(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1〜3に開示の技術の夫々には、以下に示す課題があった。特許文献1に開示の技術では、圧縮窒素を常備する必要があり、高コストになると共に、構成が複雑となる。
特許文献2に開示の技術では、エンジン本体が発生する回転動力で非常用発電機兼用の常用発電機を回転駆動する場合、運転中に吸気圧力の一部を蓄圧することが可能であるが、エンジン本体が非常用発電機を回転駆動する場合は、上記特許文献1に開示の技術と同じく、圧縮空気を常備する必要があり高コストになると共に、構成が複雑となる。
特許文献3に開示の技術では、負荷投入状態を切り替える必要があり、その負荷切替に適合する負荷を準備する必要があり、汎用性に欠けるという問題があった。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、比較的簡易な構成を維持しながらも、初期負荷投入に対する過給機の応答性が高く、エンジン本体がストールに陥ることを防止できるターボ過給式エンジン及びその負荷投入方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するための本発明に係るターボ過給式エンジンは、
燃料と空気との混合気を燃焼室において圧縮して燃焼させることにより回転動力を発生するエンジン本体と、
前記エンジン本体の排気路に設けられるタービンに前記燃焼室から排出される排ガスを供給し、前記タービンに連結される状態で吸気路に設けられるコンプレッサによって前記燃焼室に吸気される新気を圧縮する過給機と、
前記エンジン本体の回転速度を目標回転速度に維持する回転速度維持手段とを備えたターボ過給式エンジンであって、
その第1特徴構成は、
前記吸気路における前記コンプレッサの出口側と入口側とを接続するバイパス路と、当該バイパス路に配置されたバイパス弁とを備えると共に、
前記エンジン本体への初期負荷の投入時に前記バイパス弁を開放状態に維持するバイパス開放処理を実行し、前記エンジン本体への初期負荷の投入後に前記バイパス弁を閉塞させるバイパス閉塞処理を実行するバイパス制御手段を備え
、
前記バイパス制御手段が、前記初期負荷の投入後且つ前記バイパス閉塞処理の実行前に、前記エンジン本体の出力不足が発生した場合に、前記バイパス弁の開度を縮小側に補正する補正処理を実行する補正手段を備えた点にある。
上記目的を達成するための本発明に係るターボ過給式エンジンは、
燃料と空気との混合気を燃焼室において圧縮して燃焼させることにより回転動力を発生するエンジン本体と、
前記エンジン本体の排気路に設けられるタービンに前記燃焼室から排出される排ガスを供給し、前記タービンに連結される状態で吸気路に設けられるコンプレッサによって前記燃焼室に吸気される新気を圧縮する過給機と、
前記エンジン本体の回転速度を目標回転速度に維持する回転速度維持手段とを備えたターボ過給式エンジンであって、
その第2特徴構成は、
前記吸気路における前記コンプレッサの出口側と入口側とを接続するバイパス路と、当該バイパス路に配置されたバイパス弁とを備えると共に、
前記エンジン本体への初期負荷の投入時に前記バイパス弁を開放状態に維持するバイパス開放処理を実行し、前記エンジン本体への初期負荷の投入後に前記バイパス弁を閉塞させるバイパス閉塞処理を実行するバイパス制御手段を備え、
前記バイパス制御手段が、前記初期負荷の投入後且つ前記バイパス閉塞処理の実行前に、前記エンジン本体の出力不足が発生した場合に、前記燃焼室に吸気される混合気の空燃比を燃料リッチ側に補正する補正処理を実行する補正手段を備えた点にある。
【0007】
また、この目的を達成するための本発明に係るターボ過給式エンジンの負荷投入方法は、
燃料と空気との混合気を燃焼室において圧縮して燃焼させることにより回転動力を発生するエンジン本体と、
前記エンジン本体の排気路に設けられるタービンに前記燃焼室から排出される排ガスを供給し、前記タービンに連結される状態で吸気路に設けられるコンプレッサによって前記燃焼室に吸気される新気を圧縮する過給機と、
