(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202917
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】雑音指数を最適化したハイブリッド光学増幅器
(51)【国際特許分類】
H01S 3/10 20060101AFI20170914BHJP
H01S 3/30 20060101ALI20170914BHJP
H01S 3/067 20060101ALI20170914BHJP
G02F 1/35 20060101ALI20170914BHJP
H04B 10/2537 20130101ALI20170914BHJP
【FI】
H01S3/10 D
H01S3/30 Z
H01S3/067
G02F1/35 501
H04B10/2537
【請求項の数】18
【外国語出願】
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-150113(P2013-150113)
(22)【出願日】2013年7月19日
(65)【公開番号】特開2014-30016(P2014-30016A)
(43)【公開日】2014年2月13日
【審査請求日】2016年4月18日
(31)【優先権主張番号】13/552,864
(32)【優先日】2012年7月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508156443
【氏名又は名称】フィニサー・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】トメル エリヤフ
(72)【発明者】
【氏名】エヤル サリデ
(72)【発明者】
【氏名】ウリ ヘラ
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド メナシェ
【審査官】
林 祥恵
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第06466362(US,B1)
【文献】
特開2003−124881(JP,A)
【文献】
特開2003−110179(JP,A)
【文献】
特開2007−095961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00−3/30
G02F 1/35
H04B 10/00、10/2537
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変利得ハイブリッド増幅器の雑音指数を最適化する方法であって、
上記可変利得ハイブリッド増幅器は、平均利得GRおよび利得傾斜TRを調整可能な可変利得ラマン増幅器と、平均利得GLおよび利得傾斜TLを調整可能な可変利得集中型増幅器とを備え、当該可変利得ハイブリッド増幅器の平均利得GHを調整可能であり、上記可変利得ラマン増幅器および上記可変利得集中型増幅器のそれぞれは励起ユニットをそれぞれ備え、上記可変利得集中型増幅器は可変光学減衰器VOAを備え、
可変利得ハイブリッド増幅器の平均利得GHの要求値を取得する取得工程と、
GR+GL=GHの関係を満たし、かつ上記可変利得ハイブリッド増幅器の雑音指数が最適化されるGR値、TR値、GL値、およびTL値を算出する工程であって、雑音指数の最適化は雑音指数の最小化である、算出工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
上記TR値およびTL値を、TR+TLが可変利得ハイブリッド増幅器の動作における利得傾斜の設計上の範囲内になるように算出することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記取得工程において、上記可変利得ハイブリッド増幅器の利得傾斜THの要求値を取得し、
上記TR値およびTL値を、TR+TL=THを満たすように算出することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
上記可変利得ラマン増幅器のGRおよびTRを上記算出工程で算出したGR値およびTR値に設定し、上記可変利得集中型増幅器のGLおよびTLを上記算出工程で算出した上記GL値および上記TL値に設定する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
上記算出工程において、GR値、TR値、GL値、およびTL値の組み合わせをルックアップテーブルに基づいて算出することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
上記算出工程において、GR値、TR値、GL値、およびTL値の組み合わせを演算式に基づいて算出することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
上記算出工程において少なくとも一部のGH値に対応して算出されるTL値は、上記可変利得集中型増幅器の公称利得傾斜TL0の値と異なる値であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
上記可変利得集中型増幅器はエルビウム添加ファイバ増幅器であり、上記算出工程で算出されるTL値は上記公称利得傾斜TL0の値よりも大きいことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
上記可変利得集中型増幅器は、平均利得の設計上の最大値がGL0であり、上記可変光学減衰器VOAは減衰値Vを有し、
上記GR値、TR値、GL値、TL値、および減衰値Vを、少なくとも一部のGHに対してV<GL0−GLを満たすように設定することを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項10】
平均利得GRおよび利得傾斜TRを調整可能な可変利得ラマン増幅器と、平均利得GLおよび利得傾斜TLを調整可能な可変利得集中型増幅器とを備え、平均利得GHを調整可能であり、上記可変利得ラマン増幅器および上記可変利得集中型増幅器のそれぞれは励起ユニットをそれぞれ備え、上記可変利得集中型増幅器は可変光学減衰器VOAを備えている、可変利得ハイブリッド増幅器であって、
