(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電子を放出する陰極と、X線を放出する陽極ターゲットと、前記陽極ターゲットを回転自在に支持する支持機構と、前記陰極、陽極ターゲット及び支持機構を収容した真空外囲器と、を有する回転陽極型X線管と、
前記回転陽極型X線管を収納するハウジングと、
前記回転陽極型X線管と前記ハウジングとの間の空間に充填された冷却液と、
前記真空外囲器と前記ハウジングとの間に位置し、前記真空外囲器と前記ハウジングとにそれぞれ隙間を置いて設けられ、前記陽極ターゲットの軸線に沿って延在し、前記真空外囲器を取り囲む第1シェルと、
前記第1シェルと前記ハウジングとの間に位置し、前記ハウジングに隙間を置いて設けられ、前記X線を透過させる貫通孔を有するX線遮蔽体と、
前記ハウジングに隙間を置いて設けられ、前記軸線に垂直な方向にて前記ハウジングを取り囲み、弾性体を介して前記ハウジングに固定され、前記ハウジングとの間に通気路を形成する第2シェルと、
前記通気路に空気を導入し空気の流れを作りだす空気導入ユニットと、を備える回転陽極型X線管装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら第1の実施形態に係る回転陽極型のX線管装置について詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係るX線管装置を示す断面図である。
図2は、本実施形態に係る回転陽極型X線管ユニットを示す断面図である。
図3は、本実施形態に係る回転陽極型X線管を示す断面図である。
【0019】
図1に示すように、X線管装置は、大まかにハウジング20と、ハウジング20内に収納された回転陽極型のX線管30と、X線管30とハウジング20との間の空間に充填された冷却媒体としての冷却液7と、シールド構造体6と、回転駆動部としてのステータコイル9と、循環ユニット23と、高電圧ケーブル61、71と、リセプタクル300、400と、シェル100と、空気導入ユニット150と、エアフィルタ180とを備えている。
【0020】
ハウジング20は、筒状に形成されたハウジング本体20eと、蓋部(側板)20f、20g、20hとを有している。ハウジング本体20e、蓋部20f、20g、20hは、金属材料又は樹脂材料で形成されている。後述するが、本実施形態に係るハウジング本体20eは、ラジエータとしても機能するため、金属等、熱伝導率の高い材料で形成されている方が望ましい。なお、金属材料で形成されているハウジング本体20eは、樹脂材料で形成されているハウジング本体に比べて冷却液7の熱が伝わり易く、外部に放熱し易い。
【0021】
この実施形態において、ハウジング本体20e、蓋部20f、20g、20hはアルミニウムを用いた鋳物で形成されている。樹脂材料を使用する場合は、ネジ部など強度を必要とする個所や、樹脂の射出成形で成形し難い個所、またハウジング20の外部への電磁気ノイズの漏洩を防止する図示しない遮蔽層など、部分的に金属を併用しても良い。
【0022】
ハウジング20を形成する材料に樹脂材料を使用する場合、上記樹脂材料は、熱硬化性エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、熱可塑性エポキシ樹脂、ナイロン樹脂、芳香族ナイロン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、液晶ポリマー及びメチルペンテンポリマーのうちの少なくとも1つを含んでいると望ましい。
【0023】
後述する高電圧供給端子44が位置する側のハウジング本体20eの開口部には、環状の段差部が形成されている。上記段差部の内周面には、環状の溝部が形成されている。X線管装置の管軸に沿った方向において、蓋部20fの周縁部はハウジング本体20eの段差部に接触している。ハウジング本体20eの上記溝部にはC形止め輪20iが嵌合されている。
【0024】
C形止め輪20iは、管軸に沿った方向における、ハウジング本体20eに対する蓋部20fの位置を規制している。この実施形態において、蓋部20fのがたつきを防止するため、蓋部20fの位置は固定されている。管軸に直交した方向において、ハウジング本体20eと蓋部20fとの間の隙間は、Oリングにより液密にシールされている。上記Oリングは、ハウジング20外部への冷却液7の漏れを防止する機能を有している。上記Oリングは、樹脂やゴムで形成されている。
上記のことから、高電圧供給端子44が位置する側のハウジング本体20eの開口部は、蓋部20f、C形止め輪20i及びOリングにより液密に閉塞されている。
【0025】
後述する高電圧供給端子54が位置する側のハウジング本体20eの開口部には、環状の段差部が形成されている。上記段差部の内周面には、環状の溝部が形成されている。蓋部20gはハウジング本体20eの内部に位置している。管軸に沿った方向において、蓋部20gの周縁部はハウジング本体20eの段差部とともに後述するX線遮蔽部510を挟んでいる。蓋部20hは蓋部20gに対向している。この実施形態において、蓋部20hは、円環部を有し、円環部は蓋部20g側に突出して形成されている。
【0026】
ハウジング本体20eの上記内周面及び蓋部20g、並びに蓋部20hの隙間は、枠状のOリングにより液密にシールされている。上記Oリングは、ゴムベローズ21の周縁部で形成され、ハウジング20外部への冷却液7の漏れを防止する機能を有している。
【0027】
ハウジング本体20eの上記溝部にはC形止め輪20jが嵌合されている。C形止め輪20jは、蓋部20hがOリングへ応力を加えている状態を保持している。上記のことから、高電圧供給端子54が位置する側のハウジング本体20eの開口部は、蓋部20g、蓋部20h、C形止め輪20j及びゴムベローズ21により液密に閉塞されている。
【0028】
蓋部20gは、冷却液7が出入りする開口部20kを有している。蓋部20hには、雰囲気としての空気が出入りする通気孔20mが形成されている。ゴムベローズ21は、ハウジング20内において、蓋部20g及び蓋部20hで囲まれた領域を、開口部20kと繋がった第1空間と、通気孔20mと繋がった第2空間とに区切っている。冷却液7の圧力調整は、ゴムベローズ21により行われている。
【0029】
図4は、
図1の線IV−IVに沿ったX線管装置を示す断面図である。この図では、ハウジング20、シェル100、複数のスペーサ110、複数の放熱フィン120、ゴム部材130、及びX線放射窓20wを取り出して示している。
【0030】
図1及び
図4に示すように、ハウジング20は、X線透過領域R1に対向したX線放射窓20wを有している。X線放射窓20wは、例えば図示しないOリングとともにハウジング20の枠部20dに形成されたX線放射口を液密に閉塞している。X線放射窓20wは、機械的強度の高い材料を利用して形成することができる。この実施形態において、X線放射窓20wは、アルミニウムを利用して形成されているが、他の金属材料や樹脂などを利用して形成することも可能である。X線放射窓20wは、X線を透過しハウジング20外部に放射する。なお、ハウジング20の内面に、鉛板は貼り付けられていない。
【0031】
図1、
図2及び
図3に示すように、X線管30は、真空外囲器31、陽極ターゲット35及び陰極36を備えている。真空外囲器31は、径大部、径小部及び中継部を有している。径大部は、後述する軸線aに垂直な方向にて陽極ターゲット35と対向している。径小部は、軸線aに垂直な方向にて後述するロータ10と対向している。中継部は、径大部と径小部とを繋いでいる。
【0032】
