(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記粘着シートは、前記粘着剤層(A)として、前記粘弾性体層(B)の第1面に支持されている第1の粘着剤層(A)と、前記粘弾性体層(B)の第2面に支持されている第2の粘着剤層(A)とを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の粘着シート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
なお、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明することがあり、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、製品として実際に提供される本発明の粘着シートのサイズや縮尺を正確に表したものではない。
【0016】
この明細書において「粘着剤」とは、前述のように、室温付近の温度域において柔らかい固体(粘弾性体)の状態を呈し、圧力により簡単に被着体に接着する性質を有する材料をいう。ここでいう粘着剤は、「C. A. Dahlquist, “Adhesion: Fundamental and Practice”, McLaren & Sons, (1966) P. 143」に定義されているとおり、一般的に、複素引張弾性率E
*(1Hz)<10
7dyne/cm
2を満たす性質を有する材料(典型的には、25℃において上記性質を有する材料)である。ここに開示される技術における粘着剤は、粘着剤組成物の固形分または粘着剤層の構成成分としても把握され得る。
また、粘着剤の「ベースポリマー」とは、該粘着剤に含まれるポリマー(典型的には、室温付近の温度域においてゴム弾性を示すポリマー)のうちの主成分(すなわち、該ポリマーの50質量%超を占める成分)をいう。
【0017】
この明細書において「モノビニル置換芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体」とは、モノビニル置換芳香族化合物を主モノマー(50質量%を超える共重合成分をいう。以下同じ。)とするセグメント(以下「Aセグメント」ともいう。)と、共役ジエン化合物を主モノマーとするセグメント(以下「Bセグメント」ともいう。)とを、それぞれ少なくとも一つ有するポリマーをいう。一般に、Aセグメントのガラス転移温度はBセグメントのガラス転移温度よりも高い。かかるブロック共重合体の代表的な構造として、Bセグメント(ソフトセグメント)の両端にそれぞれAセグメント(ハードセグメント)を有するA−B−A構造のトリブロック共重合体(トリブロック体)、一つのAセグメントと一つのBセグメントとからなるA−B構造のジブロック共重合体(ジブロック体)等が挙げられる。
【0018】
この明細書において「スチレン系ブロック共重合体」とは、少なくとも一つのスチレンブロックを有するポリマーを意味する。上記スチレンブロックとは、スチレンを主モノマーとするセグメントを指す。実質的にスチレンのみからなるセグメントは、ここでいうスチレンブロックの典型例である。また、「スチレンイソプレンブロック共重合体」とは、少なくとも一つのスチレンブロックと、少なくとも一つのイソプレンブロック(イソプレンを主モノマーとするセグメント)とを有するポリマーをいう。スチレンイソプレンブロック共重合体の代表例として、イソプレンブロック(ソフトセグメント)の両端にそれぞれスチレンブロック(ハードセグメント)を有するトリブロック体、一つのイソプレンブロックと一つのスチレンブロックとからなるジブロック体等が挙げられる。同様に、この明細書において「スチレンブタジエンブロック共重合体」とは、少なくとも一つのスチレンブロックと、少なくとも一つのブタジエンブロック(ブタジエンを主モノマーとするセグメント)とを有するポリマーをいう。
【0019】
この明細書において、スチレン系ブロック共重合体の「スチレン含有量」とは、当該ブロック共重合体の全体質量に占めるスチレン成分の質量割合をいう。上記スチレン含有量は、NMR(核磁器共鳴スペクトル法)により測定することができる。
【0020】
また、スチレン系ブロック共重合体に占めるジブロック体の割合(以下「ジブロック体比率」または「ジブロック比」ということがある。)は、次の方法により求められる。すなわち、スチレン系ブロック共重合体をテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、東ソー(株)製GS5000HおよびG4000Hの液体クロマトグラフ用カラムをそれぞれ2段ずつ計4段を直列につなぎ、移動相にTHFを用いて、温度40℃、流量1mL/分の条件下で高速液体クロマトグラフィを行う。得られたチャートからジブロック体に対応するピーク面積を測定する。そして、全体のピーク面積に対する上記ジブロック体に対応するピーク面積の百分率を算出することにより、ジブロック体比率が求められる。
【0021】
<粘着剤層(A)>
[ベースポリマー(A)]
ここに開示される粘着シートにおける粘着剤層(A)は、ベースポリマー(A)として、モノビニル置換芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体を含有する。上記モノビニル置換芳香族化合物とは、ビニル基を有する官能基が芳香環に一つ結合した化合物を指す。上記芳香環の代表例として、ベンゼン環(ビニル基を有しない官能基(例えばアルキル基)で置換されたベンゼン環であり得る。)が挙げられる。上記モノビニル置換芳香族化合物の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン等が挙げられる。上記共役ジエン化合物の具体例としては、1,3−ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。このようなブロック共重合体は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
上記ブロック共重合体におけるAセグメント(ハードセグメント)は、上記モノビニル置換芳香族化合物(2種以上を併用し得る。)の共重合割合が70質量%以上のセグメントであることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、実質的に100質量%であってもよい。上記ブロック共重合体におけるBセグメント(ソフトセグメント)は、上記共役ジエン化合物(2種以上を併用し得る。)の共重合割合が70質量%以上のセグメントであることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、実質的に100質量%であってもよい。このようなブロック共重合体によると、より高性能な粘着シートが実現され得る。
【0023】
ベースポリマー(A)は、その30質量%以上がジブロック体であることが好ましい。このようなベースポリマー(A)によると、被着体に対する密着性のよい粘着シートが実現され得る。被着体に対する密着性がよいことは、各種被着体に対する剥離強度向上の観点から有利であり、低極性の被着体においては特に有意義である。より高い密着性を得る観点から、ベースポリマー(A)の全体質量に占めるジブロック体の割合(ジブロック体比率)は、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましく、60質量%以上(例えば65質量%以上)であることが特に好ましい。
【0024】
ベースポリマー(A)は、典型的には、ジブロック体と、ジブロック体以外のブロック共重合体とを含む。上記ジブロック体以外のブロック共重合体は、例えば、トリブロック体やペンタブロック体等の直鎖ブロック共重合体;放射状(radial)体;これらの混合物、等であり得る。ポリマー鎖の末端(直鎖ブロック共重合体の場合、好ましくは両末端)にAセグメントが配されていることが好ましい。ポリマー鎖の末端に配されたAセグメントは、集まってドメインを形成しやすく、これにより疑似的な架橋構造が形成されて粘着剤の凝集性が向上し得るためである。上記凝集性等の観点から、ベースポリマー(A)のジブロック体比率としては、90質量%以下が適当であり、85質量%以下(例えば80質量%以下)が好ましい。例えば、ジブロック体比率が60〜85質量%のブロック共重合体が好ましく、70〜85質量%(例えば70〜80質量%)のものがより好ましい。被着体表面への密着性等の観点から、ベースポリマー(A)のうち直鎖ブロック共重合体(ジブロック体やトリブロック体等を指し、放射状体を含まない。)の占める割合は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。
【0025】
ここに開示される技術の好ましい一態様では、上記ベースポリマー(A)がスチレン系ブロック共重合体である。例えば、上記ベースポリマー(A)がスチレンイソプレンブロック共重合体およびスチレンブタジエンブロック共重合体の少なくとも一方を含む態様が好ましい。粘着剤に含まれるスチレン系ブロック共重合体のうち、スチレンイソプレンブロック共重合体の割合が70質量%以上であるか、スチレンブタジエンブロック共重合体の割合が70質量%以上であるか、あるいはスチレンイソプレンブロック共重合体とスチレンブタジエンブロック共重合体との合計割合が70質量%以上であることが好ましい。好ましい一態様では、上記スチレン系ブロック共重合体の実質的に全部(例えば95〜100質量%)がスチレンイソプレンブロック共重合体である。他の好ましい一態様では、上記スチレン系ブロック共重合体の実質的に全部(例えば95〜100質量%)がスチレンブタジエンブロック共重合体である。このような組成によると、ここに開示される技術を適用することの効果がよりよく発揮され得る。
【0026】
上記スチレン系ブロック共重合体のスチレン含有量は、例えば、5〜40質量%であり得る。凝集性の観点から、通常は、スチレン含有量が10質量%以上、より好ましくは10質量%超、例えば12質量%以上であるスチレン系ブロック共重合体が好ましい。また、剥離強度の観点から、スチレン含有量は、典型的には35質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下であり、20質量%以下(典型的には20質量%未満、例えば18質量%以下)であることが特に好ましい。ここに開示される技術を適用することの効果をよりよく発揮させる観点から、スチレン含有量が12質量%以上20質量%未満のスチレン系ブロック共重合体を好ましく採用し得る。
【0027】
[粘着付与樹脂]
粘着剤層(A)は、典型的には、上記ベースポリマー(A)に加えて粘着付与樹脂を含む。粘着付与樹脂としては、石油樹脂、スチレン系樹脂、クマロン・インデン樹脂、テルペン樹脂、変性テルペン樹脂、ロジン系樹脂、ロジン誘導体樹脂、ケトン系樹脂等の、公知の各種粘着付与樹脂から選択される1種または2種以上を用いることができる。
【0028】
石油樹脂の例としては、脂肪族系(C5系)石油樹脂、芳香族系(C9系)石油樹脂、脂肪族/芳香族共重合系(C5/C9系)石油樹脂、これらの水素添加物(例えば、芳香族系石油樹脂に水素添加して得られる脂環族系石油樹脂)等が挙げられる。
【0029】
スチレン系樹脂の例としては、スチレンの単独重合体を主成分とするもの、α−メチルスチレンの単独重合体を主成分とするもの、ビニルトルエンの単独重合体を主成分とするもの、スチレン、α−メチルスチレンおよびビニルトルエンのうち2種以上をモノマー組成に含む共重合体を主成分とするもの(例えば、α−メチルスチレン/スチレン共重合体を主成分とするα−メチルスチレン/スチレン共重合体樹脂)等が挙げられる。
【0030】
クマロン・インデン樹脂としては、樹脂の骨格(主鎖)を構成するモノマー成分としてクマロンおよびインデンを含む樹脂を用いることができる。クマロンおよびインデン以外に樹脂の骨格に含まれ得るモノマー成分としては、スチレン、α−メチルスチレン、メチルインデン、ビニルトルエン等が例示される。
【0031】
テルペン樹脂の例としては、α−ピネン重合体、β−ピネン重合体、ジペンテン重合体等が挙げられる。変性テルペン樹脂の例としては、上記テルペン樹脂を変性(フェノール変性、スチレン変性、水素添加変性、炭化水素変性等)したものが挙げられる。具体的には、テルペンフェノール樹脂、スチレン変性テルペン樹脂、水素添加テルペン樹脂等が例示される。
上記「テルペンフェノール樹脂」とは、テルペン残基およびフェノール残基を含むポリマーを指し、テルペンとフェノール化合物との共重合体(テルペン−フェノール共重合体樹脂)と、テルペンの単独重合体または共重合体(テルペン樹脂、典型的には未変性テルペン樹脂)をフェノール変性したもの(フェノール変性テルペン樹脂)との双方を包含する概念である。上記テルペンフェノール樹脂を構成するテルペンの好適例としては、α−ピネン、β−ピネン、リモネン(d体、l体およびd/l体(ジペンテン)を包含する。)等のモノテルペンが挙げられる。
【0032】
