(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、顕微鏡システムでは、対物レンズを介して標本に照明光を照射し、標本が反射した反射光、もしくは照明光の照射によって標本に標識された蛍光色素が励起されて生じた蛍光を、対物レンズが取り込んで観察光として取得し、この観察光を結像することで標本像が形成される。
【0003】
また、標本像を生成する技術として、光学系の解像限界を超える解像度(以下、超解像という)の画像を生成する技術が知られている。超解像の画像を得るための方法として、構造化照明法(Structured Illumination Microscopy;SIM)が開示されている(例えば、特許文献1,2を参照)。
【0004】
一般に、広視野観察では標本に対してできる限り均一に照明光を照射するが、SIMでは縞模様の照明光を標本に照射する。SIMでは、標本に照射された縞模様の照明光の照射位置を順次ずらしながら複数枚の標本画像を取得し、これらの標本画像に対してフーリエ解析を行なうことで、超解像の画像を生成することができる。
【0005】
また、超解像の標本像を生成する他の技術として、ディスクを用いた生成方法(Disc Scan Super Resolution Microscope;DSSRM)が開示されている(例えば、特許文献3を参照)。DSSRMでは、超解像の観察光を得るために最適なスキャンパターンが形成されたディスクを回転させることによって、標本からの観察光の空間強度分布を変調させ、変調後の観察光に対して画像処理を施すことで、超解像の画像を生成する。
【0006】
ところで、標本像を生成する技術として、複数枚の画像から共焦点を抽出することにより、物体を三次元的に表示する技術も開発されている。この技術では、例えば、標本面(対物レンズ焦点位置)と共役な位置にスリットやピンホールといった共焦点開口を配置したディスクを回転させることで、標本面からの観察光のみ、すなわち合焦している観察光のみを取得し、得られた観察光をもとに共焦点画像を生成する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を図面と共に詳細に説明する。なお、以下の実施の形態により本発明が限定されるものではない。また、以下の説明において参照する各図は、本発明の内容を理解し得る程度に形状、大きさ、および位置関係を概略的に示してあるに過ぎない。すなわち、本発明は各図で例示された形状、大きさ、および位置関係のみに限定されるものではない。
【0019】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1にかかる顕微鏡システムの概略構成を示す模式図である。
図1に示す顕微鏡システム1は、標本Sからの蛍光を取り込むことにより標本像を形成する。標本Sは、例えばディッシュ、スライドガラスまたはビーカなどの収容容器に保持されている。また、標本Sは、生物組織切片などの生体試料、生体試料から分離された細胞、セルラインなどの培養細胞、生体試料から分離された細胞の培養物、および培養細胞の培養物などが挙げられる。標本Sは、蛍光色素により蛍光標識されており、励起光が標本Sに照射されることによって標識された蛍光色素が励起されて蛍光を発する。
【0020】
顕微鏡システム1は、少なくとも標本Sからの観察光を取り込む対物レンズ2と、対物レンズ2が取り込んだ観察光から標本Sの中間像を結像する結像レンズ3と、中間像が形成される位置(像形成位置)に挿脱自在に設けられ、少なくとも結像レンズ3が結像した観察光の空間強度分布を、結像レンズ3を含む光学系の解像限界を超える解像度(以下、超解像という)の画像、または共焦点画像を生成するための空間強度分布に変調する複合パターンディスク4aを有する光学変調部4(ディスクユニット)と、照明光の光路を対物レンズ2の光軸N方向に変えるとともに、標本Sからの光軸N方向の観察光を通過させる蛍光キューブ5と、蛍光キューブ5を通過した観察光をリレーするリレーレンズ6と、リレーレンズ6によってリレーされた観察光を受光し、受光した観察光に対して光電変換処理を施すことによって標本Sの中間像を撮像する撮像部7と、撮像部7が生成した電気信号を取得して、該電気信号に応じた画像に所定の画像処理を施す画像処理部8と、標本Sを照明する照明光を出射する光源9と、光源9が出射した照明光を導光する照明レンズ10と、を有する。なお、対物レンズ2および結像レンズ3により結像光学系を形成している。また、光源9や照明レンズ10などにより照明光生成手段が構成される。