真空外囲器31は、真空容器32を有している。真空容器32は、例えば、ガラス、又は銅、ステンレス及びアルミニウム等の金属で形成されている。この実施形態において、真空容器32はガラスで形成されている。なお、真空容器32を金属で形成する場合、真空容器32は、X線透過領域R1に対向した開口を有している。そして、真空容器32の開口は、X線を透過する材料としてのベリリウムで形成されたX線透過窓で気密に閉塞されている。真空外囲器31の一部は、高電圧絶縁部材50で形成されている。本実施形態において、高電圧絶縁部材50は、ガラスで形成されている。
【0033】
陽極ターゲット35は、真空外囲器31内に設けられている。陽極ターゲット35は、円盤状に形成されている。陽極ターゲット35は、この陽極ターゲットの外面の一部に設けられた傘状のターゲット層35aを有している。ターゲット層35aは、陰極36から照射される電子が衝突することによりX線を放出する。陽極ターゲット35は、モリブデンなどの金属で形成されている。
【0034】
陽極ターゲット35の外側面や、陽極ターゲット35でのターゲット層35aとは反対側の表面には、黒色化処理が施されている。ターゲット層35aは、モリブデン、モリブデン合金、タングステン合金等の金属で形成されている。陽極ターゲット35は、管軸を中心に回転自在である。このため、陽極ターゲット35の軸線aは、管軸と平行である。
【0035】
陰極36は、真空外囲器31内に設けられている。陰極36は、陽極ターゲット35に照射する電子を放出する。陰極36には相対的に負の電圧が印加される。低膨張合金であるKOV部材55は、真空外囲器31内で高電圧供給端子54を覆っている。ここでは、高電圧供給端子54と高電圧絶縁部材50の間はガラス封着され、KOV部材55は高電圧絶縁部材50に摩擦ばめを利用して固定されている。KOV部材55には、陰極支持部材37が取付けられている。陰極36は、陰極支持部材37に取付けられている。
【0036】
高電圧供給端子54は、陰極支持部材37の内部を通って陰極36に接続されている。高電圧供給端子54は、陰極36に相対的に負の電圧を印加するともに陰極36の図示しないフィラメント(電子放出源)にフィラメント電流を供給するものである。
【0037】
X線管30は、固定軸1、回転体2、軸受け3及びロータ10を備えている。固定軸1は、円柱状に形成されている。固定軸1の外周の一部には突出部が形成され、突出部は、真空外囲器31に気密に取付けられている。固定軸1には、高電圧供給端子44が電気的に接続されている。固定軸1は回転体2を回転可能に支持する。回転体2は筒状に形成され、固定軸1と同軸的に設けられている。回転体2の外面にロータ10が取り付けられている。回転体2には、陽極ターゲット35が取付けられている。軸受け3は、固定軸1と回転体2の間に形成されている。回転体2は、固定軸1の周囲で軸受け3により回転自在に支持されている。回転体2は、陽極ターゲット35とともに回転可能に設けられている。固定軸1、回転体2及び軸受け3は、陽極ターゲット35を回転自在に支持する支持機構を形成している。高電圧供給端子44は、固定軸1、軸受け3及び回転体2を介して陽極ターゲット35に相対的に正の電圧を印加する。この実施形態において、高電圧供給端子44及び高電圧供給端子54は、金属端子である。
【0038】
また、軸線aに沿った方向にターゲット層35aと対向したハウジング20の一端側にX線遮蔽部510が設けられている。X線遮蔽部510は、ターゲット層35aから放射されるX線を遮蔽するものである。X線遮蔽部510は、X線不透過材を含む材料で形成されている。X線遮蔽部510は、第1遮蔽部511及び第2遮蔽部512を有している。
【0039】
第1遮蔽部511は、軸線aに沿った方向にターゲット層35aと対向した側の蓋部20gに貼り付けられている。第1遮蔽部511は、蓋部20g全体を覆っている。第1遮蔽部511は、開口部20kと対向した個所が開口して形成され、開口部20kによる冷却液7の出入りを維持している。第2遮蔽部512は、第1遮蔽部511上に設けられている。第2遮蔽部512は、開口部20k付近からハウジング20の外部に出射する恐れのあるX線を遮蔽するものである。
【0040】
固定部材90は、ハウジング20の内部に設けられている。固定部材90は、陰極36に対して陽極ターゲット35の反対側においてX線管30の外側に位置している。固定部材90は、ハウジング20に対するX線管30の位置を固定している。固定部材90は、電気絶縁部材であり、樹脂などの電気絶縁材料で形成されている。
【0041】
固定部材90自体は、ハウジング20に固定されている。固定部材90は、複数のゴム部材(電気絶縁部材)92を利用しハウジング20に固定されている。例えば、固定部材90は、3、4個所でゴム部材92とともにハウジング20に固定されている。ゴム部材92は、ハウジング20に接触している。このため、固定部材90及びゴム部材92は、摩擦ばめを利用してハウジング20に固定されている。
【0042】
固定部材90には、貫通孔90aが形成されている。貫通孔90aは、高電圧供給端子54と高電圧ケーブル71との接続空間、高電圧ケーブル71の通路、冷却液7の流路、として利用されている。
【0043】
固定部材90には、X線遮蔽体600及びX線遮蔽部520が取付けられている。X線遮蔽体600は硬鉛で形成されている。X線遮蔽体600は枠状に形成されている。X線遮蔽体600は、不所望なX線(散乱X線等)の遮蔽に寄与している。
【0044】
X線遮蔽部520は、軸線aに沿った方向にX線遮蔽部510と対向した固定部材90に貼り付けられている。X線遮蔽部520は、貫通孔90aと対向した個所が開口して形成されている。X線遮蔽部510及び520は、接地されている。
【0045】
また、上記のように、陰極36側において、鉛と絶縁材とが複合的に使用されている。これにより、鉛の使用量を低減することができる。また、高電圧ケーブル71と、X線遮蔽体600及びX線遮蔽部520との絶縁性を確保することができる。
【0046】
シールド構造体6は、軸線aに垂直な方向にて真空外囲器31の真空空間全体を取り囲んでいる。シールド構造体6は、X線を透過するX線透過領域R1と、X線を遮蔽しX線透過領域R1を囲んだX線遮蔽領域R2とを有している。
【0047】
シールド構造体6は、第1シェルとしての絶縁部材6aと、X線遮蔽体6bと、を有している。絶縁部材6aで形成される流路形成体は、真空外囲器31との間に冷却液7が流れる流路を形成する。絶縁部材6a及びX線遮蔽体6bで形成される流路形成体は、ハウジング20との間に冷却液7が流れる流路を形成する。
【0048】
絶縁部材6aは、電気絶縁性材料で形成されている。絶縁部材6aは、真空外囲器31とハウジング20との間に位置している。絶縁部材6aは、軸線aに垂直な方向において、真空外囲器31とハウジング20とにそれぞれ隙間を置いて設けられている。また、絶縁部材6aは、軸線aに垂直な方向において、真空外囲器31(真空外囲器31の真空空間全体)を取り囲んでいる。絶縁部材6aは、軸線aに沿って延在し、管状に形成されている。絶縁部材6aの形状は、X線管30の形状に対応している。絶縁部材6aは、軸線aに沿って直径が変化している。絶縁部材6aは、X線管30と、ハウジング20及びステータコイル9との間を電気的に絶縁するものである。
【0049】
絶縁部材6aは、熱硬化性エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、熱可塑性エポキシ樹脂、ナイロン樹脂、芳香族ナイロン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、液晶ポリマー及びメチルペンテンポリマーのうちの少なくとも1つを含む樹脂材料で形成されている。条件次第では、絶縁部材6aは、防護体として機能する。
なお、絶縁部材6aは、X線遮蔽体6bと一体に設けられていてもよい。また、絶縁部材6aを金属部材に入れ替えることも可能である。
【0050】
