【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、独立請求項の構成要件によって達成される。
第1に、これは水輸送構造体であり、特に、燃料電池のプロセスガスの加湿のために使用され、次の要件を含む。
透水性と実質的に気密性を備える水輸送層、ならびに、
少なくとも一つの熱可塑性保護層。
水輸送層および熱可塑性保護層は、少なくとも一部において互いに重畳し、第1および第2の重畳領域を形成する。
水輸送構造体は前記第1の重畳領域において透水性を有し、前記第2の重畳領域において熱圧着されることで、水およびガスに対して気密性を備える。
【0009】
接合の前に、水輸送層や熱可塑性保護層または複数の層が少なくとも部分的に重畳するように、それぞれ配置されている。しかしながら、これは、これらが同一の外縁を有する必要があることを意味するものではない。ここでは、重なりが存在していることのみが必要とされている。
【0010】
本発明において、この重なりは2つの領域、つまり第1の重畳領域と第2の重畳領域とを有する。
【0011】
この点に関して、第1の重畳領域では、熱可塑性保護層を介して湿気または湿潤ガスが通過できることが重要である。これは、少なくとも一部において水輸送構造体が有する熱可塑性保護層が、本発明の実現を可能にするために、透水性および気体透過性を備える必要があることを意味する。
【0012】
熱圧着されている第2の重畳領域において、ガス、特に湿気のあるガスに対して透過性を備えず、したがって熱可塑性保護層の下に位置する水輸送層に湿気のあるガスが到達できないように、熱可塑性保護層は熱圧着されている。これは、第2の重畳領域において、前述したように圧縮された熱可塑性保護層が、好ましくはその平面方向とその平面方向と垂直な方向との両方において、水やガスに対して透過性を備えないことを意味する。一般的に、下にある水輸送層は、全面において少なくともガスに対して透過性を備えないが、液体に対しては透過性を備える。これは面と垂直な方向において特にそうである。
【0013】
熱圧着の際、圧力を用いて、接続される領域に熱間圧延または熱間鍛造が施される。本発明にかかる水輸送構造体では、使用される典型的な圧力は、0.1〜5MPaであり、好ましくは0.8〜2MPaであり、典型的な温度は、150〜300℃、好ましくは220〜270℃である。使用される正確な条件は、特に使用される材料に依存する。
【0014】
本発明の有用な変形例は、他の請求項に記載されている。
【0015】
有用な変形例では、熱可塑性保護層は、水輸送層の両側に設けられている。これは、この手段を備える水輸送層が両側で保護されるので、水輸送層の非常に優れた保護を可能にする。しかしながら、この三層構造は、本発明の必須の要素ではない。二層構造、並びに更なる層を備える構造、または追加の中間層を備える構造はそれぞれ、本発明に含まれる。
【0016】
有用な変形例では、第2の重畳領域の厚さは第1の重畳領域の厚さと比べて薄い。
【0017】
ここで、第2の重畳領域の最小の厚さは、この領域が湿潤ガスを通過させない程度の厚さとすることができる。第1の重畳領域の厚さは、第1の重畳領域の最大の厚さを採用することができる。技術的な理由のために、層の厚さの様々な変形例は、第2の重畳領域から第1の重畳領域に向かって安定的に厚さが増加する移行領域において示される。この移行領域では、少なくともある程度の湿潤ガスは通過することができる。しかし、本明細書では、この移行領域は第1の重畳領域の一部であるものとする。
【0018】
更なる形態では、第2の重畳領域は、第1の重畳領域の少なくとも2つの長手方向の縁部において、第1の重畳領域の範囲を定める。これは、コイル材料のアセンブリが連続的に水輸送構造体を形成する際に特に有利である。この場合は、個々の部分(segments)、例えば、コイルの長手方向の縁部に垂直な成分を分離することができる。
【0019】
しかしながら、これはまた、第2の重畳領域が円周方向において第1の重畳領域の範囲を定めることを可能にする。このように、水輸送構造体のいわゆる活性領域の側面のシーリングはこのような簡単な方法で実現することができる。
【0020】
有用な変形例では、第1の重畳領域の厚さは35〜600μmであり、第2の重畳領域の厚さは、第1の重畳領域の厚さの10〜75%、好ましくは20〜50%である。厚さは、1つ又は2つの熱可塑性保護層が存在しているかどうかに強く依存する。一般的に、第1の重畳領域における熱可塑性保護層自身の厚さは、30〜250μmであり、好ましくは80〜110μmである。第1の重畳領域における水輸送層の厚さは、一般的に8〜30μmであり、好ましくは15〜30μmである。
