(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ステータコアの内歯に対応して円環状に配列された複数本のブレードと、各ブレードの外側に配置された複数本のウェッジガイドとを有するコイル挿入治具の前記ブレードの所定間隙に、コイルの一側が隣接するコイルの下になって所定間隙に入り、コイルの他側が上記と反対側に隣接するコイルの上に重なって所定間隙に入り、全体として螺旋状に重なり合った状態にセットされたコイルを、ステータコアの対応するスロットに同時挿入すると共に、前記ウェッジガイドを通してスロット開口部側に絶縁シートを挿入するステータの製造方法において、
1つのスロットに挿入されるコイルを2つに分けて、最初にスロットの外径側に配置されるコイルを上記方法で挿入すると共に、絶縁シートをスロット開口部側に挿入し、
次いで、挿入されたコイル及び絶縁シートをスロットの外径側に押し付けて移動させる中間成形を行い、
更に、スロットの内径側に配置されるコイルを、上記外径側に配置されるコイルに対して周方向に1スロットずれるように配置して、上記方法で挿入すると共に、絶縁シートをスロットの開口部側に挿入することにより、
同じ極をなす同相のコイルのうち、スロットの外径側に挿入されるものと、スロットの内径側に挿入されるものとが、周方向に1スロットずれて挿入され、1つのスロットに挿入される外径側のコイルと内径側のコイルとの間に絶縁シートが配置されたステータを得ることを特徴とするステータの製造方法。
【背景技術】
【0002】
ステータコアの端面から見たときコイル同士が螺旋状に重なった形態をなすステータ(以下「螺旋巻きステータ」とする)が知られている。このような螺旋巻きステータは、コイルエンドが短く、その高さが比較的均一でコンパクトな形状となるとともに、モータとしたときのトルクムラが小さく、モータの振動や騒音を低減させることができるという優れた特性を有している。
【0003】
下記特許文献1には、そのような螺旋巻きステータを製造するため、ステータコアの内歯に対応して円環状に配列された複数本のブレードを有するコイル挿入治具の前記ブレードの所定間隙に、コイルの一側が隣接するコイルの下になって所定間隙に入り、コイルの他側が上記と反対側に隣接するコイルの上に重なって所定間隙に入り、全体として螺旋状に重なり合った状態にセットするコイル巻線・セット方法及びコイル巻線・セット装置が開示されている。
【0004】
一方、ステータには、隣り合ったスロットに巻線を巻き、コイルごとに磁極を構成する集中巻と、スロットをいくつかまたいで巻線を巻き、複数のコイルで磁極を構成する分布巻がある。分布巻においては、磁極ピッチとコイルピッチが一致する全節巻と、コイルピッチが磁極ピッチより短い短節巻とがある。
【0005】
また、1つのスロットに1つのコイル辺だけを収める単層巻と、1つのスロットに2つのコイル辺を収める2層巻とがある。更に、2層巻には、1つのスロットに同じ相のコイル辺が挿入された同相巻と、別の相のコイル辺が挿入された異相巻とがある。そして、短節巻2層の異相巻は、同相巻よりも回転が滑らかになるという利点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1には、ステータコアの内歯に対応して円環状に配列された複数本のブレードを有するコイル挿入治具の前記ブレードの所定間隙に、コイルの一側が隣接するコイルの下になって所定間隙に入り、コイルの他側が上記と反対側に隣接するコイルの上に重なって所定間隙に入り、全体として螺旋状に重なり合った状態にセットする方法が開示されているが、そのようにセットされたコイルをステータコアのスロットに挿入する場合には、螺旋状に積み重なったコイルを全スロットに同時挿入する必要があった。
【0008】
このため、コイル挿入治具のブレードを全て固定ブレードとする必要があり、可動ブレードを用いた通常のコイル挿入の場合に比べて、ブレードとコイルとの間の摩擦抵抗が増大すると共に、全てのスロットにコイルを同時挿入することからますます挿入抵抗が大きくなって、挿入が困難になるという問題があった。