絶縁部材6a(シールド構造体6)は、接続部材40を介してX線管30に固定されている。絶縁部材6aと接続部材40は機械的に強固に接続されている。接続部材40は、真鍮などからなり、射出成型法を利用して絶縁部材6aと一体成形が可能である。絶縁部材6aには、冷却液7を取入れる複数の取入れ口INが形成されている。絶縁部材6aは、真空外囲器31との間に冷却液7を取出す取出し口を形成している。
【0051】
X線遮蔽体6bは、絶縁部材6aとハウジング20との間に位置している。X線遮蔽体6bは、軸線aに垂直な方向において、ハウジング20に隙間を置いて設けられている。X線遮蔽体6bは、X線遮蔽領域R2に設けられ、X線を遮蔽している。X線遮蔽体6bは、X線透過領域R1に重なった貫通孔6bhを含んでいる。貫通孔6bhは、例えば円形である。貫通孔6bhは、X線透過口として機能する。X線遮蔽体6bは円筒状に形成されている。
【0052】
X線遮蔽体6bは、絶縁部材6aに固定されている。X線遮蔽体6bは、絶縁部材6aに密接又は近接する形状を有している。この実施形態において、X線遮蔽体6bは絶縁部材6aに密接する形状を有している。X線遮蔽体6bは絶縁部材6aに貼り付けられている。
【0053】
X線遮蔽体6bは、導体で形成されているハウジング本体20eに電気的に接続され、接地されている。この実施形態において、X線遮蔽体6bは、配線(接地線)17及びステータコイル9の固定金具を介してハウジング20に電気的に接続されている。このため、X線遮蔽体6bの電位を安定させることができる。X線遮蔽体6bが電気的にフローディング状態にある場合でのX線管30の放電の誘発を抑制することができる。
【0054】
軸線aに垂直な方向において、X線遮蔽体6bは、X線遮蔽体600に重なる端部を有している。X線遮蔽体6bの端部の内径は、X線遮蔽体600の端部の外径より僅かに大きい。X線遮蔽体6b及びX線遮蔽体600は、ねじ18bを利用してねじ締結されている。
【0055】
このため、X線遮蔽体600は、X線遮蔽部510及びX線遮蔽部520とともにX線遮蔽体6bの開口を塞ぐX線遮蔽蓋として機能している。X線遮蔽体6b、X線遮蔽部510、X線遮蔽部520及びX線遮蔽部材590は、X線透過領域R1外に放射されたX線を遮蔽することができるため、ハウジング20の外部へのX線の漏洩を防止することができる。
【0056】
ここで、X線遮蔽部材590は、環状に形成されている。X線遮蔽部材590は、ステータコイル9に取り付けられ、ハウジング20と同電位に設定されている。軸線aに沿った方向において、X線遮蔽部材590は、X線遮蔽体6bで取り囲まれている。X線遮蔽部材590は、散乱X線の遮蔽に寄与している。
【0057】
また、X線遮蔽体6bは、軸線aに沿ってX線遮蔽体600と対向した位置から陽極ターゲット35(ターゲット層35aの表面の延長線上)を越える位置まで延出している。この実施形態において、X線遮蔽体6bは、X線遮蔽体600と対向した位置からステータコイル9の手前まで延出している。
【0058】
X線遮蔽体6bは、硬鉛で形成されている。X線遮蔽体6bの厚みは、1乃至5mm程度である。ここで、X線遮蔽体6bの厚みは、それぞれ内周面と外周面との最短距離であり、この実施形態では軸線aに垂直な方向における内周面と外周面との距離である。
【0059】
X線遮蔽体6bは、X線不透過材を含む材料で形成されていてもよい。X線遮蔽体6b等に利用するX線不透過材としては、タングステン、タンタル、モリブデン、バリウム、ビスマス、希土類金属及び鉛の少なくとも1つを含む金属、並びにタングステン、タンタル、モリブデン、バリウム、ビスマス、希土類金属及び鉛の少なくとも1つの化合物を利用することができる。
【0060】
X線遮蔽体6b、X線遮蔽部510、X線遮蔽部520、X線遮蔽部材590及びX線遮蔽体600の表面は、防食保護のため、錫、銀、銅、ニッケルなどの金属メッキや樹脂コーティングを形成しても良い。
【0061】
シールド構造体6がある程度の強度と延性を有し、陽極ターゲット35全体を取り囲んでいる場合、シールド構造体6は防護体として機能することができる。例えば、絶縁部材6aが単独で防護体として機能することができ得る。陽極ターゲット35が高速回転中に破損した場合、高い運動エネルギを有した陽極ターゲット35の破片は、ガラスで形成された真空容器32を破壊し、更にハウジング20の内面に向かう方向へと飛散する。シールド構造体6は、高い運動エネルギを有した状態で飛散する陽極ターゲット35の破片のハウジング20への衝突を防護する。
【0062】
シールド構造体6に陽極ターゲット35の破片が衝突しても、シールド構造体6は十分な変形を起こすことにより破片の運動エネルギを吸収することができる。シールド構造体6及びハウジング20は、隙間を置いて位置しているため、シールド構造体6に変形が生じてもハウジング20自体の変形を防止できる。これにより、ハウジング20に生じる恐れのあった亀裂の発生を防止することができる。
【0063】
環部70は、環状に形成され、X線管30(真空外囲器31)の径大部の周りに間隔を置いて設けられている。環部70は、樹脂などの電気絶縁材料を利用して形成されている。複数のゴム部材(電気絶縁部材)91は、環部70の内周面側に取り付けられ、X線管30(真空外囲器31)の径大部に接触している。複数のゴム部材(電気絶縁部材)95は、環部70の外周面側に取り付けられ、X線遮蔽体6bに接触している。このため、環部70及びゴム部材91、95は、摩擦ばめを利用してX線管30をハウジング20に固定している。
【0064】
少なくとも、X線管30、シールド構造体6、環部70、固定部材90、X線遮蔽体600、X線遮蔽部520、及びゴム部材91、92、95は、回転陽極型のX線管ユニット5を形成している。この実施形態において、X線管ユニット5は、X線管30、シールド構造体6、環部70、固定部材90、X線遮蔽体600、X線遮蔽部520、及びゴム部材91、92、95に、接続部材40、ステータコイル9、及びX線遮蔽部材590を加えて形成されている。
【0065】
図1に示すように、ステータコイル9は、複数個所でハウジング20に固定されている。ステータコイル9は、シールド構造体6に対してX線管30の反対側に位置している。ステータコイル9は、ロータ10の外面に対向して真空外囲器31の外側を囲んでいる。ステータコイル9は、軸線aに垂直な方向でのシールド構造体6の位置を規制している。この実施形態において、ステータコイル9は、絶縁部材6aの外面に接触している。なお、X線管30にがたつきが生じないよう、ステータコイル9の一部と絶縁部材6aの外面とは接着剤により接着されている。
【0066】
ステータコイル9は、ロータ10、回転体2及び陽極ターゲット35を回転させるものである。ステータコイル9に所定の電流が供給されることでロータ10に与える磁界を発生するため、陽極ターゲット35などが所定の速度で回転される。
【0067】
X線管装置は、循環ユニット23及び空洞部24を備えている。循環ユニット23は、ハウジング20内部に設けられ、ハウジング20の内部に強制対流を生じさせる。循環ユニット23は、チャンバ23aと、モータ23bと、フィン23cとを備えている。チャンバ23aは、冷却液7の取込み口及び吐出し口を有している。
【0068】
モータ23bは、チャンバ23aの内壁に取付けられている。フィン23cは、チャンバ23a内にてモータ23bに取付けられている。モータ23bは、図示しない電源供給部から電力が与えられることにより、フィン23cを回転させる。循環ユニット23は、取込み口からチャンバ23a内に取込んだ冷却液7を、吐出し口からチャンバ23aの外部に吐出す。
【0069】
空洞部24は、筒状の内周壁と、筒状の外周壁と、内周壁及び外周壁の一端を液密に閉塞する環状の一端壁と、内周壁及び外周壁の他端を液密に閉塞する環状の他端壁と、を有している。この実施形態において、他端壁は、接続部材40及び絶縁部材6aで形成され、複数の取入れ口INを有している。外周壁の一部に形成された開口は、チャンバ23aの吐出し口と液密に連通している。
