(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202764
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】垂直磁気異方性の強化のための二重MgO界面およびCoFeB層を有する垂直スピントランスファートルク(STT)メモリセル
(51)【国際特許分類】
H01L 21/8239 20060101AFI20170914BHJP
H01L 27/105 20060101ALI20170914BHJP
H01L 43/08 20060101ALI20170914BHJP
H01L 43/10 20060101ALI20170914BHJP
H01L 29/82 20060101ALI20170914BHJP
H01F 10/32 20060101ALI20170914BHJP
H01F 10/16 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
H01L27/105 447
H01L43/08 M
H01L43/10
H01L43/08 Z
H01L29/82 Z
H01F10/32
H01F10/16
【請求項の数】12
【外国語出願】
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-54901(P2016-54901)
(22)【出願日】2016年3月18日
(65)【公開番号】特開2016-178301(P2016-178301A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2016年4月28日
(31)【優先権主張番号】14/664,644
(32)【優先日】2015年3月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503116280
【氏名又は名称】エイチジーエスティーネザーランドビーブイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サンムン オー
(72)【発明者】
【氏名】ゼン ガオ
(72)【発明者】
【氏名】コチャン ジュ
【審査官】
加藤 俊哉
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−007263(JP,A)
【文献】
特開2012−064625(JP,A)
【文献】
特開2014−120707(JP,A)
【文献】
特開2007−059879(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/8239
H01F 10/16
H01F 10/32
H01L 27/105
H01L 29/82
H01L 43/08
H01L 43/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と;
前記基材上の垂直磁気異方性を有する強磁性基準層であって、前記基準層の平面に対して実質的に垂直な固定された磁性を有する基準層と;
Co、FeおよびBを含んでなり、かつ垂直磁気異方性を有する強磁性自由層であって、前記自由層の平面に対して実質的に垂直な磁性を有し、かつ前記基準層の前記磁性に対して実質的に平行と実質的に逆平行の間で切り替えが可能である自由層と;
前記基準層と前記自由層の間の絶縁性酸化物トンネルバリア層と;
前記自由層上であり、かつそれと接触する絶縁性酸化物キャッピング層と;
前記絶縁性酸化物キャッピング層上であり、かつそれと接触し、かつCo、FeおよびBを含んでなる強磁性強化層と;
前記強化層上の非磁性キャップ層と
を含み、
前記強化層が、式(Co(100−x)Fex)(100−y)By(式中、xは原子パーセントであり、かつ4以上〜20以下であり、およびyは原子パーセントであり、かつ15以上〜25以下である)の組成を有する、磁気トンネル接合メモリセル。
【請求項2】
前記絶縁性酸化物トンネルバリア層および前記絶縁性酸化物キャッピング層のそれぞれがMgOからなる、請求項1に記載のメモリセル。
【請求項3】
前記非磁性キャップ層がTaからなる、請求項1に記載のメモリセル。
【請求項4】
前記自由層が、第1および第2のCoFeB合金膜、ならびに前記第1と第2のCoFeB合金膜の間の非磁性分離膜を含んでなる、請求項1に記載のメモリセル。
【請求項5】
前記第1および第2のCoFeB合金膜のそれぞれが、5Å以上および15Å以下の厚さを有する、請求項4に記載のメモリセル。
【請求項6】
前記自由層が、式(Co(100−x)Fex)(100−y)By(式中、xは原子パーセントであり、かつ25以上〜95以下であり、およびyは原子パーセントであり、かつ15以上〜25以下である)の組成を有するCoFeB合金からなる、請求項1に記載のメモリセル。
