特許第6203023号(P6203023)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6203023多周波数及び重心容量検出を伴うマルチタッチの触覚デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6203023
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】多周波数及び重心容量検出を伴うマルチタッチの触覚デバイス
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20170914BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   G06F3/041 512
   G06F3/041 590
   G06F3/044 120
【請求項の数】5
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-252121(P2013-252121)
(22)【出願日】2013年12月5日
(65)【公開番号】特開2014-116005(P2014-116005A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2016年10月6日
(31)【優先権主張番号】1203298
(32)【優先日】2012年12月5日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505157485
【氏名又は名称】テールズ
(74)【代理人】
【識別番号】100071054
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 高久
(72)【発明者】
【氏名】コニ、フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ルーゼ、ジーグフリード
【審査官】 若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−267478(JP,A)
【文献】 特開2011−210016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 3/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の導電性の行(11)及び導電性の列(12)を備えたマトリックス・タッチパッド(10)を含む、投影型の容量検出を有するタッチスクリーン装置(1)であって、前記パッドが、各導電性の行及び各列に対して放出電圧(VIN)を発生させる電子制御手段(20)と、各導電性の行及び各列から生じる受電電圧(VOUT)の受電及び解析の電子的手段(50)とにつながれており、
前記電子制御手段が、各導電性の行及び各列に対して、動作周波数と名付けられる第一の周波数(FMIN)で放出される第一の周期的放出電圧と、前記第一の周波数と異なる、識別周波数と名付けられる第二の周波数(FMAX)で放出される第二の周期的放出電圧とを発生させ、
押圧が何ら無い場合、前記動作周波数の値が、この動作周波数において前記受電電圧の非常に小さい変動しか生じないのに十分なほど低く、前記識別周波数の値が、この識別周波数において行と列に依存する前記受電電圧の相当な変動を生じるのに十分なほど高く、
電子的受電及び解析手段(50)が、各行と各列に対して:
―前記動作周波数における第一の受電電圧値及び前記識別周波数における第二の受電電圧値と、
―所定の値の関数である場合は、前記2つの受電電圧値が、タッチパッド上での2つの同時に生じる押圧、及び関連する2つの行と2つの列上におけるこれら2つの押圧の位置を表わすことと
を決定するように配置され、
2つの同時に生じる押圧である場合、第一の押圧は第一の行と第一の列の第一交点に位置し、第二の押圧は第二の行と第二の列の第二交点に位置し、前記2つの押圧の位置特定が:
前記第一の周波数に対する前記受電電圧の「谷」と、前記2つの押圧の電圧変動に対応する前記第二の周波数に対する前記受電電圧の「谷」とを正確に示すことを可能にする、第一の解析手段と、
前記電圧の「谷」の重心を計算することを可能にする、第二の解析手段と、
