミン樹脂がさらに好ましい。
【0041】
カプセル粒子は、公知の方法により製造でき、例えば、界面重合法、in−situ重合法等が挙げられる。
(c2)成分としてウレタン樹脂を用いる場合、界面重合法が好ましい。界面重合法では、例えば、容器に適宜濃度の乳化剤水溶液を調製しておき、別の容器に芯物質と多官能性イソシアネート化合物との芯物質溶液を調製する。次いで、乳化剤水溶液と芯物質溶液とを高速攪拌機に投入した後、高速攪拌してO/Wエマルションを調製し、次いで、適度な濃度のポリアミン化合物の水溶液を入れて、常温で所定時間攪拌、反応させる。これにより、カプセル壁を硬化させて、カプセル粒子が分散したカプセル粒子分散液を得る。
【0042】
(c2)成分としてメラミン樹脂を用いる場合、in−situ重合法が好ましく、カプセル壁を芯物質の外側から形成させる方法が好適である。例えば、攪拌機を備えた容器にて、芯物質を分散濃度が10〜40質量%になるように水に分散させた後、攪拌によって芯物質が所定の粒径となるように調整して芯物質分散液とする。その際、芯物質分散液の温度は60〜80℃とされる。これとは別に、メラミンとホルムアルデヒドを60〜80℃で5〜20分間縮重合させて水溶性のプレポリマーを調製する。この際、メラミン/ホルムアルデヒド(質量比)は、例えば3/1〜6/1とされる。プレポリマーを芯物質分散液に投入し、次いで、クエン酸、硫酸、塩酸等の酸によりpHを2〜5に調製した後、60〜80℃で3〜6時間重合させることによって、カプセル粒子が分散したカプセル粒子分散液を得る。
【0043】
(c2)成分としてポリアクリル酸樹脂又はポリメタクリル酸樹脂を使用する場合、in−situ重合法が好ましく、カプセル壁を芯物質側から形成させる方法が好適である。例えば、予めアクリル酸エチル、メタクリル酸エチル等のモノマーと、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル等の重合開始剤と、芯物質とを水に分散し、攪拌機で攪拌し、芯物質を任意の粒径に調整した混合分散液を得る。その際、モノマーの配合量は芯物質に対し5〜30質量%とされ、重合開始剤の配合量はモノマーに対し0.1〜5質量%とされる。また、混合分散液の調製は、20〜70℃の温度条件下で行うことが好ましい。
次いで、該混合分散液を60〜80℃とした後、窒素ガスを導入しながら、3〜6時間重合させることによって、カプセル粒子が分散したカプセル粒子分散液を得られる。
【0044】
カプセル粒子の製造に当たっては、カプセル壁の形成を容易にするために、必要に応じて乳化剤、分散剤等を通常の使用量で配合することができる。このような乳化剤又は分散剤としては、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム等のポリスチレンスルホン酸のアルカリ金属塩、エチレン−無水マレイン酸共重合体のアルカリ金属塩等のアニオン系乳化剤又は分散剤、ポリビニルアルコール等の非イオン系乳化剤又は分散剤等が挙げられる。
【0045】
上述したカプセル粒子は、1種単独又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0046】
(香料組成物)
香料組成物は、柔軟剤、繊維用仕上げ剤、繊維製品処理剤や毛髪化粧料等に一般的に用いられる香料成分を1種類以上含む香料組成物である。例えば、香料成分、又は香料成分と溶剤と香料安定化剤等からなる混合物等が挙げられる。
香料組成物をカプセル粒子の芯物質に配合する場合、(c2)成分との反応性及び水溶性が低いものを選択することが好ましい。
前記香料成分としては、例えば、アルデヒド類、フェノール類、アルコール類、エーテル類、エステル類、ハイドロカーボン類、ケトン類、ラクトン類、ムスク類、天然香料、動物性香料等が挙げられる。
【0047】
アルデヒド類としては、例えば、ウンデシレンアルデヒド、ラウリルアルデヒド、アルデヒドC−12MNA、ミラックアルデヒド、α−アミルシンナミックアルデヒド、シクラメンアルデヒド、シトラール、シトロネラール、エチルバニリン、ヘリオトロピン、アニスアルデヒド、α−ヘキシルシンナミックアルデヒド、オクタナール、リグストラール、リリアール、リラール、トリプラール、バニリン、ヘリオナール等が挙げられる。
【0048】
フェノール類としては、例えば、オイゲノール、イソオイゲノール等が挙げられる。
アルコール類としては、例えば、バクダノール、シトロネロール、ジハイドロミルセノール、ジハイドロリナロール、ゲラニオール、リナロール、ネロール、サンダロール、サンタレックス、ターピネオール、テトラハイドロリナロール、フェニルエチルアルコール等が挙げられる。
【0049】
エーテル類としては、例えば、セドランバー、グリサルバ、メチルオイゲノール、メチルイソオイゲノール等が挙げられる。
【0050】
エステル類としては、例えば、シス−3−ヘキセニルアセテート、シス−3−ヘキセニルプロピオネート、シス−3−ヘキセニルサリシレート、p−クレジルアセテート、p−t−ブチルシクロヘキシルアセテート、アミルアセテート、メチルジヒドロジャスモネート、アミルサリシレート、ベンジルサリシレート、ベンジルベンゾエート、ベンジルアセテート、セドリルアセテート、シトロネリルアセテート、デカハイドロ−β−ナフチルアセテート、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、エリカプロピオネート、エチルアセトアセテート、エリカアセテート、ゲラニルアセテート、ゲラニルフォーメート、ヘディオン、リナリルアセテート、β−フェニルエチルアセテート、ヘキシルサリシレート、スチラリルアセテート、ターピニルアセテート、ベチベリルアセテート、o−t−ブチルシクロヘキシルアセテート、マンザネート、アリルヘプタノエート等が挙げられる。
【0051】
ハイドロカーボン類としては、例えば、d−リモネン、α−ピネン、β−ピネン、ミルセン等が挙げられる。
【0052】
ケトン類としては、例えば、α−イオノン、β−イオノン、メチル−β−ナフチルケトン、α−ダマスコン、β−ダマスコン、δ−ダマスコン、シス−ジャスモン、メチルイオノン、アリルイオノン、カシュメラン、ジハイドロジャスモン、イソイースーパー、ベルトフィックス、イソロンジフォラノン、コアボン、ローズフェノン、ラズベリーケトン、ダイナスコン等が挙げられる。
【0053】
ラクトン類としては、例えば、γ−デカラクトン、γ−ウンデカラクトン、γ−ノナラクトン、クマリン、アンブロキサン等が挙げられる。
【0054】
ムスク類としては、例えば、シクロペンタデカノライド、エチレンブラシレート、ガラキソライド、ムスクケトン、トナリッド、ニトロムスク類等が挙げられる。
【0055】
テルペン骨格を有する香料としては、例えば、ゲラニオール(ゼラニオール)、ネロール、リナロール、シトラール、シトロネロール、メントール、ミント、シトロネラール、ミルセン、ピネン、リモネン、テレピネロール、カルボン、ヨノン、カンファー(樟脳)、ボルネオール等が挙げられる。
【0056】
天然香料としては、例えば、オレンジ油、レモン油、ライム油、プチグレン油、ユズ油、ネロリ油、ベルガモット油、ラベンダー油、ラバンジン油、アビエス油、アニス油、ベイ油、ボアドローズ油、イランイラン油、シトロネラ油、ゼラニウム油、ペパーミント油、ハッカ油、スペアミント油、ユーカリ油、レモングラス油、パチュリ油、ジャスミン油、ローズ油、シダー油、ベチバー油、ガルバナム油、オークモス油、パイン油、樟脳油、白檀油、芳樟油、テレピン油、クローブ油、クローブリーフ油、カシア油、ナツメッグ油、カナンガ油、タイム油等の精油が挙げられる。
動物性香料としては、例えば、じゃ香、霊猫香、海狸香、竜涎香等が挙げられる。
【0057】
香料組成物としては、アニスアルデヒド、アンブロキサン、イソイースーパー、γ−ウンデカラクトン、オイゲノール、オレンジテルペンオイル、ガラクソライド、クマリン、ゲラニオール、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、ジハイドロミルセノール、1,8−シネオール、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、ゼラニウムオイル、ターピネオール、ダマスコン、ダマセノン、1−デカナール、テトラハイドロリナロール、トナライド、バクダノール、バニリン、フェニルエチルアルコール、ヘキシルシンナミックアルデヒド、ヘディオン、ヘリオトロピン、ベルテネックス、ベルドックス、ベンジルアセテート、ベンジルサリシレート、メチルイオノン、2−メチルウンデカナール、l−メントール、ラズベリーケトン、リナリルアセテート、リナロール、リモネン、リラール、リリアール、ローズ、ベンジルベンゾエート及びジプロピレングリコールからなる群から選択される少なくとも1種を含有するものが好ましい。
【0058】
香料組成物には、通常用いられる香料用溶剤を配合してもよい。
