(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
燃焼室を内部に形成する燃焼器ライナと、該燃焼器ライナの外周に設けられたフロースリーブとを備え、前記燃焼器ライナの外側表面と前記フロースリーブの内側表面との間に伝熱媒体が流通する環状流路が形成されたガスタービン燃焼器において、
前記フロースリーブが、
上流側の内周部よりも内径の縮小した内径縮小部と、該内径縮小部とその上流側の内周部とを滑らかに接続するテーパ部とを有し、
前記内径縮小部よりも上流側の内側表面に、伝熱媒体の流れ方向に回転の中心軸を持つ縦渦を発生させる縦渦発生手段を備えていることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンなどの燃焼器ライナ、タービン翼、熱交換器、フィン、ボイラ、加熱炉など、冷却、加熱、熱交換等における流体と固体の間の伝熱促進に対しては、各機器に要求される仕様に基づいて様々な構造が考えられている。
【0003】
例えば、発電用ガスタービンなどの燃焼器においては、ガスタービン効率を損なうことの無い程度の少ない圧力損失で必要な冷却性能を維持し、構造強度の信頼性を維持することが求められている。さらに、環境問題への配慮の観点からは、燃焼器内に生じる窒素酸化物(NOx)の排出量を低減することが求められている。NOxの発生要因としては、燃焼時に空気中の酸素と窒素が非常に高温に保たれることが挙げられる。これを防いでNOxを低減するため、燃料と空気を燃焼前に混合して燃焼する予混合燃焼を利用し、かつ燃料と空気の混合比(燃空比)が理論混合比よりも小さい状態で燃焼させることが図られている。
【0004】
この点を鑑みたガスタービン燃焼器の伝熱装置(伝熱構造)として、特開2001−280154号公報(特許文献1)には、略矩形の板材を筒状に丸めて形成した円筒材を軸方向に複数連結して形成したライナを備えた構造が記載されている。当該ライナにおける各円筒材は、隣り合う他の円筒材とオーバーラップして連結されており、当該オーバーラップ部分は溶接及びロー付けで結合されている。
【0005】
また、各円筒材の一方の端部(圧縮機からの圧縮空気の流通方向の下流側)にはプレス加工等で形成した凸部(縦渦発生器)が周方向に沿って複数配置されている。この縦渦発生器は、伝熱媒体(圧縮空気)の流れる方向に回転の中心軸を持つ縦渦を発生させ、当該縦渦によって流通路の伝熱媒体を攪拌する。さらに、当該燃焼器ライナの外周面には、縦渦発生器によって攪拌される伝熱媒体に生じる境界層を破壊するためのリブ(乱流促進体)が設けられている。
【0006】
また他の構造のガスタービン燃焼器の伝熱構造として、特開平6−221562号公報(特許文献2)には、ライナ外側に伝熱媒体の流通路を形成するために設けられたフロースリーブ(外筒)の内径を徐々に縮小させたものが記載されている。この文献では、当該ライナとフロースリーブ間の伝熱媒体流通路を縮小することで伝熱媒体の流速を増大し、かつライナ面の表面粗さを大きくすることで熱伝達率を向上している。
【0007】
また他の構造のガスタービン燃焼器の伝熱構造として、特開2000−320837号公報(特許文献3)がある。この公報には、「ライナの外周側およびフロースリーブ内周側にガイドフィンを設けることにより、流速を早めて伝熱効果向上を図る」と記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下で説明する本発明の各実施例は、伝熱装置を備えたガスタービン燃焼器に係わり、特に強制対流による流体と部材の間の伝熱を促進する装置、すなわち、部材の表面に沿って伝熱媒体を流通させ、部材と伝熱媒体間で熱授受を行うようにした伝熱装置を備えたガスタービン燃焼器に関するものである。
