(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
硬性先端部と、前記硬性先端部の方向を変えるための湾曲部と、軟性部と、が連接された挿入部と、前記挿入部の内部を挿通している光信号を伝送する光ファイバと、を具備し、
前記硬性先端部内の中心からずれた周辺位置に、撮像素子と、前記撮像素子が出力する電気信号を前記光信号に変換する発光部を有する光素子と、前記光ファイバの先端部が挿入された貫通孔を有し前記発光部の上に前記貫通孔が位置するように配置されている保持部材と、前記光素子が実装され前記保持部材が接合されている配線板と、が配設されている内視鏡であって、
前記光ファイバは、前記周辺位置に配設された前記保持部材から中心に向かって前記硬性先端部内を傾斜して配設されており、前記湾曲部では中心を挿通していることを特徴とする内視鏡。
【背景技術】
【0002】
内視鏡は、細長い可撓性の挿入部の硬性先端部にCCD等の撮像素子を有する。近年、高画素数の撮像素子の内視鏡への使用が検討されている。高画素数の撮像素子を使用した場合には、撮像素子から信号処理装置(プロセッサ)へ伝送する信号量が増加するため、電気信号によるメタル配線を介した電気信号伝送に替えて光信号による細い光ファイバを介した光信号伝送が好ましい。光信号伝送には、電気信号を光信号に変換するE/Oモジュール(電気−光変換器)と、光信号を電気信号に変換するO/Eモジュール(光−電気変換器)とが用いられる。
【0003】
例えば、特開2013−025092号公報には、光信号の入力または出力を行う光素子と、光素子が実装される基板と、光素子から入出力される光信号を伝送する光ファイバ挿入用の貫通孔を有し、光素子の厚さ方向に並べて配置される保持部と、を具備する光伝送モジュールが開示されている。
【0004】
ここで、光ファイバは、長手方向に対する強度が強くはない。このため、内視鏡の可撓性の挿入部が変形することにより、光ファイバの長手方向に引張応力/圧縮応力が繰り返して印加されると、破損したり、折れたりする可能性がある。また、挿入部にある他部材と光ファイバとが、絡まり合い、光ファイバが破損したり、ねじり応力を受けたりする可能性もある。光ファイバが破損等すると光信号の伝送が困難になる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1実施形態>
図1に示すように、本実施形態の内視鏡2は、挿入部80と、挿入部80の基端部側に配設された操作部84と、操作部84から延設されたユニバーサルコード92と、ユニバーサルコード92の基端部側に配設されたコネクタ93と、を具備する軟性の電子内視鏡である。
【0011】
挿入部80は、硬性先端部81と、硬性先端部81の方向を変えるための湾曲部82と、可撓性の細長い軟性部83と、が順に連接されている。
【0012】
硬性先端部81には、図示しない撮像光学ユニットと、撮像素子90(
図3)と、撮像素子90(
図3)からの撮像信号(電気信号)を光信号に変換するE/Oモジュールである光伝送モジュール1が配設されている。撮像素子90は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ、又は、CCD(Charge Coupled Device)等である。
【0013】
図2に示すように、光伝送モジュール1は、光素子10と、配線板20と、保持部材(フェルールとも言う)40と、光ファイバ50と、を具備する。光伝送モジュール1では、光素子10と配線板20と保持部材40とが、光素子10の厚さ方向(Z方向)に並べて配置されている。すなわち、配線板20には、光素子10が実装され保持部材40が接合されている。
【0014】
光素子10は、光信号の光を出力する発光部11を有する面発光レーザーチップである。例えば、平面視寸法が250μm×300μmと超小型の光素子10は、直径が20μmの発光部11と、発光部11に駆動信号を供給する電極12とを主面に有する。
【0015】
一方、例えば、径が125μmの光ファイバ50は、光を伝送する径が50μmのコアと、コアの外周を覆うクラッドとからなる。
【0016】
光素子10の上に接着されている略直方体の保持部材40の貫通孔40Hに、光ファイバ50の先端部が挿入され、接着剤55で固定されている。光ファイバ50を貫通孔40Hに挿入することで、光素子10の発光部11と光ファイバ50との位置決めが行われる。
【0017】
第1の主面20SAと第2の主面20SBとを有する平板状の配線板20には、光路となる、孔20Hがある。そして、第1の主面20SAには光素子10が、その発光部11が配線板20の孔20Hと対向する位置に配置された状態で、フリップチップ実装されている。すなわち、配線板20は光素子10の複数の電極12と、それぞれが接合された電極パッド21を有する。配線板20の基体には、FPC基板、セラミック基板、ガラスエポキシ基板、ガラス基板、シリコン基板等が使用される。
【0018】