【0021】
有用な変形例では、第1の重畳領域における熱可塑性保護層は多孔質(porous)であり、好ましくは50〜95%の気孔率を有する。
【0022】
ここで、この多孔構造により、湿潤ガスが熱可塑性保護層を通り水輸送層まで拡散する。多孔構造は、熱的にも機械的にも熱圧着の影響を受けない熱可塑性保護層の領域であると考えられている。よって、第2の重畳領域に向かう移行領域でもない。また、有用な実施形態では、第2の重畳領域における熱可塑性保護層は本質的に非多孔質であり(多孔構造ではない)、よって、この領域における熱可塑性保護層の密度は、上述した第1の重畳領域の多孔構造の領域の密度よりも高い。
【0023】
一実施形態では、第2の重畳領域において、開口部は切り抜き、打ち抜き、レーザ加工によって形成される。これは、第2の重畳領域に完全に囲まれた、所謂、内部領域に関連している。しかし、少なくとも第2の重畳領域における水輸送構造体の外周部分はまた、別な方法として、又は追加的に、切り抜き、打ち抜き、レーザ加工によって形成することができる。
【0024】
好ましい実施形態では、水輸送層は、支持体上に載置することができる非補強の膜(non-reinforced membrane)を用いて構成することができる。保護層と同様に、支持体には、熱可塑性繊維紙、繊維ロービング(fiber rovings)、フリースまたはポリマー繊維を使用した繊維織り(fiber weave)を用いることができる。他の有用な実施形態では、水輸送層は、補強された膜を用いて実現されている。
【0025】
一実施形態では、熱可塑性保護層は、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフタルアミド、ポリエチレンテレフタレート、及び/又はポリブチレンテレフタレートを含み、又はこのような材料から成る。これは、上述の材料が単一の状態で使用されることを意味する。しかしながら、熱可塑性保護層は、これらの材料を積層して形成してもよく、またはこれらの材料を混合して形成してもよい。
【0026】
一実施の形態では、水輸送層は、多孔質材料、コーティングされた及び/又は含浸された織り(Texapore(登録商標)、Venturi(登録商標))、層状膜(ゴアテックス(登録商標))、イオノマーが含浸された膜、高分子電解質膜(ナフィオン(登録商標))、親水性膜、又は隔膜を用いて実現することができる。これらの材料は市販されているが、一般的に非常に壊れやすい。したがって、本発明は、これらの水輸送層を保護するのに有用である。本明細書に記載の含浸は、水輸送層の特性を改良する含浸である。この含浸は、水輸送層の全領域に適用される。既製の水輸送構造体の外縁に局所的に適用される含浸には関係しない。そのような含浸は、外側への漏れに対する気密性を向上させるために従来技術において使用されている。
【0027】
本発明は更に、加湿モジュール、特に、少なくとも第1及び第2の流板と、上述したように第1の流板と第2の流板との間に配置された水輸送構造体とを備える燃料電池のプロセスガスの加湿のための加湿モジュールに関連する。ここで、第1及び第2の流板はそれぞれ、ガスをガイドするための流路構造を備える。
【0028】
有用な変形例では、水輸送構造体は、その第2の重畳領域の少なくとも一部において第1及び/又は第2の流板に接着接合されている。この方法により、加湿モジュールの気密を確実にすることができる。また、この配置は、前述した保護されていない水輸送構造体と比較して、機械的な応力や曲げに対して強くすることができる。これに関連して、接着剤による接合は、水輸送構造体及び/又は第1及び/又は第2の流板の外縁領域の少なくとも一部において実施されているため有利である。接着、溶融、溶接、特に超音波溶接は、流板と水輸送構造体との間を接合するために用いられる。
【0029】
他の実施形態では、第1及び/又は第2の流板は、流路構造を取り囲むシール領域を備える。ここで、水輸送構造体は、シール領域に配置し、圧力ばめを用いることで、第1及び/又は第2の流板に接続される。
【0030】
他の好ましい実施形態では、第1及び第2の流板は、流路構造を取り囲むシール領域を備える。ここで、構造は両方の流板に形成されており、流板は少なくとも一部において相互補完している(例えば、さね継ぎ)。流板は、このような相補的な構造を用いて互いに接合されている。気密性は、相補的な構造の間に水輸送構造体を固定することで達成することができる。圧縮された第2の重畳領域がこれらの構造の間に固定されることが好ましい。接続は、ポジティブフィット(positive fit)と圧力ばめ(force fit)で実現される。最適なシールを得るために、相補的な構造は、水輸送構造体に取り付けられた際に最適にフィットするように設計される。
