(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態を採用したスピニングリール(釣り用リールの一例)100は、
図1に示すように、ハンドル1と、ハンドル1を回転自在に支持するリール本体2と、ロータ3と、スプール4とを備えている。ロータ3は、リール本体2の前部に回転自在に支持されている。スプール4は、釣り糸を外周面に巻き取るものであり、ロータ3の前部に前後移動自在に配置されている。なお、ハンドル1はリール本体2の左右いずれにも装着可能である。
【0019】
ハンドル1は、ハンドル軸1aと、ハンドル軸1aから径方向に延びるハンドルアーム1bと、ハンドルアーム1bの先端に回転自在に設けられたハンドル把手1cと、を有している。
【0020】
<リール本体の構成>
リール本体2は、
図1に示すように、側部が開口する収納空間を内部に有するリールボディ2aと、リールボディ2aの収納空間を塞ぐためにリールボディ2aに着脱自在に装着される蓋部材2b(
図2)と、を有している。また、リール本体2は、リールボディ2a及び蓋部材2bの後部を覆う本体ガード26と、を有している。
【0021】
リールボディ2aは、たとえば、マグネシウム合金やアルミニウム合金等の軽合金製のものであり、上部に前後に延びるT字形の竿取付脚2cが一体形成されている。リールボディ2aの収納空間内には、
図1に示すように、ロータ駆動機構5と、オシレーティング機構6とが設けられている。
【0022】
<ロータ駆動機構の構成>
ロータ駆動機構5は、ハンドル1の回転をロータ3に伝達するものであり、ハンドル1の回転に連動してロータ3を回転させる。ロータ駆動機構5は、
図2及び
図3に示すように、ハンドル1のハンドル軸1aが一体回転可能に連結された駆動軸10とともに回転する駆動ギア11と、この駆動ギア11に噛み合うピニオンギア12とを有している。
【0023】
図2に示すように、駆動ギア11は、駆動軸10と一体又は別体(この実施形態では一体)に形成されている。駆動軸10は、ねじ結合又は非円形係合(この実施形態ではねじ結合)により一体回転可能に、ハンドル軸1aに連結されている。駆動軸10は、蓋部材2bに装着された軸受27a及びリールボディ2aに装着された軸受27bにより、リール本体2に回転自在に装着されている。駆動軸10の両端の内周面には、ハンドル軸1aに螺合する左雌ネジ部10a及び右雌ネジ部10bが形成されている。ここで、駆動ギア11に近い側の左雌ネジ部10aは左ねじであり、駆動ギア11から離れた側の右雌ネジ部10bは、右ねじである。したがって、ハンドル軸1aは、右ねじ用と左ねじ用の2種類のものが用意されている。
【0024】
駆動ギア11は、
図2、
図3及び
図4に示すように、フェースギアの形態である。駆動ギア11は、駆動軸10と一体で形成された円板部11aと、円板部11aの外周側の側面に形成されたギア歯部11bと、を有している。ギア歯部11bは、円板部11aの一側面の外周側に周方向に間隔を隔てて形成された複数のフェースギア歯11cを含む。駆動ギア11は、駆動軸10とともに、例えばアルミニウム合金を鍛造して形成されている。それぞれのフェースギア歯11cは、
図5に示すように、ハンドル1が糸巻取方向に回転する時にピニオンギア12に噛み合う第1歯面11dと、糸繰り出し方向に回転したときにピニオンギア12に噛み合う第2歯面11eとを有している。第1歯面11dは歯すじ方向の中央部が凹んだ凹面で構成され、第2歯面11eは歯すじ方向の中央部が突出した凸面で構成されている。少なくとも第1歯面11dは、かみ合い進行方向線11gと交差する方向、具体的には、かみ合い同時接触線に沿って形成された少なくとも1つの溝部11fを有する。溝部11fの数は、1本でもよい。溝部11fが複数本の場合、7本から15本の溝部11fを設けるのが好ましい。これにより、見掛けのかみ合い周波数が8から16倍になり、回転フィーリングを向上させることができる。
【0025】
第1実施形態では、溝部11fは、かみ合い同時接触線が進行する方向を示すかみ合い進行方向線11gの方向に間隔を隔てて複数(例えば、13本)本設けられている。溝部11fは、例えば、溝幅が25μmから100μmの範囲であり、深さが10μmから50μmの範囲である。なお、駆動ギア11を型成形によって形成する場合、型によって溝部11fが形成される。
