(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記発泡プラスチックは、ポリウレタンフォームであり、前記一定の反射率を超える反射率を有する色は、白であり、前記一定の反射率以下の反射率を有する色は、黒または茶から選択される、請求項1または2に記載の苗床。
【背景技術】
【0002】
水耕栽培は、培養液と空気とを栽培する植物の根に接触させることにより、土壌等の固形培地がなくとも植物を成長させることができる栽培方法である。この方法は、雑菌を含み、含有成分や組織調節が難しい土壌がいらないことから、制御された環境下で工業的に植物を生産する植物工場において利用されている。
【0003】
水耕栽培における育苗では、衛生的に実施するために、無機系繊維としてのロックウールや、有機合成系フォームとしてのポリウレタンを苗床として使用している(例えば、特許文献1および2参照)。
【0004】
近年、屋内に照明や空調設備等を導入し、植物を栽培する植物工場が増加してきている。こういった植物工場では、栽培パレットに苗を固定したまま収穫まで育成していくが、栽培パレットに苗を固定しやすい点で、ウレタンフォームが好んで使用されている。ウレタンフォームとしては、栽培空間における照明効率を高めるために、白色のものが用いられ、発芽率の高い低密度のもの、または発芽後の根の分枝や成長に優れる高密度のもののいずれかが使用されている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の苗床の構成例を示した図である。この苗床10は、水耕栽培に使用される植物を植えるための苗床である。この苗床10は、二層構造とされていて、下側の第1の層11は、一定の反射率以下の反射率を有する色で、かつ一定の発泡倍率以下の発泡倍率を有する第1の発泡プラスチックにより形成される。
【0011】
そして、上側の第2の層12は、第1の層11と接合され、一定の反射率を超える反射率を有する色で、かつ一定の発泡倍率を超える発泡倍率を有する第2の発泡プラスチックにより形成される。
【0012】
発泡プラスチックは、合成樹脂中に空気等のガスを分散させ、発泡状(フォーム)または多孔質形状に成形されたもので、例えば、ポリウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)架橋発泡体、フェノール発泡樹脂等を用いることができる。これは一例であるので、これ以外のものも使用することが可能である。
【0013】
発泡プラスチックは、泡を含まない成形品に空気等のガスを入れ、膨らませることにより成形されるが、その成形品に対して何倍の体積に膨らませたかを示す値(発泡倍率)により、2つに分けられる。一般に、発泡倍率が3〜4倍を境界とし、それ以下か、それを超えるかにより、低密度か、高密度かに分けられる。このため、上記の一定の発泡倍率は、3〜4倍とすることができる。
【0014】
発泡倍率が一定の発泡倍率以下のものは、低発泡であるため、高密度の発泡プラスチックである。これに対し、一定の発泡倍率を超えるものは、高発泡であるため、低密度の発泡プラスチックである。例えば、ポリウレタンフォームを発泡プラスチックとして使用する場合、低密度のものは、低密度ウレタンフォームと呼ばれ、高密度のものは、高密度ウレタンフォームと呼ばれる。なお、低密度および高密度の発泡プラスチックの各発泡倍率は、任意に決定することができる。
【0015】
以下、一定の発泡倍率以下の発泡倍率を有する第1の発泡プラスチックとして、高密度ウレタンフォームを、一定の発泡倍率を超える発泡倍率を有する第2の発泡プラスチックとして、低密度ウレタンフォームをそれぞれ使用するものとして説明する。
【0016】
高密度ウレタンフォームを苗床10として使用した場合、植物21の種子の発芽率が低いが、発芽後の根の分枝、成長に優れる。低密度ウレタンフォームを苗床10として使用した場合、植物21の種子の発芽率が高いが、発芽後の根の分枝、成長に劣る。
【0017】
本発明では、発芽率が高い低密度ウレタンフォームを上側の第2の層12に、発芽後の根の分枝、成長に優れる高密度ウレタンフォームを下側の第1の層11に使用するため、発芽段階と発芽後の根の成長段階のそれぞれにおいて好ましい生育環境を与えることができる。
【0018】