前記重心の知識に基づいて、前記第一の押圧に対応する前記第一の行及び前記第一の列を決定し、そして前記第二の押圧に対応する前記第二の行及び前記第二の列を決定することを可能にする、第三の解析手段とを用いて実施されることを特徴とするタッチスクリーン装置。
【請求項2】
2つの隣接する行又は2つの隣接する列に対応する電圧における2つの変動が、単一の谷を形成するような方法で、前記第一の行が前記第二の行の近傍にあるとき、又は前記第一の列が前記第二の列の近傍にあるとき、前記2つの押圧の位置特定が:
前記第一の周波数に対する前記受電電圧の「谷」と、前記2つの隣接する行又は前記2つの隣接する列の上における、前記2つの押圧の電圧変動に対応する前記第二の周波数に対する前記受電電圧の「谷」とを正確に示すことを可能にする、第一の解析手段と、
前記2つの電圧の「谷」の重心を計算することを可能にする、第二の解析手段と、
前記2つの重心の知識に基づいて、前記第一の押圧又は前記第二の押圧に対応する、第一の隣接する行及び第二の隣接する行、又は第一の隣接する列及び第二の隣接する列を決定することを可能にする、第三の解析手段とを用いて実施されることを特徴とする、請求項1に記載のタッチスクリーン装置。
【請求項3】
受電及び前記受電電圧の解析の前記電子的手段が、2つの同期復調器(53)を備え、第一の復調器が前記動作周波数で働き、第二の復調器が前記識別周波数で働くことを特徴とする、請求項1または2に記載のタッチスクリーン装置。
【請求項4】
前記電子的受電及び解析手段が:
―押圧が何ら無い場合の、各行及び各列の前記動作周波数における前記受電電圧の保存された値の表と、
―測定された不一致が、関連する行又は列の上の押圧を表わすか否かを決定するために、各行及び各列に対して、前記受電電圧の測定値と前記受電電圧の保存された値との間の不一致を確立する比較手段とを備えることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のタッチスクリーン装置。
【請求項5】
前記動作周波数が100kHz〜500kHzの間にあり、そして前記識別周波数が500kHz〜5MHzの間にあることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のタッチスクリーン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、容量検出を伴う触覚面又は「タッチスクリーン」面、そして特に2つの同時押圧の検出を可能にする、いわゆる「マルチタッチの」触覚面に関する。この機能は、例えば画像の「拡大表示」又は回転を行なうために必須である。本発明は様々な用途に適用可能であるが、それはとりわけ航空分野及び航空機の計器パネルの制約に良く適している。
【背景技術】
【0002】
いわゆる「投影型の」容量検出は、使用者の指又はあらゆるその他の導電性ポインティング物体の近傍によって導入される、静電容量の局部的変動を検出するように配置された検出マトリックスを生成することにある。いわゆる投影型の容量性技術は2つの主要な改良型、すなわち
―マトリックスのタッチキー配列の行と次に列を読み取ることにある「自己容量」検出と、
―マトリックスのタッチキー配列の各交点を読み取ることにある、いわゆる「相互容量」検出とにおいて機能する。
【0003】
「相互容量」技術は、パッドの全体を読み取ることを必要とする。従って、もしマトリックスがN行とM列を含む場合、N×M個の取得を行なうことが必要であり、高解像度及び短い応答時間を有する、大きなサイズのパッドを生み出すことを問題のあるものにする。さらに、「相互容量」の下で測定される静電容量は、「自己容量」の下で得られるものよりも低く、従って使用者が手袋を用いることを問題のあるものにする。
【0004】
「自己容量」検出の利点は、上記のパッドに関して、システムがマトリックスの読み取りを行なうためにN+M個のみの取得しか要さないことである。図1はこの原理を例証している。この図1において、一番目の指は列Cと行Lの第一交点の位置で押し、二番目の指は列Cと行Lの第二交点の位置で押す。行と列の出力電圧VOUTは、容易に識別できるレベルの低下を示す。各々のレベル低下の周辺での電圧測定は、呼び出された行と列の正確な識別を可能にする。
【0005】