【0070】
空洞部24は、チャンバ23aの吐出し口と、取入れ口INとを繋ぐ流路として機能する。このため、冷却液7は、真空外囲器31の径小部側から径大部側に流路形成体(絶縁部材6a)と真空外囲器31との間の内側の冷却液流路を流れる。また、貫通孔90aを通過した冷却液7は、流路形成体(絶縁部材6a及びX線遮蔽体6b)とハウジング20との間の外側の冷却液流路を逆方向に流れる。このため、循環ユニット23は、流路形成体(絶縁部材6a及びX線遮蔽体6b)とハウジング20との間の冷却液流路に冷却液7の流れを軸線aに平行な一定方向に形成する。
【0071】
ハウジング20の内部に強制対流を生じさせることができるため、冷却液7をハウジング20の内部において循環させることができる。このため、X線管30等から冷却液7に伝達された熱をハウジング20に積極的に伝達することができる。
冷却液7としては、水系冷却液や、絶縁性の冷却液としての絶縁油を利用することができる。この実施形態において、冷却液7は、絶縁油である。
【0072】
X線管装置は、陽極用のリセプタクル300及び陰極用のリセプタクル400を有している。リセプタクル300は、ハウジング20の筒部20aの内部に位置し、筒部20aに取付けられている。リセプタクル400は、ハウジング20の筒部20cの内部に位置し、筒部20cに取付けられている。例えば、筒部20a及び筒部20cは、ハウジング本体20eと同一材料を利用して一体に形成されている。
【0073】
リセプタクル300は、電気絶縁部材としてのハウジング301と、高電圧供給端子としての端子302とを有している。
ハウジング301は、筒部20a(ハウジング20)の外側に開口した桶状に形成されている。ハウジング301は、ほぼ軸対称なコップ形状であると言うことができる。また、ハウジング301のプラグ差込口がハウジング20の外側に開口していると言うことができる。
【0074】
ハウジング301の開口側の端部において、ハウジング301の外面には、環状の突出部が形成されている。ハウジング301は、絶縁性の材料として、例えば樹脂で形成されている。端子302は、ハウジング301の底部に液密に取付けられ、上記底部を貫通している。
【0075】
高電圧ケーブル61は、冷却液7に浸っている。高電圧ケーブル61は、一端部が高電圧供給端子44に電気的に接続され、他端部がハウジング20内の空間を通って端子302に電気的に接続されている。高電圧ケーブル61と高電圧供給端子44との接続には、溶接や半田付けの接続方式を利用することができる。又は、高電圧ケーブル61と高電圧供給端子44とを着脱可能に接続する摩擦ばめを利用した接続方式を利用することも可能である。
【0076】
電気絶縁性部材64は、電気絶縁性樹脂で形成され、端子302と高電圧ケーブル61との電気的接続部を埋め尽くし、ハウジング301に直に接着されている。より詳しくは、電気絶縁性部材64はモールド材で形成されている。電気絶縁性部材64を利用することにより、端子302と高電圧ケーブル61との電気的接続部と、ハウジング20との電気絶縁性を向上することができる。
【0077】
なお、上記電気的接続部だけではなく、他の個所にもモールド材等を適用することにより、ハウジング20内部の電気絶縁性の向上を図ることができる。この場合、冷却液7に水系冷却液を利用することができ得る。
【0078】
筒部20aの段差部と、ハウジング301の突出部との間にはOリングが介在されている。筒部20aの段差部には、雌ねじの加工がなされている。リングナット310は、側面に雄ねじの加工がなされている。リングナット310は、筒部20aの段差部に締め付けられ、ハウジング301を押圧している。これにより、Oリングは、筒部20aの段差部と、ハウジング301の突出部とにより加圧される。リセプタクル300は筒部20aに液密に取付けられるため、ハウジング20外部への冷却液7の漏洩を防止することができる。
【0079】
リセプタクル300及びリセプタクル300に挿入される図示しないプラグは、非面圧式であり、着脱可能に形成されている。プラグをリセプタクル300に連結した状態で、プラグから端子302に高電圧(例えば、+70〜+80kV)が供給される。
【0080】
リセプタクル400は、リセプタクル300と同様に形成されている。
リセプタクル400は、電気絶縁部材としてのハウジング401と、高電圧供給端子としての端子402とを有している。
【0081】
ハウジング401は、筒部20c(ハウジング20)の外側に開口した桶状に形成されている。ハウジング401は、ほぼ軸対称なコップ形状であると言うことができる。また、ハウジング401のプラグ差込口がハウジング20の外側に開口していると言うことができる。
【0082】
ハウジング401の開口側の端部において、ハウジング401の外面には、環状の突出部が形成されている。ハウジング401は、絶縁性の材料として、例えば樹脂で形成されている。端子402は、ハウジング401の底部に液密に取付けられ、上記底部を貫通している。
【0083】
高電圧ケーブル71は、冷却液7に浸っている。高電圧ケーブル71は、一端部が高電圧供給端子54に電気的に接続され、他端部がハウジング20内の空間を通って端子402に電気的に接続されている。高電圧ケーブル71と高電圧供給端子54との接続には、溶接や半田付けの接続方式を利用することができる。又は、高電圧ケーブル71と高電圧供給端子54とを着脱可能に接続する摩擦ばめを利用した接続方式を利用することも可能である。
【0084】
電気絶縁性部材74は、電気絶縁性樹脂で形成され、端子402と高電圧ケーブル71との電気的接続部を埋め尽くし、ハウジング401に直に接着されている。より詳しくは、電気絶縁性部材74はモールド材で形成されている。電気絶縁性部材74を利用することにより、端子402と高電圧ケーブル71との電気的接続部と、ハウジング20との電気絶縁性を向上することができる。
【0085】
筒部20cの段差部と、ハウジング401の突出部との間にはOリングが介在されている。筒部20cの段差部には、雌ねじの加工がなされている。リングナット410は、側面に雄ねじの加工がなされている。リングナット410は、筒部20cの段差部に締め付けられ、ハウジング401を押圧している。これにより、Oリングは、筒部20cの段差部と、ハウジング401の突出部とにより加圧される。リセプタクル400は筒部20cに液密に取付けられるため、ハウジング20外部への冷却液7の漏洩を防止することができる。
【0086】
リセプタクル400及びリセプタクル400に挿入される図示しないプラグは、非面圧式であり、着脱可能に形成されている。プラグをリセプタクル400に連結した状態で、プラグから端子402に高電圧(例えば、−70〜−80kV)が供給される。
【0087】
上記のように構成されたX線管装置では、ステータコイル9に所定の電流を印加することでロータ10が回転し、陽極ターゲット35が回転する。次に、リセプタクル300、400に所定の高電圧を印加する。
【0088】
リセプタクル300に印加された高電圧は、高電圧ケーブル61、高電圧供給端子44、固定軸1、軸受け930及び回転体2を介して陽極ターゲット35に供給される。リセプタクル400に印加された高電圧は、高電圧ケーブル71及び高電圧供給端子54を介して陰極36に供給される。
【0089】
これにより、陰極36から放出された電子は陽極ターゲット35のターゲット層35aに衝突し、陽極ターゲット35からX線が放射される。X線は、貫通孔6bh及びX線放射窓20w通ってハウジング20の外部へ放射される。
【0090】
図1及び
図4に示すように、第2シェルとしてのシェル100は、ハウジング20に隙間を置いて設けられ、軸線aに垂直な方向にてハウジング20を取り囲んでいる。シェル100は、ハウジング20(ハウジング本体20e)との間に通気路AWを形成する。この実施形態において、シェル100は、両端部に通気口を有した筒状に形成され、軸線aに平行な方向に延在している。シェル100は、例えばポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート等の樹脂、又は金属を利用して形成されている。