【0031】
加湿モジュールの第1及び/又は第2の流板は、積層方向において媒体をガイドするための開口部を備え、この開口部は水輸送構造体の第2の重畳領域の開口部と少なくとも一部において重なるようにすることが有利である。これにより、積層方向において媒体(特にガス)を安全かつ気密にガイドできる。
【0032】
他の実施形態として、第1及び/又は第2の流板が、媒体を積層方向にガイドするための開口部を備えるが、媒体をガイドするためのこれら全ての開口部は、水輸送構造体によってカバーされる各々の流板のその部分の外部に配置されていると有利である。この他の実施形態では、水輸送構造体の外側輪郭は、上記の実施形態に比べて小さくなっており、よって材料を節約することができる。
【0033】
有用な変形例では、流板の少なくとも一部は、熱可塑性材料、弾性プラスチック、又は熱硬化性樹脂で形成されており、及び/又は、少なくとも一部は腐食安定性金属材料からなる。
【0034】
一実施形態では、水輸送構造体の第1の重畳領域は、少なくとも一部において第1及び第2の流板の流路構造と重なる。これにより、水輸送層を通過する湿度は、所望の流路に導かれ、これらのさらなる流路において、加湿モジュールの排出口に到達する。
【0035】
一実施形態では、第1及び第2の流板は、材料の選択、流路の形状、流路の方向、及びシーリングの外形の少なくとも一つにおいて互いに異なる。これは、媒体が異なる流板の所定のコースを通るようにガイドする際に有効である。しかし、これは、流板の構造が同一となることを排除するものではない。
【0036】
しかし、変形例では、Aの形状を備える流板とBの形状を備える流板とを、流板の積層がA−B−A−Bのような順序となるように配置することが有利である。A−B−A−Bの順序に積層することで、流板Aの両側において、湿潤ガスが流路構造に流れて加湿され、流板Bの両側において、湿潤ガスが流路に流入するので有利である。そして、1つの水輸送構造体が全ての流板の間に配置されることが好ましい。
【0037】
本発明はまた、加湿器、特に燃料電池のプロセスガスを加湿するための加湿器に関し、次の要件を含む。
乾燥ガスが注入される第1の注入口と湿潤ガスが排出される第1の排出口と、
湿潤ガスが注入される第2の注入口と除湿されたガスが排出される第2の排出口と、
少なくとも1つの上記加湿モジュールと、を備える。
加湿モジュールの流路構造はそれぞれ、上記の注入口または排出口の少なくとも一つに接続されている。
【0038】
このような加湿器は燃料電池システムに有利に接続することができる。このように、加湿器は、効率的にまた大規模に生産可能であり、燃料電池システムのプロセスガスが必要とする程度に加湿することができる。
【0039】
更に、本発明は、水輸送構造体、加湿モジュール、及び/又は加湿器の生産に用いる装置に関し、次の要件を含む。
水輸送層および少なくとも一つの多孔質熱可塑性保護層の連続的な又は非連続的な供給のための装置(arrangement)と、
水輸送層と少なくとも一つの熱可塑性保護層とを少なくとも部分的に熱圧着するための装置(arrangement)と、を備え、
熱圧着は、圧着される領域が水およびガスに対して気密性を備えるように実施される。
【0040】
本発明によれば、装置はこのように連続的又は非連続的に働く。本発明の特性を備えた前述の第1及び第2の重畳領域が得られるように、少なくとも2つの層の熱圧着が実施されることが重要である。
【0041】
一実施形態では、連続的または非連続的な供給をするための装置は、水輸送層が、2つの多孔質熱可塑性保護層の間に配置されるように設計されている。これは好ましい変形例であるが、上述したような層数が異なるバリエーションも可能である。
【0042】
一実施形態では、連続的な供給はコイルを用いて実現される。水輸送層と熱可塑性保護層はそれぞれ、コイル材料を用いることで大規模な工業規模で利用可能である。これにより、連続的な方法で水輸送構造体を容易に製造することができる。別の方法として、個々の材料のブランク(blanks)は、アセンブリを形成するために、熱圧着前に重なるように使用することができる。この別の方法の一実施形態は、各々のブランクが、これらが互いに重なる前に、剥離フィルムで覆われて格納されることで実現される。