【0021】
光学変調部4は、照明光または観察光の空間強度分布を変調するための複数の孔が形成された円板状をなす複合パターンディスク4aと、複合パターンディスク4aの中心を支持する軸41と、軸41を支持するとともに、該軸41を、軸41の中心軸まわりに回転させる回転モータ42と、回転モータ42を支持する支持部43と、支持部43を光軸Nと直交する方向に移動自在に保持する保持部44と、を有する。回転モータ42および保持部44は、図示しない制御部の制御により、軸41を回転動作させ、支持部43を移動させる。軸41、回転モータ42、支持部43および保持部44によりディスク駆動段が構成される。
【0022】
蛍光キューブ5は、光源9からの照明光(励起光)として所定の波長の光のみを透過させる励起フィルタ51と、励起光に応じた波長の光を反射して標本Sに向けて(光軸N方向に)折り曲げるとともに、標本Sからの観察光(蛍光)に応じた波長の光を透過させるダイクロイックミラー52と、ダイクロイックミラー52を透過した観察光のうち所定の蛍光成分のみを透過する吸収フィルタ53と、を有する。
【0023】
リレーレンズ6は、蛍光キューブ5を通過した観察光(中間像)を撮像部7における観察光の受光面にリレーする。リレーレンズ6のカットオフ周波数は、結像光学系(対物レンズ2および結像レンズ3)のカットオフ周波数より大きい。なお、カットオフ周波数は、伝達可能な周波数成分の制限値のことをいう。例えばカットオフ周波数がfcであるとすると、リレーレンズ6は、周波数±fcの範囲の周波数成分を伝達する。
【0024】
撮像部7は、CCDイメージセンサや、CMOSイメージセンサを用いて実現される。撮像部7のナイキスト周波数は、結像光学系のカットオフ周波数より大きい。
【0025】
画像処理部8は、撮像部7が生成した電気信号(画像信号)をもとに、A/D変換処理や、ホワイトバランス(WB)調整処理、ゲイン調整処理、γ補正処理などの画像処理を施して、図示しないモニタなどに表示するための画像データを生成する。具体的には、画像処理部8は、光学変調部4により光学変調が施された観察光をもとに、超解像画像データや、共焦点画像データを生成する。
【0026】
画像処理部8は、超解像画像データを生成する場合、得られた電気信号から高周波成分を強調する画像処理を施す。これにより、通常の蛍光観察では画像データとして反映されなかった超解像成分が可視化された超解像画像データが生成される。
【0027】
また、画像処理部8は、共焦点画像データを生成する場合、複数枚の画像(複数フレームに応じた電気信号)から共焦点を抽出することにより、標本面からの観察光のみ、すなわち合焦している画像のみを取得し、得られた画像をもとに共焦点画像データを生成する。
【0028】
光源9は、水銀ランプやLEDなどを用いて実現され、落射用の照明光を出射する。
また、照明レンズ10の前後には、光源9からの光を集光するレンズや、照明光の光量を調節する調光フィルタなどが設けられていてもよい。また、水銀ランプなどのアーク光源が用いられる場合、絞り孔に照明光の一部を通過させて照射面における照射範囲を絞る視野絞りを設けてもよい。
【0029】
顕微鏡システム1では、例えば、光源9からの照明光が、励起フィルタ51で波長選択され、ダイクロイックミラー52によって対物レンズ2に向けて照明光が折り曲げられる。ダイクロイックミラー52によって折り曲げられた照明光が、結像レンズ3、対物レンズ2を介して標本Sに照射されると、標本Sに標識された蛍光色素が励起されて蛍光を発する。標本Sから発せられた蛍光を対物レンズ2が取り込み、取り込まれた蛍光が、結像レンズ3により結像され、ダイクロイックミラー52と吸収フィルタ53とを通過して、観察光として撮像部7に入射する。撮像部7に入射した観察光は、光電変換されて画像処理部8に出力され、画像処理部8において画像データ(超解像画像データまたは共焦点画像データ)が生成される。
【0030】
このとき、支持部43の移動によって光軸N上に配置される複合パターンディスク4aの位置を変化させることで、照明光および観察光の空間強度分布に対し、超解像の画像を生成するための空間強度分布に変調するか、または共焦点画像を生成するための空間強度分布に変調するかを切り替えることができる。
【0031】
図2は、本実施の形態1にかかる顕微鏡システムの要部の構成を示す模式図であって、複合パターンディスク4aを上方からみた場合を示す図である。複合パターンディスク4aは、主面の中心位置に軸41を挿通して固定する開口が形成された円環状をなす。
