(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カソード集電体、前記カソード、前記高分子電解質膜、前記アノード、前記アノード集電体、前記スペーサ、前記給水シートを前後方向から挟持する前固定部材と、後固定部材とを有し、
前記後固定部材の縁部が額縁状に突出することにより前記縁部内に凹部が形成され、
前記凹部に対応する位置に前記給水シートが配されている、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の減酸素装置。
前記カソード集電体、前記カソード、前記高分子電解質膜、前記アノード、前記アノード集電体、前記スペーサ、前記給水シートを前後方向から挟持する前固定部材と、後固定部材とを有し、
前記後固定部材の前面に凸部が設けられ、
前記凸部が前記給水シートを後方から前記スペーサへ押圧する、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の減酸素装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、一実施形態の冷蔵庫の減酸素装置200について図面に基づいて説明する。
【0011】
実施形態1の冷蔵庫10について
図1〜
図7に基づいて説明する。本実施形態の冷蔵庫10は減酸素室100を有し、減酸素室100は減酸素装置200を有している。
【0012】
(1)冷蔵庫10の構造
冷蔵庫10の構造について
図1に基づいて説明する。
図1は冷蔵庫10の全体の側面から見た縦断面図である。
【0013】
冷蔵庫10のキャビネット12は断熱箱体であって、内箱と外箱とより形成され、その間に断熱材が充填されている。このキャビネット12内部は、上から順番に冷蔵室14、野菜室16、小型冷凍室18及び冷凍室20を有し、小型冷凍室18の横には製氷室が設けられている。野菜室16と小型冷凍室18及び製氷室の間には断熱仕切体36が設けられている。冷蔵室14と野菜室16とは水平な仕切体38によって仕切られている。冷蔵室14の前面には、観音開き式の扉14aが設けられ、野菜室16、小型冷凍室18、冷凍室20及び製氷室にはそれぞれ引出し式の扉16a,18a,20aが設けられている。
【0014】
キャビネット12の背面底部には、機械室22が設けられ、冷凍サイクルを構成する圧縮機24などが載置されている。この機械室22背面上部には、制御板26が設けられている。
【0015】
冷蔵室14の背面下部から野菜室16の背面において、冷蔵用蒸発器(以下、「Rエバ」という)28が設けられ、その下方には冷蔵用送風機(以下、「Rファン」という)30が設けられている。Rエバ28とRファン30とは、エバカバー15で形成されたRエバ室17に配されている。Rエバ28には、Rエバ28で発生した除霜水を溜める受け皿54が設けられている。
【0016】
小型冷凍室18の背面から冷凍室20の背面にかけてのFエバ室29には冷凍用蒸発器(以下、「Fエバ」という)32が設けられ、その上方には冷凍用送風機(以下、「Fファン」という)34が設けられている。Rエバ28で冷却された冷気は、Rファン30によって冷蔵室14及び野菜室16に送風される。Fエバ32で冷却された冷気は、Fファン34によって小型冷凍室18、製氷室、冷凍室20に送風される。
【0017】
冷蔵室14の背面には、冷蔵室14の庫内温度を検出する冷蔵室用センサ31が設けられ、冷凍室20の背面には、冷凍室20の庫内温度を検出する冷凍用センサ35が設けられている。
【0018】
図1に示すように、冷蔵室14には、複数の棚40が設けられ、下部には引出し式のチルド容器42を有するチルド室44が設けられている。このチルド室44は低温室であって、肉や魚を収納する。冷蔵室14の扉14aの背面には複数のドアポケット46が設けられている。野菜室16には、引出し式の野菜容器48が設けられている。
【0019】
野菜室16の天井部に当たる仕切体38の後部には、減酸素室100が設けられている。減酸素室100には、引き出し式の減酸素容器102が設けられ、この減酸素容器102の前面には扉104が設けられている。そして、減酸素容器102を減酸素室100に収納した場合に、扉104が、減酸素室100の前面開口部を密閉し、減酸素室100内部はほぼ密閉された状態となる。そして、この減酸素室100の背面には減酸素装置200が取り付けられている。
【0020】
(2)減酸素装置200
減酸素装置200は、断熱性を有するケース204と、その内部に収納された減酸素ユニット202を有する。この減酸素ユニット202について、
図2〜
図6に基づいて説明する。なお、
図2〜