当該可変利得ハイブリッド増幅器の雑音指数を最適化するようにGR値、TR値、GL値、およびTL値を設定し、雑音指数の最適化は雑音指数の最小化である、制御ユニットを備えていることを特徴とする可変利得ハイブリッド増幅器。
【請求項11】
上記制御ユニットは、
上記平均利得GHの要求値を取得する手段と、
平均利得GHが上記要求値を満たし、かつ上記可変利得ハイブリッド増幅器の雑音指数が最適化されるGR値、TR値、GL値、およびTL値を算出するロジックモジュールとを備えていることを特徴とする請求項10に記載の可変利得ハイブリッド増幅器。
【請求項12】
上記TR値およびTL値を、TR+TLが可変利得ハイブリッド増幅器の動作における利得傾斜の設計上の範囲内になるように算出することを特徴とする請求項11に記載の可変利得ハイブリッド増幅器。
【請求項13】
上記ロジックモジュールは、ルックアップテーブルを備えていることを特徴とする請求項11に記載の可変利得ハイブリッド増幅器。
【請求項14】
上記ロジックモジュールは、演算式を用いてGR値、TR値、GL値、およびTL値を算出することを特徴とする請求項11に記載の可変利得ハイブリッド増幅器。
【請求項15】
上記可変利得ハイブリッド増幅器は、利得傾斜THを調整可能であり、
上記制御ユニットは、
平均利得GHおよび利得傾斜THの要求値を取得する手段と、
GH値およびTH値が上記要求値を満足し、かつ当該可変利得ハイブリッド増幅器の雑音指数が最適化されるように、上記GH値および上記TH値に基づいてGR値、TR値、GL値、およびTL値を算出するロジックモジュールとを備えていることを特徴とする請求項10に記載の可変利得ハイブリッド増幅器。
【請求項16】
上記可変利得集中型増幅器は、平均利得の設計上の最大値がGL0であり、上記可変光学減衰器VOAは減衰値Vを有し、
少なくとも一部のGHに対してV<GL0−GLを満たす値を取得することを特徴とする請求項10に記載の可変利得ハイブリッド増幅器。
【請求項17】
上記可変利得集中型増幅器は、少なくとも一部のGH値に対応して算出されるTL値が、当該可変利得集中型増幅器の公称利得傾斜TL0の値と異なる値であることを特徴とする請求項10に記載の可変利得ハイブリッド増幅器。
【請求項18】
上記可変利得集中型増幅器はエルビウム添加光ファイバ増幅器(EDFA)であり、少なくとも一部のGH値に対応する当該可変利得集中型増幅器のTL値が上記公称利得傾斜TL0の値よりも大きいことを特徴とする請求項17に記載の可変利得ハイブリッド増幅器。
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本明細書で開示する実施例は、光ファイバ遠距離通信システムに用いられる光ファイバ増幅器に関するものであり、より具体的には、ラマン−集中型ハイブリッド増幅器(hybrid Raman-lumped amplifiers)に関するものである。
〔背景技術〕
近年の光学通信システムでは、当該システムを介して伝送される波長分割多重(WDM;wavelength division multiplexed)信号チャネルを増幅するために光学増幅器が用いられている。これらの増幅器は、当該システムに含まれる様々な伝送ファイバの経路中や、システムの送信側および受信側に備えられる。
【0002】
光学増幅器は、当該増幅器の利得、および当該増幅器からシステムに伝達される雑音の量を示す雑音指数(NF;noise figure)などによって特徴付けられる。WDMシステムでは、WDM信号チャネルが単一の信号波長帯域を占める場合に、光学増幅器もまた当該帯域内における利得とNFのスペクトル依存関係によって特徴付けられる。これらの主な量は、(1)上記波長帯域にわたって利得を平均化した平均利得、(2)上記波長帯域にわたるスぺクトル利得曲線に近似直線によって定義され、上記波長帯域の長波長側の端部の長波長(所謂「赤」)の近似直線と、上記波長帯域の短波長側の端部の短波長(所謂「青」)の近似直線との利得差により算出される利得傾斜、および(3)上記波長帯域におけるNFの最大値である最大NFに関連する。特に言及しない限り、本明細書における「NF」という用語は、最大NFを意味する。また、特に言及しない限り、利得、利得傾斜、減衰(attenuation)、およびNFの単位はデシベル(dB)である。
【0003】
多くの場合、光学増幅器は可変利得機能を有することが有益である。これは、上記増幅器の平均利得を特定の範囲内の任意の値に動的に設定でき、かつ利得傾斜を平均利得の設定にかかわらず要求された仕様の範囲内に維持できるためである。この可変利得機能により、同じタイプの増幅器を異なるシステム、あるいは同一のシステム内における異なる平均利得レベルが要求される異なる位置に適用することができる。なお、利得傾斜を平均利得にかかわらず所定の範囲内の値に動的に設定できるようにすることが好ましい場合もある。
【0004】
光学増幅器の1形態として、入力ポートおよび出力ポートをユニット内に備え、増幅処理を全て当該ユニット内で実行する集中型増幅器(lumped amplifier)がある。最も一般的な集中型光学増幅器の例は、少なくとも1本のEDF(Erbium doped fiber、エルビウム添加ファイバ)と、少なくとも1つの励起レーザダイオードとを有するEDFA(Erbium doped fiber amplifier、エルビウム添加光ファイバ増幅器)である。上記EDFは、上記励起レーザダイオードから上記増幅器を通る光学信号チャネルにエネルギを伝送する利得媒体として機能し、それによって信号増幅器が提供される。集中型増幅器は、VOA(variable optical attenuator、可変光減衰器)を備えていてもよい。上記VOAを制御することにより平均利得の調整を行えるようにすることで、可変利得機能を実現できる。一般に、増加したVOAを減衰させると平均利得が減少する。最も実用的な例では、増幅器の効率を向上させるために、上記VOAは、上記増幅器の出力段ではなく上記増幅器内の2つの利得段の間に配置される。VOA減衰量が増すと、信号チャネルに与えられる余分な損失により、上記増幅器のNFが増加する。したがって、上記増幅器NFは平均利得が減少すると増加する。多くの場合、上記利得傾斜と上記平均利得とは、VOA減衰と増幅器を励起するための励起出力とを連動して制御することにより互いに独立して調整可能である。例えば、Cバンド(C−Band)用に設計された可変利得EDFAでは、平均利得を一定に保つために励起出力を調整している期間中にVOA減衰量を増加させると、利得傾斜が減少する(よりマイナス側に振れる)。反対に、一定の平均利得を維持するために励起出力を調整している期間中にVOA減衰量を減少させると、利得傾斜は増加する(よりプラス側に振れる)。
