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特許6202811原子力産業から生じるトリチウム廃棄物の脱気を制限する方法およびデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202811
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】原子力産業から生じるトリチウム廃棄物の脱気を制限する方法およびデバイス
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/02 20060101AFI20170914BHJP
   G21F 9/06 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   G21F9/02 Z
   G21F9/02 521Z
   G21F9/06 591
【請求項の数】28
【外国語出願】
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-267048(P2012-267048)
(22)【出願日】2012年12月6日
(65)【公開番号】特開2013-122453(P2013-122453A)
(43)【公開日】2013年6月20日
【審査請求日】2015年11月6日
(31)【優先権主張番号】1161500
(32)【優先日】2011年12月12日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】サヴィエ・ルフェーヴル
(72)【発明者】
【氏名】カリーヌ・リジェ
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル・トリュレイ
【審査官】 右田 純生
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05464988(US,A)
【文献】 国際公開第2010/066811(WO,A1)
【文献】 特開2005−127718(JP,A)
【文献】 国際公開第1991/001175(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/02
G21F 9/06
G21F 9/16
G21F 9/30
G21F 9/36
C01B 5/00
G21C 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力産業からのトリチウム廃棄物(5)の少なくとも一つのピースを含む少なくとも一つのパッケージによって生じるトリチウム化水素(TまたはHT)および/またはトリチウム化水(HTOまたはTO)の量を低減する方法であって、以下の段階:
−銀を含む成分と結合された二酸化マンガン(MnO)を含む混合物(2)と接触してパッケージを配置する段階と、
−少なくとも一つのモレキュラーシーブ(1)と接触して前記パッケージを配置する段階と、
を含み、
前記混合物(2)は、前記混合物(2)における重量濃度が0.1%から1%の範囲であるプラチナ化合物を含み、前記プラチナ化合物は10%Ptプラチナブラックで作られていることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記銀は、前記混合物(2)にあり、以下:銀酸化物、銀塩または銀複合物、の少なくとも一つとして現れる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記銀は前記混合物(2)において銀酸化物として現れ、前記混合物(2)における二酸化マンガンの重量濃度は80%から99%の範囲であり、前記混合物(2)における銀酸化物の重量濃度は20%から1%の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記混合物(2)における二酸化マンガンおよび銀酸化物の重量濃度は、それぞれ略90%および10%である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記銀は前記混合物(2)において銀酸化物として現れ、前記混合物(2)における二酸化マンガンの重量濃度は略89.3%であり、銀の重量濃度は略10.2%であり、前記プラチナ化合物の重量濃度は略0.5%である、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記モレキュラーシーブ(1)は4Aタイプまたは5Aタイプのゼオライトである、請求項1からの何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記混合物(2)と接触してパッケージを配置する段階およびモレキュラーシーブ(1)と接触して前記パッケージを配置する段階の前に、前記モレキュラーシーブ(1)上に前記混合物(2)を堆積させる段階を含む、請求項1からの何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記モレキュラーシーブ(1)上に前記混合物(2)を堆積させる段階の後に、前記モレキュラーシーブ(1)上に前記混合物(2)を機械的に固定する段階が続く、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記モレキュラーシーブ(1)上に前記混合物(2)を堆積させる段階の後に、添加剤を用いて前記モレキュラーシーブ(1)上に前記混合物(2)を化学的に固定する段階が続く、請求項またはに記載の方法。
【請求項10】