【0032】
複合パターンディスク4aは、外周側に設けられ、観察光の空間強度分布を、超解像の画像を生成するための空間強度分布に変調する複数の孔401aが周方向に沿って形成された超解像変調部401と、内周側に設けられ、観察光の空間強度分布を、共焦点画像を生成するための空間強度分布に変調する複数の孔402aが周方向に沿って形成された共焦点変調部402と、を有する。超解像変調部401および共焦点変調部402は同心円上に設けられ、それぞれの領域には変調の種別に応じた孔(孔401a,402a)が所定のパターンで形成されている。孔401aの開口の径は、例えば
図2に示すように、孔402aの開口の径よりも小さい。
【0033】
なお、共焦点変調部402は、複合パターンディスク4aの移動によって光軸Nと交差する領域を含むように設けられている。
【0034】
図3は、本実施の形態1にかかる顕微鏡システムのディスクに形成される孔を説明する図である。なお、
図3は断面図であって、複合パターンディスク4aの主面の径方向と直交する平面を切断面とする断面である。孔Hは、
図3に示すように、複合パターンディスク4aの板厚方向(主面と直交する方向)に貫通するように形成されている。複合パターンディスク4aは、板厚方向が光軸Nと略平行となるように設けられている。以下、孔401a,402aを総称して孔Hという。
【0035】
孔Hの開口の幅をW、隣接する孔Hの間の形成間隔(ピッチ)をPとすると、超解像変調部401に形成される孔Hは、下式(1)をもとに幅Wが設定される。なお、形成間隔Pは、複合パターンディスク4aの周方向に沿った孔H間の距離のことをいう。
W=(1/fc)×(1/2) ・・・(1)
ここで、fcは、対物レンズ2および結像レンズ3からなる結像光学系のカットオフ周波数である。なお、fcは、下式(2)により求められ、対物レンズ2の開口数NAで決まる空間周波数である。
fc=2×NA・(1/λ・M・β) ・・・(2)
ここで、λ:光の波長
M:結像光学系の投影倍率
β:リレーレンズ6の投影倍率
なお、βは、イメージセンサの受光面で考える場合は考慮する必要があるが、ディスク面で考える場合は1でよい。
【0036】
超解像変調部401に形成される孔Hの形成間隔Pは、下式(3)をもとに求められる値程度に設定される。
P=2×(1/fc)
=4W ・・・(3)
【0037】
なお、形成間隔Pが、P<4Wとなるとコントラストが低下し、P>4Wとなると輝度(明るさ)が低下するため、P=4Wとすることが好ましい。
【0038】
一方、共焦点変調部402に形成される孔Hは、下式(4)をもとに幅Wが設定される。
W=k・λ・R/NA ・・・(4)
ここで、k:定数(0.5≦k≦1.0)
R:複合パターンディスク4aへの投影倍率
【0039】
超解像変調部401に形成される孔Hの形成間隔Pは、例えば幅Wの10倍程度に設定される。
【0040】
また、超解像変調部401が光軸N上に位置している場合、複合パターンディスク4aの回転速度は、撮像部7(イメージセンサ)の1フレーム分(一枚の画像)の撮像に要する露出時間が、複合パターンディスク4aの半回転に要する時間以上となる速度に設定される。換言すれば、複合パターンディスク4aの半回転に要する時間が、撮像部7の露出時間より短くなる速度に設定される。
【0041】
一方、共焦点変調部402が光軸N上に位置している場合、複合パターンディスク4aの回転速度は、撮像部7の露出時間と比して十分大きい速度に設定される。具体的には、撮像部7の露出時間が、例えば1/60または1/30である場合、この露出時間中に複合パターンディスク4aが略半回転する1800rpmに設定される。
【0042】
ここで、複合パターンディスク4aにおいて、超解像変調部401および共焦点変調部402の任意の点をそれぞれ通過する線速度が異なる一方で角速度は同一であるため、撮像部7の露出時間内に半回転以上するように回転速度を設定すれば、超解像変調部401が光軸N上に位置している場合と、共焦点変調部402が光軸N上に位置している場合とで速度を変更することなく、それぞれの画像に応じた空間強度分布に変調することが可能である。すなわち、光軸Nに対して、複合パターンディスク4aを移動させるのみで、超解像の画像を生成するための変調、または共焦点画像を生成するための変調を切り替えることができる。
【0043】