【請求項7】
前記強化層が3Å以上かつ10Å以下の厚さを有する、請求項1に記載のメモリセル。
【請求項8】
平面に対して垂直な磁性を有する第1のAP固定(AP1)強磁性層と、前記AP1層の前記磁性に対して実質的に逆平行の、平面に対して垂直な磁性を有する第2のAP固定(AP2)強磁性層と、前記AP1とAP2層の間にありかつそれらと接触するAP連結(APC)層とを含んでなる逆平行(AP)固定構造を含み、前記AP2層が前記基準層を含んでなる、請求項1に記載のメモリセル。
【請求項9】
請求項1に記載のメモリセルのアレイと、前記メモリセルに連結される複数のビット線と、前記メモリセルに連結される複数のワード線とを含んでなる磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)。
【請求項10】
基材と;
前記基材上のCoFeB合金を含んでなり、かつ垂直磁気異方性を有する強磁性基準層であって、前記基準層の平面に対して実質的に垂直な固定された磁性を有する基準層と;
垂直磁気異方性を有する強磁性自由層であって、前記自由層の平面に対して実質的に垂直な磁性を有し、かつ前記基準層の前記磁性に対して実質的に平行と実質的に逆平行の間で切り替えが可能であり、第1および第2のCoFeB合金膜、ならびに前記第1と第2のCoFeB合金膜の間の非磁性分離膜を含んでなる自由層と;
前記基準層と前記自由層の間の絶縁性MgOトンネルバリア層と;
前記自由層上であり、かつそれと接触する絶縁性MgOキャッピング層と;
前記絶縁性MgOキャッピング層上であり、かつそれと接触し、式(Co(100−x)Fex)(100−y)By(式中、xは原子パーセントであり、かつ4以上〜20以下であり、およびyは原子パーセントであり、かつ15以上〜25以下である)の組成を有する強磁性強化層と;
前記強化層上のTaキャップ層と
を含んでなる、磁気トンネル接合メモリセル。
【請求項11】
前記強化層が3Å以上かつ10Å以下の厚さを有する、請求項10に記載のメモリセル。
【請求項12】
平面に対して垂直な磁性を有する第1のAP固定(AP1)強磁性層と、前記AP1層の前記磁性に対して実質的に逆平行の、平面に対して垂直な磁性を有する第2のAP固定(AP2)強磁性層と、前記AP1とAP2層の間にありかつそれらと接触するAP連結(APC)層とを含んでなる逆平行(AP)固定構造を含み、前記AP2層が前記基準層を含んでなる、請求項10に記載のメモリセル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、垂直磁気異方性(PMA)を有するスピントランスファートルク磁気抵抗メモリ(STT−MRAM)、特に、二重MgO界面を有するPMA STTメモリセルに関する。
【背景技術】
【0002】
垂直磁気異方性(PMA)を有する磁気トンネル接合(MTJ)メモリセルを有するスピントランスファートルク磁気抵抗メモリ(STT−MRAM)は、将来の不揮発性メモリの強力な候補である。MTJメモリセルは、自由強磁性層(記録層または貯蔵層とも呼ばれる)と、典型的にMgOである薄い絶縁性トンネルバリアによって分離された基準強磁性層(固定層とも呼ばれる)とを有する。自由および基準層は、層の平面に対して垂直に配向された磁性を有するPMAを有する。基準層の磁性は固定されるが、MTJによる電流切り替えによって、2つの配向間での自由層の磁性の切り替え、抵抗R
PまたはR
APに相当する基準層磁性に対して平行(P)または逆平行(AP)が生じる。MTJのトンネル効果磁気抵抗(TMR)は、(R
AP−R
P)/R
Pとして表わされる。
図1Aは、MTJの2つの可能な状態を示す略図である。
図1Bは、周知の交差構造においてワード線およびビット線に連結したMTJメモリセルのアレイを有するMRAMを示す高度な略図である。
【0003】
CoFeB/MgO/CoFeB PMA MTJにおいて、PMAはCoFeBとMgOの間の界面から生じ、かつFe 3dおよびO 2p電子軌道の混成に起因する。このPMAが界面から生じるため、より厚い層は平面異方性を示すので、自由層の厚さの限界がある。単一CoFeB/MgO界面を有するPMA MTJの自由層は高い熱安定性に関して十分なPMAを提供し得ないため、二重CoFeB/MgO界面構造を有するPMA MTJが提案されている(非特許文献1)。この構造において、CoFeB自由層は、MgOトンネルバリアと上層のMgOキャッピング層の間に挟まれており、MgOキャッピング層上にはTaキャップが形成されている。しかしながら、この種類の構造は、焼き鈍しプロセス間のMgO層中へのTaの拡散を阻止しながら、MgO層の精密な成長を必要とする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】“Properties of magnetic tunnel junctions with a MgO/CoFeB/Ta/CoFeB/MgO recording structure down to junction diameter of 11nm”,H.Sato et al.,Applied Physics Letters 105,062403(2014)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
