(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
磁気共鳴イメージング装置のガントリが設置される撮像室と、前記磁気共鳴イメージング装置の制御装置が設置されるコンピュータ室との間の壁に設置されると共に、前記撮像室側に露出する撮像室側端子群と、前記コンピュータ室側に露出するコンピュータ室側端子群と、前記撮像室側端子群の各端子を前記コンピュータ室側端子群の各端子に個別に接続する内部回路とを有するRF除去フィルタパネルユニットの配線方法であって、
第1レベルの制御信号線が接続される端子と、第2レベルの制御信号線が接続される端子とが隣接しないように、前記ガントリからの各制御信号線を前記撮像室側端子群の各端子にそれぞれ接続するステップと、
第1レベルの制御信号線が接続される端子と、第2レベルの制御信号線が接続される端子とが隣接しないように、前記制御装置からの各制御信号線を前記コンピュータ室側端子群の各端子にそれぞれ接続するステップと
を有することを特徴とするRF除去フィルタパネルユニットの配線方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、RF除去フィルタパネルユニットの配線方法及びMRI装置の実施形態について、添付図面に基づいて説明する。各実施形態の主な特徴は、RF除去フィルタパネルユニットの配線方法等にあるが、各実施形態で共通となるMRI装置の装置構成、部屋同士のレイアウト例を
図1及び
図2で説明し、次に結露の原理等を
図3〜
図5で説明後、
図6以降で各実施形態の特徴部分を説明する。なお、各図において同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
<装置構成>
図1は、各実施形態のMRI装置18の全体構成の一例を示す機能ブロック図である。ここでは一例として、MRI装置18の構成要素を寝台装置20、ガントリ30、制御装置40の3つに分けて説明する。
【0015】
第1に、寝台装置20は、支持台21と、天板22と、支持台21内に配置される天板移動機構23とを有する。天板22の上面には、被検体Pが載置される。また、天板22の上面には、被検体Pに装着されるRFコイル装置100が接続される接続ポート25が複数配置される。
【0016】
支持台21は、天板22を水平方向(装置座標系のZ軸方向)に移動可能に支持する。天板移動機構23は、天板22がガントリ30外に位置する場合に、支持台21の高さを調整することで、天板22の鉛直方向の位置を調整する。また、天板移動機構23は、天板22を水平方向に移動させることで天板22をガントリ30内に入れ、撮像後には天板22をガントリ30外に出す。
【0017】
第2に、ガントリ30は、例えば円筒状に構成され、撮像室に設置される。ガントリ30は、静磁場磁石31と、シムコイルユニット32と、傾斜磁場コイルユニット33と、RFコイルユニット34とを有する。
【0018】
静磁場磁石31は、例えば超伝導コイルであり、円筒状に構成される。静磁場磁石31は、不図示の超伝導コイル用電源から供給される電流により、撮像空間に静磁場を形成する。撮像空間とは例えば、被検体Pが置かれて、静磁場が印加されるガントリ30内の空間を意味する。なお、超伝導コイル用電源は、静磁場磁石31が静磁場を形成した後は、その後の撮像に必須となるものではない。
【0019】
シムコイルユニット32は、例えば円筒状に構成され、静磁場磁石31の内側において、静磁場磁石31と軸を同じにして配置される。シムコイルユニット32は、後述の制御装置40のシムコイル電源44から供給される電流により、静磁場を均一化するオフセット磁場を形成する。シムコイルユニット32は、静磁場磁石31の性能によっては必須要素ではない場合もある。
【0020】
傾斜磁場コイルユニット33は、例えば円筒状に構成され、シムコイルユニット32の内側に配置される。傾斜磁場コイルユニット33は、X軸傾斜磁場コイル33xと、Y軸傾斜磁場コイル33yと、Z軸傾斜磁場コイル33zとを有する。
【0021】
