(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202863
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】誘導電動機の製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 15/02 20060101AFI20170914BHJP
H02K 17/16 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
H02K15/02 J
H02K17/16 A
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-80712(P2013-80712)
(22)【出願日】2013年4月8日
(65)【公開番号】特開2014-204616(P2014-204616A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年3月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】山下 幸貴
(72)【発明者】
【氏名】森江 孝明
【審査官】
安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−028360(JP,A)
【文献】
特開平10−234166(JP,A)
【文献】
特開2001−138038(JP,A)
【文献】
特開2004−358536(JP,A)
【文献】
特開昭54−149347(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0316380(US,A1)
【文献】
特開2005−278373(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 17/00−17/44
H02K 15/00−15/02
H02K 15/04−15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータのスロット内に鋳込まれる母材と同一の材料からなる第1部材と、母材よりも電気伝導率の高い材料からなる第2部材と、の接続界面に前記第1部材および前記第2部材による合金の層である合金層が生じるように、前記第1部材および前記第2部材を接合した複合材を作成し、
前記複合材をロータのスロット内に挿入した状態で、溶融した前記母材をスロット内に鋳込むことによりロータを製造することを含む、誘導電動機の製造方法。
【請求項2】
溶接、爆着、摩擦結合のいずれかにより前記第1部材と前記第2部材との前記接続界面に前記合金層が生じるように、前記第1部材と前記第2部材とが接合されることを特徴とする請求項1に記載の誘導電動機の製造方法。
【請求項3】
前記第1部材、前記第2部材のそれぞれは、板状の部材であり、互いの面が対向する態様で接合されることを特徴とする請求項1または2に記載の誘導電動機の製造方法。
【請求項4】
前記複合材をロータのスロット内に挿入した状態で、溶融した前記母材をスロット内に鋳込むことにより、前記第1部材と前記母材が一体化し、前記第2部材及び前記合金層は残ることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の誘導電動機の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導電動機の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、誘導電動機は、誘導電流が流れる二次導体側の抵抗が低いほどモータ効率が向上する。二次導体側の抵抗を下げるために、例えば特許文献1には、かご形誘導電動機のロータのスロット内に、アルミニウムと、アルミニウムよりも電気伝導率の高い銅線とを混在させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2012−258721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アルミニウムは表面に酸化膜を形成しやすく、電気伝導率の優れた金属とは電気的に結合しにくいという性質がある。そのため、銅や銀などを抵抗低減材としてロータのスロット内に挿入した後でアルミニウムを鋳込むようにしてロータを製造すると、抵抗低減材とアルミニウムとの接合界面の電気抵抗が大きくなり、結果として二次導体側の抵抗が期待通りには小さくならなくなる可能性がある。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、誘導電動機の二次導体の抵抗を低減して誘導電動機の効率を改善する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、ロータのスロット内に鋳込まれる母材と同一の材料からなる第1部材と、母材よりも電気伝導率の高い材料からなる第2部材と