【0019】
強制対流伝熱においては、効率向上のため、伝熱促進に対して圧力損失の増大を抑制することが必要である。例えば、ガスタービンの効率向上のためには、燃焼ガス温度を高くする必要があり、それに伴い、ライナ冷却強化が求められるが、更なる冷却促進法では圧力損失増大を避ける必要がある。そのような中で、衝突噴流冷却(インピンジ冷却)においては、噴流速度の増加に伴い圧力損失が大きくなることがある。また、フィン冷却では、フィンの増加とともに圧力損失が大きくなる傾向がある。リブによる乱流促進は圧力損失増加は比較的少ないものの、リブ間隔を狭くしても大幅な冷却性能向上が望めないため、リブを増やすことによる冷却促進には限界がある。
【0020】
そのため、圧力損失の増大を抑制しつつ伝熱性能の向上を図るために伝熱装置を備えた燃焼器ライナが多数提案されている。その具体例の一つが特許文献1のような燃焼器ライナ外側表面に板状の縦渦発生手段とリブ状の乱流促進手段を設けることにより、少ない圧力損失で冷却性能を向上させるものである。このような技術の基本構造は伝熱装置を温度が高温側となる燃焼器ライナ表面に設置するものとなっているため、燃焼器ライナ表面に付加する部品や溶接部位の数が増加し、製造コストの増加および熱的強度の関係から製品信頼性の確保に多くのコスト・時間を要することとなる。
【0021】
次に、特許文献3では、燃焼器ライナ外側表面とフロースリーブ内側表面にそれぞれガイドフィンを設ける具体例が示されている。特許文献3に記載された燃焼器の基本構造は、燃焼器ライナとフロースリーブで形成される環状流路の断面積をガイドフィンの設置によって狭める(減少)ことにより、通過する空気(伝熱媒体)の流速を速めて伝熱効果向上を図るものである。しかし、流速の増加は圧力損失を増大させ、ガスタービン全体の効率低下を招く一因になる。
【0022】
そこでこれらの事情を考慮し、ある伝熱装置を備えることで製品信頼性を向上させつつ圧力損失の増大を抑制した機器を提供する。例えば、このような機器の一つであるガスタービン燃焼器においては、伝熱性能(冷却効果)をより向上させる機器構成とした縦渦発生手段を備えることにより、ガスタービン効率の低下を最小限に抑えた圧力損失で必要な冷却性能を維持し、構造強度の信頼性を向上させ、予混合燃焼空気を増加させて低NOx化を図ることを可能とする。
【0023】
より具体的な例としては、伝熱装置を備えたガスタービン用燃焼器として、伝熱媒体の環状流路を形成する内周側の燃焼器ライナと外周側のフロースリーブとを設け、フロースリーブの内径はテーパ部を経て縮小する構造とし、かつ外周側のフロースリーブの内径縮小部より上流側の内側表面に伝熱媒体の流れ方向に回転の中心軸を持つ渦(縦渦)を発生させる縦渦発生手段を設ける。
【0024】
また他の具体的な例としては、環状流路を形成する内周側の燃焼器ライナと内径縮小部を有する外周側のフロースリーブにおいて、フロースリーブの内径縮小部より上流側の内側表面に伝熱媒体の流れ方向に回転の中心軸を持つ渦(縦渦)を発生させる縦渦発生手段を設け、かつ、燃焼器ライナ外側表面に伝熱媒体に生ずる境界層を破壊する乱流促進手段を設ける。
【0025】
また更に他の具体的な例としては、環状流路を形成する内周側の燃焼器ライナと内径縮小部を有する外周側のフロースリーブにおいて、フロースリーブの内径縮小部の上流側テーパ部の内側表面に伝熱媒体の流れ方向に回転の中心軸を持つ渦(縦渦)を発生させる縦渦発生手段を設ける。
【0026】
また更に他の具体的な例としては、内周側の燃焼器ライナと共に環状流路を形成する外周側のフロースリーブにおいて、フロースリーブの内径は複数個所でテーパ部を経て縮小する構造とし、各テーパ部の内側表面に伝熱媒体の流れ方向に回転の中心軸を持つ渦(縦渦)を発生させる縦渦発生手段を設ける。