ロジン系樹脂の具体的としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等の未変性ロジン(生ロジン);これらの未変性ロジンを水添化、不均化、重合等により変性した変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、その他の化学的に修飾されたロジン等);等が挙げられる。また、ロジン誘導体樹脂の例としては、未変性ロジンをアルコール類によりエステル化したもの(すなわち、ロジンのエステル化物)や、変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン等)をアルコール類によりエステル化したもの(すなわち、変性ロジンのエステル化物)等のロジンエステル類;未変性ロジンや変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン等)を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジン類;ロジンエステル類を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類;未変性ロジン、変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン等)、不飽和脂肪酸変性ロジン類または不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類におけるカルボキシル基を還元処理したロジンアルコール類;未変性ロジン、変性ロジン、各種ロジン誘導体等のロジン類(特に、ロジンエステル類)の金属塩;ロジン類(未変性ロジン、変性ロジン、各種ロジン誘導体等)にフェノールを酸触媒で付加させ熱重合することにより得られるロジンフェノール樹脂;等が挙げられる。
【0033】
(粘着付与樹脂T
H)
粘着剤層(A)は、上記粘着付与樹脂として、軟化点が120℃以上の粘着付与樹脂T
Hを含有することが好ましい。耐反撥性や高温凝集性の観点から、粘着付与樹脂T
Hの軟化点は、125℃以上が好ましく、130℃以上がより好ましく、135℃以上(例えば140℃以上)がさらに好ましい。また、被着体に対する剥離強度等の観点から、粘着付与樹脂T
Hの軟化点は、通常、200℃以下が適当であり、好ましくは180℃以下、より好ましくは170℃以下(例えば160℃以下)である。
【0034】
ここでいう粘着付与樹脂の軟化点は、JIS K5902およびJIS K2207に規定する軟化点試験方法(環球法)に基づいて測定された値として定義される。具体的には、試料をできるだけ低温ですみやかに融解し、これを平らな金属板の上に置いた環の中に、泡ができないように注意して満たす。冷えたのち、少し加熱した小刀で環の上端を含む平面から盛り上がった部分を切り去る。つぎに、径85mm以上、高さ127mm以上のガラス容器(加熱浴)の中に支持器(環台)を入れ、グリセリンを深さ90mm以上となるまで注ぐ。つぎに、鋼球(径9.5mm、重量3.5g)と、試料を満たした環とを互いに接触しないようにしてグリセリン中に浸し、グリセリンの温度を20℃プラスマイナス5℃に15分間保つ。つぎに、環中の試料の表面の中央に鋼球をのせ、これを支持器の上の定位置に置く。つぎに、環の上端からグリセリン面までの距離を50mmに保ち、温度計を置き、温度計の水銀球の中心の位置を環の中心と同じ高さとし、容器を加熱する。加熱に用いるブンゼンバーナーの炎は、容器の底の中心と縁との中間にあたるようにし、加熱を均等にする。なお、加熱が始まってから40℃に達したのちの浴温の上昇する割合は、毎分5.0プラスマイナス0.5℃でなければならない。試料がしだいに軟化して環から流れ落ち、ついに底板に接触したときの温度を読み、これを軟化点とする。軟化点の測定は、同時に2個以上行い、その平均値を採用する。
【0035】
(粘着付与樹脂T
HR1)
ここに開示される技術の好ましい一態様において、上記粘着付与樹脂T
Hは、芳香環を有しかつ水酸基価が30mgKOH/g以下である粘着付与樹脂T
HR1を含有し得る。このことによって高温凝集力を効果的に改善することができる。粘着付与樹脂T
HR1は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
粘着付与樹脂T
HR1の水酸基価は、10mgKOH/g未満であることが好ましく、5mgKOH/g未満がより好ましく、3mgKOH/g未満がさらに好ましい。例えば、水酸基価が1mgKOH/g未満であるか、あるいは水酸基が検出されない粘着付与樹脂T
HR1を好ましく使用し得る。
【0036】
芳香環を有する粘着付与樹脂の例としては、上述の芳香族系石油樹脂、脂肪族/芳香族共重合系石油樹脂、スチレン系樹脂、クマロン・インデン樹脂、スチレン変性テルペン樹脂、フェノール変性テルペン樹脂、ロジンフェノール樹脂等が挙げられる。これらのうち、軟化点が120℃以上(好ましくは130℃以上、例えば135℃以上)かつ水酸基価30mgKOH/g以下(好ましくは5mgKOH/g未満、例えば1mgKOH/g未満)であるものを粘着付与樹脂T
HR1として採用することができる。
【0037】
ここで、上記水酸基価の値としては、JIS K0070:1992に規定する電位差滴定法により測定される値を採用することができる。具体的な測定方法は以下に示すとおりである。
[水酸基価の測定方法]
1.試薬
(1)アセチル化試薬としては、無水酢酸約12.5g(約11.8mL)を取り、これにピリジンを加えて全量を50mLにし、充分に攪拌したものを使用する。または、無水酢酸約25g(約23.5mL)を取り、これにピリジンを加えて全量を100mLにし、充分に攪拌したものを使用する。
(2)測定試薬としては、0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液を使用する。
(3)その他、トルエン、ピリジン、エタノールおよび蒸留水を準備する。
2.操作
(1)平底フラスコに試料約2gを精秤採取し、アセチル化試薬5mLおよびピリジン10mLを加え、空気冷却管を装着する。
(2)上記フラスコを100℃の浴中で70分間加熱した後、放冷し、冷却管の上部から溶剤としてトルエン35mLを加えて攪拌した後、蒸留水1mLを加えて攪拌することにより無水酢酸を分解する。分解を完全にするため再度浴中で10分間加熱し、放冷する。
(3)エタノール5mLで冷却管を洗い、取り外す。次いで、溶剤としてピリジン50mLを加えて攪拌する。
(4)0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液を、ホールピペットを用いて25mL加える。
(5)0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液で電位差滴定を行う。得られた滴定曲線の変曲点を終点とする。
(6)空試験は、試料を入れないで上記(1)〜(5)を行う。
3.計算
以下の式により水酸基価を算出する。
水酸基価(mgKOH/g)=[(B−C)×f×28.05]/S+D
ここで、
B: 空試験に用いた0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液の量(mL)、
C: 試料に用いた0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液の量(mL)、
f: 0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液のファクター、
S: 試料の質量(g)、
D: 酸価、
28.05: 水酸化カリウムの分子量56.11の1/2、
である。
【0038】
粘着付与樹脂T
HR1として使用し得る材料の好適例として、芳香族系石油樹脂、脂肪族/芳香族共重合系石油樹脂、スチレン系樹脂およびクマロン・インデン樹脂が挙げられる。脂肪族/芳香族共重合系石油樹脂としては、C5留分の共重合割合が15質量%未満(より好ましくは10質量%未満、さらに好ましくは5質量%未満、例えば3質量%未満)のものが好ましい。また、C9留分の共重合割合が55質量%以上(より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは65質量%以上)のものが好ましい。
なかでも好ましい粘着付与樹脂T
HR1として、芳香族系石油樹脂およびスチレン系樹脂(例えば、α−メチルスチレン/スチレン共重合体樹脂)が挙げられる。
【0039】
ここに開示される技術を実施するにあたり、粘着付与樹脂T
HR1の使用により高温凝集性が改善される理由を明らかにする必要はないが、例えば以下のことが考えられる。すなわち、粘着付与樹脂T
HR1は、芳香環を有することから、モノビニル置換芳香族化合物を主モノマーとするハードセグメントが集まって形成されたドメイン(以下「ハードドメイン」ともいう。例えば、スチレン系ブロック共重合体におけるスチレンドメイン)に相溶しやすい。高軟化点の粘着付与樹脂T
HR1がハードドメインに相溶することにより、該ハードドメインによる疑似架橋の耐熱性が向上し得る。このことが粘着剤の高温凝集性の改善に寄与するものと考えられる。
ここで、一般的な傾向として、高軟化点の粘着付与樹脂T
Hは低軟化点の粘着付与樹脂T
Lに比べて相溶性が低い。このため、芳香環を有していても水酸基価の高い粘着付与樹脂T
Hは、ハードドメインに相溶し得る量が少なく、あるいはハードドメイン内でミクロ相分離を起こして該ハードドメイン内の均一性を損ないやすく、高温凝集性を向上させる効果を適切に発揮し難い。このことは、ベースポリマー(A)におけるハードセグメントの含有量(例えば、スチレン系ブロック共重合体におけるスチレン含有量)が比較的少ない組成ではさらに顕著である。
ここに開示される技術における粘着付与樹脂T
HR1は、高軟化点でありながら水酸基価が30mgKOH/g以下に制限されているので、ハードセグメントの含有量が比較的少ない組成(例えば、スチレン含有量が20質量%以下のスチレン系ブロック共重合体)においても該ハードドメインに適切に相溶し、これにより高温凝集性が効果的に改善されるものと考えられる。
【0040】
粘着付与樹脂T
HR1の使用量は特に制限されず、粘着シートの目的や用途に応じて適宜設定することができる。高温凝集性の観点から、通常は、ベースポリマー(A)100質量部に対する粘着付与樹脂T
HR1の使用量は、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましい。また、高温凝集性と剥離強度とを高レベルで両立させる観点から、ベースポリマー(A)100質量部に対する粘着付与樹脂T
HR1の使用量は、例えば100質量部以下とすることができ、通常は80質量部以下(例えば60質量部以下)が好ましい。あるいは、低温における粘着性能(例えば剥離強度)等の観点から、ベースポリマー(A)100質量部に対する粘着付与樹脂T
HR1の使用量は、40質量部以下としてもよく、30質量部以下(例えば25質量部以下)としてもよい。
【0041】
特に限定するものではないが、ベースポリマー(A)がスチレン系ブロック共重合体である態様において、該ブロック共重合体中のスチレン成分1質量部に対する粘着付与樹脂T
HR1の使用量は、例えば0.1質量部以上とすることができ、高温凝集性の観点から0.2質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましい。また、ブロック共重合体中のスチレン成分1質量部に対する粘着付与樹脂T
HR1の使用量は、例えば10質量部以下とすることができ、高温凝集性と剥離強度とを高レベルで両立させる観点から7質量部以下が好ましく、5質量部以下(例えば3質量部以下)がより好ましい。
【0042】
(粘着付与樹脂T
HR2)
ここに開示される技術の他の好ましい一態様において、上記粘着付与樹脂T
Hは、芳香環を有しかつイソプレン単位、テルペン骨格およびロジン骨格を実質的に含まない粘着付与樹脂T
HR2を含有し得る。このことによって高温凝集力を効果的に改善することができる。粘着付与樹脂T
HR2は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ここで、粘着付与樹脂T
HR2がイソプレン単位、テルペン骨格およびロジン骨格を実質的に含まないとは、これらの構造部分(すなわち、イソプレン単位、テルペン骨格およびロジン骨格)が粘着付与樹脂T
HR2に占める割合が合計10質量%未満(より好ましくは8質量%未満、さらに好ましくは5質量%未満、例えば3質量%未満)であることをいう。上記割合が0質量%であってもよい。なお、粘着付与樹脂T
HR2に占めるイソプレン単位、テルペン骨格およびロジン骨格の割合は、例えばNMR(核磁器共鳴スペクトル法)により測定することができる。
【0043】
芳香環を有しかつイソプレン単位、テルペン骨格およびロジン骨格を実質的に含まない粘着付与樹脂の例としては、上述の芳香族系石油樹脂、脂肪族/芳香族共重合系石油樹脂、スチレン系樹脂、クマロン・インデン樹脂等が挙げられる。これらのうち軟化点が120℃以上(好ましくは130℃以上、例えば135℃以上)であるものを粘着付与樹脂T
HR2として採用することができる。
なかでも好ましい粘着付与樹脂T
HR2として、芳香族系石油樹脂およびスチレン系樹脂(例えば、α−メチルスチレン/スチレン共重合体樹脂)が挙げられる。
【0044】
粘着付与樹脂T
HR2は、モノビニル置換芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体(例えば、スチレン系ブロック共重合体)のハードドメイン(例えばスチレンドメイン)に相溶しやすい芳香環を有し、かつソフトセグメント(共役ジエン化合物を主モノマーとするセグメント)との親和性の高いイソプレン単位、テルペン骨格およびロジン骨格を実質的に含まない。このため、上記ブロック共重合体をベースポリマー(A)とする粘着剤に配合された粘着付与樹脂T
HR2は上記ハードドメインに集中的に分配され(相溶し)、これにより該ハードドメインによる疑似架橋の耐熱性を効率よく向上させることができる。また、イソプレン単位、テルペン骨格およびロジン骨格を実質的に含まないことにより、高軟化点の粘着付与樹脂T