香料用溶剤としては、アセチン(トリアセチン)、MMBアセテート(3−メトキシ−3−メチルブチルアセテート)、スクロースジアセテートヘキサイソブチレート、エチレングリコールジブチレート、ヘキシレングリコール、ジブチルセバケート、デルチールエキストラ(イソプロピルミリステート)、メチルカルビトール(ジエチレングリコールモノメチルエーテル)、カルビトール(ジエチレングリコールモノエチルエーテル)、TEG(トリエチレングリコール)、安息香酸ベンジル(BB)、プロピレングリコール、フタル酸ジエチル、トリプロピレングリコール、アボリン(ジメチルフタレート)、デルチルプライム(イソプロピルパルミテート)、ジプロピレングリコール(DPG)、ファルネセン、ジオクチルアジペート、トリブチリン(グリセリルトリブタノエート)、ヒドロライト−5(1,2−ペンタンジオール)、プロピレングリコールジアセテート、セチルアセテート(ヘキサデシルアセテート)、エチルアビエテート、アバリン(メチルアビエテート)、シトロフレックスA−2(アセチルトリエチルシトレート)、シトロフレックスA−4(トリブチルアセチルシトレート)、シトロフレックスNo.2(トリエチルシトレート)、シトロフレックスNo.4(トリブチルシトレート)、ドゥラフィックス(メチルジヒドロアビエテート)、MITD(イソトリデシルミリステート)、ポリリモネン(リモネンポリマー)、1,3−ブチレングリコール等が挙げられる。
【0059】
このような香料組成物を芯物質に配合する場合、香料と共に通常用いる溶剤を配合してもよいが、微量混入する場合を除いて水溶性溶剤を用いることを避けなければならない。
これら香料用溶剤を用いる場合、香料組成物中の香料用溶剤の含有量は、例えば、好ましくは0.1〜30質量%、より好ましくは1〜20質量%である。
【0060】
香料組成物は、上記成分以外に、本発明の効果を妨げない限り、必要に応じて、酸化防止剤、防腐剤等の添加剤を含有することができる。
【0061】
香料組成物をカプセル粒子含有乳化物に含有させる場合、カプセル粒子含有乳化物中の香料組成物の含有量の合計(すなわち油相に含まれる香料組成物の含有量とカプセル粒子に含まれる香料組成物の含有量との合計)は、好ましくは0.001〜5質量%、より好ましくは0.01〜4質量%、さらに好ましくは0.05〜3質量%である。
香料組成物の含有量が前記下限値未満であると、香料組成物に求める香りの持続が望めず、前記上限値超であると、経済的に好ましくない。
【0062】
また、香料組成物は、徐放性の制御と嗜好性の点から、常圧での沸点が260℃未満である香料成分を、香料組成物から溶剤を除いた量に対して、好ましくは30質量%以上、より好ましくは45質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、含有するとよい。
【0063】
香料組成物に含有される香料成分の沸点は、例えば「Perfume and Flavor Chemicals」Vol.IandII,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1994)及び「合成香料 化学と商品知識」、印藤元一著、化学工業日報社(1996)及び「Perfume and Flavor Materials of Natural Origin 」,Steffen
Arctander,Allured Pub.Co.(1994)及び「香りの百科」、日本香料協会編、朝倉書店(1989)及び「香料と調香の基礎知識」、産業図書(1995)に記載されており、本明細書ではそれらの文献から引用する。
【0064】
(その他の成分)
本発明の製造方法により製造されるカプセル粒子含有乳化物には、本発明の効果を妨げない範囲で、上述した成分以外に、抗菌剤・防腐剤・殺菌剤(例えば、イソチアゾロン系の有機硫黄化合物、イミダゾール・チアゾール系の有機硫黄化合物、安息香酸類、フェノール系のフェノール化合物、界面活性剤系のカチオン系化合物など)、増粘剤(水溶性又は水膨潤性の高分子化合物など)、水溶性溶剤(エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ペンタンジオール類、ヘキサンジオール類、ヘキシレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等)、シリコーン化合物、酸化防止剤、着色剤、消泡剤、pH調整剤、分散剤などを任意成分として配合できる。
【0065】
(カプセル粒子含有乳化物粒子の粒度分布)
カプセル粒子含有乳化物中の乳化物粒子の平均粒径は、好ましくは2〜4μm、より好ましくは2〜3μmである。
該乳化物粒子の平均粒径が前記下限値以上であると、カプセル粒子含有乳化物の粘度が低くなりすぎず、カプセル粒子の分散安定性がより向上する。前記上限値以下であると、カプセル粒子含有乳化物の粘度増加が起こりにくくなり、容器からの排出性が向上する。
該乳化物粒子の平均粒径の標準偏差が0.30μm以下であることが好ましく、0.25〜0.28μmであることがより好ましい。この標準偏差が前記上限値以下あると、乳化物粒子の分散性がより高まり、経時に伴う粘度変化がより抑制され、カプセル粒子の分散安定性と容器からの排出性がいずれも向上する。この標準偏差は、平均粒径の測定方法と同様にして求められる。
上記の平均粒径、標準偏差を満たす粒度分布とすることで、乳化物粒子とカプセル粒子とが互いに類似した粒度分布となり、最密充填が可能となり、カプセル粒子の分散安定性がより向上する、と考えられる。
【0066】
(粘度)
カプセル粒子含有乳化物の粘度は、用途に応じて決定することができ、例えば、その粘度が50〜700mPa・sであることが好ましく、100〜500mPa・sであることがより好ましい。
カプセル粒子含有乳化物の粘度が好ましい下限値以上であると、カプセル粒子の分散安定性がより向上する。一方、カプセル粒子含有乳化物の粘度が好ましい前記上限値以下であると、容器からの排出性がより向上する。また、ハンドリングが良好となり、繊維製品処理剤等を製造する際の混合性が良好になる。
【0067】
粘度は、株式会社東京計器製のBL型回転式粘度計を用い、以下に示す測定条件で測定できる。
ローター:No.2(粘度が10〜1000mPa・sの場合)、No.3(粘度が1001〜4000mPa・sの場合)
回転数:30rpm、測定温度:25℃(乳化物の温度)、測定時間:20秒後(10回転目の値)
【0068】
(チキソトロピーインデックス)
カプセル粒子含有乳化物におけるチキソトロピーインデックス(TI値)が2.0以上であることが好ましく、2.0〜5.0であることがより好ましく、2.0〜4.0であることがさらに好ましい。TI値が2.0以上であれば、優れたチキソトロピー性が得られ、カプセル粒子の分散安定性がより向上する。しかし、TI値が5.0を超えると、流動性が損なわれることがある。
【0069】
TI値は下記のように測定する。
すなわち、製造から24時間経過したカプセル粒子含有乳化物を25℃に調整した後、B型粘度計(TOKIMEC社製、ローターNo.2)を用い、回転速度6rpmと60rpmの各々10回転後の粘度を測定した。そして、下記式に基づいて、TI値を算出する。
TI値=(6rpm粘度値)/(60rpm粘度値)
TI値は、粘度の剪断速度(粘度計の回転数)依存性(すなわち、チキソトロピー性)を示す数値である。粘度が剪断速度に依存しない水のようなニュートン流体ではTI値が1となる。TI値が1より大きいと、剪断力が小さくなる程、粘度が高くなり、チキソトロピー性を示す。
【0070】
TI値は、後述する製造方法において、油相におけるカチオン界面活性剤とノニオン界面活性剤との混合比率、カチオン界面活性剤の濃度、ノニオン界面活性剤の濃度、油相と水相との混合比率、油相と水相との混合条件(攪拌翼の形状、剪断速度、攪拌装置での滞留時間)等によって調整することができる。特に、油相と水相とを攪拌混合する条件を、後述の混合条件(A)及び(B)にすると、容易にTI値を2以上にできる。
【0071】
(用途)
本発明のカプセル粒子含有乳化物は、衣料用柔軟剤、衣料用洗剤等の繊維製品処理剤、ヘアリンス、化粧品等として好適である。
【0072】
<カプセル粒子含有乳化物の製造方法>
≪第1態様≫
本発明の第1態様のカプセル粒子含有乳化物の製造方法は、水を含有する水相と、カチオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤を含有する油相とを、連続式攪拌装置を用いて攪拌混合して乳化物(a)を調製する工程(1)と、前記乳化物(a)とカプセル粒子とを混合する工程(2)とを有する。
以下、第1態様のカプセル粒子含有乳化物の製造方法の実施形態(第1実施形態、第2実施形態及び第3実施形態)について説明する。
【0073】
(第1実施形態)
第1実施形態の製造方法について
図1を参照して説明する。
第1実施形態のカプセル粒子含有乳化物の製造方法は、油相と水相とを、連続式の高剪断攪拌装置に供給し、攪拌混合して乳化物(a)を調製する工程(1)(
図1の符号10)と、前記乳化物(a)とカプセル粒子とを混合する工程(2)(
図1の符号20)とを有してカプセル粒子含有乳化物を製造する方法である。
【0074】
[工程(1)]
油相は、カチオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤を含有する液相である。
油相には、所望とする機能に応じて、各種の油溶性成分を含有してもよい。油溶性成分としては、香料組成物、シリコーン化合物等が挙げられる。特に、カプセル粒子含有乳化物を繊維製品処理剤として使用する場合には、香料成分の繊維製品処理剤中における分散性を向上させるため、油相に香料組成物を配合することが好ましい。
【0075】
油相は、カチオン界面活性剤の融点以上の温度で混合することにより調製する。
油相の調製方法としては、カチオン界面活性剤を溶融した状態で、ノニオン界面活性剤と混合する方法が挙げられる。混合の際には、例えば、ジャケット付きニーダー、インラインミキサー等を用いることができる。
【0076】
