(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
静圧パッド本体の砥石配置部を除くワーク対応領域に、静圧流体を介してワークを静圧支持する複数の静圧支持部と、該静圧支持部を通過した静圧流体又は、静圧流体及び前記砥石配置部側から飛散する研削流体を外部へと排出する排出通路とを備えた両頭平面研削盤用の静圧パッドにおいて、
静圧流体又は、静圧流体及び前記砥石配置部から飛散する研削流体を滞留させずに排出する前記排出通路を介して前記複数の静圧支持部を前記ワーク対応領域に分散して配置し、
前記静圧支持部の総面積が前記排出通路の総面積よりも小である
ことを特徴とする両頭平面研削盤用の静圧パッド。
一対の静圧パッドの静圧支持部に供給される静圧流体を介してワークを両側から静圧支持した状態で回転させて、一対の研削砥石から研削部位へと研削流体を供給しながら、前記ワークの両面を前記研削砥石により研削するに際して、
静圧流体又は静圧流体及び前記研削砥石から飛散する研削流体を滞留させずに排出する排出通路を介して複数の前記静圧支持部がワーク対応領域に分散して配置され、前記静圧支持部の総面積が前記排出通路の総面積よりも小である前記静圧パッドを用いる
ことを特徴とするワークの両頭平面研削方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、シリコンウェーハ等の薄板状のワークの両面を平面研削する横型両頭平面研削盤に採用した本発明の実施形態を例示する。
図1は横型両頭平面研削盤の概略側面図、
図2はその概略正面断面図、
図3は静圧パッドの拡大断面図、
図4は静圧パッドの静圧支持部の拡大図である。なお、静圧支持部の突出量、ワークの厚み等は判り易くするために誇張して描いている。
【0019】
横型両頭平面研削盤は、
図1、
図2に示すように、左右に相対向して配置され且つワークWを静圧等の静圧流体を介して静圧支持する左右一対の静圧パッド1と、各静圧パッド1の砥石配置部2に対応して左右方向の軸心廻りに回転自在に配置され且つ静圧パッド1により静圧支持されたワークWの左右の両面を研削する左右一対の研削砥石3と、静圧パッド1により静圧支持されたワークWをその略中心の軸心廻りに回転させるキャリア4とを備えている。
【0020】
研削砥石3はカップ型砥石等であって、ワークWの研削時には、
図2に矢印で示すように内周側から研削部位5に対して研削水等の研削流体を供給するようになっている。キャリア4は外周がキャリアリング6により保持され、またキャリアリング6は周方向に複数個の支持手段7により回転自在に支持されている。キャリアリング6は内周にリングギヤ8を有し、そのリングギヤ8の上部側に噛合する駆動ギヤ9により左右方向の軸心廻りに回転駆動されている。
【0021】
支持手段7はローラ式、ベルト式、静圧支持式等の適宜手段を採用すればよい。なお、支持手段7はローラ式、静圧支持式等の場合には周方向に3個以上、ベルト式の場合には周方向に2個以上配置されるのが一般的であるが、その数は問題ではない。
【0022】
各静圧パッド1はワークWに対応するワーク対応領域12を有し且つワークWよりも大きい略円板状に形成された静圧パッド本体10と、静圧パッド本体10のワーク対応領域12に分散して配置され且つ静圧流体を介してワークWを静圧支持する静圧支持部13−1〜13−3,14−1〜14−4と、静圧支持部13−1〜13−3,14−1〜14−4間に設けられ且つ静圧流体、研削流体を滞留させずに排出する排出通路17とを備えている。
【0023】
静圧パッド本体10はワーク対応領域12の下部側に板厚方向に貫通する砥石配置部2が切り欠き形成され、またワーク対応領域12の外周側の全周にキャリアリング6等に対応する段差部11が形成されている。砥石配置部2にはワークWを研削するための研削砥石3が配置されている。
【0024】
静圧支持部13−1〜13−3,14−1〜14−4は、静圧パッド本体10の砥石配置部2を除くワーク対応領域12に排出通路17を介して分散して配置されている。この各静圧支持部13−1〜13−3,14−1〜14−4は、略中央に静圧流体の供給孔23が設けられたポケット15と、このポケット15を取り囲んでワークW側へと突出する環状のランド部16とを備えている。各静圧支持部13−1〜13−3,14−1〜14−4間には、幅の広い排出通路17が連続状に形成されており、この排出通路17を介して、各静圧支持部13−1〜13−3,14−1〜14−4がワーク対応領域12に分散されている。