上述した本実施の形態1によれば、観察光に対して光学変調を施す複合パターンディスク4aにおいて、超解像画像を生成するための空間強度分布に変調する複数の孔が形成された超解像変調部401と、共焦点画像を生成するための空間強度分布に変調する複数の孔が形成された共焦点変調部402と、を設けて、光軸Nに対していずれかが交差するように移動させることで、選択的に空間強度分布を変調するようしたので、超解像の画像と、共焦点画像とを簡易に切り替えて取得することができる。
【0044】
また、上述した本実施の形態1によれば、一つの複合パターンディスク4aによって超解像画像を生成するための空間強度分布の変調と、共焦点画像を生成するための空間強度分布の変調とを切り替えるようしたので、それぞれの光学変調を施すためのユニットを取り付ける場合と比して顕微鏡システムが占めるスペースの狭小化や、顕微鏡システムとしてのコストの削減を行うことができる。
【0045】
また、上述した本実施の形態1によれば、超解像変調部401および共焦点変調部402を同心円上に設けて光軸Nに対して所望の変調部を挿入して観察を行うようしたので、例えば、細胞を観察する場合、まず共焦点変調部402を光軸N上に配置して共焦点観察を行うことで細胞の全体的な像をマクロに三次元で観察し、その後超解像変調部401を光軸N上に配置して超解像観察を行うことで、細胞の分子的な挙動や微小領域などを観察することができる。つまり、本実施の形態1によれば、共焦点観察によるマクロな三次元観察と、注目すべき部分についての超解像観察とを、簡易に切り替えて標本Sの詳細な観察を効率よく行うことができる。
【0046】
なお、上述した本実施の形態1では、光軸N上に位置している変調部によらず一定の速度で光学変調を行えるものとして説明したが、光軸N上に位置している変調部によってディスクの回転速度を変化させる制御を行ってもよい。
【0047】
また、上述した本実施の形態1では、外周側に超解像変調部401、内周側に共焦点変調部402が設けられているものとして説明したが、内周側に超解像変調部、外周側に共焦点変調部が設けられているものであってもよい。
【0048】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2にかかる顕微鏡システムの概略構成を示す模式図である。
図5は、本実施の形態2にかかる顕微鏡システムの要部の構成を示す模式図であって、超解像変調用パターンディスク100a、共焦点変調用パターンディスク110aを上方からみた場合を示す図である。なお、
図1等で説明した構成と同一の構成要素には、同一の符号が付してある。本実施の形態2にかかる顕微鏡システム1aでは、上述した実施の形態1にかかる顕微鏡システム1の光学変調部4に代えて、光学変調部11(ディスクユニット)を備える。
【0049】
光学変調部11は、観察光に対して超解像の画像を生成するための空間強度分布に変調する超解像変調部1001を有する超解像変調用パターンディスク100aを備え、該超解像変調用パターンディスク100aの主面が結像光学系の軸(光軸N)と交差する方向に該超解像変調用パターンディスク100aを移動させる超解像変調切替部100と、観察光に対して共焦点画像を生成するための空間強度分布に変調する共焦点変調部1101を有する共焦点変調用パターンディスク110aを備え、該共焦点変調用パターンディスク110aの主面が結像光学系の軸(光軸N)と交差する方向に該共焦点変調用パターンディスク100aを移動させる共焦点変調切替部110と、が光軸Nに対して対向する位置に設けられている。
【0050】
超解像変調切替部100は、観察光の空間強度分布を超解像の画像を生成するための空間強度分布に変調する複数の孔が形成された円板状をなす超解像変調用パターンディスク100aと、超解像変調用パターンディスク100aの中心を支持する軸101と、軸101を支持するとともに、該軸101を、軸101の中心軸まわりに回転させる回転モータ102と、回転モータ102を支持する支持部103と、支持部103を光軸Nと直交する方向に移動自在に保持する保持部104と、を有する。
【0051】
共焦点変調切替部110は、観察光の空間強度分布を、共焦点画像を生成するための空間強度分布に変調する複数の孔が形成された円板状をなす共焦点変調用パターンディスク110aと、共焦点変調用パターンディスク110aの中心を支持する軸111と、軸111を支持するとともに、該軸111を、軸111の中心軸まわりに回転させる回転モータ112と、回転モータ112を支持する支持部113と、支持部113を光軸Nと直交する方向に移動自在に保持する保持部114と、を有する。