HR2がソフトセグメントに相溶しすぎることで生じ得る弊害(剥離強度の低下、ハードドメインへの相溶量が不足することによる高温凝集性向上効果の減少等)を回避または抑制し得る。これにより、高温凝集性と剥離強度とが高レベルで両立した粘着シートが実現され得る。
【0045】
粘着付与樹脂T
HR2の使用量は特に制限されず、粘着シートの目的や用途に応じて適宜設定することができる。高温凝集性の観点から、通常は、ベースポリマー(A)100質量部に対する粘着付与樹脂T
HR2の使用量は、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましい。また、高温凝集性と剥離強度とを高レベルで両立させる観点から、ベースポリマー(A)100質量部に対する粘着付与樹脂T
HR2の使用量は、例えば100質量部以下とすることができ、通常は80質量部以下(例えば60質量部以下)が好ましい。低温における粘着性能(例えば剥離強度)等の観点から、ベースポリマー(A)100質量部に対する粘着付与樹脂T
HR2の使用量は、40質量部以下としてもよく、30質量部以下(例えば25質量部以下)としてもよい。
【0046】
特に限定するものではないが、ベースポリマー(A)がスチレン系ブロック共重合体である態様において、該ブロック共重合体中のスチレン成分1質量部に対する粘着付与樹脂T
HR2の使用量は、例えば0.1質量部以上とすることができ、高温凝集性の観点から0.2質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましい。また、ブロック共重合体中のスチレン成分1質量部に対する粘着付与樹脂T
HR2の使用量は、例えば10質量部以下とすることができ、高温凝集性と剥離強度とを高レベルで両立させる観点から7質量部以下が好ましく、5質量部以下(例えば3質量部以下)がより好ましい。
【0047】
特に限定するものではないが、粘着付与樹脂T
HR2としては、粘着付与樹脂T
HR1と同様の理由により、水酸基価が30mgKOH/g以下(好ましくは5mgKOH/g未満、例えば1mgKOH/g未満)のものを好ましく採用し得る。したがって、ここに開示される技術における粘着付与樹脂T
HR2としては、粘着付与樹脂T
HR1にも該当するものを好ましく使用し得る。同様に、ここに開示される技術における粘着付与樹脂T
HR1としては、粘着付与樹脂T
HR2にも該当するものを好ましく使用し得る。
【0048】
ここに開示される技術は、目的や用途等に応じて、粘着付与樹脂T
HR1および/またはT
HR2と他の粘着付与樹脂とを併用する態様で好ましく実施され得る。あるいはまた、粘着付与樹脂T
HR1およびT
HR2のいずれも含まず、粘着付与樹脂として、他の粘着付与樹脂のみを用いる態様でも好ましく実施され得る。あるいは、ここに開示される技術は、粘着付与樹脂を含まない態様で実施してもよい。
【0049】
(粘着付与樹脂T
L)
他の粘着付与樹脂を含む態様の一好適例として、軟化点120℃未満の粘着付与樹脂T
Lを含む態様が挙げられる。かかる態様によると、例えば、より剥離強度に優れた粘着シートが実現され得る。
粘着付与樹脂T
Lの軟化点の下限は特に制限されない。通常は、軟化点が40℃以上(典型的には60℃以上)のものを好ましく用いることができる。高温凝集性と剥離強度とを高レベルで両立させる観点から、通常は、軟化点が80℃以上(より好ましくは100℃以上)120℃未満の粘着付与樹脂T
Lを好ましく採用することができる。なかでも、軟化点が110℃以上120℃未満の粘着付与樹脂T
Lの使用が好ましい。
【0050】
粘着付与樹脂T
Lの水酸基価や構造(例えば、芳香環の有無、イソプレン単位の有無、テルペン骨格の有無、ロジン骨格の有無等)は特に限定されない。上述した各種の粘着付与樹脂(石油樹脂、スチレン系樹脂、クマロン・インデン樹脂、テルペン樹脂、変性テルペン樹脂、ロジン系樹脂、ロジン誘導体樹脂、ケトン系樹脂等)であって軟化点が120℃未満のものを適宜選択して用いることができる。
【0051】
ここに開示される技術は、粘着剤層(A)が、石油樹脂およびテルペン樹脂の少なくとも一方を粘着付与樹脂T
Lとして含む態様で好ましく実施され得る。例えば、粘着付与樹脂T
Lの主成分(すなわち、粘着付与樹脂T
Lのうちの50質量%超を占める成分)が、石油樹脂である組成、テルペン樹脂である組成、石油樹脂とテルペン樹脂との組み合わせである組成、等を好ましく採用し得る。粘着力および相溶性の観点から、粘着付与樹脂T
Lの主成分がテルペン樹脂(例えば、β−ピネン重合体)である態様が好ましい。粘着付与樹脂T
Lの実質的に全部(例えば95質量%以上)がテルペン樹脂であってもよい。
【0052】
(粘着付与樹脂T
HO)
他の粘着付与樹脂を含む態様の一好適例として、軟化点が120℃以上であって、かつ粘着付与樹脂T
HR1およびT
HR2の少なくとも一方に該当しない粘着付与樹脂T
H(以下「粘着付与樹脂T
HO」と表記することがある。)を含む態様が挙げられる。粘着付与樹脂T
HOの使用は、例えば、耐反撥性や定荷重剥離特性等の性能の向上に役立ち得る。
【0053】
粘着付与樹脂T
HOとしては、例えば、テルペンフェノール樹脂、ロジンフェノール樹脂、重合ロジン、重合ロジンのエステル化物等を用いることができる。このような粘着付与樹脂T
HOは、1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましい一態様として、粘着付与樹脂T
HOとして1種または2種以上のテルペンフェノール樹脂を用いる態様が挙げられる。例えば、粘着付与樹脂T
HOの25質量%以上(より好ましくは30質量%以上)がテルペンフェノール樹脂である態様が好ましい。粘着付与樹脂T
HOの50質量%以上(より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、例えば90質量%以上)がテルペンフェノール樹脂であってもよく、粘着付与樹脂T
HOの実質的に全部(例えば95質量%以上)がテルペンフェノール樹脂であってもよい。軟化点が120℃以上200℃以下(典型的には130℃以上180℃以下、例えば135℃以上170℃以下)のテルペンフェノール樹脂を好ましく採用することができる。
【0054】
ここに開示される技術は、例えば、粘着付与樹脂T
HOとして、水酸基価が80mgKOH/g以上(例えば90mgKOH/g以上)の粘着付与樹脂(T
HO1)を含む態様で好ましく実施され得る。粘着付与樹脂T
HO1の水酸基価は、典型的には200mgKOH/g以下であり、好ましくは180mgKOH/g以下(例えば160mgKOH/g以下)である。上記水酸基価の値としては、上述したJIS K0070:1992に規定する電位差滴定法により測定される値、具体的には、上述した水酸基価の測定方法を適用した値を採用することができる。かかる粘着付与樹脂T
HO1を含む粘着剤によると、より高性能な粘着シートが実現され得る。例えば、高温凝集性と他の特性(例えば耐反撥性や定荷重剥離特性等)とをより高レベルで両立する粘着シートが実現され得る。
【0055】
粘着付与樹脂T
HO1としては、上述した各種の粘着付与樹脂のうち所定値以上の水酸基価を有するものを、1種を単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。好ましい一態様では、粘着付与樹脂T
HO1として、少なくともテルペンフェノール樹脂を使用する。テルペンフェノール樹脂は、フェノールの共重合割合によって水酸基価を任意にコントロールすることができるので好ましい。粘着付与樹脂T
HO1のうち50質量%以上(より好ましくは70質量%以上、例えば90質量%以上)がテルペンフェノール樹脂であることが好ましく、実質的に全部(例えば95〜100質量%、さらには99〜100質量%)がテルペンフェノール樹脂であってもよい。
【0056】
粘着剤層(A)は、粘着付与樹脂T
HOとして、水酸基価が0以上80mgKOH/g未満の粘着付与樹脂(T
HO2)を含有してもよい。粘着付与樹脂T
HO2は、粘着付与樹脂T
HO1に代えて用いてもよく、粘着付与樹脂T
HO1と組み合わせて用いてもよい。好ましい一態様として、水酸基価が80mgKOH/g以上の粘着付与樹脂T
HO1と、粘着付与樹脂T
HO2とを含む態様が挙げられる。粘着付与樹脂T
HO2としては、上述した各種の粘着付与樹脂のうち水酸基価が上記範囲にあるものを、1種を単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。例えば、水酸基価が0以上80mgKOH/g未満のテルペンフェノール樹脂、石油樹脂(例えば、C5系石油樹脂)、テルペン樹脂(例えば、β−ピネン重合体)、ロジン系樹脂(例えば、重合ロジン)、ロジン誘導体樹脂(例えば、重合ロジンのエステル化物)等を用いることができる。
【0057】
ここに開示される技術は、粘着剤層(A)が、水酸基価80mgKOH/g以上(典型的には80〜160mgKOH/g、例えば80〜140mgKOH/g)の粘着付与樹脂T
HO1と、水酸基価40mgKOH/g以上80mgKOH/g未満の粘着付与樹脂T
HO2とを組み合わせて含む態様で好ましく実施され得る。この場合において、T
HO1とT
HO2との使用量の関係は、例えば、質量比(T
HO1:T
HO2)が1:5〜5:1の範囲となるように設定することができ、通常は1:3〜3:1(例えば1:2〜2:1)の範囲となるように設定することが適当である。好ましい一態様として、T
HO1,T
HO2がいずれもテルペンフェノール樹脂である態様が挙げられる。
【0058】
粘着剤層(A)に含まれる粘着付与樹脂の総量は特に限定されないが、高温凝集性と剥離強度とを両立する観点から、通常は、ベースポリマー(A)100質量部に対して20質量部以上とすることが適当であり、30質量部以上が好ましく、40質量部以上(例えば50質量部以上)がより好ましい。また、低温特性(例えば低温剥離強度)等の観点から、ベースポリマー(A)100質量部に対する粘着付与樹脂の総量は、通常、200質量部以下が適当であり、150質量部以下が好ましく、120質量部以下(例えば100質量部以下)がより好ましい。
【0059】
特に限定するものではないが、ベースポリマー(A)100質量部に対する粘着付与樹脂T
Hの総量(すなわち、軟化点120℃以上の粘着付与樹脂の総量)は、高温凝集性や耐反撥性等の観点から、例えば10質量部以上とすることができ、20質量部以上(例えば25質量部以上)が好ましい。低極性の被着体に対する剥離強度の観点から、上記粘着付与樹脂T
Hの総量を30質量部以上とすることができ、さらに35質量部以上(例えば40質量部以上)とすることができる。また、柔軟性や低温特性(例えば低温剥離強度)等の観点から、ベースポリマー(A)100質量部に対する粘着付与樹脂T
Hの含有量は、通常、120質量部以下が適当であり、好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下(例えば70質量部以下)である。より低温特性を重視する観点から、ベースポリマー(A)100質量部に対する粘着付与樹脂T
Hの総量を60質量部以下としてもよく、さらに50質量部以下としてもよい。
【0060】
粘着付与樹脂T
Lを含む態様において、ベースポリマー(A)100質量部に対する粘着付与樹脂T
Lの総量は特に限定されないが、例えば10質量部以上とすることができ、剥離強度の観点から15質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましい。また、ベースポリマー(A)100質量部に対する粘着付与樹脂T
Lの総量は、高温凝集性や耐反撥性の観点から、120質量部以下が適当であり、90質量部以下が好ましく、70質量部以下(例えば60質量部以下)がより好ましい。粘着付与樹脂T
Lの含有量を50質量部以下としてもよく、さらに40質量部以下としてもよい。
粘着剤層(A)に含まれる粘着付与樹脂の総量のうち粘着付与樹脂T
Lの占める割合は特に限定されず、例えば10〜70質量%とすることができ、通常は20〜50質量%とすることが好ましい。
【0061】
粘着剤層(A)が粘着付与樹脂T
Lと粘着付与樹脂T
Hとを含む場合、それらの使用量の関係は、T
L:T
Hの質量比が1:5〜3:1(より好ましくは1:5〜2:1)となるように設定することが好ましい。ここに開示される技術は、上記粘着剤が、粘着付与樹脂としてT
LよりもT
Hを多く含む態様で好ましく実施され得る。このような粘着シートは、より高性能なものとなり得る。例えば、T
L:T
Hの質量比が1:1.2〜1:5である態様が好ましい。
粘着剤層(A)に含まれる粘着付与樹脂の総量のうち粘着付与樹脂T
Hの占める割合は、特に限定されない。上記割合は、例えば30〜90質量%とすることができ、通常は50〜80質量%とすることが好ましい。
【0062】
特に限定するものではないが、ここに開示される技術において、粘着剤層(A)に含まれる粘着付与樹脂の総量のうち粘着付与樹脂T
HR1の占める割合は、例えば1〜100質量%とすることができ、通常は5〜80質量%が好ましく、10〜70質量%がより好ましく、20〜60質量%がさらに好ましい。粘着剤組成物に含まれる粘着付与樹脂の総量のうち粘着付与樹脂T
HR2の占める割合についても同様である。
【0063】
[イソシアネート化合物]
