【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の開示の残り部分では、成分HTOおよびT
2Oを指定するのに、区別なくトリチウム化水と記述される。本記述では、トリチウム化水は、蒸気または液体形態のトリチウム化水を指定する。
【0013】
本発明の主題は、廃棄物の少なくとも一つのピースを含む少なくとも一つのパッケージによって生じるトリチウム化水素(T
2またはHT)および/またはトリチウム化水(HTOまたはT
2O)の量を低減する方法である。その方法は、以下の段階:銀を含む成分と結合された二酸化マンガン(MnO
2)を含む混合物と接触してパッケージを配置する段階と、次いでモレキュラーシーブと接触してパッケージを配置する段階と、を含む。
【0014】
その混合物は効果的に、トリチウム化水素(T
2またはHT)の拡散率を低下させるために、トリチウム化水素(T
2またはHT)を酸化できる。その結果物はトリチウム化水(T
2OまたはHTO)であり、トリチウム化水はトリチウム化水素よりも非常に移動性が低い。トリチウム化水はそして、モレキュラーシーブによって捕捉される。モレキュラーシーブと、銀を伴う二酸化マンガンを含む混合物との組み合わせは非常に効果的にトリチウム廃棄物の脱気を低下し、少量のトリチウム化水素に対してさえも支障ないこと、が証明されている。特に、本発明による方法の組み合わせは、トリチウム化水素と比較して、高い反応速度および良好な反応性を提供する。加えて、トリチウム化水素を捕捉するこの方法は外的なメンテナンスを全く必要としない。特に有利なことに、それは周囲圧力および温度で実施され得る。さらに、その反応は、熱安定性生成物を生じさせる。それはまた、困難性を改善でき、または、少なくとも数百年にわたって全く問題がない。有利なことに、本発明によって提案される捕捉方法は、比較的実施し易く安価である。本発明は従って、工業規模での使用に特に関連している。
【0015】
本発明の文脈では、トリチウム廃棄物は、トリチウム化水素(HTまたはT
2)を包含または脱気する傾向がある任意の放射性廃棄物を意味する。その廃棄物はまた、例えばトリチウム化水(HTまたはT
2O)などの他の形態のトリチウムを含むことができる。典型的に、その廃棄物は、原子力産業から生じ、トリチウム化水素および/またはトリチウム化水を包含または脱気する傾向がある。
【0016】
本発明の文脈では、典型的にはトリチウム化水素またはトリチウム化水である少なくとも二つの成分を、銀を含む成分と結合された二酸化マンガン(MnO
2)を含む混合物、および/またはモレキュラーシーブと接触して配置することは、これらの成分が互いに反応できるように配置されることを意味する。この接触配置は故に、固体、液体または気体形態における二つの成分の物理的接触であり得る。任意の事象では、接触して配置することは成分の相互作用を可能にし、故に、トリチウム化水素のトリチウム化水への変換反応およびモレキュラーシーブによるトリチウム化水の捕捉反応が起こる。
【0017】
場合によっては、本発明による方法は、以下で述べる少なくとも何れか一つの任意の段階および特徴を有することができる。
【0018】
パッケージは、核分裂反応によって生じる廃棄物の少なくとも一つのピースを含むことができる。代わりに、または累積的に、そのパッケージは使用済み燃料によって形成される廃棄物の少なくとも一つのピース、または核融合反応に使用されるものを含むことができる。そのパッケージはまた、トリチウム廃棄物の別の一つのピースの存在またはトリチウム化燃料の存在によってトリチウム化された廃棄物の一つのピースを含むことができる。その廃棄物はまた、核反応の生成物または燃料であり得る。それはまた、核反応の生成物または燃料で汚染された任意の成分であり得る。その廃棄物は従って、衣類または道具、反応器部品、放射性燃料などの放射性にされた対象物であり得る。
【0019】
銀を含む成分は、以下の成分:AgO、Ag
2O、AgClまたはAgNO
3タイプの銀塩、または銀を含む複合物(complexes)の少なくとも一つを含む。
【0020】
優先的に、銀は、混合物において銀酸化物形態(AgOまたはAg
2O)である。混合物における二酸化マンガンの重量濃度は、80%から99%の範囲であり、混合物における銀酸化物Ag
2Oの重量濃度は、20%から1%の範囲である。これは、0.93%と18.6%との間の銀(Ag)の質量分率に対応する。これは、10%のAg
2Oが9.3%の銀(Ag)に対応するからである。
【0021】
より正確には、混合物における二酸化マンガンの重量濃度は、87%から93%の範囲であり、混合物における銀酸化物Ag