【0027】
このような構成によれば、フロースリーブ内側表面に伝熱装置を備えることにより、製品信頼性を向上させつつ圧力損失の増大を抑制できる。また、燃焼器ライナに取り付ける部品の減少により溶接部位の数を低減できることから、燃焼器ライナの信頼性向上、それに伴う長寿命化が図れる。また、溶接部位の数の低減は燃焼器ライナ変形も抑制できる。更に、フロースリーブ内側表面に縦渦発生手段を設けたことにより、燃焼器ライナ外側表面に設置する乱流促進手段の取付け自由度が増え、局所的な冷却効果向上を図れる。
【0028】
即ち、燃焼器ライナ構造を簡素化しつつ、フロースリーブ側に設けた縦渦発生器により発生させた縦渦の影響をライナ側に効果的に及ぼすことができるので、製造工程の簡素化と長寿命化を確保しつつ、圧力損失の増大を抑制しつつライナの伝熱促進効果を向上することができる。
【0029】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、本発明に係る伝熱装置の適用範囲は広いが、ここでは、高温領域でかつ流れが乱流場であるガスタービン燃焼器を例に挙げて説明する。
【0030】
図1は、ガスタービン燃焼器を断面図で示すとともに、これを備えるガスタービンプラント(ガスタービン発電設備)の概略構成図である。この図に示すガスタービンプラントは、空気を圧縮して高圧の燃焼空気(圧縮空気)を生成する圧縮機1と、圧縮機1から導入される燃焼空気2と燃料を混合して燃焼させることで、高温の燃焼ガス4を生成する燃焼器6と、燃焼器6で生成された燃焼ガス4のエネルギーにより軸駆動力を得るタービン3と、タービン3によって駆動され発電を行う発電機7とを備えている。なお、図示した圧縮機1、タービン3及び発電機7の回転軸は機械的に連結されている。
【0031】
燃焼器6は、フロースリーブ(外筒)10と、フロースリーブ10の内側に間隔を介して設けられ、燃焼室5を内部に形成する円筒状の燃焼器ライナ(内筒)8と、ライナ8のタービン3側の開口部に連接され、燃焼室5で生成された燃焼ガス4をタービン3に導くトランジションピース(尾筒)9とを備えており、フロースリーブ10とライナ8の間には圧縮機1から供給される燃焼空気(伝熱媒体)2が流通する環状流路11が形成されている。さらに、燃焼器6は、ライナ8の燃焼ガス流通方向上流側端部を全面的に塞ぎ、片側端面が燃焼室5に臨むようにライナ8の中心軸に略直交して配置されている略円板状のプレート12と、プレート12上に配置された複数のバーナ13を備えている。
【0032】
図9に、各実施例に係る縦渦発生手段20と乱流促進手段30の流線と伝熱促進の概念を示す。縦渦発生手段20は、伝熱媒体流通側表面から突き出した板状の突出部により構成されている。そして、この突出部は、伝熱媒体の主流方向に対して一定の仰角γを有しているため、流れ方向に回転軸を持つ縦渦が発生し、流路内の伝熱媒体(空気2)を大きく撹拌しながら縦渦を形成して下流に向かって流れる。
【0033】
この伝熱媒体が大きく撹拌しながら流れる作用について、例として、ガスタービン用燃焼器に適用した場合で考える。例えば燃焼器ライナとフロースリーブで形成される環状流路内に縦渦発生手段20を設けた場合、伝熱媒体である空気が大きく撹拌しながら流れるため、燃焼器ライナ側の温められた空気とフロースリーブ側の冷たい空気が縦渦により交換される。その結果、燃焼器ライナ表面に常に低温の伝熱媒体が供給されることから、燃焼器ライナ表面の対流冷却を効率良く行うことができることとなる。
【0034】