【0026】
駆動ギア11の諸元は、例えば、
歯数31、外径25.9mm、内径21.4mm、基準オフセット6.5mmである。
【0027】
ピニオンギア12は、筒状のギア本体12aと、ギア本体12aの後部外周面に形成されたはす歯12cを有するギア部12bと、を有している。ギア本体12aは、ハンドル軸1aと食い違う軸回り(スプール軸15回り)にリールボディ2aに回転自在に装着されている。ギア本体12aは、ギア部12bの前後で前軸受14a及び後軸受14bによりリールボディ2aに回転自在に支持されている。ギア本体12aの中心には、スプール軸15が貫通可能な貫通孔12dが形成されている。ギア本体12aの前端外周面には、ロータ3を固定するためのナット13が螺合する雄ネジ部12eが形成され、前部外周面には、ロータ3を一体回転可能に連結するための平行な回り止め平面12fが形成されている。駆動ギア11とピニオンギア12は、基準かみ合い高さで噛み合うように設計されている。
【0028】
ピニオンギア12の諸元は、例えば、
モジュール0.65mm、圧力角20、歯数6、転位係数+0.5、捩れ角55度である。
【0029】
<その他の構成>
オシレーティング機構6は、
図1及び
図2に示すように、スプール4の中心部にドラグ機構60を介して連結されたスプール軸15を前後方向に移動させてスプール4を同方向に移動させるための機構である。オシレーティング機構6は、スプール軸15の下方に平行に配置されたトラバースカム軸21と、トラバースカム軸21に沿って前後方向にリールボディ2aに案内されるスライダ22と、トラバースカム軸21の先端に固定された中間ギア23とを有している。スライダ22にはスプール軸15の後端が回転不能に固定されている。中間ギア23はピニオンギア12に噛み合っている。
【0030】
ロータ3は、
図1に示すように、たとえばマグネシウム合金やアルミニウム合金製等の軽合金製であり、ピニオンギア12に回転不能に連結され、リール本体2に対して回転自在である。ロータ3は、ピニオンギア12に一体回転可能に連結された筒部30と、筒部30の後部の対向する位置に接続され筒部30と間隔を隔てて前方に延びる第1ロータアーム31及び第2ロータアーム32と、を有している。
【0031】
筒部30は、前部内周側に円板状の壁部30dを有し、壁部30dの中心部には、ピニオンギア12と一体回転可能に連結される環状ボス部30eが形成されている。このボス部30eの内周部をピニオンギア12の前部が貫通し、ピニオンギア12の前部にある回り止め平面12fがボス部30eの内周面に一体回転可能に係止される。この状態でピニオンギア12の雄ネジ部12eにナット13をねじ込むことにより、ロータ3がピニオンギア12に固定される。第1ロータアーム31の先端の外周側には、釣り糸をスプール4に案内するベールアーム44が糸開放姿勢と糸巻取姿勢とに揺動自在に装着されている。
【0032】
ロータ3の筒部30の内部には、ロータ3の逆転を禁止・解除するための逆転防止機構50が配置されている。逆転防止機構50は、内輪が遊転するローラ型のワンウェイクラッチ51と、ワンウェイクラッチ51を作動状態(逆転禁止状態)と非作動状態(逆転許可状態)とに切り換える切換レバー52とを有している。切換レバー52は、リールボディ2aに揺動自在に装着されている。切換レバー52の先端には図示しないカムが設けられており、切換レバー52を揺動させると、カムによりワンウェイクラッチ51が作動状態と非作動状態とに切り換わる。
【0033】
スプール4は、
図1に示すように、ロータ3の第1ロータアーム31と第2ロータアーム32との間に配置されており、スプール軸15の先端にドラグ機構60を介して装着されている。スプール4は、外周に釣り糸が巻かれる糸巻き胴部4aと、糸巻き胴部4aの後方に糸巻き胴部4aと一体形成された筒状のスカート部4bと、糸巻き胴部4aの前端に設けられた大径のフランジ部4cとを有している。
【0034】
ドラグ機構60は、スプール4の回転を制動するものであり、スプール軸15の先端に螺合するドラグ調整つまみ61と、ドラグ調整つまみ61により押圧されてスプール4を制動する制動部62とを有している。
【0035】
<スピニングリールの動作>