前記パッケージは、底部(12)を有しトリチウム廃棄物(5)の少なくとも一つのピースを含むドラム(10)として現れ、前記方法は、前記混合物(2)が固定される前記モレキュラーシーブ(1)を前記ドラム(10)の内部に配置する段階を含む、請求項またはに記載の方法。
【請求項11】
前記パッケージは、底部(12)を有しトリチウム廃棄物(5)の少なくとも一つのピースを含むドラム(10)として現れ、前記方法は、前記ドラム(10)の底部(12)に前記モレキュラーシーブ(1)を配置する段階と、前記廃棄物(5)内または前記廃棄物(5)上に前記混合物(2)を堆積させる段階と、を含む、請求項1から10の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記混合物(2)は、カバリングを形成するために曲げやすい基板上に少なくとも部分的に配置され、前記方法はまた、前記カバリングとともに前記パッケージの少なくとも一部分を囲む段階を含む、請求項1から11の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記曲げやすい基板はワイヤメッシュである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
銀を含む化合物と結合された二酸化マンガン(MnO)の混合物(2)と接触してパッケージを配置する段階の前に、二酸化マンガン(MnO)が銀(Ag)を含む化合物と結合される間に混合物(2)を調製する段階を含む、請求項1から13の何れか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記混合物(2)を調製する段階の間に、銀が銀酸化物(AgOまたはAgO)として二酸化マンガン(MnO)に添加される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記混合物(2)を調製する段階は、二酸化マンガンパウダーと銀酸化物パウダー(AgOまたはAgO)とを混合する(2)段階を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記混合物を調製する段階の間、かつ前記二酸化マンガンパウダーと銀酸化物パウダーとを混合する段階の後に、前記混合されたパウダーに水を添加する段階を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記混合物(2)を調製する段階は、固体状態の二酸化マンガン上に銀イオン(Ag)を含む食塩水を広げる段階を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記混合物(2)を調製する段階は、固体状態の二酸化マンガンを、銀を含む塩を含む溶液に浸す段階を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記混合物(2)を調製する段階は、銀を含む溶液の沈殿反応によって、二酸化マンガン上に銀を堆積させる段階を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
トリチウム廃棄物(5)の少なくとも一つのピースを含む少なくとも一つのパッケージによって生じるトリチウム化水素(TまたはHT)の量を低減するデバイスであって、前記デバイスは少なくとも一つのモレキュラーシーブ(1)を含み、前記デバイスはまた、銀を含む化合物と結合された二酸化マンガン(MnO)を含む混合物(2)を含み、前記混合物(2)は、前記混合物(2)における重量濃度が0.1%から1%の範囲であるプラチナ化合物を含み、前記プラチナ化合物は10%Ptプラチナブラックで作られていることを特徴とする、デバイス。
【請求項22】
前記混合物(2)は、前記モレキュラーシーブ(1)に固定される、請求項21に記載のデバイス。
【請求項23】
トリチウム廃棄物(5)の少なくとも一つのピース、並びに前記モレキュラーシーブ(10)および前記混合物(2)を含む少なくとも一つのドラム(10)を含む、請求項21に記載のデバイス。
【請求項24】
前記ドラム(10)は廃棄物(5)を含み、前記混合物(2)は前記廃棄物(5)の上または前記廃棄物(5)の中に広がる、請求項23に記載のデバイス。
【請求項25】
前記混合物(2)は前記モレキュラーシーブ(1)を少なくとも部分的に覆い、前記モレキュラーシーブ(1)および前記混合物(2)は単一アセンブリを形成する、請求項21に記載のデバイス。
【請求項26】
曲げやすい基板から作られたカバリングを含み、前記曲げやすい基板は少なくとも部分的に、銀を含む化合物と結合された二酸化マンガン(MnO)を含む混合物から作られた層によって覆われる、請求項21に記載のデバイス。
【請求項27】
前記カバリングはまた、前記モレキュラーシーブを含む、請求項26に記載のデバイス。
【請求項28】
一つ以上のドラムを含み、それぞれがトリチウム廃棄物の少なくとも一つのピースを含み、前記カバリングが前記ドラムまたは複数のドラムを囲む、請求項26または27に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力産業から生じる廃棄物を処理する方法およびデバイスに関する。本発明は、より具体的には、核反応によって生成されるトリチウム廃棄物の脱気(degassing)を制限する方法およびデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