【0009】
また、短節巻2層の異相巻は、同相巻に比べて、回転が滑らかになるという利点があるが、外径側に挿入されたコイル辺と内径側に挿入されたコイルが異相なので、相間絶縁紙を挿入する必要があった。
【0010】
このため、短節巻2層の異相巻にしようとすると、コイル挿入装置で機械的に挿入することが困難であり、手作業で挿入する必要があった。また、螺旋状に積み重なったコイルを短節巻2層の異相巻にする試みは今までなされていなかった。
【0011】
したがって、本発明の目的は、螺旋巻きステータであって、コイルを挿入する際の挿入抵抗を少なくすることができるようにし、しかも短節巻2層の異相巻を機械的に製造できるようにしたステータ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明のステータは、ステータコアの端面から見たときコイル同士が螺旋状に重なった形状をなすように、コイルがスロットに挿入されたステータにおいて、
1つのスロットに挿入されるコイルが2つに分かれて、スロットの外径側及び内径側に挿入されて、螺旋状に重なった形状のコイルが外内2層をなして挿入されており、
同じ極をなす同相のコイルのうち、スロットの外径側に挿入されるものと、スロットの内径側に挿入されるものとが、周方向に1スロットずれて挿入されており、
1つのスロットに挿入される外径側のコイルと内径側のコイルとの間に絶縁シートが配置されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明のステータの製造方法は、ステータコアの内歯に対応して円環状に配列された複数本のブレードと、各ブレードの外側に配置された複数本のウェッジガイドとを有するコイル挿入治具の前記ブレードの所定間隙に、コイルの一側が隣接するコイルの下になって所定間隙に入り、コイルの他側が上記と反対側に隣接するコイルの上に重なって所定間隙に入り、全体として螺旋状に重なり合った状態にセットされたコイルを、ステータコアの対応するスロットに同時挿入すると共に、前記ウェッジガイドを通してスロット開口部側に絶縁シートを挿入するステータの製造方法において、
1つのスロットに挿入されるコイルを2つに分けて、最初にスロットの外径側に配置されるコイルを上記方法で挿入すると共に、絶縁シートをスロット開口部側に挿入し、
次いで、挿入されたコイル及び絶縁シートをスロットの外径側に押し付けて移動させる中間成形を行い、
更に、スロットの内径側に配置されるコイルを、上記外径側に配置されるコイルに対して周方向に1スロットずれるように配置して、上記方法で挿入すると共に、絶縁シートをスロットの開口部側に挿入することにより、
同じ極をなす同相のコイルのうち、スロットの外径側に挿入されるものと、スロットの内径側に挿入されるものとが、周方向に1スロットずれて挿入され、1つのスロットに挿入される外径側のコイルと内径側のコイルとの間に絶縁シートが配置されたステータを得ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、1つのスロットに挿入されるコイルを2つに分けて、スロットの外径側及び内径側に挿入し、螺旋状に重なった形状のコイルが外内2層をなして挿入されるようにしたので、螺旋状に積み重なったコイルを全スロットに同時挿入する必要がある螺旋巻きステータであっても、コイルを挿入する際の挿入抵抗を少なくすることができる。
【0015】
また、最初にスロットの外径側に配置されるコイルを挿入した後、中間成形を行い、次にスロットの内径側に配置されるコイルを、上記外径側に配置されるコイルに対して周方向に1スロットずれるように配置して挿入することにより、同じ極をなす同相のコイルのうち、スロットの外径側に挿入されるものと、スロットの内径側に挿入されるものとが、周方向に1スロットずれて挿入された、いわゆる短節巻の形態にすることができるので、回転磁界の磁極が滑らかに変化するステータを得ることができる。
【0016】