【0005】
近年、新たなタイプの増幅器、すなわち分布型ラマン増幅器(本明細書では簡単のために「ラマン増幅器」あるいは「RA」を称する)が光通信システムにおいて用いられるようになってきた。分布型増幅器と集中型増幅器との主な違いは、集中型増幅器では伝送ファイバ自体が利得媒体として機能し、伝送ファイバを通って移動する間に信号チャネルが増幅される点である。したがって、ラマン増幅器は、それ自体が、実際の増幅工程が伝送ファイバに沿って分布した態様で生じている間にラマン励起出力を供給し、制御する機能を有している。分布型の増幅器は、等価な集中型増幅器(すなわちEDFA等)を用いる場合に比べて、システムの光信号対雑音比(OSNR)を改善できるという特性を有している。このことは、ラマン増幅器は典型的には等価な集中型増幅器よりも低NFであるという事実に反映されている。一般に、ラマン増幅器によって提供される平均利得が高いほど、当該ラマン増幅器のNFは低い。
【0006】
ラマン増幅器の平均利得は、伝送ファイバに注入されるラマン励起出力の量を制御することによって調整することができる。さらに、ラマン増幅器が、波長の異なる少なくとも2つの励起部と、それら各励起部によって放出される出力を個別に制御する手段とを有している場合、利得のスペクトル形状もある程度制御することができる。したがって、可変利得機能を実現でき、利得傾斜についても平均利得と独立して調整することができる。ラマン増幅器が、平均利得制御部と利得傾斜制御部とを含むことはよく知られている。
【0007】
ラマン増幅器は典型的には等価な集中型増幅器よりも低NFであるという特性を有しているが、主に、高い利得を得るためには伝送ファイバに高レベルのラマン励起出力を注入する必要があるという理由のために、ラマン増幅器では一般に当該ラマン増幅器の利得の量は制限される。これにより、システムのコストが増加するとともに、潜在的な危険に晒される機会および伝送ファイバ内を非常に高レベルの励起出力が伝播することに関連して損傷を受ける機会が増加する。さらに、ラマン利得の非常に高い値は高レベルの二重レイリー後方散乱(double Rayleigh backscattering)に関連し、システム特性に有害な影響を及ぼす。
【0008】
この問題を解消するために、ラマン増幅器はEDFA等の集中型増幅器と共に用いられる。これは、ラマン−集中型ハイブリッド増幅器(hybrid Raman-lumped amplifier)と呼ばれる(本明細書では簡略化して「ハイブリッド増幅器」あるいは「HA」と称する場合もある。)この構成では、ラマン増幅器が前置増幅器として用いられ、集中型増幅器が電力増幅用増幅器(ブースタ増幅器)として用いられる。増幅器のトータルNFは通常は前置増幅器のNFに支配されるので、ラマン増幅器の低NFによってHAの利点が得られる。また、集中型増幅器の電力増幅によってラマン増幅器では得られない余剰の利得を得ることができるので、ハイブリッド増幅器に要求される高いトータル利得を得ることができる。
【0009】
上述したように、ラマン増幅器の利得の制御により、HAの可変利得機能をある程度実現できる。しかしながら、HAのラマン増幅器部分によって与えられるトータル利得は通常は限られており、ラマン増幅器を非常に低い利得で制御することは困難な場合が多いので、この方法によって実現可能なトータルの動的利得は制限される。このため、ハイブリッド増幅器における集中型増幅器部分が十分な可変利得機能を有していることが好ましく、それによってHA全体の可変利得機能を改善することができる。その場合、HA全体のNFを最小化しつつ、HAのトータル利得をラマン増幅器と集中型増幅器との間でどのように配分するかが問題になる。公知の方法の1つに、HAの異なるトータル利得の値に対応するラマン増幅器の利得の関数としてHAのNFのデータベースを記憶させておくことにより上記の問題の解決を図っているものがある。これにより、要求されるHAのトータル利得を得るために、最小NFが得られるラマン増幅器の利得が検出され、設定される。その後、HAのトータル利得の要求値を達成するために必要な残りの利得が得られるように集中型増幅器の平均利得が設定される。しかしながら、この方法では、WDMシステムにおける利得のスペクトル依存性が考慮されていないので、ラマン増幅器および集中型増幅器の利得傾斜(平均利得とは異なる)の制御によって得られる付加的な自由度が考慮されていない。
【0010】
他の方法として、HAのNFを最適化するためにラマン増幅器の利得のスペクトル形状の最適化を行う方法がある。この方法では、集中型増幅器のNFが最大になり、その結果HAのトータルNFが減少するスペクトル領域において、より高いラマン増幅器の利得を提供することによって最適化が図られる。しかしながら、HAのトータル利得が一定であると仮定すると、可変利得HAの場合のNFの最適化は全く考慮されない。
【0011】
このため、ラマン増幅器および集中型増幅器の両方の平均利得および利得傾斜を互いに独立して制御することのできる可変利得ハイブリッド増幅器、および可変利得ハイブリッド増幅器におけるNFの最適化方法が求められている。
〔発明の概要〕
本明細書における以下の説明では、平均利得を符号「G」、利得傾斜を符号「T」で表し、これらの符号にラマン型を示す「R」、集中型を示す「L」、ハイブリッドを示す「H」の添字を付けて「G
R」,「T
R」,「G
L」,「T
L」,「G
H」,「T
H」として表す。これらの符号はパラメータを表現するために用いられる。これらのパラメータの値を示す場合には、例えば「T
R値」、「G
R値」、「G
L値」、「T
L値」、「G
H値」、「T
H値」というように、上記の符号の後に「値」を付けて表現する。
【0012】
本発明の一態様では、平均利得G
Rおよび利得傾斜T