、の接続界面に第1部材および第2部材による合金の層である合金層が生じるように、第1
部材および第2部材
を接合した複合材を作成し、複合材をロータのスロット内に挿入した状態で、溶融した母材をスロット内に鋳込むことによりロータを製造することを含む、誘導電動機の製造方法である。
溶接、爆着、摩擦結合のいずれかにより第1部材と第2部材との接続界面に合金層が生じるように、第1部材と第2部材とが接合されてもよい。
第1部材、第2部材のそれぞれは、板状の部材であってもよく、互いの面が対向する態様で接合されてもよい。
複合材をロータのスロット内に挿入した状態で、溶融した母材をスロット内に鋳込むことにより、第1部材と母材が一体化してもよく、第2部材及び合金層は残るようにしてもよい。
【0007】
この態様によると、ロータスロット内での第1部材(例えばアルミニウム)と抵抗低減材としての第2部材(例えば銅)との接合界面の電気抵抗を低減することができるので、二次導体の抵抗が小さくなり、その結果誘導電動機の効率が改善される。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、誘導電動機の二次導体の抵抗を低減して誘導電動機の効率を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】中心軸を含む鉛直面でかご形誘導電動機を切断したときの断面図である。
【
図2】銅材とアルミニウム材とを接合する様子を示す図である。
【
図3】
図2で説明した方法を用いてかご形誘導電動機のロータを製造する方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、中心軸を含む鉛直面でかご形誘導電動機10を切断したときの断面図である。
【0012】
ステータ34は、同一形状に型抜きされた多数の薄板状(例えば、厚さ0.5mm)の電磁鋼板を積層して形成される。ステータ34は、フレーム30の内周に、例えば焼き嵌めによって嵌合される。ステータ34に形成された複数のスロットには銅線のコイル38が巻回されている。
【0013】
ロータ36も、同一の円形状に型抜きされた多数の薄板状の電磁鋼板を積層して形成される。ロータ36には、中央に回転軸12を挿通するための円形穴が形成されるとともに、その外周側には、径方向に延びる複数の同一形状のスロット36aが等間隔に形成されている。ロータ36の円形穴は、回転軸12に締まり嵌めによって固定される。
【0014】
フレーム30は、例えばアルミダイキャスト製、鋳鉄製または鋼板製であり、ロータおよびステータの重量を支持するとともに、ロータおよびステータ等で発生する熱を電動機外部に放熱する役割を有する。放熱性能を高めるために、回転軸と平行な方向に延びる多数の放熱フィン40がフレーム30の外周に設置される。
【0015】
回転軸12は、フレーム30から内径側に延び出す両側のフランジ14、15にそれぞれ軸受16、17を介して回転自在に支持されている。フランジ14、15は、フレーム30と一体形成されてもよいし、別々に形成された後でフレーム30に固定されてもよい。
【0016】
回転軸12の後端側には、ファン18が配置される。ファン18のさらに外側にはファンカバー32が配置される。
【0017】
一般に、誘導電動機は、誘導電流が流れる二次導体側の抵抗が低いほどモータ効率が向上する。そこで、ロータ36に形成されたスロット36a内に、電気伝導率が高いアルミニウムをダイキャスト鋳造により鋳込む方法が最も良く使用されている。この場合、ロータ36の両端面には、スロット内の導体と一体構造となる短絡環37が形成される。
【0018】
誘導電動機の効率をさらに高めるために、アルミニウムよりもさらに電気伝導率の高い銅や銀などの金属材(抵抗低減材)をスロット内に挿入した状態で、アルミニウムを鋳込む方法が提案されている。しかし、この方法では、溶融アルミニウムの粘性不足により抵抗低減材の表面の凹凸に十分アルミニウムが流れ込まなかったり、アルミニウムが凝固する際に熱収縮したりするために、アルミニウムと抵抗低減材との間に空隙が発生してしまう。また、抵抗低減材が高温空気中に曝されることにより表面に酸化膜が形成されてしまう。接合界面における酸化膜や空隙は、スロット内の導体に電流を流したときに電気抵抗として作用する。
【0019】