【0091】
シェル100は、複数のスペーサ110により、ハウジング20との間に所定の間隔を置いて配置されている。複数のスペーサ110は、ハウジング20とシェル100との間に設けられ、通気路AWを保持している。
【0092】
スペーサ110は、通気路AWを空気が流れることを可能に、例えばハウジング20(ハウジング本体20e)の周方向において、例えばブロック状、もしくは個々に独立した柱状に設けられる。また、スペーサ110は、例えばゴム、ウレタンフォーム等の弾性樹脂を利用して形成されている。このため、スペーサ110は、X線管30からシェル100への振動の伝達を低減することができる。
【0093】
シェル100は、ハウジング20の筒部20a、筒部20c、枠部20d(X線放射窓20w)及び突出部20pを露出させた状態で、ハウジング20を覆っている。このため、シェル100は、筒部20a、筒部20c、枠部20d及び突出部20pに対応した開口を有している。なお、突出部20pは、X線管装置の取付け面20sを有している。
【0094】
また、シェル100は、複数の分割部で形成されている。例えば、上記複数の分割部は、軸線aに垂直な方向に分離される。この実施形態において、シェル100は、第1分割部101及び第2分割部102で形成されている。第1分割部101及び第2分割部102を組み合わせることにより、容易にシェル100を形成することができる。
【0095】
さらに、シェル100は、弾性体としてのゴム部材130を介してハウジング20に固定されている。この実施形態において、シェル100は、筒部20a、筒部20c、枠部20d及び突出部20pにそれぞれゴム部材130を介して固定されている。なお、弾性体には、ゴム部材130のようにゴムやウレタンフォーム等の弾性樹脂を利用することができる。このため、ゴム部材130も、X線管30からシェル100への振動の伝達を低減することができる。
【0096】
また、ゴム部材130(弾性体)は、ハウジング20とシェル100の開口との間の気密性を高めるため、シール部材としても機能していた方が望ましい。通気路AWの内部における気流の減速や乱れを抑制することができるためである。
【0097】
なお、シェル100を形成する樹脂材料にX線管30からのX線を遮蔽する遮蔽材を含有させることで、ハウジング20内に用意する遮蔽材の量を低減することができる。上記遮蔽材としては、例えば、タングステン、タンタル、モリブデン、バリウム、ビスマス、希土類金属及び鉛の少なくとも1つである金属微粒子、並びにタングステン、タンタル、モリブデン、バリウム、ビスマス、希土類金属及び鉛の少なくとも1つの化合物微粒子の少なくとも1つである。
【0098】
後述する気流による冷却作用により、シェル100の外表面の温度は、ハウジング20の外表面の温度と比較して上昇し難い。例えば、操作者等がシェル100に接触した場合における火傷の発生を抑制することができるため、X線管装置の安全性の向上を図ることができる。
【0099】
また、本実施形態において、ハウジング20ではなくシェル100の表面の温度が80℃を超えないように設計されていれば、国際的な安全基準を遵守することができる。このため、X線管装置は、ハウジング20の表面温度が80℃を超えた所定の温度に達した際に、上述したインターロックが動作するように形成されていてもよい。
【0100】
空気導入ユニット150は、通気路AWに空気を導入し空気の流れを作りだす。この実施形態において、空気導入ユニット150は、シェル100の一端部に取り付けられ、通気路AWを通る空気をX線管装置(シェル100)の外部へと放出させる。また、空気導入ユニット150は、ファンユニットで形成されている。
【0101】
上記のことから、ラジエータとして機能するハウジング20は冷却液7の熱を外部へ放出させることができるため、ハウジング20や冷却液7の温度の上昇を抑制することができる。なお、シェル100の温度の上昇も抑制される。
【0102】
空気導入ユニット150の筐体のうち、X線管装置(シェル100)の外側に露出した側は、通気性に優れている。この実施形態において、筐体の露出した側は、メッシュ状に形成されている。これにより、空気導入ユニット150側から通気路AWへの埃の侵入を抑制することができる。また、上記筐体のメッシュ部は、空気導入ユニット150のフィンのカバーとして利用することもできる。操作者の指等が空気導入ユニット150のフィンに接触する事態を回避することができるため、X線管装置の安全性の向上を図ることができる。
【0103】
複数の放熱フィン120は、通気路AWに位置し、ハウジング20の外面に設けられている。ハウジング20は、放熱フィン120を設けることにより、表面積を大きくし、空気に接する面積を大きくすることができる。これにより、X線管装置の冷却性能の向上を図ることができる。
【0104】
この実施形態において、複数の放熱フィン120は、軸線aに平行な方向に延在した板状部材で形成されている。複数の放熱フィン120は、ハウジング20の周方向に間隔を置いて位置している。互いに隣合う放熱フィン120間の隙間が空気の流路となる。また、放熱フィン120は、シェル100との間に間隔を置くように形成されている。
【0105】
なお、ハウジング20と放熱フィン120とを鋳造により一体に成型することにより、放熱フィン120を形成することも可能である。
【0106】
エアフィルタ180は、X線管装置の空気取り込み側、すなわち通気路AWより風上側に位置している。この実施形態において、エアフィルタ180は、シェル100の他端部に取り付けられている。エアフィルタ180は、空気を透過させ、空気に含まれる埃を取り除くものである。言い換えると、エアフィルタ180は、通気路AWへの埃の侵入を抑制することができる。このため、上記空気導入ユニット150は、エアフィルタ180を透過した空気を通気路AWに導入し、通気路AWを通る空気の流れを作りだすことができる。
【0107】
上記のことから、埃が取り除かれた空気が放熱フィン120間の隙間等を透過するため、放熱フィン120等への埃の堆積を抑制することができる。そして、放熱フィン120間の隙間(通気部)を塞がり難くすることができる。通気路AWを通過する空気の量(風量)の低下を抑制することができるため、ラジエータとしての放熱性能の低下を抑制することができる。
【0108】
なお、エアフィルタ180は、単体で又はユニット化され着脱可能にシェル100に取付けることができる。これにより、エアフィルタ180の交換や、エアフィルタ180を含めたX線管装置の清掃を容易に行うことができる。
【0109】
X線管装置は、縮流ガイド160及び拡散ガイド170をさらに備えている。
縮流ガイド160は、通気路AWより風上側に位置し、空気を通気路AWに案内する。縮流ガイド160は、管状に形成され、円筒部と円錐部とを有している。円筒部は、ハウジング20(ハウジング本体20e)の一端部に取付けられている。この実施形態において、円筒部は、上記一端部の外周面を取り囲み上記一端部に気密に取付けられている。円錐部は、円筒部と一体に形成されている。円錐部の円筒部側の端部とシェル100との間の隙間は、円錐部のエアフィルタ180側の端部とシェル100との間の隙間より狭い。
【0110】
縮流ガイド160は、気流断面を小さくすることができるため、通気路AWより風上側の気流を圧縮し、通気路AW内の風速を増大させることができる。これにより、冷却効果を高めることができる。また、通気路AWより風上側において、風速分布を一様にすることができ、気流の乱れを小さくすることができる。なお、気流の乱れが小さくなることにより、風の音を低減することができる。
【0111】
