特許第6202789号(P6202789)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝メディカルシステムズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6202789-医用画像診断装置およびその制御方法 図000002
  • 特許6202789-医用画像診断装置およびその制御方法 図000003
  • 特許6202789-医用画像診断装置およびその制御方法 図000004
  • 特許6202789-医用画像診断装置およびその制御方法 図000005
  • 特許6202789-医用画像診断装置およびその制御方法 図000006
  • 特許6202789-医用画像診断装置およびその制御方法 図000007
  • 特許6202789-医用画像診断装置およびその制御方法 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202789
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】医用画像診断装置およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20170914BHJP
【FI】
   A61B6/03 333B
   A61B6/03 F
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-181467(P2012-181467)
(22)【出願日】2012年8月20日
(65)【公開番号】特開2014-36787(P2014-36787A)
(43)【公開日】2014年2月27日
【審査請求日】2015年7月22日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】東芝メディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(72)【発明者】
【氏名】平松 恒人
(72)【発明者】
【氏名】袴塚 昌夫
【審査官】 関根 裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−004959(JP,A)
【文献】 特開2004−223138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 − 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体をスキャンして被検体のデータを収集する撮影部と、
前記撮影部によってファントムをスキャンして得られるデータに基づき生成されるテスト画像に含まれる当該ファントムの形状に基づいて前記ファントムの種別を認識するファントム認識部と、
ファントムの種別に対し、前記撮影部にて当該ファントムをスキャンするためのスキャンプロトコルを関連付けた情報から、前記ファントム認識部によって認識された種別に関連付けられたスキャンプロトコルを取得する取得部と、
前記取得部によって取得されたスキャンプロトコルに従って前記撮影部を制御し、前記ファントムをスキャンさせる制御部と、
前記ファントムをスキャンして得られたデータに基づき、当該ファントムに関する画像を再構成する再構成処理部と、
前記再構成処理部によって再構成された画像、又は、この画像を解析して得られる情報を出力する出力部と、
を備えていることを特徴とする医用画像診断装置。
【請求項2】
前記ファントムの種別に対してスキャンプロトコルを関連付けた前記情報を編集する編集部をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の医用画像診断装置。
【請求項3】
被検体をスキャンして被検体のデータを収集する撮影部と、
ファントムの種別を認識するファントム認識部と、
ファントムの種別に対し、当該ファントムに関する画像を再構成するための再構成プロトコルを関連付けた情報から、前記ファントム認識部によって認識された種別に関連付けられた再構成プロトコルを取得する取得部と、
前記撮影部を制御し、前記ファントムをスキャンさせる制御部と、
前記取得部が取得した再構成プロトコルに従い、前記ファントムをスキャンして得られたデータを用いて前記ファントムに関する画像を再構成する再構成処理部と、
前記再構成処理部によって再構成された画像、又は、この画像を解析して得られる情報を出力する出力部と、
を備えていることを特徴とする医用画像診断装置。
【請求項4】
ファントムの種別に対して再構成プロトコルを関連付けた前記情報を編集する編集部をさらに備えていることを特徴とする請求項3に記載の医用画像診断装置。
【請求項5】