また、コイル挿入操作を2回繰り返して行うことにより、その都度、ウェッジガイドを通して、スロットの開口部側に絶縁シート(ウェッジ)が挿入されるので、最初に挿入された絶縁シートが、外径側に挿入されるコイルと内径側に挿入されるコイルとの相間絶縁シートとなり、1つのスロットに異なる相のコイルが挿入された場合でも、絶縁性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態によるステータの製造方法の第1工程を示し、(a)は平面図、(b)は縦断面図である。
【
図2】同ステータの製造方法の第2工程を示す縦断面図である。
【
図3】同ステータの製造方法の第3工程を示し、(a)は平面図、(b)は縦断面図である。
【
図4】同ステータの製造方法の第4工程を示す平面図である。
【
図5】同ステータの製造方法の第5工程を示す縦断面図である。
【
図6】同ステータの製造方法の第6工程を示す縦断面図である。
【
図7】同ステータの製造方法の第7工程を示す縦断面図である。
【
図8】同ステータの製造方法の第8工程を示す縦断面図である。
【
図9】同ステータの製造方法の第9工程を示す縦断面図である。
【
図10】同ステータの製造方法の第10工程を示す説明図である。
【
図11】同ステータの製造方法の第11工程を示す説明図である。
【
図12】同ステータの製造方法の第12工程を示す説明図である。
【
図13】同ステータの製造方法の第13工程を示す説明図である。
【
図14】同ステータの製造方法の第14工程を示す縦断面図である。
【
図15】同ステータの製造方法の第15工程を示す縦断面図である。
【
図16】同ステータの製造方法の第16工程を示す縦断面図である。
【
図17】同ステータの製造方法の第17工程を示す縦断面図である。
【
図18】同ステータの製造方法の第18工程を示す縦断面図である。
【
図19】同ステータの製造方法の第19工程を示す縦断面図である。
【
図20】同ステータの製造方法に用いるストリッパを示し、(a)は平面図、(b)は縦断面図である。
【
図21】同ステータの製造方法で挿入されたコイルのスロット内における状態を示し、(a)は外側コイルを挿入した状態の説明図、(b)は中間成形をした状態の説明面、(c)は内側コイルを挿入した状態の説明図である。
【
図22】同ステータの製造方法により製造された、本発明の一実施形態によるステータのコイルエンドを平面的に見た模式図である。
【
図23】同ステータのコイルの挿入状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて本発明によるステータ及びその製造方法の一実施形態について説明する。まず、同製造方法に用いられるコイル挿入装置の概略構造について説明する。
【0019】
図1は、コイル挿入治具10に、ストリッパ20を配置し、外側コイルC1をセットした状態を示している。コイル挿入治具10は、円筒状のホルダ11を有し、その外周にはインデックス用のギヤ部材12が装着されている。ホルダ11の内周には、ウェッジガイド13の基部が固定されている。また、ウェッジガイド13の内周には、ブレード14が配置されており、ブレード14は、全て固定ブレードであって、それらの基部をホルダ11の内側に配置された筒状のブレードホルダ15に固定されている。
【0020】
図23に示すように、ステータコア30は、その内周に複数のティース31を有し、各ティース31の間が、コイルが挿入されるスロット32をなしている。そして、ブレード14は、これらのティース31の内端面に嵌合して環状に配列されており、
図3に示すように、ステータコア30をセットした状態で、その先端部がステータコア30の上端面からやや突出する程度の長さとされている。
【0021】
ウェッジガイド13は、ステータコア30を装着したとき、その上端部がステータコア30の下端面に達する程度の長さとされている(
図3参照)。また、ウェッジガイド13は、ブレード14の外周に配置され、各ウェッジガイド13の間が、絶縁シート(ウェッジ)の通路となっている。絶縁シート(ウェッジ)は、