図4において、各部材の厚みは薄いものであるが、説明を判り易くするために、その厚みは拡大して記載している。
【0021】
固体高分子電解質膜(以下、単に「電解質膜」という)206が縦方向に設けられ、電解質膜206の後部にはアノード208が設けられ、電解質膜206の前部にはカソード210が設けられている。カソード210は、カーボン触媒とカーボンペーパーを積層したものである。また、アノード208とカソード210には白金の触媒がそれぞれ担持されている。電解質膜206、アノード208及びカソード210がホットプレスなどを用いて一体に接合して減酸素セルが形成されている。アノード208の後方には、アノード集電体212が設けられ、カソード210の前方にはカソード集電体214が設けられている。両集電体212、214は、それぞれ気体が通過するためのスリット状の開口部216,218を有している。そして、アノード集電体212はアノード208にプラス通電を行い、カソード集電体214はカソード210にマイナス通電を行う。両集電体212,214は、不図示の電線からそれぞれ通電される。また、両集電体212,214が接触しないようにするために、絶縁体220が両集電体212,214の間に設けられている。この絶縁体220は額縁状であって、電解質膜206とアノード208とカソード210がその内部に収納されている。
【0022】
アノード208側のアノード集電体212の後方には、不織布よりなる給水シート222が配されている。
【0023】
アノード集電体212と、給水シート222の間には、板状のスペーサ211が配されている。このスペーサ211には、スリット状の給水用開口部213が複数開口している。スペーサ211の厚みは1mmであり、アノード集電体212と給水シート222との間に一定の空間Aを形成する。
【0024】
上記のようにして順番に積層した部材を、前後一対の後固定部材224と前固定部材226によって挟持して固定する。アノード208側に配される後固定部材224は積層した部材を収納するための収納凹部228を有し、上部には両集電体212,214の突片が突出する溝230が設けられている。また、後固定部材224の中央には、気体が通過するためのスリット状の開口部232が開口している。
【0025】
カソード側に取り付けられる前固定部材226は板状を成し、中央部に気体が通過するためのスリット状の開口部234を有している。
図2に示すように、スリット状の開口部234に関して、前側の断面積と後側の断面積とは異なり、後にいくほど狭くなるように傾斜している。これは、カソード集電体214に空気を送り易くするためである。
【0026】
図3に示すように、後固定部材224と前固定部材226とは、不図示のネジによってネジ止めされる。これら部材が一体となったものを、「減酸素ユニット202」と呼ぶ。なお、減酸素ユニット202の上部からは両集電体212、214の突片がそれぞれ突出し、下部からは給水シート222が垂れ下がっている。
【0027】
(3)ケース204
図4に示すように、上記で説明した減酸素ユニット202が、箱型の断熱性を有するケース204内部に収納される。
図4〜
図6に示すように、ケース204は、直方体状の前ケース236、後ケース238、前ケース236及び後ケース238の間に挟まれた額縁状の中ケース240とより構成されている。減酸素ユニット202のカソード側に前ケース236が配され、アノード側に後ケース238が配され、減酸素ユニット202を収納した状態で前ケース236、後ケース238、中ケース240が不図示のネジによってネジ止めされる。
【0028】
前ケース236について
図4と
図5に基づいて説明する。断熱性を有する前ケース236の後面の中央部には、正方形状の反応凹部244が設けられている。また、この反応凹部244の上面から前ケース236の上面に向かって溝状の上流路246が設けられ、前ケース236の上面に上通気孔248が開口している。また、反応凹部244の下面から下方に向かって溝状の下流路250が設けられ、前ケース236の下面に下通気孔252が開口している。そして、
図2に示すように、反応凹部244によってカソード側のカソード集電体214と前ケース236の前壁との間に直方体状の空間Bが生じる。
【0029】
次に、
図4に基づいて中ケース240について説明する。額縁状の中ケース240の中央部242には、減酸素ユニット202の前固定部材226が収納される。
【0030】
次に、
図4と
図6に基づいて後ケース238について説明する。後ケース238の前面中央部には、減酸素ユニット202の後固定部材224が収納できる収納凹部254が設けられ、この収納凹部254から後ケース238の上面に向かって両集電体212,214の突片がそれぞれ突出する溝256,258が設けられている。収納凹部254の後面には、さらに排気凹部260が設けられ、この排気凹部260の下面は互いに近づくように傾斜面を有し、排気口262に通じている。排気口262は、後ケース238の下面に開口している。