トリチウム(TまたはH)は、いくつかのタイプの原子炉に存在し得る。大多数の核分裂反応炉では、それは例えば、ウラン(U)とプルトニウム(Pu)の三体核分裂によって、ならびにホウ素(B)とリチウム(Li)との間の中性子反応で生成され得る。加えて、核融合炉では、トリチウムは燃料として使用される。JET炉(Joint European Torusの頭字語)、ITER炉(International Thermonuclear Experimental Reactorの頭字語)およびITER炉の後に続くように設計されたDEMO炉(Demonstration Power Plantの頭字語)の場合がそうである。これらの炉では、デューテリウム(DまたはH)およびトリチウム(TまたはH)からの核融合反応は、以下の式によって制御される:
【0003】
【数1】
【0004】
トリチウムの性質の一つは、他の水素のアイソトープと同様に、材料を通って浸透する能力であり、それは材料を汚染する。この性質は、トリチウム廃棄物を非常に特異なものとするが、なぜなら、放射性元素と脱気の両方を廃棄物の管理の際に考慮しないといけないからである。さらに、トリチウムは、2つの気体形態、トリチウム化水素(HTまたはT)およびトリチウム化水(HTOまたはTO)で存在し得る。注目すべきは、トリチウム化水素(HTまたはT)が、蒸気形態であるトリチウム化水(HTOまたはTO)よりもはるかに動きやすいことである。トリチウム化水素(HTまたはT)はまた、非常に小さいサイズを有する。その良好な移動性およびその小さなサイズにより、微細な孔においてもその拡散が促進され、例えばゴムを通過し、大多数のタイプのスチールおよびコンクリートに拡散する。トリチウム化水素(HTまたはT)の捕捉はそれ故に、特に複雑になる。
【0005】
核融合炉の開発とともに、トリチウム廃棄物の量はこうして顕著に増加している。その結果として、特に大気温度および大気圧における脱トリチウム化(detritiation)および脱気の制限の効果的な方法を形成する(sizing)ことに存する、特に大きな必要性が存在する。廃棄物のパッケージによって生成されるトリチウム化水素の量の低減は、トリチウム廃棄物を含むこれらのパッケージが既存の倉庫保管および貯蔵センターに含まれ得るように、倉庫保管および貯蔵センターの既存の合格基準を満たすのに十分効果的である必要がある。
【0006】
一つの解決策が提案されており、米国特許第5,464,988号に記載されている。この特許は、気体に含まれるトリチウム化水を貯蔵および移送するためのデバイスを提案する。そのデバイスは外部ドラムを含み、内部ドラムが外部ドラムの内部に置かれる。内部ドラムの内部は、トリチウムが詰め込まれることが目的とされる、使い捨て可能なモレキュラーシーブである。そのデバイスはまた、入口および出口に、拡散器ならびに触媒水素再結合器を含む。保護および断熱材料が、2つのドラムの間の各利用可能空間に配置される。触媒水素再結合器は、トリチウム化水素をトリチウム化水に変換し、次いで、その貯蔵および移送を目的として、それは固体形態のモレキュラーシーブによって捕捉され得る。
【0007】
このデバイスは、気体形態のトリチウム化水を捕捉する解決策を提供する。トリチウム化水素(HTまたはT)の捕捉はしかしながら、気体形態のトリチウム化水と比較したこの気体の小さいサイズおよび良好な移動性が原因で、より複雑であることが判明する。加えて、この解決策は、特定のメンテナンスを必要とする数多くの特定の装置のアイテムを必要とする特に複雑なドラムに基づく。例えば、触媒再結合器の使用は、加熱デバイス、故にシステムのメンテナンスを必要とする。加えて、トリチウム化水で飽和されたモレキュラーシーブを定期的に変えるために、人の介入が必要である。
【0008】
この解決策の複雑さは、そのコストを相対的に高め、また、その信頼性を制限する傾向がある。
【0009】
従って、トリチウム化水素(TまたはHT)およびトリチウム化水(HTOまたはTO)の脱気を制限する単純かつ効果的な解決策の提案が必要であり、この解決策はまた、メンテナンスおよび人の介入の要求を低減できなければならない。その解決策はまた、数百年にわたって効果的でなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,464,988号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、このような解決策を説明することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の開示の残り部分では、成分HTOおよびTOを指定するのに、区別なくトリチウム化水と記述される。本記述では、トリチウム化水は、蒸気または液体形態のトリチウム化水を指定する。
【0013】
本発明の主題は、廃棄物の少なくとも一つのピースを含む少なくとも一つのパッケージによって生じるトリチウム化水素(TまたはHT)および/またはトリチウム化水(HTOまたはTO)の量を低減する方法である。その方法は、以下の段階:銀を含む成分と結合された二酸化マンガン(MnO)を含む混合物と接触してパッケージを配置する段階と、次いでモレキュラーシーブと接触してパッケージを配置する段階と、を含む。
【0014】
その混合物は効果的に、トリチウム化水素(TまたはHT)の拡散率を低下させるために、トリチウム化水素(TまたはHT)を酸化できる。その結果物はトリチウム化水(TOまたはHTO)であり、トリチウム化水はトリチウム化水素よりも非常に移動性が低い。トリチウム化水はそして、モレキュラーシーブによって捕捉される。モレキュラーシーブと、銀を伴う二酸化マンガンを含む混合物との組み合わせは非常に効果的にトリチウム廃棄物の脱気を低下し、少量のトリチウム化水素に対してさえも支障ないこと、が証明されている。特に、本発明による方法の組み合わせは、トリチウム化水素と比較して、高い反応速度および良好な反応性を提供する。加えて、トリチウム化水素を捕捉するこの方法は外的なメンテナンスを全く必要としない。特に有利なことに、それは周囲圧力および温度で実施され得る。さらに、その反応は、熱安定性生成物を生じさせる。それはまた、困難性を改善でき、または、少なくとも数百年にわたって全く問題がない。有利なことに、本発明によって提案される捕捉方法は、比較的実施し易く安価である。本発明は従って、工業規模での使用に特に関連している。