前記エンジン本体の回転速度を目標回転速度に維持する回転速度維持手段とを備えたターボ過給式エンジンの負荷投入方法であって、
その第1特徴構成は、
前記吸気路における前記コンプレッサの出口側と入口側とを接続するバイパス路と、当該バイパス路に配置されたバイパス弁とを設け、
前記エンジン本体への初期負荷の投入時に前記バイパス弁を開放状態に維持するバイパス開放処理を実行し、前記エンジン本体への初期負荷の投入後に前記バイパス弁を閉塞させるバイパス閉塞処理を実行
し、
前記初期負荷の投入後且つ前記バイパス閉塞処理の実行前に、前記エンジン本体の出力不足が発生した場合に、前記バイパス弁の開度を縮小側に補正する補正処理を実行する点にある。
更に、この目的を達成するための本発明に係るターボ過給式エンジンの負荷投入方法は、
燃料と空気との混合気を燃焼室において圧縮して燃焼させることにより回転動力を発生するエンジン本体と、
前記エンジン本体の排気路に設けられるタービンに前記燃焼室から排出される排ガスを供給し、前記タービンに連結される状態で吸気路に設けられるコンプレッサによって前記燃焼室に吸気される新気を圧縮する過給機と、
前記エンジン本体の回転速度を目標回転速度に維持する回転速度維持手段とを備えたターボ過給式エンジンの負荷投入方法であって、
その第2特徴構成は、
前記吸気路における前記コンプレッサの出口側と入口側とを接続するバイパス路と、当該バイパス路に配置されたバイパス弁とを設け、
前記エンジン本体への初期負荷の投入時に前記バイパス弁を開放状態に維持するバイパス開放処理を実行し、前記エンジン本体への初期負荷の投入後に前記バイパス弁を閉塞させるバイパス閉塞処理を実行し、
前記初期負荷の投入後且つ前記バイパス閉塞処理の実行前に、前記エンジン本体の出力不足が発生した場合に、前記燃焼室に吸気される混合気の空燃比を燃料リッチ側に補正する補正処理を実行する点にある。
【0008】
上記ターボ過給式エンジン及びその負荷投入方法の第1特徴構成によれば、ターボ過給式エンジンのエンジン本体において、吸気路におけるコンプレッサの出口側と入口側とを接続するバイパス路が設けられ、そのバイパス路にバイパス弁が配置される。そして、回転速度維持手段によりエンジン本体の回転速度が目標回転速度に維持されている状態において、上記バイパス開放処理が実行されてエンジン本体への初期負荷の投入時にバイパス弁が開放状態に維持されると、当該バイパス路における新気の通流が許容された状態となるので、コンプレッサの入口側圧力に対する出口側圧力の圧力差が小さくなってコンプレッサの回転負荷が低減され、結果、過給機の回転速度が上昇した状態になる。そして、過給機の応答性は、その過給機の回転速度が高い状態のほうが高いため、この状態にて、エンジン本体へ初期負荷が投入されることにより、その負荷に対するエンジン本体が発生する回転動力の仕事量であるエンジン出力の応答性を改善することができる。
また、初期負荷の投入後においては、上記バイパス開放処理により開放状態とされたバイパス弁は上記バイパス閉塞処理が実行されることにより閉塞される。すると、バイパス路における新気の通流が禁止された状態となるので、コンプレッサの入口側圧力に対する出口側圧力の圧力差が大きくなって、コンプレッサによる新気の圧縮が十分に行われるようになり、結果、エンジン効率を向上して一層安定した運転状態を維持することができる。
更に、上記ターボ過給式エンジンの第1特徴構成によれば、初期負荷の投入後且つバイパス閉塞処理の実行前において、例えばスロットル弁の開度が全開状態でそれ以上拡大できない状況で、エンジン本体の出力不足が発生したとしても、上記補正処理を実行することで、スロットル弁の開度の拡大に頼ることなくエンジン本体の出力不足を解消して、エンジン本体の回転速度を目標回転速度に維持することができる。
即ち、上記補正処理において、バイパス弁の開度を縮小側に補正すれば、コンプレッサの回転負荷を増加させて、新気に対する過給圧力を上昇させることができ、結果、エンジン出力を適度に増加させることができる。