本明細書では、特に断りのない限り、X軸、Y軸、Z軸は装置座標系であるものとする。ここでは一例として、装置座標系のX軸、Y軸、Z軸を以下のように定義する。まず、鉛直方向をY軸方向とし、天板22は、その上面の法線方向がY軸方向となるように配置される。天板22の水平移動方向をZ軸方向とし、ガントリ30は、その軸方向がZ軸方向となるように配置される。X軸方向は、これらY軸方向、Z軸方向に直交する方向であり、
図1の例では天板22の幅方向である。
【0022】
X軸傾斜磁場コイル33xは、後述のX軸傾斜磁場電源46xから供給される電流に応じたX軸方向の傾斜磁場Gxを撮像領域に形成する。同様に、Y軸傾斜磁場コイル33yは、後述のY軸傾斜磁場電源46yから供給される電流に応じたY軸方向の傾斜磁場Gyを撮像領域に形成する。同様に、Z軸傾斜磁場コイル33zは、後述のZ軸傾斜磁場電源46zから供給される電流に応じたZ軸方向の傾斜磁場Gzを撮像領域に形成する。そして、スライス選択方向傾斜磁場Gss、位相エンコード方向傾斜磁場Gpe、及び、読み出し方向(周波数エンコード方向)傾斜磁場Groは、装置座標系の3軸方向の傾斜磁場Gx、Gy、Gzの合成により、任意の方向に設定可能である。なお、上記撮像領域は、例えば、画像の生成に用いられるMR信号の収集範囲の少なくとも一部であって、画像となる領域である。
【0023】
RFコイルユニット34は、例えば円筒状に構成され、傾斜磁場コイルユニット33の内側に配置される。RFコイルユニット34は、例えば、RFパルスの送信及びMR信号の受信を兼用する全身用コイル等を含む。
【0024】
第3に、制御装置40は、シムコイル電源44と、磁石モニタユニット45と、傾斜磁場電源46と、RF送信器48と、RF受信器50と、システム制御部61と、システムバスSBと、画像再構成部62と、画像データベース63と、画像処理部64と、入力装置72と、表示装置74と、記憶装置76とを有する。
【0025】
磁石モニタユニット45は、静磁場磁石31内の冷却装置(図示せず)の液体ヘリウムの温度、圧力等をシステム制御部61に伝達する。これにより、システム制御部61は、静磁場磁石31の異常の有無を常時監視する。
【0026】
傾斜磁場電源46は、X軸傾斜磁場電源46xと、Y軸傾斜磁場電源46yと、Z軸傾斜磁場電源46zとを有する。X軸傾斜磁場電源46x、Y軸傾斜磁場電源46y、Z軸傾斜磁場電源46zは、傾斜磁場Gx、Gy、Gzを形成するための各電流を、X軸傾斜磁場コイル33x、Y軸傾斜磁場コイル33y、Z軸傾斜磁場コイル33zにそれぞれ供給する。
【0027】
RF送信器48は、システム制御部61から入力される制御情報に基づいて、核磁気共鳴を起こすラーモア周波数のRF電流パルスを生成し、これをRFコイルユニット34に送信する。このRF電流パルスに応じたRFパルスが、RFコイルユニット34から被検体Pに送信される。
【0028】
RFコイルユニット34の全身用コイルや、被検体Pに装着されるRFコイル装置100は、被検体P内の原子核スピンがRFパルスによって励起されることで発生したMR信号を検出し、検出されたMR信号は、RF受信器50に入力される。
【0029】
RF受信器50は、受信したMR信号に所定の信号処理を施した後、A/D(analog to digital)変換を施すことで、デジタル化されたMR信号の複素データである生データを生成する。RF受信器50は、MR信号の生データを画像再構成部62に入力する。
【0030】
システム制御部61は、システムバスSB等の配線を介してMRI装置18全体のシステム制御を行う。また、システム制御部61は、撮像条件の設定画面情報を表示装置74に表示させ、入力装置72からの指示情報に基づいて撮像条件を設定する。また、システム制御部61は、傾斜磁場電源46、RF送信器48及びRF受信器50の駆動に必要な制御情報を記憶する。システム制御部61は、所定のシーケンスに従って傾斜磁場電源46、RF送信器48及びRF受信器50を駆動させることで、傾斜磁場Gx、Gy、Gz及びRFパルスを発生させる。
【0031】
入力装置72は、撮像条件や画像処理条件を設定する機能をユーザに提供する。
