(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
伸展性のシートに貼り付けられた基板に組織切片を貼り付け、前記シートの伸展によって前記基板を表面方向に引っ張ることによって前記基板と前記組織切片とを一緒に分割し、分割された基板のチップのうち一部を前記シートから剥離して採取する細胞分取方法において、
伸展された前記シート上に隙間を空けて分布する前記チップのマップ画像を取得する画像取得工程と、
該画像取得工程において取得された前記マップ画像内から前記チップの像を抽出する抽出工程と、
該抽出工程において抽出された前記チップの像をつなぎ合わせることによって分割前の前記組織切片の像を復元する復元工程と、
該復元工程において復元された前記組織切片の像を表示する復元像表示工程と、
該復元像表示工程において表示された前記復元された組織切片の像に基づいて、採取すべき1つ以上の前記チップを選択する選択工程と、
該選択工程において選択されたチップを前記シートから採取する採取工程とを含む細胞分取方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
採取するチップの選択は、操作者が、シート上に分布する断片から分割前の組織切片の全体像を想像し、組織切片内の所望の領域に対応する断片を特定することによって行われる。しかしながら、隙間を空けて分布する多数の小さな断片から、分割前の組織切片の全体像を正確に想像することは難しく、採取するチップを適切に選択することが難しいという問題がある。また、分割前の組織切片の画像を参照して採取する領域を特定し、特定した領域に対応するチップを採取する方法もあるが、特定した領域が、多数のチップのうちのいずれに対応しているかを目視で判別することが難しいという問題がある。特に、組織切片の分割位置は、分割してみるまでは分からず、組織切片の各部分がいずれのチップに分配されたかを分割前の組織切片の画像から正確に知ることは難しい。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、組織切片を基板と一緒に分割した後に、組織切片の多数の断片の内、組織切片内の所望の部分の断片が付着したチップを容易にかつ正確に選択することができる細胞分取方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、伸展性のシートに貼り付けられた基板に組織切片を貼り付け、前記シートの伸展によって前記基板を表面方向に引っ張ることによって前記基板と前記組織切片とを一緒に分割し、分割された基板のチップのうち一部を前記シートから剥離して採取する細胞分取方法において、伸展された前記シート上に隙間を空けて分布する前記チップのマップ画像を取得する画像取得工程と、該画像取得工程において取得された前記マップ画像内から前記チップの像を抽出する抽出工程と、該抽出工程において抽出された前記チップの像をつなぎ合わせることによって分割前の前記組織切片の像を復元する復元工程と、該復元工程において復元された前記組織切片の像を表示する復元像表示工程と
、該復元像表示工程において表示された前記復元された組織切片の像に基づいて、採取すべき1つ以上の前記チップを選択する選択工程と、該選択工程において選択されたチップを前記シートから採取する採取工程とを含む細胞分取方法を提供する。
【0007】
本発明によれば、まず、画像取得工程において、シートの伸展によって分割された基板および組織切片のマップ画像が取得され、次に、抽出工程において、マップ画像内からチップの像が抽出され、次に、復元工程において、チップの像を繋ぎ合わせることによって、ばらばらに分割された断片が1つにつなぎ合わされ、次に、復元像表示工程において、復元された分割前の組織切片の像が表示される。したがって、操作者は、分割後の断片から構成された組織切片の像に基づいて、組織切片内の各部分がいずれのチップに分配されたかを正確に知ることができ、多数の断片の内、組織切片内の所望の部分の断片が付着したチップを容易にかつ正確に選択することができる。
【0008】
上記発明においては、前記復元工程において、互いに隣接する前記チップの像の、対向する辺同士が一致するように、前記チップの像をつなぎ合わせてもよい。
このようにすることで、基板の切れ目である辺同士を一致させることによって、チップの像を精度良く繋ぎ合わせ、分割前の組織切片の像をより正確に復元することができる。
【0009】
また、上記発明においては、前記復元像表示工程において表示された前記復元された組織切片の像に基づいて、採取すべき1つ以上の前記チップを選択する選択工程と、該選択工程において選択されたチップを前記シートから採取する採取工程とを含
む。
このようにすることで、組織切片内の所望の部分の断片が付着しているチップを採取することができる。
【0010】