被検体をスキャンして被検体のデータを収集する撮影部と、
前記撮影部によってファントムをスキャンして得られるデータに基づき生成されるテスト画像に含まれる当該ファントムの形状に基づいて、当該ファントムの種別を認識するファントム認識部と、
ファントムの種別に対して解析内容を関連付けた情報から、前記ファントム認識部によって認識された種別に関連付けられた解析内容を取得する取得部と、
前記撮影部を制御し、前記ファントムをスキャンさせる制御部と、
前記ファントムをスキャンして得られたデータを用いて前記ファントムに関する画像を再構成する再構成処理部と、
前記再構成処理部によって再構成された画像を、前記取得部によって取得された解析内容に従って解析する解析部と、
前記解析部により前記画像を解析して得られた情報を出力する出力部と、
を備えていることを特徴とする医用画像診断装置。
【請求項6】
ファントムの種別に対して解析内容を関連付けた情報を編集する編集部をさらに備えていることを特徴とする請求項5に記載の医用画像診断装置。
【請求項7】
前記ファントム認識部は、前記ファントムに設けられた無線タグと通信して当該無線タグに記憶された情報を取得し、取得した情報に基づいて当該ファントムの種別を認識することを特徴とする請求項3に記載の医用画像診断装置。
【請求項8】
前記ファントム認識部は、前記撮影部によって前記ファントムをスキャンして得られるデータに基づき生成されるテスト画像に含まれる当該ファントムの形状に基づいて、当該ファントムの種別を認識することを特徴とする請求項3に記載の医用画像診断装置。
【請求項9】
前記テスト画像は、前記ファントムに関するスキャノ画像、アキシャル画像、又は、ボリューム画像のいずれかであることを特徴とする請求項1、5又は8に記載の医用画像診断装置。
【請求項10】
被検体をスキャンして被検体のデータを収集する撮影部を有し、収集されたデータを用いて被検体に関する画像を再構成する医用画像診断装置の制御方法であって、
前記撮影部によってファントムをスキャンして得られるデータに基づき生成されるテスト画像に含まれる当該ファントムの形状に基づいて前記ファントムの種別を認識するファントム認識ステップと、
ファントムの種別に対し、前記撮影部にて当該ファントムをスキャンするためのスキャンプロトコルを関連付けた情報から、前記ファントム認識ステップにて認識された種別に関連付けられたスキャンプロトコルを取得する取得ステップと、
前記取得ステップによって取得されたスキャンプロトコルに従って前記撮影部を制御し、前記ファントムをスキャンさせる制御ステップと、
前記ファントムをスキャンして得られたデータに基づき、当該ファントムに関する画像を再構成する再構成ステップと、
前記再構成ステップにて再構成された画像、又は、この画像を解析して得られる情報を出力する出力ステップと、
を備えていることを特徴とする制御方法。
【請求項11】
被検体をスキャンして被検体のデータを収集する撮影部を有し、収集されたデータを用いて被検体に関する画像を再構成する医用画像診断装置の制御方法であって、
ファントムの種別を認識するファントム認識ステップと、
ファントムの種別に対し、当該ファントムに関する画像を再構成するための再構成プロトコルを関連付けた情報から、前記ファントム認識ステップにて認識された種別に関連付けられた再構成プロトコルを取得する取得ステップと、
前記撮影部を制御し、前記ファントムをスキャンさせる制御ステップと、
前記取得ステップにて取得した再構成プロトコルに従い、前記ファントムをスキャンして得られたデータを用いて前記ファントムに関する画像を再構成する再構成ステップと、
前記再構成ステップにて再構成された画像、又は、この画像を解析して得られる情報を出力する出力ステップと、
を備えていることを特徴とする制御方法。
【請求項12】
被検体をスキャンして被検体のデータを収集する撮影部を有し、収集されたデータを用いて被検体に関する画像を再構成する医用画像診断装置の制御方法であって、
前記撮影部によってファントムをスキャンして得られるデータに基づき生成されるテスト画像に含まれる当該ファントムの形状に基づいて、当該ファントムの種別を認識するファントム認識ステップと、
ファントムの種別に対して解析内容を関連付けた情報から、前記ファントム認識ステップにて認識された種別に関連付けられた解析内容を取得する取得ステップと、
前記撮影部を制御し、前記ファントムをスキャンさせる制御ステップと、
前記取得ステップにて取得した再構成プロトコルに従い、前記ファントムをスキャンして得られたデータを用いて前記ファントムに関する画像を再構成する再構成ステップと、
前記再構成ステップにて再構成された画像を、前記取得ステップにて取得された解析内容に従って解析する解析ステップと、
前記解析ステップにより前記画像を解析して得られた情報を出力する出力ステップと、