【0015】
本発明の文脈では、トリチウム廃棄物は、トリチウム化水素(HTまたはT)を包含または脱気する傾向がある任意の放射性廃棄物を意味する。その廃棄物はまた、例えばトリチウム化水(HTまたはTO)などの他の形態のトリチウムを含むことができる。典型的に、その廃棄物は、原子力産業から生じ、トリチウム化水素および/またはトリチウム化水を包含または脱気する傾向がある。
【0016】
本発明の文脈では、典型的にはトリチウム化水素またはトリチウム化水である少なくとも二つの成分を、銀を含む成分と結合された二酸化マンガン(MnO)を含む混合物、および/またはモレキュラーシーブと接触して配置することは、これらの成分が互いに反応できるように配置されることを意味する。この接触配置は故に、固体、液体または気体形態における二つの成分の物理的接触であり得る。任意の事象では、接触して配置することは成分の相互作用を可能にし、故に、トリチウム化水素のトリチウム化水への変換反応およびモレキュラーシーブによるトリチウム化水の捕捉反応が起こる。
【0017】
場合によっては、本発明による方法は、以下で述べる少なくとも何れか一つの任意の段階および特徴を有することができる。
【0018】
パッケージは、核分裂反応によって生じる廃棄物の少なくとも一つのピースを含むことができる。代わりに、または累積的に、そのパッケージは使用済み燃料によって形成される廃棄物の少なくとも一つのピース、または核融合反応に使用されるものを含むことができる。そのパッケージはまた、トリチウム廃棄物の別の一つのピースの存在またはトリチウム化燃料の存在によってトリチウム化された廃棄物の一つのピースを含むことができる。その廃棄物はまた、核反応の生成物または燃料であり得る。それはまた、核反応の生成物または燃料で汚染された任意の成分であり得る。その廃棄物は従って、衣類または道具、反応器部品、放射性燃料などの放射性にされた対象物であり得る。
【0019】
銀を含む成分は、以下の成分:AgO、AgO、AgClまたはAgNOタイプの銀塩、または銀を含む複合物(complexes)の少なくとも一つを含む。
【0020】
優先的に、銀は、混合物において銀酸化物形態(AgOまたはAgO)である。混合物における二酸化マンガンの重量濃度は、80%から99%の範囲であり、混合物における銀酸化物AgOの重量濃度は、20%から1%の範囲である。これは、0.93%と18.6%との間の銀(Ag)の質量分率に対応する。これは、10%のAgOが9.3%の銀(Ag)に対応するからである。
【0021】
より正確には、混合物における二酸化マンガンの重量濃度は、87%から93%の範囲であり、混合物における銀酸化物AgOの重量濃度は、13%から7%の範囲である。さらにより優先的には、二酸化マンガンおよび銀酸化物AgOの混合物における重量濃度は、それぞれ略90%および10%である。
【0022】
好ましくは、銀は硝酸銀形態(AgNO)であり、混合物における銀(Ag)の質量分率は、1.5%から30%の範囲であり、好ましくは略15%である。
【0023】
特定の実施形態によると、その混合物は、プラチナ(Pt)またはプラチナを含む化合物を含む。明確性のために、本記述の残りの部分では、プラチナを含むこの化合物を「プラチナ化合物」と呼ぶ。
【0024】
有利なことに、それは、10%Ptプラチナブラックである。周知のように、10%Ptプラチナブラックは、90%の活性カーボンおよび10%のプラチナから成る。
【0025】
プラチナは、トリチウム化水素の酸化を加速かつ促進する。
【0026】
有利なことに、混合物におけるプラチナ化合物の重量濃度は0.1%から1%の範囲であり、つまり、10%Ptプラチナブラックでは、プラチナの比率は0.01%から0.1%の範囲である。好ましくは、この濃度は、10%Ptプラチナブラックでは0.5%であり、つまり、プラチナは0.05%であり、二酸化マンガン濃度は89.3%であり、銀酸化物AgO濃度は10.2%である。より正確には、これらの濃度はそれぞれ、0.56%、89.28%および10.16%である。
【0027】
特定の実施形態によると、その混合物は、二酸化マンガンおよび銀酸化物のみを含む。別の実施形態によると、その混合物は、二酸化マンガン、銀酸化物およびプラチナ化合物のみを含む。
【0028】
優先的に、モレキュラーシーブは、4Aタイプまたは5Aタイプのゼオライトである。
【0029】
好ましくは、その方法は、混合物と接触してパッケージを配置する段階および少なくとも一つのモレキュラーシーブと接触してパッケージを配置する段階の前に、モレキュラーシーブ上に混合物を堆積させる段階を含む。有利な実施形態によると、モレキュラーシーブ上に混合物を堆積させる段階は、モレキュラーシーブ上に混合物を機械的に固定する段階によって達成される。別の有利な実施形態によると、モレキュラーシーブ上に混合物を堆積させる段階は、例えば水などのバインダを用いてモレキュラーシーブ上に混合物を化学的に固定する段階によって達成される。この場合、固定段階は、混合物およびモレキュラーシーブを水相で接触して配置する段階と、続いて150Cから200Cの範囲の温度で12hと48hとの間の期間乾燥させる段階と、から成る。
【0030】