【0043】
熱圧着は所定の領域、好ましくは個々の領域で実施され、全面のラミネーションは実施されないことを強調すべきである。個々の領域における熱圧着は、例えば枠状の型(stamp)を用いて実現することができる。他の手法として、長手方向および横方向(コイル材料の供給方向に対して)における熱圧着は別々に実施することができる。この目的のために、長手方向における熱圧着は、加熱されたロールを用いて連続的なプロセスとして実施され、横方向における熱圧着は、単一またはいくつかの加熱された型を用いて個別のプロセスとして実施されることが好ましい。いくつかの型(例えば2つの型)が用いられた場合は、基本的にこれらが互いに平行になるように配置することが好ましい。
【0044】
材料の長手方向縁部に隣接した箇所の熱圧着は、平坦でオープンな縁部に異なる層が次々と供給されることにより実施することができる。ここで、水輸送層の縁部は、多孔質熱可塑性保護層の端部とぴったり重なるように、又はこの縁部を超えるように、又はこの縁部と離間するように配置される。層の縁部を平坦でオープンな状態にする代わりに、少なくとも一つの層を別の層に折り畳むことで、裾(hem)のようなものを形成することもできる。この後者の実施形態は、熱圧着ロールを用いた連続的なプロセスと組み合わされることが好ましい。3層構造の場合、有利な変形例として、第1層目の多孔質熱可塑性保護層の横方向両側の外側縁部が、水輸送層の横方向の外側縁部に折り畳まれ、連続的なステップにおいて、第2層目の多孔質熱可塑性保護層の横方向両側の外側縁部がこのようにして形成された裾(hem)に折り畳まれる。一方、2つの層をこのような方法で折り畳むことで中間熱圧着が実施され、両方の折り畳みが完了した時点で、第2の熱圧着ステップが実施される。これにより、第3の層が折り畳まれる前に、中間の裾(hem)を平坦にすることができるという利点がある。一方で、裾の形成が完了した時点で、単一の熱圧着ステップが実施される。
【0045】
一実施形態によると、装置は、熱圧着された水輸送構造体を切断し(特に、端部を切断し)、また開口部を形成するための切断装置を追加的に備える。これは、レーザや切断装置、打ち抜き装置を用いることで有利に実現される。
【0046】
これに関連して、熱圧着と開口部の切り抜き及び/又は縁部の切断は、単一の製造装置(work station)で実施することができるがこれは必須ではない。特に組み合わされた工具を用いることで、打ち抜き装置や切断ナイフを用いて熱圧着と同時に切断することで、一連のプロセスを最適化できるという利点がある。
【0047】
一実施形態において、組立装置は、水輸送構造体と流板とを所定の順序に積層するように設計された積層装置を追加的に有する。水輸送構造体と流板は同一のサイズでもよくサイズが異なっていてもよい。このような方法により、対応する積層構造が「成長」する。流板の供給は、例えば横方向において適切なロボットアームを用いることで実現してもよい。そうすることで、水輸送構造体の供給は、個々の層の供給に比べてかなり促進される。水輸送層は気密であるため、熱可塑性保護層の多孔性に起因する負の要因なしに、水輸送構造体を真空グリッパを用いて把持することができる。よって、扱う部品の点数を減らすことに加えて、把持および位置決めが促進される。
【0048】
この組立装置の特有の構造は、少なくとも下記の装置を備える。
a)水輸送構造体を連続的に形成する際の出発生産物として、水輸送層と、上層および下層の多孔質熱可塑性保護層と、を連続的に供給するためのコイル供給装置、
b)連続的な形状を備える水輸送構造体に熱圧着を実施するための装置、
c)連続的な形状を備える水輸送構造体に開口部を形成するための装置、
d)前記水輸送構造体の分離された一片(section)と下にある流板とを接合して加湿モジュール及び/又は加湿モジュールの積層構造を形成するために、連続的な形状を備える水輸送構造体の下に流板を積層し、連続的な形状を備える水輸送構造体を個々の一片に分離する装置。
【0049】
これにより、大規模な工業規模における連続的なプロセスが実現できるという利点がある。特に、使い残しの材料、つまり、加湿モジュールの積層構造に使用されていない水輸送構造体の一部を、組立装置の端部において連続的に巻き上げることができ、したがって、処分やリサイクルを促進することができるという利点がある。特に、このロール・ツー・ロールの装置によって、折り畳まれたり曲げられやすい箔に張力を与えることができるという利点がある。これにより、連続的な形状を備える水輸送構造体から切断されたブランクを、張力が働いている状態で流板に接続することができる。これは、特に、水輸送層にも当てはまり、熱可塑性保護層にも適用することができる。したがって、折り曲げられたりしわができることを回避することができ、よって、生産される加湿器の気密性を保持できるという利点がある。