を備えていることを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、被検体をスキャンして医用画像を生成する医用画像診断装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT(Computer Tomography)装置、磁気共鳴イメージング(MRI:Magnetic Resonance Imaging)装置、および、ポジトロン断層撮影(PET:Positron Emission Tomography)装置等の医用画像診断装置を常に正常に運用するためには、装置のメーカーが実施する保守点検だけでなく、ユーザが日々実施する始業点検などの日常的な点検作業の実施が重要となる。
【0003】
例えば、X線CT装置の日常的な点検作業は、CATPHAN(登録商標)やACR(登録商標)等の品質評価ファントムを用いて実施されている。このようなファントムを用いた点検作業においては、ファントムに応じたスキャンプロトコルで架台装置にファントムの投影データを収集させ、これら投影データを元に同ファントムに応じた再構成プロトコルでファントムの断層像等を再構成させ、この断層像等に対して同ファントムに応じた解析を加えるなどの作業が行われる。品質評価用のファントムには多数の種類が存在し、点検作業の目的に応じて使い分けられている。
【0004】
ファントムに応じた適切な点検作業を実施するためには、上記のようなスキャンプロトコル、再構成プロトコル、解析内容等を熟知しておく必要がある。修練度の低い作業者にとっては、点検作業の目的に応じてどの種別のファントムを使用し、どのようなプロトコルおよび解析内容にて点検作業を実施すればよいのかが分かりにくい。通常は点検作業の目的に応じたファントムの種別およびプロトコル等を記載したマニュアルが用意されるが、このようなマニュアルの記載事項は多岐に亘るため、必要な情報を得るのに相当の時間を要する。また、熟練者が点検作業を担当したとしても、ファントムに応じて各プロトコルを設定したり、撮影結果である断層像等に解析を加えたりする作業は煩雑で、手間の掛かるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−113803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、ファントムを用いた点検作業を効率化してユーザの手間を省くとともに、適切なプロトコルにて当該点検作業を実施することを可能とする医用画像診断装置およびその制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係る医用画像診断装置は、被検体をスキャンして被検体のデータを収集する撮影部と、前記撮影部によってファントムをスキャンして得られるデータに基づき生成されるテスト画像に含まれる当該ファントムの形状に基づいて前記ファントムの種別を認識するファントム認識部と、ファントムの種別に対し、前記撮影部にて当該ファントムをスキャンするためのスキャンプロトコルを関連付けた情報から、前記ファントム認識部によって認識された種別に関連付けられたスキャンプロトコルを取得する取得部と、前記取得部によって取得されたスキャンプロトコルに従って前記撮影部を制御し、前記ファントムをスキャンさせる制御部と、前記ファントムをスキャンして得られたデータに基づき、当該ファントムに関する画像を再構成する再構成処理部と、前記再構成処理部によって再構成された画像、又は、この画像を解析して得られる情報を出力する出力部と、を備えている。
【0008】
また、一実施形態に係る医用画像診断装置の制御方法は、前記撮影部によって前記ファントムをスキャンして得られるデータに基づき生成されるテスト画像に含まれる当該ファントムの形状に基づいて前記ファントムの種別を認識するファントム認識ステップと、ファントムの種別に対し、前記撮影部にて当該ファントムをスキャンするためのスキャンプロトコルを関連付けた情報から、前記ファントム認識ステップにて認識された種別に関連付けられたスキャンプロトコルを取得する取得ステップと、前記取得ステップによって取得されたスキャンプロトコルに従って前記撮影部を制御し、前記ファントムをスキャンさせる制御ステップと、前記ファントムをスキャンして得られたデータに基づき、当該ファントムに関する画像を再構成する再構成ステップと、前記再構成ステップにて再構成された画像、又は、この画像を解析して得られる情報を出力する出力ステップと、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】各実施形態に共通するX線CT装置の要部構成を示すブロック図。
図2】各実施形態に共通するスキャンプロトコルテーブルを説明するための図。