混合物がモレキュラーシーブに固定される実施形態によると、パッケージは底部を有するドラムの形態であり、トリチウム廃棄物の少なくとも一つのピースを含むことができ、その方法は、混合物が固定されるシーブをドラムの底部に配置する段階を含む。
【0031】
混合物がモレキュラーシーブに固定されない実施形態によると、パッケージは底部を有するドラムの形態であり、トリチウム廃棄物の少なくとも一つのピースを含み、その方法は、シーブをドラムの底部に配置する段階と、廃棄物の中または廃棄物上に混合物を配置する段階と、を含む。
【0032】
シーブおよび混合物はまた、既に完全にまたは部分的に充填されたドラムに配置され得る。
【0033】
カバリングを形成するために金属メッシュ上に混合物が配置される、さらに別の実施形態によると、その方法はまた、カバリングでパッケージの少なくとも一部分を包む段階を含む。好ましくは、金属メッシュは、カバーがパッケージの形状に適合できるように、曲げやすい。好ましくは、そのカバーはモレキュラーシーブを組み込み、モレキュラーシーブは混合物によって覆われる。この実施形態は、パッケージがセメント、ガラスなどのマトリクス、またはビチューメンマトリクスで覆われた廃棄物の形態であるとき、特に有利である。
【0034】
その方法は、銀(Ag)と結合された二酸化マンガン(MnO)の混合物と接触してパッケージを配置する段階の前に、二酸化マンガン(MnO)が銀を含む化合物と結合される間に混合物を調製する段階を含み、銀を含む化合物は例えば、銀酸化物または銀塩であるが、これらの例は制限的ではない。
【0035】
優先的に、混合物を調製する段階の間、銀が銀酸化物(AgOまたはAgO)の形態で、二酸化マンガン(MnO)に添加される。
【0036】
第一実施形態によると、混合物を調製する段階は、二酸化マンガンパウダーと銀酸化物パウダー(AgOまたはAgO)とを混合する段階を含む。場合によっては、その方法は、混合物を調製する段階の間および二酸化マンガンパウダーと銀酸化物パウダーとを混合する段階の後に、前記混合されたパウダーに水を添加する段階を含む。水の添加は、二酸化マンガンの表面上への銀の拡散を促進する利点を有する。
【0037】
第二実施形態によると、混合物を調製する段階は、固体状態の二酸化マンガン上に銀イオン(Ag)を含む食塩水を広げる段階を含む。好ましくは、二酸化マンガンはダスティーパウダー(dusty powder)の形態である。
【0038】
第三実施形態によると、混合物を調製する段階は、固体状態、好ましくはダスティーパウダー形態の二酸化マンガンを、塩または銀酸化物を含む溶液に浸す段階を含む。より正確には、銀はカチオンAgまたはAg2の形態である。この方法の一つの利点は、それが二酸化マンガン上に銀の均一分布を得るのに特に効果的であることである。
【0039】
第四実施形態によると、混合物を調製する段階は、銀を含む溶液の沈殿反応によって、二酸化マンガン上に銀を堆積する段階を含む。液体による含浸の方法の利点は、得られる最終混合物の均一性である。銀を含む溶液は、銀塩(AgCl、AgBr、AgNO、など)の溶液である。沈殿は、この硝酸銀溶液への水酸化ナトリウム(NaOH)の導入によって引き起こされる。
【0040】
一実施形態によると、パッケージは、トリチウム廃棄物の複数のピースを含むドラムを含む。代わりに、パッケージは、マトリクスで覆われた廃棄物の一つのピースを含み、そのマトリクスは、例えばコンクリート、ビチューメンまたはガラスである。
【0041】
本発明の別の主題は、トリチウム化水素の量を低減させるデバイスであり、そのデバイスは少なくとも一つのモレキュラーシーブを含み、そのデバイスはまた、銀を含む化合物と結合された二酸化マンガン(MnO)を含む混合物を含むことを特徴とし、銀を含む化合物は例えば、銀酸化物または銀塩であるが、これらの例は制限的ではない。
【0042】
その方法に関して上述した理由のために、本発明は故に、その倉庫保管および貯蔵を目的としてトリチウム廃棄物の脱気を低減するのに特に効果的であるデバイスを提案する。
【0043】
有利な実施形態によると、銀を含む化合物と結合された二酸化マンガン(MnO)を含む混合物は、モレキュラーシーブに固定される。場合によっては、その層は、5と20μmとの間の厚さを有する。この実施形態の一つの利点は、様々な成分の均一拡散を可能にすることであり、それはデバイスの有効性を向上させる。好ましくは、モレキュラーシーブは4Aタイプまたは5Aタイプのゼオライトである。有利なことに、その層は、機械的におよび/または添加剤を用いて、シーブに固定される。この添加剤は好ましくは、例えば水などのバインダである。
【0044】
別の有利な実施形態によると、そのデバイスは、トリチウム廃棄物の少なくとも一つのピース、並びにシーブおよび混合物を含むことができる少なくとも一つのドラムを含む。
【0045】
場合によっては、そのデバイスは、以下の特徴の少なくとも何れか一つを含むことができる:
−ドラムは廃棄物を含み、混合物が廃棄物の上または廃棄物の中に拡散される;
−シーブがドラムの底部に配置される;
−混合物がモレキュラーシーブを少なくとも部分的に覆い、シーブおよび混合物が単一のアセンブリを形成する。
【0046】
さらに別の有利な実施形態によると、そのデバイスは、好ましくは金属メッシュである、曲げやすい基板によって形成されたカバーを含み、曲げやすい基板は、銀を含む化合物と結合された二酸化マンガン(MnO)を含む混合物によって形成された層によって少なくとも部分的に覆われ、その化合物は、酸化物、塩、複合物などである。
【0047】
従って、パッケージは例えば、放射性廃棄物の一つ以上のピースを囲むドラムまたはマトリクスであり得る。それはまた、何れかの形態のコンテナであり得る。