このように構成されたスピニングリール100では、キャスティング後にベールアーム44が糸案内姿勢の状態で釣り人がハンドル1を糸巻取方向に回転させると、その回転で駆動ギア11が回転し、駆動ギア11に噛み合うピニオンギア12が回転する。これにより、ロータ3が糸巻取方向に回転し、繰り出された釣り糸がスプール4に巻き付けられる。このとき、ピニオンギア12の歯先が、かみ合い同時接触線に沿って形成された溝部11fに接触する。これ
により、駆動ギア11は、ピニオンギア12が回転すると、溝部がない場合のかみ合い周波数に対して、溝部11fの数Nに1を足した(N+1)倍のかみ合い周波数で振動する。すなわち、見掛けのかみ合い周波数が(N+1)倍になる。これにより、回転フィーリングが向上したと釣り人が認識するようになる。
【0036】
ここでは、溝部11fを設けて見掛けのかみ合い周波数を増加させることによって、回転フィーリングを向上させることができるこのため、駆動ギア11の大径化及び強度の低下を生じることなく、駆動ギア11の回転フィーリングを向上させることできる。
【0037】
<第2実施形態>
第1実施形態では、釣り用リールとしてのスピニングリール100のフェースギアの形態の駆動ギア11を例に本発明を説明したが、第2実施形態では、
図7に示すように、両軸受リール(釣り用リールの一例)200の駆動ギア131を例に本発明を説明する。
【0038】
本発明の第2実施形態を採用した両軸受リール200は、
図6及び
図7に示すように、ベイトキャスト用の小型のロープロフィール型のリールである。両軸受リール200は、リール本体101と、リール本体101の側方に配置されたスプール回転用ハンドル102と、ハンドル102のリール本体101側に配置されたドラグ調整用のスタードラグ103と、を備えている。
【0039】
<リール本体>
リール本体101は、フレーム105と、フレーム105の両側方に装着された第1側カバー106a及び第2側カバー106bとを有している。また、リール本体101は、前方を覆う前カバー107と、上部を覆うサムレスト108とを有している。さらに、リール本体101は、
図7に示すように、第1側カバー106aにねじ止め固定される軸支持部109を有している。リール本体101の内部には糸巻き用のスプール112が回転自在かつ着脱自在に装着されている。
【0040】
フレーム105は、所定の間隔をあけて互いに対向するように配置された1対の第1側板105a及び第2側板105bと、これらの第1側板105a及び第2側板105bを連結する図示しない複数の連結部とを有している。第1側板105aには、スプール112が通過可能な第1開口部105cが形成されている。
【0041】
第1側カバー106aは、第1側板105a及び第2側板105bの後部に軸方向移動自在かつ回動自在に支持されている。第1側カバー106aは、開閉可能である。
【0042】
前カバー107及びサムレスト108(
図6参照)は、フレーム105にねじ止め固定されている。軸支持部109は、有底筒状の部材である。軸支持部109は、スプール軸116の一端を支持するする。
【0043】
第2側カバー106bは、第2側板105bにネジ止め固定されている。第2側カバー106bには、第1ボス部106cと、第2ボス部106dと、が設けられている。第1ボス部106cは、ハンドル102が連結される後述する駆動軸130を支持するために設けられている。第2ボス部106dは、スプール112が固定されるスプール軸116を支持するために設けられている。
【0044】
フレーム105内には、スプール112と、スプール112内に釣り糸を均一に巻き付けるためのレベルワインド機構115と、サミングを行う場合の親指の当てとなるクラッチ操作部材117とが配置されている。スプール112は、第1側板105aの第1開口部105cを通過可能である。また、フレーム105と第2側カバー106bとの間には、ギア機構118と、図示しないクラッチ機構、クラッチ制御機構、及びキャスティングコントロール機構と、ドラグ機構121と、が配置されている。ギア機構118は、ハンドル102からの回転力をスプール112及びレベルワインド機構115に伝えるための機構である。クラッチ制御機構は、クラッチ操作部材117の操作に応じてクラッチ機構の係脱及び制御を行うための機構である。キャスティングコントロール機構は、スプール112の回転時の抵抗力を調整するための制動機構である。さらに、フレーム105と第1側カバー106aとの間には、スプール制動装置123が配置されている。スプール制動装置123は、キャスティング時のバックラッシュを抑えるための装置である。