【0052】
回転モータ102,112および保持部104,114は、図示しない制御部の制御により、軸101,111を回転動作させ、支持部103,113を移動させる。
【0053】
超解像変調用パターンディスク100aは、主面の中心位置に軸101を挿通して固定する開口が形成された円環状をなす。また、共焦点変調用パターンディスク110aは、主面の中心位置に軸111を挿通して固定する開口が形成された円環状をなす。
【0054】
超解像変調用パターンディスク100aの超解像変調部1001には、主面と直交する方向に貫通し、観察光の空間強度分布を、超解像の画像を生成するための空間強度分布に変調する複数の孔1001aが形成されている。また、共焦点変調用パターンディスク110aの共焦点変調部1101には、主面と直交する方向に貫通し、観察光の空間強度分布を、共焦点画像を生成するための空間強度分布に変調する複数の孔1101aが形成されている。超解像変調用パターンディスク100a、および共焦点変調用パターンディスク110aに形成された複数の孔1001a,1101aは、
図5に示すように周方向に沿って等間隔に配列されており、超解像変調用パターンディスク100aに形成された孔の開口の径は、共焦点変調用パターンディスク110aに形成された孔の開口の径より小さくなっている。
【0055】
超解像変調用パターンディスク100a、共焦点変調用パターンディスク110aに形成される孔は、それぞれ上述した実施の形態1と同様、式(1)〜(4)をもとに幅Wと形成間隔(ピッチ)Pとが設定される。
【0056】
顕微鏡システム1aでは、上述した顕微鏡システム1と同様、例えば、光源9からの照明光が、励起フィルタ51で波長選択され、ダイクロイックミラー52によって照明光が反射され、対物レンズ2に向けて照明光が折り曲げられる。ダイクロイックミラー52によって折り曲げられた照明光が、結像レンズ3、対物レンズ2を介して標本Sに照射されると、標本Sに標識された蛍光色素が励起されて蛍光を発する。標本Sから発せられた蛍光を対物レンズ2が取り込み、取り込まれた蛍光が、結像レンズ3により結像され、ダイクロイックミラー52と吸収フィルタ53とを通過して、観察光として撮像部7に入射する。撮像部7に入射した観察光は、光電変換されて画像処理部8に出力され、画像処理部8において画像データ(超解像画像データまたは共焦点画像データ)が生成される。
【0057】
このとき、支持部103,113の移動によって光軸N上に配置されるディスクを超解像変調用パターンディスク100aまたは共焦点変調用パターンディスク110aに切り替えることで、超解像の画像を生成するための変調、または共焦点画像を生成するための変調を切り替えることができる。
【0058】
上述した本実施の形態2によれば、観察光の空間強度分布を、超解像画像を生成するための空間強度分布に変調する複数の孔が形成された超解像変調用パターンディスク100a、および観察光の空間強度分布を、共焦点画像を生成するための空間強度分布に変調する複数の孔が形成された共焦点変調用パターンディスク110aのいずれかを光軸Nに対して交差するように移動させることによって選択的に光学変調を行うようしたので、超解像の画像と、共焦点画像とを簡易に切り替えて取得することができる。
【0059】
また、上述した本実施の形態2によれば、観察光の空間強度分布を、超解像画像を生成するための空間強度分布に変調する複数の孔が形成された超解像変調用パターンディスク100aと、観察光の空間強度分布を、共焦点画像を生成するための空間強度分布に変調する複数の孔が形成された共焦点変調用パターンディスク110aと、を個別に設けて、照明光および観察光の空間強度分布を変調するようにしたので、各光学変調を行う際にディスクの厚みやディスクの回転速度を異ならせる場合など、それぞれの変調処理の自由度を向上させることができる。
【0060】
さらに、上述した本実施の形態2によれば、観察光の空間強度分布を、超解像画像を生成するための空間強度分布に変調する複数の孔が形成された超解像変調用パターンディスク100aと、観察光の空間強度分布を、共焦点画像を生成するための空間強度分布に変調する複数の孔が形成された共焦点変調用パターンディスク110aとにおいて、変調態様に応じて複数のパターンを形成することができる。例えば、共焦点変調用パターンディスク110aにおいて、観察光に対して共焦点画像を生成するための光学変調を施すための異なる複数のパターンを有する孔を形成することにより、それぞれの変調処理の自由度をさらに向上させることができる。