画像再構成部62は、位相エンコードステップ数及び周波数エンコードステップ数に応じて、RF受信器50から入力されるMR信号の生データをk空間データとして配置及び保存する。k空間とは、周波数空間の意味である。画像再構成部62は、k空間データにフーリエ変換を含む画像再構成処理を施すことで、被検体Pの画像データを生成する。
【0032】
なお、上記説明では、MRI装置18の構成要素をガントリ30、寝台装置20、制御装置40の3つに分類したが、これは一解釈例にすぎない。例えば、天板移動機構23は、制御装置40の一部として捉えてもよい。或いは、RF受信器50は、ガントリ30外ではなく、ガントリ30内に配置されてもよい。
【0033】
上記MRI装置18の撮像動作は、例えば以下のようになる。天板22上の被検体PにRFコイル装置100がセットされ、励磁された静磁場磁石31によって撮像空間に静磁場が形成される。また、必要に応じてシムコイル電源44からシムコイルユニット32に電流が供給されて、撮像空間に形成された静磁場が均一化される。
【0034】
この後、システム制御部61は、パルスシーケンスに従って傾斜磁場電源46、RF送信器48及びRF受信器50を駆動させることで、被検体Pの撮像部位が含まれる撮像領域に傾斜磁場を形成させると共に、RFコイルユニット34からRFパルスを発生させる。なお、上記撮像部位は、胸部などの被検体Pのどの部分を撮像領域として画像化するかの意味である。
【0035】
このため、被検体P内の核磁気共鳴により生じたMR信号がRFコイル装置100により検出されて、RF受信器50に入力される。RF受信器50は、MR信号に前述の処理を施すことでMR信号の生データを生成し、これら生データを画像再構成部62に入力する。画像再構成部62は、MR信号の生データをk空間データとして配置及び保存し、これに前述の画像再構成処理を施すことで画像データを再構成し、画像データを画像データベース63に保存する。
【0036】
画像処理部64は、画像データベース63から画像データを取り込み、これに所定の画像処理を施すことで2次元の表示用画像データを生成し、この表示用画像データを記憶装置76に保存する。システム制御部61は、表示用画像データが示す画像を表示装置74に表示させる。
【0037】
図2は、MRI装置18の各部のレイアウトの一例を示す上面模式図である。
図2に示すように、ここでは一例として、シールドルームとして構成された撮像室200に隣接するように、コンピュータ室300及び操作室400が壁で仕切られている。撮像室200の入口側には、RF遮断機能を有するドア202が設けられており、被検体(患者)はここから撮像室に入ることができる。撮像室200と操作室400との間には、RF遮断機能を有するドア204が設けられる。コンピュータ室300と操作室400との間には、ドア402が設けられる。
【0038】
撮像室200とコンピュータ室300の壁にはそれぞれ、クエンチボタンCBが設けられる。クエンチボタンCBは、緊急時用の強制磁場遮断ボタンである。従って、クエンチボタンCBが押された場合、システム制御部61は、超電導磁石である静磁場磁石31の超電導状態を停止し、静磁場の印加を停止するようにMRI装置18の各部を制御する。
【0039】
また、撮像室200とコンピュータ室300との間の壁の一部は、RF除去フィルタパネルユニット500Aにより両部屋が隔てられている。
【0040】
撮像室200にはガントリ30及び寝台装置20が配置される。但し、寝台装置20は、移動可能なドッカブルタイプでもよい。また、
図1で説明したMRI装置18の制御装置40の多くの構成要素はコンピュータ室300に配置されるが、入力装置72及び表示装置74は操作室400に配置される。
【0041】
なお、煩雑となるので
図1では図示していないが、制御装置40にはDC(Direct Current)電源系59も含まれる。DC電源系59は、ガントリ30の各部や寝台装置20の操作ボタンや、コンピュータ室300側の制御装置40の各部における制御回路基盤の消費電力に適した電圧(5V、10V等)を出力する。従って、DC電源系59は電圧変換器を含むが、電圧変換器はノイズ源となりうる。このため、DC電源系59は、撮像室200の外であるコンピュータ室300内に配置される。