Rを調整可能な可変利得ラマン増幅器部(あるいはユニット)と平均利得G
Lおよび利得傾斜T
Lを調整可能な可変利得集中型増幅器部とを有する可変利得ハイブリッド増幅器の雑音指数を最適化する方法、および上記方法を実行するハイブリッド増幅器を提供する。以下の説明では、簡単のために、「ラマン増幅器部」あるいは「集中型増幅器部」という表現に代えて、「ラマン増幅器」および「集中型増幅器」という表現を用いる。本発明の一態様では、上記方法は、ハイブリッド増幅器に要求される平均利得G
Hおよび利得傾斜T
Hを取得する工程と、ハイブリッド増幅器のNFを最適化するとともに少なくとも与えられた条件を満たすようにG
R値,T
R値,G
L値,T
L値を設定する工程とを含む。本発明の一態様における条件の1つはG
R+G
L=G
Hを満たすことである。他の態様における条件の1つは、G
R+G
L=G
H、かつ、T
RとT
Lとの合計(T
R+T
L)がハイブリッド増幅器の動作の傾斜範囲内であることである。さらに他の態様における条件の1つは、G
R+G
L=G
H、かつ、T
R+T
L=T
Hを満たすことである。
【0013】
本発明の一態様では、平均利得G
Rおよび利得傾斜T
Rを調整可能な可変利得ラマン型増幅器と、平均利得G
Lおよび利得傾斜T
Lを調整可能な可変利得集中型増幅器とを備えた、平均利得G
Hを有する可変利得ハイブリッド増幅器であって、G
R値,T
R値,G
L値,およびT
L値を、当該ハイブリッド増幅器の雑音指数を最適化するようにそれぞれ個別に設定する制御ユニットを備えた可変利得ハイブリッド増幅器を提供する。
〔図面の簡単な説明〕
本明細書で開示する実施形態(本発明を制限するものではない)については、本明細書に添付する図面(図面リストを本欄内に示している)を参照しながら後述する。1または複数の図面において共通する構造、部材、あるいは部分については、基本的に、当該各図において同じ符号を付して説明する。図面およびその説明は、本明細書に開示する実施形態の説明および明確化のためのものであり、本発明を制限するものではない。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態にかかるハイブリッド増幅器(HA)の概略図である。
【0015】
図1aは、
図1に示した制御ユニットの概略図である。
【0016】
図2は、
図1に示したHAの制御ユニットの動作を示すフローチャートである。
【0017】
図3は、本発明の他の実施形態にかかるハイブリッド増幅器の概略図である。
【0018】
図4は、本発明のさらに他の実施形態にかかるハイブリッド増幅器の概略図である。
【0019】
図5は、EDFA NFのEDFA平均利得に対する依存性を、互いに異なる複数のEDFA利得傾斜の値について示したグラフである。
【0020】
図6は、T
RおよびT
Lが交渉値で一定であると仮定した場合の、HA NFを最適化するG
RのG
Hに対する依存性を示すグラフである。
【0021】
図7は、(a)TRおよびTLを交渉値で一定に保った場合、および(b)TRおよびTLの変化を許容した場合の、HA NFの最適値の、HAの平均利得に対する依存性を示すグラフである。
【0022】
図8aは、HA NFを最適化するG
RおよびG
LのG
Hに対する依存性を示すグラフである。
【0023】
図8bは、HA NFを最適化するT
RおよびT
LのG
Hに対する依存性を示すグラフである。
【0024】
図9は、G
HおよびT
Hの各値についてHA NFを最適化するようにGR,TR,GL,TLを設定する処理の一例を示す図である。
〔詳細な説明〕
図1は、本発明の一実施形態にかかる可変利得ハイブリッド増幅器100の概略図である。ハイブリッド増幅器100は、ファイバ伝送路102に接続されており、信号チャネル104を増幅するように設計されている。ハイブリッド増幅器100は、可変利得ラマン増幅器(RA)120、および可変利得集中型増幅器(LA)140の2つの増幅器を備えている。これら各増幅器は、平均利得および利得傾斜を調整する機能を有している。ラマン増幅器120は、励起出力106を後方励起構造でファイバ伝送路102に注入することにより、当該ファイバ伝送路を通って伝播するWDM信号チャネル104を増幅する。その後、WDM信号チャネル104は、HA100に入力され、LA140によって増幅される。ハイブリッド増幅器100の動作は、「改良型」制御ユニット160によって制御される。
【0025】
図1aは改良型制御ユニット160の詳細を示す概略図であり、
図2はその動作を示すフローチャートである。制御ユニット160は、G
H値およびT
H値の要求値を取得する要求値取得部162と、HAの雑音指数(NF)の最適化、および要求されたG
H値を実現するためのG
L値,T
L値,G
H値,T
H値を算出するように構成されたロジック部(ロジックモジュール)164とを備えている。本明細書において、「最適化された」とは、NFが、与えられた動作条件(例えば与えられたG
Hおよび/またはT
H)において実現可能な最小値になること、あるいは増幅器の設計上および使用上の最小値に十分に近くなることを意味している。
【0026】
他の実施形態として、要求値取得部162が要求されるG
H値およびT
H値を取得し、ロジック部164がハイブリッド増幅器の雑音指数の最適化、および要求されたG
H値とT
H値とを実現するためのG
L値,T
L値,G
H値,T
H値を算出するように構成されていてもよい。このように、「改良型」は、HAのNFを最適化する方法でHA増幅器部の平均利得および利得傾斜の両方を制御するための制御ユニットの機能に関連する。
【0027】
なお、上記ハイブリッド増幅器は、単一の集積ユニットであってもよい。また、上記ハイブリッド増幅器は、ラマン増幅器と集中型増幅器とが物理的に分離されており、同じく物理的に分離された改良型制御ユニット160と通信を行う構成であってもよい。また、制御ユニット160はシステムの管理モジュール内に集積されていてもよい。また、上記ハイブリッド増幅器は、ラマン増幅器と集中型増幅器とを有する集積ユニットを備え、物理的に分離された改良型制御ユニット160(例えばシステムの管理モジュール内に集積された改良型制御ユニット160)と通信を行う構成であってもよい。
【0028】