【0031】
減酸素ユニット202を収納したケース204は、減酸素室100の容器収納部104の後面に取り付けられる。この取り付け方法について
図2に基づいて説明する。
【0032】
容器収納部104の後面中央部には、収納側に向かって立方体状の収納保持部264が突出している。この収納保持部264は、後方からケース204の前ケース236が収納される。そのため、前ケース236の上面及び下面に開口している上通気孔248と下通気孔252に対応する位置に上孔266と下孔268が開口している。
【0033】
ケース204が、容器収納部104の後面から突出した状態となっているため、この突出部分を覆うようにカバー270を被せる。このカバー270は、合成樹脂製であって、ケース204の後ケース238を全て覆う形状に形成されている。なお、このカバー270には、両集電体212,214が突出するための集電体開口部278,278が設けられている。また、後ケース238の排気口262と通じた排気口280が開口している。
【0034】
(4)給水装置300
次に、給水装置300について、
図2と
図7に基づいて説明する。
【0035】
給水装置300は、給水本体302を有し、この給水本体302は、横長の直方体の箱体である。給水本体302は、その内部において区画壁304によって上下に区画され、上部が浄水区画306、下部が吸い上げ区画308を構成している。給水本体302の左端部上面、すなわち浄水区画306の上面には、給水パイプ152が接続されている。この給水パイプ152には、冷蔵庫10のRエバ28から発生した除霜水が受け皿54を介して送り込まれる。
【0036】
区画壁304は、
図6に示すように給水パイプ152が接続されている部分から下方に向かって傾斜し、右端部において吸い上げ区画308に通じる給水孔310が形成されている。浄水区画306内部には、イオン交換樹脂よりなる浄水部312が設けられている。この浄水部312を設けることにより、Rエバ28から供給された除霜水の水質による影響を取り除くことができ、減酸素ユニット115の劣化を防止できる。すなわち、除霜水は、Rエバ28に付着した霜であり、またドレンパンに集められているため、金属イオンが含まれている。そのため、給水シート222を構成する合成樹脂繊維の加水分解を助長する可能性があるため、この浄水部312を設けることにより、除霜水の水質による影響を取り除くことができる。
【0037】
吸い上げ区画308は、給水孔310から供給された水を溜めるための貯水タンク314を有している。また、吸い上げ区画308の左端部には排水パイプ154が設けられている。この排水パイプ154と貯水タンク314との間には、仕切り壁316が設けられている。給水孔310から給水された除霜水は、貯水タンク314に溜まる。この貯水タンク314は中央が凹み、上記で説明した減酸素ユニット202の給水シート222の下部が浸され、給水シート222はこの溜まった水を吸い上げる。貯水タンク314の水の量が多くなり仕切り壁316を超えると、排水パイプ154から不図示の蒸発皿に水が排水される。なお、横長の直方体である給水本体302において、吸い上げ区画308は、浄水区画306よりも前方に突出し、この吸い上げ区画308の前方に突出した天井面から給水シート222が引き出されている。
【0038】
この給水シート222は、上記したように不織布より形成され、給水シート222の下端が貯水タンク314に溜まった水に浸されている場合には、この水を吸い上げ、スペーサ211の位置で、スリット状の給水用開口部213を通して、アノード208に、気体状の水(水蒸気)をアノード208に供給する。ここで、この不織布よりなる給水シート222は、水を吸い上げた場合に表面に水の膜が形成されるが、不織布における目が粗く、この水の膜によって全ての不織布が覆われることがなく開口部320が形成される。
図3に示すように、給水シート222のアノード208の位置に対応する部分にもこの開口部320が形成される。この不織布としては、例えばフロンティア産業株式会社のFD−K70−06Rを用いる。
【0039】
(5)減酸素装置200の動作状態
減酸素装置200の動作状態について説明する。
【0040】
減酸素室100に食品を収納すると、制御板70が、両集電体212,214に対し通電を開始する。
【0041】
次に、
図2と
