特許第6202883号(P6202883)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6202883金属蒸着膜上塗布用の(ツヤ無し)蓄光塗料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202883
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】金属蒸着膜上塗布用の(ツヤ無し)蓄光塗料
(51)【国際特許分類】
   C09D 133/00 20060101AFI20170914BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20170914BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20170914BHJP
   C09D 5/22 20060101ALI20170914BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20170914BHJP
   B32B 15/082 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   C09D133/00
   C09D7/12
   C09D183/04
   C09D5/22
   C09D5/00 D
   B32B15/082 Z
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-112585(P2013-112585)
(22)【出願日】2013年5月29日
(65)【公開番号】特開2014-231554(P2014-231554A)
(43)【公開日】2014年12月11日
【審査請求日】2016年4月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】511039027
【氏名又は名称】東洋工業塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109553
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 一郎
(72)【発明者】
【氏名】出浦喜裕
(72)【発明者】
【氏名】黒沼孝広
【審査官】 菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−317476(JP,A)
【文献】 特開2002−347175(JP,A)
【文献】 特開2003−026709(JP,A)
【文献】 特開2005−171088(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 133/00
B32B 15/082
C09D 5/00
C09D 5/22
C09D 7/12
C09D 183/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Tgが摂氏65度以下,酸価が2以上50以下であるアルミキレート硬化型アクリル樹脂と蓄光材料としてのアルミン酸ストロンチウムとを含む金属蒸着膜上塗布用の蓄光塗料。
【請求項2】
前記アルミン酸ストロンチウムからなる蓄光材料の平均粒径は,15μmから50μmの範囲である請求項1に記載の金属蒸着膜上塗布用の蓄光塗料。
【請求項3】
前記アルミン酸ストロンチウムからなる蓄光材料の全体に占める重量%は45%から55%の範囲である請求項1又は2に記載の金属蒸着膜上塗布用の蓄光塗料。
【請求項4】
さらに全体に対して2.5重量%から5.5重量%の範囲で顔料を追加した請求項1から3のいずれか一に記載の金属蒸着膜上塗布用の蓄光塗料。
【請求項5】
プラスティック表面と,プラスティック表面に対して直接的に又は間接的に形成された金属蒸着膜と,金属蒸着膜上に請求項1から4のいずれか一に記載の蓄光塗料を塗布して形成される蓄光層と,からなる製造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄光(発光)塗料と、それによって製造された製造体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、着色顔料と蓄光材料とを含有する蓄光塗料を塗布することで、明所では鮮やかな色彩を放ち、暗所では鮮やかな燐光を放つ製造体を形成する技術が知られている。
【0003】
明所での鮮やかな色彩は、日中の時間帯における製造体の意匠性を高めるものとして重要である。他方、暗所での鮮やかな燐光は、日没後の時間帯における製造体の意匠性を高め、かつ、節電による省エネ効果をもつものとして重要である。
【0004】