図3】各実施形態に共通する再構成プロトコルテーブルを説明するための図。
図4】各実施形態に共通する解析内容テーブルを説明するための図。
図5】第1の実施形態に係るファントム認識部を説明するための図。
図6】同実施形態に係るX線CT装置の動作を示すフローチャート。
図7】第2の実施形態に係るファントム認識部を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
いくつかの実施形態について、図面を参照しながら説明する。
各実施形態では、医用画像診断装置およびその制御方法の一例として、X線CT装置および該装置の制御方法を開示する。但し、医用画像診断装置は磁気共鳴イメージング装置やポジトロン断層撮影装置等の他の装置であってもよい。
【0011】
なお、X線CTシステムの撮影系には、X線管球と検出器システムとが一体として被検体の周囲を回転する回転/回転(ROTATE/ROTATE)タイプや、リング状に多数の検出素子がアレイされ、X線管球のみが被検体の周囲を回転する固定/回転(STATIONARY/ROTATE)タイプ等様々なタイプがあり、いずれのタイプでも本発明を適用可能である。ここでは、現在、主流を占めている回転/回転タイプのX線CT装置を例として説明する。
【0012】
[X線CT装置の要部構成]
先ず、図1図4を用いて各実施形態に共通するX線CT装置1の要部構成について説明する。
図1は、X線CT装置1の要部構成を示すブロック図である。同図に示すように、X線CT装置1は、架台装置2、寝台装置3、および、コンソール装置4を備えている。
【0013】
架台装置2は、X線管球5、X線検出器6、X線絞り装置7、回転フレーム8、高電圧発生部9、架台駆動機構部10、架台/寝台制御部11、および、データ収集部12等を備えている。また、架台装置2は、被検体Pが送り込まれる撮影空間としての開口部13を有する。
【0014】
X線管球5およびX線検出器6は、開口部13を挟んで対向した状態で回転フレーム8に取り付けられている。架台駆動機構部10は、回転フレーム8を回転させる構造的な機構と、当該機構を動作させるモータ等で構成されている。回転フレーム8の回転により、X線管球5とX線検出器6とが対向した状態で、開口部13内に搬送された被検体Pの周りを回転する。
【0015】
高電圧発生部9は、高電圧変圧器、フィラメント加熱変換器、整流器、高電圧切替器等で構成されており、架台装置2の外部から供給される動作電力を高電圧変換してX線管球5に供給する。
【0016】
X線管球5は、高電圧発生部9から管電圧の印加および管電流の供給を受けてX線を発生する。X線検出器6は、2次元アレイ型検出器(いわゆるマルチスライス型検出器)であり、2次元状に配列された複数のX線検出素子を有する。
【0017】
X線絞り装置7は、X線遮蔽板を有し、このX線遮蔽版を制御することにより、被検体Pに照射されるX線の照射範囲を調整する。
【0018】
データ収集部(DAS)14は、X線検出器6の各X線検出素子から電気信号を読み出し、読み出した電気信号を増幅し、増幅した電気信号をデジタル信号に変換する。変換後のデジタル信号は、投影データと呼ばれる。
【0019】
X線管球5、X線検出器6、およびデータ収集部12など、架台装置2が備える各部によって、被検体Pをスキャンして被検体Pの内部形態を反映するデータ(投影データ)を収集する撮影部が構成される。
【0020】
寝台装置3は、被検体Pが載置される天板30、天板30を支持する天板支持部31、および、寝台駆動機構部32等を備えている。
【0021】
寝台駆動機構部32は、天板30をその載置面に対する水平方向および垂直方向に移動させる構造的な機構と、当該機構を動作させるモータ等で構成されている。
【0022】
架台/寝台制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、および、RAM(Random Access Memory)等で構成され、コンソール装置4等から入力される指示に従って、架台装置2および寝台装置3の各部を制御する。
【0023】
コンソール装置4は、コンソール制御部40、前処理部41、再構成処理部42、画像記憶部43、画像処理部44、表示部45、入力部46、ファントムデータベース(DB)47、取得部48、解析部49、および、編集部50等を備えている。
【0024】
コンソール制御部40は、CPU、ROM、および、RAM等で構成され、コンソール装置4が備える各部を制御する。
【0025】
前処理部41は、データ収集部14から投影データを受け取り、感度補正やX線強度補正等の前処理を施す。
【0026】
再構成処理部42は、再構成時に使用する再構成スライス厚、再構成間隔、撮影目的の臓器や検査目的に合わせてコントラスト分解能や空間分解能を変化させるための再構成関数等のパラメータや、再構成に用いるアルゴリズムの種別等で定義される再構成プロトコルに従い、前処理部41にて前処理が施された後の投影データを用いて被検体の断層像やボリューム画像を再構成する。