PMAが改善され、かつ焼き鈍し間のTa拡散が阻止された二重界面PMA MTJメモリセルが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態は、MgOトンネルバリア層と上層のMgOキャッピング層の間に位置するCoFeB合金自由層と、MgOキャッピング層と典型的にタンタル(Ta)である非磁性キャップの間のCoFeB合金強化層とを有する磁気抵抗メモリ(MRAM)における使用のための磁気トンネル接合(MTJ)に関する。垂直磁気異方性(PMA)が、CoFeB自由層と2層のMgO層の間の界面から生じ、かつFe 3dおよびO 2p電子軌道の混成に起因するため、自由層のCoFeB合金は、高いFe含有量、すなわち、好ましくは、50原子パーセントより高いFe含有量を有するべきである。CoFeB合金強化層は、CoFeB自由層の組成とは実質的に異なる特定の組成を有し、かつTaキャップ層の堆積の前に、MgOキャッピング層上に堆積される。MgOキャッピング層とのその界面によって、強化層において不必要なPMAが生じることを回避するため、強化層は、低いFe含有量、好ましくは、20原子パーセント未満のFe含有量を有するべきである。全ての層が基材上で完全な膜として堆積された後、構造を焼き鈍しする。これによって、MgOが結晶化し、高いトンネル効果磁気抵抗(TMR)を生じる。低いFe含有量を有するCoFeB合金強化層は、Taキャップ層からMgOキャッピング層へのTaの拡散を抑制し、そのうえ、MgO界面においてCoFeBを提供することによって、MgOの良好な結晶化度を生じる。
【0007】
本発明の性質および利点のより完全な理解のために、以下の詳細な説明は、添付の図面とともに参照されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】
図1Aは、垂直磁気異方性(PMA)磁気トンネル接合(MTJ)メモリセルの2つの可能な状態を示す略図である。
【
図1B】
図1Bは、周知の交差構造においてワード線およびビット線に連結したMTJメモリセルのアレイを有する磁気抵抗メモリ(MRAM)を示す高度な略図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態によるMTJを構成する層の断面図である。
【
図3】
図3は、従来技術のMTJ構造および本発明の実施形態による2MTJ構造に関する垂直磁性−印加場(M−H)ループの部分を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図2は、本発明の実施形態によるMTJを構成する層の断面図である。MTJは、MgOキャッピング層とTaキャップ層の間のCoFeB合金強化層を除いて、前述の(非特許文献1)において記載されるMTJと実質的に同一である。
【0010】
MTJ 100は、半導体グレードケイ素、酸化ケイ素またはアルミニウム−チタン−カーバイドなどのいずれかの適切な材料から形成されてよい基材と、基準層の平面に対して垂直に固定された磁性103を有する強磁性基準層102と、基準層の磁性103に対して平行と逆平行の間で切り替えが可能である磁性105を有する強磁性自由層104と、基準層102と自由層104との間の典型的にMgOである絶縁性酸化物バリア層106とを含む。
【0011】
この実施例において、基準層102は、逆平行(AP)固定構造のAP2層部分である。AP固定構造は周知であり、かつ非磁性逆平行カップリング(APC)層によって分離された第1(AP1)および第2(AP2)の強磁性層を含む。APC層は、AP2層の磁性103およびAP1層の磁性107によって示されるように、それらの磁性が実質的に逆平行に配向するように、反強磁性的にAP1層およびAP2層を一緒に連結させる。この実施例において、APC層は8ÅのRu層であり、そしてAP1層は、周知の[Co/Pt]n多層である(「n」はCo/Pt対の数を指す)。AP2層(基準層102)は、より低い[Co/Pt]n多層110、上層のCoFeB層112、および層110と112との間のTaブレーキング層114である。[Co/Pt]n多層膜は、垂直磁気異方性を有するために周知である。この実施例ではTa/Pt二層であるシード層は、AP1多層の堆積の前に基材上で形成される。
【0012】