【0025】
この静圧支持部13−1〜13−3,14−1〜14−4には、
図1、
図2に示すように、研削砥石3の周辺部近傍(砥石配置部2の周縁近傍)に周方向に所定間隔を置いて配置された複数個(例えば3個)の主静圧支持部13−1〜13−3と、ワーク対応領域12の外周部(ワークWの外周部)に対応して周方向に所定間隔を置いて配置された複数個(例えば4個)の補助静圧支持部14−1〜14−4との二種類がある。
【0026】
3個の主静圧支持部13−1〜13−3の内、中間の主静圧支持部13−1は研削砥石3の上側近傍に配置され、両側の主静圧支持部13−2,13−3は砥石配置部2、研削砥石3の径方向の略両側に夫々配置されている。なお、主静圧支持部13−1〜13−3は外周のランド部16が略真円状であり、その内側に略同心状にポケット15が設けられている。
【0027】
主静圧支持部13−1〜13−3のポケット15は、
図3、
図4に示すように、底面側から開口側(ワークW側)へと拡大するテーパー面18を内周に有し、その開口端側に浅い大径部20が設けられ、また底面側の略中心にはテーパー面18に向かって静圧流体を放射状に供給する供給ノズル22が設けられている。
【0028】
供給ノズル22は螺合部24を介して静圧パッド本体10の供給孔23側に螺合されたノズルヘッド25を有し、このノズルヘッド25に周方向に複数のノズル孔26が放射状に形成されている。
【0029】
4個の補助静圧支持部14−1〜14−4の内、中間の2個の補助静圧支持部14−1,14−2は中間の主静圧支持部13−1の上方で駆動ギヤ9を挟む周方向の両側に配置され、周方向の両端側の補助静圧支持部14−3,14−4は中間の主静圧支持部13−1に対して静圧パッド本体10の径方向の略両側で且つ周方向の両端側の主静圧支持部13−2,13−3の斜め外上側に配置されている。
【0030】
また4個の補助静圧支持部14−1〜14−4は、主静圧支持部13−1〜13−3よりもワークW側への突出量が僅かに低くなっている。これはワークWが反っていた場合に、静圧流体の静圧力がワークWの外周部に強く作用してワークWの研削精度を阻害しないようにするためである。
【0031】
主静圧支持部13−1〜13−3と補助静圧支持部14−1〜14−4は高低差があるため別々の供給源(図示省略)に接続されており、その各供給源から供給される静圧流体により略同等の静圧でワークWを支持するようになっている。各静圧支持部13−1〜13−3,14−1〜14−4毎に流量調整弁、圧力調整弁等の調整手段を介して共通の供給源に接続してもよい。
【0032】
なお、左右の静圧パッド1の主静圧支持部13−1〜13−3、補助静圧支持部14−1〜14−4の静圧流体の静圧は略同等にしているが、ワークWの反りを容易に吸収する上からは、補助静圧支持部14−1〜14−4側の静圧を主静圧支持部13−1〜13−3側よりも若干低くしてもよい。
【0033】
補助静圧支持部14−1〜14−4と主静圧支持部13−1〜13−3との高低差は例えば2〜30μm程度が適当であるが、ワークWの直径、厚み等の諸条件を考慮してワークWの研削精度への影響を緩和できる範囲で適宜決定すればよい。主静圧支持部13−1〜13−3と補助静圧支持部14−1〜14−4は略同一高さでもよい。
【0034】
補助静圧支持部14−1〜14−4のポケット15は、
図3に示すように、主静圧支持部13−1〜13−3と同様に底面側から開口側(ワークW側)へと拡大するテーパー面19を内周に有する。
【0035】
4個の補助静圧支持部14−1〜14−4は、ワーク対応領域12の中央側部分(砥石配置部2側)と外周側部分(砥石配置部2側と反対側)とでランド部16の外周形状が異なっている。例えば、ランド部16の中央側部分は所定幅でポケット15に対して略同心の円弧状に形成されているのに対してランド部16の外周側部分はワーク対応領域12の外周縁に沿って周方向に長く形成されている。これはランド部16の一部を利用して、ワークWのローディング時に使用するワーク吸着孔(図示省略)を設けるためである。