ポリウレタンフォームは、苗床として数多く使用されているが、その多くは、白色のものである。これは、上述したように、栽培空間での照明効率を高めるためである。ここで、苗床を水耕栽培で使用される栽培パレットに設置したときの光の反射の様子を見るために、
図2を参照する。照明20からの光は、一点に照射されるものではなく、広がるように照射される。このため、照明20の下側にある植物21のほか、栽培パレット22の表面や苗床10の表面にも照射される。なお、植物21は、葉がその光を浴びて光合成を行い、成長していく。
【0019】
栽培パレット22の表面や苗床10の表面に照射された光が吸収されてしまうと、照明20から照射された光の一部しか、植物21に対して使用されない。これでは、照明効率が低くなってしまう。
【0020】
このため、栽培パレット22の表面や苗床10の表面で光を反射させ、その反射した光が照明20からの光とともに再度、植物21へ照射されるように、栽培パレット22や苗床10は反射率が高い色のものが使用される。
【0021】
なお、栽培パレット22や苗床10で反射した光が、照明20からの光とともに再度、植物21へ照射されるように、栽培パレット22が載せられる植物栽培装置の側面および照明20が取り付けられる天井も反射率が高い色とされる。
【0022】
各色の光は、それぞれ特定の波長を有するが、全波長において高い反射率で乱反射する物体の色は、白である。これに対し、光を吸収し、反射率が0に近い物体の色は、黒である。反射率は、材質や照明20から照射される光の色によって変わるが、一般に、白は、約70%であり、黒は、5%以下である。ちなみに、黄色は、一般に、約50〜60%、赤、茶、緑、青は、約15〜30%である。ただし、赤、茶、緑、青等においても、その色を薄くしていくと、反射率が30%を超え、さらに薄くして白に近づいてくると、50%を超える。一方、その色を濃くしていくと、反射率が15%以下となり、さらに濃くして黒に近づいてくると、10%以下となる。
【0023】
植物21の葉に対しては、成長のために光が必要であるが、根に対しては、光は成長のために阻害要因となる。これは、根に対して水分および養分を与えるために、培養液を流すが、その培養液に光が当たると、藻類が発生し、この藻類の発生により培養液が劣化し、汚染され、根が病気になるからである。このため、培養液に光が当たらないようにする必要がある。
【0024】
照明20からの光の反射率を高くするために、従来では白色のポリウレタンフォームが使用されているが、白色は光を通すことから、培養液に光が当たってしまう。このポリウレタンフォームを黒や茶等の暗い色にすると、光を吸収して、培養液に光が当たらないようにすることができる。
【0025】
そこで、本発明においては、上側の第2の層12に使用する低密度ウレタンフォームの色を、ある一定の反射率より高い反射率を有する白色とし、下側の第1の層11に使用する高密度ウレタンフォームの色を、一定の反射率以下の反射率を有する黒や茶(濃褐色)等の暗い色とする。これにより、照明20からの光を反射させることができ、かつ培養液へ光が当たらないようにして藻類の繁殖を抑制し、培養液の劣化や汚染を抑制することができる。一定の反射率としては、例えば、45%や50%等と任意に決定することができる。
【0026】
したがって、この苗床10を提供することで、発芽歩留まりを改善することができ、かつ栽培パレット22への移植後の良好な根の成長、分枝をもたらすことができる。
【0027】
ここで、この苗床10を製造する方法について説明する。ポリウレタンフォームを作るために、主成分としてポリオールとポリイソシアネートを用い、発泡剤、整泡剤、触媒、着色剤等を混合して樹脂化させつつ発泡させて、白色の低密度ウレタンフォームと、土の色に近い黒や茶等の暗い色の高密度ウレタンフォームとを製造する。この方法は一般的に知られた方法であるので、詳述しない。
【0028】
なお、各ウレタンフォームは、栽培パレット22に設けられた移植孔に挿入可能なサイズのブロック状に形成される。低密度ウレタンフォームは、発芽後の根を、高密度ウレタンフォームへ早く進入させるように、その厚さは約5mmに留め、それより厚くしないほうが望ましい。
図1では、それぞれ直方体に形成されているが、円柱や立方体等の形状に形成されてもよい。
【0029】
暗い色の高密度ウレタンフォームの上面に、例えばスプレー糊等の粘着剤を塗布し、白色の低密度ウレタンフォームを接合する。ここでは、粘着剤を使用して接合したが、ネジ、ボルトやナット等の締結手段を使用して接合してもよいし、熱溶着により接合することも可能である。このようにして、二層構造を有する苗床10が製造される。
