(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ケースにおける内壁面より突出し、前記コイルの近傍で前記コイルの外周面に沿って拡面された形状の伝熱部をさらに備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のリアクトル。
前記コイルの表面より、前記ケースに覆われていない前記複合磁性体の外表面まで応力緩衝部が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のリアクトル。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
大電力用途では特許文献1の提案によっても放熱性が充分ではない場合があり、また、伝熱部材が導体である場合には、渦電流損失によってインダクタンスを充分高くできないという課題がある。
【0006】
すなわち、本発明の目的は、放熱性と高いインダクタンスを両立させたリアクトルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ケースと、コイルと、金属磁性粉と絶縁性の結合材を主に含有する複合磁性体を備え、前記コイルは前記複合磁性体に埋設され、前記コイルの巻軸は前記ケースにおける底面に対して直交し、前記ケースと対面する前記複合磁性体の表面に前記金属磁性粉が露出し、前記ケースと露出した前記金属磁性粉は直接、もしくは熱伝導部材を介して接触しているリアクトルにより上記課題を解決する。
【0008】
また、前記ケースと対面する前記複合磁性体の表面に露出しているのは、前記金属磁性粉の断面であることが望ましい。
【0009】
また、前記ケースの内壁面と前記コイル外周面の一部のみが近接していることが望ましい。
【0010】
また、前記ケースにおける内壁面より突出し、前記コイルの近傍で前記コイルの外周面に沿って拡面された形状の伝熱部をさらに備えることが望ましい。
【0011】
また、前記コイルの表面より、前記ケースに覆われていない前記複合磁性体の外表面まで応力緩衝部が設けられていることが望ましい。
【0012】
また、前記ケースにおける側壁の一部に、前記ケースの内側へ湾曲した湾曲部を有し、前記ケース底面に対する垂直方向に沿った前記ケースの断面における前記湾曲部の近傍が曲線となることが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、放熱性と高いインダクタンスを両立させたリアクトルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態1におけるリアクトルを複合磁性体の露出面から見た正面図である。
【
図2】本発明の実施形態1におけるリアクトルの断面図であり、
図1におけるA−A線の断面図である。
【
図3】本発明のリアクトルの実施形態2における複合磁性体の断面を示している。
図3(a)は複合磁性体の外表面を削る前、
図3(a)は複合磁性体の外表面を削った後を示している。
【
図4】本発明の実施形態3におけるリアクトルを複合磁性体の露出面から見た正面図であり、
図1の変形例を示している。
【
図5】本発明の実施形態4におけるリアクトルを複合磁性体の露出面から見た正面図であり、
図1の変形例を示している。
【
図6】本発明の実施形態5におけるリアクトルを複合磁性体の露出面から見た正面図であり、
図1の変形例を示している。
【
図7】本発明の実施形態5におけるリアクトルのケース内壁に設けた集熱部及び伝熱部を示すケースの破断図である。
【
図8】本発明の実施形態5におけるリアクトルを複合磁性体の露出面から見た正面図であり、
図1の変形例を示している。
【
図9】本発明の実施形態5におけるリアクトルの断面図であり、
図8におけるB−B線の断面図である。
図9(b)、
図9(c)は、
図9(a)の変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1におけるリアクトルを複合磁性体の露出面から見た正面図である。
【0016】
コイル1は、複合磁性体2に埋設され、いずれもケース3に収容されている。
【0017】
ここでA−A線はコイル1の巻き軸と湾曲部311の一部を含む平面を示している。
【0018】
図2は、本発明の実施形態1におけるリアクトルの断面図であり、
図1におけるA−A線の断面図である。
【0019】
ケース3の側壁31には、内側に湾曲した湾曲部311を有している。
【0020】
複合磁性体2はコイル1を包囲する内表面21と、ケース3の内壁面と対向する外表面22を有する。
【0021】
ここで、本実施形態におけるリアクトルは、例えば次の方法で作成することができる。