【0036】
なお、補助静圧支持部14−1〜14−4の外周形状、即ちランド部16の外周形状は、主静圧支持部13−1〜13−3と同様に円形状に構成してもよいし、配置部位の周辺部分の条件に応じて円形以外の湾曲形状又は屈曲形状を選択することも可能である。しかし、排出通路17内の静圧流体、研削流体を滞留させずに排出する上からは、主静圧支持部13−1〜13−3及び補助静圧支持部14−1〜14−4
は、砥石配置部2に近い部分の外周が、この砥石配置部2に近づくにつれて幅が小さくなる形状
であることが望ましい。
【0037】
静圧パッド本体10のワーク対応領域12には、各静圧支持部13−1〜13−3,14−1〜14−4の外側に排出通路17が連続状に形成されている。この排出通路17は、排出通路17内の静圧流体及び研削流体を滞留させずに速やかに静圧パッド1の外部へと排出するに必要な排出能力を有し、排出通路17への静圧流体、研削流体の単位時間当たりの流入量よりも単位時間当たりの排出容量が大になっている。
【0038】
例えば、排出通路17は、単位時間当たりの排出能力が静圧支持部13−1〜13−3,14−1〜14−4に供給される静圧流体の単位時間当たりの供給量に、研削砥石3側から研削部位5を経て排出通路17へと流入する研削流体の単位時間当たりの流入量を加えた総和と略同じか又は総和よりも大となる通路断面積を有し、排出通路17内の静圧流体、研削流体に正の静圧を発生させずに速やかに排出できるように構成されている。
【0039】
従って、静圧パッド本体10の砥石配置部2を除くワーク対応領域12には、正の静圧を発生させずに静圧流体及び研削流体を速やかに排出できるだけの十分な通路断面積を有する排出通路17があり、その排出通路17を介して複数の静圧支持部13−1〜13−3,14−1〜14−4が分散状に配置されることとなり、個々の静圧支持部13−1〜13−3,14−1〜14−4は相対的に小面積となる。
【0040】
中間の2個の補助静圧支持部14−1,14−2は中間の主静圧支持部13−1に対して研削砥石3と反対の上側に配置され、両端側の補助静圧支持部14−3,14−4は両側の主静圧支持部13−2,13−3に対して研削砥石3と略反対の斜め外上側に配置されている。
【0041】
従って、砥石配置部2側から見た場合、4個の補助静圧支持部14−1〜14−4は、3個の主静圧支持部13−1〜13−3の背後に位置する関係にある。そして、中間の主静圧支持部13−1と中間の補助静圧支持部14−1,14−2とにより、静圧パッド1及び研削砥石3の略中心を通る上下方向(縦方向)の第1静圧支持部列29が、また両端側の主静圧支持部13−2,13−3と両端側の補助静圧支持部14−3,14−4とにより、第1静圧支持部列29の両側に斜め方向の第2静圧支持部列30が夫々構成され、その第1静圧支持部列29と第2静圧支持部列30との間には、砥石配置部2の研削砥石3の略中心から外側へと通路幅の広い主通路部17aが略直線状又は放射状に設けられている。
【0042】
ワークWの両面を平面研削するに際しては、左右一対の静圧パッド1によりキャリア4内のワークWを静圧流体を介して静圧支持し、駆動ギヤ9の駆動によりキャリア4を介してワークWを軸心廻りに回転させながら、一対の研削砥石3の回転によりワークWを研削する。このとき各研削砥石3の研削部位5に内周側から研削流体を供給する。
【0043】
静圧パッド1の各ポケット15に静圧流体を供給すると、その静圧流体は静圧支持部13−1〜13−3,14−1〜14−4のランド部16とワークWとの間から、ランド部16の全周で外側の排出通路17側へと流出するため、その静圧流体を介してワークWを静圧支持することができる。
【0044】
各静圧支持部13−1〜13−3,14−1〜14−4を通過した静圧流体、研削砥石3側から飛散して流入した研削流体は、排出通路17を経て滞留させずに速やかに静圧パッド本体10の外側へと排出することができる。このため排出通路17内での静圧流体、研削流体の滞留に伴う問題を解消でき、ワークの研削精度の向上を図ることができる。
【0045】