図21に示すように、第1絶縁シート34、第2絶縁シート35からなり、いずれも軸方向から見てコ字状に折曲されており、コイルの挿入時に、図示しないウェッジプッシャにより、スロット32の開口部を塞ぐように、スロット32内に挿入されるようになっている。なお、スロット32の内周には、予めスロット絶縁シート33が挿入されている。
【0022】
ストリッパ20は、
図20に示すように、全体として円柱状をなし、外周にブレード14の間隙に挿入される複数の歯21を有している。ストリッパ20の下面には、
図4等に示される駆動軸22の先端部が着脱可能に嵌合するカップリングが配置された凹部23が形成されている。ストリッパ20の歯21の突出長さは、ステータコア30のスロット32の開口部よりやや内方に挿入される程度の長さとされている。
【0023】
図1に示すように、ストリッパ20の上面には、円柱状のスペーサ24が取付けられている。このスペーサ24は、ブレード14の内周との間に所定の間隙が形成される程度の外径とされている。この間隙は、
図3、
図14に示すように、ブレード13に引き掛けられた外側コイルC1や内側コイルC2のループの内側が挿入される部分となる。
【0024】
図2に示すように、ブレード14上には、コアガイド50が設置されるようになっている。コアガイド50は、本体部51と、導入部52とからなっている。本体部50は、ステータコア30のティース31(
図21、23参照)の隙間と、ブレード14の隙間に挿入される歯55を外周に有している。導入部52は、ステータコア30のティース31の隙間に挿入される歯56を外周に有している。
【0025】
導入部52は、図示しないボルトによって、本体部51の上面に固定されるようになっている。導入部52の上面中央には、支軸54が取付けられており、図示しない駆動装置によって、上下方向に移動するカップリング53が、支軸54外周に着脱可能に連結されて、コアガイド50をブレード14の上端部に設置したり、ブレード14の上端部から取り外したりすることができるようになっている。
【0026】
ステータコア30をブレード14の上部に設置するとき、ブレード14の上部にコアガイド50を設置しておくことにより、ステータコア30のティース31の隙間に、導入部52の歯56が入り、更に本体部50の歯55が入って、ステータコア30のティース31の内端面が、ブレード14に嵌合して、ステータコア30がブレード14の上端部外周に装着されることになる(
図3参照)。
【0027】
図2、3に示すように、ステータコア30は、パレット状のコアホルダ60に保持されて、ブレード14上に着脱されるようになっている。コアホルダ60は、座板61と天板62とスペーサリング63とを有し、座板61と天板62との間に、ステータコア30を挟持して保持するようになっている。また、座板61と天板62には、ステータコア30のティース31の上下端面に当接するように、外径方向から内径方向に向けて放射状に、進退可能にスライドする複数のカフサ64が配置されている。各カフサ64は、対応するティース31の上下端面に当接して、ステータコア30の上下端面から突出するスロット絶縁シート33(
図21参照)のカフス(折り返した襟部)が潰れないように支持する。なお、図中65は、上記カフサ64を進退動作させるための操作棒である。この装置は試作品であるため、カフサ64を操作棒65で進退動作させるようにしているが、実際には、カム機構を使って自動的に進退動作させることになる。そのような構造は、例えば特開平7−222411号公報などに開示された公知の構造であるため、その詳細な説明は省略することにする。
【0028】
更に、本発明で用いるコイル挿入装置は、
図9〜10に示す中間成形装置40を備えている。中間成形装置40は、図示しない駆動機構によって、それぞれ独立して昇降動作する、下方成形型41と、上方成形型42を備えている。
【0029】
下方成形型41は、全体として円筒状をなし、テーパ状の上端部43と、その下方の周壁に周方向に沿って所定間隔でかつ軸方向に沿って所定長さで形成された押込み刃部44とを備えている。押込み刃部44は、