【0045】
スプール112は、外周に釣り糸が巻き付けられる。スプール軸116は、第2側板105bを貫通して第2側カバー106bの外方に延びている。スプール軸116の他端は、第2側カバー106bに支持されている。
【0046】
<ギア機構>
ギア機構118は、
図7及び
図8に示すように、ハンドル102が一体回転可能に連結される駆動軸130と、駆動軸130に装着された駆動ギア131と、駆動ギア131に螺合するピニオンギア132(
図8参照)と、駆動軸130に一体回転可能に連結された第1ギア133と、第1ギア133に噛み合う第2ギア134と、を有する。第2ギア134は、レベルワインド機構115をハンドル102の回転に応じて左右に往復移動させるために設けられる。
【0047】
駆動軸130は、リール本体101の第1ボス部106cに装着されたワンウェイクラッチ140により糸巻取方向のみ回転可能である。駆動軸130は、第1軸受135a及び第2軸受135bによりリール本体101に回転自在に支持されている。第1軸受135aは、第2側カバー106bの第1ボス部106cに装着されている。第2軸受135bは、第2側板105bに装着されている。
【0048】
駆動軸130には、ドラグ機構121のドラグ力を受けるドラグ受け部材としてのラチェットホイール136が一体回転可能に装着される。ラチェットホイール136は、ドラグ受け部材として機能するとともに、クラッチ機構をクラッチオフ状態からクラッチオン状態に戻すクラッチ戻し機構としても機能する。
【0049】
また、駆動軸130には、駆動ギア131が回転自在に装着されるとともに、ドラグ機構121のドラグ板137が一体回転可能に装着される。さらに、駆動軸130には、スタードラグ103が螺合する。駆動軸130には、ハンドル102が一体回転可能に固定される。
【0050】
駆動ギア131は、例えば、モジュールが1程度で歯数が42枚程度の円筒歯車である。したがって、ピッチ円直径は、略42mmである。
図8では、駆動ギア131を作図の都合によってすぐ歯で図示しているが、実際には、はす歯の円筒歯車である。駆動ギア131は、円板部131aと、円板部131aの外周面に形成されたギア歯部131bと、を有する。駆動ギア131は、例えば、ステンレス合金を歯切り加工して形成される。ギア歯部131bは
、周方向に間隔を隔てて配置された複数のギア歯131cを有する。ギア歯部131bは、例えば、ネジレ角が20度以下のはす歯を含む。
図9に示すように、それぞれのギア歯131cは、ハンドル102が糸巻取方向に回転する時にピニオンギア132に噛み合う第1歯面131dと、糸繰り出し方向に回転したときに噛み合う第2歯面131eとを有している。少なくとも第1歯面131dは、かみ合い同時接触線に沿って形成された少なくとも1つの溝部131fを有する。溝部131fの数は、1本でもよい。複数本の場合、かみ合い進行方向線131g
の方向に沿って間隔を隔てて3本から15本の溝部1
31fを設けるのが好ましい。これにより、見掛けのかみ合い周波数が4から16倍になり、回転フィーリングを向上させることができる。
【0051】
第2実施形態では、溝部131fは、かみ合い同時接触線と交差するかみ合い進行方向線131gに沿って間隔を隔てて複数(例えば、4本)本設けられている。溝部131fは、例えば、溝幅が25μmから100μmの範囲であり、深さが10μmから50μmの範囲である。溝部131fは、歯切り加工後に機械加工によって形成される。
【0052】
ピニオンギア132は、スプール軸116が中心を貫通する筒状部材である。ピニオンギア132は、リール本体101に回転自在に支持されている。また、ピニオンギア132は、スプール軸方向に移動自在に装着されている。ピニオンギア132の一端には、
図8に示すように図示しない係合ピンが係合するかみ合い溝132aが直径上に沿って形成されている。ピニオンギア132の他端側には、駆動ギア131に噛み合うギア部132bが形成されている。かみ合い溝132aとギア部132bの間にはくびれ部132cが形成されている。くびれ部132cには、クラッチ制御機構が係合している。クラッチ操作部材117がクラッチオフ位置に操作されると、ピニオンギア132は、オン位置よりも