【0048】
有利なことに、上述のデバイスの三つの実施形態のそれぞれに対し、混合物における二酸化マンガンの重量濃度は、80%から99%の範囲であり、混合物における銀酸化物AgOの重量濃度は、20%と1%との間である。これは、0.93%から18.6%の間の範囲にある銀(Ag)の質量分率に対応する。これは、10%のAgOが9.3%の銀(Ag)に対応するからである。場合によっては、それでもなお有利なことに、混合物はまた、プラチナ化合物を含み、その重量濃度は好ましくは0.1%から1%の範囲である。これは、10%Ptプラチナブラックでは、0.01%から0.1%の範囲であるプラチナの重量濃度に対応する。
【0049】
本発明の他の特徴、目的および利点は、非限定的な例として提示された、添付図面に関する以下の詳細な説明を読むことで現れるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】本発明による方法の第一の例に対する、時間に応じたトリチウム化水およびトリチウム化水素の分圧曲線を示す図面である。
図2】酸化マンガンと銀との混合物がプラチナを含む本発明による方法の第二の例の間の、時間に応じたトリチウム化水およびトリチウム化水素の分圧曲線を示す図面である。
図3】ドラムがモレキュラーシーブ、トリチウム廃棄物、および廃棄物上に拡散されたマンガンと銀酸化物とを含む混合物を含む、本発明によるデバイスの一例を示す図面である。
図4】ドラムが銀と酸化マンガンとの混合物を含む層で覆われたモレキュラーシーブを含む、本発明によるデバイスの別の例を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明による実施方法の一例が詳細に説明される。その方法を実施するためのデバイスが、次いで説明される。
【0052】
本願では、トリチウム化水素は、気体TまたはHTを意味する。従って、トリチウム化水素は、液体状態および気体状態を有するトリチウム化水HTOまたはTOとは異なる。後者の状態では、本願の説明の間、水は、気体状態のトリチウム化水と呼ばれる。
【0053】
本発明に関して、トリチウム化水素(HTまたはT)は、特定の金属酸化物:二酸化マンガン(MnO)によって酸化される。
【0054】
二酸化マンガンによる水素およびそのアイソトープの還元は、以下の式に従う:
MnO+Q→MnO+Q
ここで、Qは区別なく、水素の全てのアイソトープを表す。
【0055】
トリチウム化水素の量の効果的な低減を得るために、この反応に対して高い反応速度を有することが特に有利である。この目的を達成するために、二酸化マンガンが銀を含む化合物に伴う。本発明に関して、銀を含む化合物は転換反応を促進する。それは例えば、制限的ではなく、酸化物または塩であり得る。驚くべきことに、銀およびマンガン原子の組み合わせは、二酸化マンガンによるトリチウム化水素の還元を触媒するための相乗効果をもたらす。
【0056】
加えて、二酸化マンガンの使用は、その反応を特に安全かつ安価にし、そのことは、外部エネルギーの提供およびメンテナンスなく、工業への応用を可能にする。
【0057】
本発明の特徴は、銀と酸化マンガンとの混合物が、典型的にはモレキュラーシーブの形態である除湿機に結合されることである。有利なことに、モレキュラーシーブは、4Aタイプまたは5Aタイプのゼオライトである。好ましくは、パッケージは、単一のモレキュラーシーブと接触する。モレキュラーシーブは、トリチウム化水を捕捉する。従って、トリチウム化水素は、酸化物混合物との反応により液体または気体状態のトリチウム化水に変化するときに、その移動度が低減され、また、モレキュラーシーブの効果の下で、その移動度はさらに低減される。
【0058】
本発明は故に、トリチウム化水素をトリチウム化水に変換させることができ、トリチウム化水はその後に、モレキュラーシーブによって捕捉される。
【0059】
さらに、本発明は、少量のトリチウム化水素に対してさえも高い効率を有する。しかしながら、トリチウム廃棄物の脱気に関連して、トリチウム化水素の脱気速度は非常に低いことが多く、典型的には、廃棄物1kgあたり2GBq/year、または廃棄物1kgあたりトリチウム5.6 10−7g/year、あるいは廃棄物1kgあたりトリチウム1.8 10−7mol/year未満である。
【0060】
本発明による方法は、トリチウム廃棄物を処理するのに特に効果的であることが証明された。確かに、本発明による方法は、トリチウム化水素に対して高い反応速度および良好な反応性を有する。加えて、その方法の反応は、外的なメンテナンスを必要とせず、特に100C以下の温度でも、あまりまたは全く可逆的ではない。さらに、その方法によって生じる生成物などの試薬は、熱的に安定である。
【0061】
マンガンと銀酸化物との混合物を調製する幾つかの方法が想定され得る。
【0062】
第一の方法は、マンガンと銀酸化物とを機械的に混合する段階から成る。より正確には、二酸化マンガンおよび銀酸化物がまず別に生成され、それらのそれぞれはパウダーの形態である。二つのパウダーが次いで混合される。この方法は、実施が特に単純であるという利点を有する。
【0063】
この第一の方法の一種によると、水が二酸化マンガンおよび銀酸化物パウダーに添加され得る。その水は優先的に、少量で添加される。この水の添加は、酸化マンガンの表面上への銀の拡散を促進する利点を有する。有利なことに、1ml(10−3l)の水が、2.5gの酸化物の混合物に添加される。この水の比率により、蒸発に必要な時間を制限しながら、非常に良好な銀酸化物の堆積の均一性が保証される。
【0064】