【0027】
画像記憶部43は、データ収集部14から送られる投影データ(生データ)、前処理部41にて前処理が施された投影データ、および、再構成処理部42にて生成された再構成画像等を記憶する。
【0028】
画像処理部44は、画像記憶部43に記憶された再構成画像に対して、ウィンドウ変換、RGB処理等の表示のための画像処理を行い、表示部45に出力する。また、画像処理部44は、オペレータの指示に基づき、任意断面の断層像、任意方向からの投影像、3次元表面画像等のいわゆる疑似3次元画像の生成を行い、表示部45に出力する。出力された画像データは、表示部45においてX線CT画像として表示される。
【0029】
入力部46は、キーボードや各種スイッチ、マウス等を備え、スキャンプロトコルや再構成プロトコル等の各種スキャン条件の入力や、後述の点検作業の開始指示の入力等に用いられる。
【0030】
ファントムデータベース47は、X線CT装置1の点検作業に用いられる品質評価用のファントムに関する情報にて構成されている。
【0031】
ファントムデータベース47には、図2に示すスキャンプロトコルテーブルt1、図3に示す再構成プロトコルテーブルt2、および、図4に示す解析内容テーブルt3等が含まれている。
【0032】
図2に示すように、スキャンプロトコルテーブルt1は、ファントム識別コードに対し、スキャンプロトコルを関連付けたテーブルである。ファントム識別コードは、品質評価用のファントムの種別毎に割り当てられた一意の識別子である。なお、品質評価用のファントムは、例えば円筒状の筐体内に水等の流体や樹脂等で形成されたモジュールを充填したものであり、低コントラスト分解能の評価用、高コントラスト分解能の評価用、空間均一性の評価用、被検体位置決めシステムによる位置決め精度の評価用など、種々の用途に応じて使い分けられる。スキャンプロトコルは、X線管球5に印加する管電圧および管電流、X線管球5の回転速度であるスキャン速度、および、撮影スライス厚等、ファントムの投影データを収集する際に必要な各種のパラメータによって定義される。
【0033】
図3に示すように、再構成プロトコルテーブルt2は、ファントム識別コードに対し、再構成プロトコルを関連付けたテーブルである。再構成プロトコルは、上述の通り、再構成スライス厚、再構成間隔、および再構成関数等のパラメータや、再構成に用いるアルゴリズムの種別等で定義される。
【0034】
図4に示すように、解析内容テーブルt3は、ファントム識別コードに対し、解析内容を関連付けたテーブルである。解析内容は、例えばファントムをスキャンして得られた投影データを元に生成される再構成画像中の解析対象範囲を示すROI(Region Of Interest)位置や、当該ROI位置に対して実施すべき解析の項目を示すものである。解析の実施項目としては、ROI内の画素値のばらつきを示す画像SD(Standard Deviation)の導出や、ROI内の空間分解能を表す関数であるMTF(Modulation Transfer Function)の導出等、ファントムの品質評価用途に応じた種々の項目が設定される。
【0035】
取得部48は、第1,第2の実施形態にて後述するファントム認識部が認識したファントム識別コードに対応するスキャンプロトコル、再構成プロトコル、および解析内容をそれぞれスキャンプロトコルテーブルt1、再構成プロトコルテーブルt2、および解析内容テーブルt3から取得する。
【0036】
解析部49は、取得部48が取得した解析内容に従い、ファントムの再構成画像を解析する。解析結果は、例えば表示部45への表示を以って出力される。但し、X線CT装置1に接続された他の装置へのデータ送信や、プリンタによるプリントアウトなど、表示以外の形式で解析結果を出力してもよい。
【0037】
編集部50は、ファントムデータベース47に含まれる各テーブルt1〜t3へのデータの追加、削除、変更等の各種の編集を行う。この編集は、例えば入力部46を介してユーザが入力する指示に基づいて行われてもよいし、図示せぬインターフェイスを介して外部から入力される情報に基づいて行われてもよい。
【0038】
X線CT装置1は、寝台装置3の天板30に載置されたファントムの種別を認識するファントム認識部を備え、このファントム認識部によって認識されたファントムの種別に応じたスキャンプロトコルおよび再構成プロトコルにて投影データ収集および画像再構成を行い、ファントム認識部によって認識されたファントムの種別に応じた内容で再構成画像を解析する。
以下に、これらの動作を実現するための第1、第2の実施形態を開示する。
【0039】
(第1の実施形態)