拡散ガイド170は、通気路AWより風下側に位置し、通気路AWを通過した空気を案内する。拡散ガイド170は、管状に形成され、円筒部と円錐部とを有している。円筒部は、ハウジング20(ハウジング本体20e)の他端部に取付けられている。この実施形態において、上記円筒部は、上記他端部の外周面を取り囲み上記他端部に気密に取付けられている。上記円錐部は、上記円筒部と一体に形成されている。円錐部の円筒部側の端部とシェル100との間の隙間は、円錐部の空気導入ユニット150側の端部とシェル100との間の隙間より狭い。
【0112】
拡散ガイド170は、気流断面を大きくすることができるため、気流を拡散し、通気路AW内の風速を増大させることができる。これにより、冷却効果を高めることができる。また、拡散ガイド170は、通気路AWを通った気流を減速させることができるため、風の音を低減することができる。
【0113】
上記のように構成された第1の実施形態に係る回転陽極型X線管装置によれば、以下に例示的に挙げる効果を得ることができる。
【0115】
上記のようにハウジング20(ハウジング本体20e)自体をラジエータとして機能させることができる。なお、空気導入ユニット150により、ハウジング20の表面に空気の流れを作りだすことができる。表面積の大きいラジエータを別途用意すること無しにX線管装置を形成することができる。
【0116】
(2)人体との接触を考慮した安全性を確保することができる。
【0117】
ハウジング20の周囲に外気の流路が形成される。X線管装置の露出表面はハウジング20の表面ではなく、シェル100の外表面である。このため、ハウジング20の温度が高い場合にもシェル100の温度は低いため、シェル100に人が触れた場合における火傷の発生を抑制することができる。
【0118】
(3)X線遮蔽材料(鉛)の使用量を削減することができ、X線遮蔽部材の解体分離性を向上させることができる。
【0119】
X線管装置は、シールド構造体6(X線遮蔽体6b)X線遮蔽部510、X線遮蔽部520、X線遮蔽部材590及びX線遮蔽体600を備えている。X線遮蔽体6b等は、ハウジング20の外部で形成された後、ハウジング20内部に組み込まれている。本実施形態において、ハウジング20に鉛板を内貼りしなくともよく、上記鉛板を貼り付ける場合に比べて簡単にX線遮蔽体6b等を製造することができる。これにより、製造コストの低減を図ることができる。また、内貼りされた鉛を分別する場合に比べて鉛の分別が容易になるため、一層、資源の有効活用に寄与することができる。
【0120】
さらに、X線遮蔽体6bのサイズ(直径)を小さくすることができるため、鉛の使用量を減らすことができ、軽量化を図ることができる。またさらに、X線の遮蔽精度を高めることができる。ハウジング20に鉛板を内貼りする場合、鉛板間の隙間からX線が漏洩し得るためである。これにより、例えば、X線管装置を医療診断機器に搭載した場合、人体への不要な放射(被曝)を防止することができる。
【0121】
(4)陽極ターゲット35破損時の安全性を確保することができる。
【0122】
X線管装置において、万一、陽極ターゲット35が高速回転中に破損した場合、陽極ターゲット35の破片は高い運動エネルギを有した状態で飛散する恐れがある。陽極ターゲット35の破片が飛散した場合、破片により、真空外囲器31が破壊される。破片は、さらにハウジング20(アルミ鋳物)にも衝突するため、ハウジング20にも破損(脆性破壊)が生じる恐れがある。さらには、シェル100にも破損が生じ得る。X線撮影中にハウジング20等に破損が生じると、被検査体(例えば人体)に高温の冷却液7がかかってしまう危険性がある。
【0123】
シールド構造体6がある程度の強度と延性を有する場合、シールド構造体6は防護体として機能することができる。シールド構造体6は、陽極ターゲット35が高速回転中に破損した場合、高い運動エネルギを有した状態で飛散する陽極ターゲット35の破片のハウジング20への衝突を防護する。シールド構造体6に陽極ターゲット35の破片が衝突しても、シールド構造体6は十分な変形を起こすことにより運動エネルギを吸収することができる。
【0124】
これにより、ハウジング20に生じる恐れのあった亀裂の発生を防止することができる。例えば、X線管装置を医療診断機器に搭載した場合、被検査体(例えば人体)に高温の冷却液7がかかってしまう危険性を排除することができる。
【0125】
また、シールド構造体6が防護体として機能する場合、ハウジング20を樹脂材料で形成することができる。樹脂材料は金属に比べて熱伝達率や機械的強度が劣るが、安価であるため、ハウジング20の製造コストの低減と、軽量化とを図ることができる。
【0126】
(5)X線管ユニット5を形成することによる効果を得ることができる。
【0127】
X線管ユニット5単体で、貫通孔6bh以外のシールド構造体6からのX線漏洩がないことの確認試験を行うことができる。この実施形態において、シールド構造体6は絶縁部材6aを有しているため、X線管ユニット5単体で、電圧耐久性の確認試験を行うこともできる。X線管装置に組み立てることなく、X線管ユニット5単体で信頼性試験を実施することができる。X線管装置単位ではなく、X線管ユニット5単体で輸送可能になるため、輸送コストの低減を図ることができる。
【0128】
(6)シールド構造体6を設けたことによる効果を得ることができる。
【0129】
絶縁部材6aは、X線管30の周りを取り囲み、冷却液7より絶縁特性に優れている。絶縁部材6aを設けることにより、絶縁部材6aを設けない場合に比べてX線管30と、ハウジング20との間の絶縁パスを短くすることができる。これにより、X線管装置の小型化を図ることができる。そして、X線管装置の小型化と、電圧耐久性の向上との両立を図ることができる。また、上記したようにX線管ユニット5単体で電圧耐久性の確認試験を行い、X線管ユニット5をハウジング20内に組み込んだ状態での電圧耐久性の確認試験を省略することも可能となる。
【0130】
また、シールド構造体6は、冷却液7が流れる流路形成体を形成している。
シールド構造体6(絶縁部材6a)は、真空外囲器31との間に冷却液7の自然対流又は強制対流が生じる冷却液流路を形成している。上記冷却液流路が無い場合と比べてX線管30の局所過熱が生じ難いため、陽極ターゲット35の放熱の向上を図ることができる。
【0131】
一方、シールド構造体6(絶縁部材6a及びX線遮蔽体6b)は、ハウジング20との間に冷却液7の自然対流又は強制対流が生じる冷却液流路を形成している。上記冷却液流路が無い場合と比べてハウジング20の局所過熱が生じ難いため、冷却液7からハウジング20への熱伝達の向上を図ることができる。
【0132】
(7)循環ユニット23を設けたことによる効果を得ることができる。
【0133】
X線管装置は循環ユニット23を有している。ハウジング20内に冷却液7の強制対流を生じさせることができる。このため、陽極ターゲット35から輻射される熱量の放散を向上させることができる。また、真空外囲器31の過熱を低減することができ、X線管30での放電の発生を低減することができる。さらに、ハウジング20内の冷却液7の温度を均一にすることができ、冷却液7からハウジング20への熱伝達の向上を図ることができる。
【0134】
(8)放熱フィン120を設けたことによる効果を得ることができる。
【0135】
ハウジング本体20eのみの表面積より、ハウジング本体20eと放熱フィン120の集合体の表面積の方が大きい。通気路AWにて空気に接する面積を大きくすることができるため、X線管装置の冷却性能の向上を図ることができる。
【0136】
(9)エアフィルタ180を設けたことによる効果を得ることができる。
【0137】