【0022】
予め金属磁性粉と未硬化で液状の結合材を混合して、硬化前の複合磁性体を作成しておく。
【0023】
ここで、結合材は熱硬化性エポキシ樹脂等を用いることができるが、これに限られない。
【0024】
次にケース3の底面32よりコイル1底面に当たる高さまで硬化前の複合磁性体を注ぎ込み、硬化させる。
【0025】
さらにコイル1を硬化した複合磁性体の上に乗せ、残りの硬化前の複合磁性体を注ぎ込み硬化させることでコイル1が複合磁性体2に埋設されたリアクトルが完成する。
【0026】
ここで、湾曲部311を設けておくことにより、ケース3から複合磁性体2及び内包するコイル1が外れるのを防いでいる。湾曲部311の高さは、ケース3の塑性変形に限度があることから3mm以下とすることが望ましい。また、ケース3から複合磁性体2及び内包するコイル1が外れるのを確実に防ぐ上では湾曲部311の高さが0.1mm以上であることが望ましい。
【0027】
なお、湾曲部311は、例えばケース3を外周面から凹ませるようポンチ等を押し当てて局部的に変形させることなどにより塑性変形させることで作成することができる。
【0028】
(実施形態2)
図3は、本発明のリアクトルの実施形態2における複合磁性体の断面を示している。
図3(a)は複合磁性体の外表面を削る前、
図3(a)は複合磁性体の外表面を削った後を示している。
【0029】
まず実施形態1の
図1におけるケース3を予め分割可能に構成しておくことで、ケース3から複合磁性体2及び内包するコイル1を取り外す。
【0030】
すると
図3(a)に示すように、硬化後の状態では複合磁性体2の外表面が結合材201により覆われている。すなわち、複合磁性体2より図示されないケースへの熱伝導は結合材201により阻害されている。
【0031】
そこで、複合磁性体2の外表面をやすり等による研磨やエッチング等により薄く削る。
【0032】
すると
図3(b)に示すように、複合磁性体2の外表面にあった結合材201が除去され、金属磁性粉202が露出する。
【0033】
さらに一回り小さいケースを複合磁性体2の外表面に装着することで、外表面の結合材201による熱伝導の阻害がなくなり複合磁性体2からケースへの伝熱性が改善される。
【0034】
なお、金属磁性粉202の粒径が大きいほど隣り合う金属磁性粉202の間に占める結合材201の体積の割合が多くなるため、外表面の結合材201による熱伝導の阻害を除去することによる伝熱性の改善効果がより大きくなる。
【0035】
このような伝熱性の改善効果は、金属磁性粉202の平均粒子径D50が50μm以上となる場合に大きく改善し、平均粒子径D50が120μm以上となる場合に顕著である。
【0036】
なお、複合磁性体2の外表面とケースの内壁の間にわずかな隙間が生じる場合には、アルミナ粉等のフィラーを配合したグリース等の熱伝導部材を介在させることで伝熱性を確保することができる。
【0037】
すなわち本発明は、ケース3と、コイル1と、金属磁性粉202と絶縁性の結合材201を主に含有する複合磁性体2を備え、コイル1は複合磁性体2に埋設され、コイル1の巻軸はケース3における底面32に対して直交し、ケース3と対面する複合磁性体2の表面に金属磁性粉202が露出し、ケース3と露出した金属磁性粉202は直接、もしくは熱伝導部材を介して接触しているリアクトルの実施形態を取り得る。
【0038】
(実施形態3)
図4は、本発明の実施形態3におけるリアクトルを複合磁性体の露出面から見た正面図であり、
図1の変形例を示している。
【0039】
実施形態1における
図1とは、ケース3が星型の壁面を有している点が異なる。
【0040】
このように構成することで、複合磁性体2の外周面とケース3の接触面積が増え、実施形態2の工夫を取り入れることで複合磁性体2の外表面を除去すれば、伝熱性をより改善することができる。
【0041】
なお、
図4のような構成に限らず、ケース3の壁面に凹凸を設ける構成であれば、
図4の構成と同様に上記伝熱性の改善効果を得ることができる。
【0042】
(実施形態4)
図5は、本発明の実施形態4におけるリアクトルを複合磁性体の露出面から見た正面図であり、
図1の変形例を示している。ここで、
図5(b)、
図5(c)、
図5(d)、
図5(e)は
図5(a)の変形例である。
【0043】
図5(a)では、巻き軸から見たコイル1の形状が楕円形であり、コイル1の長軸方向の端部11が円筒状のケース3の内壁面に近接している。従って、コイル1の端部11よりケース3への伝熱経路Tによりコイル1内部からの放熱性を高めることができる。
【0044】