例えば、自動車のエンブレム基材の表面に対して蓄光塗料を塗布することでエンブレムを製造すれば、そのエンブレムは、日中の時間帯においては、太陽光により本来の意匠性を発揮することができ、他方、日没後の時間帯においても、電灯で照らすことなく、製造体が自ら鮮やかな燐光を放つことにより、エンブレムの意匠性を発揮することができる。
【0005】
また、従来から、蓄光塗料については、プラスティック表面上に塗布するのみではなく、金属蒸着膜上に塗布することもアイデアとして一般に知られていた。
【0006】
金属蒸着膜上に蓄光層を配置した点を特徴の1つとする発明としては、例えば、特許文献1及び2がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−29268号公報
【0008】
【特許文献2】特許第4751240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の技術では、金属蒸着膜から剥がれにくい蓄光塗料の組成は明らかにされていないという問題があった(以下、「問題点1」)。また、従来の技術では、形成された製造体が温水に長時間触れた場合、塗料の金属蒸着膜面への密着性が低いため、温水が金属蒸着膜面に浸透してしまい、金属蒸着膜が蓄光層の内側で腐食してしまうという問題があった(以下、「問題点2」)。
【0010】
そこで、本発明は、金属蒸着膜面への温水の浸透を防止できるほどに高い密着性をもち、かつ、金属蒸着膜から剥がれにくい組成をもつ蓄光層を形成できる蓄光塗料を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
問題点1及び2を解決するために、アルミキレート硬化型アクリル樹脂のうち一定の成分を有する樹脂を蓄光材料に含有させた。
【発明の効果】
【0012】
主にこのような構成をとる本件発明により、金属蒸着膜面への温水の浸透を防止できるほどに高い密着性をもち、かつ、金属蒸着膜から剥がれにくい組成をもつ蓄光層を形成できる蓄光塗料を提供することが可能となった。これらにより、蓄光塗料の本来の利点を損なわず、かつ、意匠性の向上、労力や費用の削減につなげることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】樹脂を変えて実施した耐温水性実験の結果を示す図
図2】樹脂を変えて実施した実験結果を示す図
図3】蓄光材料の添加量を変えて実施した実験結果を示す図を示す図
図4】着色顔料の添加量を変えて実施した実験結果を示す図を示す図
図5】塗布工程の一例を示す図
図6】製造体の断面図の一例を示す図
図7】塗布工程の一例を示す図
図8】製造体の断面図の一例を示す図
図9】塗布工程の一例を示す図
図10】製造体の断面図の一例を示す図
図11】塗布工程の一例を示す図
図12】製造体の断面図の一例を示す図
図13】塗布工程の一例を示す図
図14】製造体の断面図の一例を示す図
図15】同一の蓄光塗料で塗布可能な範囲を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
〈発明の概要〉
本発明は、アルミキレート硬化型アクリル樹脂と蓄光材料としてのアルミン酸ストロンチウムとを含む金属蒸着膜上塗布用の蓄光塗料、及び、その蓄光塗料を塗布することによって得られた製造体である。
以下では、蓄光塗料の塗料成分と、製造体を形成するための塗布方法と、について説明する。
【0015】
〈塗料成分〉
(メイン樹脂について)
塗料成分のメイン樹脂としては、例えば、アクリル樹脂とアルミキレート硬化型アクリル樹脂の2つが考えられる。アルミキレート硬化型アクリル樹脂とは、その分子内にカルボキシル基を有するアクリル樹脂にアルミキレートを配合した樹脂のことである。アルミキレート硬化型アクリル樹脂は、キレート結合により、三次元構造が形成されるので、化学的・物理的に強靭な塗膜が得られるという特徴がある。
【0016】
図1は、水温が摂氏40度の温水に製造体を24時間触れさせるという条件で実施した温水実験の結果を図にしたものである。実験の条件は、基材として3mm程度のポリカーボネートを使用し、その上に金属蒸着用UVアンダー塗膜をスプレーで塗布する方法で形成し、更にその上に50nmから100nm程度の金属蒸着膜を形成したものの上に蓄光塗料を塗布する方法で実施するというものである。左から順に、樹脂名、樹脂のタイプ、耐温水性の実験結果が記載されている。そして、耐温水性の欄については、「○」は特に問題ないことを、「△」は若干金属蒸着膜が腐食する、又は、若干金属蒸着膜が白く変色することを、「×」は金属蒸着膜が明らかに腐食する、又は、金属蒸着膜が明らかに白く変色することを意味している。
【0017】