また静圧パッド本体10の砥石配置部2を除くワーク対応領域12に、静圧支持部13−1〜13−3,14−1〜14−4からの静圧流体、研削砥石3側から飛散して流入した研削流体を滞留させずに排出するに必要な排出通路17を確保しており、この排出通路17を介して複数の静圧支持部13−1〜13−3,14−1〜14−4を分散して配置しているので、排出通路17が溝幅の狭い網目状の場合に比較して各静圧支持部13−1〜13−3,14−1〜14−4が全体に占める比率が少なくなり、個々の静圧支持部13−1〜13−3,14−1〜14−4の面積を小さくすることができる。
【0046】
このように各静圧支持部13−1〜13−3,14−1〜14−4の面積を小さくできることにより、静圧支持部13−1〜13−3,14−1〜14−4に供給される静圧流体を介してワークWを静圧支持するに当たっても、静圧流体の供給量を少なく抑えながらワークWを確実に支持することが可能である。従って、全静圧支持部13−1〜13−3,14−1〜14−4でワークWを静圧支持するために必要な静圧流体の供給量が少なくなり、静圧流体の消費量を大幅に削減することができると共に、その静圧流体の供給・回収に必要な付帯設備も小型化することができる。
【0047】
また個々の静圧支持部13−1〜13−3,14−1〜14−4の面積が小さくなれば、砥石配置部2を除くワーク対応領域12の略全域でワークWを静圧支持できなくなるが、キャリア4により保持された状態で高速回転するワークWを複数の静圧支持部13−1〜13−3,14−1〜14−4により分散支持するため、一対の研削砥石3によりワークWを両側から挟んで研削することと相俟って、板厚方向への振動等を発生することなくワークWを安定的に静圧支持することが可能である。
【0048】
しかも個々の静圧支持部13−1〜13−3,14−1〜14−4の面積が小さくなり、各静圧支持部13−1〜13−3,14−1〜14−4への静圧流体の供給量が少なくなれば、ポケット15の略中央に1個の供給孔23を設ける程度で静圧流体の供給が可能になるため、静圧パッド本体10の内外に設けられる静圧流体供給用の連通路等も簡単にできる利点がある。
【0049】
更に内側の3個の主静圧支持部13−1〜13−3の静圧流体により研削砥石3の近傍でワークWを支持し、主静圧支持部13−1〜13−3よりも突出量が小さい4個の補助静圧支持部14−1〜14−4の静圧流体によりワークWの外周部分を補助的に支持するため、ワークWに多少の反りがあるような場合でも、その反りの影響を受けずにワークWを確実に静圧支持しながら研削することが可能であり、研削精度の向上を図ることができる。
【0050】
3個の主静圧支持部13−1〜13−3のポケット15は開口側に浅い大径部20を有する二段構造であるため、大径部20の開口端と同一径で二段構造になっていないものに比較して、ポケット15内の容量を少なくしながらその開口量を大きくすることができる。このため静圧流体を介してワークWを静圧支持するときの支持範囲を大きくでき、しかもワークWの静圧支持に要する静圧流体の使用量を少なくすることができる。
【0051】
また各静圧支持部13−1〜13−3,14−1〜14−4のポケット15は、その内周がテーパー面18,19となっており、中心側の供給ノズル22から供給された静圧流体がポケット15のテーパー面18,19に沿って拡散しながら流れるため、各ポケット15内の静圧流体に渦が発生するようなことはなく、ランド部16の全周に略均等に静圧流体を拡散させることができる。
【0052】
主静圧支持部13−1〜13−3と補助静圧支持部14−1〜14−4との静圧流体の供給量は略同じでもよいが、主静圧支持部13−1〜13−3のポケット15内に供給ノズル22があり、ランド部16の内周にテーパー面18があるため、この主静圧支持部13−1〜13−3の静圧流体の供給量を補助静圧支持部14−1〜14−4側よりも大にすることが可能である。
【0053】
何故なら主静圧支持部13−1〜13−3のポケット15には、供給ノズル22の周方向に複数のノズル孔26から放射状に静圧流体が供給される。そして、その静圧流体はテーパー面18に沿ってポケット15の開口側へと流れた後、大径部20を経て主静圧支持部13−1〜13−3のランド部16とワークWとの隙間の全周から外側へと略均等に流れる。
【0054】