図2に示すように、制御ユニット160は、ハイブリッド増幅器に対するG
H値およびT
H値の要求値の入力を受け付ける(ステップ202)。このステップは、例えばHAの起動時(電源投入時)に行うようにしてもよく、外的要因等に起因するG
Hおよび/またはT
Hの変化に応じてHAの動作期間中に行うようにしてもよい。ステップ202の処理がHAの起動時に生じる場合、制御ユニット160に備えられる記憶部から以前に設定されたG
H値およびT
H値を読み出して用いるようにしてもよい。ステップ202が動作期間中に外部からの操作によって生じた場合、G
H値およびT
H値を当該ハイブリッド増幅器が集積されているシステムの管理ユニットから受け取るようにしてもよい。
【0029】
また、増幅器を所定の利得傾斜の範囲内で動作するように設計および設定しておき、
入力としてG
Hのみを受け取るようにしてもよい。この構成は、利得傾斜の範囲を明確に定義することにより実現できる(例えば、利得傾斜を−1dBから+1dBの範囲内に規定するなど)。あるいは、上記構成は、スペクトル利得平坦度を指定することによっても実現できる(例えば、増幅器のスペクトル利得平坦度を最大値と最小値との差が2dB以下になるように指定するなど)。
【0030】
ステップ204では、制御ユニットは、G
R値
、T
R値、G
L値、およびT
L値を算出する。具体的には、HAのNFを与えられたG
HおよびT
Hについて最適化し、かつG
R+G
L=G
HおよびT
R+T
L=T
Hを満たすようにG
R値
、T
R値、G
L値、およびT
L値を算出する。上記の2つの等式は、必ずしも厳密に左辺と右辺が同値である必要はなく、ハイブリッド増幅器の仕様上の精度に応じた範囲内であればよい。例えば、上記増幅器の仕様上の精度が0.5dBである場合、G
H−0.5dB<G
R+G
L<G
H+0.5dBであればよい。S202において入力としてG
Hのみを受け取る場合、T
R+T
L=T
Hを満たすという条件に代えて、T
R+T
Lを所定の利得傾斜の範囲内になるように設定するか、あるいは、T
R+T
Lをスペクトル利得平坦度が所定範囲内になるように設定すればよい。
【0031】
例えば、G
R値
、T
R値、G
L値、およびT
L値を制御ユニット160の記憶部(図示せず)内のルックアップテーブル(LUT)に記憶させておき、G
H値およびT
H値が与えられたときに、制御ユニットが上記ルックアップテーブルから対応するG
R値
、T
R値、G
L値、およびT
L値を読み出すようにしてもよい。上記LUTに対応するG
H値およびT
H値が格納されていない場合、公知の外挿法や内挿法(補間法)などを用いてG
R値
、T
R値、G
L値、およびT
L値を算出するようにしてもよい。あるいは、R
H値およびT
H値とG
R値
、T
R値、G
L値、およびT
L値とを関連付けた所定の関数に基づいてG
R値
、T
R値、G
L値、およびT
L値を算出するようにしてもよい。あるいは、G
R、T
R、G
L、およびT
Lのうちの一部の値をLUTに基づいて算出し、残りの値を関数に基づいて算出するようにしてもよい。例えば、G
R値およびT
R値についてはLUTに基づいて算出し、G
L値およびT
L値についてはG
R+G
L=G
HおよびT
R+T
L=T
Hに基づいて算出するようにしてもよい。
【0032】
ステップ206では、制御ユニットがG
RおよびT
Rをステップ204で算出したG
R値およびT
R値に設定する。このステップを実行するために、例えば、制御ユニット160がラマン増幅器120にG
RおよびT
Rの値を伝達して実際の設定を行うようにしてもよい。
【0033】
ステップ208では、制御ユニットがG
LおよびT
Lをステップ204で算出したG
L値およびT
L値に設定する。このステップを実行するために、例えば、制御ユニット160が集中型増幅器140にG
LおよびT
Lの値を伝達して実際の設定を行うようにしてもよい。
【0034】
図3は、本発明の他の実施形態にかかるハイブリッド増幅器300の概略図である。この実施形態では、HA300は、ラマン増幅器320と、集中型増幅器340と、改良型制御ユニット160とを備えている。RA320は、励起出力106を供給する励起ユニット324と、信号チャネル104に入力される励起出力106を多重化するWDM326と、励起ユニット324の動作の制御および制御ユニット160との通信を行うラマン制御ユニット322とを備えている。ラマン制御ユニット322は、HA制御ユニット160からRA320のG
R値およびT
R値を受け取り(上述したステップ206)、それに従って励起ユニット324の励起出力を設定する。
【0035】
ラマン増幅器320においてG
RおよびT
Rをそれぞれ独立して調整可能にするために、励起ユニット324は少なくとも2つの波長λの異なる励起部を備えている。これら各励起部の励起レベルを個別に設定することにより、ラマン制御ユニット32はG
RおよびT
Rを個別に調整できる。例えば、所謂Cバンド(典型的には1528−1567nm、あるいはその一部)のWDM信号チャネルのために設計されたラマン増幅器は、励起ユニット324内に励起波長が1425nm付近である少なくとも1つの励起部と励起波長が1455nm付近である少なくとも1つの励起部とを備えている。RA320の平均利得G
Rは、励起ユニット324によって生成されるトータル励起出力Pの増加に応じて増加する。同様に、RA320のG
Rは、トータル励起出力Pの減少に応じて減少する。ラマン増幅器の利得傾斜T
Rは、1455nm付近の励起出力と1425nm付近の励起出力との比の増加に応じて増加し、上記比の減少に応じて減少する。
【0036】
ラマン増幅器320が、例えば米国出願公開公報US2011/0141552明細書に開示されているように、平均利得および/または利得傾斜を測定するための装置(図示せず)を備えていてもよい。これらの装置を備えることにより、例えば、フィードバック制御を行ってラマン増幅器の自動利得制御(AGC;automatic gain control)を実現することができる。これにより、制御ユニット322が上記装置から実際に測定された平均利得および/または利得傾斜を取得し、励起ユニット324の励起出力を要求された平均利得および利得傾斜を達成するまで調整することができる。
【0037】