粘着剤層(A)を形成するために用いられる粘着剤組成物は、イソシアネート化合物を含有し得る。かかる粘着剤組成物によると、より高性能な(例えば、耐反撥性や定荷重剥離特性に優れた)粘着シートが実現され得る。イソシアネート化合物としては、多官能イソシアネート(1分子当たり平均2個以上のイソシアネート基を有する化合物をいい、イソシアヌレート構造を有するものを包含する。)が好ましく使用され得る。かかる多官能イソシアネートとしては、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する各種のイソシアネート化合物(ポリイソシアネート)から選択される1種または2種以上を用いることができる。かかる多官能イソシアネートの例として、脂肪族ポリイソシアネート類、脂環族ポリイソシアネート類、芳香族ポリイソシアネート類等が挙げられる。
【0064】
脂肪族ポリイソシアネート類の具体例としては、1,2−エチレンジイソシアネート;1,2−テトラメチレンジイソシアネート、1,3−テトラメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート等のテトラメチレンジイソシアネート;1,2−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,5−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,5−ヘキサメチレンジイソシアネート等のヘキサメチレンジイソシアネート;2−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、等が挙げられる。
【0065】
脂環族ポリイソシアネート類の具体例としては、イソホロンジイソシアネート;1,2−シクロヘキシルジイソシアネート、1,3−シクロヘキシルジイソシアネート、1,4−シクロヘキシルジイソシアネート等のシクロヘキシルジイソシアネート;1,2−シクロペンチルジイソシアネート、1,3−シクロペンチルジイソシアネート等のシクロペンチルジイソシアネート;水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、等が挙げられる。
【0066】
芳香族ポリイソシアネート類の具体例としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、2,2’−ジフェニルプロパン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ナフチレン−1,4−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、キシリレン−1,4−ジイソシアネート、キシリレン−1,3−ジイソシアネート等が挙げられる。
【0067】
好ましいイソシアネート化合物として、1分子当たり平均して3個以上のイソシアネート基を有する多官能イソシアネートが例示される。かかる3官能以上のイソシアネートは、2官能または3官能以上のイソシアネートの多量体(典型的には2量体または3量体)、誘導体(例えば、多価アルコールと2分子以上の多官能イソシアネートとの付加反応生成物)、重合物等であり得る。例えば、ジフェニルメタンジイソシアネートの2量体や3量体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(イソシアヌレート構造の3量体付加物)、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとの反応生成物、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネート、等の多官能イソシアネートが挙げられる。かかる多官能イソシアネートの市販品としては、旭化成ケミカルズ社製の商品名「デュラネートTPA−100」、日本ポリウレタン工業社製の商品名「コロネートL」、同「コロネートHL」、同「コロネートHK」、同「コロネートHX」、同「コロネート2096」等が挙げられる。
【0068】
イソシアネート化合物を用いる場合、その使用量は特に限定されないが、例えばベースポリマー(A)100質量部に対して0質量部を超えて10質量部以下(典型的には0.01〜10質量部)とすることができる。通常は、ベースポリマー(A)100質量部に対するイソシアネート化合物の使用量を0.1〜10質量部とすることが適当であり、0.1〜5質量部(典型的には0.3〜3質量部、例えば0.5〜1質量部)とすることが好ましい。かかる範囲でイソシアネート化合物を用いることにより、特に性能バランスに優れた粘着シートが実現され得る。
【0069】
[その他成分]
粘着剤層(A)は、必要に応じて、ベースポリマー(A)以外のポリマーを1種または2種以上含有し得る。かかるポリマーは、粘着剤の分野において公知のゴム系ポリマー、アクリル系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、ポリエーテル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、フッ素系ポリマー等であり得る。粘着剤層(A)がベースポリマー(A)以外のポリマーを含む場合において、該ポリマーの使用量は、ベースポリマー(A)100質量部あたり、通常は50質量部以下とすることが適当であり、好ましくは30質量部以下、より好ましくは10質量部以下(例えば5質量部以下)である。ここに開示される技術は、粘着剤層(A)がベースポリマー(A)以外のポリマーを実質的に含有しない態様(例えば、ベースポリマー(A)100質量部当たりの含有量が0〜3質量部である態様)で好ましく実施され得る。
【0070】
粘着剤層(A)は、必要に応じて、レベリング剤、架橋剤、架橋助剤、可塑剤、軟化剤、充填剤、着色剤(顔料、染料等)、帯電防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤等の、粘着剤の分野において一般的な各種の添加剤を含有し得る。このような各種添加剤については、従来公知のものを常法により使用することができる。ここに開示される粘着剤は、ポリブテン等の液状ゴムを実質的に含有しない(例えば、ベースポリマー(A)100質量部当たりの含有量が1質量部以下であり、0質量部であってもよい。)態様で好ましく実施され得る。かかる粘着剤によると、より耐反撥性および/または定荷重剥離特性に優れた粘着シートが実現され得る。
【0071】
好ましい一態様において、粘着剤層(A)は、ベースポリマー(A)と粘着付与樹脂との合計量が、該粘着剤層(A)の90質量%以上を占める組成であり得る。例えば、ベースポリマー(A)と粘着付与樹脂との合計量が粘着剤層(A)の90〜99.8質量%(典型的には、例えば95〜99.5質量%)を占める態様を好ましく採用し得る。
【0072】
粘着剤層(A)を形成するために用いられる粘着剤組成物の形態は、特に限定されない。例えば、上述のような組成の粘着剤(粘着成分)を有機溶媒中に含む形態(溶剤型)の粘着剤組成物、粘着剤が水性溶媒に分散した形態の粘着剤組成物(水分散型粘着剤組成物、典型的には水性エマルション型粘着剤組成物)、ホットメルト型の粘着剤組成物、等であり得る。塗工性や基材の選択自由度等の観点から、溶剤型または水分散型の粘着剤組成物を好ましく採用し得る。
【0073】
より高い粘着性能を実現する観点から、溶剤型の粘着剤組成物が特に好ましい。溶剤型粘着剤組成物は、典型的には、上述した各成分を有機溶媒中に含む溶液の形態に調製される。上記有機溶媒は、公知ないし慣用の有機溶媒から適宜選択することができる。例えば、トルエン、キシレン等の芳香族化合物類(典型的には芳香族炭化水素類);酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類;ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族または脂環式炭化水素類;1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化アルカン類;メチルエチルケトン、アセチルアセトン等のケトン類;等から選択されるいずれか1種の溶媒、または2種以上の混合溶媒を用いることができる。
特に限定するものではないが、通常は、上記溶剤型粘着剤組成物を固形分(NV)30〜65質量%(例えば40〜55質量%)に調製することが適当である。NVが低すぎると製造コストが高くなりがちであり、NVが高すぎると塗工性等の取扱性が低下することがある。
【0074】
粘着剤組成物から粘着剤層(A)を形成する方法としては、従来公知の種々の方法を適用し得る。例えば、所定の表面に粘着剤組成物を塗付して硬化させることにより該表面上に粘着剤層(A)を形成する方法を採用することができる。粘着剤組成物の硬化方法としては、乾燥させる(溶媒を除去する)方法や、活性エネルギー線(例えば紫外線)を照射する方法等を好ましく採用することができる。
粘着剤組成物の塗付は、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等の、公知ないし慣用のコーターを用いて行うことができる。
架橋反応の促進、製造効率向上等の観点から、粘着剤組成物の乾燥は加熱下で行うことが好ましい。乾燥温度は特に限定されず、典型的には40℃〜150℃、好ましくは50℃〜140℃、例えば60℃〜130℃程度とすることができる。乾燥時間は特に限定されないが、通常は数十秒から数分程度(例えば凡そ10分以内、好ましくは30秒〜5分程度)とすることが適当である。その後、必要に応じて追加の乾燥工程を設けてもよい。
活性エネルギー線の照射は、市販の活性エネルギー線照射装置(例えば紫外線照射装置)を用いて、常法により行うことができる。
粘着剤層(A)は、典型的には連続的に形成されるが、目的および用途によっては点状、ストライプ状等の規則的あるいはランダムなパターンに形成されてもよい。
【0075】
粘着剤層(A)および粘弾性体層(B)を含む粘着シートを形成する方法は特に限定されない。例えば、剥離性のよい表面(剥離面、例えば剥離ライナーの表面)上に粘着剤層(A)を形成し、その粘着剤層(A)を粘弾性体層(B)の表面に貼り合わせる(転写する)方法を好ましく採用し得る。また、粘着剤層(A)を形成するための粘着剤組成物を粘弾性体層(B)の表面に塗付して硬化(例えば乾燥)させることで粘弾性体層(B)の表面上に粘着剤層(A)を形成してもよい。あるいは、粘弾性体層(B)を形成するための組成物を粘着剤層(A)の表面に塗付して硬化(例えば紫外線硬化)させることで粘着剤層(A)の上に粘弾性体層(B)を形成してもよい。
【0076】
<粘弾性体層(B)>
[ベースポリマー(B)]
粘弾性体層(B)の組成は、室温付近の温度域において粘弾性体の性質を示すものであればよく、特に限定されない。粘弾性体層(B)は、アクリル系粘弾性体、ゴム系粘弾性体、シリコーン系粘弾性体、ポリエステル系粘弾性体、ウレタン系粘弾性体、ポリエーテル系粘弾性体、ポリアミド系粘弾性体、フッ素系粘弾性体等の各種の粘弾性体から選択される1種または2種以上を含んで構成された層であり得る。ここで、アクリル系粘弾性体とは、アクリル系ポリマーをベースポリマー(ポリマー成分のなかの主成分、すなわち50質量%を超えて含まれる成分)とする粘弾性体をいう。ゴム系その他の粘弾性体についても同様の意味である。なお、ここでいう粘弾性体は、粘性と弾性の性質を併せ持つ材料、すなわち、複素弾性率の位相が0を超えてπ/2未満、を満たす性質を有する材料(典型的には25℃において上記性質を有する材料)である。柔軟性等の観点から、複素引張弾性率E
*(1Hz)<10
7dyne/cm
2を満たす性質を有する材料(典型的には、25℃において上記性質を有する材料)が好ましい。
【0077】
粘弾性体層(B)は、粘着層であってもよく、非粘着層であってもよい。ここで「粘着層」とは、JIS Z0237(2004)に準じて、SUS304ステンレス鋼板を被着体とし、23℃の測定環境下において2kgのローラを1往復させて上記被着体に圧着してから30分後に引張速度300mm/分の条件で180°方向に剥離した場合の剥離強度が0.1N/20mm以上である層をいう。粘着剤層ともいう。また、「非粘着層」とは、上記粘着層に該当しない層をいい、典型的には上記剥離強度が0.1N/20mm未満である層をいう。23℃の測定環境下において2kgのローラを1往復させてSUS304ステンレス鋼板に圧着した場合に該ステンレス鋼板に貼り付かない層(実質的に粘着性を示さない層)は、ここでいう非粘着層の概念に含まれる典型例である。特に限定するものではないが、ここに開示される技術は、粘着層に該当する粘弾性体層(B)を含む形態、すなわち粘弾性体層(B)としての粘着剤層(B)を含む粘着シートの形態で好ましく実施され得る。
【0078】
好ましい一態様において、粘弾性体層(B)は、ベースポリマー(B)としてアクリル系ポリマーを含む層、すなわちアクリル系粘弾性体層であり得る。かかる組成の粘弾性体層(B)は、柔軟性と凝集性とのバランスを調節しやすいので好ましい。粘弾性体層(B)に占めるアクリル系ポリマーの割合は特に限定されないが、典型的には50質量%以上であり、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。
【0079】
上記アクリル系ポリマーとしては、例えば、アルキル(メタ)アクリレートを主モノマーとして含み、該主モノマーと共重合性を有する副モノマーをさらに含み得るモノマー原料の重合物が好ましい。ここで主モノマーとは、上記モノマー原料に含まれる全モノマー成分の50質量%超を占める成分をいう。上記モノマー原料に含まれるモノマー成分の組成は、典型的には、アクリル系ポリマーに含まれるモノマーユニットの組成と概ね一致する。
【0080】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば下記式(1)で表される化合物を好適に用いることができる。
CH
2=C(R
1)COOR
2 (1)
ここで、上記式(1)中のR