図5に示すように、減酸素容器106の空気が、減酸素室100の下通気孔252、下流通路250、空間B、前固定部材226の開口部234を経て供給され、両集電体212,214が通電されているので、流入した空気から減酸素が行われ、減酸素室100がCA貯蔵室となる。アノード208とカソード210では次の式(1)と式(2)のような減酸素反応が行なわれる。
【0042】
アノード・・・2H
2O→O
2+4H
++4e
− ・・・(1)
カソード・・・O
2+4H
++4e
−→2H
2O ・・・(2)
この減酸素反応式を説明すると、給水シート222からの水蒸気が空間Aを通り、アノード208で電気分解して水素イオン(プロトンH
+)を作り、その水素イオンが電解質膜116内を移動してカソード210に到達し、減酸素室100内部の酸素と反応して水を生成し、酸素を消費する。これにより減酸素が行われ、食品をCA貯蔵できる。
【0043】
次に、
図2と
図6に示すように、減酸素ユニット202のアノード208で発生した酸素が、後ケース238の排気路262から拡散して排出される。このとき、排出される酸素は、アノード集電体212のスリット状の開口部216とスペーサ211の給水用開口部213を経て給水シート222の位置に至る。そして、給水シート222にも開口部320が開口しているため、酸素は給水シート222によって遮断されず、後固定部材224の開口部232から酸素が排出される。そのため、この酸素の排出によりアノード208における電気分解が阻害されない。
【0044】
(6)効果
上記実施形態の冷蔵庫10であると、減酸素装置200における給水シート222が不織布より構成され、この不織布は水を吸い上げた場合に全ての部分が水に覆われるのでなく、開口部320が開口しているため、アノード208の電気分解で発生した酸素をこの開口部320から排出でき、この電気分解の反応を阻害しない。
【0045】
また、給水シート222は、不織布であるため、貯水タンク314から水を吸い上げやすいので、式(1)の電気分解反応が起こりやすい。
【0046】
また、後固定部材224は、給水シート222を収納凹部228内部に収納して、前固定部材226と後固定部材224とを固定しても、給水シート222に余分な押圧力が働くことがない。そのため、減酸素セルの発熱によって経時的に給水シート222が劣化しない。
【0047】
次に、実施形態2の冷蔵庫10における減酸素装置200について
図8に基づいて説明する。
【0048】
本実施形態と実施形態1の異なる点は、減酸素ユニット202に用いられているアノード集電体112と給水シート222との間に配されたスペーサ211にある。
【0049】
図8に示すように本実施形態のスペーサ211には、縦方向の縁部に酸素排出用の切り欠き部322が横方向に形成されている。
【0050】
アノード208から発生した酸素は、後固定部材224の切り欠き部322を通って減酸素ユニット202の側方に排出される。したがって、酸素の排出が遮断されることなく、アノード208における式(1)の電気分解反応を阻害しない。
【0051】
次に、実施形態3の冷蔵庫10における減酸素装置200について
図9に基づいて説明する。
【0052】
減酸素装置200の給水シート222が劣化すると、貯水タンク314からの吸水速度が上がり、安定した反応ができなくなる恐れがある。そこで、本実施形態は、この給水シートの232の劣化を防止するために、後固定部材224のスリット状の開口部232,232の間にある部分から前方に向かって凸部324を突出させている。この凸部324は、アノード208の位置に対応した位置に設ける。
【0053】
後固定部材224と前固定部材226とを不図示のネジによってネジ止めした場合に、この凸部324が給水シート222をスペーサ211側に押圧し、スペーサ211がアノード集電体212をアノード208に押圧する。したがって、アノード208とアノード集電体212とが全面的に常に接触し、接触抵抗が減少して、給水シート222の劣化を防止できる。
【0054】
すなわち、アノード集電体212の剛性が低い場合にはアノード208とアノード集電体212との間がぴったり付かず接触抵抗が増加して、給水シート222の劣化が早くなる。しかし、スペーサ211が押圧するとアノード集電体212の剛性が高くなり、アノード集電体212がアノード208に全面的に常に接触し、接触抵抗が減少するからである。
【0055】
上記実施形態では減酸素室100を野菜室14の天井部に設けたが、これに代えて、減酸素室100をチルド室44に設けてもよい。この理由は、チルド室44に収納される肉に含まれる油脂の酸化を防止し、肉などの保存に適するからである。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。