また、上記発明においては、前記マップ画像を、前記選択工程において選択された前記チップの像に標識を付して表示するマップ画像表示工程を含んでいてもよい。
このようにすることで、採取工程を操作者が手動で行う場合に、採取したいチップの位置に標識が付されたマップ画像を参照することによって、操作者は、シート上の多数のチップの内、採取すべきチップを容易に特定することができる。
【0011】
また、上記発明においては、前記復元工程において、各前記チップの像の移動距離および移動方向に基づいて、前記マップ画像内における各前記チップの像の絶対位置または前記チップの像同士の相対位置を取得し、前記採取工程において、前記復元工程において取得された前記絶対位置または前記相対位置に基づいて、前記選択されたチップの位置を調整してもよい。
このようにすることで、採取工程を自動制御によって行う場合に、復元工程における各チップの像の移動を利用してシート上の各チップの位置情報を取得し、取得された位置情報を用いて実在のチップの位置を制御することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、組織切片を基板と一緒に分割した後に、組織切片の多数の断片の内、組織切片内の所望の位置の断片が付着したチップを容易にかつ正確に選択することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
以下に、本発明の第1の実施形態に係る細胞分取方法について
図1から
図10を参照して説明する。
まず、本実施形態に係る細胞分取方法の概要について説明する。本実施形態に係る細胞分取方法は、生体組織から切り出した薄い組織切片1を多数の小さな断片1aに分割し、所望の細胞(例えば、癌化した細胞)を含む一部の断片1aを採取する方法である。
【0015】
組織切片1は、例えば、ミクロトームによって薄切されたパラフィン包埋切片または凍結切片である。組織切片1は、
図1に示されるように、シート2上に貼り付けられた、カバーガラスのような基板3の表面に貼り付けられる。シート2は、伸展性を有し、粘着性の接着剤によって基板3が剥離可能に貼り付けられている。基板3は、表面に沿う方向に並ぶ格子状の溝4が形成されており、
図2に示されるように、シート2を表面方向に伸展することによって、溝4に沿って複数のチップ3aに分割可能に構成されている。このときに、基板3上の組織切片1も、基板3と一緒に溝4に沿って多数の断片1aに分割される。そして、所望の断片1aが付着したチップ3aをシート2から剥離および回収することによって、組織切片1から、特定の領域を選択的に採取することができる。
【0016】
図3は、シート2からチップ3aを剥離および回収するための細胞分取システム100を示している。細胞分取システム100は、
図3に示されるように、シート2を水平に支持するステージ10と、該ステージ10上の基板3を下側から観察する観察部20と、ステージ10の上側に設けられた採取部30と、ステージ10の下側に設けられた回収部40と、観察部20によって取得された静止画像を処理する画像処理部50と、観察部20によって取得されたライブ画像と画像処理部50によって処理された静止画像とを並列に表示する表示部60とを備えている。
【0017】
ステージ10は、鉛直方向に貫通する窓10aを中央部に有している。シート2は、この窓10aに基板3が位置するように、基板3を下側に向けてステージ10上に配置される。観察部20は、窓10aの位置の物体を観察する対物レンズと、該対物レンズによって取得された光学像を撮影するデジタルカメラとを有し、ステージ10に載置されたシート2上のチップ3aの配列の像を撮影する。このときに撮影される像は、チップ3aの配列の全体像であってもよく、一部の像であってもよい。観察部20によって撮影されたライブ画像は表示部60に表示される。採取部30は、細長い直棒状の針部材31と、該針部材31を先端を鉛直下方に向けて保持すると共に針部材31を鉛直方向に移動可能な移動機構32とを備えている。
【0018】
操作者は、表示部60上のライブ画像を観察しながら、所望のチップ3aが針部材31の鉛直下方の採取位置に配置されるようにステージ10を移動させる。次いで、操作者は、針部材31を移動機構32によって鉛直下方に移動させ、採取位置のチップ3aの裏面をシート2を介して針部材31の先端で突く。これによって、当該チップ3aをシート2から剥離および落下させてマイクロチューブのような回収部40に回収することができる。
【0019】
次に、本実施形態に係る細胞分取方法について詳細に説明する。
本実施形態に係る細胞分取方法は、