1は水素原子またはメチル基である。また、R
2は炭素原子数1〜20のアルキル基(以下、このような炭素原子数の範囲を「C
1−20」と表すことがある。)である。粘着剤の貯蔵弾性率等の観点から、R
2がC
1−14のアルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、R
2がC
1−10のアルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートがより好ましく、R
2がブチル基または2−エチルヘキシル基であるアルキル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0081】
R
2がC
1−20のアルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらアルキル(メタ)アクリレートは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。特に好ましいアルキル(メタ)アクリレートとして、n−ブチルアクリレート(BA)および2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)が挙げられる。
【0082】
特に限定するものではないが、アルキル(メタ)アクリレートの量は、例えば、アクリル系ポリマーを構成する全モノマー成分の60質量%以上とすることができ、通常は70質量%以上とすることが好ましく、80質量%以上とすることがより好ましい。粘弾性体層(B)の凝集性等の観点から、アルキル(メタ)アクリレートの量は、99.5質量%以下が適当であり、好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下である。
【0083】
副モノマーの例としては、官能基を有するモノマー(以下「官能基含有モノマー」ともいう。)が挙げられる。かかる官能基含有モノマーは、アクリル系ポリマーに架橋点を導入し、粘弾性体層(B)の凝集力を高める目的で使用され得る。そのような官能基含有モノマーとしては、
例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和モノカルボン酸や、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸等の、カルボキシル基含有モノマーおよびその金属塩(例えばアルカリ金属塩);
例えば無水マレイン酸、無水イタコン酸等の、上記エチレン性不飽和ジカルボン酸の酸無水物等の酸無水物基含有モノマー;
例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類や、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ビニルアルコール、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル等の不飽和アルコール類等の、ヒドロキシル基(水酸基)含有モノマー;
例えば(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー;
例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノ基含有モノマー;
例えばスチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー;
例えば2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等のリン酸基含有モノマー;
例えば2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンのようなオキサゾリン基含有モノマー;
例えば(メタ)アクリロイルアジリジン、2−アジリジニルエチル(メタ)アクリレートのようなアジリジン基含有モノマー;
例えばアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマー;
例えばグリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基(グリシジル基)含有モノマー;
例えばジアセトン(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリレート、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、アリルアセトアセテート、ビニルアセトアセテート等のケト基含有モノマー;
例えば2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等のイソシアネート基含有モノマー;
例えばメトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、プロポキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート等のアルコキシ基含有モノマー;
例えば3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等のアルコキシシリル基含有モノマー;
その他、ビニル基を重合したモノマー末端にラジカル重合性ビニル基を有するマクロモノマー等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0084】
副モノマーとして上述のような官能基含有モノマーを使用する場合、その使用量は、所望の凝集力が実現されるように適宜選択すればよく、特に限定されない。官能基含有モノマーの使用量は、例えば、アクリル系ポリマーを構成する全モノマー成分の0.5質量%以上とすることができ、通常は1質量%以上とすることが適当であり、3質量%以上とすることが好ましく、5質量%以上とすることがさらに好ましい。また、柔軟性と凝集力とをバランス良く両立させる観点から、官能基含有モノマーの量は、全モノマー成分の30質量%以下とすることが適当であり、25質量%以下とすることが好ましく、20質量%以下とすることがより好ましい。
【0085】
上記モノマー原料は、ガラス転移温度(Tg)の調整や凝集力の向上等の目的で、上述した官能基含有モノマー以外の副モノマーを含んでもよい。そのような副モノマーとしては、
例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、安息香酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル;
例えばスチレン、置換スチレン(α−メチルスチレン等)、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;
例えばアリール(メタ)アクリレート(例えばフェニル(メタ)アクリレート)、アリールオキシアルキル(メタ)アクリレート(例えばフェノキシエチル(メタ)アクリレート)、アリールアルキル(メタ)アクリレート(例えばベンジル(メタ)アクリレート)等の芳香族性環含有(メタ)アクリレート;
例えばN−ビニル−2−ピロリドン、N−メチルビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾール、N−ビニルモルホリン、N−ビニルカプロラクタム、N−(メタ)アクリロイルモルホリン等の窒素原子含有環を有するモノマー;
例えばエチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレン等のオレフィン系モノマー;
例えば塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩素含有モノマー;
例えばメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー;
等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。このような副モノマーの使用量は、目的および用途に応じて適宜選択すればよく特に限定されないが、例えば、全モノマー成分の10質量%以下とすることが好ましい。
【0086】
上記モノマー原料は、架橋等を目的として、多官能モノマーを必要に応じて含んでもよい。そのような多官能モノマーとしては、例えば1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の、1分子中に2以上の重合性官能基(典型的には(メタ)アクリロイル基)を有するモノマーが挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。反応性等の観点から、通常は、1分子中に2以上(典型的には3以上)のアクリロイル基を有する多官能モノマーが好ましい。このような多官能モノマーを使用する場合、その使用量は特に制限されないが、粘弾性体層(B)の柔軟性の観点から、通常は全モノマー成分の2質量%以下(より好ましくは1質量%以下)とすることが適当である。
【0087】
アクリル系ポリマーのモノマー組成は、該アクリル系ポリマーのTgが例えば−70℃以上−10℃以下となるように設定され得る。柔軟性の観点から、アクリル系ポリマーのTgとしては、−20℃以下が適当であり、−30℃以下が好ましく、−40℃以下がより好ましく、−50℃以下がさらに好ましい。また、粘弾性体層(B)の凝集性の観点から、通常、上記Tgは−65℃以上であることが好ましい。
【0088】
ここで、アクリル系ポリマーのTgとは、該アクリル系ポリマーを構成する各モノマーの単独重合体(ホモポリマー)のTgおよび該モノマーの質量分率(質量基準の共重合割合)に基づいてフォックス(Fox)の式から求められる値をいう。したがって、アクリル系ポリマーのTgは、そのモノマー組成(すなわち、アクリル系ポリマーの合成に使用するモノマーの種類や使用量比)を適宜変えることにより調整することができる。
ホモポリマーのTgとしては、公知資料に記載の値を採用するものとする。
【0089】
ここに開示される技術では、上記ホモポリマーのTgとして、具体的には以下の値を用いるものとする。
2−エチルヘキシルアクリレート −70℃
n−ブチルアクリレート −55℃
メチルアクリレート 8℃
メチルメタクリレート 105℃
アクリル酸 106℃
メタクリル酸 130℃
上記で例示した以外のホモポリマーのTgについては、「Polymer Handbook」(第3版、John Wiley & Sons,Inc、1989年)に記載の数値を用いるものとする。
【0090】
「Polymer Handbook」(第3版、John Wiley & Sons,Inc、1989年)にも記載されていない場合には、以下の測定方法により得られる値を用いるものとする(特開2007−51271号公報参照)。
具体的には、温度計、攪拌機、窒素導入管及び還流冷却管を備えた反応器に、モノマー100質量部、アゾビスイソブチロニトリル0.2質量部および重合溶媒として酢酸エチル200質量部を投入し、窒素ガスを流通させながら1時間攪拌する。このようにして重合系内の酸素を除去した後、63℃に昇温し10時間反応させる。次いで、室温まで冷却し、固形分濃度33質量%のホモポリマー溶液を得る。このホモポリマー溶液を剥離ライナー上に流延塗付し、乾燥して厚さ約2mmの試験サンプル(シート状のホモポリマー)を作製する。この試験サンプルを直径7.9mmの円盤状に打ち抜き、パラレルプレートで挟み込み、粘弾性試験機(ARES、レオメトリックス社製)を用いて周波数1Hzのせん断歪みを与えながら、温度領域−70〜150℃、5℃/分の昇温速度でせん断モードにより粘弾性を測定し、tanδのピークトップ温度をホモポリマーのTgとする。
【0091】
上記アクリル系ポリマーは、公知あるいは慣用の重合方法により調整することができる。重合方法としては、例えば、溶液重合、エマルション重合、塊状重合等の熱重合(典型的には、熱重合開始剤の存在下で行われる。);紫外線等の光やβ線、γ線等の放射線等のような活性エネルギー線を照射して行う活性エネルギー線重合;等を適宜採用することができる。ここでいう活性エネルギー線重合の例には、紫外線等の光を照射して行う光重合(典型的には、光重合開始剤の存在下で行われる。)と、α線、β線、γ線、中性子線、電子線等の電離性放射線を照射して行う放射線重合とが含まれる。これらの重合方法は、1種を単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0092】
重合にあたっては、重合方法や重合態様等に応じて、公知または慣用の重合開始剤を使用し得る。重合開始剤は、1種を単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
重合時間を短くすることができる利点等から、光重合開始剤を好適に用いることができる。光重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えばケタール系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、α−ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤等を用いることができる。
【0093】
ケタール系光重合開始剤の具体例には、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(例えば、BASF社製の商品名「イルガキュア651」)等が含まれる。