【0042】
クエンチボタンCBや制御装置40の各部からの信号線は、RF除去フィルタパネルユニット500Aにおけるコンピュータ室側端子群524(後述の
図6参照)に接続される。ガントリ30及び寝台装置20からの信号線は、RF除去フィルタパネルユニット500Aにおける撮像室側端子群526(後述の
図6参照)に接続される。従って、クエンチボタンCBや制御装置40の各部からの信号線は、RF除去フィルタパネルユニット500Aによって高周波ノイズが除去されて、撮像室内のガントリ30及び寝台装置20に接続される。
【0043】
次に、
図3〜
図5を参照しながら、結露の原理について説明する。
図3は、湿り空気線図の一例である。
図3において、図の最も下に10、20、30℃の数字で表しているパラメータは、乾球温度(一般的な温度計の温度)である。
図3では、乾球温度が1℃上がる毎に、ほぼ垂直方向の直線で分けている。
【0044】
0〜30まで5間隔で引かれた右下がりの直線で示されるパラメータは、湿球温度(℃)である。
10%〜100%まで、10%間隔で引かれた右上がりの放射状の曲線(等湿度曲線)で示されるパラメータは、相対湿度である。
【0045】
0〜0.030まで、0.002間隔で引かれた水平方向の直線で示されるパラメータは、絶対湿度である。
延長線上に定規状の目盛を示しつつ、右下がりの直線で示されるパラメータは、エンタルピーである。
【0046】
0.78〜0.92まで、0.02間隔で引かれた右下がりの直線で示されるパラメータは、比体積である。
【0047】
湿り空気線図の見方は、例えば以下になる。例えば、
図3において、乾球温度が28℃で相対湿度が70%のプロットに着目する。絶対湿度を示す水平方向の直線に平行に、このプロットを
図3の左側に移動して、相対湿度100%の等湿度曲線に当たる乾球温度は21.8℃である。従って、乾球温度が28℃、相対湿度が70%で与えられる空気は、21.8℃まで下がると相対湿度100%となり、結露する。なお、本明細書では、単に「温度」と表記した場合には「乾球温度」を指すものとする。
【0048】
図4は、撮像室200とコンピュータ室300との温度差が小さい場合における、RF除去フィルタパネルユニット500Aの部分を含む両部屋の部分的な上面模式図である。
【0049】
図5は、撮像室200とコンピュータ室300との温度差が大きい場合における、
図4と同様の上面模式図である。
【0050】
図4に示すように、コンピュータ室300、撮像室200の温度が例えばそれぞれ21℃、22℃である場合を考える。この場合、両部屋の温度差は、1℃と小さいので、高温側の部屋の湿度がよほど高くない限り、結露は生じない。
【0051】
図5に示すように、コンピュータ室300、撮像室200の温度が例えばそれぞれ21℃、28℃であり、撮像室200の相対湿度が70%である場合を考える。この場合、両部屋の温度差が大きいため、高温側の撮像室200の湿度次第では、RF除去フィルタパネルユニット500Aにおける高温の部屋側に結露が生じる。前述のように、温度が28℃で相対湿度が70%の空気は、21.8℃まで下がると結露するので、撮像室200の相対湿度が70%以上の場合には結露が生じうる。
以上が結露の原理説明であり、以下、実施形態毎に、その特徴を説明する。
【0052】
<第1の実施形態>
図6は、RF除去フィルタパネルユニット500Aの概略構成の一例を示す上面模式図である。
図6において、紙面右側は撮像室200側、紙面左側はコンピュータ室300側である。撮像室200は、電波を遮断するための金属シールド210で覆われている。金属シールド210の撮像室側は内装材を含む壁材220により、金属シールド210のコンピュータ室300側は内装材を含む壁材320により、一定の強度を有する壁として仕切られている。
【0053】
RF除去フィルタパネルユニット500Aは、フィルタパネル504と、固定具506と、太線で示すコンピュータ室300側の保護カバー510と、太線で示す撮像室200側の保護カバー512と、複数の(RF除去用の)フィルタ回路520と、コンピュータ室側端子群524と、撮像室側端子群526とを有する。