図21に示すように、ステータコア30のスロット32内に挿入されて、第1絶縁シート34をスロット32の奥方に押し込む役割をなす。押込み刃部44の上端部は、下方に向けて次第に高くなるテーパ状をなしている。
【0030】
上方成形型42は、上記下方成形型41が挿入可能な内径とされた円筒状をなし、内周には下方成形型41の押込み刃44が挿入されるガイド溝45が形成され、下端部外周には下方に向けて凹曲面状に縮径するコイルエンド成形部46が形成されている。
【0031】
次に、上記コイル挿入装置を用いた、本発明によるステータの製造方法の一実施形態について説明する。
【0032】
図1に示すように、コイル挿入治具10には、ストリッパ20とスペーサ24とが設置されている。そして、例えば前記特許文献1(WO2012/153844号公報)に開示された方法によって、コイル挿入治具10のブレード14の所定間隙に、コイルの一側が隣接するコイルの下になって所定間隙に入り、コイルの他側が上記と反対側に隣接するコイルの上に重なって所定間隙に入り、全体として螺旋状に重なり合った状態に、外側コイルC1をセットする。例えば三相誘導モータの場合は、U,V,Wの各相のコイルが順番に繰り返すように周方向に並び、Uの片側はWの下に入り、反対側はVの上に載り、V相の片側はU相の下に入り、反対側はW相の上に載り、W相の片側はV相の下に入り、W相の反対側はU相の上に載るというような態様で、互いに重なり合った状態で、ブレード14の所定の間隙に両側辺を保持させてセットする。このコイルセット方法及び装置については、上記特許文献1に詳細に説明されているので、その説明を省略することにする。外側コイルC1のループのブレード14の内側は、スペーサ24とブレード14との隙間に配置されて、ストリッパ20上に載置される。
【0033】
次に、
図2に示すように、図示しない駆動装置によって移動するカップリング53に保持された支軸54を介して、コアガイド50をブレード14の上方に移動させ、ブレード14上に設置する。コアガイド50がブレード14上に設置されると、カップリング53は支軸54から外されて上方に待機し、ステータコア30を保持したコアホルダ60が、ブレード14の上方に配置される。
【0034】
そして、
図3に示すように、コアホルダ60を下降させ、コアガイド50によって案内しながら、ステータコア30をブレード14の外周に装着する。このとき、ブレード14の先端は、ステータコア30の上端面よりやや突出した状態となる。
【0035】
この状態で、
図4に示すように、駆動軸22が上昇し、第2ストリッパ30の凹部23に配置されたカップリングに接続されて、ストリッパ20、スペーサ24が上昇する。その結果、ストリッパ20によって、外側コイルC1が押し上げられ、ストリッパ20の歯21(
図20参照)によって、外側コイルC1がステータコア30の対応するスロット32に挿入されていく。このとき、ステータコア30の下面に配置されたコイルガイド66が、第1コイルC1をスムーズにスロット32に導入させるので、挿入部での抵抗を軽減させると共に、コイルの損傷を軽減することができる。なお、前述したようにブレード14は全て固定ブレードであり、外側コイルC1は、螺旋状に重なり合った状態で、全てのスロット32に同時に挿入されていく。
【0036】
図5に示すように、ストリッパ20が最大位置まで上昇すると、ブレード14に引き掛けられていた外側コイルC1の両側辺が、ステータコア30の所定のスロット32に完全に挿入され、外側コイルC1の上方のループがブレード14の上端から外れて、ステータコア30の上端面から突出したコイルエンドとなる。
【0037】
こうして、外側コイルC1の挿入が終了すると、
図6、7に示すように、図示しない駆動装置によって、カップリング53及び支軸54を介して、コアガイド50が取り外されて所定の位置に移動する。更に、
図8に示すように、ストリッパ20が下降して初期位置に戻る。
【0038】
この状態で、
図9に示すように、コアホルダ60をブレード14から取外し、中間成形装置40の下方成形型41と上方成形型42との間に移動させる。