更に、上記ターボ過給式エンジンの第2特徴構成によれば、初期負荷の投入後且つバイパス閉塞処理の実行前において、例えばスロットル弁の開度が全開状態でそれ以上拡大できない状況で、エンジン本体の出力不足が発生したとしても、上記補正処理を実行することで、スロットル弁の開度の拡大に頼ることなくエンジン本体の出力不足を解消して、エンジン本体の回転速度を目標回転速度に維持することができる。
即ち、上記補正処理において、燃焼室に吸気される混合気の空燃比を燃料リッチ側に補正すれば、1サイクルあたりの燃焼室への燃料投入量を増加させることができ、結果、エンジン出力を適度に増加させることができる。
尚、上記特徴構成において、エンジン本体の出力不足は、目標回転速度に対するエンジン本体の回転速度の偏差や目標出力に対するエンジン出力の偏差などを監視することで判定することができる。
また、上記第1及び第2特徴構成を適切に組み合わせて、補正処理において、バイパス弁の開度の縮小側への補正と、燃焼室に吸気される混合気の空燃比の燃料リッチ側への補正との両方を行えば、エンジン本体の出力不足を早期且つ確実に解消することができる。
従って、本発明により、比較的簡易な構成を維持しながらも、初期負荷投入に対する過給機の応答性が高く、エンジン本体がストールに陥ることを防止できるターボ過給式エンジン及びその負荷投入方法を提供することができる。
【0009】
本発明に係るターボ過給式エンジンの第
3特徴構成は、上記ターボ過給式エンジンの第1
又は第2特徴構成に加えて、
前記吸気路において前記コンプレッサの下流側にスロットル弁が配置され、
前記エンジン本体への初期負荷の投入に伴って、前記回転速度維持手段が前記エンジンの回転速度の維持制御を実行することにより前記スロットル弁の開度が拡大される点にある。
【0010】
上記ターボ過給式エンジンの第
3特徴構成によれば、エンジン本体への初期負荷の投入に伴って、回転速度維持手段は、エンジン出力を上昇させてエンジンの回転速度を維持する維持制御を実行するにあたり、コンプレッサの下流側に設けられたスロットル弁の開度を急激に拡大させてエンジンに導かれる燃料及び混合気の流量を急激に増加させたり、燃料供給量を急激に増加させたりする。また、後者のように、燃料供給量を急激に増加させる場合には、燃焼室に吸気される混合気の空燃比を所望の空燃比に維持するために、空気供給量を増加させるべくスロットル弁の開度が急激に拡大される。
一方、バイパス開放処理が実行されてコンプレッサの回転速度が上昇した状態になると、コンプレッサの出口側からその下流側に向けて新気が比較的高速で吐出される状態になる。
よって、この状態にてエンジン本体への初期負荷が投入されてコンプレッサの下流側に配置されたスロットル弁の開度が拡大されると、そのスロットル弁の拡大直後には、高速で吐出された新気がその強い慣性力で燃焼室に充填されることになるので、結果、エンジン出力の応答性を一層改善することができる。
【0011】
本発明に係るターボ過給式エンジンの第
4特徴構成は、上記第1乃至第
3特徴構成の何れかに加えて、
前記バイパス制御手段が、前記バイパス閉塞処理において、前記バイパス弁の開度をエンジン出力の上昇に伴って漸次縮小させる点にある。
【0012】
上記ターボ過給式エンジンの第
4特徴構成によれば、初期負荷の投入後のバイパス閉塞処理において、バイパス弁の開度がエンジン出力の上昇に伴って漸次縮小されることで、バイパス弁の閉塞によるコンプレッサの回転負荷の増加に合わせて、エンジン出力の増加によりタービンに供給される排ガスの排気エネルギーが増加することになる。よって、初期負荷投入後においても、過給機の回転速度を高い状態で維持することができ、バイパス弁の急な閉塞によるエンジン効率の低下やストールを回避することができる。
【0013】
本発明に係るターボ過給式エンジンの第
5特徴構成は、上記ターボ過給式エンジンの第
2特徴構成に加えて、
前記バイパス制御手段が、前記初期負荷の投入後且つ前記バイパス閉塞処理の実行前に、前記エンジン本体の出力不足が発生した場合に、前記バイパス弁の開度を縮小側に補正する補正処理を実行する補正手段を備えた点にある。
【0014】
上記ターボ過給式エンジンの第