図4に示されるように、組織切片1を基板3に貼り付ける貼付工程S1と、シート2を伸展させることによって組織切片1を基板3と一緒に分割する分割工程S2と、シート2上に分布するチップ3aの配列のマップ画像Aを取得する画像取得工程S3と、マップ画像A内から個々のチップ3aの像を抽出する抽出工程S4と、抽出されたチップ3aの像をつなぎ合わせて分割前の組織切片1の像(復元像)Bを復元する復元工程S5と、復元像Bを表示する復元像表示工程S6と、表示されている復元像Bに基づいて採取すべきチップ3aを選択する選択工程S7と、選択されたチップ3aを標識したマップ画像Aを表示するマップ画像表示工程S8と、選択されたチップ3aを採取する採取工程S9とを含んでいる。
【0020】
貼付工程S1においては、上述した通り、
図1に示されるように、シート2上の基板3の表面に組織切片1を貼り付ける。
分割工程S2においては、シート2を全方向に等方的に伸展させることによって、基板3および組織切片1を溝4に沿って分割する。シート2の伸展には、例えば、半導体プロセスにおいてダイシングシートの伸展に使用されるエキスパンダが好適に用いられる。基板3および組織切片1の分割後は、グリップリング等によってシート2を伸展状態に保持する。これにより、
図2に示されるように、チップ3a間に隙間が空いた状態となる。
【0021】
画像取得工程S3においては、伸展状態のシート2を、チップ3aを下側に向けてステージ10上に載置する。これにより、シート2上に隙間を空けて分布している多数のチップ3aのライブ画像が表示部60に表示される。観察部20によってこれらチップ3aの配列の静止画像を取得することで、
図5に示されるように、マップ画像Aを生成する。静止画像の取得は、例えば、操作者の指示に従い行ってもよい。生成されたマップ画像Aは、観察部20から画像処理部50を介して表示部60に送信されて該表示部60に表示される。
【0022】
抽出工程S4および復元工程S5は、画像処理部50によって実行される。
抽出工程S4において、画像処理部50は、観察部20から受信したマップ画像Aから画像処理によってチップ3aの像の輪郭を検出し、該輪郭によって囲まれたチップ領域3a’をマップ画像Aから切り出す。輪郭の検出は、例えば、画素の輝度値を、マップ画像Aの横軸方向および縦軸方向に1次微分し、得られた微分値が所定の閾値よりも大きい位置を検出することによって行われる。このときに、輝度値を2値化したマップ画像Aを用いてもよい。また、チップ3aの寸法および形状が既知である場合には、画像処理によって検出された輪郭を、既知のチップ3aの寸法および形状と一致するように補正してもよい。
【0023】
次に、復元工程S5においては、抽出工程S4において切り出したチップ領域3a’をマップ画像A内で移動させて互いにつなぎ合わせることによって、
図6に示されるように、分割前の組織切片1および基板3の像を復元した復元像Bを生成する。このときに、隣接する2つのチップ領域3a’の、互いに隣接する辺同士が一致するように、チップ領域3a’を移動することによって、チップ領域3a’同士を正確につなぎ合わせることができる。
【0024】
具体的には、矩形の各チップ領域3a’が有する4つの角の、マップ画像A内における位置座標を取得する。そして、
図7に示されるように、互いに隣接するチップ領域3a’の、対応する2つの角の位置が一致するように、チップ領域3a’を移動させる。これにより、シート2の各方向の伸展量が不均一となってチップ領域3a’の配列が不規則であっても、チップ領域3a’を正確につなぎ合わせることができる。ここで、画像処理部50は、各チップ領域3a’の移動量および移動方向を表わす移動ベクトルを記録しておく。記録された移動ベクトルは、後述するマップ画像表示工程S8において、各チップ領域3a’を元の位置へ戻す処理に用いられる。
【0025】
復元像Bが生成されたマップ画像Aは、復元像表示工程S6において表示部60に表示される。ここで、復元工程S5においては、各チップ領域3a’が、
図5に示される元の位置から、
図6に示される位置へ移動する過程を、アニメーションで表示部60に表示してもよい。これにより、操作者は、各断片1aの、組織切片1内における位置を、さらに容易に把握することができる。なお、これに代えて、
図5に示されるマップ画像Aをそのまま表示し続け、該マップ画像Aとは別に復元像Bを表示してもよい。
【0026】
次に、選択工程S7においては、操作者が、表示部60に表示された組織切片1および基板3の復元像Bを観察し、採取するチップ3aを決定する。そして、操作者は、決定したチップ3aのチップ領域3a’を、復元像Bに対して指定する。指定するチップ領域3a’の数は、1つであってもよく、複数であってもよい。チップ領域3a’の指定には、例えば、画像処理部50に設けられた、タッチパネル等のグラフィカルユーザインタフェースが使用される。画像処理部50は、操作者によって指定されたチップ領域3a’に標識5を付す。
図6には、標識5として、指定された順番を示す数字が示されているが、標識5の形態は、これに限定されるものではなく、任意であってよい。