【0061】
また、上述した本実施の形態2によれば、超解像変調用パターンディスク100aおよび共焦点変調用パターンディスク110aのいずれかを光軸Nに対して挿入して観察を行うようしたので、例えば、細胞を観察する場合、まず支持部113を移動させて共焦点変調用パターンディスク110aを光軸N上に配置し、共焦点観察を行うことで細胞の全体的な像をマクロに三次元で観察し、その後、支持部113を光軸Nから退避させるとともに、支持部103を移動させて超解像変調用パターンディスク100aを光軸N上に配置して超解像観察を行うことで、細胞の分子的な挙動や微小領域などを観察することができる。つまり、本実施の形態2によれば、共焦点観察によるマクロな三次元観察と、注目すべき部分についての超解像観察とを、簡易に切り替えて標本Sの詳細な観察を効率よく行うことができる。
【0062】
上述した本実施の形態2では、二つのディスクを用いて変調態様を切り替えるものとして説明したが、三つ以上のディスクを用いて変調態様を切り替えるものであってもよい。例えば、四つのディスクを用いる場合、隣接するディスクと互いに直交する方向に移動して、いずれかのディスクを光軸上に配置することで、変調態様を切り替えることができる。
【0063】
なお、上述した本実施の形態1,2において、孔は、開口の形状が円形や楕円形を有する貫通孔のほか、径方向に延びる開口を有するスリット(長穴)や、矩形孔であってもよい。さらに、ディスクの主面にピンホール状の開口を有するものであってもよい。また、複合パターンディスク4a,超解像変調用パターンディスク100a、共焦点変調用パターンディスク110aは、円板状をなすものとして説明したが、主面が楕円状をなすものであってもよいし、角形状をなすものであってもよい。さらに、光が通過するものであれば、孔に透明な樹脂などが充填されているものであってもよい。
【0064】
また、上述した本実施の形態1,2において、光学変調部4,11は、ディスクユニットとして顕微鏡システム1,1aに対して挿脱自在に設けられ、必要に応じて取り付け、取り外しを行ったり、孔の形状やパターンが異なるディスクを取り付けたりすることが可能である。なお、実施の形態2において、超解像変調用パターンディスク100a,共焦点変調用パターンディスク110aを、実施の形態1の複合パターンディスク4aのような、複数のパターンを有するものとしてもよい。
【0065】
また、上述した本実施の形態1,2において、保持部44,104,114が、支持部43,103,113を光軸Nと直交する方向に摺動させるものとして説明したが、複合パターンディスク4a,超解像変調用パターンディスク100a,共焦点変調用パターンディスク110aを光軸Nに対して進退自在に移動させるものであれば、適用可能である。すなわち、複合パターンディスク4a,超解像変調用パターンディスク100a,共焦点変調用パターンディスク110aの挿脱方向は、光軸Nと直交する方向に限るものではない。
【0066】
さらに、上述した本実施の形態1,2において、保持部44,104,114は、支持部43,103,113を、制御部の制御のもとモータを用いて自動で移動させるものであってもよいし、レバーやダイヤルによって手動で移動させるものであってもよい。
【0067】
なお、支持部103,113は、移動による干渉を防止するため、連動して移動させることが好ましく、一つの支持部によって超解像変調用パターンディスク100a,共焦点変調用パターンディスク110aをそれぞれの軸まわりに回転自在に支持し、この支持部によって超解像変調用パターンディスク100a,共焦点変調用パターンディスク110aを連動して移動させるものであってもよい。
【0068】
また、上述した実施の形態1,2は、本発明を実施するための例にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではない。また、本発明は、各実施の形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって、種々の発明を形成できる。本発明は、仕様等に応じて種々変形することが可能であり、更に本発明の範囲内において、他の様々な実施の形態が可能であることは、上記記載から自明である。
【0069】
以上のように、本発明にかかる顕微鏡システムおよびディスクユニットは、超解像の画像と、共焦点画像とを簡易に切り替えて取得するのに有用である。