しかしながら、この後者の技術は欠点を示す。検出された行と列を、使用者の指によって実際に触られた正しい交点に属するものとみなすことは、必ずしも簡単ではない。実際に触られていないが有り得る交点は、一般に「ゴースト」("ghosts")と呼ばれる。この困難に対抗するため、或る技術はマトリックスのスキャンを2つの異なる捕捉周波数において行うことにある。この技術は、2012年6月の"SID 2012 DIGEST"において出版された刊行物"Eliminating Ghost Touches on a Self−Capacitive Touch−Screen"(「自己容量性タッチスクリーン上のゴーストタッチの除去」)の中で記述されている。
【0006】
この技術を適切に理解するために、容量性マトリックス装置を表わすための電子モデルを用いる必要がある。導電性の列と行から成る電極のマトリックスを含む容量性の触覚デバイスを電気的に説明するための、単純化されたモデルが存在する。それは、操作者の指の表面をパッド上に投影することにより、その人の指がマトリックスと容量的に結合されている、押圧の表示から成る。この表面は第一の行に関して、及び第二の列に関して、少なくとも2つの電極をカバーする。そのとき操作者は、アースと少なくとも関係する行又は列との間で静電容量Cを加えると考えられる。しかしこのモデルは局部的であることに留まり、測定の環境を考慮していない。
【0007】
図3は容量性マトリックス装置のより精巧なモデルを表わす。各行は実際にアナログスイッチを介して測定装置及び/又は電源装置に接続されている。これらのスイッチはアースに対して結合容量Cを提供し、測定信号の減衰を引き起こす電気抵抗Rを示す。
【0008】
さらに、各行は給電点と指の接触点との間で一定の抵抗を示す、ITO(Indium Tin Oxide=インジウムスズ酸化物)タイプの透明な材料から成り、この抵抗は指が接続点から遠く離れる程より大きくなる。Rをタッチキー及び次へのその接続の抵抗とした場合、列n上の押圧とマトリックスの縁との間の抵抗はn.Rである。
【0009】
さらに、行と列の配列は相互に連結されている。実際、トラックの各交差部分には静電容量Cが存在し、各行はn列によって切断され、さらに行又は列はそれらの近隣と連結されている。この連結は図3において静電容量CIcによって表わされている。最後に、タッチパッド、そのコネクター配置、及び装置を構成する機械的要素、並びに行と列を電子計測装置につないでいる様々なトラック間の相互結合の間には、結合容量もまた存在する。
【0010】
結果的に、容量性タッチパッドの獲得は、操作者によって投影される単純な静電容量の獲得へは縮小され得ない。それは、相互接続されている抵抗の接続及びコンデンサの接続から成る、多極の複合したハードウェア構成部品に対する、この投影の結果である。
【0011】
「二重周波数の自己容量性」装置は、この複雑さを利用する。図3に見られるように、マトリックスの近傍に何ら物体が無い場合、各行Lは注入静電容量Cを横切ってAC電圧の電源につながれ、そしてアースに対する浮遊結合容量Cと入力抵抗Rから成る入力インピーダンスを有する読み取りバッファにつながれている。この行Lは線形抵抗を有し、各列の交点へと容量結合されている。
【0012】
指が行Liの正確な点の上に置かれるとき、それは考えられる行の部分上に静電容量を投影する。先行技術による触覚デバイスは、この投影された静電容量のみを測定する。この単純な測定は、行の上の押圧の位置確認を可能にせず、この情報は投影された静電容量の値を通しては伝えられない。
【0013】
デバイスの核心は、加えられた静電容量を単純に考えるのではなく、行全体により構成される複合モデルに対するその影響を考えることである。特に、長さlの行Lの抵抗Rilが考慮される場合、行の一端と接触点との間には抵抗Riaが存在する。抵抗RiaはRilよりも小さい。その抵抗値は出力信号VOUTを変更する。この信号VOUTは下記に等しい:
OUT=Z.VIN
ここで、VIN:周波数Fの周期的入力信号、及び
Z:Z=A+Bjに等しい行のインピーダンスである。
項A及び項Bは、静電容量C,CとC並びに抵抗RとRiaの関数である。
【0014】