5特徴構成によれば、初期負荷の投入後且つバイパス閉塞処理の実行前において、例えばスロットル弁の開度が全開状態でそれ以上拡大できない状況で、エンジン本体の出力不足が発生したとしても、上記補正処理を実行することで、スロットル弁の開度の拡大に頼ることなくエンジン本体の出力不足を解消して、エンジン本体の回転速度を目標回転速度に維持することができる。
即ち、上記補正処理において、バイパス弁の開度を縮小側に補正すれば、コンプレッサの回転負荷を増加させて、新気に対する過給圧力を上昇させることができ、結果、エンジン出力を適度に増加させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1に示すターボ過給式エンジン100は、天然ガス等の燃料ガスF(燃料の一例)と空気Aとの混合気Mを燃焼室26aにおいて圧縮して燃焼させることにより出力軸50を回転させる形態で回転動力を発生するエンジン本体26と、エンジン本体26の排気路27に設けられるタービン32に燃焼室26aから排出される排ガスEを供給し、タービン32に連結される状態で吸気路20に設けられるコンプレッサ31によって燃焼室26aに吸気される新気としての混合気Mを圧縮する過給機30とを備え、更には、センサ等の検出結果が入力され、その入力信号に基づいて制御弁などの各種補機を制御して、エンジン100の運転を制御するコンピュータからなるエンジンコントロールユニット(以下、ECUと呼ぶ。)40が備えられている。
【0020】
この種のエンジン100は、詳細な図示は省略するが、吸気路20から燃焼室26aに新気として吸気された混合気Mを、ピストンの上昇により圧縮した状態で点火プラグにて火花点火して燃焼・膨張させることで、ピストンを押し下げて出力軸50から回転動力を出力すると共に、燃焼により発生した排ガスEは、燃焼室26aから排気路27に押し出され、外部に排出される。
【0021】
吸気路20には、空気Aを浄化するエアクリーナ21、空気Aに燃料ガスFを適切な比率で混合するベンチュリー式のミキサ14、及びミキサ14にて混合された混合気Mを圧縮するコンプレッサ31、開度調整により燃焼室26aへの混合気Mの吸気量を調整可能なスロットル弁24、混合気Mを冷却するインタークーラ25が、その上流側から記載順に設けられている。
即ち、吸気路20において、ミキサ14で燃料ガスFと空気Aとを混合して生成された混合気Mは、コンプレッサ31により圧縮された後に、スロットル弁24を介して所定の流量に調整され、インタークーラ25にて冷却されて、エンジン本体26の燃焼室26aに導入される。
【0022】
ミキサ14に燃料ガスFを導く燃料供給路11には、ミキサ14の上流側の吸気路20における燃焼用空気の圧力と燃料供給路11の燃料ガスFの圧力の差を一定に保つ差圧レギュレータ12、ミキサ14を介して燃焼室26aに供給される燃料ガスFの供給量を調整する燃料供給量調整弁13が設けられている。
【0023】
出力軸50には、出力軸50の回転速度をエンジン本体26の回転速度として計測する回転速度センサ51が設けられている。
そして、ECU40は、回転速度センサ51にて計測されたエンジン本体26の回転速度に基づいて、燃料供給量調整弁13の開度を制御して燃焼室26aへの燃料ガスFの供給量を調整することによって、エンジン本体26の回転速度を所望の目標回転速度に維持する回転速度維持手段42として機能する。
【0024】
また、排気路27には、排ガスEの酸素濃度を検出する酸素センサ53が設けられている。
そして、ECU40は、酸素センサ53で検出された排ガスEの酸素濃度に基づいて、スロットル弁24の開度を制御することによって、ミキサ14に供給された燃料ガスFに対する空気Aの混合割合を調整して、ミキサ14で生成される混合気Mの空燃比を理論空燃比等の所望の空燃比に維持する空燃比制御手段43として機能する。
【0025】