図1のように、アクリル樹脂ならば、水温が摂氏40℃の温水に24時間触れさせておくと、金属蒸着膜が腐食してしまい、さらに金属蒸着膜が白く変色する。他方、アルミキレート硬化型アクリル樹脂ならば、水温が摂氏40℃の温水に24時間触れさせておいても、化学的・物理的に強靭な塗膜が得られており、温水が金属蒸着膜に浸透することを避けられるため、金属蒸着膜が腐食することもなく、かつ、金属蒸着膜が白く変色することもない。そのため、メイン樹脂としては、アクリル樹脂ではなく、温水に長時間耐えられる樹脂であるアルミキレート硬化型アクリル樹脂を選択するのが望ましい。
【0018】
また、メイン樹脂のTgについては、それが高すぎる場合、金属蒸着膜から蓄光層が剥がれやすくなる。他方、メイン樹脂の酸価については、酸価が高すぎる場合、プラスティック表面から蓄光層が剥がれやすくなり、酸価が低すぎる場合、金属蒸着膜から蓄光層が剥がれやすくなる。
このように、プラスティック表面上と金属蒸着膜上との密着性は、メイン樹脂のTgと酸価の影響を大きく受ける。なお、「Tg」とは、非晶質の固体を加熱した場合において、低温では結晶なみに堅く流動性がなかった固体が急速に剛性と粘度が低下し流動性が増す温度のことである。
【0019】
図2は、各樹脂のTg及び酸価と、金属蒸着膜上及びプラスティック表面上に対する密着性の高さと、の関係を図にしたものである。密着性の試験は、日本工業規格の「K5600−5−6」に則って、完成した製造体の蓄光層にセロハンテープの粘着面を張り付けて剥離することで剥離面を比較した。左から順に、樹脂名、Tg、酸価、金属蒸着膜上に対する密着性、プラスティック表面上に対する密着性が記載されている。そして、金属蒸着膜上に対する密着性の欄については、「○」は金属蒸着膜から蓄光層が剥がれないことを、「×」は金属蒸着膜から蓄光層が剥離面100%で剥がれてしまうことを意味する。プラスティック表面上に対する密着性の欄については、「○」はプラスティック表面から蓄光層が剥がれないことを、「△」はプラスティック表面から蓄光層が剥離面100%に至らない程度に剥がれることを意味する。
【0020】
図2のように、メイン樹脂のTgが摂氏94度である場合、金属蒸着膜から蓄光層が剥離面100%で剥がれてしまう。他方、メイン樹脂のTgが摂氏60度である場合、金属蒸着膜から蓄光層が剥がれない。そのため、メイン樹脂のTgについては、摂氏60度程度以下であること、具体的には、65度以下であることが望ましく、更には、摂氏60度以下であることが望ましい。
【0021】
メイン樹脂の酸価が1の場合、金属蒸着膜から蓄光層が剥離面100%で剥がれてしまう。他方、メイン樹脂の酸価が2の場合、金属蒸着膜から蓄光層が剥がれない。
さらに、メイン樹脂の酸価が60の場合、プラスティック表面から蓄光層が剥離面100%に至らない程度に剥がれる。他方、メイン樹脂の酸価が43の場合、プラスティック表面から蓄光層が剥がれない。
そのため、メイン樹脂の酸価については、2以上43程度以下であること、具体的には、2以上50以下であることが望ましく、更には、2以上43以下であることが望ましい。
【0022】
以上より、メイン樹脂は、アルミキレート硬化型アクリル樹脂であって、Tgが摂氏60度以下で酸価が2以上50以下のものが望ましく、更には、Tgが摂氏65度以下で酸価が2以上43以下のものが望ましい。
【0023】
(蓄光材料の選択について)
以上の樹脂との配合に用いる蓄光材料としては、アルミン酸ストロンチウムが望ましい。アルミン酸ストロンチウムであれば特定のものに限定されるわけではなく、例えば、化学組成が主成分Sr4Al14O25で賦活剤Eu,Dyのものを用いても良いし、化学組成が主成分SrAl2O4で賦活剤Eu,Dyのものを用いても良い。
【0024】
前者の蓄光材料ならば、それを塗布することにより形成された蓄光層は青色又は青緑色に発光する。他方、後者の蓄光材料ならば、それを塗布することにより形成された蓄光層は黄色又は黄緑色に発光する。これらの特色を踏まえて蓄光材料を選択すれば良く、例えば、自動車の部品の蓄光塗料としては、環境にやさしい色としてのイメージが浸透している青色に発光する蓄光層を形成できる蓄光材料を選択すれば良い。
【0025】
(蓄光材料の平均粒径について)
蓄光塗料の平均粒径については、塗膜の均一性が保たれ、かつ、作業効率を考えると、スプレーガンが詰まらないものであることが望ましい。
【0026】
蓄光顔料の平均粒径が50μmを超えると、スプレーガンが詰まり、かつ、粒子感が目立つので均一な外観とならない。
【0027】
他方、蓄光顔料の平均粒径が15μm未満になると、塗膜に凝集物が発生し、意匠性を阻害する。
【0028】
これらに対して、蓄光顔料の平均粒径が15μmから50μmの範囲であれば、塗膜の均一性が保たれ、かつ、塗装性においてもスプレーガンが詰まらない。
【0029】
そのため、蓄光顔料の平均粒径は、15μmから50μmの範囲であることが望ましい。
【0030】
(蓄光材料の添加量について)