例えば、光素子10の電極12であるAuバンプが、配線板20の電極パッド21と超音波接合されている。なお、接合部にはアンダーフィル材やサイドフィル材等の接着剤が注入されてもよい。
【0019】
配線板20に、半田ペースト等を印刷し、光素子10を所定位置に配置した後、リフロー等で半田を溶融して実装してもよい。なお、配線板20は撮像素子90(
図3)とメタル配線90M(
図3)で接続されている電極パッド(不図示)及び撮像素子90から伝送されてくる電気信号を電極パッド21に伝達する配線(不図示)を有する。また、配線板20は、撮像素子90から伝送されてくる電気信号を光素子10の駆動信号に変換するための処理回路が含まれていてもよい。
【0020】
すでに説明したように、保持部材40には、挿入される光ファイバ50の外径と、内径が略同じ円柱状の貫通孔40Hが形成されている。ここで「略同じ」とは、光ファイバ50の外周面と貫通孔40Hの壁面とが当接状態となるような、双方の径が実質的に「同じ」サイズであることを意味する。例えば、光ファイバ50の外径に対して、貫通孔40Hの内径は1μm〜5μmだけ大きく作製される。
【0021】
貫通孔40Hは、円柱状のほか、その壁面で光ファイバ50を保持できれば、角柱状であってもよい。保持部材40の材質はセラミック、Si、ガラス又はSUS等の金属部材等である。なお、保持部材40は、略円柱状又は略円錐状等であってもよい。
【0022】
保持部材40は、貫通孔40Hが配線板20の孔20Hと対向する位置に配置された状態で、配線板20の第2の主面20SBに接着層30を介して接合されている。なお、例えば、熱硬化性樹脂からなる接着層30は、貫通孔40Hと孔20Hとの対向領域には配設されていない。
【0023】
そして、操作部84には湾曲部82を操作するアングルノブ85が配設されているとともに、光信号を電気信号に変換する光伝送モジュールであるO/Eモジュール91が配設されている。コネクタ93は、プロセッサ(不図示)と接続される電気コネクタ部94と、光源と接続されるライトガイド接続部95と、を有する。ライトガイド接続部95は硬性先端部81まで照明光を導光する光ファイババンドルと接続されている。なお、コネクタ93は電気コネクタ部94とライトガイド接続部95が一体となっても良い。
【0024】
内視鏡2では、撮像信号は硬性先端部81の光伝送モジュール1で光信号に変換されて、挿入部80を挿通する細い光ファイバ50を介して操作部84まで伝送される。そして、操作部84に配設されているO/Eモジュール91により光信号は再び電気信号に変換され、ユニバーサルコード92を挿通するメタル配線50Mを介して電気コネクタ部94に伝送される。すなわち、細径の挿入部80内においては光ファイバ50を介して信号が伝送され、体内に挿入されず外径の制限の小さいユニバーサルコード92内においては光ファイバ50よりも太いメタル配線50Mを介して伝送される。
【0025】
なお、O/Eモジュール91がコネクタ部94に配置されている場合には、光ファイバ50を電気コネクタ部94までユニバーサルコード92を挿通していてもよい。また、O/Eモジュール91がプロセッサに配設されている場合には、光ファイバ50をコネクタ93まで挿通していてもよい。
【0026】
内視鏡2の挿入部80を挿通している光ファイバ50には、挿入部80が変形すると応力が印加されるおそれがある。光ファイバ50が大きな応力を受けるおそれがあるのは、特に、湾曲部82の湾曲操作による変形である。
【0027】
例えば、
図3に示すように、従来の内視鏡102において、湾曲部82が直線状態の(A)のときの光ファイバ50が挿通している経路長LをL0とする。これに対して、湾曲部82が(B)方向に湾曲すると、経路長Lは短くなるため、光ファイバ50には圧縮応力が印加されるおそれがある。一方、湾曲部82が(C)方向に湾曲すると、経路長Lは長くなるため、光ファイバ50には引張応力が印加されるおそれがある。
【0028】
ここで、
図4に示すように、従来の内視鏡102において、湾曲部82が(B)方向に湾曲し、湾曲角が角度φの場合について説明する。前提として、スコープが湾曲しても、スコープ中央(x=0)の長さはL0のまま変わらないものとする。光ファイバ50の中心の挿通経路が湾曲部82の中心線(中心軸)Oから、偏移量x離れていると、経路長Lは、L0からL1に減少する。
【0029】
L1=L0ーΔL (式1)
但し、ΔL=2πx(φ/360)
【0030】
すなわち、ΔLは、偏移量x、及び湾曲角φに依存する。例えば、偏移量x=5mm、湾曲角φ=180度ではΔL≒15mmとなる。なお、湾曲部82の最大湾曲角φmaxは、仕様により異なるが、360度以上の場合もある。
【0031】
そして、
図5、
図6に示すように、実施形態の内視鏡2では、湾曲部82の外周部80Sの内部には、複数の孔路70H1〜70H5が形成されたマルチルーメンチューブ70が配設されている。そして、湾曲部82の中心を挿通している孔路70H1に、光ファイバ50が挿通している。
【0032】