過給機30は、エンジン本体26の排気路27に設けられるタービン32に燃焼室26aから排出される排ガスEを供給し、タービン32に連結される状態で吸気路20に設けられるコンプレッサ31によって燃焼室26aに吸気される混合気Mを圧縮するターボ式の過給機として構成されている。即ち、この過給機30は、排気路27を通流する排ガスEの運動エネルギによりタービン32を回転させ、このタービン32の回転力により吸気路20に配置されたコンプレッサ31を回転駆動する形態で、吸気路20を通流する新気としての混合気Mを圧縮した状態で燃焼室26aに供給する所謂過給を行う。 また、この種のターボ式の過給機30は、比較的高出力で運転が行わる際には、タービン32への排ガスEの供給量が増加することで、かかるタービン32及びそれに連結されたコンプレッサ31の回転速度(以下「過給機30の回転速度」と呼ぶ。)が増加し、結果、コンプレッサ31の出口側圧力、即ち吸気路20におけるコンプレッサ31とスロットル弁24との間の圧力(以下「過給圧力」と呼ぶ。)が増加する。一方、比較的低出力で運転が行われる際には、タービン32への排ガスEの供給量が減少することで、過給機30の回転速度が低下し、結果、過給圧力が低下する。
【0026】
出力軸50には非常用発電機28が接続されており、出力軸50で出力した回転動力が非常用発電機28の駆動源として利用される。
非常用発電機28には、電力線及び開閉器52を介して電力負荷29が接続されており、例えば、停電時において外部からの起動指令信号を受けたECU40によりエンジン本体26が起動され、出力軸50を回転させた状態で開閉器52が開状態(電力通流を遮断する状態)から閉状態(電力通流を許容する状態)に切り替えられることで、非常用発電機28に対して電力負荷29で要求される電力に相当する発電負荷が投入され、それに伴って出力軸50に対して非常用発電機28を回転駆動するために必要な回転負荷が投入される。以下、このようにエンジン本体26を起動してからの初期段階において開閉器52を開状態から閉状態に切り替えてエンジン本体26の出力軸50に回転負荷を投入することを初期負荷の投入と呼ぶ場合がある。
【0027】
更に、吸気路20におけるコンプレッサ31の出口側(吸気路20のコンプレッサ31の下流側且つスロットル弁24の上流側)と入口側(吸気路20のコンプレッサ31の上流側且つミキサ14の下流側)とを接続する、言い換えればコンプレッサ31をバイパスするバイパス路60が設けられており、このバイパス路60には開度調整可能なバイパス弁61が設けられている。
そして、ECU40は、エンジン本体26への初期負荷の投入時にバイパス弁61を開放状態に維持するバイパス開放処理を実行し、エンジン本体26への初期負荷の投入後にバイパス弁を閉塞させるバイパス閉塞処理を実行するバイパス制御手段41として機能する。
【0028】
〔
参考形態〕
以下、
参考形態のターボ過給式エンジン100の詳細構成について、負荷投入方法の処理フロー及び状態遷移と共に、
図2及び
図3に基づいて説明する。
ECU40は、エンジン本体26への起動指令があると、当該起動指令に基づいて、燃料供給量調整弁13の開度調整等を行いながら、エンジン本体26を起動させる(
図2の♯01)。
その後、ECU40が機能する回転速度維持手段42は、回転速度センサ51にて計測されるエンジン本体26の回転速度に基づいて、エンジン本体26の回転速度が一定の目標回転速度となるように、燃料供給量調整弁13の開度を制御する回転速度維持制御を実行する(
図2の♯02)。尚、ECU40は、エンジン本体26が起動されている間、当該回転速度維持制御を実行し続ける。
【0029】
次に、ECU40が機能するバイパス制御手段41は、初期負荷投入指令があると、当該初期負荷投入指令に基づいて行われるエンジン本体26への初期負荷の投入時に、バイパス開放処理を実行する(
図2の♯03、04)。
説明を加えると、初期負荷投入が行われる直前、即ち、エンジン出力が略0の出力Q1である無負荷状態において、
図3の♯04のタイミングで、バイパス制御手段41は、コンプレッサ31をバイパスするバイパス路60に設けられたバイパス弁61の開度を、閉塞側の開度B1(略0%)からその開度よりも大きい開放側の開度B2に変化させる形態で、バイパス弁61を開放させる。
すると、バイパス路60における混合気Mの通流が許容された状態となるので、過給圧力がバイパス開放処理前の圧力P2からそれよりも低い圧力P1に低下することにより、コンプレッサ31の入口側圧力(略大気圧)に対する出口側圧力(言い換えれば過給圧力)の圧力差が小さくなって、コンプレッサ31の回転負荷が低減され、結果、過給機の回転速度がパイパス処理前の回転速度T1からそれよりも大きい回転速度T2に上昇した状態になる。