第1の実施形態では、図5に示すように、リーダ装置101と、このリーダ装置101に接続されたアンテナ102とを用いてファントム認識部100を構成する。ファントム認識部100は、例えば寝台装置3の天板支持部31に設けられる。
【0040】
本実施形態に係る点検作業にて使用される品質評価用のファントムFには、ICチップと小型のアンテナとを有するICタグ110が設けられている。ICチップには、ファントムFのファントム識別コードが記憶されている。ICタグ110は、ファントムFに関する再構成画像にアーチファクトを発生させないよう、例えば天板30に載置した際に天板30の水平移動方向の端部となる位置等に貼付する。但し、ICタグ110は、ファントムFの筐体に内蔵されていてもよい。
【0041】
アンテナ102は、例えば天板30の載置面に向けた指向性を有する平面パッチアンテナである。リーダ装置101は、ICタグ110に向けた質問データを高周波信号に変調し、アンテナ102に供給する。この高周波信号の入力を受けたアンテナ102は、当該高周波信号に応じた電波を発生する。この電波がICタグ110で受信されると、ICタグ110は、リーダ装置101から送信される搬送波を用いたバックスキャタ変調により、ICチップに記憶されたファントム識別コードを表す電波を発生する。この電波を受信したアンテナ102は、当該電波に応じた高周波信号をリーダ装置101に出力する。リーダ装置101は、アンテナ102から入力される高周波信号を復調することでファントム識別コードを得て、当該コードをコンソール制御部40に送信する。リーダ装置101とICタグ110との具体的な通信シーケンスとしては、EPC(Electronic Product Code)グローバルにより提唱されたシーケンスなど、種々の方式を採用し得る。
【0042】
このようなファントム認識部100を用いた点検作業について説明する。
点検作業を開始するにあたり、作業者は、当該点検による品質評価の目的に応じたファントムFを天板30上の規定位置に載置する。上記規定位置は、ファントムFのICタグ110がアンテナ102の通信範囲内に位置するように予め定められた位置である。
【0043】
ファントムFを天板30に載置した後、作業者は、入力部46を操作して点検開始の指示を入力する。以降、X線CT装置1は、図6のフローチャートに示す流れで動作し、自動的に点検作業を進行する。
すなわち、先ずファントム認識部100が天板30に載置されたファントムFの種別の自動認識処理を実行する(ステップS1)。具体的には、リーダ装置101が既述の通りアンテナ102に質問データに係る電波を発生させ、ICタグ110からの応答電波をアンテナ102が受信した際に出力する高周波信号を復調してファントム識別コードを得る。このようにファントム識別コードを得ることによって、ファントム認識部100はファントムFの種別を認識する。
【0044】
ステップS1にて得られたファントム識別コードがコンソール制御部40に送信されると、コンソール制御部40が架台/寝台制御部11に指令を発し、ファントムFの位置をスキャン開始位置に自動調整させる(ステップS2)。スキャン開始位置は、例えば上記規定位置を基準とした天板30の水平方向位置および垂直方向位置にて定義される。コンソール制御部40から上記指令を受けると、架台/寝台制御部11は、寝台駆動機構部32を制御して天板30を水平方向および垂直方向に移動させ、ファントムFをスキャン開始位置に位置決めする。スキャン開始位置は、例えばファントム識別コードに関連付けてファントムデータベース47に登録しておき、コンソール制御部40がファントムデータベース47を参照することで取得できるようにすればよい。なお、架台装置2がスキャン面を天板30の載置面に対して傾斜させるチルト機構を備えているならば、スキャン開始位置にチルト機構による傾斜角度を加えてもよい。
【0045】
ステップS2の後、ステップS1にてコンソール制御部40に送信されたファントム識別コードに関連付けられたスキャンプロトコルを、取得部48がスキャンプロトコルテーブルt1から取得する(ステップS3)。取得部48は、スキャンプロトコルテーブルt1から取得したスキャンプロトコルに含まれる各パラメータを、コンソール制御部40を介して架台/寝台制御部11に送信し、本点検作業にてファントムFの投影データを得るためのプロトコルとして設定させる。
【0046】
さらに、ステップS1にてコンソール制御部40に送信されたファントム識別コードに関連付けられた再構成プロトコルを、取得部48が再構成プロトコルテーブルt2から取得する(ステップS4)。取得部48は、再構成プロトコルテーブルt2から取得した再構成プロトコルに含まれる各パラメータを再構成処理部42に送信し、本点検作業にてファントムFの断層像等を再構成するためのプロトコルとして設定させる。