更に、燃焼器ライナ表面に設けた乱流促進手段30の長軸方向が、伝熱媒体の主流方向に対して交差させることにより、ライナ壁面近傍にはく離渦が発生する。このはく離渦は、壁面近傍に生ずる伝熱媒体の境界層を破壊する効果が大きいため、縦渦発生手段と併用することによってより大きな冷却促進効果が得られる。この乱流促進手段30の高さhは、はく離渦のライナ再付着距離を考慮して決められる。
【0035】
各実施例の中で、ガスタービンの全体構成や燃料ノズルを含む燃焼器の詳細な作用についての説明は除くこととし、それらについては、特許文献1の内容を参照されたい。また、フロースリーブとは、燃焼器に供給される空気の流速や偏流を調節するために、燃焼器ライナ外周側に設ける円筒形状の構造体である。
【実施例1】
【0036】
図2は本発明の第1の実施の形態に係るガスタービン燃焼器の断面図である。先の図と同じ部分には同じ符号を付して説明は省略する(後の図も同様とする)。
【0037】
この図に示すガスタービン燃焼器において、燃焼器ライナ8とフロースリーブ10は、ほぼ同心円状の二重円筒構造となっており、フロースリーブの直径を燃焼器ライナより大きくすることで環状流路を形成し、この環状流路の中を伝熱媒体である空気2が流れる。 本実施例において、フロースリーブ10は、上流側の内周部よりも内径の縮小した内径縮小部10bと、内径縮小部10bとその上流側の内周部とを滑らかに接続するテーパ部10cを備え、内径縮小部10bよりも上流側の内側表面に縦渦21を発生させる縦渦発生手段20を備える。ここで縦渦発生手段の設置方法は、発生する渦の回転方向が互いに逆向きとなるような仰角を持たせた縦渦発生手段20を対とし、対の縦渦発生手段を複数等間隔でフロースリーブ内側の周方向に並べるものである。
【0038】
このような構成において、環状流路11を流れる燃焼空気2は縦渦発生手段20を通過する際、二次流れ(縦渦)21を生じる。ここで生じた縦渦21は、主流の流れに伴い下流側のテーパ部10cを通過するが、その際にライナ8側に押し付けられ、また流路縮小に伴って渦の径も小さくなるため渦の強度が大きくなる。これにより冷却対象のライナ面に強い縦渦によるインピンジ効果とライナ・フロースリーブ間の撹拌効果をもたらし、圧力損失の上昇を抑えつつ、ライナ壁面の伝熱を促進することができる。
【0039】
さらに、縦渦発生手段20の径方向についての高さを燃焼器ライナ8とフロースリーブ10で形成される環状流路11の高さと同等まで大きくすることにより、環状流路全体を撹拌する効果とライナ側の温度境界層に影響を及ぼす効果を得ることができ、ライナ壁面の伝熱をさらに促進することができる。なお、縦渦発生手段20のの高さは、必ずしも環状流路11の高さと同一である必要は無く、例えばライナ8とフロースリーブ10の熱伸び差や強度面を考慮して、環状流路11の高さよりも多少低く設定しても良い。
【0040】
図3に、フロースリーブ10内側表面に縦渦発生手段20を設置した本実施例の具体例を示す。ここでは、個々の縦渦発生手段20をフロースリーブ10内側表面に溶接もしくはスポット溶接にて固定したものを示している。また、
図3中の拡大詳細図に示すように、縦渦発生手段20は、三角形状のリブを伝熱媒体の流れ方向に対して仰角を持たせて配置したものであり、隣接する縦渦発生手段と対になって構成されており、発生する渦の回転方向が互いに逆向きとなるような仰角を持たせて設置している。
【0041】
このように発生させる渦の回転方向が互いに逆向きとなる縦渦発生手段20を対にして配置することにより、逆回転の縦渦同士が互いに作用しあうため、効率よく縦渦を形成して保持することができる。そのため、少ない圧力損失で十分な冷却を行なう事が可能となり、製品信頼性を向上させつつ圧力損失の増大を抑制することができる。
【0042】
比較例の伝熱装置を備えたガスタービン燃焼器を