ラマン増幅器320が、WDM信号チャネルの周波数帯域内の利得スペクトルの形状を一定にするように機能する利得平坦化フィルタ(GFF;gain flattening filter)を備えていてもよい。例えば、上記GFFは、指定された平均利得および利得傾斜について、波長域内の直線からの利得のスペクトル形状の最大偏差が所定値未満にする(利得平坦化と呼ばれる)ように設計されたものであってもよい。
【0038】
集中型増幅器340は、集中型増幅器制御ユニット342と、励起ユニット344と、WDM326に光学的に接続された、信号チャネル104を増幅するように設計されている可変利得段346とを備えている。可変利得段346は、励起ユニット344から励起出力を受け取る少なくとも1つの活性利得媒質(図示せず)を備え、上記活性利得媒質の種類に応じた形態を有している。例えば、上記活性利得媒質が不純物を注入(ドープ)されたファイバである場合、励起ユニット344は、上記ファイバを励起するための適切な波長の光学励起出力を上記ファイバに出力するように構成され、可変利得段346は光学励起出力を上記ファイバに接続するための手段をさらに備えている。また、活性利得媒質が半導体である場合、励起ユニット344は駆動電流の形態で電気励起出力を供給する。可変利得段346によって供給される平均利得は、励起ユニット344によって供給される励起出力によって制御できる。典型的には、励起出力が増加すると平均利得が増加し、励起出力が減少すると平均利得が減少する。しかしながら、多くの場合、信号チャネルの波長域における利得(および利得傾斜)のスペクトル形状は平均利得によって決まり、単に励起出力を調整するだけでは独立的に制御することができない。
【0039】
可変利得段346が、G
LおよびT
Lの両方を互いに独立して制御することのできる可変光学減衰器(VOA;variable optical attenuator)348を備えていてもよい。以下の説明では、「VOA減衰器」という用語、およびVOAを特徴付ける固定の最小減衰値以上のVOAの減衰を示す「V」という記号を用いる。例えば、Vが0dBである場合、励起ユニット344は、G
Lが集中型増幅器340の設計上の最大平均利得G
L0と等しくなるように設定する。なお、G
Lは、VOA348の固定された最小減衰値などの可変利得段346の全ての受動損失Lを含むように定義されている。このことは、上記活性媒質が平均利得G
L0+Lを供給することを意味する。以下の説明では、この条件下(すなわち、V=0dB、最大平均利得)で得られる利得傾斜を「公称利得傾斜」と称し、T
L0で表す。VをV
1dBに設定し、励起ユニット344が最終的な平均利得G
L=G
L0−V
1を維持するように調整される場合、上記活性媒質はまだ平均利得G
L0+Lを供給する。その結果、T
L(上記活性利得媒質の平均利得によって決定される)はほぼ変化せず、G
Lが変化したとしても公称利得傾斜と等しくなる(すなわち、T
L=T
L0)。反対に、VをV
1dBに設定し、励起ユニット344がG
L=G
L0−V−ΔGを達成するように調整される場合、上記活性媒質は平均利得G
L0+L−ΔGを供給し、T
Lが変化する(すなわち、T
L=T
L0ではなくなる)。励起ユニット344とVOA348とを連動して制御することにより、G
LとT
Lとを独立して制御することができる。集中型増幅器制御ユニット342は、HA制御ユニット160から集中型増幅器に要求される平均利得値および利得傾斜値を受け取り、励起ユニット344およびVOA348の減衰器をそれぞれ設定する。
【0040】
上述したように、Vが減少すると、集中型増幅器340のNFも減少する。したがって、Vが減少することによって公称利得傾斜T
L0からT
Lが変化しても、NFに関しては有益である。例えば、平均利得G
L=G
L0−G
1が要求されている場合を考える。この場合、上記要求は、V=G
1dBに設定することにより達成できる。この場合、結果として得られるT
LはT
L0にほぼ等しくなる。一方、V<G
1に設定し、励起ユニット344によって供給される励起出力を減少させることにより(V=G
1の場合に比べて減少させることにより)、同様のG
L値を得ることができる。この場合、結果としてられるT
LはT
L0とは異なる。しかしながら、Vの値が減少することによりNFは改善される。
【0041】
可変利得段346が、WDM信号チャネルの周波数範囲内で所定の利得スペクトル形状が得られるように動作するGFF(図示せず)を備えていてもよい。例えば、上記GFFは、最大平均利得G
L0および公称利得傾斜T
L0について、上記波長域内の近似直線からの利得のスペクトル形状の最大偏差が所定値(利得平坦度とも呼ばれる)以下になるように設計される。
【0042】
集中型増幅器340は、追加の利得段(図示せず)および/または追加の光学手段を接続するための分散補償ファイバなどの中間段を備えていてもよい。例えば、可変利得段346は、中間段の接続部および中間段で生じる損失を補償する追加のブースタ利得段の後段に備えられてもよい。
【0043】
上述した
図1および
図2に示したように、制御ユニット160は、HA300全体のNFを最適化するとともにHA300のG
HおよびT
Hの要求値を実現するために、RA320のG
R値およびT
R値、並びにLA340のG
L値およびT
L値を決定する。G
Lの要求値を維持しながらLA340のNFを減少させる上記の能力は、HA300全体のNFを最小化するのに役立つ。例えば、LA340のT
LがT
L=T
L0に固定されている場合を考える。この場合、制御ユニット160は、G
RおよびG
LがG
R+G
L=G
Hを満たし、かつHA300全体のNFを最適化するように設定し、T
R=T
H−T
L0に設定する。TLが可変である場合、LA340は、(VOA348の減衰量を減少させることにより)NFを改善するために、T
L≠T
L0に設定し、上述した場合(T
L=T
L0の場合)と同様にG
Lを維持するように設定する。その後、T
RをT
H−T
Lに設定し、HA300全体のNFをLA340のNF(LA340のNFの大きさであり、T
Rの変化によるラマン増幅器320のNFの変化に完全に依存する)の低減により改善する。
【0044】