第二の方法は、含浸ドライを実行する段階から成る。この方法によると、好ましくはパウダーまたはペレットの形態である二酸化マンガン基質が、銀イオン(Ag)を含む食塩水で湿潤される。この食塩水は、例えばClまたはBrなどの任意のハロゲン化銀、あるいは硝酸銀を含むことができる。この方法は、実施が特に単純である。
【0065】
第三の方法は、拡散含浸から成る。この方法によると、二酸化マンガン基質は、過度に銀イオン(Ag)を含む塩を含む溶液に配置される。
【0066】
この方法は、銀の均一分布を得るために、特に効果的である。
【0067】
第四の方法は、沈殿反応による銀の堆積に基づく。より正確には、銀は、酸化マンガンおよび硝酸銀の懸濁液を含む溶液を用いて、マンガン上に沈殿によって堆積される。銀の沈殿は、溶液に水酸化ナトリウム(またはソーダ)(NaOH)を導入することによって得られる。
【0068】
好ましくは、その混合は、二酸化マンガンおよび銀酸化物AgOがそれぞれ、80%から90%の範囲および20%から1%の範囲の重量濃度を有するように、つまり、0.93%と18.6%との間の銀の重量比率を有するように実施される。好ましい実施形態によると、二酸化マンガンの重量濃度は略90%であり、銀酸化物の重量濃度は略10%である。
【0069】
図1は、本発明の方法による、時間に応じたトリチウム化水(曲線100、101)およびトリチウム化水素(102、103)の分圧曲線を示す。
【0070】
これらの実験を実施するために、混合物を形成する二酸化マンガンおよび銀酸化物AgOの重量濃度は、それぞれ90%および10%である。混合物で使用される重量は、0.403gである。モレキュラーシーブは、11.241gの重量を有する。それは5Aタイプのゼオライトで形成される。例えばトリチウム廃棄物から生じる、133ppmVのトリチウム化水素を含む気体の流速は、略750Nml/min(Normal millilitres per minuteの頭字語)である。
【0071】
これらの曲線は、トリチウム化水素の量を低減するための本発明の効率を明確に示す。グラフのX軸の開始は、トリチウム化水素と、モレキュラーシーブに結合されたマンガンおよび銀酸化物の混合物と、が接触して置かれた瞬間に対応する。
【0072】
反応の開始は、参照符号110で示され、グラフ111で拡大した形態で提示される。およそ最初の二分の間、トリチウム化水素の分圧103は1.4x10−9torr付近の値あたりで比較的安定し、それはトリチウム化水素の133Vppm(表現“volumetric parts per million”の頭字語)を示す。この同一の期間の間、トリチウム化水の分圧101は略4.10−10torrで安定し、それはトリチウム化水の不在を表す。
【0073】
トリチウム化水素がモレキュラーシーブに結合された酸化物の混合物と接触して置かれるとすぐに、トリチウム化水素の分圧の素早い低下が観察され、その後にトリチウム化水の分圧の大規模な増加が続く。これは、銀によって促進された、トリチウム化水素と酸化マンガンの混合物との反応によるトリチウム化水の生成を表す。
【0074】
ほぼ同時に、トリチウム化水の分圧100が非常に素早く下降する。30分後、それは再び、水の不在を表す分圧に到達する。同時に、トリチウム化水素の分圧102は、略30分後に、75Vppmに対応する8.10−10torrに到達するように増加する。
【0075】
これらの曲線の変化は、トリチウム化水素と酸化物の混合物との反応によって生成されたトリチウム化水を捕捉する除湿機として作用するモレキュラーシーブの作用を反映する。これらの曲線は、トリチウム化水の捕捉がその生成よりもより早く起こることを示す。
【0076】
トリチウム化水素の分圧の遅い増加は、酸化物の混合物の漸進的飽和を表す。混合物が飽和されるとき、トリチウム化水素の量が廃棄物によって生成された脱気により漸進的に増加するが、一方、その部分に対するトリチウム化水の量はゼロのままであり、酸化反応は試薬の欠如が原因で妨げられる。
【0077】
トリチウム化水素の全体的な捕捉率(global yield of the trapping)の計算は、酸化物混合物のグラムあたり23cmのトリチウム化水素の反応度を導く。
【0078】
図1における曲線は故に、少量のトリチウム化水素が存在する場合であっても、本発明による方法の効率性を明確に反映する。有利なことに、廃棄物のパッケージの脱気の制限との関連で、このトリチウム化水素の捕捉は周囲圧力および温度下で実施され、その実施を単純化する。
【0079】
本発明の効率の限界を調べるために、非常に低い混合物重量に加えて、9000の高脱気パッケージの脱気に相当する脱気条件下で、テストが実施される。このことは、なぜ飽和時間が低いのかを説明する。
【0080】
非制限的であるが有利なことに、この効率はさらに、酸化物の混合物にプラチナ(Pt)を添加することによって向上される。
【0081】
好ましくは、プラチナ化合物が少ない割合で、二酸化マンガンおよび銀酸化物の混合物に添加される。典型的に、プラチナ化合物の重量濃度は、0.1%から1%の範囲である。
【0082】
これは、10%Ptプラチナブラックでは、0.01%から0.1%の範囲のプラチナの重量濃度に対応する。
【0083】
特に効果的な例によると、10%Ptプラチナブラックは0.56%の重量濃度を有し、二酸化マンガンは89.28%の重量濃度を有し、銀酸化物は10.16%の重量濃度を有する。
【0084】
図2は、銀酸化物を有する二酸化マンガンを含む混合物がプラチナまたはプラチナ化合物も含む、本発明を実施する方法の別の例の結果を示す。これらの曲線を作るための他の条件は、図1に示されたものと同一である。
【0085】