本モデルの接続形態は、第一番目にRCネットワークに、又は一次ローパスフィルターを構成する静電容量Cと関連する抵抗Riaに類似している。図4は加えられる周波数の関数として、3つの異なる押圧の位置、すなわち行の縁に位置する押圧に対する第一の曲線C1、行の中央における押圧に対する第二の曲線C2、行の最後における押圧に対する第三の曲線C3に関する行の出力信号の変動を表わす。図4の尺度は両軸とも対数である。次に図4に見られるように、押圧の位置にかかわらずRiaの変動がVOUTの最小変動を生じるような周波数FMINが存在する。逆に、押圧の位置の関数として、Riaの変動がVOUTの大幅な減衰を生じるような周波数FMAXが存在する。従って、この周波数FMAXにおいて、この減衰を測定することにより抵抗Riaの値を確認することが容易であり、その結果として行の接触点の位置を決定することが容易である。
【0015】
この測定は必ずしも非常に正確である必要はない。しかしながら2つの同時に生じる押圧の実際の位置を決定するには十分である。2つの異なる周波数における二重測定を通じて、概略ではあっても押圧の位置を知ることにより、実際の押圧の一対と、それに対応する架空の押圧の一対又は「ゴースト」との間の不確定性は取り除かれる。
【0016】
しかしながら、使用者の指の位置における不確かさ又は位置誤差を生み出し得る、一定の構成が依然として存在する。これらの構成の1つは、2つの指が2つの隣接する行又は列に触ったときに生じる。この構成は図2に例証されている。この図において、第一の指は列Cと行Lの第一交点の位置で押し、第二の指は列Cと行LI+1の第二交点の位置で押している。列の出力電圧VOUTは、列CとCが押されたことの決定を可能にする、2つの容易に識別可能なスパイクを示す。他方で、行の出力電圧VOUTは、電圧の重心計算を用いても、関係する行を明確に識別可能にしないノッチ依存性の形状を示す。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明による触覚デバイスは、これらの欠点を示さない。その物理的原理は2つの異なる周波数における複数の放出電圧の使用に依存する。行及び列における出力信号は、周波数の関数として、行及び列の上での押圧の存在だけでなく、この行及びこの列の上におけるその位置もまた表わす、異なるインピーダンスを有することが実証されている。
【0018】
このデバイスは完全に「デュアルタッチ」であり、それは読み取りノイズ及び外部の電磁妨害に対して無反応であり、最後に航空学において規定されているような電磁放射標準に適合している。さらに、使用者は同じ性能レベルで、手袋をはめた手でこの触覚面を使用できる。
【0019】
より正確には、本発明の主題は、複数の導電性の行及び導電性の列を備えたマトリックス・タッチパッドを含む、投影型の容量検出を有するタッチスクリーン装置であり、前記パッドは、各導電性の行及び各列に対して放出電圧を発生させる電子制御手段と、各導電性の行及び各列から生じる受電電圧の受電及び解析の電子的手段とにつながれており、
電子制御手段は、各導電性の行及び各列に対して、動作周波数と名付けられる第一の周波数で放出される第一の周期的放出電圧と、第一の周波数と異なる、識別周波数と名付けられる第二の周波数で放出される第二の周期的放出電圧とを発生させ、
押圧が何ら無い場合、動作周波数の値は、この動作周波数において受電電圧の非常に小さい変動しか生じないのに十分なほど低く、識別周波数の値は、この識別周波数において行と列に依存する受電電圧の相当な変動を生じるのに十分なほど高く、
電子的受電及び解析手段(50)は、各行と各列に対して:
―動作周波数における第一の受電電圧値及び識別周波数における第二の受電電圧値と、
―所定の値の関数である場合は、2つの受電電圧値が、タッチパッド上での2つの同時に生じる押圧、及び関連する2つの行と2つの列上におけるこれら2つの押圧の位置を表わすことと
を決定するように配置され、
2つの同時に生じる押圧である場合、第一の押圧は第一の行と第一の列の第一交点に位置し、第二の押圧は第二の行と第二の列の第二交点に位置し、2つの押圧の位置特定が:
第一の周波数に対する受電電圧の「谷」と、2つの押圧の電圧変動に対応する第二の周波数に対する受電電圧の「谷」とを正確に示すことを可能にする、第一の解析手段と、
電圧の「谷」の重心を計算することを可能にする、第二の解析手段と、
その重心の知識に基づいて、第一の押圧に対応する第一の行及び第一の列を決定し、そして第二の押圧に対応する第二の行及び第二の列を決定することを可能にする、第三の解析手段とを用いて実施されることを特徴とする。