カチオン界面活性剤の融点は、例えば、カチオン界面活性剤10mgをアルミニウム製の密閉セル(液体用、株式会社リガク製)に封入し、示差走査熱量計(THERMOFLEX TAS200、株式会社リガク製)を用い、2℃/分の昇温速度で0℃から80℃まで測定した際の吸熱ピークの最大値を示す温度として求めることができる。
なお、2種以上のカチオン界面活性剤を配合する場合、カチオン界面活性剤の融点は、用いるカチオン界面活性剤を混合し、この混合物の吸熱ピークの最大値として求めることができる。
【0077】
油相中のカチオン界面活性剤の配合量は、カプセル粒子含有乳化物の用途等を勘案して決定でき、例えば、45〜95質量%が好ましく、55〜95質量%がより好ましく、65〜95質量%がさらに好ましい。
油相中のカチオン界面活性剤の配合量が前記下限値以上であれば、カチオン界面活性剤の配合効果、例えば衣料用柔軟剤として用いた場合、柔軟効果や抗菌効果が充分に発揮され、前記上限値以下であれば、油相の粘度が著しく上昇することを抑え、乳化物(a)の粘度を適度なものにできる。
【0078】
油相中のノニオン界面活性剤の配合量は、カプセル粒子含有乳化物の用途等を勘案して決定でき、例えば、1〜40質量%が好ましく、3〜30質量%がより好ましく、5〜20質量%がさらに好ましい。
ノニオン界面活性剤の配合量が前記下限値以上であれば、油剤の乳化に効果的に作用し、前記上限値以下であれば、乳化物(a)の粘度を適度なものにできる。
【0079】
油相にその他の成分を配合する場合、油相中のその他の成分の配合量は、カプセル粒子含有乳化物の用途等を勘案して決定でき、例えば、40質量%以下が好ましく、1〜30質量%がより好ましく、2〜20質量%がさらに好ましい。
例えば、カプセル粒子含有乳化物を衣料用柔軟剤として用いた場合、油相中の香料組成物の配合量が1質量%以上であれば、洗濯終了後、洗濯機から衣類を取り出した時点から乾燥後まで香りを感知できる等、充分に香りを付与でき、40質量%以下であれば、油相のハンドリング性も良好であり、不快なべた付き等を抑制できる。
【0080】
水相は、水と、必要に応じてその他の成分(水溶性抗菌剤、pH調整剤、分散剤等)とを、常法により混合することによって調製する。
また、油相に加え、別途用意した油溶性成分を配合してもよい。油溶性成分は、上記油溶性成分についての説明の中で例示したものと同様のものが挙げられる。
【0081】
工程(1)における油相と水相との混合比率は、油相の種類を勘案して決定でき、液晶を形成しない比率で混合することが好ましい。これにより、適度な大きさの乳化物粒子を容易に調製でき、粘度が制御しやすくなり、工程(2)で乳化物粒子の粒径(粒度分布)を制御しやすくなる。
液晶を形成しないようにするためには、カチオン界面活性剤として前記の式(VI)、(VII)又は(VIII)で表される化合物を配合することが好ましい。その場合、乳化物(a)中の該化合物(カチオン界面活性剤)の含有量が、好ましくは21質量%以下、より好ましくは10〜18質量%となるように油相の配合量を決定するとよい。
また、液晶を形成しないようにするためには、カチオン界面活性剤とノニオン界面活性剤との混合比率を、質量比で、カチオン界面活性剤/ノニオン界面活性剤=1〜15とすることが好ましく、3〜12とすることがより好ましく、5〜9とすることがさらに好ましい。また、該質量比が前記下限値未満であると、乳化不良が起こり、乳化物(a)の安定性が低下して経時で増粘が起こりやすくなる。該質量比が前記上限値超であると、乳化物(a)の分散性が低下し、経時で分離しやすくなる。
さらに、油相と水相とを混合して液晶を形成しないようにするには、カプセル粒子を除く全配合成分を工程(1)で配合することが好ましい。
【0082】
油相の流速(単位時間当たりの流量)は、100〜300000cm
3/分であることが好ましく、150〜18000cm
3/分であることがより好ましく、200〜1500cm
3/分であることがさらに好ましい。
水相の流速(単位時間当たりの流量)は、480〜1440000cm
3/分であることが好ましく、700〜864000cm
3/分であることがより好ましく、900〜5000cm
3/分であることがさらに好ましい。
油相及び水相の流速が前記範囲であれば、乳化物粒子が適度に微細化され、カプセル粒子含有乳化物の保存安定性がより向上する。
【0083】
本実施形態における工程(1)は、攪拌装置として高剪断攪拌装置のみを用いて、油相と水相とを、下記混合条件(A)及び(B)で攪拌混合する処理である。
混合条件(A):攪拌の剪断速度γが8500〜41000[s
−1]である。
混合条件(B):剪断速度γ[s
−1]と、前記混合条件(A)で攪拌する攪拌装置における滞留時間t[s]との比(γ/t)が8000〜90000の範囲である。
【0084】
高剪断攪拌装置は、ローター(攪拌翼)と、該ローターを収容するステーターとを備え、剪断速度8500s
−1以上の高剪断で攪拌可能な手段(例えば、高剪断で攪拌可能なローターの形状、高速攪拌可能なローター)を有し、インラインで連続混合可能な装置である。
【0085】
図2に、工程(1)で用いる高剪断攪拌装置の一例を示す。
高剪断攪拌装置50は、略円筒状のハウジング51と、ハウジング51内に収容された回転軸52と、回転軸52に取り付けられたローター(攪拌翼)53と、ローター53を収容するステーター54とで概略構成されている。ローター53及びステーター54は3個ずつ設けられている。対になるローター53及びステーター54においては、ステーターの内側に、ローター53が、同心となる配置で設けられている。
ローター53は、回転軸52に取り付けられた円板状の支持部53aと、支持部53aに設けられた複数の歯部53bとを備える。歯部53bは、支持部53aの片面に円形状に配列され、吸入口51aとは反対側に向かって突出するように設けられている。3個のローター53の歯部53bの数は同一である必要はなく、下流に向う程、歯部53bの数が多くなることが好ましい。
ステーター54は、ハウジング51内に回転不能に固定された円板状の支持部54aと、支持部54aに設けられた複数の歯部54bとを備える。歯部54bは、支持部54aの片面に円形状に配列され、吸入口51a側に向かって突出するように設けられている。歯部54b,54b同士の間には隙間54cが形成されている。3個のローター54の歯部54bの数は同一である必要はなく、下流に向う程、歯部54bの数が多くなることが好ましい。
図2に示す高剪断攪拌装置の具体例としては、マイルダー(太平洋機工株式会社製)が挙げられる。
高剪断攪拌装置50を用いた工程(1)では、回転軸52を回転させながら、吸入口51aからハウジング51内に油相と水相とを供給する。供給された油相と水相とを、回転するローター53によって、ステーター54の内周面に向って吐出させると共にローター53の最外部とステーター54の内周面との間で生じる剪断力によって混合して、水中油型の乳化物(a)を得る。その後、乳化物(a)を、排出口51bから装置外へ排出する。
【0086】
高剪断攪拌装置50において、ローター53の最大外径d
1と、ステーター54の内径D
1との比(d
1/D
1)は0.8以上1.0未満であることが好ましい。d
1/D
1が前記下限値以上であると、充分な剪断力を付与でき、油相と水相とをより良好に混合できる。
【0087】
高剪断攪拌装置50を用いた攪拌においては、ローター53の最外部の周速度を3.0〜14.4m/sにすることが好ましく、6.0〜14.4m/sにすることがより好ましく、6.0〜11.9m/sにすることがさらに好ましい。ローター53の最外部の周速度を前記下限値以上にすれば、油相と水相とをより混練でき、乳化物粒子を充分に微細化でき、乳化物粒子の分散性をより向上させることができる。一方、ローター53の最外部の周速度を前記上限値以下にすれば、乳化物粒子の適度に微細化できるため、カプセル粒子含有乳化物の粘度を適度なものとすることができる。
【0088】
また、高剪断攪拌装置としては、例えば、ディスプロ翼、ディスパー翼等の高剪断型の攪拌翼を備えた攪拌装置、平羽根タービン翼、プロペラ翼、パドル翼等の汎用攪拌翼を備えた攪拌装置を用いてもよい。これら高剪断攪拌装置の具体例としては、T.K.パイプラインホモミクサーM型(プライミクス株式会社製)等が挙げられる。
【0089】
高剪断攪拌装置における混合条件(A)は、攪拌の剪断速度γが8500〜41000s
−1であり、17000〜41000s
−1が好ましく、17000〜34000s
−1がより好ましく、20000〜34000s
−1が特に好ましい。
剪断速度が8500s
−1未満であると、油相と水相との混合不良が生じ、乳化物(a)の微細化が不足し、乳化物(a)の均一分散性と凍結復元性が低下する。一方、剪断速度が41000s
−1を超えると、乳化物(a)と混合するカプセル粒子の分散安定性が低下する。これは、乳化物粒子が細かくなりすぎて、チキソトロピー性が低下するためと考えられる。
【0090】
高剪断攪拌装置がローターとステーターを備える場合、剪断速度は、ローター最外部の周速度ut[m/s]、ローター最外部とステーター内周面とのクリアランスσ
1[m]から、下記式を利用して算出される。
剪断速度[s
−1]=周速度ut[m/s]/クリアランスσ
1[m]
周速度ut[m/s]=π×ローター回転数[rps]×ローター直径d
1[m]
これより、剪断速度は、高剪断攪拌装置におけるローターの回転速度、ローターとステーター内周面とのクリアランスの調節により調整することができる。