図10に示す。比較例の伝熱装置では、燃焼器ライナ外側表面に縦渦発生手段と乱流促進手段の両方を備えたことを特徴としており、高温となる燃焼器ライナ側に伝熱装置を設置する構造となっている。
【0043】
これに対し本実施例のようにフロースリーブ10内側表面に縦渦発生手段20を設置することのメリットは、低温部材側であるフロースリーブ10に設置することにより縦渦発生手段20溶接部の熱疲労が少ないため、伝熱装置を備えたガスタービン用燃焼器としての製品信頼性を向上させつつ圧力損失の増大を抑制できる点にある。また、燃焼器ライナに取り付ける部品の減少により溶接部位の数を低減できることから、コスト低減が図れ、かつ、燃焼器ライナ変形も抑制できる。すなわち、フロースリーブは燃焼器ライナと異なり、伝熱媒体が流れる環状流路を形成するためのものであるため常に低温状態であり、冷却を必要としない。そのため、フロースリーブを製作する材質は炭素鋼など安価な材料で良い。
【0044】
更に、フロースリーブ側に縦渦発生手段を設置することで、燃焼器ライナを交換しても伝熱装置である縦渦発生手段をそのまま継続して使用することができ交換する必要もない。フロースリーブに対して燃焼器ライナの主な作用は、高温の燃焼ガス4と伝熱媒体である空気2を仕切ることであるため、常に一定温度以下に冷却する必要がある。この燃焼器ライナで溶接による変形が生じると、局所的に冷却用空気のバランスが崩れ、冷却空気量不足による燃焼器ライナの焼損が考えられる。しかし、本発明では、燃焼器ライナに取り付ける部品の減少により溶接部位の数を低減できることから燃焼器ライナ変形も抑制でき、製品信頼性が向上する。
【0045】
他に、特許文献3には、「燃焼筒外筒に設置するガイドフィンだけで、環状流路の流れを燃焼筒の近くで増速させ、熱伝達率を向上させる効果」が示されている。すなわち、フロースリーブ内側表面に主流方向に対して30°〜60°の角度でそれぞれ断続するガイドフィンを設けることにより、環状流路の断面積を狭め(減少)、通過する空気(伝熱媒体)の流速を速めて伝熱効果(冷却効果)向上を図るものである。しかしながら、流速の増加は圧力損失を増大させることとなる。
【0046】
また、発生する渦に着目した場合、特許文献3で示されている燃焼器ライナ外側表面の周方向に断続するガイドフィンを設けた構造は、伝熱媒体(空気)がガイドフィン両端の隙間を通過する際、燃焼器ライナ表面上で横渦(平面渦)を生成する構造である。この横渦(平面渦)によれば、燃焼器ライナ表面の境界層を破壊できるため、冷却効果は局所的に向上する。しかしながら、この横渦(平面渦)は下流方向に流れるに従って温度が高くなるため、徐々に伝熱特性(冷却性能)が低下する。
【0047】
これに対し本実施例では、主流方向に対する縦渦発生手段20の角度が10°〜20°と鋭角であるため、ほとんど環状流路内の断面積を減少させることがなく、圧力損失の増加を抑制できる。
【実施例2】
【0048】
図4は、実施例2に係る燃焼器の伝熱装置である縦渦発生手段の示す図である。本実施例は、シート状の部材22の表面に、伝熱媒体の流れ方向に回転軸を持つ縦渦を発生させる縦渦発生手段20を一体成型で加工し、それを円筒形状に曲げた後、フロースリーブ10内側表面に挿入し、スポット溶接にて固定して製作するものである。
【0049】
ここで、縦渦発生手段20を持つ伝熱装置の製造方法について簡単に説明する。まず、流通方向に対して一定の仰角を持たせた縦渦発生手段20をプレス機等によりシート状の部材22の表面に成型加工する。そして、成型された縦渦発生手段20を持つ部材22を円筒形状に曲げ加工して、フロースリーブ10の内周側に挿入して設置する。この縦渦発生手段は、隣接する縦渦発生手段によって発生する渦の回転方向が互いに逆向きとなるように仰角を持たせて成型する。