また、上記のようなバイパス開放処理による過給圧力の低下に伴うエンジン出力の変動(低下)を抑制するために、バイパス弁61の開放に合わせてスロットル弁24の開度が若干拡大されて、当該スロットル弁24の出口側圧力、言い換えれば燃焼室26aへの吸気圧力が一定に維持されることになる。
【0030】
そして、ECU40は、バイパス開放処理が実行され、過給機30の回転速度が上昇している状態で、初期負荷投入を実行する。即ち、エンジン本体26の回転動力にて非常用発電機28を、回転駆動し始める(
図2の♯05)。
このとき、過給機30は、
図3に示すように、初期負荷投入(
図2の♯05)のタイミングにて、回転速度が高い状態で駆動しており、負荷への応答性が高くなっているので、投入された初期負荷に対して、その回転速度を良好に追従させる。結果、エンジン本体26では、初期負荷投入に追従して適切に混合気Mが供給されることとなり、初期負荷が投入された後に、大幅に回転速度を落としてストールに陥ることが防止される。
尚、このバイパス開放処理により拡大されるバイパス弁61の開度B2は、初期負荷投入前後のバイパス路60における混合気Mの流量の変化や燃焼室26aに対する混合気Mの吸気量の変化に応じて適宜設定される。
【0031】
エンジン本体26への初期負荷の投入に伴って、回転速度維持手段42が、エンジン出力を上昇させてエンジン本体26の回転速度を維持する維持制御を実行するにあたり、燃料供給量調整弁13の弁開度を増加させて燃料ガスFの供給量を増加させる。更に、この燃料供給量調整弁13の開度増加に伴って、空燃比制御手段43が、燃焼室26aに吸気される混合気Mの空燃比を所望の空燃比に維持するために、空気供給量を増加させるべくスロットル弁24の開度を拡大させることになる。
【0032】
一方、上記バイパス開放処理(#04)が実行されてコンプレッサ31の回転速度が上昇した状態になると、コンプレッサ31の出口側からその下流側に向けて混合気Mが比較的高速で吐出される状態になる。
よって、この状態にてエンジン本体26への初期負荷が投入されてコンプレッサ31の下流側に配置されたスロットル弁24の開度が拡大されると、そのスロットル弁24の拡大直後には、高速で吐出された混合気Mがその強い慣性力で燃焼室26aに充填されることになる。
【0033】
ECU40が機能するバイパス制御手段41は、エンジン本体26への初期負荷の投入後に、バイパス閉塞処理を実行する(
図2の♯06)。
説明を加えると、初期負荷の投入後が開始されてから、初期負荷投入時間が経過すると、初期負荷投入が完了したと判定して、
図3の♯06のタイミングで、バイパス制御手段41は、バイパス路60に設けられたバイパス弁61の開度を、開放側の開度B2からその開度よりも小さい閉塞側の開度B1(略0%)に変化させる形態で、バイパス弁61を閉塞させる。
すると、バイパス路60における混合気Mの通流が禁止された状態となるので、コンプレッサ31の入口側圧力に対する出口側圧力(過給圧力)の圧力差が大きくなって、過給圧力がバイパス開放処理前の圧力P2よりも高い圧力P3まで上昇して、コンプレッサ31による混合気Mの圧縮が十分に行われるようになり、結果、エンジン効率を向上して一層安定した運転状態が維持されることになる。
【0034】
更に、バイパス制御手段41は、このバイパス閉塞処理において、バイパス弁61の開度をエンジン出力の上昇に伴って所定の上昇率で漸次縮小させる。
すると、バイパス弁61の閉塞によるコンプレッサ31の回転負荷の増加に合わせて、エンジン出力の増加によりタービン32に供給される排ガスEの排気エネルギーが増加することになる。よって、初期負荷投入後においても、過給機30の回転速度を高い状態で維持することができ、バイパス弁61の急な閉塞によるエンジン効率の低下やストールが回避される。
そして、ECU40は、バイパス開放処理及びバイパス閉塞処理の実行と同時に、エンジン出力を定格出力Q2まで上昇させる(♯07)。