高剪断攪拌装置がステーターを備えない場合、クリアランスは攪拌翼最外部とハウジング内周面との距離である。
【0091】
また、高剪断攪拌装置における混合条件(B)は、剪断速度γ[s
−1]/高剪断攪拌装置における滞留時間t[s]の比(γ/t)が8000〜90000の範囲であり、9000〜80000の範囲であることが好ましく、10000〜65000の範囲であることがより好ましく、10000〜23000の範囲であることが特に好ましい。
剪断速度を8500〜41000s
−1とし、かつ、γ/tが8000〜90000の範囲とすることで、油相と水相との混合に際し、剪断速度と剪断時の滞留時間のバランスが良くなり、乳化物(a)のダマの発生を抑制でき、カプセル粒子混合後の分散安定性、凍結復元性がより良好となる。γ/tが前記範囲から外れると、カプセル粒子の分散安定性が低下することがある。
【0092】
高剪断攪拌装置における滞留時間は0.1〜10秒であることが好ましく、0.4〜5秒であることがより好ましい。滞留時間が前記下限値以上であると、油相と水相とを良好に混合でき、滞留時間が前記上限値以下であれば、カプセル粒子含有乳化物の粘度が低くなりすぎず、カプセル粒子の分散安定性が良好なカプセル粒子含有乳化物が得られやすい。
滞留時間は、下記式により求めることができる。
滞留時間t[s]=ハウジングの容積[L]/ハウジングへの供給流量[L/s]
【0093】
工程(1)における温度条件は、カチオン界面活性剤の融点以上であれば特に限定されず、好ましくはカチオン界面活性剤の融点より10℃以上高い温度とされる。また、工程(1)における温度条件の上限は、カチオン界面活性剤の種類やノニオン界面活性剤の種類等を勘案して決定でき、例えば、好ましくは100℃以下、より好ましくは80℃以下、さらに好ましくは70℃以下、特に好ましくは50〜60℃とされる。100℃超とすると、配合成分の熱分解により、水中油型乳化物の粘度が上昇したり、香料組成物等を配合した際に香気の劣化を生じたりするおそれがある。
【0094】
工程(1)においては、上記の攪拌混合によって、乳化物(a)の粘度を50〜700mPa・s、TI値を2.0〜5.0とすることが好ましい。乳化物(a)の粘度及びTI値の測定方法は、上述したカプセル粒子含有乳化物の粘度及びTI値の測定方法と同様である。
乳化剤(a)の粘度が前記下限値以上であると、カプセル粒子含有乳化物におけるカプセル粒子の分散安定性がより高くなる。一方、乳化剤(a)の粘度が前記上限値以下であると、カプセル粒子含有乳化物の容器からの排出性がより高くなり、また、繊維製品処理剤等を製造する際の混合性が良好になる。
乳化剤(a)のTI値が前記下限値以上であれば、カプセル粒子含有乳化物におけるカプセル粒子の分散安定性がより高くなり、前記上限値以下であれば、カプセル粒子含有乳化物の流動性低下を防止できる。
なお、乳化剤(a)の粘度及びTI値の前記好ましい範囲は、カプセル粒子含有乳化剤の粘度及びTI値とほぼ同じである。すなわち、工程(2)における粘度及びTI値の上昇又は低下は殆ど生じない。
【0095】
乳化剤(a)には、工程(2)の前に、ノニオン界面活性剤を添加してもよい。
工程(1)の終了後、工程(1)から工程(2)までの移送時間は、最終的に調製されるカプセル粒子含有乳化物の保存安定性を確保する点から、なるべく短い方がよく、具体的には、300秒間以下が好ましく、120秒間以下がより好ましい。
【0096】
[工程(2)]
工程(2)では、工程(1)で得た乳化物(a)とカプセル粒子とを混合装置で混合することによりカプセル粒子含有乳化物を得る。
工程(2)で用いる混合装置としては、スタティックミキサー等の公知の混合装置を使用することができる。工程(2)においては、混合によるカプセル粒子の破壊を防ぐため、低剪断での攪拌が好ましい。
工程(2)における剪断速度は特に制限されないが、8500s
−1未満であることが好ましく、100s
−1以下であることがより好ましく、10〜60s
−1であることがさらに好ましく、30〜50s
−1であることが特に好ましい。工程(2)における剪断速度が前記下限値以上であれば、カプセル粒子の分散性がより高くなり、前記上限値以下であれば、混合によるカプセル粒子の破壊を防止できる。
なお、混合装置としてスタティックミキサーを用いた場合、工程(2)における剪断速度は、スタティックミキサーの半径r[m]と該ミキサー内の流量Q[m
3/s]から算出することができる(剪断速度=4Q/πr
3)。
スタティックミキサーを用いる場合、そのエレメント数は12〜30が好ましく、24〜30がより好ましい。
【0097】
工程(2)における温度条件は、カプセル粒子中の内包成分へのダメージを避けるために温度は低い方が好ましく、具体的には25〜35℃が好ましい。
前記温度に調整する際の冷却速度は、できるだけ速いことが好ましく、具体的には5〜50℃/分とすることが好ましく、20〜50℃/分とすることがより好ましい。
このような温度にするためには、例えば、熱交換器等を用いて乳化物(a)を冷却すればよい。
【0098】
工程(2)で配合するカプセル粒子は、カプセル粒子含有乳化物中での分散安定性(浮遊・沈降の抑制効果)に優れることから、その比重(25℃、水を基準)が、工程(2)で得る乳化物の0.8〜1.2倍であることが好ましく、0.85〜1.15倍であることがより好ましく、0.9〜1.1倍であることがさらに好ましい。
【0099】
工程(2)では、カプセル粒子に加えて、必要に応じて、増粘剤等の各種添加剤を乳化物(a)に添加してもよい。
【0100】
上記カプセル粒子含有乳化物の製造方法では、工程(1)において前記混合条件(A)及び(B)で油相と水相とを攪拌混合するため、得られるカプセル粒子含有乳化物の初期粘度を適切な範囲にでき、保存性及びカプセル粒子の分散性を高くできる。特に、凍結復元性、長期間保管後のカプセル粒子分散性を高くできる。
また、本製造方法では、分散剤等を配合する必要がなく、カプセル粒子含有乳化物を低コストで製造できる。
また、第1実施形態の製造方法は、1段階で乳化物(a)を得ることができ、簡便である。
【0101】
(第2実施形態)
第2実施形態の製造方法について
図3を参照して説明する。
第2実施形態のカプセル粒子含有乳化物の製造方法は、水相と油相とを、連続式の攪拌装置を用いて攪拌混合して乳化物(a)を調製する工程(1)(
図3の符号10)と、前記乳化物(a)とカプセル粒子とを混合する工程(2)(
図3の符号20)とを有する。
さらに、本実施形態における工程(1)は、前記水相の一部と前記油相とを攪拌混合して第1乳化物(a1)を調製する処理(1−a)(
図3の符号11)と、該第1乳化物(a1)と水相の残部とを攪拌混合して乳化物(a)を調製する処理(1−b)(
図3の符号12)とからなる。
【0102】
処理(1−a)において、水相の一部と油相との質量比率(水相の一部/油相)は、微細な乳化物を形成しやすいことから、4以下とすることが好ましく、0.5〜4.0とすることがより好ましく、0.7〜1.0とすることがさらに好ましい。
【0103】
油相の流速(単位時間当たりの流量)は、100〜300000cm
3/分であることが好ましく、150〜18000cm
3/分であることがより好ましく、200〜1500cm
3/分であることがさらに好ましい。
水相の流速(単位時間当たりの流量)は、480〜1440000cm
3/分であることが好ましく、700〜864000cm
3/分であることがより好ましく、900〜5000cm
3/分であることがさらに好ましい。
油相及び水相の流速が前記範囲であれば、乳化物粒子が適度に微細化され、カプセル粒子含有乳化物の保存安定性がより向上する。
【0104】
処理(1−a)における温度条件は、カチオン界面活性剤の融点以上であれば特に限定されず、カチオン界面活性剤の融点より10℃以上高い温度とすることが好ましい。
また、処理(1−a)における温度条件の上限は、カチオン界面活性剤の種類やノニオン界面活性剤の種類等を勘案して決定でき、例えば、100℃以下にすることが好ましく、80℃以下にすることがより好ましく、70℃以下にすることがさらに好ましく、50〜60℃にすることが特に好ましい。処理(1−a)の温度を100℃超とすると、配合成分の熱分解により、水中油型乳化物の粘度が上昇したり、香料組成物等を配合した際に香気の劣化を生じたりするおそれがある。
【0105】
処理(1−a)で用いる攪拌装置としては、攪拌翼とハウジングとを備えた連続式混合装置(すなわち、ラインミキサー)を用いることができる。
図4に、処理(1−a)で用いるラインミキサーの一例を示す。
ラインミキサー100は、略円筒状のハウジング110と、攪拌翼122を備えるローター120とで概略構成されている。攪拌翼122としては、円板に12等分となるように切込みを入れて任意の角度で折り曲げ加工された攪拌羽根(ディスプロ翼)を2段に配置したものが用いられている。
ラインミキサー100を用いた処理(1−a)では、ローター120を回転させながら、吸入口112からハウジング110内に油相と水相とを供給し、供給された油相と水相とを、攪拌翼122とハウジング110の内周面との間で生じる剪断力によって混合して、水中油型の第1乳化物(a1)を得る。その後、第1乳化物(a1)を、排出口114から装置外へ排出する。
【0106】
ラインミキサー100において、攪拌翼122における羽根の最大外径d
2と、ハウジング110内のハウジング径D
2との比(d
2/D
2)は0.7以上であることが好ましく、0.7〜0.9であることがより好ましい。d