エアフィルタ180は、空気に含まれる埃を取り除くことができる。このため、空気導入ユニット150は、エアフィルタ180を透過した空気を通気路AWに導入することができる。例えば、放熱フィン120間の隙間(通気部)を塞がり難くすることができ、ラジエータとしてのハウジング20及び放熱フィン120の放熱性能の低下を抑制することができる。これにより、放熱フィン120等のメンテナンス(清掃)頻度の低減及びメンテナンス作業性の向上、又はメンテナンスフリー化を実現することができる。
【0138】
上記のことから、小型化、安全性の向上及び製造コストの低減をそれぞれ図ることができ、製造歩留まりが高く、X線管30の冷却性能に優れた回転陽極型X線管装置を得ることができる。
【0139】
次に、第2の実施形態に係る回転陽極型のX線管装置について説明する。この実施形態において、上記第1の実施形態と同一機能部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
図5は、本実施形態に係るX線管装置を示す断面図である。
【0140】
図5に示すように、絶縁部材6aは、径の均一な筒状に形成されている。この実施形態において、絶縁部材6aは、真空外囲器31の全体を取り囲んでいる。絶縁部材6aは、一方で固定部材90及びゴム部材92等によりハウジング20に対する相対的な位置決めがなされ、他方で固定部材140によりハウジング20に対する相対的な位置決めがなされている。固定部材140を形成する材料としては、ゴムなどの弾性材料を利用することができる。
【0141】
なお、ステータコイル9に取付けられた固定金具は、絶縁部材6aに固定されている。また、絶縁部材6aには、高電圧ケーブル61を通す貫通口、及び冷却液7の流路として利用される貫通口等が形成されている。
【0142】
X線管装置は、高電圧絶縁部材4を備えている。高電圧絶縁部材4は、接続部材40を介してX線管30に固定されている。高電圧絶縁部材4と接続部材40は機械的に強固に接続されている。高電圧絶縁部材4は、一端が円錐形をし、他端が閉塞した管状に形成されている。高電圧絶縁部材4は、軸線aに垂直な方向にて真空外囲器31の径小部及び中継部を取り囲んでいる。高電圧絶縁部材4は、固定軸1と、ハウジング20及びステータコイル9との間を電気的に絶縁するものである。
【0143】
高電圧絶縁部材4は、接続部材40の近傍に冷却液7の出入り口が形成されている。高電圧絶縁部材4は、真空外囲器31との間に冷却液7が流れる流路を形成する流路形成体として機能している。少なくとも、ハウジング20内の冷却液7に自然対流が生じるためである。なお、本実施形態において、X線管装置は循環ユニット23を備えているため、冷却液7には主に強制対流が生じる。
【0144】
また、本実施形態において、絶縁部材6a及び高電圧絶縁部材4は、独立して形成され、間隔を置いて設けられている。絶縁部材6aと真空外囲器31との間の流路と、高電圧絶縁部材4と真空外囲器31との間の流路とが分離するため、冷却液7に自然対流を生じ易くすることができる。
なお、ステータコイル9は、高電圧絶縁部材4に接着されている。
【0145】
図6に示すように、少なくともX線管30及びシールド構造体6は、回転陽極型のX線管ユニット5を形成している。この実施形態において、X線管ユニット5は、X線管30、シールド構造体6、環部70、固定部材90、X線遮蔽体600、X線遮蔽部520、ゴム部材91、92、95、接続部材40、高電圧絶縁部材4、ステータコイル9、及びX線遮蔽部材590で形成されている。
【0146】
なお、
図7に示すように、X線管ユニット5は、X線管30、シールド構造体6、環部70、固定部材90、X線遮蔽体600、X線遮蔽部520、及びゴム部材91、92、95で形成されていてもよい。
【0147】
上記のように構成された第2の実施形態に係る回転陽極型X線管装置によれば、X線管装置は、概ね上記第1の実施形態と同様に構成され、上記第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0148】
X線管ユニット5は冷却液7に自然対流が生じ易いように形成されている。このため、循環ユニット23無しに、X線管30の局所過熱が生じ難いX線管装置を形成することも可能である。
【0149】
上記のことから、小型化、安全性の向上及び製造コストの低減をそれぞれ図ることができ、製造歩留まりが高く、X線管30の冷却性能に優れた回転陽極型X線管装置を得ることができる。
【0150】
次に、第3の実施形態に係る回転陽極型のX線管装置について説明する。この実施形態において、上記第2の実施形態と同一機能部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
図8は、本実施形態に係るX線管装置を示す断面図である。
【0151】
図8に示すように、X線管装置は、拡散ガイド170無しに形成されている。シェル100は、一端が気密に閉塞した筒状に形成され、軸線aに平行な方向に延在している。シェル100は、両端部に通気口を有している。この実施形態において、シェル100の風下側に形成された通気口は、軸線aに垂直な方向に開口している。
【0152】
空気導入ユニット150は、シェル100等、X線管装置の本体から離間して設けられている。
X線管装置は、空気ダクト190をさらに備えている。空気ダクト190は、ホースなどの導管で形成されている。空気ダクト190は、シェル100の一端部の通気口と空気導入ユニット150とを気密に連結する。
【0153】
上記のように構成された第3の実施形態に係る回転陽極型X線管装置によれば、X線管装置は、概ね上記第2の実施形態と同様に構成され、上記第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0154】
空気ダクト190の長さを調節することにより、空気導入ユニット150とX線管装置の本体との距離を調整することができる。これにより、X線管装置の本体の付近における風の音を低減することができる。
【0155】
また、空気導入ユニット150を種々変形して形成することができる。例えば、シェル100の形状に対応付けること無く、各種の空気導入ユニット150を利用することができる。
【0156】
上記のことから、小型化、安全性の向上及び製造コストの低減をそれぞれ図ることができ、製造歩留まりが高く、X線管30の冷却性能に優れた回転陽極型X線管装置を得ることができる。
【0157】
次に、比較例1の回転陽極型X線管装置について説明する。
図9に示すように、比較例1のX線管装置は、上述した実施形態に係るX線管装置と比較し、大まかに絶縁部材6a、循環ユニット23、シェル100、空気導入ユニット150及びエアフィルタ180無しに形成されている。
【0158】
X線遮蔽体6bは、ハウジング20に鉛板を内貼りすることにより形成されている。このため、比較例1では、鉛(X線遮蔽材料)の使用量の低減を図ることができない問題や、製造コストの低減を図ることができない問題を有している。また、比較例1のX線遮蔽体6bでは、X線の漏洩が生じ得る問題も有している。
【0159】
X線管装置は、空冷型のクーラユニット200を備えている。クーラユニット200は、筐体201、循環ポンプ202、及び熱交換器(空冷ラジエータ203及びファン204)を有している。ハウジング20と循環ポンプ202とは、導管211及び筐体201内の導管205を介して連結されている。循環ポンプ202と空冷ラジエータ203とは、筐体201内の導管206を介して連結されている。空冷ラジエータ203とハウジング20とは、筐体201内の導管207及び導管212を介して連結されている。
【0160】
熱交換器の性能を高めるためには空冷ラジエータ203の表面積を大きくする必要がある。クーラユニットは、一定以上の容積を有する必要があるため、コンパクトなX線装置を実現することは困難となる。
上記のことから、比較例1では、小型化及び製造コストの低減をそれぞれ図ることができ、製造歩留まりが高いX線管装置を得ることはできないものである。
【0161】