そのため、単に銅や銀などの抵抗低減材をスロット内に挿入してアルミニウムを鋳込むようにすると、抵抗低減材とスロット内のアルミニウムとの接合界面の酸化膜や空隙の存在のために接合界面の電気抵抗が大きくなり、結果として二次導体側の抵抗が期待通りには小さくならなくなる可能性がある。
【0020】
そこで、本実施形態では、銅などの抵抗低減材と、スロット内に鋳込まれる母材(例えばアルミニウム)と同じ材料の部材とを、接合界面の電気抵抗が小さくなるように接合した複合材を作成した後で、ロータのスロット内に複合材を挿入するようにした。
【0021】
図2は、板状の銅材(第2部材)70とアルミニウム材(第1部材)80とを接合して複合材を作成する様子を示す。本実施形態では、銅およびアルミニウムの両者を単に組み合わせるのではなく、銅およびアルミニウムの両方と電気的親和性が高い媒体が接合界面に介在するような方法で、銅材とアルミニウム材とを接合する。なお、本明細書において「電気的親和性が高い」とは、接合する二つの材料(ここでは銅とアルミニウム)の間の空隙や酸化膜を抑制する効果が高いことを意味する。
【0022】
例えば、爆着または溶接で銅材とアルミニウム材とを接合してもよい。この場合、両者の接続界面には銅とアルミニウムによる合金層が生じ、この合金層が電気的親和性の高い媒体として機能する。
【0023】
または、銅材とアルミニウム材とを高い振動数で擦り合わせて接合する摩擦接合を使用してもよい。この場合も、両者の接続界面には銅とアルミニウムによる合金層が生じ、この合金層が電気的親和性の高い媒体として機能する。
【0024】
ロウ付けまたはハンダ付けにより銅材とアルミニウム材とを接合してもよい。この場合、両者の接続界面にはロウやハンダの層が生じ、この層が電気的親和性の高い媒体として機能する。
【0025】
上記の接合方法により生じる媒体層は、複合材に電気を流した場合に電気抵抗にはなるものの、空隙や酸化膜よりは電気抵抗が低い。したがって、酸化膜や空隙が存在する場合よりも複合材の電気抵抗を小さくすることができる。
【0026】
図3は、
図2で作成した複合材を用いてかご形誘導電動機のロータを製造する方法を示す模式図である。
図3(a)、(c)は、ロータ36に形成されたスロット36aの拡大平面図であり、
図3(b)、(d)は、
図3(a)、(c)中の一点鎖線に沿った縦断面図である。
【0027】
図3(a)に示すように、銅材70とアルミニウム材80がスロット36a内に収まるように両者のサイズを選択する。
図2で述べたように、接合界面に媒体を介在させた複合材を初めに作成する。この複合材を、
図3(b)に示すようにスロット36a内に挿入した状態で、スロット内に溶融アルミニウムを鋳込む(
図3(c)、(d)参照)。溶融アルミニウムとアルミニウム材80との接触面は、アルミニウム材80の表面が溶けることにより鋳込まれたアルミニウムと一体化し、界面の電気抵抗がほぼ無い状態になる。この結果、スロット36a内で、電流は、鋳込まれたアルミニウムを流れる経路と、複合材を流れる経路とに分かれる。後者の経路は、銅材70とアルミニウム材80の間の媒体層の電気抵抗がわずかであれば、電気伝導率の高い銅材のために、鋳込まれたアルミニウムよりも電気抵抗が小さくなる。よって、二次導体側の電気抵抗が低減し、結果として誘導電動機の効率が改善される。
【0028】
なお、アルミニウム材80は、
図3のようにスロット36aの軸方向長さに略等しい長さであってもよいし、銅材70の両端部にのみ接合される2枚の短い板材であってもよい。
【0029】
母材としてアルミニウム、抵抗低減材として銅を使用する例について説明したが、本実施形態はこの組み合わせに限られず、母材よりも電気伝導率の高い抵抗低減材を使用するのであれば、任意の組み合わせに適用することができる。例えば、母材として銅、抵抗低減材として銀を使用してもよい。
【0030】
以上説明したように、本実施形態によれば、ロータスロット内での母材(例えばアルミニウム)と抵抗低減材(例えば銅)の接合界面の電気抵抗を低減することができるので、二次導体の電気抵抗を低減して誘導電動機の効率を向上させることができる。
【0031】
以上、本発明の実施の形態について説明した。これらの実施の形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0032】
実施の形態では、誘導電動機の効率を改善するために母材と抵抗低減材とを接合することを説明したが、電気伝導率の異なる任意の金属材同士を接合する場合にも本発明を適用することができる。また、金属材の形状は上述した板材に限られず、任意の形状であってよい。
【符号の説明】
【0033】
10 かご形誘導電動機、 36 ロータ、 36a スロット、 70 銅材(第2部材)、 80 アルミニウム材(第1部材)。