【0054】
煩雑となるので、ここでは一例として、コンピュータ室側端子群524及び撮像室側端子群526はそれぞれ、10個ずつの端子1〜10、1’〜10’を有するものとする。
端子1〜10、1’〜10’は、電気信号線の接続用締結具である。
【0055】
フィルタ回路520は、各信号線から入力される信号のRFノイズ(高周ノイズ)を除去するものであり、コンピュータ室側端子群524の端子と同数である(この例では10個)。即ち、
図6において最も上のフィルタ回路520は、コンピュータ室300側の端子1に接続される信号線からの信号の高周波ノイズを除去しつつ、端子1を撮像室側の端子1’に接続する。同様に、コンピュータ室側端子群524の端子2〜10はそれぞれ、フィルタ回路520を介して撮像室側端子群526の端子2’〜10’に個別に接続される。
【0056】
図6及び前述の
図2に示すように、撮像室200とコンピュータ室300との間は、RF除去フィルタパネルユニット500Aの部分のみ、金属シールド210、壁材220、320が開口している。この開口部分において、RF除去フィルタパネルユニット500Aのフィルタパネル504が固定具506によって金属シールド210に対して固定される。フィルタパネル504は、電波を遮断するために金属板で形成されている。
【0057】
なお、各端子1〜10、1’〜10’が鉛直方向に沿って一列上に配列されると、一番上の端子に結露が生じた場合に水滴が順次下の端子に垂れ、最悪の場合、全ての端子が導通しかねない。従って、各端子1〜10、1’〜10’は、水平方向に離散して配置することが望ましく、ここでは一例として、水平方向に等間隔で配置される。
【0058】
図7は、第1の実施形態におけるRF除去フィルタパネルユニット500Aの配線方法の一例を示す上面模式図である。
図8は、
図7の配線例における各制御信号線の信号レベルを示す表である。
図9は、RF除去フィルタパネルユニットに対する従来の配線方法を示す上面模式図である。
【0059】
以下、
図7〜
図9を参照しながら、第1の実施形態と従来との配線方法の違いについて説明する。ここでは説明の簡単化のため、制御信号線の系統がA、B、C、D、Eの5つであり、各信号系A〜Eはそれぞれ2つの制御信号線を有するものとする。各信号系A〜Eの内の1つは、
図2に示す制御装置40の各ユニットのいずれか(例えば傾斜磁場電源44やRF送信器48等)からの制御信号線である。
【0060】
従って、制御装置40は、これら制御信号線を経由してガントリ30及び寝台装置20に制御信号を送信することで、
図1の最後に説明したように磁気共鳴イメージングを実行すると言える。
また、制御信号線及び電力線は、2本(1ペア)で1系統を構成することが多い。上記の例では、説明の簡単化のため、電力線を省略しているが、実際には、電力線もRF除去フィルタパネルユニット500Aに接続される(図示せず)。
【0061】
また、
図7において、信号系Aの制御信号線A1、A2は太線で示し、信号系Bの制御信号線B1、B2は実線で示し、信号系Cの制御信号線C1、C2は破線で示し、信号系Dの制御信号線D1、D2は一点鎖線で示し、信号系Eの制御信号線E1、E2は二点鎖線で示す。
【0062】
通常状態において高レベルに固定される制御信号線A1、B1、C1は、第1の実施形態では、
図7及び
図8に示すように、コンピュータ室300側及び撮像室200側において、端子番号が若い方(端子1〜3、1’〜3’)に集中して接続される。
【0063】
制御信号線B1は、低レベルになると強制クエンチが実行される制御信号線であり、例えばクエンチボタンCBに繋がっている。従って、結露によって制御信号線B1が他の信号線と導通して低レベルなると、クエンチボタンCBが押された状態になる。この状態は、配線の観点から最も避けるべき状態である。
【0064】