次に、比較例2の回転陽極型X線管装置について説明する。
図10に示すように、X線管装置は、X線管30と、ハウジング20と、冷却液7と、循環流路220と、循環ポンプ221と、循環流路225と、水系の冷却液230と、循環ポンプ240と、熱交換器250と、熱交換器260と、タンク270と、流量センサ280と、筐体290とを備えている。熱交換器260は、ラジエータ261及びファンユニット262を有している。
【0162】
X線管装置は、水冷型のクーラユニット200を備えている。熱交換器250は、循環流路220及び循環流路225を有している。熱交換器250は、例えば、プレート式の熱交換器である。熱交換器250は、冷却液7の熱を冷却液230に伝達させる。このため、冷却液7はX線管30を冷却する一次冷却液であり、冷却液230は冷却液7(一次冷却液)を冷却する二次冷却液である。
【0163】
しかしながら、比較例2ではX線管装置に2個の熱交換器250、260を設ける必要がある。熱交換器260の性能を高めるためにはラジエータ261の表面積を大きくする必要がある。さらに、クーラユニット200は、冷却液230を貯蔵するタンク270も備えている。クーラユニット200は、一定以上の容積を有する必要があるため、コンパクトなX線装置を実現することは困難となる。
上記のことから、比較例2では、X線管30の冷却性能に優れたX線管装置を得ることはできるものの、小型化を図ることができるX線管装置を得ることはできないものである。
【0164】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0165】
例えば、上述した実施形態において、X線管装置は循環ユニット23を備えているが、これに限定されるものではなく種々変形可能であり、X線管装置は循環ユニット23無しに形成されていてもよい。X線管ユニット5は冷却液7に自然対流が生じ易いように形成されている。このため、循環ユニット23無しに、X線管30の局所過熱が生じ難いX線管装置を形成することも可能である。シールド構造体6とハウジング本体20eの内壁との間は、冷却液7の自然対流による流れが生じるための十分な隙間(約0.2mm以上)が空いていた方が望ましい。そのようにするため、場合によっては、シールド構造体6の形状(外径)を変化させてもよい。
【0166】
放熱フィン120の形状は種々変形可能である。例えば、放熱フィン120は、ハウジング20の周りに螺旋状に設けられていてもよい。但し、放熱フィン120がハウジング20と同軸的に環状に形成されている場合、通気路AW内の気流の減速を招くため、望ましくない。
また、X線管装置は放熱フィン120無しに形成されていてもよい。
【0167】
空気導入ユニット150の位置は、上述した実施形態で示した例に限定されるものではなく、種々変形可能である。空気導入ユニット150は、エアフィルタ180と通気路AWの間(エアフィルタ180より内側)に位置していてもよく、又はエアフィルタ180より外側に位置していてもよい。
【0168】
上述した実施形態において、X線管装置はエアフィルタ180を備えているが、これに限定されるものではなく種々変形可能であり、X線管装置はエアフィルタ180無しに形成されていてもよい。
【0169】
上述した実施形態において、X線管装置は縮流ガイド160や拡散ガイド170を備えているが、これに限定されるものではなく種々変形可能であり、X線管装置は縮流ガイド160や拡散ガイド170無しに形成されていてもよい。
【0170】
ハウジング20を金属で形成する場合、上述したアルミニウム以外の材料で形成されていてもよい。例えば、アルミやアルミ合金、マグネシウム合金、ステンレス、真鍮などの材料を選択することもできる。
【0171】
上記ハウジング20や絶縁部材6aの電気的絶縁材は、機械的強度を増すために、更に、ガラス繊維、炭素繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、アラミド繊維等の補強繊維を含有させても良い。
【0172】
X線管装置は、陽極ターゲット35及び陰極36にそれぞれ高電圧を印加する中性点接地型に限定されるものではなく、陽極接地型や、陰極接地型を採っていてもよい。
この発明の実施形態は、各種の回転陽極型X線管装置に適用することができる
。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]電子を放出する陰極と、X線を放出する陽極ターゲットと、前記陽極ターゲットを回転自在に支持する支持機構と、前記陰極、陽極ターゲット及び支持機構を収容した真空外囲器と、を有する回転陽極型X線管と、
前記回転陽極型X線管を収納するハウジングと、
前記回転陽極型X線管と前記ハウジングとの間の空間に充填された冷却液と、
前記真空外囲器と前記ハウジングとの間に位置し、前記真空外囲器と前記ハウジングとにそれぞれ隙間を置いて設けられ、前記陽極ターゲットの軸線に沿って延在し、前記真空外囲器を取り囲む第1シェルと、
前記第1シェルと前記ハウジングとの間に位置し、前記ハウジングに隙間を置いて設けられ、前記X線を透過させる貫通孔を有するX線遮蔽体と、
前記ハウジングに隙間を置いて設けられ、前記軸線に垂直な方向にて前記ハウジングを取り囲み、前記ハウジングとの間に通気路を形成する第2シェルと、
前記通気路に空気を導入し空気の流れを作りだす空気導入ユニットと、を備える回転陽極型X線管装置。
[2]循環ユニットをさらに備え、
前記X線遮蔽体は、前記第1シェルに密接又は近接する形状を有し前記第1シェルとともに前記冷却液が流れる流路形成体を形成し、
前記循環ユニットは、前記流路形成体と前記ハウジングとの間の冷却液流路に前記冷却液の流れを前記軸線に平行な一定方向に形成する[1]に記載の回転陽極型X線管装置。
[3]前記X線遮蔽体は、前記第1シェルに固定されている[1]又は[2]に記載の回転陽極型X線管装置。
[4]前記ハウジングは、導体で形成され、
前記X線遮蔽体は、前記ハウジングに電気的に接続されている[1]に記載の回転陽極型X線管装置。
[5]前記通気路に位置し前記ハウジングの外面に設けられた複数の放熱フィンをさらに備えている[1]に記載の回転陽極型X線管装置。
[6]前記複数の放熱フィンは、前記軸線に平行な方向に延在した板状部材で形成されている[5]に記載の回転陽極型X線管装置。
[7]前記第2シェルは、複数の分割部で形成されている[1]に記載の回転陽極型X線管装置。
[8]前記複数の分割部は、前記軸線に垂直な方向に分離される[7]に記載の回転陽極型X線管装置。
[9]前記第2シェルは、弾性体を介して前記ハウジングに固定されている[1]、[7]及び[8]の何れか1に記載の回転陽極型X線管装置。
[10]第1シェルは、前記陽極ターゲット全体を取り囲み、前記陽極ターゲットの破片の運動エネルギを吸収する[1]に記載の回転陽極型X線管装置。
[11]前記第1シェルは、電気絶縁部材である[1]又は[10]に記載の回転陽極型X線管装置。
[12]前記ハウジングと前記第2シェルとの間に設けられ、前記通気路を保持するスペーサをさらに備える[1]に記載の回転陽極型X線管装置。
[13]前記第2シェルは、両端部に通気口を有した筒状に形成され、前記軸線に平行な方向に延在し、
前記空気導入ユニットは、前記第2シェルの一端部に取り付けられている[1]に記載の回転陽極型X線管装置。
[14]空気ダクトをさらに備え、
前記第2シェルは、両端部に通気口を有した筒状に形成され、前記軸線に平行な方向に延在し、
前記空気ダクトは、前記第2シェルの一端部の通気口と前記空気導入ユニットとを連結する[1]に記載の回転陽極型X線管装置。
[15]前記通気路より風上側に位置し、前記第2シェルに取り付けられ、空気を透過させ、空気に含まれる埃を取り除くエアフィルタをさらに備え、
前記空気導入ユニットは、前記エアフィルタを透過した空気を前記通気路に導入する[13]又は[14]に記載の回転陽極型X線管装置。