なお、孔路70H2〜70H4には、図示しないが、電気配線、チャンネル等が挿通しており、4本の孔路70H5には、それぞれ湾曲部82の湾曲動作のための操作ワイヤ82Mが挿通している。
【0033】
マルチルーメンチューブ70は、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリスチレンー、フッ素系樹脂、シリコーンゴム、又はラテックスゴム等の可撓性樹脂からなる。
【0034】
図7に示すように、実施形態の内視鏡2では、光ファイバ50が、湾曲部82の中心を挿通している。ここで、中心とは、湾曲部82の長手方向に直交する断面の円の中心を意味する。すなわち、偏移量x≒0となるように、光ファイバ50が配置されている。
【0035】
内視鏡2は、
図5において、湾曲部82が(A)方向に湾曲しても、(B)方向に湾曲しても、ΔL=0であり、光ファイバ50に応力が印加されない。
【0036】
なお、偏移量xは、小さいほど光ファイバ50に印加される応力が小さいため、x=0が最も好ましいが、x=0でなくともよい。すなわち、偏移量xは内視鏡の仕様等に応じて選択可能であるが、例えば、xは3mm以下であれば良く、1mm以下であると好ましい。
【0037】
内視鏡2は、湾曲部82が変形しても光ファイバ50に大きな応力が印加されることがないため、安定して光信号を伝送できる。
【0038】
なお、軟性部83を挿通している部分の光ファイバ50も、軟性部83の中心を挿通していることが好ましい。軟性部83の変形により光ファイバ50に応力が印加されることがないためである。
【0039】
<第1実施形態の変形例>
変形例の内視鏡2Aは、
図8に示す光伝送モジュール1Aを具備している。
【0040】
光伝送モジュール1Aでは、配線板20Aの片面に光素子10Aと保持部材40Aとが配設されている。光素子10Aの電極12Aと、配線板20Aの電極パッド21Aとは、ワイヤボンディング配線49で接続されている。
【0041】
光素子10Aが収容された凹部のある保持部材40Aは、貫通孔40Hが光素子10Aの発光部11と対向するように配線板20Aに接着層(不図示)を介して接合されている。
【0042】
光伝送モジュール1Aは、配線板に光路となる孔を設ける必要がなく、また、光素子10Aと保持部材40Aとの2者の位置合わせですむため製造が容易である。
【0043】
すなわち、内視鏡2
Aの配線板は、光素子10Aが実装され保持部材40Aが接合されていればよい。
【0044】
<第2実施形態>
第2実施形態の内視鏡2Bは、内視鏡2等と類似しているので、同じ機能の構成要素には同じ符号を付し説明は省略する。
【0045】
図9及び
図10に示すように、内視鏡2Bの湾曲部82には、孔路72Hのあるチューブ72が、複数の支持部材73により湾曲部82の中心に配設されている。4本のアームが湾曲部82の外周部80Sの内面に固定されている支持部材73は、所定間隔で配置されている。支持部材73の配置間隔は、例えば、湾曲部82の長さの1/3〜1/10である。
【0046】
そして、光ファイバ50はチューブ72の孔路72Hを挿通している。
【0047】
内視鏡2Bは、内視鏡2と同様に光ファイバ50が湾曲部82の中心を挿通しているため、湾曲部82が変形しても光ファイバ50に大きな応力が印加されることがないため、安定して光信号を伝送できる。
【0048】
また、内視鏡2Bの湾曲部82はルーメンチューブではないため、湾曲部82の内部に他部材を配置する自由度が、内視鏡2よりも高いため、設計が容易である。
【0049】
なお、軟性部83にも支持部材73により保持されているチューブ72が配設されていてもよい。軟性部83における支持部材73の配置間隔は、湾曲部82よりも長くてもよい。
【0050】
<第3実施形態>
第3実施形態の内視鏡2
Cは、内視鏡2等と類似しているので、同じ機能の構成要素には同じ符号を付し説明は省略する。
【0051】
図11及び
図12に示すように、内視鏡2Cの湾曲部82には、リング部74Rを有する複数の支持部材74が、湾曲部82の中心にリング部74Rが位置するように外周部80Sに固定されている。3本のアームが湾曲部82の内面に固定されている支持部材74は、所定間隔で配置されている。支持部材74の配置間隔は、例えば、湾曲部82の長さの1/3〜1/10である。
【0052】
そして、光ファイバ50は複数のリング部74Rを挿通している。
【0053】
内視鏡2Cは、内視鏡2、2Bと同様に光ファイバ50が湾曲部82の中心を挿通しているため、湾曲部82が変形しても光ファイバ50に大きな応力が印加されることがないため、安定して光信号を伝送できる。
【0054】
また、内視鏡2Cは、光ファイバ50を挿通するためのチューブ等が不要である。
【0055】
なお、軟性部83にも複数の支持部材74が配設されていてもよい。軟性部83における支持部材74の配置間隔は、湾曲部82よりも長くてもよい。
【0056】
本発明は、上述した実施形態及び変形例等に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更、組み合わせ及び応用が可能である。