2/D
2が前記下限値以上であると、充分な剪断力を付与でき、油相と水相とをより良好に混合できる。d
2/D
2が前記上限値を超えると、付与する剪断力が不足し、乳化不良となりやすい。
【0107】
ラインミキサー100を用いた攪拌においては、攪拌翼122の最外部の周速度を2〜20m/sにすることが好ましく、3〜18m/sにすることがより好ましく、4〜16m/sにすることがさらに好ましい。攪拌翼122の最外部の周速度を前記下限値以上にすれば、油相と水相とをより混練でき、乳化物粒子を充分に微細化でき、乳化物粒子の分散性をより向上させることができる。一方、攪拌翼122の最外部の周速度を前記上限値以下にすれば、乳化物粒子の適度に微細化できるため、カプセル粒子含有乳化物の粘度を適度なものとすることができる。
【0108】
処理(1−a)における攪拌時の剪断速度は、8500s
−1未満であることが好ましく、5000s
−1以下であることがより好ましい。一方、処理(1−a)における攪拌時の剪断速度は、100s
−1以上であることが好ましく、400s
−1以上であることがより好ましく、600s
−1以上であることがさらに好ましい。
剪断速度を前記上限値以上にするためにはラインミキサーの高度な制御が必要になり、剪断速度が前記下限値未満であると、油相と水相との混練不良が生じ、乳化物粒子の微細化が足りず、乳化物粒子の分散性が低下することがある。
ラインミキサー100を用いた攪拌における剪断速度は、攪拌翼122の最外部の周速度(m/s)、該攪拌翼最外部とハウジング110内面とのクリアランス[(D
2−d
2)/2(m)]から求められる。具体的には、周速度/クリアランスの式より求められる。
該剪断速度は、ラインミキサーの攪拌翼の回転速度、クリアランスの調節により調整することができる。
【0109】
ラインミキサー100内における油相及び水相の平均滞留時間は、5秒間以上であることが好ましく、10〜30秒間であることがより好ましい。
平均滞留時間が前記下限値以上であると、油相と水相とが良好に混合される。平均滞留時間が前記上限値以下であれば、カプセル粒子含有乳化物の粘度が低くなりすぎず、カプセル粒子の分散安定性が良好な乳化物が得られやすい。
【0110】
処理(1−a)によって得られる第1乳化物(a1)の粒子の平均粒径は、5μm以下であることが好ましく、2〜4μmであることがより好ましく、2〜3μmであることがさらに好ましい。
【0111】
本実施形態における処理(1−b)は、油相と水相とを攪拌混合する代わりに、処理(1−a)で得た第1乳化物(a1)と水相の残部とを攪拌混合する以外は第1実施形態における工程(1)と同様である。すなわち、本実施形態における処理(1−b)は、攪拌装置として高剪断攪拌装置を用いて、油相と水相の残部とを、上記混合条件(A)及び(B)で攪拌混合する処理である。
【0112】
本実施形態では、工程(2)において、処理(1−b)で得た乳化物(a)に、カプセル粒子を添加して、カプセル粒子含有乳化物を得る。本実施形態における工程(2)は、第1実施形態における工程(2)と同様である。
【0113】
本実施形態の製造方法においては、工程(1)において前記混合条件(A)及び(B)で第1乳化物(a1)と水相の一部を攪拌混合するため、得られるカプセル粒子含有乳化物の初期粘度を適切な範囲にでき、保存性及びカプセル粒子の分散性を高くできる。特に、凍結復元性、長期間保管後のカプセル粒子分散性を高くできる。
また、本製造方法でも、分散剤等を配合する必要がなく、カプセル粒子含有乳化物を低コストで製造できる。
【0114】
(第3実施形態)
第3実施形態の製造方法について
図5を参照して説明する。
第3実施形態のカプセル粒子含有乳化物の製造方法は、水相と油相とを、連続式攪拌装置を用いて攪拌混合して乳化物(a)を調製する工程(1)(
図5の符号10)と、前記乳化物(a)とカプセル粒子とを混合する工程(2)(
図5の符号20)とを有する。
さらに、本実施形態における工程(1)は、前記水相の一部と前記油相とを攪拌混合して第1乳化物(a1)を調製する処理(1−a)(
図5の符号11)と、該第1乳化物(a1)と水相の残部とを攪拌混合して第2乳化物(a2)を調製する処理(1−c)(
図5の符号13)と、該第2乳化物(a2)を攪拌混合して乳化物(a)を調製する処理(1−d)(
図5の符号14)とからなる。
【0115】
本実施形態における処理(1−a)は第2実施形態における処理(1−a)と同様である。
【0116】
処理(1−c)で用いる攪拌装置としては、例えば、攪拌翼とハウジングとを備えた連続式の混合装置を用いることができる。
図6に、処理(1−c)で用いる混合装置の一例を示す。
混合装置200は、略円筒状のハウジング210と、攪拌翼222を備えるローター220とで概略構成されている。攪拌翼222としては、4枚の平羽根が十字状に固定された4枚平羽根タービン翼を2段に配置したものが用いられている。
混合装置200を用いた処理(1−c)では、ローター220を回転させながら、吸入口212からハウジング210内に第1乳化物(a1)を供給し、供給された乳化物(a1)を、攪拌翼222とハウジング210の内周面との間で生じる剪断力によって混合する。これにより、乳化物粒子の微細化が図られると共に粒径(粒度分布)が制御された第2乳化物(a2)を得る。その後、第2乳化物(a2)を、排出口214から装置外へ排出する。
【0117】
混合装置200において、攪拌翼222における羽根の最大外径d
3と、ハウジング210内のハウジング径D
3との比(d
3/D
3)は0.4以上であることが好ましく、0.5〜0.9であることがより好ましい。d
3/D
3が前記下限値以上であると、充分な剪断力を付与でき、油相と水相とを良好に混合できる。d
3/D
3が前記上限値を超えると、クリアランス部で剪断力を強く付与でき、乳化物粒子の微細化が促進しすぎてしまう場合がある。
【0118】
混合装置200を用いた攪拌においては、攪拌翼222の最外部の周速度を4〜20m/sにすることが好ましく、6〜18m/sにすることがより好ましく、8〜16m/sにすることがさらに好ましい。攪拌翼222の周速度を前記下限値以上にすれば、充分に剪断でき、乳化物粒子の粒度分布が狭くなりやすく、カプセル粒子含有乳化物の粘度が低下しやすい。一方、攪拌翼222の周速度を前記上限値以下にすれば、乳化物粒子の微細化が適度になるため、カプセル粒子含有乳化物の粘度を適度なものとすることができる。
また、処理(1−c)における周速度が、処理(1−a)における周速度よりも大きいと、処理(1−a)で得た第1乳化物(a1)の粒径を保ちながら、粒度分布をより狭く制御できる。
【0119】
処理(1−c)における第1乳化物(a1)の流速(単位時間当たりの流量)は、500〜150000cm
3/分であることが好ましく、800〜50000cm
3/分であることがより好ましく、1000〜5000cm
3/分であることがさらに好ましい。第1乳化物(a1)の流速が前記範囲であれば、乳化物粒子の粒径を容易に制御できる。
【0120】
処理(1−c)における攪拌時の剪断速度は、8500s
−1未満であることが好ましく、5000s
−1以下であることがより好ましい。一方、処理(1−c)における攪拌時の剪断速度は、100s
−1以上であることが好ましく、300s
−1以上であることがより好ましく、500s
−1以上であることがさらに好ましい。
剪断速度を前記上限値以上にするためにはラインミキサーの高度な制御が必要になり、剪断速度が前記下限値未満であると、剪断が足りず、乳化物粒子の粒度分布が広くなりやすく、カプセル粒子含有乳化物の粘度が増加しやすい。
混合装置200における剪断速度は、攪拌翼222最外部の周速度(m/s)、攪拌翼最外部とハウジング210内面とのクリアランス[(D
3−d
3)/2(m)]から求められる。具体的には、周速度/クリアランスの式より求められる。
【0121】
処理(1−c)における温度条件は、カチオン界面活性剤の融点以上であれば特に限定されず、第2実施形態における処理(1−a)と同様の条件とすればよい。
【0122】
混合装置200内における第1乳化物(a1)及び水相の残部の平均滞留時間は、5秒間以上であることが好ましく、10〜60秒間であることがより好ましい。
平均滞留時間が前記下限値以上であると、乳化物に充分な剪断力が付与される。平均滞留時間が前記上限値以下であれば、カプセル粒子含有乳化物の粘度が低くなりすぎず、カプセル粒子の分散安定性が良好な乳化物が得られやすい。
【0123】
本実施形態における処理(1−d)は、油相と水相とを攪拌混合する代わりに、処理(1−c)で得た第2乳化物(a2)を攪拌混合する以外は第1実施形態における工程(1)と同様である。すなわち、本実施形態における処理(1−d)は、攪拌装置として高剪断攪拌装置を用いて、第2乳化物(a2)を、上記混合条件(A)及び(B)で攪拌混合する処理である。
【0124】
本実施形態では、工程(2)において、処理(1−d)で得た乳化物(a)に、カプセル粒子を添加して、カプセル粒子含有乳化物を得る。本実施形態における工程(2)は第1実施形態における工程(2)と同様である。
【0125】
本実施形態の製造方法においては、工程(1)において前記混合条件(A)及び(B)で第2乳化物(a2)を攪拌混合するため、得られるカプセル粒子含有乳化物の初期粘度を適切な範囲にでき、保存性及びカプセル粒子の分散性を高くできる。特に、凍結復元性、長期間保管後のカプセル粒子分散性を高くできる。