【0030】
各ウレタンフォームへの着色は、着色剤を混合して着色する方法に限らず、着色するための液に浸漬させたり、塗布したりすることにより、その表面のみを着色する方法を採用することもできる。
【0031】
この苗床10は、
図2に示すように、栽培パレット22に設けられた移植孔に挿入され、栽培パレット22の上面と、第2の層12の5つの面が照明20側に露出し、第1の層11が露出しないように設置される。第1の層11は、栽培パレット22下側の培養液23に一部が浸漬される。
【0032】
第1の層11は、高密度であるが故、小さな孔が多数形成されており、毛細管現象により培養液23が吸引され、各孔内に保持される。このため、第1の層11は、吸水性および保水性が良好である。根にとって、吸水性および保水性が良好な第1の層11から保持された培養液を吸収することで、成長を促進することができる。なお、高密度ウレタンフォームは、発泡倍率が低すぎると、硬くなりすぎ、根の成長に影響を与えるので、発泡倍率は2〜3倍が好ましい。
【0033】
第2の層12は、低密度であるため、1つ1つの孔が大きく、毛細管現象があまり働かないため、第1の層11に比較して吸水性および保水性が劣る。しかしながら、第1の層12に比較して軟らかいので、種子の発芽を容易にする。低密度ウレタンフォームとしては、例えば、発泡倍率が10〜50倍のものを使用することができる。これは一例であるので、これに限定されるものではない。
【0034】
これまで、低密度ウレタンフォームと高密度ウレタンフォームとを接合して二重構造とした苗床10を説明してきたが、低密度ウレタンフォームの上面に、銀やアルミニウム等から製造されたシート、ガラスの片面に銀やアルミニウム等を蒸着させた鏡といった、低密度ウレタンフォームより反射率が高い反射材を貼付する等して、さらに反射率を高めることができる。このとき、栽培パレット22の表面にも、この反射材を貼付する等して、さらに反射率を高めることができる。なお、銀は、一般に、反射率が95%以上であり、アルミニウムは、反射率が約90〜95%である。
【0035】
また、苗床10は、上記の低密度の発泡プラスチックと高密度の発泡プラスチックの2つの層を備えるものであれば、例えば、高密度の発泡プラスチックの下側に、さらに高密度の発泡プラスチックや、低密度の発泡プラスチックの上側に、さらに低密度の発泡プラスチックを設け、3層以上で構成されていてもよい。
【0036】
図3を参照して、播種から苗床を栽培パレットへ移植するまでの実施手順について説明する。
図3(a)は、播種を示している。この
図3(a)では、植物の種子30を、苗床10を構成する第2の層12に埋め込み、種を播いている。
【0037】
図3(b)は、発芽を示している。この
図3(b)では、培養液23に、種を播いた苗床10の一部を浸漬させ、照明20を当てている。これにより、種子30は発芽し、第2の層12内に根が伸び始める。
【0038】
図3(c)は、第1の層11へ根が進入しているところを示している。第1の層11は、第2の層12に比較して吸水性および保水性が高いため、培養液が保持されている。このため、根は、その培養液を求めて第1の層11へ向けて伸び、第1の層11へ進入する。
【0039】
図3(d)は、根の好ましい生育を示している。暗い色の高密度ウレタンフォーム等からなる第1の層11による保水、暗環境下で、根の生育が良好で、成長して下方へと伸び、数多く分枝する。また、照明20からの光、および第1の層11で反射して再度照射された光を浴びて、葉の数が増え、植物21が大きく成長する。
【0040】
図3(e)は、栽培パレット22への移植を示している。植物21がある程度に成長したら、苗床10ごと、栽培パレット22に設けられた移植孔24へ挿入して設置し、移植する。栽培パレット22は、温度、湿度が管理され、根に培養液が供給され、照明から光が照射される植物栽培装置内へ置かれ、植物21は、その装置内で育成される。
【0041】
これまで本発明の苗床について図面に示した実施形態を参照しながら詳細に説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態や、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。