【0050】
この組立装置の他の特有の構造は、少なくとも下記の装置を備える。
a)水輸送構造体を連続的に形成する際の出発生産物として、水輸送層と、上層および下層の多孔質熱可塑性保護層と、を連続的に供給するためのコイル供給装置、
b)連続的な形状を備える水輸送構造体に熱圧着を実施するための装置、
c)水輸送構造体の外面形状を切断し、選択的に水輸送構造体に開口部を形成するための装置、
d)水輸送構造体の分離された一片を搬送するための装置、
e)前記水輸送構造体の分離された一片と上側及び/又は下側にある流板とを接合して加湿モジュール又は加湿モジュールの積層構造を形成するために、水輸送構造体の分離された一片の下側及び/又は上側に流板を積層する装置。
【0051】
ここで、外縁の切断後に残っ材料を巻き上げ、張力が働いた状態で材料の異なる搬送経路を維持することが可能である。水輸送層は気密性を備えるので、水輸送構造体の分離された一片は、真空グリッパを用いて切断装置から容易に取り除くことができ、そして直接的又は間接的に加湿モジュールを形成するための積層装置または接合装置に搬送される。間接的な搬送に関して、水輸送構造体の分離された一片は大量に集められ、その後、既に形成された水輸送構造体の各々は、他の装置から空間的に分離された積層装置または接合装置に供給される。
【0052】
可能な変形例として、熱可塑性保護層、水輸送層、及び上述した他の熱可塑性保護層と同一である個々の材料の拡散媒体、膜および拡散媒体は、装置のコイルから供給され、上下に平行に配置される。片側又は両側から作用する熱間鍛造装置または印圧加工ロールは、構造体(compound)の対向している両端部を溶接して密閉する。このようにすることで、熱可塑性拡散媒体は溶解して圧縮される。この方法により、これらの層の多孔性は、処理された領域内、つまり溶接された領域で消失される。最後に、平坦で主に滑らかな端部構造が得られる。これは、構造体の中心に位置している膜を固定している。更に、端部構造は膜に接着接合され、したがって、機械的ストレスから脆弱な膜を保護することができる。加えて、膜のシーリング又は流板への接着剤の供給のための理想的な領域が形成される。流板に構造体を取り付ける前に、構造体が流板にフィットするように、外縁部分を取り除いて構造体の輪郭が調整される。これは、例えば切り抜き、打ち抜き、又はレーザを用いて実施することができる。輪郭の形成は、例えば、真空グリッパ上で直接的に、又は構造体を直接流板に置いて後者に接続することにより実現することができる。後者の場合、構造体の所定の輪郭が板上で直接的に切り抜かれる。流板へのシーリング接合は、ガスケットを用いて、接着剤を用いて、又は構造体を流板に直接溶融・溶接することで、実現される。水輸送構造体は縁部において既に気密性を備えているので、輸送構造体の流板に対する位置決めはかなり促進され、よって、不整合やリークが改善される。交互に繰り返して層を積層することが促進され、より迅速に、よりコストを低減することができる。
【0053】
多くの加湿器の積層体では、水輸送構造体の両側のシーリング領域は列んでいない。これらは、流板−インターフェース1−水輸送構造体−インターフェース1−流板−インターフェース2−水輸送構造体−インターフェース2−流板・・・のように交互に配置されている。ここで、2つのインターフェース1、2を同一の平面に投影した際、インターフェース1におけるシーリング領域は、インターフェース2におけるシーリング領域に対してシフトしている。この状態において、膜の輪郭は、2つのインターフェース1で適用されたか、又は2つのインターフェース2で適用されたかによって、一般的に異なっている。このような構成により、2つの輪郭のうちの小さい方が必要とする幅よりも広い熱圧着を実現することができ、また熱圧着領域内において順番に必要な輪郭を切り抜くことができるという利点を備える。既に述べたように、これは、レーザ切断を使用することで、高速、高精度かつ柔軟に実施することができる。
【0054】
本発明はいくつかの図面を用いて説明される。図面について議論する際、たとえこれらが明示的に述べられていなくても、異なる図面における同一の符号は同一の要素を示す。追加的な情報として、明細書の最後に記載の符号のリストを参照することができる。