【0050】
このような製造方法によって縦渦発生手段20を形成したガスタービン燃焼器によれば、金型を作ることによって、シート状の部材22に一体成型で簡単に縦渦発生手段を備えた伝熱装置を加工することができ、かつ、製造方法の簡素化によりコスト低減も図れる。
【実施例3】
【0051】
図5は、実施例3における伝熱装置を備えた燃焼器の構成を示す例である。具体的には、燃焼器ライナ8の外側表面に、伝熱媒体に生ずる境界層を破壊する乱流促進手段30を燃焼器ライナ8の軸方向について複数配置したものである。このように、伝熱媒体の流れ方向と交差させるように設置した乱流促進手段30の作用は、燃焼器ライナ8壁面近傍にはく離渦を発生させる。この渦は、縦渦発生手段20のような流路全体を大きく撹拌するような効果は持たないが、燃焼器ライナ壁面近傍の境界層を破壊する効果が大きいため、フロースリーブ内側表面に設けた縦渦発生手段20と併用することにより、冷却促進効果は相乗的に大きくなる。
【0052】
これは、乱流促進手段30によって形成されるはく離渦が燃焼器ライナ壁面近傍の境界層を破壊することにより、フロースリーブ10側から縦渦によって運ばれる低温の空気を燃焼器ライナ8の冷却に有効に利用できるためである。そのため、縦渦発生手段20と燃焼器ライナの外側表面に伝熱媒体に生ずる境界層を破壊する乱流促進手段30を同時に備えた本実施例の構成によれば、冷却効率を更に向上させることが可能となるため、より顕著な製品信頼性の向上効果及び圧力損失増大の抑制効果を得る事ができる。
【実施例4】
【0053】
図6は、実施例4における伝熱装置を備えた燃焼器の構成を示す例である。具体的には、フロースリーブ10は、内径縮小部10bとテーパ部10cを備え、内径縮小部の上流側テーパ部10c上に縦渦発生手段20を備える。この構造により、縦渦発生手段20により生成した縦渦21は、テーパ部に沿って進行方向がライナ側に指向される。これにより冷却対象のライナ面により近い領域の撹拌効果をもたらし、圧力損失の上昇を抑えつつ、ライナ壁面の伝熱を促進することができる。ここで、縦渦発生手段20の大きさを、縦渦発生手段の上端が燃焼器ライナ8の外面に達する程度に大きくすることにより、環状流路全体を撹拌する効果とライナ側の温度境界層に影響を及ぼす効果を得ることができ、ライナ壁面の伝熱をさらに促進することができる。
【0054】
また、燃焼器ライナ8外側表面に乱流促進手段30を設置することにより、冷却促進効果は相乗的に大きくなる。これは、乱流促進手段30によって形成されるはく離渦が燃焼器ライナ壁面近傍の境界層を破壊することにより、フロースリーブ10側から縦渦によって運ばれる低温の空気を燃焼器ライナ8の冷却に有効に利用できるためである。
【0055】
したがって、フロースリーブテーパ部10c上の縦渦発生手段20と燃焼器ライナ8の外側表面に乱流促進手段30を同時に備えた本実施例の構成によれば、冷却効率を更に向上させることが可能となるため、より顕著な製品信頼性の向上効果及び圧力損失増大の抑制効果を得る事ができる。
【実施例5】
【0056】
図7は、実施例5における伝熱装置を備えた燃焼器の構成を示す例である。具体的には、フロースリーブ10は、複数の内径縮小部10bと、複数の内径縮小部10bのそれぞれに対応した複数のテーパ部10cを備え、内径縮小部の上流側テーパ部10cの各々に縦渦発生手段20を備える。この構造により、縦渦発生手段20により生成した縦渦21は、テーパ部に沿って進行方向がライナ側に指向される。これにより冷却対象のライナ面により近い領域の撹拌効果をもたらし、圧力損失の上昇を抑えつつ、特に冷却が必要な部位(局所的な高温部等)を狙ってライナ壁面の伝熱を促進することができる。
【0057】