【0020】
有利なことに、2つの隣接する行又は2つの隣接する列に対応する電圧における2つの変動が、単一の谷を形成するような方法で、第一の行が第二の行の近傍にあるとき、又は第一の列が第二の列の近傍にあるとき、2つの押圧の位置特定は:
第一の周波数に対する受電電圧の「谷」と、2つの隣接する行又は2つの隣接する列の上における、2つの押圧の電圧変動に対応する第二の周波数に対する受電電圧の「谷」とを正確に示すことを可能にする、第一の解析手段と、
2つの電圧の「谷」の重心を計算することを可能にする、第二の解析手段と、
前記2つの重心の知識に基づいて、第一の押圧又は第二の押圧に対応する、第一の隣接する行及び第二の隣接する行、又は第一の隣接する列及び第二の隣接する列を決定することを可能にする、第三の解析手段とを用いて実施される。
【0021】
有利なことに、受電及び受電電圧の解析の電子的手段は、2つの同期復調器を備え、第一の復調器は動作周波数で働き、第二の復調器は識別周波数で働く。
【0022】
有利なことに、電子的受電及び解析手段は:
―押圧が何ら無い場合の、各行及び各列の動作周波数における受電電圧の保存された値の表と、
―測定された不一致が、関連する行又は列の上の押圧を表わすか否かを決定するために、各行及び各列に対して、受電電圧の測定値と受電電圧の保存された値との間の不一致を確立する比較手段とを備える。
【0023】
動作周波数は100kHz〜500kHzの間にあり、そして識別周波数は500kHz〜5MHzの間にあることが有利である。
【0024】
本発明は以下に続く制限されない記述を読むこと、及び添付図のおかげでより良く理解され、その他の利点が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】既にコメントしている、2つの同時に生じる押圧の容量検出の原理を表わす。
図2】既にコメントしている、隣接する2つの行又は2つの列の上における2つの押圧の容量検出の問題を表わす。
図3】既にコメントしている、タッチパッドの行と列間の交差部分まわりの静電容量及び電気抵抗の電気回路図を表わす。
図4】既にコメントしている、2つの異なる周波数に対して触覚デバイスにおける押圧位置の関数としての、行又は列の出力信号の変動を表わす。
図5】本発明による投影型の容量性触覚デバイスの概略図を表わす。
図6】隣接する2つの行と2つの列上の2つの押圧に対する検出及び識別の原理を表わす。
【発明を実施するための形態】
【0026】
制限されない例として、図5は本発明による投影型の容量検出を伴うタッチパッドを有する装置1を表わす。それは本質的に:
―互いに平行な導電性の行11の第一組を含む第一の基板、及び互いに平行な導電性の列12の第二組を含む第二の基板を備えたタッチパッド10と、
―触覚デバイスの動作に必要な、各種の放出と受電信号の制御及び解析手段20と、
―デジタル−アナログ変換器"DAC"31、増幅器32、及び注入コンデンサ33経由で、交流電圧VINを介してタッチパッドを提供する、可変周波数を有する高周波の正弦波発生器30であって、一般的にその周波数が数百kHz〜数MHzの間にある正弦波発生器と、
―マルチプレクサ40であって、それが入力電圧VINを相次いでタッチパッド10の各列12及び次に各行11に印加し、そして印加電圧VINに対応する各出力電圧VOUTを、電子的処理チェーン50へと向かわせるマルチプレクサと、
―バッファメモリ51、デジタル−アナログ変換器もしくはADC52、周波数発生器30につながれた同期復調器53、及び電子的フィルタリング手段54を含む電子的処理チェーン50であって、フィルタリングされた信号が解析手段20へと送られる電子的処理チェーンと、
―タッチパッドと連結され、制御、変更、及び検証することが求められる情報を表示する、一般的に視覚装置である外部に対して、解析手段20によって処理された信号の再送信を確実にする、送受信手段60又は"Universal Asynchronous Receiver Transmitter"「(ユニバーサル非同期送受信機[トランシーバー])」を意味する"UART"とを備える。
【0027】
本装置は次のように動作する。公称モードにおいて、パッドの行と列は第一の動作周波数FMINにおいて、及び第二のいわゆる識別周波数FMAXにおいて、入力電圧VINにより恒久的及び連続的にスキャンされる。この電圧は、手段30、31、32及び33から成る電子組立品によって生成される。