そこで第1の実施形態では、制御信号線B1の両側の隣接する各端子1、3(及び端子1’、3’)には、制御信号線B1と同じ高レベルに固定される制御信号線A1、C1がそれぞれ接続される。従って、仮に結露によって制御信号線B1の接続端子2が隣接する端子1又は端子3に導通しても、端子1、端子3は端子2と同じ高レベルであるので、クエンチは回避される。
【0065】
上記の「(ある端子に)隣接する端子」とは、例えば「(ある端子に)位置的に最も近い端子」の意味であり、両者間に他の端子が介在しないことを意味する。また、上記の「高レベル」は、例えば「低レベル」よりも絶対値が大きい正の電圧であり、例えば、5V、6V等の値を用いることができる。「低レベル」としては、例えば1V、1.5Vといった電圧を用いることができるが、接地電圧(0V)を低レベルとして用いてもよい。
【0066】
また、
図7及び
図8に示すように、通常状態において低レベルに固定される制御信号線A2、B2、C2は、コンピュータ室300側及び撮像室200側において、端子番号が大きい方(端子10、9、8及び端子10’、9’、8’)に集中して接続される。このように、通常高レベルに固定される制御信号線の接続端子1〜3と、通常低レベルに固定される制御信号線の接続端子8〜10とが離れるように(両者間に他の端子が介在するように)配線される。これにより、結露によって互いに隣接する2つの端子が導通した場合のエラーのリスクが軽減される。
【0067】
そして、通常高レベルとなる端子1〜3と、通常低レベルとなる端子8〜10の間の端子7には、通常状態において基準用の接地電位に固定される制御信号線E2が接続される。端子7に隣接する端子6には、アナログ信号の制御信号線E2が接続される。このように、接地電位の制御信号線E1と、アナログ信号の制御信号線E2の各接続端子が隣接するように配線することで、両者(端子6、7)が導通した場合に、システム制御部61は異常を検出することができる。
【0068】
また、
図7及び
図8に示すように、残りの端子4、5の内の一方には、デジタル通信信号として高レベル又は低レベルに切替変化する制御信号線D1が接続され、他方には、制御信号線D2が配線される。制御信号線D2は、デジタル通信信号として、制御信号線D1とは反対レベルとなるように切替変化する。即ち、制御信号線D1が高レベルの期間では、制御信号線D2は低レベルを維持する。このように、互いに反対レベルになるべき2つの制御信号線の各接続端子を隣接させれば、結露によって両者が導通して同レベルになった場合に、システム制御部61は異常を検出し易い。
【0069】
一方、従来技術では、
図9に示すように、同じ系統の制御信号線の接続端子が隣接するように配線されていた。即ち、信号系Aの制御信号線A1、A2は、互いに隣接する端子1、2にそれぞれ接続され、信号系Bの制御信号線B1、B2は、互いに隣接する端子3、4にそれぞれ接続されていた。なお、
図9では、制御信号線の符号の末尾が1のものは実線で、符号の末尾が2のものは破線で示す。
【0070】
この場合、低レベルになると強制クエンチとなる制御信号線B1の接続端子3に隣接する端子2、4にはそれぞれ、通常状態において低レベルに固定される制御信号線A2、B2が接続される。この場合、結露によって端子3が隣接する端子の少なくとも一方に短絡すれば、クエンチが発生する。このように従来技術の配線方法は、配線の分かり易さのみを考慮して同じ系統の制御信号線の接続先を隣接させており、互いに隣接する端子同士が短絡した場合のリスクの軽減を考慮していない。
【0071】
これに対し第1の実施形態では、同じ系統の制御信号線であるか否かに拘らず、隣接端子と短絡しても致命的なトラブルが生じないように配線される。従って、第1の実施形態によれば、人為的か非人為的かに拘らず、不慮の結露によってトラブルが生じるリスクは、コスト増大を伴わずに容易に軽減される。即ち、MRIにおいて、撮像室200とコンピュータ室300との間に設置されるRF除去フィルタパネルの結露によるトラブルを従来よりも回避することができる。
【0072】
<第2の実施形態>
図10は、第2の実施形態のRF除去フィルタパネルユニット500Bの概略構成、及び、第2の実施形態の配線方法の一例を示す上面模式図である。第2の実施形態では、複数のフィルタパネル部に分けて複数の制御信号線が配線される。