また、本製造方法でも、分散剤等を配合する必要がなく、カプセル粒子含有乳化物を低コストで製造できる。
【0126】
≪第2態様≫
本発明の第2態様のカプセル粒子含有乳化物の製造方法は、水を含有する水相と、カチオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤を含有する油相とを、バッチ式攪拌装置を用いて攪拌混合して乳化物(a)を調製する工程(1’)と、前記乳化物(a)とカプセル粒子とを混合する工程(2)とを有する。
以下、第2態様のカプセル粒子含有乳化物の製造方法の実施形態(第4実施形態、第5実施形態及び第6実施形態)について説明する。
【0127】
(第4実施形態)
第4実施形態の製造方法について説明する。
第4実施形態のカプセル粒子含有乳化物の製造方法は、水相と油相とを、バッチ式の攪拌装置を用いて攪拌混合して乳化物(a)を調製する工程(1’)と、前記乳化物(a)とカプセル粒子とを混合する工程(2)とからなる。
本実施形態における油相と水相との混合比率は、第1実施形態における油相と水相との混合比率と同様である。
【0128】
本実施形態における工程(1’)では、油相と水相とを、下記混合条件(A)及び(B’)で攪拌混合する工程を有する。
混合条件(A):攪拌の剪断速度γが8500〜41000[s
−1]である。
混合条件(B’):剪断速度γ[s
−1]と、前記混合条件(A)で攪拌する攪拌装置における攪拌時間t’[s]との比(γ/t’)が8000〜90000の範囲である。
【0129】
バッチ式攪拌装置は、攪拌槽の内部に、上記のような高剪断条件で攪拌混合可能な攪拌装置を備えている。該攪拌装置としては、
図7に示すような、筒状で側面に開口部が複数形成されたステーター62aと、ステーター62aの内側に収容されたローター62b(攪拌翼)及びを備えるホモミキサー62が挙げられる。
【0130】
バッチ式攪拌装置を用いた攪拌においては、ローター62bの最外部の周速度を3.0〜14.4m/sにすることが好ましく、6.0〜14.4m/sにすることがより好ましく、6.0〜11.9m/sにすることがさらに好ましい。ローター62bの最外部の周速度を前記下限値以上にすれば、油相と水相とをより混練でき、乳化物粒子を充分に微細化でき、乳化物粒子の分散性をより向上させることができる。一方、ローター62bの最外部の周速度を前記上限値以下にすれば、乳化物粒子の適度に微細化できるため、カプセル粒子含有乳化物の粘度を適度なものとすることができる。
【0131】
バッチ式攪拌装置における混合条件(A)は、攪拌の剪断速度γが8500〜41000s
−1であり、17000〜41000s
−1が好ましく、17000〜34000s
−1がより好ましく、20000〜34000s
−1が特に好ましい。
剪断速度が8500s
−1未満であると、油相と水相との混合不良が生じ、乳化物(a)の微細化が不足し、乳化物(a)の均一分散性と凍結復元性が低下する。一方、剪断速度が41000s
−1を超えると、乳化物(a)と混合するカプセル粒子の分散安定性が低下する。これは、乳化物粒子が細かくなりすぎて、チキソトロピー性が低下するためと考えられる。
【0132】
剪断速度は、バッチ式攪拌装置のローター62bの最外部の周速度ut[m/s]、ローター62bの最外部とステーター62aの内周面とのクリアランスσ
2[m]から、下記式を利用して算出される。
剪断速度[s
−1]=周速度ut[m/s]/クリアランスσ
2[m]
周速度ut[m/s]=π×ローター回転数[rps]×ローター直径d
4[m]
これより、剪断速度は、バッチ式攪拌装置におけるローターの周速度、ローターとステーター内周面とのクリアランスの調節により調整することができる。
【0133】
また、バッチ式攪拌装置における混合条件(B’)は、剪断速度γ[s
−1]/バッチ式攪拌装置における攪拌時間t’[s]の比(γ/t’)が8000〜90000の範囲であり、9000〜80000の範囲であることが好ましく、10000〜65000の範囲であることがより好ましく、10000〜23000の範囲であることが特に好ましい。
剪断速度を8500〜41000s
−1とし、かつ、γ/t’が8000〜90000の範囲とすることで、油相と水相との混合に際し、剪断速度と剪断時の攪拌時間のバランスが良くなり、乳化物(a)のダマの発生を抑制でき、カプセル粒子混合後の分散安定性、凍結復元性がより良好となる。γ/t’が前記範囲から外れると、カプセル粒子の分散安定性が低下することがある。
【0134】
バッチ式攪拌装置における攪拌時間t’は0.1〜10秒であることが好ましく、0.4〜5秒であることがより好ましい。攪拌時間t’が前記下限値以上であると、油相と水相とを良好に混合でき、攪拌時間t’が前記上限値以下であれば、カプセル粒子含有乳化物の粘度が低くなりすぎず、カプセル粒子の分散安定性が良好なカプセル粒子含有乳化物が得られやすい。
バッチ式攪拌装置における攪拌時間t’とは、攪拌翼(ローター)の回転数が設定値に達したときを0秒とし、その時から攪拌を継続した時間のことである。
【0135】
本実施形態における工程(1’)の温度条件は、第1実施形態における工程(1)と同様である。
本実施形態においても、第1実施形態と同様に、工程(1’)では、上記の攪拌混合によって、乳化物(a)の粘度を50〜700mPa・s、TI値を2.0〜5.0とすることが好ましい。
本実施形態における工程(2)は、第1実施形態における工程(2)と同様である。
【0136】
本実施形態の製造方法においては、工程(1’)において前記混合条件(A)及び(B’)で乳化物(a)を攪拌混合するため、得られるカプセル粒子含有乳化物の初期粘度を適切な範囲にでき、保存性及びカプセル粒子の分散性を高くできる。特に、凍結復元性、長期間保管後のカプセル粒子分散性を高くできる。
また、本製造方法でも、分散剤等を配合する必要がなく、カプセル粒子含有乳化物を低コストで製造できる。
また、バッチ式攪拌装置は装置構成が複雑ではないから、容易に設置できる。
【0137】
(第5実施形態)
第5実施形態の製造方法について説明する。
第5実施形態のカプセル粒子含有乳化物の製造方法は、水相と油相とを、バッチ式攪拌装置を用いて攪拌混合して乳化物(a)を調製する工程(1’)と、前記乳化物(a)とカプセル粒子とを混合する工程(2)とを有する。
さらに、本実施形態における工程(1’)は、前記水相の一部と前記油相とを攪拌混合して第1乳化物(a1)を調製する処理(1’−a)と、該第1乳化物(a1)と水相の残部とを攪拌混合して乳化物(a)を調製する処理(1’−b)とからなる。
【0138】
処理(1’−a)における攪拌混合では、剪断速度を8500s
−1未満にすることが好ましく、5000s
−1以下にすることがより好ましい。一方、処理(1’−a)における攪拌時の剪断速度は、100s
−1以上にすることが好ましく、400s
−1以上にすることがより好ましく、600s
−1以上にすることがさらに好ましい。
剪断速度を前記上限値以上にするためには、高い攪拌動力が必要になり、剪断速度が前記下限値未満であると、油相と水相との混練不良が生じ、乳化物粒子の微細化が足りず、乳化物粒子の分散性が低下することがある。
処理(1’−a)の攪拌時間は、5秒間以上であることが好ましく、10〜30秒間であることがより好ましい。
攪拌時間が前記下限値以上であると、油相と水相とが良好に混合される。攪拌時間が前記上限値以下であれば、カプセル粒子含有乳化物の粘度が低くなりすぎず、カプセル粒子の分散安定性が良好な乳化物が得られやすい。
処理(1’−a)における温度条件は、第2実施形態における処理(1−a)と同様に、カチオン界面活性剤の融点より10℃以上高い温度とすることが好ましく、100℃以下であることが好ましい。
【0139】
本実施形態における処理(1’−b)は、油相と水相とを攪拌混合する代わりに、処理(1’−a)で得た第1乳化物(a1)と水相の残部とを攪拌混合する以外は第4実施形態における工程(1’)と同様である。すなわち、本実施形態における処理(1’−b)は、攪拌装置としてバッチ式攪拌装置を用いて、油相と水相の残部とを、上記混合条件(A)及び(B’)で攪拌混合する処理である。
処理(1’−a)で使用する攪拌装置としては、攪拌槽と、該攪拌槽の内部に設けられた攪拌翼と備えるものが使用される。また、処理(1’−a)で使用する攪拌装置は、処理(1’−b)で使用する攪拌装置と同じものでもよいし、異なるものでもよい。
【0140】
本実施形態では、工程(2)において、処理(1’−b)で得た乳化物(a)に、カプセル粒子を添加して、カプセル粒子含有乳化物を得る。本実施形態における工程(2)は、第1実施形態における工程(2)と同様である。
【0141】
本実施形態の製造方法においては、工程(1’−b)において前記混合条件(A)及び(B’)で第1乳化物(a1)と水相の一部を攪拌混合するため、得られるカプセル粒子含有乳化物の初期粘度を適切な範囲にでき、保存性及びカプセル粒子の分散性を高くできる。特に、凍結復元性、長期間保管後のカプセル粒子分散性を高くできる。
また、本製造方法でも、分散剤等を配合する必要がなく、カプセル粒子含有乳化物を低コストで製造できる。
【0142】
(第6実施形態)
第6実施形態の製造方法について説明する。
第6実施形態のカプセル粒子含有乳化物の製造方法は、水相と油相とを、バッチ式攪拌装置を用いて攪拌混合して乳化物(a)を調製する工程(1’)と、前記乳化物(a)とカプセル粒子とを混合する工程(2)とを有する。