また、燃焼器ライナ8外側表面に乱流促進手段30を設置することにより、冷却促進効果は相乗的に大きくなる。これは、乱流促進手段30によって形成されるはく離渦が燃焼器ライナ壁面近傍の境界層を破壊することにより、フロースリーブ10側から縦渦によって運ばれる低温の空気を燃焼器ライナ8の冷却に有効に利用できるためである。
【0058】
したがって、複数段に設置したフロースリーブテーパ部10c上の縦渦発生手段20と燃焼器ライナ8の外側表面に乱流促進手段30を同時に備えた本実施例の構成によれば、冷却効率を更に向上させることが可能となるため、より顕著な製品信頼性の向上効果及び圧力損失増大の抑制効果を得る事ができる。
【実施例6】
【0059】
図8は、実施例6における伝熱装置を備えた燃焼器の構成を示す例である。具体的には、フロースリーブ10は、内径縮小部10bの内面に縦渦発生手段20bを備える。この構造により、縦渦発生手段20bにより生じた縦渦21bが環状流路11内に流通する冷却空気2を撹拌する。また、縦渦発生手段20b及びこれにより生成した縦渦21bが実質的な流路を狭める効果により、上流の縦渦発生手段20により生成した縦渦21はよりライナ側に押し付けられ、また渦の半径が縮小して渦度が強化される。
【0060】
したがって、冷却対象のライナ面により近い領域の撹拌効果をもたらし、圧力損失の上昇を抑えつつ、ライナ壁面の伝熱を促進することができる。このとき、
図8の矢視図に示すように、渦の方向がお互いに順方向となるようにすれば、渦の崩壊を回避し渦を強化することができるため、ライナ壁面の伝熱促進効果を広範囲にわたって向上することができる。
【0061】
また、燃焼器ライナ8外側表面に乱流促進手段30を設置することにより、冷却促進効果は相乗的に大きくなる。これは、乱流促進手段30によって形成されるはく離渦が燃焼器ライナ壁面近傍の境界層を破壊することにより、フロースリーブ10側から縦渦によって運ばれる低温の空気を燃焼器ライナ8の冷却に有効に利用できるためである。
【0062】
したがって、フロースリーブ内径縮小部10b上の縦渦発生手段20bと燃焼器ライナ8の外側表面に乱流促進手段30を同時に備えた本実施例の構成によれば、冷却効率を更に向上させることが可能となるため、より顕著な製品信頼性の向上効果及び圧力損失増大の抑制効果を得る事ができる。
【0063】
なお、
図7に示したような、フロースリーブ10が複数の内径縮小部10bを有するような構成においても、本実施例の構成は当然適用可能である。この場合、複数の内径縮小部10bのそれぞれに縦渦発生手段20bを設置しても良いし、複数の内径縮小部10bのうちの何れかに設置しても良い。
【0064】
ところで、本発明は、上記の各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形例が含まれる。例えば、本発明は、上記の各実施の形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を削除したものも含まれる。また、ある実施の形態に係る構成の一部を、他の実施の形態に係る構成に追加又は置換することが可能である。
【0065】
また、上記の各実施の形態では、伝熱対象物がガスタービン燃焼器のライナの場合についてのみ説明したが、空気等の伝熱媒体が表面に沿って流れる物体であれば、本発明は燃焼器ライナと同様に適用することができる。また、上記の各実施の形態では、伝熱対象物たる燃焼器ライナを伝熱媒体で冷却する場合について説明したが、伝熱対象物を伝熱媒体で加熱する場合についても本発明は同様に適用することができる。
【0066】
また、乱流促進手段30としては、ライナ8の周方向に延びるリブの他に、例えば凹凸形状を採用しても良い。