【0073】
図10に示すように、RF除去フィルタパネルユニット500Bは、第1RF除去フィルタ部540と、第2RF除去フィルタ部550とを有する。即ち、RF除去フィルタパネルユニット500Bは、第1の実施形態のRF除去フィルタパネルユニット500Aの端子1〜5、1’〜5’を第1RF除去フィルタ部540として、端子6〜10、6’〜10’を第2RF除去フィルタ部550として別々に構成したものである。
【0074】
第1RF除去フィルタ部540は、コンピュータ室側端子群544と、撮像室側端子群546とを有する。コンピュータ室側端子群544は端子1〜5を有し、撮像室側端子群546は端子1’〜5’を有する。端子1〜5は、RFノイズを除去する5個のフィルタ回路520(
図10では図示せず)によりそれぞれ、端子1’〜5’に個別に接続される。
【0075】
第2RF除去フィルタ部550は、コンピュータ室側端子群554と、撮像室側端子群556とを有する。コンピュータ室側端子群554は端子6〜10を有し、撮像室側端子群556は端子6’〜10’を有する。端子6〜10は、RFノイズを除去する5個のフィルタ回路520(
図10では図示せず)によりそれぞれ、端子6’〜10’に個別に接続される。
【0076】
このように、各端子1〜10、1’〜10’に対する各制御信号線A1〜E2の配線は
図10に示すように、端子1〜5、1’〜5’側と、端子6〜10、6’〜10’側とが構造的に分離されている点を除いて、第1の実施形態と同様である。従って、第1RF除去フィルタ部540側には、高レベルに固定される制御信号線A1、B1、C1が配置され、他方の第2RF除去フィルタ部550側には、低レベルに固定される制御信号線A2、B2、C2が配置される。
【0077】
ここで、同じフィルタ部(540又は550)内でも、高レベル又は低レベルに変化する制御信号線については、第1の実施形態のように配置を最適化することが望ましい。従って、第1RF除去フィルタ部540内において、隣接する端子4、5の一方には、高レベル又は低レベルに切替変化する制御信号線D1が接続され、他方には、制御信号線D1とは反対レベルとなる制御信号線D2が配線される。これにより、結露によって両者が導通して同一レベルになった場合に、システム制御部61は異常を検出できる。
【0078】
このように第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0079】
<第3の実施形態>
図11は、第3の実施形態のRF除去フィルタパネルユニット500Cの概略構成の一例を示す上面模式図である。第3の実施形態は、第1の実施形態の変形例として中継端子がさらに用いられる点を除いて第1の実施形態と同様である。
【0080】
図11に示すように、RF除去フィルタパネルユニット500Cは、フィルタパネル504と、固定具506と、太線で示すコンピュータ室300側の保護カバー510’と、太線で示す撮像室200側の保護カバー512’と、複数のRF除去フィルタ520と、コンピュータ室側端子群524’と、撮像室側端子群526’と、2つの中継部580とを有する。
【0081】
コンピュータ室側端子群524’は端子1〜10を有し、撮像室側端子群526’は端子1’〜10’を有する。各端子1〜10、1’〜10’にどの制御信号線が電気的に接続されるかは、第1の実施形態と同様である。
【0082】
端子10、10’は、それぞれ防水カバーWPで覆われており、第3の実施形態では防水型端子として構成される。
【0083】
中継部580はそれぞれ、中継端子581と、支持部材582と、断熱材583と、固定具584と、中継配線585とを有する。
【0084】
端子10、10’は例えばシール材処理などが施された防水型端子として構成されているので、防水カバーWPから出ている中継配線585により、端子10、10’が中継端子581に電気的に接続される。そして、中継端子581に対して制御信号線E2が接続される。中継端子581は、例えば横断面がL字型の支持部材582に対して固定される。各支持部材582は、例えばボルトのような固定具584の締結により、断熱材583を介して保護カバー510’、512’に対して固定される。中継端子581の必要性は、シール材処理等を行った端子に関与する信号の結線及びメンテナンス作業を容易に行うことを目的としている。