さらに、本実施形態における工程(1’)は、前記水相の一部と前記油相とを攪拌混合して第1乳化物(a1)を調製する処理(1’−a)と、該第1乳化物(a1)と水相の残部とを攪拌混合して第2乳化物(a2)を調製する処理(1’−c)と、該第2乳化物(a2)を攪拌混合して乳化物(a)を調製する処理(1’−d)とからなる。
【0143】
本実施形態における処理(1’−a)は、第5実施形態における処理(1’−a)と同様である。
本実施形態における処理(1’−c)は、第5実施形態における処理(1’−a)の攪拌混合条件と同様とすることができる。
処理(1’−a)と処理(1’−c)とは同一の攪拌混合条件でも構わないし、異なる攪拌混合条件でもよい。
処理(1’−a)及び処理(1’−c)で使用する攪拌装置としては、攪拌槽と、該攪拌槽の内部に設けられた攪拌翼と備えるものが使用される。また、処理(1’−a)で使用する攪拌装置は、処理(1’−c)で使用する攪拌装置と同じものでもよいし、異なるものでもよい。
【0144】
本実施形態における処理(1’−d)は、油相と水相とを攪拌混合する代わりに、処理(1’−c)で得た第2乳化物(a2)を攪拌混合する以外は第4実施形態における工程(1’)と同様である。すなわち、本実施形態における処理(1’−d)は、攪拌装置としてバッチ式攪拌装置を用いて、第2乳化物(a2)を、上記混合条件(A)及び(B’)で攪拌混合する処理である。
処理(1’−d)で使用する攪拌装置は、処理(1’−a)又は処理(1’−c)で使用する攪拌装置と同じものでもよいし、異なるものでもよい。
【0145】
本実施形態では、工程(2)において、処理(1’−d)で得た乳化物(a)に、カプセル粒子を添加して、カプセル粒子含有乳化物を得る。本実施形態における工程(2)は第1実施形態における工程(2)と同様である。
【0146】
本実施形態の製造方法においては、工程(1’−d)において前記混合条件(A)及び(B’)で第2乳化物(a2)を攪拌混合するため、得られるカプセル粒子含有乳化物の初期粘度を適切な範囲にでき、保存性及びカプセル粒子の分散性を高くできる。特に、凍結復元性、長期間保管後のカプセル粒子分散性を高くできる。
また、本製造方法でも、分散剤等を配合する必要がなく、カプセル粒子含有乳化物を低コストで製造できる。
【0147】
≪他の実施形態≫
第1態様のカプセル粒子含有乳化物の製造方法は、工程(1)における攪拌混合が混合条件(A)及び(B)での攪拌混合を有すればよく、上記の実施形態に限定されるものではない。例えば、第2実施形態における処理(1−a)において、第3実施形態における処理(1−c)で使用する混合装置を用いてもよいし、第3実施形態における処理(1−c)において、第2実施形態における処理(1−a)で使用するラインミキサーを用いてもよい。
【実施例】
【0148】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。各実施例及び各比較例で用いた成分の配合量は、特に指定しない限り純分換算値である。
【0149】
(使用原料)
各実施例及び各比較例における使用原料を以下に示す。
<カチオン界面活性剤>
モノ/ジ/トリ長鎖エステル型第4級アンモニウムメチルサルフェート[(a)モノエステルアンモニウム塩:(b)ジエステルアンモニウム塩:(c)トリエステルアンモニウム塩=28:53:19(質量比)の混合物]、エステル基で分断された長鎖炭化水素基を有する第4級アンモニウム塩;下記合成例により合成した第4級アンモニウム塩
【0150】
[合成例]
(1)脂肪酸メチルエステルの水素添加
オレイン酸メチル75質量%、リノール酸メチル16質量%及びステアリン酸メチル9質量%よりなるパーム脂肪酸メチル(ライオン株式会社製、商品名:パステルM182、平均分子量296)2.5kgと、市販の安定化ニッケル触媒2.5g(0.1質量%/脂肪酸メチル)とを4Lのオートクレーブに仕込み、窒素ガス置換を3回行った。
次いで、回転数を800rpmに合わせ、温度185℃で約54Lの水素ガスを導入した。導入した水素が完全に消費された後、冷却し、濾過助剤を使用して触媒を除き、水素添加したパーム脂肪酸メチルを得た。けん化価より求めた分子量は297であった。ガスクロマトグラフィー(GC)から求めた脂肪酸メチル組成は、ステアリン酸メチル11質量%、エライジン酸メチル(トランス体)23質量%、オレイン酸メチル(シス体)66質量%であり、不飽和脂肪酸メチルエステルのトランス/シス比率は26/74(質量比)であった。なお、不飽和アルキル基は、GCによる次の方法で測定した。
機種:Hitachi FIDガスクロG−3000カラム(GLサイエンス製、TC−70)0.25mm i.d.×30m
温度:カラム150℃→230℃、昇温速度10℃/分、インジェクター&ディテクター240℃、カラム圧力:0.1MPa
【0151】
(2)アルカノールアミンエステルとそのカチオンの合成
上記(1)で調製した水素添加したパーム脂肪酸メチル352g(1.19モル)に、ステアリン酸メチル243g(0.82モル)とパルミチン酸メチル188g(0.70モル)とを混合した脂肪酸メチルエステル(不飽和脂肪酸メチル/飽和脂肪酸メチルの質量比40/60)と、トリエタノールアミン250g(1.67モル)と、酸化マグネシウム0.51gと、14質量%水酸化ナトリウム水溶液3.69gとを、攪拌器、冷却器、温度計及び窒素導入管を備えた2Lの4つ口フラスコに入れ、窒素置換を行った後、窒素を0.52L/分の流量で流しながら、1.5℃/分の昇温速度で190℃まで昇温して、6時間反応させた。未反応メチルエステルが1質量%以下であることを確認して反応を停止し、中間体のアルカノールアミンエステルを得た。アミン価を測定し、分子量を求めると578であった。
得られたアルカノールアミンエステル265g(0.46モル)を温度計、滴下ロート及び冷却機を備えた4つ口フラスコに入れて窒素置換した。次いで、85℃に加熱し、ジメチル硫酸57.4g(0.45モル)を1時間に渡り滴下した。滴下終了後、温度を90℃に保ち、1時間攪拌した。反応終了後、約62gの未変性エタノール(日本エタノール株式会社)を滴下しながら冷却してエタノール溶液を調製し、最後に、フェリオックスCY−115(ライオン株式会社製、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸の60質量%水溶液)と、ジブチルヒドロキシトルエン(住友化学工業株式会社製)とをそれぞれ100ppmの濃度になるように添加した。
得られた反応生成物には、モノエステルアンモニウム塩とジエステルアンモニウム塩とトリエステルアンモニウム塩とが合計で85質量%、その比率は28/53/19(質量比)で含まれていた。
このエタノール溶液中には、4級化されていないモノエステルアミンとジエステルアミンとトリエステルアミンとが合計で9.0質量%含まれており、その比率は1/9/90(質量比)で存在していた。さらに副生成物として、両性化合物が2.0質量%含まれていた。
【0152】
<ノニオン界面活性剤>
ポリオキシエチレンアルキルエーテル(アルキル基の炭素数13、エチレンオキシド(EO)の平均付加モル数60、商品名:TA600−75、ライオン株式会社製)
【0153】
<香料組成物>
表1に記載の香料組成物を用いた。
【0154】
【表1】
【0155】
<水溶性抗菌剤>商品名:ケーソンCG/ICP、Rohm&Haas社製
【0156】
<カプセル粒子>
カプセル粒子としては、内包香料として表2に示す香料組成物と、壁物質としてメラミン系高分子とを用いた。
具体的には、エチレン−無水マレイン酸共重合体(商品名:A−C573A、573P、ハネウェル社製)のナトリウム塩、及び平均分子量16,000のポリスチレンスルホン酸ナトリウム塩(商品名:ポリティPS−1900、ライオン株式会社製)をそれぞれ5質量%含有する水溶液300gに、表2に示す香料組成物150gを加え、ホモミキサーにより2,500rpmで攪拌してO/Wエマルションを調製した。
また、別途、メラミン30g、35質量%のホルムアルデヒド水溶液100g及び水350gに、少量の水酸化ナトリウムを加えてpHを約9に調節した後、80℃で30分間攪拌してメチロールメラミン水溶液を調製した。
次いで、このメチロールメラミン水溶液を前記のO/Wエマルションに添加し、70℃で約2時間攪拌してカプセル壁を反応硬化させることにより、硬化したカプセル壁を有するアニオン性マイクロカプセル粒子が分散した水性分散液を調製した。
このように調製されたカプセル粒子の粒径を測定した結果、平均粒径は約4μmであり、比重は0.95であった。また、得られたカプセル粒子中の香料組成物の含有率は約16質量%であった。
【0157】
【表2】
【0158】
(製造例1)
表3に示す割合で、カチオン界面活性剤とノニオン界面活性剤と香料組成物とを、55℃で混合して油相を得た。また、精製水と水溶性抗菌剤とを均一に混合した後、55℃に加熱して水相を得た。
【0159】
【表3】
【0160】
(実施例1〜21、比較例1〜5)
表4〜7に記載の混合条件(剪断速度、滞留時間、他)で、予め55℃に調整された油相と水相とを連続的に高剪断攪拌装置に供給しながら、攪拌混合して乳化物(a)を得た(工程(1))。
得られた乳化物(a)と表3に記載の後添加ノニオン界面活性剤を連続的にミキシングポンプ(剪断速度40s
−1)に供給しながら混合した後、熱交換器で30℃に冷却した。これにより得られた乳化物とカプセル粒子とを連続的にスタティックミキサー(剪断速度40s
−1)に供給し、混合して、カプセル粒子含有乳化物を得た(工程(2))。