【0039】
次いで、
図10に示すように、下方成形型41を上昇させ、ステータコア30の内周に下方から挿入する。すると、下方成形型41の押込み刃部44が、ステータコア30のスロット32内に挿入される。
【0040】
図21の(a)に示すように、外側コイルC1の挿入が終了した状態で、スロット32内には、外側コイルC1が挿入され、第1絶縁シート(ウェッジ)34が、スロット32の開口部を塞ぐように挿入されている。この状態で、上記のように下方成形型41の押込み刃部44をスロット32に挿入すると、
図21(b)に示すように、第1絶縁シート34を介して、外側コイルC1がスロット62の外径側に押し付けられる。
【0041】
次いで、
図11に示すように、上方成形型42を下降させ、外側コイルC1の上方のコイルエンドを、コイルエンド成形部46で押圧して、同コイルエンドをステータコア30の外径側に反るように成形する。
【0042】
こうして、外側コイルC1の中間成形が終了したら、
図12に示すように、下方成形型41を下降させ、上方成形型42を上昇させて、両者の間からコアホルダ60を取出す。
【0043】
次に、
図13に示すように、コアホルダ60を再びコイル挿入治具10の上方に移動させる。このとき、コイル挿入治具10のブレード14には、前述した特許文献1(WO2012/153844号公報)等に開示された方法によって、コイル挿入治具10のブレード14の所定間隙に、コイルの一側が隣接するコイルの下になって所定間隙に入り、コイルの他側が上記と反対側に隣接するコイルの上に重なって所定間隙に入り、全体として螺旋状に重なり合った状態に、内側コイルC2をセットしておく。
【0044】
また、内側コイルC2を保持させたコイル挿入治具10は、前記外側コイルC1をセットしたときの配置に対して、ステータコア30の1スロット分、周方向にずらしてセットしておく。すなわち、例えば三相誘導モータの場合、外側コイルC1のUVW相のコイルに対して、内側コイルC2の対応するUVW相のコイルが、周方向に1スロットずれて挿入されるようにする。
【0045】
そして、
図14に示すように、コアホルダ60を下降させ、コアガイド50によって案内しながら、ステータコア30をブレード14の外周に装着する。
【0046】
この状態で、
図15に示すように、駆動軸22が上昇し、第2ストリッパ30の凹部23に配置されたカップリングに接続されて、ストリッパ20、スペーサ24が上昇する。その結果、ストリッパ20によって、内側コイルC2が押し上げられ、ストリッパ20の歯21(
図20参照)によって、内側コイルC2がステータコア30の対応するスロット32に挿入されていく。このとき、ステータコア30の下面に配置されたコイルガイド66が、第2コイルC2をスムーズにスロット32に導入させるので、挿入部での抵抗を軽減させると共に、コイルの損傷を軽減することができる。なお、前述したようにブレード14は全て固定ブレードであり、内側コイルC2は、螺旋状に重なり合った状態で、全てのスロット32に同時に挿入されていく。
【0047】
図16に示すように、ストリッパ20が最大位置まで上昇すると、ブレード14に引き掛けられていた内側コイルC2の両側辺が、ステータコア30の所定のスロット32に完全に挿入され、内側コイルC2の上方のループがブレード14の上端から外れて、ステータコア30の上端面から突出したコイルエンドとなる。
【0048】
こうして、内側コイルC2の挿入が終了すると、
図17、18に示すように、図示しない駆動装置によって、カップリング53及び支軸54を介して、コアガイド50が取り外されて所定の位置に移動する。更に、
図19に示すように、ストリッパ20が下降して初期位置に戻る。
【0049】
図21(c)は、こうして内側コイルC2が、ステータコア30のスロット32に挿入された状態が示されている。前述したように、外側コイルC1は、同図(b)に示すように、中間成形によって外径側に押されて移動しており、内側コイルC2は、それによって形成された、スロット32の内径側の空隙に挿入され、スロット32の開口部側には、第2絶縁シート(ウェッジ)35が挿入される。その結果、先に挿入された第1絶縁シート34を介して、外径側に外側コイルC1が挿入され、内径側に内側コイルC2が挿入されて、