2Oの重量濃度は、13%から7%の範囲である。さらにより優先的には、二酸化マンガンおよび銀酸化物Ag
2Oの混合物における重量濃度は、それぞれ略90%および10%である。
【0022】
好ましくは、銀は硝酸銀形態(AgNO
3)であり、混合物における銀(Ag)の質量分率は、1.5%から30%の範囲であり、好ましくは略15%である。
【0023】
特定の実施形態によると、その混合物は、プラチナ(Pt)またはプラチナを含む化合物を含む。明確性のために、本記述の残りの部分では、プラチナを含むこの化合物を「プラチナ化合物」と呼ぶ。
【0024】
有利なことに、それは、10%Ptプラチナブラックである。周知のように、10%Ptプラチナブラックは、90%の活性カーボンおよび10%のプラチナから成る。
【0025】
プラチナは、トリチウム化水素の酸化を加速かつ促進する。
【0026】
有利なことに、混合物におけるプラチナ化合物の重量濃度は0.1%から1%の範囲であり、つまり、10%Ptプラチナブラックでは、プラチナの比率は0.01%から0.1%の範囲である。好ましくは、この濃度は、10%Ptプラチナブラックでは0.5%であり、つまり、プラチナは0.05%であり、二酸化マンガン濃度は89.3%であり、銀酸化物Ag
2O濃度は10.2%である。より正確には、これらの濃度はそれぞれ、0.56%、89.28%および10.16%である。
【0027】
特定の実施形態によると、その混合物は、二酸化マンガンおよび銀酸化物のみを含む。別の実施形態によると、その混合物は、二酸化マンガン、銀酸化物およびプラチナ化合物のみを含む。
【0028】
優先的に、モレキュラーシーブは、4Aタイプまたは5Aタイプのゼオライトである。
【0029】
好ましくは、その方法は、混合物と接触してパッケージを配置する段階および少なくとも一つのモレキュラーシーブと接触してパッケージを配置する段階の前に、モレキュラーシーブ上に混合物を堆積させる段階を含む。有利な実施形態によると、モレキュラーシーブ上に混合物を堆積させる段階は、モレキュラーシーブ上に混合物を機械的に固定する段階によって達成される。別の有利な実施形態によると、モレキュラーシーブ上に混合物を堆積させる段階は、例えば水などのバインダを用いてモレキュラーシーブ上に混合物を化学的に固定する段階によって達成される。この場合、固定段階は、混合物およびモレキュラーシーブを水相で接触して配置する段階と、続いて150
oCから200
oCの範囲の温度で12hと48hとの間の期間乾燥させる段階と、から成る。
【0030】
混合物がモレキュラーシーブに固定される実施形態によると、パッケージは底部を有するドラムの形態であり、トリチウム廃棄物の少なくとも一つのピースを含むことができ、その方法は、混合物が固定されるシーブをドラムの底部に配置する段階を含む。
【0031】
混合物がモレキュラーシーブに固定されない実施形態によると、パッケージは底部を有するドラムの形態であり、トリチウム廃棄物の少なくとも一つのピースを含み、その方法は、シーブをドラムの底部に配置する段階と、廃棄物の中または廃棄物上に混合物を配置する段階と、を含む。
【0032】
シーブおよび混合物はまた、既に完全にまたは部分的に充填されたドラムに配置され得る。
【0033】
カバリングを形成するために金属メッシュ上に混合物が配置される、さらに別の実施形態によると、その方法はまた、カバリングでパッケージの少なくとも一部分を包む段階を含む。好ましくは、金属メッシュは、カバーがパッケージの形状に適合できるように、曲げやすい。好ましくは、そのカバーはモレキュラーシーブを組み込み、モレキュラーシーブは混合物によって覆われる。この実施形態は、パッケージがセメント、ガラスなどのマトリクス、またはビチューメンマトリクスで覆われた廃棄物の形態であるとき、特に有利である。
【0034】
その方法は、銀(Ag)と結合された二酸化マンガン(MnO
2)の混合物と接触してパッケージを配置する段階の前に、二酸化マンガン(MnO
2)が銀を含む化合物と結合される間に混合物を調製する段階を含み、銀を含む化合物は例えば、銀酸化物または銀塩であるが、これらの例は制限的ではない。
【0035】
優先的に、混合物を調製する段階の間、銀が銀酸化物(AgOまたはAg
2O)の形態で、二酸化マンガン(MnO
2)に添加される。
【0036】
第一実施形態によると、混合物を調製する段階は、二酸化マンガンパウダーと銀酸化物パウダー(AgOまたはAg