また、上記のようなバイパス閉塞処理による過給圧力の上昇に伴うエンジン出力の変動(上昇)を抑制するために、バイパス弁61の閉塞に合わせてスロットル弁24の開度が若干縮小されて、当該スロットル弁24の出口側圧力、言い換えれば燃焼室26aへの吸気圧力が一定に維持されることになる。
【0035】
〔実施形態〕
以下
、実施形態のターボ過給式エンジン100の詳細構成について、
図4〜
図6を参照して、負荷投入方法の処理フロー及び状態遷移状態と合わせて説明する。
尚、上記
参考形態と重複する説明については割愛する場合がある。
【0036】
ECU40は、上記第1実施形態と同様に、エンジン本体26を起動させ(
図4の#01)、続いて回転速度維持制御を実行する(
図4の#02)。
次に、ECU40が機能するバイパス制御手段41は、初期負荷投入指令があると、当該投入指令に基づいて行われるエンジン本体26への初期負荷Q1の投入が行われる直前において、バイパス開放処理を実行する(
図4の#03、
図4及び
図6の#04)。
説明を加えると、初期負荷Q1の投入が行われる直前、即ち、エンジン出力が略0の出力である無負荷状態において、
図6の#04のタイミングで、バイパス制御手段41は、コンプレッサ31をバイパスするバイパス路60に設けられたバイパス弁61の開度を、閉塞側の開度I1(約0%)から全開(100%)の開度I3に変化させる形態で、バイパス弁61を開放させ、吸気行程におけるポンピングロスを低減する。
また、バイパス開放処理による過給圧力の低下に合わせてスロットル弁24の開度が、開度S1からそれよりも若干大きい開度S2に拡大されて、エンジン出力の変動が抑制される。
【0037】
そして、ECU40は、バイパス開放処理が実行され、過給機30の回転速度が上昇している状態で、初期負荷Q1(例えば定格負荷(100%負荷)に対して40%の負荷)の投入を実行する(
図4及び
図6の#05)。
すると、エンジン本体26への初期負荷Q1の投入に伴って、回転速度維持手段42が、エンジン出力を上昇させてエンジン本体26の回転速度を維持する維持制御を実行するにあたり、燃料供給量調整弁13の弁開度を増加させて燃料ガスFの供給量を増加させる。更に、この燃料供給量調整弁13の開度増加に伴って、空燃比制御手段43が、燃焼室26aに吸気される混合気Mの空燃比を所望の空燃比に維持するために、空気供給量を増加させるべくスロットル弁24の開度を、例えば最も大きい100%開度である開度S5に拡大する。
【0038】
しかし、スロットル弁24の開度が全開状態になったとしても、バイパス開放処理により過給圧力が低下した状態では、エンジン出力が不足して、エンジン本体26の回転速度が目標回転速度Rtに対して大幅(例えば100rpm程度)に低下する場合がある。
そこで、ECU40は、初期負荷の投入(
図4及び
図6の#05)後、且つ、バイパス閉塞処理の実行(
図4の#06)前に、エンジン本体26の出力不足が発生した場合に、後述する所定の補正処理(
図4の#05−1)を実行する補正手段として機能する。そして、この補正処理を実行することで、スロットル弁24の開度の拡大に頼ることなくエンジン本体26の出力不足が解消されて、エンジン本体26の回転速度が目標回転速度Rtに維持される。
以下、この補正処理の詳細について、
図5に基づいて説明を加える。
【0039】
この補正処理では、先ず、目標回転速度Rtに対するエンジン本体26の回転速度の偏差(以下「回転速度偏差」と呼ぶ。)が、所定の基準値ΔRt(例えば100rpm程度)を超えたか否かが判定される(
図5の#11)。
そして、回転速度偏差が基準値ΔRtを超えた場合には、バイパス弁61の開度が、開度I3(約100%)からそれよりも小さい開度I2(約50%)に変化させる形態で縮小される(
図5及び
図6の#12−1)。
すると、コンプレッサ31による混合気Mの圧縮がある程度行われるようになり、結果、エンジン出力が適度に増加することになる。
【0040】
更に、このバイパス弁61の開度の縮小(
図5及び
図6の#12−1)と同時に、燃料供給量調整弁13の開度が所定量拡大されることで、燃焼室26に吸気される混合気Mの空気比がλ0(例えば1.8程度)からλ1(例えば1.2程度)に変化する形態で、当該混合気Mの空燃比が燃料リッチ側に補正される(