図4は、本発明の他の実施形態にかかるハイブリッド増幅器400の概略図である。この実施形態では、HA400は、RA320、EDFA形式の集中型増幅器440、および制御ユニット160を備えている。EDFA440は、可変利得段446、励起ユニット344、集中型増幅器制御ユニット342、および出力分割部458を備えている。可変利得段446は、2つのエルビウム添加型ファイバ(EDF)利得段452,456を備え、VOA348はこれら両利得段452,456の間に配置されている。励起ユニット344によって供給される励起出力(典型的には980nm付近)は、励起分割部458によって2つに分割され、それぞれWDM450,454を介してEDF利得段452,456に接続される。なお、図面および明細書に示したEDFA440の具体的な構成は単なる例示にすぎない。他の形態のEDFA440も利用可能である。例えば、1480nmの励起出力を用いるものであってもよい。中間段接続部を有するEDFあるいはVOAを追加で備え、励起を後段側で行うようにしてもよい。
【0045】
HA400の動作の基本的な原理はHA300と同様である。
図5〜
図7は、HA400のより具体的な動作を示している。HA400は、19〜36dBの範囲における平均利得がCバンドになるように設計されている。ラマン増幅器320は、励起ユニット324が最大出力で動作するときに、平均利得が14dB、利得傾斜が0dBになるように設計されている。EDFA440は、平均利得9〜25dB、公称利得傾斜T
L0=−1dB(上述したように、公称利得傾斜は最大平均利得での利得傾斜であり、平均利得が25dBであるときにVOAの減衰量が0になる)で動作するように設計されている。EDFA440およびラマン増幅器320の利得傾斜は、いくつかの制限はあるものの、それぞれの平均利得と無関係に制御できる。例えば、ラマン増幅器が14dBのG
Rで動作する場合、励起ユニット324からの利用可能な励起出力の制限により、0dB付近で利得傾斜のみを制御できる。なお、
図5〜7にはHA400の上記の特別な設計に適用する場合の例を示したが、同様の原理は他の設計にも適用可能である。
【0046】
図5は、EDFA440のNFをG
Lの関数としてプロットしたグラフである。なお、
図5では、互いに異なるT
Lの値についての3つの例を示している。1つのプロット例は公称利得傾斜(T
L=T
L0)に対応しており、残りの2つのプロット例は利得傾斜(T
L0+2dB)および(T
L0+4dB)に対応している。図示したように、VOAの減衰量Vの増加により、全て全ての場合においてG
Lが減少するとNFが増加する。しかしながら、T
Lが大きいほど(より正の側に大きいほど)、より好ましいNFが得られる。T
L=T
L0を維持したままG
Lを25dBから25−XdBに減少させるためには、VはXdBに設定される。T
Lを増加させたい場合(すなわち、より正側に増加させたい場合)、励起ユニット344からの励起出力を減少させる必要がある。これは、Cバンドの長波長側の端部(赤)に比べて、Cバンドの短波長側の端部(青)の方が放射計数が高いという典型的なEDFの利得スペクトルの形状に起因する。しかしながら、励起出力を減少させると、G
Lも減少する。G
Lを25−XdBにリセットするために、VをXdBよりも低い値に設定する必要がある。このため、GLを維持している期間中にT
Lが増加してVが減少している。その結果、利得傾斜が増加してNFが改善される。
【0047】
図6は、与えられたG
Hの値にかかわらずNFの最適化を実現するために必要なラマン増幅器320のG
Rの値を示すグラフである。T
Lが公称利得傾斜で一定で変化しないと仮定する。
図6に示したように、G
H≧28dBの場合、G
Rは最大値である14dBで一定である。G
H<28dBの場合、G
RはG
Hの関数として単調減少する。この結果は、以下のように理解できる。すなわち、HA400のNFであるNF
Hは、前置増幅器として機能するラマン増幅器32
0のNFであるNF
Rに主に依存し
、ブースタ増幅器として機能するEDFA446のNFであるNF
Lへの依存度はNFRへの依存度よりもはるかに小さい。このため、多くの場合、NF
Rを減少させてNF
Hを減少させるためには、G
Rを最大値に増加させることが好ましい。しかしながら、G
L=G
H−G
Rなので、G
Rが最大値で一定であると仮定すると、G
Hが減少すればG
Lも減少する。これにより、
図5に示したように、NF
Lが増加する。G
H=28dB(G
R=14dBとした場合G
L=14dBに相当)では、T
L=T
L0に対応するNF
Lが10dBであることがわかる。これは、EDFA446がブースタ増幅器であるとしても、NF
Hの支配的な係数として十分な大きさである。このため、G
H<28dBの場合
、NFHに関しては、GLがさらに減少してそれによってNFLがさらに増加することを防止するためにG
Rを減少さ
せることが好ましい。
【0048】
図7は、(a)T
Lが公称利得傾斜で一定である場合、および(b)T
Lが公称利得傾斜から変化する場合の、HAの平均利得に対するHAのNFの変化を示すグラフである。
図7の実線は
図6の状態(EDFA446の利得傾斜T
Lがその公称利得傾斜で一定であると仮定した場合)に対応するHA400のNFの最適化値をG
Hの関数として示したものである。一方、
図7の破線は、T
Lがその公称利得傾斜から変化可能であり、HA400のトータル利得傾斜T
H=T
R+T
Lが一定である場合のHAのNFの最適化値をG
Hの関数として示したものである。T
LはEDFA446によってサポートされる利得傾斜の範囲である−1dBから+3dBの範囲内で変化可能である。T
RはG
R+|T
R|≦14dBの制限を満たす任意の値を取る。上記の制限は、励起ユニット324から出力可能な励起出力の制限に起因する。
【0049】
T
Lが公称利得傾斜から可変である場合のNFの最小値は、T
Lが公称利得傾斜で一定である場合よりも常に小さく、G
H=20dBの場合に両者の差は約1.5dBになる。この結果について、
図8aおよび
図8bを参照しながら説明する。
図8aは、NFの最適値に対応するG
LおよびG
RのG
Hに対する関数を示すグラフである。
図8bは、NFの最適値に対応するT
LおよびT
RのG
Hに対する関数を示すグラフである。G