アセトフェノン系光重合開始剤の具体例には、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニル−ケトン(例えば、BASF社製の商品名「イルガキュア184」)、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(例えば、BASF社製の商品名「イルガキュア2959」)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(例えば、BASF社製の商品名「ダロキュア1173」)、メトキシアセトフェノン等が含まれる。
ベンゾインエーテル系光重合開始剤の具体例には、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテルおよびアニソールメチルエーテル等の置換ベンゾインエーテルが含まれる。
アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤の具体例には、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(例えば、BASF社製の商品名「イルガキュア819」)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,4−ジ−n−ブトキシフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(例えば、BASF社製の商品名「ルシリンTPO」)、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド等が含まれる。
α−ケトール系光重合開始剤の具体例には、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オン等が含まれる。芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤の具体例には、2−ナフタレンスルホニルクロライド等が含まれる。光活性オキシム系光重合開始剤の具体例には、1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシム等が含まれる。ベンゾイン系光重合開始剤の具体例にはベンゾイン等が含まれる。ベンジル系光重合開始剤の具体例にはベンジル等が含まれる。
ベンゾフェノン系光重合開始剤の具体例には、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が含まれる。
チオキサントン系光重合開始剤の具体例には、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントン等が含まれる。
【0094】
熱重合用の開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えばアゾ系重合開始剤、過酸化物系開始剤、過酸化物と還元剤との組み合わせによるレドックス系開始剤、置換エタン系開始剤等を使用することができる。より具体的には、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート等のアゾ系開始剤;例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素等の過酸化物系開始剤;例えばフェニル置換エタン等の置換エタン系開始剤;例えば過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの組み合わせ、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムとの組み合わせ等のレドックス系開始剤;等が例示されるが、これらに限定されない。なお、熱重合は、例えば20〜100℃(典型的には40〜80℃)程度の温度で好ましく実施され得る。
【0095】
このような熱重合開始剤または光重合開始剤の使用量は、重合方法や重合態様等に応じた通常の使用量とすることができ、特に限定されない。例えば、モノマー原料100質量部に対して開始剤0.001〜5質量部(典型的には0.01〜2質量部、例えば0.01〜1質量部)を用いることができる。
【0096】
粘弾性体層(B)を形成するための組成物としては、モノマー成分の一部を重合させた部分重合物を含むものを好ましく使用し得る。このような部分重合物は、典型的には、モノマー成分の一部から形成された重合物と未反応のモノマーとが混在するシロップ状(粘性のある液状)を呈する。以下、かかる性状の部分重合物を「モノマーシロップ」または単に「シロップ」ということがある。上記部分重合物を得る際の重合方法は特に制限されず、上述のような各種重合方法を適宜選択して用いることができる。効率や簡便性の観点から、光重合法を好ましく採用し得る。光重合によると、光の照射量(光量)等の重合条件によって、上記モノマー混合物の重合転化率を容易に制御することができる。
【0097】
粘弾性体層(B)を形成するための組成物(粘弾性体層形成用組成物)は、モノマー成分の完全重合物としてのアクリル系ポリマー(例えば、上記モノマー成分の重合転化率が95質量%以上のアクリル系ポリマー)を含む形態であってもよい。例えば、このようなアクリル系ポリマーを有機溶媒中に含む溶剤型組成物、該アクリル系ポリマーが水性溶媒に分散した水分散型組成物、等の形態であり得る。
【0098】
粘弾性体層(B)を形成するための組成物は、架橋剤を含んでいてもよい。架橋剤としては、アクリル系粘着剤の分野において公知ないし慣用の架橋剤を使用することができる。例えば、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、シリコーン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、シラン系架橋剤、アルキルエーテル化メラミン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等を挙げることができる。あるいは、かかる架橋剤を実質的に含まない組成物であってもよい。
【0099】
[充填材]
粘弾性体層(B)は、充填材を含んでいてもよい。粘弾性体層(B)に充填材を含ませることにより、該粘弾性体層(B)の剪断強度を高めることができる。このことによって、粘着シートを被着体から引き剥がすことに対する抵抗力(剥離強度)が向上し得る。また、充填材の使用により、粘弾性体層(B)の過度の変形を抑え、粘着シート全体としての柔軟性と凝集性とのバランスを好適に調整し得る。
【0100】
充填材としては、各種の粒子状物質を用いることができる。かかる粒子状物質の構成材料は、例えば、銅、ニッケル、アルミニウム、クロム、鉄、ステンレス等の金属;アルミナ、ジルコニア等の金属酸化物;炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化窒素等の炭化物;窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素等の窒化物;炭化カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、ガラス、シリカ等の無機材料;ポリスチレン、アクリル樹脂(例えばポリメチルメタクリレート)、フェノール樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂、ナイロン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリイミド、シリコーン、塩化ビニリデン等のポリマー;等であり得る。あるいは、火山シラス、砂等の天然原料粒子を用いてもよい。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
粒子状物質の外形や粒子形状は特に制限されない。粒子状物質の外形は、例えば、球状、フレーク状、不定形状等であり得る。また、粒子状物質の粒子構造は、例えば、緻密構造、多孔質構造、中空構造等であり得る。
【0101】
ここに開示される技術は、粘弾性体層(B)が、上記充填材として中空構造の粒子状物質(以下「中空粒子」ともいう。)を含む態様で好ましく実施され得る。粘着剤組成物の光硬化性(重合反応性)等の観点から、無機材料からなる中空粒子を好ましく使用し得る。そのような中空粒子の例として、中空ガラスバルーン等のガラス製のバルーン;中空アルミナバルーン等の金属化合物製の中空バルーン;中空セラミックバルーン等の磁器製の中空バルーン等が挙げられる。
【0102】
中空ガラスバルーンとしては、例えば富士シリシア化学社製の商品名「ガラスマイクロバルーン」、「フジバルーン H−40」、「フジバルーン H−35」、東海工業社製の商品名「セルスターZ−20」、「セルスターZ−27」、「セルスターCZ−31T」、「セルスターZ−36」、「セルスターZ−39」、「セルスターZ−39」、「セルスターT−36」、「セルスターPZ−6000」、ファインバルーン社製の商品名「サイラックス・ファインバルーン」、ポッターズ・バロッティーニ社製の商品名「Q−CEL(商標)5020」、「Q−CEL(商標)7014」、商品名「Sphericel(商標)110P8」、「Sphericel(商標)25P45」、「Sphericel(商標)34P30」、「Sphericel(商標)60P18」、昭和化学工業社製の商品名「スーパーバルーンBA−15」、「スーパーバルーン732C」等の市販品を用いることができる。
【0103】
使用する中空粒子の平均粒子径は特に制限されない。例えば、1μm〜500μm、好ましくは5μm〜400μm、より好ましくは10μm〜300μm、さらに好ましくは10μm〜200μm(例えば10〜150μm)の範囲から選択することができる。中空粒子の平均粒子径は、通常、粘弾性体層(B)の厚さの50%以下であることが適当であり、30%以下(例えば10%以下)であることが好ましい。
中空粒子の比重は特に制限されないが、均一分散性や機械的強度等を考慮して、例えば0.1〜1.8g/cm
3、好ましくは0.1〜1.5g/cm
3、さらに好ましくは0.1〜0.5g/cm
3(例えば0.2〜0.5g/cm
3)の範囲から選択することができる。
中空粒子の使用量は特に限定されず、例えば、粘弾性体層(B)全体の体積の1〜70体積%程度とすることができ、通常は5〜50体積%程度とすることが適当であり、10〜40体積%程度とすることが好ましい。
【0104】
[気泡]
粘弾性体層(B)は、気泡を有していてもよい。粘弾性体層(B)に気泡を含ませることにより、粘着シートのクッション性が向上し、柔軟性を高めることができる。粘着シートの柔軟性が高くなると、該粘着シートの変形により被着体表面のでこぼこや段差を吸収しやすくなるので、被着体表面に粘着面をよりよく密着させることができる。被着体表面に対して粘着面がよく密着することは、低極性の表面その他の各種表面に対する剥離強度の向上に有利に寄与し得る。また、粘着シートの柔軟性の向上は、粘着シートの反発力の低減にも貢献し得る。これにより、粘着シートが曲面や段差を有する被着体の表面に沿って貼り付けられる場合や粘着シートの貼り付けられた被着体を変形させる場合等に、粘着シートが自身の反発力により該被着体の表面から剥がれる(浮き上がる)事象が効果的に抑制され得る。
粘弾性体層(B)は、上述のような充填材(例えば中空粒子)と気泡との両方を含んでもよい。このような粘弾性体層(B)を含む粘着シートは、柔軟性と凝集力とのバランスに優れたものとなりやすいので好ましい。
【0105】
粘弾性体層(B)に含まれる気泡は、独立気泡であってもよく、連続気泡であってもよく、これらが混在していてもよい。クッション性の観点からは、独立気泡を多く含む構成の粘弾性体層(B)がより好ましい。独立気泡の場合、気泡中に含まれる気体成分(気泡を形成するガス成分、以下「気泡形成ガス」と称する場合がある。)は特に制限されず、窒素、二酸化炭素、アルゴン等の不活性ガスの他、空気等の各種気体成分であり得る。気泡形成ガスとしては、該気泡形成ガスが含まれた状態で重合反応等を行う場合は、その反応を阻害しないものを用いることが好ましい。かかる観点およびコストの観点等から、気泡形成ガスとして窒素を好適に採用することができる。
【0106】
気泡の形状は、典型的には概ね球状であるが、これに限定されない。気泡の平均直径(平均気泡径)は特に制限されず、例えば1μm〜1000μm、好ましくは10μm〜500μm、さらに好ましくは30μm〜300μmの範囲から選択することができる。上記平均気泡径は、通常、粘弾性体層(B)の厚さの50%以下であることが適当であり、30%以下(例えば10%以下)であることが好ましい。
なお、上記平均気泡径は、典型的には走査型電子顕微鏡(SEM)により、好ましくは10個以上の気泡について、それらの気泡の直径を測定した結果を算術平均することにより求めることができる。このとき、非球状の形状の気泡については、同等の体積を有する球状の気泡に換算して平均気孔径を求めるものとする。
【0107】
粘弾性体層(B)が気泡を有する場合、粘弾性体層(B)に占める気泡の体積割合(気泡含有率)は特に制限されず、目的とするクッション性や柔軟性が実現されるように適宜設定することができる。例えば、粘弾性体層(B)の体積(見かけの体積を指し、粘弾性体層(B)の厚さおよび面積から算出され得る。)に対して3〜70体積%程度とすることができ、通常は5〜50体積%程度とすることが適当であり、8〜40体積%程度とすることが好ましい。
【0108】