蓄光材料の添加量については、塗膜の均一性が保たれ、燐光状態が良好であり、かつ、スプレーガンが詰まらないものであることが望ましい。
【0031】
図3は、蓄光材料添加量と、塗膜の均一性、燐光状態、スプレーガンの詰まりとの関係を図にしたものである。上から順に、蓄光材料の添加量、塗膜の均一性、燐光状態、スプレーガンの詰まりが記載されている。そして、塗膜の均一性の欄については、「○」は均一で良好であることを、「△」は若干均一性が劣ることを、「×」は均一性がないことを意味している。燐光状態の欄については、「○」は均一な燐光であることを、「△」は若干燐光ムラがあることを、「×」は燐光ムラが明白であることを意味している。スプレーガンの詰まりの欄については、「○」はスプレーガンが詰まらないことを、「△」は若干スプレーガンが詰まることを、「×」はスプレーガンの詰まりが顕著であることを意味している。
【0032】
図3のように、蓄光材料の全体に占める重量%が40%になると、スプレーガンは詰まらないものの、燐光ムラが生じる。そして、蓄光材料の全体に占める重量%の値を更に下げていくに従って、その燐光ムラが激しくなり、燐光状態はより一層不良になる。さらに、蓄光材料の全体に占める重量%が30%未満になると、燐光状態の悪化に止まらず、塗膜の均一性も損なわれる。
【0033】
他方、蓄光材料の全体に占める重量%が60%になると、燐光状態は良好であるものの、若干スプレーガンが詰まる。そして、蓄光材料の全体に占める重量%の値を更に上げていくに従って、スプレーガンの詰まりは顕著になる。さらに、蓄光材料の全体に占める重量%が70%以上になると、作業効率の悪化に止まらず、塗膜の均一性も損なわれる。
【0034】
これらに対して、蓄光材料の全体に占める重量%が50%であれば、塗膜の均一性が保たれ、燐光状態が良好であり、かつ、スプレーガンが詰まらないものが得られる。
【0035】
以上から、蓄光材料の添加量については、蓄光材料の全体に占める重量%が50%程度、具体的には、45%以上55%以下であることが望ましく、さらには、50%であることが望ましい。
【0036】
(着色顔料について)
明所での着色状態と暗所での燐光状態が共に良好なものを開発するため、着色顔料の濃度については、明所での着色状態と暗所での燐光状態が共に十分なものであることが望ましい。
【0037】
図4は、着色顔料添加量と、着色状態及び燐光状態との関係を図にしたものである。上から順に、着色顔料の添加量、着色状態、燐光状態が記載されている。そして、着色状態の欄については、「○」は十分な着色状態であることを、「△」は若干燐光材料の色目が目立つことを、「×」は明らかに燐光材料の色目が目立つことを意味している。燐光状態の欄については、「○」は鮮やかな燐光であることを、「△」は若干燐光状態が劣るが十分光ることを、「×」は着色により燐光が明らかに阻害されていることを意味している。なお、この実験は、着色顔料を着色染料に変更した場合にも、同様の結果が得られるものである。
【0038】
図4のように、蓄光塗料全体に対する着色顔料の追加量が1重量%になると、燐光状態を阻害することはないものの、明所において、蓄光材料の色目が目立ってしまい、十分な着色が得られない。
【0039】
他方、蓄光塗料全体に対する着色顔料の追加量が10重量%になると、明所での着色状態が十分にはなるものの、燐光を阻害してしまう。
【0040】
これらに対して、蓄光塗料全体に対する着色顔料の追加量が3重量%であれば、少しだけ蓄光顔料の色目が目立つものの、鮮やかな燐光を得られる。他方、5重量%であれば、若干燐光状態が劣るものの十分な着色を得られる。
【0041】
以上から、蓄光塗料全体に対する着色顔料の追加量は、3重量%程度から5重量%程度の範囲であること、具体的には、2.5重量%以上5.5重量%以下であることが望ましく、更には、3重量%以上5重量%以下であることが望ましい。
【0042】
(着色上の工夫)
着色顔料の種類については、多様なものが考えられる。
例えば、特に燐光状態を際立たせたいならば、透明性の高い着色顔料又は着色染料を使用し、あるいは、燐光状態を阻害しない色である寒色系の色の着色顔料又は着色染料を使用すればよい。他方、明所と暗所での色が異なることを製造体の特徴としたいのであれば、燐光状態を阻害しない範囲で暖色系の色の着色顔料又は着色染料を使用すればよい。さらに、パステル調の色彩をもつ製造体にしたいのであれば、蛍光顔料や蛍光染料を使用すればよい。
【0043】
〈塗布方法〉
蓄光材料は、一般的に、硬い物質である。そのため、スプレーガンには、ニードルが摩耗することを防止する処理を施すことが望ましい。具体的には、ニードルの摩耗を防止するため、窒化処理しているスプレーガンを使用することが望ましい。
【0044】