【0085】
このように第3の実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、第3の実施形態では、端子10、10’は、防水処理が施されているので周囲が結露した際でも、他の端子との間の漏れ電流や短絡が発生しない。上記構成では、制御信号線E2は、隣の部屋(撮像室200又はコンピュータ室300)からの熱が直接伝わるフィルタパネル504から離れて配置される。
【0086】
フィルタパネル504から離れて配置される構成でも、隣の部屋からフィルタパネル504、保護カバー(510’又は502’)、支持部材582を介して中継端子581に熱が伝わり、中継端子581が結露するおそれはある。しかし、保護カバー(510’又は502’)との間に断熱材583が挿入されている分、隣の部屋の熱が伝わりにくく、結露しにくい利点がある。
【0087】
なお、
図11では煩雑化を避けるため、端子10、10’のみが防水型端子として構成される例を示すが、上記効果を得るため、他の端子1〜9、1’〜9’も同様に防水型端子として構成し、中継部580を介して各制御信号線に接続してもよい。
【0088】
<実施形態の補足事項>
[1]第2の実施形態では、第1及び第2RF除去フィルタパネル部540、550に分けて複数の制御信号線を配線する例を述べた。本発明は、かかる実施形態に限定されるものではない。3つ以上のRF除去フィルタパネル部に分けて複数の制御信号線を配線することで、結露によるリスクをさらに軽減してもよい。また、一つのフィルタパネル上において、第1RF除去フィルタ群、第2RF除去フィルタ群、第3RF除去フィルタ群・・・といった複数のRF除去フィルタ群を互いに物理的に隔離させて配置する手段も可能である。
【0089】
[2]各実施形態では、互いに接続される端子1及び端子1’に対して一のRF除去用のフィルタ回路520が配置され、互いに接続される端子2及び端子2’に対して一のRF除去用のフィルタ回路520が配置される例を述べた。即ち、互いに接続される一対の端子毎に、一のRF除去用のフィルタ回路520が配置される例を述べた。本発明の実施形態は、かかる態様に限定されるものではない。
【0090】
例えば、撮像室200側に全体としてRF除去フィルタ回路を1つ設け、コンピュータ室300側に別のRF除去フィルタ回路を設ける構成でもよい。この場合、コンピュータ室300側の各端子1〜10から撮像室200側の各端子1’〜10’に送信される信号については、撮像室200側のRF除去フィルタ回路によりRFノイズを除去する。同様に、撮像室200側の各端子1’〜10’からコンピュータ室300側の各端子1〜10に送信される信号については、コンピュータ室300側のRF除去フィルタ回路によりRFノイズを除去する。
【0091】
[3]請求項の用語と実施形態との対応関係を説明する。なお、以下に示す対応関係は、参考のために示した一解釈であり、本発明を限定するものではない。
コンピュータ室300内において、制御装置40の各部から出ていると共にコンピュータ室側端子群524の各端子1〜10にそれぞれ接続される制御信号線A1、B1、C1、D1、D2、E1、E2、C2、B2、A2は、請求項記載のコンピュータ室側制御信号線の一例である。
【0092】
撮像室内において、ガントリ30から出ていると共に撮像室側端子群526の各端子1’〜10’にそれぞれ接続される制御信号線A1、B1、C1、D1、D2、E1、E2、C2、B2、A2は、請求項記載の撮像室側制御信号線の一例である。
各制御信号線A1、A2、B1等の信号レベルとしての高レベル、低レベルの内、一方が請求項記載の第1レベルの一例であり、他方が請求項記載の第2レベルの一例である。
フィルタ回路520は、請求項記載の内部回路の一例である。
【0093】
[4]本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。