ここに開示される技術において、気泡を有する粘弾性体層(気泡含有粘弾性体層)を形成する方法は特に限定されず、公知の方法を適宜採用することができる。例えば、(1)あらかじめ気泡形成ガスが混入された粘弾性体層形成用組成物(好ましくは、紫外線等の活性エネルギー線により硬化して粘弾性体を形成するタイプの組成物)を硬化させて気泡含有粘弾性体層を形成する方法、(2)発泡剤を含む粘弾性体層形成用組成物を用いて該発泡剤から気泡を形成することで気泡含有粘弾性体層を形成する方法、等を適宜採用することができる。使用する発泡剤は特に制限されず、公知の発泡剤から適宜選択することができる。例えば、熱膨張性微小球等の発泡剤を好ましく用いることができる。
上記(1)の方法による気泡含有粘弾性体層の形成において、気泡形成ガスが混入された粘弾性体層形成用組成物を調製する方法は特に限定されず、公知の気泡混合方法を利用することができる。例えば、気泡混合装置の例としては、中央部に貫通孔を持った円盤上に細かい歯が多数ついたステータと、このステータと対向しており円盤上にステータと同様の細かい歯がついているロータと、を備えた装置等が挙げられる。このような気泡混合装置におけるステータ上の歯とロータ上の歯との間に気泡混入前の粘弾性体層形成用組成物(粘弾性体層形成用組成物前駆体)を導入し、ロータを高速回転させながら、気泡を形成させるためのガス成分(気泡形成ガス)を、上記貫通孔を通して粘弾性体層形成用組成物前駆体中に導入する。これにより、気泡が細かく分散され混合された粘弾性体層形成用組成物が得られる。
このように気泡形成ガスが混入された組成物を、所定の面上に塗付して硬化させることにより、気泡含有粘弾性体層を形成することができる。硬化方法としては、加熱する方法や、活性エネルギー線(例えば紫外線)を照射する方法等を好ましく採用することができる。気泡形成ガスが混入された粘弾性体層形成用組成物に加熱や活性エネルギー線照射等を行って気泡を安定的に保持した状態で硬化させることにより、気泡含有粘弾性体層を好適に形成することができる。
【0109】
気泡形成ガスの混入性や気泡の安定性の観点から、粘弾性体層形成用組成物には界面活性剤が添加されていてもよい。このような界面活性剤としては、例えば、イオン性界面活性剤、炭化水素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。なかでもフッ素系界面活性剤が好ましく、特に分子中にオキシアルキレン基(典型的には、炭素原子数2〜3のオキシアルキレン基)およびフッ素化炭化水素基を有するフッ素系界面活性剤が好ましい。フッ素系界面活性剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。好ましく使用し得るフッ素系界面活性剤の市販品として、AGCセイミケミカル株式会社製の商品名「サーフロンS−393」が例示される。
界面活性剤の使用量は特に限定されず、例えば、粘弾性体層(B)に含まれるアクリル系ポリマー100質量部に対して、固形分基準で0.01〜3質量部程度とすることができる。
【0110】
粘弾性体層(B)は、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、可塑剤、軟化剤、着色剤(顔料、染料等)、酸化防止剤、レベリング剤、安定剤、防腐剤等の公知の添加剤を必要に応じて含有していてもよい。例えば、粘着剤組成物を光重合法により硬化させて粘弾性体層(B)を形成する場合、該粘弾性体層(B)を着色させるために、光重合を疎外しない程度の顔料(着色顔料)を着色剤として使用することができる。粘弾性体層(B)の着色として黒色が望まれる場合には、例えば、着色剤としてカーボンブラックを好ましく用いることができる。カーボンブラックの使用量は、着色の度合いや光重合反応性等を考慮して、例えば、目的とする粘弾性体層(B)100質量部に対して0.15質量部以下(例えば0.001〜0.15質量部)、好ましくは0.01〜0.1質量部の範囲から選択することが望ましい。
【0111】
<粘着シート>
ここに開示される粘着シートの典型的な構成例を
図1〜
図3に模式的に示す。
図1に示す粘着シート1は、粘着剤層(A)12と、その背面を支持する粘弾性体層(B)14とからなる両面粘着シートである。粘弾性体層(B)14は、粘着層である。粘着シート1の第1の表面(第1粘着面)1Aは粘着剤層(A)12の表面12Aにより構成され、粘着シート1の第2の表面(第2粘着面)1Bは粘弾性体層(粘着層)(B)14の表面14Aにより構成されている。このような構成の粘着シート1は、第1粘着面1Aが低極性の被着体に対して良好な接着性を示し得る。また、厚みのある(典型的には厚さ200μm以上の)粘弾性体層(B)14を含むので、柔軟性に優れたものとなり得る。このような特長を活かして、粘着シート1は、例えば第1粘着面1Aをポリオレフィン樹脂等のような低極性の被着体に貼り付け、第2粘着面1Bを各種の被着体に貼り付ける態様で好ましく使用され得る。粘着シート1は、例えば、各種の被着体を低極性の被着体に強固に接合するための両面粘着シートとして好適である。
【0112】
図2に示す粘着シート2は、第1の粘着剤層(A)22および第2の粘着剤層(A)23と、それらの間に配置された粘弾性体層(B)24とからなる両面粘着シートである。粘弾性体層(B)24は、粘着層であってもよく、非粘着層であってもよい。粘着シート2の第1の表面(第1粘着面)2Aは、粘弾性体層(B)24の第1面に支持された第1の粘着剤層(A)22の表面22Aにより構成されている。粘着シート2の第2の表面(第2粘着面)2Bは、粘弾性体層(B)24の第2面に支持された第2の粘着剤層(A)23の表面23Aにより構成されている。このような構成の粘着シート2は、第1粘着面2Aおよび第2粘着面2Bがいずれも低極性の被着体に対して良好な接着性を示し得る。また、粘着シート2は、厚みのある粘弾性体層(B)24を含むので、柔軟性に優れたものとなり得る。このような特長を活かして、粘着シート2は、例えば、第1粘着面2Aおよび第2粘着面2Bをそれぞれ低極性の被着体に貼り付ける態様で好ましく使用され得る。粘着シート2は、例えば、低極性の被着体同士を強固に接合するための両面粘着シートとして好適である。
【0113】
図3に示す粘着シート3は、粘着剤層(A)32と、その背面を支持する粘弾性体層(B)34と、さらにその背面を支持する支持基材36とを含む片面粘着シートである。粘弾性体層(B)34は、典型的には粘着層である。粘着シート3は、粘着剤層(A)32の表面32Aにより構成された粘着面3Aを備える。
支持基材36は、例えば、ポリエステルフィルム等のプラスチックフィルム、ポリウレタンフォーム等の発泡体からなる発泡体シート、各種の繊維状物質の単独または混紡等による織布および不織布、アルミニウム箔、銅箔等の金属箔等であり得る。
このような構成の粘着シート3は、例えば、粘着面3Aを低極性の被着体に貼り付ける態様で好ましく使用され得る。
【0114】
図1〜3に示す各粘着シート1〜3において、粘弾性体層(B)14,24,34は、それぞれ、気泡を含んでいてもよく、中空粒子を含んでいてもよく、気泡および中空粒子の両方を含んでいてもよい。粘着シートの軽量化等の観点から好ましい例として、粘弾性体層(B)が気泡および中空粒子の少なくとも一方を含む構造、粘弾性体層(B)が少なくとも中空粒子を含む構造、粘弾性体層(B)が気泡および中空粒子の両方を含む態様等が挙げられる。
【0115】
なお、粘弾性体層(B)に含まれる中空粒子や気泡は、そのサイズや含有量によっては、粘弾性体層(B)の表面の平滑性を低下させることがあり得る。粘弾性体層(B)の表面の平滑性が低下すると、例えば粘弾性体層(B)が粘着層であってその表面がそのまま被着体に貼り付けられる場合、被着体に対する密着性が不足気味となり、剥離強度が低下傾向となることがあり得る。ここに開示される粘着シートでは、粘弾性体層(B)の上に、粘着面を構成する粘着剤層(A)が配置されている。したがって、被着体と粘着面との密着性が粘弾性体層(B)の表面平滑性の影響を受けにくい。このため、粘弾性体層(B)において中空粒子や気泡の含有割合を調節しやすく、より性能バランスに優れた粘着シートが好適に実現され得る。
【0116】
図1〜3に例示される粘着シート1〜3において、図に示される各層は、それぞれ、単層構造であってもよく、2層以上の複層構造(すなわち、複数の層を含む構造)であってもよい。また、図に示されていない層をさらに有していてもよい。例えば、
図1〜3中のいずれかの層間に他の層が配置されていてもよい。そのような構成の一例として、
図3に示す構造において、粘弾性体層(B)34と支持基材36との間に第2の粘着剤層(A)がさらに配置されている構成が挙げられる。ここに開示される粘着シートは、例えば上記第2の粘着剤層(A)のように、粘着面を構成する粘着剤層(A)の他に、粘着シートの表面に露出しない(すなわち、粘着面を構成しない)粘着剤層(A)を含んでいてもよい。上記他の層は、粘着剤層以外の層であってもよい。例えば、プラスチックフィルム、プライマー層、剥離処理層、印刷層等の着色層、金属蒸着層、静電防止層、表面保護層等であり得る。
【0117】
ここに開示される粘着シートは、その使用前(すなわち、被着体への貼付け前)において、その粘着面が剥離ライナーによって保護された形態であり得る。剥離ライナーとしては、慣用の剥離紙等を使用することができ、特に限定されない。例えば、プラスチックフィルムや紙等の基材の表面に剥離処理層を有する剥離ライナー、フッ素系ポリマー(ポリテトラフルオロエチレン等)やポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)の低接着性材料からなる剥離ライナー等を用いることができる。上記剥離処理層は、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離処理剤により上記基材を表面処理して形成されたものであり得る。
また、例えば
図3に示す粘着シート3のような片面粘着シートにおいて、支持基材36の表面36Aが剥離面となっており、粘着シート3を捲回することにより粘着面3Aが支持基材36の表面36Aに当接して保護された形態であってもよい。このように、支持基材が剥離ライナーとしても機能する形態の粘着シートであってもよい。
【0118】
ここに開示される技術において、粘着面を構成する粘着剤層(A)の厚さは特に限定されず、例えば1μm以上とすることができる。剥離強度の観点から、粘着剤層(A)の厚さとしては、5μm以上が適当であり、10μm以上が好ましく、20μm以上(例えば30μm以上、典型的には35μm以上)がより好ましい。好ましい一態様において、上記厚さを40μm以上(典型的には50μm以上)とすることができ、70μm以上としてもよく、さらに90μm以上(例えば100μm超)としてもよい。また、粘着剤層(A)の厚さは、凝集性等の観点から、通常は200μm以下とすることが適当であり、180μm以下が好ましく、160μm以下(例えば150μm以下)がより好ましい。ここに開示される粘着シートは、粘弾性体層(B)を含むことから、粘着剤層(A)の厚さが例えば150μm未満であっても、被着体表面のでこぼこや段差を効果的に吸収し、被着体表面に良好に密着することができる。このことによって高い剥離強度が実現され得る。かかる観点から、粘着剤層(A)の厚さは、120μm以下であってもよく、100μm以下であってもよく、さらには80μm以下(例えば60μm以下)であってもよい。
【0119】
粘弾性体層(B)の厚さは、典型的には200μm以上である。粘弾性体層(B)は、粘弾性体であることから柔軟性に優れる。このため、粘着剤層(A)を粘弾性体層(B)で支持することにより、粘着剤層(A)の表面(粘着面)を被着体に好適に密着させることができる。この柔軟性の観点から、粘弾性体層(B)の厚さとしては、250μm以上が好ましく、300μm以上(例えば350μm以上)がより好ましい。より高い柔軟性を得る観点から、粘弾性体層(B)の厚さを500μm以上とすることができ、700μm以上としてもよい。ここに開示される技術は、粘弾性体層(B)の厚さが1mm以上である態様でも好ましく実施され得る。粘弾性体層(B)の厚さの上限は特に制限されず、例えば約10mm以下とすることができる。粘弾性体層(B)の形成容易性や凝集性等の観点から、粘弾性体層(B)の厚さは、通常、5mm以下が適当であり、3mm以下(例えば2mm以下)が好ましい。
【0120】
特に限定するものではないが、粘弾性体層(B)の厚さは、粘着剤層(A)の厚さの例えば1倍以上とすることができ、通常は1.5倍とすることが適当であり、2倍以上とすることが好ましく、3倍以上(例えば5倍以上)とすることがより好ましい。このことによって、ここに開示される粘着シートが粘弾性体層(B)を含むことの効果をよりよく発揮することができる。また、粘弾性体層(B)の厚さは、粘着剤層(A)の厚さの例えば50倍以下とすることができ、剥離強度と凝集性とのバランス等の観点から、通常は20倍以下とすることが適当であり、10倍以下とすることが好ましい。
【0121】
粘着剤層(A)と粘弾性体層(B)とを含む粘着剤層の総厚(支持基材や剥離ライナーの厚さは含まない。)は、典型的には200μm超であり、好ましくは300μm超、より好ましくは350μm超、さらに好ましくは400μm超、特に好ましくは500μm超(例えば700μm超)である。ここに開示される技術は、粘着剤層の総厚が1mmを超える態様でも好ましく実施され得る。粘着剤層の総厚の上限は特に制限されず、例えば約15mm以下とすることができ、通常は約10mm以下が適当であり、7mm以下が好ましく、5mm以下(例えば3mm以下)がより好ましい。
【0122】
ここに開示される粘着シートは、例えば