これらの実験を実施するために、混合物における酸化マンガン、銀酸化物およびプラチナの重量濃度はそれぞれ、89.5%、10%および0.5%である。使用される混合物の重量は0.119gである。モレキュラーシーブは9.202gの重量を有する。前述の例にあるように、それは5Aタイプのゼオライトによって形成される。133Vppmのトリチウム化水素を含む気体の流速はまた、750Nml/minである。
【0086】
図2における曲線に見られるように、トリチウム化水素の分圧103は5×10−10torr付近の値あたりで比較的安定しており、それは12Vppmのトリチウム化水素を表す。
【0087】
次に、少量の酸化物により、試薬の飽和が急速に生じる。トリチウム化水素の濃度は30分後にその初期濃度の85%、つまり、115Vppmに到達し、90分後にその初期値に到達する。トリチウム化水の濃度の変化は、図1に示されたのと同様である。
【0088】
トリチウム化水素の全体的な捕捉率の計算は、第二のケースでは、酸化物混合物のグラムあたり30cmのトリチウム化水素の反応度をもたらす。これは、酸化物混合物がプラチナを含まない方法と比較して、25%の率増加を表す。混合物内にプラチナを導入することは従って、特に有利な効果を有する。
【0089】
先に細かく見たように、本発明は、モレキュラーシーブと、二酸化マンガンおよび銀酸化物を含む混合物との結合に基づく。この結合は、様々な形態下で現れ得る。
【0090】
図3に示された第一実施形態によると、トリチウム廃棄物5がドラム10に配置される。ドラム10は様々な形態であり得、特に、垂直壁11、底部12および蓋13を有するシリンダーの形態であり得る。ドラム10は故に、トリチウム廃棄物5を含むことができるハウジングを規定する。好ましくは、モレキュラーシーブ1がドラム10の底部12に置かれる。廃棄物5はそして、ドラムの底部に、シーブ1を少なくとも部分的に覆って配置され得る。二酸化マンガンおよび銀酸化物を含む混合物2はそして、廃棄物5の表面上に堆積される。
【0091】
ドラム10、モレキュラーシーブ1および酸化物の混合物2の組み合わせは故に、放射性廃棄物を受け入れることができる自立型デバイスを形成し、効果的にかつ永続的に、トリチウム化水素およびトリチウム化水の捕捉を提供する。
【0092】
別の実施形態によると、二酸化マンガンおよび銀酸化物を含む混合物がシーブ上に堆積される。好ましくは、この堆積は単一アセンブリを形成する。そしてそれは、取り扱いやすい。この場合、接触して置かれた種(species)を撹拌することによってシーブ1上に混合物2を機械的に固定するための提供がなされ得る。代わりにまたは累積的に、この固定は、添加剤を用いて提供または強化され得る。例えば添加剤として水を用いることができる。従って、この水は、150と200Cとの間で12hおよび48h酸化物の混合物を乾燥することによって蒸発される。混合物2は故に、少なくともシーブ1を部分的に覆う層3を形成する。シーブ1は、シーブ1の脱湿性質を損なわないように覆われる。
【0093】
単一アセンブリを形成するために、混合物に付随したモレキュラーシーブによって形成されたアセンブリは、本質的に特に有利であるが、それは、変化した形態およびパッケージ下でトリチウム廃棄物と接触してそれを配置し得るからである。
【0094】
図4に示された特定の実施形態によると、シーブ1および混合物2によって形成されたアセンブリがドラム10、例えばドラム10の底部12に配置される。そしてそれは、トリチウム化水素の捕捉が脱気とともに起こるようにドラム10内部に廃棄物を配置するのに十分である。
【0095】
別の実施形態によると、モレキュラーシーブがドラムの任意の点に配置される。
【0096】
別の実施形態によると、放射性廃棄物がマトリクスで覆われる。そのパッケージは故に、マトリクスおよび廃棄物から形成される。このマトリクスは例えば、セメント、ビチューメンまたはガラスから作られる。この場合、廃棄物を囲むカバーを形成するために、金属メッシュなどの曲げやすい構造体上にマンガンおよび銀酸化物を含む混合物を固定することが有利である。カバーは好ましくは、曲げやすい。好ましくは、モレキュラーシーブはカバーに統合される。
【0097】
上記の説明によると、本発明がトリチウム化水素およびトリチウム化水の脱気の問題への効果的対応を提供することは明らかである。
【0098】
その全作動期間ならびにその解体期間の間に、ITERタイプの反応器が略35,000トンの放射性廃棄物を製造することが予想される。この廃棄物のうち、純トリチウム廃棄物および非常に弱い放射性廃棄物がドラムに直接配置される必要がある。
【0099】
貯蔵制限に適合させるために、トリチウム化水素の脱気は、1年あたり、かつ1ドラムあたり、略0.1ミリグラムであるべきである。
【0100】
従って、この理論的な脱気速度とともに、かつ、トリチウム化水素の捕捉効率が低い (0.3%の効率)にもかかわらず、わずか1グラムの銀酸化物と結合された二酸化マンガンを含む混合物が必要となる。1年あたり、かつ1ドラムあたり、0.1ミリグラムの脱気速度とともに、1年あたり、かつ1mのドラムあたり、120gのゼオライトのモレキュラーシーブがまた、気体状態および液体状態で存在するトリチウム化水の捕捉を提供するのに十分であるべきである。この比較的少量のモレキュラーシーブを代表する材料はまた、熱(少なくとも40Cまで)および湿度(少なくとも40%)の極限の条件でさえも十分であると証明されるべきである。
【0101】
本発明は上記の実施形態に制限されないが、その精神に応じて任意の実施形態に広がる。
【符号の説明】
【0102】
1 モレキュラーシーブ
2 混合物
5 トリチウム廃棄物
10 ドラム
11 垂直壁
12 底部
13 蓋
図1
図2
図3
図4