図7右側(第2側カバー106b側)のオフ位置に移動する。これにより、クラッチ機構がクラッチオフ状態になる。
【0053】
第2ギア134は、レベルワインド機構115の図示しない螺軸に一体回転可能に連結される。
【0054】
<ドラグ機構>
ドラグ機構121は、クラッチオン状態のとき、駆動ギア131を介してスプール112の糸繰り出し方向の回転を制動するものである。ドラグ機構121は、スタードラグ103により
ドラグ力が調整される。ドラグ機構121は、
図7及び
図8に示すように、ワンウェイクラッチ140の内輪140aを介してハンドル102の回転及びスタードラグ103の押圧力を伝達して駆動ギア131を滑らせることにより、スプール112の糸繰り出し方向の回転を制動する。ドラグ機構121は、内輪140aに一体回転可能に連結されるドラグ板137と、ラチェットホイール136と、を有する。ドラグ板137と駆動ギア131との間及び駆動ギア131とラチェットホイール136との間には、ドラグ作動時に駆動ギア131が滑らかに滑るようにするためにフェルト製またはグラファイト製の第1ドラグ座金141a及び第2ドラグ座金141bが装着されている。
【0055】
<両軸受リールの動作>
次に、両軸受リールの動作について説明する。
【0056】
釣り糸を繰り出す時には、クラッチ操作部材117を操作してクラッチ機構をクラッチオフ状態にする。この結果、スプール112が自由回転状態になり、キャスティングすることよりスプール112が糸繰り出し方向に回転し、先端に仕掛けが装着された釣り糸がスプール112から繰り出される。
【0057】
仕掛けが着水するとハンドル102を糸巻取方向に回転させてクラッチ機構をオン状態にする。これによりハンドル102とスプール112とが連結される。仕掛けに獲物がかかってハンドル102を糸巻取方向に回転させると、ハンドル102の回転が駆動ギア131からピニオンギア132を介してスプール112に伝達され、スプール112が糸巻取方向に回転する。このとき
ハンドル102では、回転が糸巻取方向である駆動ギア131の見掛けのかみ合い周波数が、ハンドル102を1
秒間に2回転させると、200回以上になり、200Hz以上でハンドル102が振動する。このため、振幅が大きくなってもそれを不快と感じにくくなり、ギアノイズの感覚が抑制され、回転フィーリングが向上する。
【0058】
次に、魚の引きなどで釣り糸が繰り出される際には、スプール112の回転が駆動ギア131に伝達され、ドラグ機構121を介して駆動軸130およびワンウェイクラッチ140に伝わる。ワンウェイクラッチ140では駆動軸130の逆転が禁止される。魚の引きが弱ければ、スプール112は回転せず釣り糸が引き出されることもない。そして、魚の引きが強くなりスプール112の回転力が大きくなると、伝達される回転力がドラグ機構121の設定回転抵抗力を超える。すると、ドラグ機構121で滑りが生じるので、駆動ギア131を含むスプール112側は回転を始める。このとき、スプール112には常にドラグ機構121から一定の抵抗力すなわちドラグ力が作用する。
【0059】
<特徴>
上記実施形態は、下記のように表現可能である。
【0060】
(A)釣り用リール(スピニングリール100又は両軸受リール200)の駆動ギア11(又は131)は、釣り用リールに用いられる駆動ギアである。駆動ギア11(又は131)は、かみ合い進行方向線11g(又は131g)に沿って延びる少なくとも1つの溝部11f(又は131f)が第1歯面11d(又は131d)に形成されたフェースギア歯11c(又はギア歯131c)を有するギア歯部11b(131b)と、ギア歯部11b(又は131b)が外周面及び外周側の側面のいずれかに形成される円板部11a(又は131a)と、を備える。
【0061】
この駆動ギア11(又は131)では、かみ合い進行方向線11g(又は131g)と交差する少なくとも1つの溝部11f(又は131f)がフェースギア歯11c(又はギア歯131c)の第1歯面11d(又は131d)に形成される。このため、駆動ギア11(又は131)に噛み合うピニオンギア12(又は132)が駆動ギア11(又は131)にかみ合うときに、ピニオンギア12(又は132)の歯面の接触線、つまりかみ合い同時接触線が溝部11f(又は131f)を必ず横断する。ピニオンギア12(又は132)の歯面が溝部11f(又は131f)を横断することによって、かみ合い時と同様な振動が発生する。これにより、仮想的なかみ合い周波数が溝部