図3に示す片面粘着シート3のように、支持基材を含んでもよい。支持基材としては、例えば、ポリプロピレンフィルム、エチレン−プロピレン共重合体フィルム、ポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム等のプラスチックフィルム;ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリクロロプレンフォーム等の発泡体からなる発泡体シート;各種の繊維状物質(麻、綿等の天然繊維、ポリエステル、ビニロン等の合成繊維、アセテート等の半合成繊維、等であり得る。)の単独または混紡等による織布および不織布(和紙、上質紙等の紙類を包含する意味である。);アルミニウム箔、銅箔等の金属箔;等を、粘着シートの用途に応じて適宜選択して用いることができる。上記プラスチックフィルム(典型的には非多孔質のプラスチック膜を指し、織布や不織布とは区別される概念である。)としては、無延伸フィルムおよび延伸(一軸延伸または二軸延伸)フィルムのいずれも使用可能である。
【0123】
支持基材の厚さは目的に応じて適宜選択できるが、一般的には概ね2μm〜500μmであり、通常は10μm〜200μm程度のものを好ましく使用し得る。なお、支持基材が発泡体シートである場合、該支持基材の厚さの上限は、例えば10cm程度とすることができ、通常は5cm程度(例えば2cm程度)とすることが適当である。
【0124】
支持基材のうち粘着剤層が設けられる側の表面には、コロナ放電処理やプライマー層の形成等の、該表面の非剥離性(投錨性)を高める表面処理が施されていてもよい。また、支持基材のうち粘着剤層が設けられる側とは反対側の表面には、該表面の剥離性を高める処理(剥離処理層の形成や、ポリオレフィンフィルムのような低接着性材料のラミネート等)、該表面の非剥離性や印刷性を高める処理(コロナ放電処理等)、該表面の装飾性を高める処理(例えば、印刷、金属の蒸着)等の適宜の処理が施されていてもよい。
【0125】
ここに開示される粘着シートは、粘着剤層(A)からなる粘着面が各種の被着体に貼り付けられる態様で好ましく使用され得る。特に限定するものではないが、ここに開示される粘着シートの好ましい被着体として、例えば、ポリエチレン(PE)樹脂やポリプロピレン(PP)樹脂等のポリオレフィン樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)樹脂、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、PCとABSとのポリマーブレンド(PC/ABS)樹脂等の樹脂製の被着体が挙げられる。
また、ここに開示される粘着シートは、粘弾性体層(B)を含むことにより200μmを超える厚みを有し、かつ柔軟性が高い(変形しやすい)ので、このような部材間の接合において部材表面に存在し得る段差やでこぼこ、あるいは部材の製造誤差等を粘着剤の変形により吸収し、両部材間の良好な接合状態を実現することができる。したがって、上記粘着シートは、例えば各種のOA機器、家電製品、自動車等における部材間の接合(例えば、かかる製品における各種部品の固定用途)に有用である。
【0126】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において「部」および「%」は、特に断りがない限り質量基準である。
【0127】
[粘着シートの作製]
(サンプル1A)
ベースポリマーとしてのスチレンイソプレンブロック共重合体(日本ゼオン株式会社製、製品名「クインタック(Quintac)3520」、スチレン含有量15%、ジブロック体比率78%)100部と、テルペンフェノール樹脂40部と、テルペン樹脂30部と、イソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業社製品、製品名「コロネートL」)を固形分基準で0.75部と、老化防止剤3部と、溶媒としてのトルエンとを撹拌混合して、NV50%の粘着剤組成物1Aを調製した。
ここで、テルペンフェノール樹脂としては、ヤスハラケミカル株式会社製の商品名「YSポリスターS145」(軟化点145℃、水酸基価100mgKOH/g)と、同社製の商品名「YSポリスターT145」(軟化点145℃、水酸基価60mgKOH/g)との二種類を、1:1の質量比で、それらの合計が40部となるように使用した。テルペン樹脂としては、ヤスハラケミカル社製の製品名「YSレジンPX1150N」(軟化点115℃、水酸基価1mgKOH/g未満)を使用した。老化防止剤としては、BASF社製の製品名「IRGANOX CB612」(BASF社製の製品名「IRGAFOS 168」と同社製の製品名「IRGANOX 565」との質量比2:1のブレンド配合物)を使用した。
上質紙の片面に厚さ25μmのPE層がラミネートされ、その上にシリコーン系剥離剤による剥離処理が行われたシート状の剥離ライナーを用意した。この剥離ライナーの剥離処理面に上記粘着剤組成物1Aを塗付し、120℃で3分間乾燥処理して、厚さ140μmの粘着剤層1Aを形成した。サンプル1Aとしては、この粘着剤層1Aをそのまま使用した。
【0128】
(サンプル2A)
テルペンフェノール樹脂40部に代えて芳香族系石油樹脂(JX日鉱日石エネルギー社製、製品名「日石ネオポリマー150」、軟化点155℃、水酸基価1mgKOH/g未満)40部を使用した他は粘着剤組成物1Aの調製と同様にして、粘着剤組成物2Aを調製した。この粘着剤組成物2Aを用いた点以外はサンプル1Aと同様にして、厚さ140μmの粘着剤層2Aを形成した。サンプル2Aとしては、この粘着剤層2Aをそのまま使用した。
【0129】
(サンプル3A)
テルペンフェノール樹脂40部に加えて芳香族系石油樹脂(JX日鉱日石エネルギー社製、製品名「日石ネオポリマー150」、軟化点155℃、水酸基価1mgKOH/g未満)20部をさらに使用した他は粘着剤組成物1Aの調製と同様にして、粘着剤組成物3Aを調製した。この粘着剤組成物3Aを用いた点以外はサンプル1Aと同様にして、厚さ140μmの粘着剤層3Aを形成した。サンプル3Aとしては、この粘着剤層3Aをそのまま使用した。
【0130】
(サンプル1B)
2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)85部およびアクリル酸(AA)15部からなるモノマー混合物に、光重合開始剤として2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(BASF社製、商品名「イルガキュア651」)0.05部および1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニル−ケトン(BASF社製、商品名「イルガキュア184」)0.05部を配合した後、粘度が約15Pa・sになるまで紫外線(UV)を照射して、上記モノマー混合物の一部が重合したモノマーシロップ(部分重合物)を作製した。粘度は、BH粘度計を用いて、ローターNo.5、回転数10rpm、測定温度30℃の条件で測定した。
このモノマーシロップ100部に対し、架橋剤としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)0.15部および中空ガラスバルーン(平均粒径40μm、商品名「フジバルーン H−40」、富士シリシア化学株式会社製)15部を添加して、粘着剤組成物1Bを得た。
一方の面がシリコーン系剥離処理剤で処理された剥離面となっている厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを2枚用意した。上記粘着剤組成物1B 100部に対して「イルガキュア651」0.03部を追加し、これを1枚目のPETフィルムの剥離面に塗付し、その上に2枚目のPETフィルムの剥離面を被せ、照度5mW/cm
2の紫外線を両面から3分間照射して硬化させた。紫外線の照射には、東芝株式会社製、商品名「ブラックライト」を使用した。紫外線の測定は、ピーク感度波長約350nmの工業用UVチェッカー(トプコン社製、商品名「UVR−T1」、受光部型式UD−T36)を用いて行った。このようにして厚さ800μmの粘着剤層1Bを形成した。この粘着剤層1Bは、中空粒子を含むが気泡を含まない粘着剤層(粘弾性体層)である。サンプル1Bとしては、この粘着剤層1Bをそのまま使用した。
【0131】
(サンプル2B)
2EHA90部およびAA10部からなるモノマー混合物を用いた点以外はサンプル1Bと同様にして、該モノマー混合物の一部が重合したモノマーシロップを作製した。
このモノマーシロップ100部に対し、架橋剤として1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)0.08部、「フジバルーン H−40」12.5部を添加して、脱泡処理した。脱泡処理後、フッ素系界面活性剤(商品名「サーフロンS−393」、AGCセイミケミカル株式会社製;側鎖にポリオキシエチレン基およびフッ素化炭化水素基を有するアクリル系共重合体;Mw8300)0.7部を添加して、粘着剤組成物前駆体を得た。この粘着剤組成物前駆体を、前述の気泡混合装置を用いて、装置の貫通孔から導入された窒素ガスとともに攪拌することにより、気泡が分散混合された粘着剤組成物(気泡含有粘着剤組成物)2Bを得た。なお、気泡は、この気泡含有粘着剤組成物2Bの全体積に対して約20体積%となるように混合した。
一方の面がシリコーン系剥離処理剤で処理された剥離面となっている厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを2枚用意した。上記気泡含有粘着剤組成物2B 100部に対して「イルガキュア651」0.04部を追加し、さらに酸化防止剤(BASF社製、商品名「イルガノックス1010」)0.5部および顔料(大日精化社製、商品名「AT DN101」)0.02部を添加して混合した。これをサンプル1Bと同様に紫外線照射により硬化させて、厚さ800μmの粘着剤層2Bを形成した。この粘着剤層2Bは、中空粒子および気泡を含む粘着剤層(粘弾性体層)である。サンプル2Bとしては、この粘着剤層2Bをそのまま使用した。
【0132】
(サンプル1C)
粘着剤層1Bの片面を覆うPETフィルムを剥がし、そこに粘着剤層1Aをラミネータ(200mm/min、0.2MPa)にて貼り合わせた。これにより、厚さ800μmの粘着剤層1Bとその片面に保持された厚さ140μmの粘着剤層1Aとからなる粘着シート(サンプル1C)を得た。
【0133】
(サンプル2C〜6C)
粘着剤層2Bの片面を覆うPETフィルムを剥がし、そこにサンプル1Cの作製と同様にして粘着剤層1Aを貼り合わせた。これにより、厚さ800μmの粘着剤層2Bとその片面に保持された粘着剤層1Aとからなる粘着シート(サンプル2C)を得た。
また、粘着剤層1B,2Bの各々に、粘着剤層1Aに代えて粘着剤層2Aを貼り合わせた。その他の点についてはサンプル1C,2Cの作製と同様にして、サンプル3C,4Cに係る粘着シートを得た。
また、粘着剤層1B,2Bの各々に、粘着剤層1Aに代えて粘着剤層3Aを貼り合わせた。その他の点についてはサンプル1C,2Cの作製と同様にして、サンプル5C,6Cに係る粘着シートを得た。
【0134】
[90度剥離強度測定]
各サンプルに係る粘着シートの一方の面を、アルマイト処理が施された厚さ130μmのアルミニウム箔に貼り付けて裏打ちした。この裏打ちされた粘着シートを幅25mm、長さ70mmに切断したものを試験片とした。なお、サンプル1C〜6Cについては、粘着剤層1Bまたは2Bの表面を上記アルミニウム箔に貼り付けた。
被着体としてのポリプロピレン板(PP板)の表面をイソプロピルアルコール(IPA)で洗浄した。このPP板に各試験片の粘着面(サンプル1C〜6Cについては粘着剤層1A,2Aまたは3Aの表面)を、5kgのローラを2往復させて圧着した。圧着後、23℃、50%RHの雰囲気下で20分間エージングした。エージング後、引張試験機(島津製作所社製、装置名「テンシロン」)を使用して、23℃、50%RHの雰囲気下、引張速度300mm/分、剥離角度90度の条件で被着体(PP板)から試験片を剥離し、そのときの剥離強度[N/25mm]を測定した。得られた結果を表1,2に示す。
【0137】
表1,2からわかるように、粘着剤層(A)のみからなるサンプル1Aに比べて、これに粘弾性体層(B)としてサンプル1Bを積層したサンプル1Cでは、90度剥離強度が約1.25倍に上昇した。気泡を含むサンプル2Bを積層したサンプル2Cではさらに高い効果が得られ、具体的にはサンプル1Aに比べて90度剥離強度が約1.5倍に上昇した。また、サンプル2Aに比べて、これにサンプル1Bを積層したサンプル3Cでは約1.14倍、サンプル2Bを積層したサンプル4Cでは約1.17倍に、それぞれ90度剥離強度が上昇した。そして、サンプル3Aに比べて、これにサンプル1Bを積層したサンプル5Cでは約1.3倍、サンプル2Bを積層したサンプル6Cでは約1.5倍に、それぞれ90度剥離強度が上昇した。
【0138】
ここで、表1に示すように、粘着剤層1B,2B単独の評価では、気泡を含む粘着剤層2Bの90度剥離強度は、気泡を含まない粘着剤層1Bよりも低かった。この結果は、粘着剤層の2Bの表面平滑性が粘着剤層1Bよりも低いことを示唆している。これに対して、表2に示すように、粘着剤層1B,2Bに粘着剤層1A〜3Aを積層したサンプル1C〜6Cでは、粘着剤層1Bを用いたサンプル1C,3C,5Cに比べて、粘着剤層2Bを含むサンプル2A,4C,6Cのほうが、それぞれ90度剥離強度が高くなる傾向であった。これは、粘着剤層2Bに粘着剤層1A〜3Aを積層したことにより、該粘着剤層2Bの表面平滑性が粘着面に及ぼす影響が抑えられ、柔軟性に富む粘着剤層2Bを含むことによる効果が適切に発揮されたためと考えられる。
【0139】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。