スプレーガンの口径については、スプレーガンが詰まらずに塗装することができ、かつ、微粒化が十分であるものが望ましい。スプレーガンの口径が1.0mmφ未満になると、スプレーガンが詰まる。他方、スプレーガンの口径が1.3mmφを超えると、微粒化が不足する。これらに対して、スプレーガンの口径が1.0mmφ以上1.3mmφ以下であれば、スプレーガンが詰まらず、かつ、微粒化も十分である。そのため、スプレーガンの口径については、1.0mmφ以上1.3mmφ以下であることが望ましい。
【0045】
蓄光材料の沈殿を防止するため、常時撹拌しながら塗布することが望ましい。
【0046】
膨れや寄りを防止するため、蓄光塗膜の形成から塗膜表面が乾燥するまでの5分間以上の間、十分に常温放置することが望ましい。
【0047】
(製造体の製造工程)
主に以上のような構成をとる発明により得られた蓄光塗料は、金属蒸着膜上だけではなく、プラスティック表面上及びシリコーン系重合膜上に対する密着性も高い。そのため、製造体の製造方法にも多様な工程が考え得る。例えば、以下のような製造工程を想定することができる。
【0048】
(プラスティック面、蓄光層からなる製造体)
図5に示すように、プラスティック面を形成した(0501)場合、その面に蓄光塗料を塗布して蓄光層を形成することで(0502)製造体を製造することができる。
【0049】
図6は、図5の工程によって製造された製造体の断面図である。「1」のプラスティック面上に「2」の蓄光層が存在する。
【0050】
この製造体の使用方法としては、多様なものが考えられ、電灯などの光源が存在する場合、光源側に蓄光層がくるように装着することで、光源が発光している間は光源からの光が蓄光層とプラスティックを透けて外気に届くことで光り、他方、光源が発光していない間は蓄光層が放つ燐光で光るという使用方法をしても良い。
【0051】
(プラスティック面、金属蒸着膜、蓄光層からなる製造体)
図7に示すように、形成したプラスティック面(0701)の上に金属蒸着膜を形成した(0702)場合、その面に蓄光塗料を塗布して蓄光層を形成する(0703)ことで製造体を製造することもできる。
【0052】
図8は、図7の工程によって製造された製造体の断面図である。「1」のプラスティック面上に「3」の金属蒸着膜が存在し、その上に「2」の蓄光層が存在する。
【0053】
(プラスティック面、アンダー塗膜、金属蒸着膜、蓄光層からなる製造体)
図9に示すように、形成したプラスティック面(0901)の上にアンダー塗膜を形成し(0902)、更にその上に金属蒸着膜を形成した(0903)場合、その面に蓄光塗料を塗布して蓄光層を形成する(0904)ことで製造体を製造することもできる。
【0054】
図10は、図9の工程によって製造された製造体の断面図である。「1」のプラスティック面上に「4」のアンダー塗膜が存在し、その上に「3」の金属蒸着膜が存在し、更にその上に「2」の蓄光層が存在する。
【0055】
(プラスティック面、金属蒸着膜、シリコーン系重合膜、蓄光層からなる製造体)
図11に示すように、形成したプラスティック面(1101)の上に金属蒸着膜を形成し(1102)、更にその上にシリコーン系重合膜を形成した(1103)場合、その面に蓄光塗料を塗布して蓄光層を形成する(1104)ことで製造体を製造することもできる。
【0056】
図12は、図11の工程によって製造された製造体の断面図である。「1」のプラスティック表面上に「3」の金属蒸着膜が存在し、その上に「5」のシリコーン系重合膜が存在し、更にその上に「2」の蓄光層が存在する。
【0057】
(プラスティック面、アンダー塗膜、金属蒸着膜、シリコーン系重合膜、蓄光層からなる製造体)
図13に示すように、形成したプラスティック面(1301)の上にアンダー塗膜を形成し(1302)、その上に金属蒸着膜を形成し(1303)、更にその上にシリコーン系重合膜を形成した(1304)場合、その面に蓄光塗料を塗布して蓄光層を形成する(1305)ことで製造体を製造することもできる。
【0058】
図14は、図13の工程によって製造された製造体の断面図である。「1」のプラスティック基材上に形成された「4」のアンダー塗膜の上に「3」の金属蒸着膜が存在し、その上に「5」のシリコーン系重合膜が存在し、更にその上に「2」の蓄光層が存在する。
【0059】
また、図15に示すように、プラスティック表面(1501)と、シリコーン系重合膜(1503)と、金属蒸着膜(1502)との1つ又は2つ以上が混在する面の場合、その面に1つの蓄光塗料を一度に塗布して全体に蓄光層を形成することで、製造体を製造することもできる。
【0060】
なお、本発明は、上述の説明の方法のみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0061】
1・・プラスティック面
2・・蓄光層
3・・金属蒸着膜
4・・アンダー塗膜
5・・シリコーン系重合膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15