図22に示すように、ステータコア30の端面から見たとき、螺旋巻きコイルが同心状に2重に挿入された形状となる。こうして得られた本発明のステータ70は、コイルエンドの高さが低く、しかもフラットで、コンパクトな形状になる。
【0050】
また、
図23は、ステータ70のU相、V相、W相の各コイルが、それぞれのスロット32にどのように挿入されているかを示す説明図である。ステータコア30の周縁に付された番号は、説明の便宜上付したスロット番号である。スロット32の外径側に挿入されたコイルは、Ua1、Ua2…(以下省略)、Va1、Va2…(以下省略)、Wa1、Wa2…(以下省略)で表示してあり、スロット32の内径側に挿入されたコイルは、Ub1、Ub2…(以下省略)、Vb1、Vb2…(以下省略)、Wb1、Wb2…(以下省略)で表示してある。
【0051】
この図に示すように、外径側のU相コイルUa1は、スロット1とスロット6に両側を挿入されている。これに対して、上記コイルUa1に対応する内径側のU相コイルUb1は、周方向に1スロットずれて、スロット2とスロット7に両側を挿入されている。
【0052】
同様にして、外径側のV相コイルVa1は、スロット3とスロット8に両側を挿入されている。これに対して上記コイルVa1に対応する内径側のV相コイルVb1は、周方向に1スロットずれて、スロット4とスロット9に両側を挿入されている。
【0053】
同様にして、外径側のW相コイルWa1は、スロット5とスロット10に両側を挿入されている。これに対して上記コイルWa1に対応する内径側のV相コイルWb1は、周方向に1スロットずれて、スロット6とスロット11に両側を挿入されている。
【0054】
以下同様に、外側のU相コイルUa2…、V相コイルVa2…、W相コイルWa2…に対して、内側のU相コイルUb2…、V相コイルVb2…、W相コイルWb2…は、周方向に1スロットずれて、それらの両側を挿入されている。
【0055】
その結果、コイルピッチ(1個のコイル辺の間隔)に対して、磁極ピッチ(1つの極をなすUVW各相の幅)が1スロット分だけ広くなり、いわゆる短節巻きとなる。また、1つの極を形成する同相のコイルの両側に、隣接する異なる相のコイルの一部が入り込んだ状態となる。それによって、回転磁界の磁極が滑らかに変化するステータを得ることができる。
【0056】
また、1つの極を形成する同相のコイルの両側では、例えばスロット6(外径側にUa1、内径側にWb1)、スロット8(外径側にVa1、内径側にUb2)に示されるように、1つのスロットの内外に異なる相のコイルが挿入された状態となる。
【0057】
しかし、本発明では、コイル挿入操作を2回繰り返して行うことにより、その都度、ウェッジガイドを通して、スロットの開口部側に絶縁シート(ウェッジ)が挿入されるので、最初に挿入された第1絶縁シート34が、外径側に挿入されるコイルと内径側に挿入されるコイルとの相間絶縁シートとなり、1つのスロットに異なる相のコイルが挿入されても、絶縁性を確保することができる。
【0058】
更に、螺旋巻きステータでは、ブレード14の全てを固定ブレードとして、螺旋状に積み重なったコイルを全スロットに同時挿入する必要があるが、本発明では、コイル挿入操作を2回繰り返して行うことにより、1つのスロットに対して2回に分けてコイルを挿入するようにしたので、1回で挿入するコイルの量を半分にすることができ、コイルの挿入抵抗を低減し、過度な摩擦力がかかってコイルの絶縁被覆が損傷することを防止できる。
【0059】
こうして得られた本発明のステータ70は、螺旋状に重なりあって挿入されたコイルによって、モータとしたときのトルクムラが小さく、モータの振動や騒音を低減させることができると共に、コイルエンドが短いので渦電流損失が少なく、モータの小型化に寄与することができる。なお、このステータは、発電機等にも利用することができる。