【0027】
次に、マップ画像表示工程S8において、画像処理部50は、復元工程S5において記録しておいた移動ベクトルに従って各チップ領域3a’を元の位置に戻すことによって、
図8に示されるように、マップ画像Aを復元し、復元されたマップ画像Aを表示部60に再表示させる。このときに、画像処理部50は、選択工程S7において指定されたチップ領域3a’を、標識5と一緒に移動させる。これにより、操作者は、自身が選択したチップ3が、再表示されたマップ画像A内のいずれのチップ3aであるかを標識5に基づいて容易に認識することができる。
【0028】
マップ画像表示工程S8においても、復元工程S5と同様に、1つにつなぎ合わされた各チップ領域3a’が元の位置に移動する過程を、アニメーションで表示してもよい。これにより、操作者は、自身が選択したチップ3の、マップ画像A内における位置をさらに容易に認識することができる。
【0029】
次に、採取工程S9において、操作者は、表示部60に表示されたマップ画像Aとライブ画像とを比較し、標識5されているチップ領域3a’と対応するシート2上の実在のチップ3aが採取位置に配置されるようにステージ10の位置を調整し、採取部30を操作して選択したチップ3aをシート2から剥離および落下させる。このときに、表示部60上のマップ画像Aとライブ画像とを比較しやすいように、マップ画像Aおよびライブ画像の表示倍率を同一にすることが好ましい。
【0030】
この場合に、本実施形態によれば、分割後の断片1aの像をつなぎ合わせて分割前の組織切片1の像を復元することによって、操作者は、組織切片1の分割後であっても、分割前の組織切片1の正確な像に基づいて採取すべき断片1aを容易に選択することができる。特に、組織切片1の各部分がいずれのチップ3aに分配されたかを復元像Bに基づいて正確に知ることができるので、採取すべき断片1aと該断片1aが付着したチップ3aとを正確に選択することができる。さらに、操作者が復元像Bに基づいて選択したチップ3aが、実際のシート2上の多数のチップ3aの内のいずれであるかを、再表示されたマップ画像Aの標識5に基づいて容易に認識し、選択したチップ3aを正確に採取することができる。
【0031】
なお、本実施形態においては、採取工程S9において、操作者がステージ10および採取部30を手動で操作してチップ3aを採取することとしたが、これに代えて、細胞分取システム100が、指定されたチップ3aを自動で採取してもよい。この場合、ステージ10および移動機構32は、画像処理部50からの信号に従って駆動する電動式であり、選択されたチップ3aが採取位置に配置されるようにステージ10が移動し、次に、移動機構32が針部材31を下降させてチップ3aの採取を実行する。このように、煩雑なステージ10の位置合わせを自動化することによって、操作者の負担を効果的に低減することができる。
【0032】
ここで、チップ3aの採取位置への位置合わせは、次のようにして行われる。
まず、マップ画像A内の多数のチップ領域3a’のうち1つ、例えば、一番左上に位置するチップ領域3a’を基準用に決定し、基準用のチップ領域3a’の中心を原点に設定する。次に、設定された原点を有する直交座標系における、指定されたチップ領域3a’の中心位置を計算する。直交座標系において、マップ画像Aの横軸がX軸、縦軸がY軸である。チップ領域3a’の中心は、例えば、復元工程S5において取得した、チップ領域3a’の4つの角の位置座標を用い、チップ領域3a’の対角線の交点として求める。これにより、原点に対する、指定されたチップ領域3a’の中心の絶対位置が算出される。
【0033】
なお、ここで用いる座標系は、各チップ領域3a’の、原点に対する絶対位置を定義できるものであればよく、直交座標系に代えて、極座標系等の他の種類の座標系を用いてもよい。また、チップ3aの絶対位置または相対位置を用いてステージ10を移動させる場合には、マップ画像Aの撮像倍率を勘案し、ステージ10の移動距離および移動方向を決定する必要があることはいうまでもない。
【0034】
次に、観察部20によって観察されているライブ画像から、基準用のチップ領域3a’に対応する基準用のチップ3aを検出し、該基準用のチップ3aの中心をステージ10の零点位置に設定する。これにより、ステージ10とマップ画像Aとの基準位置合わせが行われる。以上の処理は、画像処理部50または図示しないコンピュータ等によって行われる。次に、指定されたチップ領域3a’の絶対位置に基づき、当該チップ領域3a’に対応するチップ3aが採取位置に配置されるように、ステージ10が移動する。なお、本変形例においては、ステージ10とマップ画像Aとの基準位置合わせまでを自動で行い、その後のステージ10の移動は操作者が手動で行ってもよい。
【0035】
また、本変形例においては、チップ領域3a’の中心の絶対位置は、以下の方法に従って計算してもよい。