【0161】
高剪断攪拌装置としては下記のものを用いた。
装置:
図2に示す形態の、ローター及びステーターを備えるマイルダー(MDN303V、大平洋機工株式会社製)
ローター最外部とステーター内周面とのクリアランス(σ
1):0.35mm
ハウジング容積:0.065L
【0162】
【表4】
【0163】
【表5】
【0164】
【表6】
【0165】
【表7】
【0166】
(実施例22〜24)
水相の一部と油相の全部を、表8に記載の水相/油相の質量比率となるように、第1ラインミキサーに連続的に供給、混合して第1乳化物(a1)を得た(処理(1−a))。
次に、得られた第1乳化物(a1)と残りの水相とを連続的に高剪断攪拌装置に供給し、表8に記載の混合条件(剪断速度、滞留時間、他)で混合して乳化物(a)を得た(処理(1−b))。
その後、実施例1〜21及び比較例1〜5と同様に、乳化物(a)にノニオン界面活性剤とカプセル粒子を混合して、カプセル粒子含有乳化物を得た。
【0167】
第1ラインミキサーとしては下記のものを用いた。
装置:
図4に示す形態のラインミキサー
ミキサー容量0.285L
攪拌翼:円板に12等分となるように切込みが形成されたディスプロ翼が2段に配置された攪拌翼
ハウジング径(D
2)65.7mm
攪拌翼における羽根の最大外径(d
2)52.5mm
回転数:1800rpm
剪断速度:750s
−1(計算値)
ミキサー滞留時間:39秒
高剪断攪拌装置としては、実施例1〜21及び比較例1〜5と同様のものを用いた。
【0168】
【表8】
【0169】
(実施例25〜27)
水相の一部と油相の全部を、表9に記載の水相/油相の質量比率となるように、第1ラインミキサーに連続的に供給、混合して第1乳化物(a1)を得た(処理(1−a))。
次いで、得られた第1乳化物(a1)と残りの水相を連続的に第2ラインミキサーに供給、混合して第2乳化物(a2)を得た(処理(1−c))。さらに、得られた第2乳化物(a2)を連続的に高剪断攪拌装置に供給し、表9に記載の混合条件(剪断速度、滞留時間、他)で混合して乳化物(a)を得た(処理(1−d))。
その後、実施例1〜21及び比較例1〜5と同様に、乳化物(a)にノニオン界面活性剤とカプセル粒子を混合して、カプセル粒子含有乳化物を得た。
【0170】
第2ラインミキサーとしては下記のものを用いた。
装置:
図6に示す形態のラインミキサー
ミキサー容量0.500L、
攪拌翼:4枚平羽根タービン翼を2段に配置した攪拌翼
ハウジング径(D
3)80.4mm
攪拌翼における羽根の最大外径(d
3)40.1mm
回転数:5116rpm
剪断速度:533s
−1(計算値)
ミキサー滞留時間:27秒
第1ラインミキサーとしては、実施例22〜24と同様のものを用いた。
高剪断攪拌装置としては、実施例1〜21及び比較例1〜5と同様のものを用いた。
【0171】
【表9】
【0172】
(実施例28〜30)
表10に記載の混合条件(剪断速度、攪拌時間、他)で、予め55℃に調整された油相と水相とを連続的にバッチ式攪拌装置に仕込み、攪拌混合して乳化物(a)を得た(工程(1))。
得られた乳化物(a)と表3に記載の後添加ノニオン界面活性剤をバッチ式攪拌装置(剪断速度40s
−1)に供給しながら混合した後、30℃に冷却した。これにより得られた乳化物とカプセル粒子とを、アンカー翼を用いて混合して、カプセル粒子含有乳化物を得た(工程(2))。
【0173】
工程(1)(2)におけるバッチ式攪拌装置としては、
図7に示すように、攪拌槽61内に、ステーター62a及びローター62bを備えるホモジナイザー62が取り付けられたバッチ式攪拌装置60を用いた。また、このバッチ式攪拌装置60は、パドル翼63と、攪拌槽61の内面に付着した付着物をかき取るスクレーパー64とをさらに備えている。なお、ローター62bとパドル翼63とは別々の回転数で回転し、ローター62bの最外部の周速度は、パドル翼63の最外部の周速度よりも速い。そのため、ローター62bを備えるホモジナイザー62によって油相と水相とを高剪断に攪拌混合できる。
攪拌槽61の容量:2L
ホモミキサー62:プライミクス社製
ローター62bの最外部の外径d
4:28mm
ローター62bの最外部とステーター62aの内周面とのクリアランス(σ
2):0.5
剪断速度γは、ローター62bの最外部の周速度[m/s]/ローター62bの最外部とステーター62aの内周面とのクリアランス[m]の式より求めることができる。
攪拌時間は、ローター62bの回転数が設定値に達したときを0秒とし、その時から攪拌を継続した時間のことである。
【0174】
(実施例31)
表10に記載の混合条件(剪断速度、滞留時間、他)で、予め55℃に調整された油相と水相を、パドル翼を備えると共に高剪断装置を有する外部循環ラインが接続された攪拌槽に仕込んだ。そして、油相と水相とを、攪拌槽と外部循環ラインとを通過するように循環させることにより、パドル翼による攪拌領域と高剪断装置による攪拌領域とを循環させ、混合して、乳化物(a)を得た(工程(1))。
得られた乳化物(a)と表3に記載の後添加ノニオン界面活性剤を攪拌槽に供給し、攪拌槽と外部循環ラインとを循環させることにより、パドル翼による攪拌領域と高剪断装置による攪拌領域とを循環させ、混合した後、30℃に冷却した。これにより得られた乳化物とカプセル粒子とを、パドル翼を用いて混合して、カプセル粒子含有乳化物を得た(工程(2))。
【0175】
【表10】
【0176】
<評価>
各例の乳化物(a)について、製造直後のカチオン界面活性剤の分散状態を評価した。
また、各例のカプセル粒子含有乳化物について、粘度(製造24時間後、−15℃で40時間保持後、25℃で8時間溶解させるサイクルを3回繰り返した後)を測定した。また、25℃で2週間及び1ヶ月保存後のカプセル粒子の分散状態を評価した。
これらの結果を表4〜10に示す。
【0177】
[乳化物(a)の分散状態の評価]
乳化物(a)約100gを、100メッシュ(目開150μm、線径100μm)の篩を通過させ、1分間静置した。そして、メッシュを通過せず、メッシュ上に残った乳化物を目視で観察し、ダマ状物(凝集物)の量で以下の基準で評価した。ダマ状物が少ない程、分散性に優れる。
評価基準
◎:ベースとなる乳化物に、ダマ状物が認められなかった。
○:ベースとなる乳化物に、ダマ状物が極僅かに認められた。
△:ベースとなる乳化物に、ダマ状物がやや認められた。
×:ベースとなる乳化物に、ダマ状物が多く認められた。
収率の観点では、○もしくは◎が好ましい。
【0178】
[カプセル粒子含有乳化物の粘度の測定]
200mLのトールビーカーに、製造24時間後のカプセル粒子含有乳化物、又は、−15℃で40時間保持後、25℃で8時間溶解させるサイクルを3回繰り返した(すなわち凍結復元3回の)カプセル粒子含有乳化物200mLを入れ、25℃の恒温水槽で1時間調温した。その後、粘度計(BL型回転式粘度計、株式会社東京計器製)を用い、以下の測定条件で測定した。
使用性の観点からは粘度は700mPa・s以下が好ましく、500mPa・s以下がより好ましい。
【0179】
ローター:No.2(粘度:100〜1,000mPa・s)、ローターNo.3(粘度:1,001〜4,000mPa・s)
回転数:30rpm
測定温度:25℃(乳化物の温度)
測定時間:20秒後(10回転目の値)
【0180】
[カプセル粒子含有乳化物のチキソトロピーインデックス(TI)値の測定]
製造24時間後のカプセル粒子含有乳化物を200mLのトールビーカーに入れ、25℃の恒温水槽で1時間調温した。その後、粘度計(BL型回転式粘度計、株式会社東京計器製、ローターNo.2)を用い、回転速度6rpm及び60rpmにおけるそれぞれの10回転後の粘度を測定した。そして、下記式よりに基づき、TI値を求めた。
TI値=(6rpm粘度値)/(60rpm粘度値)
このTI値はせん断速度(粘度計の回転数)と粘度の依存性を測定し、チキソトロピー性を表す指標として用いられている。TI値は2.0以上であることが好ましい。
【0181】
[カプセル粒子含有乳化物におけるカプセル粒子の分散状態の評価]
カプセル粒子と乳化物部分とは見た目で差異があって区別できるため、25℃で2週間保存後及び1ヶ月保存後のカプセル粒子含有乳化物の外観を目視で観察し、下記の評価基準で、カプセル粒子の分散状態について評価した。
評価基準
◎:カプセル粒子が均一に分散していた。
○:カプセル粒子がごく僅かに浮上、沈降が認められるがほとんど目立たない。
△:カプセル粒子の一部が浮上、沈降し、やや目立つ。
×:カプセル粒子全体が浮上、沈降していることが、はっきり分かる。
なお、◎、○、△、×の差は、目視で充分に判定できる。
【0182】
実施例1〜31では、本発明で規定する混合条件(A)及び(B)、又は、(A)及び(B’)で攪拌混合する工程を有するため、得られるカプセル粒子含有乳化物の初期粘度は適切な範囲にあり、また、凍結復元性及びカプセル粒子の分散性に優れていた。
γ/tの比率が規定値よりも小さい比較例1では、γ/tの比率が規定値よりも大きい比較例2では、乳化物(a)の分散性、カプセル粒子含有乳化物におけるカプセル粒子の分散性が低かった。
剪断速度が規定値よりも小さい比較例3では、乳化物(a)の分散性、初期の粘度と凍結復元性が低かった。
剪断速度が規定値よりも大きい比較例4では、カプセル粒子含有乳化物におけるカプセル粒子の分散性が低かった。
γ/tの比率が規定値よりも大きく、剪断速度が規定値よりも大きい比較例5では、カプセル粒子含有乳化物におけるカプセル粒子の分散性が低かった。