2O)とを混合する段階を含む。場合によっては、その方法は、混合物を調製する段階の間および二酸化マンガンパウダーと銀酸化物パウダーとを混合する段階の後に、前記混合されたパウダーに水を添加する段階を含む。水の添加は、二酸化マンガンの表面上への銀の拡散を促進する利点を有する。
【0037】
第二実施形態によると、混合物を調製する段階は、固体状態の二酸化マンガン上に銀イオン(Ag
+)を含む食塩水を広げる段階を含む。好ましくは、二酸化マンガンはダスティーパウダー(dusty powder)の形態である。
【0038】
第三実施形態によると、混合物を調製する段階は、固体状態、好ましくはダスティーパウダー形態の二酸化マンガンを、塩または銀酸化物を含む溶液に浸す段階を含む。より正確には、銀はカチオンAg
+またはAg2
+の形態である。この方法の一つの利点は、それが二酸化マンガン上に銀の均一分布を得るのに特に効果的であることである。
【0039】
第四実施形態によると、混合物を調製する段階は、銀を含む溶液の沈殿反応によって、二酸化マンガン上に銀を堆積する段階を含む。液体による含浸の方法の利点は、得られる最終混合物の均一性である。銀を含む溶液は、銀塩(AgCl、AgBr、AgNO
3、など)の溶液である。沈殿は、この硝酸銀溶液への水酸化ナトリウム(NaOH)の導入によって引き起こされる。
【0040】
一実施形態によると、パッケージは、トリチウム廃棄物の複数のピースを含むドラムを含む。代わりに、パッケージは、マトリクスで覆われた廃棄物の一つのピースを含み、そのマトリクスは、例えばコンクリート、ビチューメンまたはガラスである。
【0041】
本発明の別の主題は、トリチウム化水素の量を低減させるデバイスであり、そのデバイスは少なくとも一つのモレキュラーシーブを含み、そのデバイスはまた、銀を含む化合物と結合された二酸化マンガン(MnO
2)を含む混合物を含むことを特徴とし、銀を含む化合物は例えば、銀酸化物または銀塩であるが、これらの例は制限的ではない。
【0042】
その方法に関して上述した理由のために、本発明は故に、その倉庫保管および貯蔵を目的としてトリチウム廃棄物の脱気を低減するのに特に効果的であるデバイスを提案する。
【0043】
有利な実施形態によると、銀を含む化合物と結合された二酸化マンガン(MnO
2)を含む混合物は、モレキュラーシーブに固定される。場合によっては、その層は、5と20μmとの間の厚さを有する。この実施形態の一つの利点は、様々な成分の均一拡散を可能にすることであり、それはデバイスの有効性を向上させる。好ましくは、モレキュラーシーブは4Aタイプまたは5Aタイプのゼオライトである。有利なことに、その層は、機械的におよび/または添加剤を用いて、シーブに固定される。この添加剤は好ましくは、例えば水などのバインダである。
【0044】
別の有利な実施形態によると、そのデバイスは、トリチウム廃棄物の少なくとも一つのピース、並びにシーブおよび混合物を含むことができる少なくとも一つのドラムを含む。
【0045】
場合によっては、そのデバイスは、以下の特徴の少なくとも何れか一つを含むことができる:
−ドラムは廃棄物を含み、混合物が廃棄物の上または廃棄物の中に拡散される;
−シーブがドラムの底部に配置される;
−混合物がモレキュラーシーブを少なくとも部分的に覆い、シーブおよび混合物が単一のアセンブリを形成する。
【0046】
さらに別の有利な実施形態によると、そのデバイスは、好ましくは金属メッシュである、曲げやすい基板によって形成されたカバーを含み、曲げやすい基板は、銀を含む化合物と結合された二酸化マンガン(MnO
2)を含む混合物によって形成された層によって少なくとも部分的に覆われ、その化合物は、酸化物、塩、複合物などである。
【0047】
従って、パッケージは例えば、放射性廃棄物の一つ以上のピースを囲むドラムまたはマトリクスであり得る。それはまた、何れかの形態のコンテナであり得る。
【0048】
有利なことに、上述のデバイスの三つの実施形態のそれぞれに対し、混合物における二酸化マンガンの重量濃度は、80%から99%の範囲であり、混合物における銀酸化物Ag
2Oの重量濃度は、20%と1%との間である。これは、0.93%から18.6%の間の範囲にある銀(Ag)の質量分率に対応する。これは、10%のAg
2Oが9.3%の銀(Ag)に対応するからである。場合によっては、それでもなお有利なことに、混合物はまた、プラチナ化合物を含み、その重量濃度は好ましくは0.1%から1%の範囲である。これは、10%Ptプラチナブラックでは、0.01%から0.1%の範囲であるプラチナの重量濃度に対応する。
【0049】
本発明の他の特徴、目的および利点は、非限定的な例として提示された、添付図面に関する以下の詳細な説明を読むことで現れるだろう。