H>31dBの場合、NF
Hに対するNF
Lの影響は無視できる程度なので、T
Lはその公称利得傾斜のままである。しかしながら、G
Lが減少するほど(上述したように、G
Rをできるだけ高く保つことが好ましいので)、NF
Lはより大きくなってより支配的になる。このため、
図5に示したように、NF
Lの減少の利益を得るためにはT
Lを増加させることが好ましい。T
Lは、EDFA446にサポートされ、最大値(+3dB)に達するまで増加し続ける。要するに、G
Hが減少してT
Lが増加することにより、T
Lをその公称利得傾斜に一定に保つ場合よりもHA400のNFを最小化することができる。
【0050】
図9は、ハイブリッド増幅器の最適な動作状態をG
H値およびT
H値の組み合わせに対するG
R値,T
R値,G
L値,およびT
L値の組み合わせの形態で検出するための処理の流れを示すフローチャートである。
図1,3,4に示した制御ユニット160が、ルックアップテーブルおよび/または演算式に基づいて動作するようにしてもよい。目的は、与えられたG
H値およびT
H値に対して、HAのNFを最適化するためのするG
R値,T
R値,G
L値,T
L値を求めることにある。まず、ステップ902において、ハイブリッド増幅器を動作させるための範囲を十分な解像能でカバーできるG
HとT
Hとの異なる組み合わせについて反復処理を行う。十分な解像能を有していることにより、一般的かつ公知の外挿方法および/または内挿方法を用いて、ステップ902の反復処理によって明示的にカバーされないG
H値とT
H値の組み合わせ対してHAのNFが最適化されるG
R値,T
R値,G
L値,T
L値の組み合わせを見つけることができる。次に、ステップ904において、要求されているG
HおよびT
Hに関し、ラマン増幅器および集中型増幅器が動作可能な組み合わせ範囲を十分な解像能でカバーし、G
L+G
R=G
HおよびT
L+T
R=T
Hの組み合わせを満足するG
R値,T
R値,G
L値,T
L値の異なる組み合わせについて反復処理を実行する。ステップ904における十分な解像能の意味については後述するステップ912で説明する。次に、ステップ906においてG
R,T
R,G
L,T
LをG
R値,T
R値,G
L値,T
L値にそれぞれ設定した後、ステップ908においてHAのNFを検出して記憶する。次に、ステップ910において、関連する全てのG
R値およびT
R値について処理を行ったかを判定する。全てのG
R値およびT
R値についての処理が完了していない場合、ステップ904に戻り、新たなG
R値,T
R値,G
L値,T
L値の組み合わせを選択する。全てのG
R値およびT
R値についての処理が完了したと判断した場合、ステップ912において、HAのNFの最適値に対応するG
R値,T
R値,G
L値,T
L値の組み合わせを検出し、与えられたG
H値およびT
H値と対応付けて記憶する。ここで、上述したステップ904における「十分な解像能でカバーする」の意味について説明する。これは、ステップ904においてカバーされる少なくとも1つの組み合わせが、増幅器が設計されているアプリケーション用のNFの最小値に十分に接近するHAのNFをもたらすことを意味する。次に、ステップ914において、全ての関連するG
HおよびT
Hの組み合わせがカバーされたか否かを判断する。全てのG
HおよびT
Hの組み合わせがカバーされていないと判断した場合、ステップ902に戻って新たなG
HおよびT
Hの組み合わせを選択する。全てのG
HおよびT
Hの組み合わせがカバーされていると判断した場合、処理を終了する。
【0051】
処理の結果は、G
H値とT
H値との各組み合わせと、HAのNFを最適化するG
R値,T
R値,G
L値,T
L値の組み合わせとを対応付けてLUTに記憶される。このLUTは、制御ユニット160において直接用いることができ、G
H値およびT
H値に関連するG
R値、T
R値、G
L値、T
L値の演算式(例えばあてはめ法など)の導出に用いてもよい。
【0052】
図9に示す他方法をより効率化するように変更することで様々な組み合わせを利用できる。例えば、HA400の場合、T
LがT
L0よりも大きいときに、G
R値,T
R値,G
L値,T
L値の組み合わせをT
L>T
L0を満たすように制限することによりステップ904をより効率的に行い、NFを最小にできる。
【0053】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することもできる。
〔先行技術文献〕
米国特許公報
1.米国特許6611641号明細書(2003年8月26日公開)
2.米国特許6665114号明細書(2003年12月16日公開)
3.米国特許6466362号明細書(2002年10月15日公開)
米国公開特許公報
4.米国公開特許公報20110141552号明細書(2011年6月16日公開)
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】本発明の一実施形態にかかるハイブリッド増幅器(HA)の概略図である。
【
図1a】
図1に示した制御ユニットの概略図である。
【
図2】
図1に示したHAの制御ユニットの動作を示すフローチャートである。
【
図3】本発明の他の実施形態にかかるハイブリッド増幅器の概略図である。
【
図4】本発明のさらに他の実施形態にかかるハイブリッド増幅器の概略図である。
【
図5】EDFA NFのEDFA平均利得に対する依存性を、互いに異なる複数のEDFA利得傾斜の値について示したグラフである。
【
図6】T
RおよびT
Lが交渉値で一定であると仮定した場合の、HA NFを最適化するG
RのG
Hに対する依存性を示すグラフである。
【
図7】(a)TRおよびTLを交渉値で一定に保った場合、および(b)TRおよびTLの変化を許容した場合の、HA NFの最適値の、HAの平均利得に対する依存性を示すグラフである。
【
図8a】HA NFを最適化するG
RおよびG
LのG
Hに対する依存性を示すグラフである。
【
図8b】HA NFを最適化するT
RおよびT
LのG
Hに対する依存性を示すグラフである。
【
図9】G
HおよびT
Hの各値についてHA NFを最適化するようにGR,TR,GL,TLを設定する処理の一例を示す図である。