【0047】
さらに、ステップS1にてコンソール制御部40に送信されたファントム識別コードに関連付けられた解析内容を、取得部48が解析内容テーブルt3から取得する(ステップS5)。取得部48は、解析内容テーブルt3から取得した解析内容に含まれるROI位置や実施項目を解析部49に送信し、本点検作業にてファントムFの断層像等を解析する内容として設定させる。
【0048】
スキャンプロトコルおよび再構成プロトコルの設定の後、コンソール制御部40が作業者によるスキャン指示の入力を受け付ける状態で(ステップS6)、その入力を待つ(ステップS7)。スキャン指示は、例えば入力部46の操作によって入力される。
【0049】
やがてスキャン指示が入力されると(ステップS7のYes)、コンソール制御部40は、架台/寝台制御部11にスキャン開始を指示する。このとき、架台/寝台制御部11は、架台装置2および寝台装置3の各部を制御して、ステップS3にて設定したスキャンプロトコルに従い、ファントムFに関する投影データを収集する(ステップS8)。
【0050】
このようにして得られた投影データはコンソール装置4に送信され、前処理部41にて各種の前処理が施される。そして、再構成処理部42がステップS4にて設定した再構成プロトコルに従い、当該前処理後の投影データを用いて画像を再構成する(ステップS9)。
【0051】
その後、解析部49がステップS5にて設定した解析内容に従い、ステップS9にて得られた再構成画像を解析する(ステップS10)。
【0052】
解析部49による解析が完了すると、コンソール制御部40は、当該解析の結果で構成されるレポートをステップS9にて生成された再構成画像とともに表示部45に表示させる(ステップS11)。当該レポートは、例えばステップS5にて設定されたROI位置や実施項目を表す文字列に、ステップS10にて得られた解析結果を併記したものである。但し、当該レポートは他の形式で表示されてもよい。また、既述のように、解析結果は他の装置へのデータ送信やプリンタによるプリントアウト等で出力されてもよいし、再構成画像と別々に出力されてもよい。
ステップS11を以って点検作業に係るX線CT装置1の一連の動作が完了する。
【0053】
作業者は、ステップS11にて表示部45に表示されたレポートおよび再構成画像を参照し、レポートに異常な解析結果が含まれていないかどうか場合や、再構成画像に異常なアーチファクトが発生していないかどうかなどを確認し、何らかの異常が認められるならばメーカーの保守担当者に連絡するなどの処置をとる。
【0054】
以上説明したように、本実施形態に係るX線CT装置1は、天板30に載置されたファントムの種別を自動的に認識し、認識したファントムの種別に応じたスキャンプロトコル、再構成プロトコル、および、解析内容にて自動的に当該ファントムを用いた点検作業を実施する。このような構成であれば、作業者がファントムの種別に応じたスキャンプロトコル、再構成プロトコル、および、解析内容を設定する必要がないので、点検作業が効率化され、作業者への負担が軽減される。また、修練度の低い作業者であっても、マニュアル等を参照することなく、迅速かつ適切に点検作業を実施できる。
【0055】
また、編集部50を備えているため、新たなファントムを点検作業で使用するファントムとして採用する場合や、あるファントムに対するスキャンプロトコル、再構成プロトコル、および解析内容を変更するであっても、メーカー等を介さずユーザ側で自由にファントムデータベース47を編集することができる。
その他、本実施形態に開示した構成からは、種々の好適な効果が得られる。
【0056】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について説明する。
本実施形態は、ファントム認識部の構成において第1の実施形態と相違する。点検作業におけるX線CT装置1の動作は、図6のフローチャートに示したものと同様であるため詳細な説明を省略する。
【0057】
本実施形態に係るファントム認識の手順につき、図7を用いて説明する。
本実施形態に係るファントムデータベース47には、図7に示すファントム形状データ群201が含まれている。ファントム形状データ群201は、各ファントム識別コードに対応するファントムのサンプル画像にて構成されている。サンプル画像としては、スキャノ画像、アキシャル画像、又はボリューム画像等、X線CT装置1で撮影可能な種々の画像に関するものを採用し得る。図7では、円筒状のファントムのアキシャル画像(軸に対して垂直な断層像)をサンプル画像として採用した場合を例示している。このサンプル画像は、ファントムの筐体形状や筐体内部に設けられたモジュールの形状を描画したものである。
【0058】