まず、1つのチップ領域3a’を基準用に決定し、基準用のチップ領域3a’の中心を原点に設定する。次に、
図9に示されるように、原点から隣接するチップ領域3a’の中心まで、チップ領域3a’の辺の中心を通る経路を決定し、該経路の始点と終点とを結ぶベクトルを計算する。ここで、チップ領域3a’の中心および辺の中心の位置の計算には、復元工程S5において得られた位置座標を利用することができる。同様にして、他の隣接する2つのチップ領域3a’について、中心同士を結ぶベクトルを計算する。これにより、原点に対する任意のチップ領域3a’の絶対位置を、ベクトルの和として得ることができる。
【0036】
また、本変形例においては、操作者の手動操作によって、ステージ10とマップ画像Aとの基準位置合わせを行ってもよい。例えば、最初に採取するチップ3aを採取位置に手動操作で配置し、このときのステージ10の位置を零点位置として設定する。マップ画像Aの原点は、当該チップ3aに対応するチップ領域3a’の中心に設定すればよい。
【0037】
また、本変形例においては、チップ領域3a’の絶対位置に代えて、チップ領域3a’の相対位置に基づいてステージ10が移動してもよい。この場合も、復元工程S5において取得した、チップ領域3a’の4つの角の位置座標、または、移動ベクトルを利用することができる。例えば、
図10に示されるように、指定された2つのチップ領域3a’の中心同士を結ぶベクトルを計算し、このベクトルに従ってステージ10が移動することによって、選択された2つのチップ3aを続けて採取することができる。
【0038】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る細胞分取方法について
図11を参照して説明する。
本実施形態においては、上述した第1の実施形態と異なる点において主に説明し、第1の実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略する。
第1の実施形態においては、採取工程S9において、ライブ画像を観察しながらステージ10の位置を調整することとした。これに対し、本実施形態においては、ライブ画像を用いずにチップ3aの採取を行う点において、第1の実施形態と異なっている。したがって、本実施形態においては、採取工程について主に説明する。
図11は、本実施形態の採取工程の詳細を示すフローチャートである。
【0039】
図11に示されるように、採取工程において、採取位置が、観察部20によって取得される画像の中央に配されるように、観察部20と採取部30との位置合わせを行う(ステップS91’)。次に、マップ画像Aを静止画像として取得し(ステップS92’)、このときのステージ10の位置座標(X
s,Y
s)を記録する(ステップS93’)。次に、マップ画像Aの中央位置を原点とし、マップ画像A内における基準用のチップ領域3a’の位置座標(x
t,y
t)を取得する(ステップS94’)。そして、マップ画像Aの倍率(Z倍)を勘案して、下式に示されるように、ステージ10の位置座標(X
s,Y
s)にチップ領域3a’の位置座標(x
t,y
t)を加算することによって、ステージ10の座標系における基準チップ3aの位置座標(X
t,Y
t)を得る(ステップS95’)。
(X
t,Y
t)=(X
s,Y
s)+(x
t,y
t)/Z
【0040】
次に、位置座標(X
t,Y
t)に、所望のチップ領域3a’の、基準用のチップ領域3a’からのベクトル成分(dx,dy)を加算することによって、ステージ10の座標系における所望のチップ領域3a’の位置座標(X
t’,Y
t’)を得る(ステップS96’)。このベクトル成分(dx,dy)は、マップ画像Aの倍率を勘案したものであることは言うまでもない。次に、得られた位置座標(X
t’,Y
t’)にステージ10を位置合わせすることで、所望のチップ3aを採取位置に配置することができる(ステップS97’)。
【0041】
また、マップ画像Aを取得する際のステージ10の位置を原点(0,0)とした場合には、基準用のチップ領域3a’のステージ10の座標系における位置座標を(x
0/Z,y
0/Z)とすることができる。所望のチップ領域3a’の基準用のチップ領域3a’からのベクトル成分を(dx,dy)とすると、所望のチップ領域3a’の、ステージ10の座標系における位置合わすべき位置座標は(dx+x
0/Z,dy+y
0/Z)となる。この位置にステージ10を合わせることで、針部材31によって所望のチップ3aを採取することができる。なお、ステージ10の移動は、手動であってもよく、自動であってもよい。
【0042】
本実施形態においても、上述したステップS91’〜S97’の計算や各部の操作を、予め記憶されたプログラム等に従って細胞分取システム100が自動で行ってもよく、操作者自身が手動で行ってもよい。