11f(又は131f)の数に1を足した数の倍数で増加する。ここでは、第1歯面11d(又は131d)にかみ合い進行方向線11g(131g)と交差する溝部11f(又は131f)を駆動ギア11(又は131)の第1歯面11d(又は131d)に形成することにより、仮想的なかみ合い周波数を増加させることができる。このため、駆動ギア11(又は131)の大径化及び強度の低下を生じることなく、駆動ギア11(又は131)の回転フィーリングを向上させることができる。
【0062】
(B)駆動ギア11(又は131)において、少なくとも1つの溝部11f(又は131f)は、かみ合い同時接触線に沿って延びる。この場合には、溝部11f(又は131f)がかみ合い同時接触線に沿って延びるので、駆動ギアに噛み合うギアがより確実に溝部に接触しやすい。
【0063】
(C)駆動ギア11(又は131)において、溝部11f(又は131f)は、歯面のかみ合い進行方向線11g(131g)
の方向に間隔を隔てて複数設けられる。この場合には、溝部11f(又は131f)がかみ合い進行方向線の方向に間隔を隔てて複数設けられるので、仮想的なかみ合い周波数が溝部11f(又は131f)の数に1を足した数の倍数で増加する。このため、回転フィーリングがさらに向上する。
【0064】
(D)駆動ギア11において、溝部11fは、第1歯面11dに7本から15本形成される。
【0065】
(E)駆動ギア11において、ギア歯部11bは、円板部11aの外周側の側面に形成されるフェースギア歯11cを含む。この場合には、フェースギア歯11cを有するフェースギアを用いたスピニングリールの駆動ギア11の回転フィーリングを向上させることができる。
【0066】
(F))駆動ギア11において、溝部11fは、第1歯面11dに湾曲して形成される。この場合には、溝部11fを湾曲させることによって、フェースギア歯11cに噛み合うはす歯のピニオンギア12のかみ合い同時接触線に沿って溝部11fを形成できる。
【0067】
(G)駆動ギア131において、ギア歯131cは、円板部131aの外周面に形成されるはす歯を含む。この場合には、はす歯の円筒ギアを用いた両軸受リール200の駆動ギア131の回転フィーリングを向上させることができる。
【0068】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0069】
(a)第1実施形態では、駆動ギア11を型成形によって形成したが、機械加工によって形成してもよい。この場合、溝部を機械加工によって形成してもよいし、プレス加工によって形成してもよい。
【0070】
(b)第2実施形態では、はす歯の円筒歯車を例に本発明を説明したが、やま歯又はすぐ歯の円筒歯車にも本発明を適用できる。
【0071】
(c)前記実施形態では、溝部全体がかみ合い同時接触線に沿って形成されているが、本発明はこれに限定されない。本発明の溝部は、かみ合い進行方向線と交差して形成されるのであれば、どのようなものでもよい。例えば、かみ合い同時接触線の全部ではなく一部に沿って形成してもよい。
【0072】
また、
図10に示すように、複数の溝部231fを、歯すじと直交しかつ歯すじ方向に間隔を隔てて平行に形成してもよい。この場合にも、溝部231fは、かみ合い方向進行線231gと交差して形成されている。このような溝部231fを形成する場合、機械加工によって形成してもよいが、歯すじ方向に複数の金属板の素材を重ね合わせ、重ね合わせた状態で歯切り加工し、歯切り後の金属板の間にスペーサを配置して溝部を形成してもよい。この場合には、溝部の幅を調整できる。なお、
図10では、
図9に示した構成の符号に100を足して表している。したがって、溝部231f及びかみ合い方向進行線231g以外の構成は
図9と同じであるため、それらの構成の説明を省略する。
【0073】
(d)前記実施形態では、釣り用リールとして両軸受リール(電動リールを含む)とスピニングリールを例示したが、その他の釣り用リールにもて適用できる。例えば、駆動ギアを有するスピンキャストリール及び片軸受リールにも本発明を適用できる。