図5及び
図6の#12−2)。
すると、1サイクルあたりの燃焼室26への燃料投入量が増加し、結果、エンジン出力が適度に増加することによる。
そして、このような補正処理が実行されてエンジン出力が増加することで、エンジン本体26の出力不足が解消されて、エンジン回転速度が目標回転速度Rtに維持されることになる。
【0041】
このような補正処理(
図4の#05−1)の実行後において、エンジン回転速度が目標回転速度Rtに維持された段階で、バイパス閉塞処理(
図6の#06)を実行する。
即ち、初期負荷Q1を投入(
図4の#05)した後において、過給機30の回転速度が高い状態で、吸気バイパス弁61が閉塞されて、コンプレッサ31による混合気Mの圧縮を開始されるので、過給圧力が迅速に上昇することになり、初期負荷Q1に続く第2負荷Q2の投入に備えられる。
【0042】
そして、このように初期負荷Q1の投入(
図6の#05)及びバイパス閉塞処理(
図6の#06)を実行した後に、初期負荷に続いて投入される残負荷Q2,Q3が投入される。尚、
図6では、初期負荷Q1に続く残負荷を、第2負荷Q2及び第3負荷Q3に分けて段階的に投入する例を示している。
また、この残負荷Q2,Q3に際しては、バイパス弁61は閉塞状態を維持しているため、負荷の投入に伴ってスロットル弁24の開度が漸次拡大することになる。具体的には、第2負荷Q2の投入に伴ってスロットル弁24の開度が開度S3からそれよりも大きい開度S4に拡大し、第3負荷Q3の投入に伴ってスロットル弁24の開度が開度S4からそれよりも大きい開度S5に拡大して略全開の状態となる。
【0043】
尚、
本実施形態では、
図6において、燃焼室26に吸気される混合気Mの空燃比の燃料リッチ側への補正処理(#12−2)を、バイパス弁61の開度の縮小処理(
図4及び
図6の#12−1)よりも早い段階で開始するようにしたが、これら処理を同時に又は逆の順序で行っても構わない。
【0044】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明のその他の実施形態について説明する。なお、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
(1)上記実施形態では、回転速度維持手段42が、エンジン本体26の回転速度を所望の目標回転速度に維持するために燃料供給量調整弁13の開度を制御し、空燃比制御手段43が、ミキサ14で生成される混合気Mの空燃比を理論空燃比等の所望の空燃比に維持するためにスロットル弁24の開度を制御するように構成したが、逆に、回転速度維持手段42がスロットル弁13の開度を調整することでエンジン本体26の回転速度を所望の目標回転速度に維持し、空燃比制御手段43がスロットル弁24の開度を制御することでミキサ14で生成される混合気Mの空燃比を理論空燃比等の所望の空燃比に維持するように構成しても構わない。
【0045】
(2)上記実施形態では、初期負荷投入完了の判定につき、エンジン本体への初期負荷を投入した後で、初期負荷投入時間(一定時間)が経過したときに、初期負荷投が完了したと判定した。
しかしながら、初期負荷投入完了の判定につき、エンジン本体26の回転速度やエンジン本体26にて回転駆動される非常用発電機28の発電電力の周波数の変動が収まったときに、初期負荷投入が完了したと判定するように構成してもよい。
【0046】
(3)上記実施形態では、バイパス閉塞処理において、バイパス弁61の開度をエンジン出力の上昇に伴って漸次縮小させる構成を説明したが、別に、バイパス閉塞処理において、バイパス弁61の開度を段階的又は一気に閉塞させるように構成しても構わない。
【0047】
(4)上記実施の形態では、初期負荷投入指令があった場合にバイパス開放処理を実行した上で初期負荷が投入される場合(
図2の♯03、04、#05)について説明したが、初期投入指令の入力がなく初期負荷が投入されるような場合には、エンジンを起動した直後に無条件にバイパス開放処理を実行しておくことで、初期負荷の投入に備えるように構成しても構わない。