そのため主静圧支持部13−1〜13−3の静圧流体の供給量が補助静圧支持部14−1〜14−4側よりも大であっても、静圧流体の供給を開始したときに、その静圧流体がワークWに対して略直角に当たって局部的に衝撃をかけるようなことはない。
【0055】
またワークWの研削中は研削砥石3の内周側から研削部位5へと研削流体を供給するが、その研削流体は研削砥石3の遠心力を受けて静圧パッド1の砥石配置部2の内周側に向けて飛散し、その一部が
図5及び
図6に示すように、研削砥石3の近傍の主静圧支持部13−1〜13−3に当たるか、又は各主静圧支持部13−1〜13−3の間を通り抜ける等して、静圧パッド本体10のワーク対応領域12側へと流入する。
【0056】
しかし、静圧支持部13−1〜13−3,14−1〜14−4の砥石配置部2側の外周形状が研削流体の流れを阻止し難い形状である上に、各主静圧支持部13−1〜13−3の背後に各補助静圧支持部14−1〜14−4が夫々位置し、しかも中間の主静圧支持部13−1及び補助静圧支持部14−1,14−2により構成される第1静圧支持部列29と、両端側の主静圧支持部13−2,13−3及び補助静圧支持部14−3,14−4により構成される第2静圧支持部列30との間に、研削砥石3の略中心から放射方向に略直線状に延びる通路幅の広い主通路部17aがあるため、ワーク対応領域12側に流入した研削流体を静圧流体と共に排出通路17を経て静圧パッド本体10外へと速やかに排出することができる。
【0057】
また排出通路17内の静圧流体、研削流体を円滑に排出できるため、静圧パッド1の砥石配置部2と研削砥石3との隙間を小さくして、主静圧支持部13−1〜13−3を研削砥石3の周辺近傍に極力近付けて配置することも可能である。このため主静圧支持部13−1〜13−3間の排出通路17の幅が大であるにも拘わらず、主静圧支持部13−1〜13−3側でワークWを確実に静圧支持して研削精度の向上を図ることができる。
【0058】
図7は本発明の第2の実施形態を例示する。この実施形態では、静圧パッド1の主静圧支持部13−1〜13−3のポケット15の他に、補助静圧支持部14−1〜14−4のポケット15内にも、周方向に放射状にノズル孔31を有する供給ノズル32が底面側に設けられている。また補助静圧支持部14−1〜14−4のポケット15の開口端側にも、主静圧支持部13−1〜13−3のポケット15と同様に浅い大径部21が設けられている。
【0059】
このように各静圧支持部13−1〜13−3,14−1〜14−4のポケット15に供給ノズル22,32、大径部20,21を設けてもよい。補助静圧支持部14−1〜14−4のポケット15は、供給ノズル32と大径部21との何れかを省略してもよい。
【0060】
図8は本発明の第3の実施形態を例示する。この実施形態では、静圧パッド1の主静圧支持部13−1〜13−3のポケット15、補助静圧支持部14−1〜14−4のポケット15は何れも内周面が直円筒状であり、第1、第2の実施形態の供給ノズル22,32、テーパー面18,19が省略されている。
【0061】
このように各静圧支持部13−1〜13−3,14−1〜14−4のポケット15は内周面が直円筒状で、供給ノズル22,32、テーパー面18,19のない構造でもよい。また大径部20,21を省略してもよい。
【0062】
図9は本発明の第4の実施形態を、
図10はその変形例を例示する。この実施形態では、研削砥石3の近傍側に複数個、例えば
図9では4個の主静圧支持部13−1〜13−4を、
図10では5個の主静圧支持部13−1〜13−5を夫々配置し、第1〜第3の実施形態における外周側の補助静圧支持部14−1〜14−4を省略している。
【0063】
図9では周方向の両端側の主静圧支持部13−3,13−4が研削砥石3の径方向の略両側近傍に配置され、残りの2個の主静圧支持部13−1,13−2が周方向の中間に略等間隔をおいて配置されている。
【0064】
また
図10では周方向の中間と両端側との3箇所に研削砥石3に接近して主静圧支持部13−1,13−4,13−5が配置され、残りの2個の主静圧支持部13−2,13−3が研削砥石3から若干離れて周方向の中間に配置されている。
【0065】