例えば、コイル1を銅線で構成した場合は熱伝導率が約400W/m・K、ケース3の材質をアルミとした場合には熱伝導率が約92〜200W/m・Kとなるのに対し、複合磁性体2の熱伝導率は約2〜7W/m・Kとなるため、コイル1からケース3へ複合磁性体2を介さずに伝熱した方が放熱性が高いこととなる。
【0045】
なお、ここでの近接とは、近傍にある場合と接触している場合をいずれも含むものとする。
【0046】
ここで、コイル1への通電により生じる磁路は、主にコイル1の短軸方向の外側にある複合磁性体2により確保することができる。
【0047】
図5(b)では、
図5(a)とは逆にコイル1の形状が円筒状であり、ケース3が楕円形となっている。この場合ではケース3における短軸方向の端部でコイル1と近接しているため、同様にコイル1内部からの放熱性を高めることができる。
【0048】
図5(c)では、コイル1の形状が三角柱状であり、ケース3の形状が円筒状である。コイル1の外周面における三角柱の端部とケース3の内壁が近接しているため、同様にコイル1内部からの放熱性を高めることができる。
【0049】
図5(d)は、コイル1及びケース3が共に角柱状である。コイル1外周での1面がケース3の内壁の1面と近接しているため、同様にコイル1内部からの放熱性を高めることができる。
【0050】
図5(e)も、
図5(d)と同様にコイル1及びケース3が共に角柱状であるが、コイル1外周での2面がケース3の内壁の2面と近接している。この場合も同様にコイル1内部からの放熱性を高めることができる。
【0051】
(実施形態5)
図6は、本発明の実施形態5におけるリアクトルを複合磁性体の露出面から見た正面図であり、
図1の変形例を示している。
【0052】
実施形態1における
図1とは、コイル1の近傍でコイル1の外周面に沿って拡面された形状の集熱部301、及び集熱部301とケース3における内壁面を接続する伝熱部302を設けている点が異なる。
【0053】
すなわち、本実施形態では、コイル1の近傍から集熱部301により熱を集めて伝熱部302を介してケース3に放熱する構成を設けている。
【0054】
図7は、本発明の実施形態5におけるリアクトルのケース内壁に設けた集熱部及び伝熱部を示すケースの破断図である。集熱部301は、ケース3の底部との間及びケース3内壁面との伝熱部302以外の集熱部301とケース3の内壁面との間に隙間を設けていることで磁束Bの磁路を確保している。
【0055】
従って、集熱部301を設けてもインダクタンスをあまり損なうことなく、コイル1からケース3への放熱性を高めることができる。
【0056】
なお、集熱部301及び伝熱部302は、硬化前の複合磁性体をケース3内に注ぎ込む際のコイル1の固定部材としての機能を兼ねることも可能である。
【0057】
(実施形態6)
図8は、本発明の実施形態5におけるリアクトルを複合磁性体の露出面から見た正面図であり、
図1の変形例を示している。
【0058】
実施形態1における
図1とは、応力緩衝部4を設けている点が異なる。
【0059】
コイル1への通電により、コイル1の抵抗損失及び複合磁性体2のコアロスなどにより内部での発熱が起きた場合、主に金属からなるコイル1と、金属磁性粉と樹脂等の結合材を主に含有する複合磁性体2の熱膨張係数が相違することから、特にコイル1の径方向に内部応力が発生し、主に複合磁性体2の磁気特性や機械特性等に影響を与える可能性がある。
【0060】
しかし、弾性を有する応力緩衝部4を設けているため、複合磁性体2が内部の発熱などにより熱応力が発生した場合には、弾力性を有する応力緩衝部4が露出面23から膨張してはみ出したり、収縮して凹んだりすることにより熱応力が緩和される。
【0061】
なお、熱応力はコイル1の径方向へ主に生じることから、応力緩衝部4はコイル1の内周面、もしくは外周面に沿った円筒もしくはコーン型の形状とするのが望ましい。
【0062】
図9は、本発明の実施形態5におけるリアクトルの断面図であり、
図8におけるB−B線の断面図である。
図9(b)、
図9(c)は、
図9(a)の変形例である。
【0063】
図9(a)、
図9(b)に示されているように、応力緩衝部4は、コイル1における内周面の中央または中央付近よりケース3の底面及び複合磁性体2の露出面まで延長されているため、弾性を有する複合磁性体2の内部応力を応力緩衝部4を介して露出面23まで逃がすことができる。
【0064】
なお、
図9(c)に示すように、応力緩衝部4を空隙によって構成してもよく、この場合、例えば未硬化で液状の複合磁性体をケース3に注ぎ込む際、応力緩衝部4に当たる部分にテフロン(登録商標)等の複合磁性体に含まれる結合材との接着性が低い部材を配しておき、硬化後に除去することにより作成することができる。
【0065】
応力緩衝部4を空隙としても、複合磁性体2の熱応力による膨張もしくは収縮を吸収することができる。