本実施形態に係るファントム認識部200は、天板30に載置されたファントムを実際にスキャンして得られるテスト画像Tに含まれるファントム像FIから筐体形状やモジュール形状を抽出し、抽出結果とファントム形状データ群201の各サンプル画像とを比較し、一致度が最大のサンプル画像に係るファントムが、天板30に載置されたファントムであると推定する。ファントム認識部200は、例えばコンソール制御部40によってソフトウェア的に実現されてもよいし、別途のプロセッサやメモリを用いて構成されてもよい。
【0059】
テスト画像Tは、作業者が入力部46を操作して点検開始の指示を入力し、ステップS1の処理が開始された際に生成される。すなわち、ファントム認識部200は、点検開始の指示が入力されたことに応じて架台/寝台制御部11に予め定められたテスト用スキャンプロトコルでのスキャン開始を指示する。このとき、架台/寝台制御部11は、架台装置2および寝台装置3の各部を制御して、上記テスト用スキャンプロトコルに従い、天板30に載置されたファントムに関する投影データを収集する。
【0060】
ファントム形状データ群201がスキャノ画像に関するものである場合には、ファントム認識部200は、このとき収集された投影データに対し前処理部41にて前処理が施された画像をテスト画像Tとして用いる。
【0061】
また、ファントム形状データ群201がアキシャル画像やボリューム画像に関するものである場合には、ファントム認識部200は、再構成処理部42に予め定められたテスト用再構成プロトコルでのアキシャル画像やボリューム画像の再構成を指示する。このとき、再構成処理部42は、テスト用スキャンプロトコルに従って収集されて前処理部41にて前処理が施された投影データを用い、上記テスト用再構成プロトコルに従ってアキシャル画像やボリューム画像を再構成する。ファントム認識部200は、このように再構成されたアキシャル画像やボリューム画像をテスト画像Tとして用いる。
【0062】
このようなテスト画像Tに含まれる筐体形状やモジュール形状と一致するサンプル画像がファントム形状データ群201に存在するならば、当該サンプル画像に対応するファントムのファントム識別コードを用いてステップS2以降の処理が実行される。一方、一致するサンプル画像がファントム形状データ群201に存在しないならば、ファントム認識部200は、表示部45への表示等でその旨を作業者に報知する。
【0063】
本実施形態のように、天板30に載置されたファントムを実際にスキャンして得られる画像を用いて当該ファントムの種別を認識する場合であっても、第1の実施形態と同様に点検作業の効率化等に関する効果が得られることに変わりはない。
【0064】
さらに、本実施形態の構成であれば、リーダ装置101やアンテナ102をX線CT装置1に設ける必要がなく、ICタグ110によるアーチファクトの発生を危惧する必要もない。
その他、本実施形態に開示した構成からは、種々の好適な効果が得られる。
【0065】
(変形例)
上記各実施形態にて開示した構成は、種々の変形実施が可能である。
例えば、上記各実施形態では、天板30に載置されたファントムの種別を自動的に認識し、認識した種別に応じてスキャンプロトコル、再構成プロトコル、および、解析内容をX線CT装置1が自動的に決定する場合を例示した。しかしながら、スキャンプロトコル、再構成プロトコル、および解析内容の全てを自動的に決定するのではなく、これらの一部のみをX線CT装置1が自動的に決定し、他の部分に関しては作業者が入力するなどして決定するようにしてもよい。このようにした場合であっても、少なくともスキャンプロトコル、再構成プロトコル、および解析内容の一部に関して作業者が指定する必要がなくなるのであるから、作業者の負担が軽減され、点検作業が効率化されることに違いはない。
【0066】
また、上記各実施形態では、ファントムに設けられたICタグを読み取ること、あるいは、テスト画像を用いてファントム形状を照合することによってファントムの種別を認識するとした。しかしながら、作業者がファントムの種別を入力部46等から入力することなど、他の方法によってファントムの種別が認識されるようにしてもよい。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0068】
1…X線CT装置、2…架台装置、3…寝台装置、4…コンソール装置、5…X線管球、6…X線検出器、47…ファントムデータベース、48…取得部、49…解析部、50…編集部、P…被検体、t1…スキャンプロトコルテーブル、t2…再構成プロトコルテーブル、t3…解析内容テーブル、100,200…ファントム認識部、101…リーダ装置、102…アンテナ、110…ICタグ、200…ファントム認識部、201…ファントム形状データ群、T…テスト画像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7