このように主静圧支持部13−1〜13−4、又は主静圧支持部13−1〜13−5のみでワークWを静圧支持するようにしてもよい。なお、周方向に5個の主静圧支持部13−1〜13−5を設けるように、その数が多くなる場合には、一部の主静圧支持部13−2,13−3は研削砥石3から若干離れるようにして、主静圧支持部13−1〜13−5相互間の排出通路17の通路幅を確保するようにしてもよい。
【0066】
図11は本発明の第5の実施形態を例示する。この実施形態では、静圧パッド本体10の主静圧支持部13−1〜13−3相互間にその砥石配置部2と連続する凹部34が設けられており、この凹部34側では静圧パッド本体10の内周と研削砥石3との隙間が大になっている。
【0067】
複数個の主静圧支持部13−1〜13−3を研削砥石3の周辺に配置する場合には、このように主静圧支持部13−1〜13−3間に凹部34を設けて静圧パッド本体10の裏側へと研削流体を排出するようにしてもよい。
【0068】
図12は本発明の第6の実施形態を例示する。この実施形態では、静圧パッド本体10の砥石配置部2側の内周縁との間に所定の間隔をおいて、その砥石配置部2の周辺近傍に複数の静圧支持部13−1〜13−3が配置されている。
【0069】
例えば、3個の静圧支持部13−1〜13−3の内、2個の静圧支持部13−2,13−3は、砥石配置部2内に配置された研削砥石3の中心部O1よりも外側を通るワークWの略同心円33a上において、砥石配置部2に対して周方向の両側に配置されている。また1個の静圧支持部13−1は、ワークWの中心部O2近傍で静圧支持部13−2,13−3間の略中央に配置されている。
【0070】
なお、静圧支持部13−2,13−3はワークWの同心円33a上である必要はなく、ワークWの径方向の近傍にあれば十分である。他の構成は各実施形態と同様である。
【0071】
このように砥石配置部2の周辺近傍に複数の静圧支持部13−1〜13−3を分散して配置する場合にも、研削砥石3と各静圧支持部13−1〜13−3との間に所定の間隔を確保すれば、左右一対の研削砥石3と左右一対の静圧パッド1との間に左右方向のズレがあるような場合でも、そのズレに沿ってワークWを追従させることが可能であり、研削精度の低下を防止することができる。
【0072】
しかも研削砥石3の中心部O1よりも外側を通るワークWの略同心円33a上で砥石配置部2に対して周方向の両側に静圧支持部13−2,13−3を配置することにより、研削砥石3の両側の略一定位置でワークWを確実に静圧支持することができる。またワークWの中心側は静圧支持部13−1により支持することができる。
【0073】
図13は本発明の第7の実施形態を例示する。この実施形態では、ワークW(ワーク対応領域12)の外周近傍に対応して周方向に複数の静圧支持部13−1〜13−4が配置されている。例えば、4個の主静圧支持部13−1〜13−4の内、中間の主静圧支持部13−1,13−2は研削砥石3の上側で駆動ギヤ9の両側に配置され、両側の主静圧支持部13−3,13−4は砥石配置部2、研削砥石3の径方向の略両側に夫々配置されている。
【0074】
なお、主静圧支持部13−1〜13−4は略同じ大きさであって、外周のランド部16が略真円状であり、その内側に略同心状にポケット15が設けられている。しかし、両側の主静圧支持部13−3,13−4を中間の主静圧支持部13−1,13−2よりも若干大きくする等、大きさ、形状、構造を変えてもよい。
【0075】
ワークWの板厚、直径等の条件によっては、このようにワークWの外周近傍に対応して静圧パッド本体10に周方向に複数の静圧支持部13−1〜13−4を配置して、ワークWの外周近傍を静圧流体により支持することも可能である。
【0076】
図14は本発明の第8の実施形態を例示する。この実施形態では、研削砥石3に接近して周方向に3個の主静圧支持部13−1〜13−3が配置され、この主静圧支持部13−1〜13−3の周方向の中間で研削砥石3から外側に離れた位置に2個の補助静圧支持部14−1,14−2が配置されている。
【0077】
このように複数の主静圧支持部13−1〜13−3の他に、主静圧支持部13−1〜13−3よりもワークWの外周寄りに複数の補助静圧支持部14−1,14−2を分散して配置する場合、その補助静圧支持部14−1,14−2はワーク対応領域12の外周よりも内側にすることも可能である。
【0078】