本発明の実施形態は、AP固定構造の一部として基準層を有するMTJに関して記載されるが、本発明は、他の種類の基準層で完全に適用可能である。例えば、基準層は、その磁性が反強磁性層によって固定される単一CoFeB合金層などの「単純な」固定構造であってもよい。
【0013】
MTJ 100は、CoFeB合金自由層104が、MgOトンネルバリア層106と上層のMgOキャッピング層130の間に位置する二重MgO層MTJである。強PMAは、CoFeBとMgOの間の界面から生じる。異方性が本来純粋に界面であるため、より厚いCoFeB層は平面異方性を示すため、PMAを維持するためにCoFeB合金自由層は薄く、通常約12Å未満でなければならない。したがって、より厚いCoFeB層で高い強PMAを有するために、第2のMgO層(MgOキャッピング層)が第2の界面を提供する。この実施例における自由層104は、Taなどの非磁性分離フィルム124によって分離され、それぞれのCoFeB膜が好ましくは5〜15Åの範囲の厚さを有する2層のCoFeB膜120、122である。Ta分離膜124は、それぞれがMgO層との界面を有し、PMAを生じる、2つのより薄いCoFeB膜を生じる。PMAがCoFeBとMgOの間の界面から生じ、かつFe 3dおよびO 2p電子軌道の混成に起因するため、自由層のCoFeB合金は高いFe含有量を有するべきである。自由層104のCoFeB合金の組成は、したがって、好ましくは、(Co
(100−x)Fe
x)
(100−y)B
y(式中、xは原子パーセントであり、かつ25以上(好ましくは50より高い)かつ95以下であり、かつyは原子パーセントであり、かつ10以上かつ30以下である)の組成を有するべきである。
【0014】
本発明において、CoFeB自由層104の組成とは実質的に異なる特定の組成を有するCoFeB合金強化層140は、Taキャップ層150の堆積の前に、MgOキャッピング層130上に堆積される。MgOキャッピング層130のその界面によって、強化層140において不必要なPMAが生じることを回避するため、強化層140は低いFe含有量を有するべきである。強化層140のCoFeB合金の組成は、したがって、好ましくは、(Co
(100−x)Fe
x)
(100−y)B
y(式中、xは原子パーセントであり、かつ4以上かつ20以下であり、かつyは原子パーセントであり、かつ15以上かつ25以下である)の組成を有するべきである。強化層140は、好ましくは、3〜10Åの範囲の厚さを有する。
【0015】
全ての層が基材上で完全な膜として堆積された後、構造を、典型的に約350〜400℃の温度で約30〜60分間、焼き鈍しする。これによって、MgOが結晶化し、かつ高いTMRが生じる。しかしながら、本発明による強化層がない従来技術のMTJにおいては、焼き鈍しは、MgO層中へのTaの拡散を引き起こし得、これによって、MgOの結晶化度が変化し、かつCoFeB合金自由層のPMAが低下するであろう。しかしながら、本発明においては、低いFe含有量を有するCoFeB合金強化層140は、Taキャップ層150からMgOキャッピング層130中へのTaの拡散を抑制し、そのうえ、MgO界面においてCoFeBを提供することによって、MgOの良好な結晶化度を生じる。
【0016】
図3は、3つの異なるMTJ構造に関する3つの磁性−場(M−H)ループの部分を例示する。ループ200は、CoFeB合金強化層がなく、したがって、MgOキャッピング層と接触するTaキャップ150を有する従来技術のMTJ構造に関する。ループ210は、Taキャップ150とMgOキャッピング層130の間に3ÅのCo
76Fe
4B
20合金強化層140を有するMTJ構造に関する。ループ220は、Taキャップ150とMgOキャッピング層130の間に5ÅのCo
76Fe
4B
20合金強化層140を有するMTJ構造に関する。M−Hループ200の勾配は非常に浅く、低いPMA、したがって、低いTMRを示す。しかしながら、ループ210および220は実質的により急勾配であり、かつ3Åから5Åまでの強化層の厚さの増加とともに増加する。
【0017】
本発明が、好ましい実施形態に関して特に示されて説明されたが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、形状および細部の様々な変更がなされてもよいことは当業者に理解されるであろう。したがって、開示された本発明は、単に例示として考えられ、そして添付された請求の範囲において特定化される範囲においてのみ限定される。
【符号の説明】
【0018】
100 磁気トンネル接合
102 基準層
103 磁性
104 自由層
105 磁性
106 絶縁性酸化物バリア層
107 磁性
110 [Co/Pt]n多層
112 CoFeB層
114 Taブレーキング層
120 CoFeB膜
122 CoFeB膜
124 Ta分離膜
130 MgOキャッピング層
140 強化層
150 Taキャップ