図15は本発明の第9の実施形態を例示する。この実施形態では、補助静圧支持部14−1,14−2のランド部16が長円状又は楕円状に一方向に長く構成されている。
【0079】
補助静圧支持部14−1,14−2を設けるに当たっては、このようにランド部16は長円状、楕円状、その他の形状に長く構成することも可能である、その場合、排出通路17での静圧流体の流れを阻害しないように、ランド部16は
、砥石配置部2に近い部分の外周が、この砥石配置部2に近づくにつれて幅が小さくなる形状
であることが望ましい。
【0080】
この補助静圧支持部14−1,14−2のランド部16はワークWの回転方向に長くしてもよいし、研削砥石3の略中心又はその近傍を通る遠近方向に長くしてもよい。また研削砥石3の略中心又はその近傍を通る遠近方向に対して斜めに交差する方向に長くしてもよい。従って、補助静圧支持部14−1,14−2のランド部16の外周形状は、排出通路17での静圧流体の流れを害しない限り任意の形状のものを採用することが可能である。
【0081】
なお、主静圧支持部13−1〜13−3のランド部16についても、補助静圧支持部14−1,14−2と同様に特定の方向に長く構成してもよい。
【0082】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、主静圧支持部13−1〜13−3、補助静圧支持部14−1〜14−4の数は、ワークWの直径等を考慮して適宜変更することも可能であり、例えば主静圧支持部を5個とし、補助静圧支持部を6個とすることも可能である。但し、主静圧支持部は3個以上とすることが望ましい。
【0083】
また各静圧支持部13−1〜13−3,14−1〜14−4のポケット15の側面視形状は、加工上からは真円状が望ましいが、研削砥石3に対して遠近方向に長い長円状、又はS字状等の屈曲状に形成する等、真円状以外の形状でもよい。ポケット15の断面形状は二段状、テーパー状の他、直円筒状等、適宜形状を採用することができる。
【0084】
静圧パッド1のワーク対応領域12側には、他の付属手段との干渉を避けながら、研削砥石3の略中心を通る方向、又はそれに近い方向に幅の広い排出通路17を設けることが望ましい。また排出通路17を設けるに当たっては、補助静圧支持部14−1〜14−4は省略してもよいし、主静圧支持部13−1〜13−3に近付けて、主静圧支持部と同数又は主静圧支持部よりも少数の補助静圧支持部を主静圧支持部に対して研削砥石3とは反対側の背後に配置することも可能である。
【0085】
静圧パッド1の砥石配置部2と研削砥石3との間の隙間は大きくしてもよいし、小さくしてもよい。但し、隙間をあまり大きくし過ぎると、研削精度にワークWの反りによる影響が生じることになるので、研削精度に影響しない程度の隙間にする必要がある。
【0086】
また排出通路17の通路断面積(排出能力)は静圧流体の供給量及び研削流体の流入量との相対的関係によって決まり、また静圧流体の供給量(消費量)は静圧支持部の面積と静圧支持部の数によって決まる。例えば、静圧支持部の面積(大きさ)は各実施形態に例示した程度が適当であるが、静圧支持部の面積を各実施形態よりも小さくして、その静圧支持部の数を増やすことも可能である。
【0087】
排出通路17の排出能力を確保する場合、静圧支持部13−1〜13−3,14−1〜14−4の総面積に比較して排出通路17の総面積を大にしてもよいし、通路深さが大であれば、静圧支持部13−1〜13−3,14−1〜14−4の総面積に比較して排出通路17の総面積を小さくしてもよい。従って、静圧支持部13−1〜13−3,14−1〜14−4の数が増えて相互間の排出通路17の幅が狭くなる場合には、各静圧支持部13−1〜13−3,14−1〜14−4の高さを大にして排出通路17の排出能力を確保するようにしてもよい。
【0088】
静圧パッド本体10の排出通路17の底面側は平坦状にして、排出通路17の全体の深さを同じにしているが、主通路部17aの深さを大にする等、静圧流体の排出性が向上する限り、部分的に異なる深さにしてもよい。
【0089】
各実施形態では、研削砥石3側から排出通路17へと研削流体が流入する場合を例示しているが、研削砥石3側からの研削流体の流入がないか、又は研削流体の流入量が殆ど問題にならない程度の場合には、排出通路17の排出能力は静圧流体を考慮して決定すればよい。