【0028】
図5において指により象徴的に表わされる押圧の間、及びこの押圧の位置に従って、一定の静電容量が接触点とアースとの間に生成され、この静電容量は主として行と列の抵抗によってマルチプレクサ40につながれている。
【0029】
この抵抗素子及び容量素子は、本システムの総インピーダンスZにおける変動を生じ、そして既述したようにZ.VIN(ここでZ=A+Bj)に等しい出力信号VOUTに対して作用するであろう。信号VOUTは、同期復調器53を用いて有効値VOUT=Z.VIN(ここでZ=A+Bj、及びj=sin(2π.F.t))をそこから取り出すために、電子チェーン50によってその後に復調される。同期復調は、高い品質係数を有する帯域通過フィルタとして作用することにより、「EMI」タイプの電磁妨害のフィルタリングを可能にし、それによってむしろ選択的でない受動フィルタリングの使用を回避する。
【0030】
少なくとも2つの測定が行われ、1つは動作周波数FMINにおいて、そして1つは識別周波数FMAXにおいてである。かなり大きな寸法のパッドに対して、幾つかの識別周波数FMAXを用いることが可能である。有利なことに、周波数FMIN及びFMAXは変調され、そして2つの同期復調器53を用いて別々に復調され、それによって押圧の位置を表わす静電容量Cと抵抗Rの値を単一の測定で得ることを可能にする。最後に、復調器53から生じるフィルタリングされた連続信号は、フィルタリング装置54を用いて濾過される。
【0031】
手の接近が無い場合、触覚コントローラは周波数FMINにおいてパッドの画像を恒久的に生じさせ、平均をスライドさせることにより、そこからインピーダンスの休止した表を推定する。この画像は、それに基づいて各交点にその状態が属するものと見なせる、不一致の表を形成するために、インピーダンスの瞬間値の表から取り去られる。この構想は、"Process for operating a capacitive tactile keyboard(容量性の接触キーボードを動作させるプロセス)"と題した欧州特許第0 567 364号明細書において、部分的に記述されている。
【0032】
2つの異なる測定周波数の使用は、大きな利点を有する。整列されていない複数の押圧の場合、4倍の点が周波数FMINにおいて測定され、次に周波数FMAXにおいて測定される。周波数変動に続く信号の変化は架空の押圧の拒否を決定するために用いられ、4倍の点は様々な押圧の座標を与えることを可能にする。
【0033】
押圧の位置に対して更なる詳細を得るために、押圧の位置特定は:
動作周波数用に対する受電電圧の「谷」、及び押圧の電圧変動に対応する識別周波数に対する受電電圧の「谷」の位置を正確に示すことを可能にする、第一の解析手段と、
電圧の「谷」の重心計算を可能にする第二の解析手段と、
その重心の知識に基づいて、様々な押圧に対応する行と列の決定を可能にする第三の解析手段とを用いて行われる。
【0034】
例として、重心の決定は次のやり方で行なわれる。受電電圧VOUTの最小値又は「谷」が決定される。最小値は特定の行又は列に対応する。これ以降、この段落においては単純化のために、好んで、行の受電電圧の最小値のみを関心の的とする。勿論、本方法は列に対して有効である。最小値に対応する行LMINの周りで、この行LMINのいずれの側にも位置する決められた番号の行に対して前記行の重心が計算され、各行は前記行の出力電圧値に等しい係数を割り当てられる。この重心は押している点の位置に対応する。例えば、最小電圧を取り囲んでいる電圧勾配を決定することにより、この構想に磨きをかけることが勿論可能である。
【0035】
本重心構想は押圧位置における精度改善を可能にする。それは2つの異なる周波数における測定と結合されるとき、別の利点を有する。実際、図6に例証されるように、2つの同時押圧の場合に、第一の押圧が第一の行と第一の列の第一交点に位置し、そして第二の押圧が第二の行と第二の列の第二交点に位置するとき、及び2つの近接する行又は2つの近接する列に対応する電圧の2つの変動が単一の電圧の谷を含むようなやり方で、第一の行が第二の行の近傍にあり、又は第一の列が第二の列の近傍にあるとき、呼び出される行及び列を正確に決定することが可能である。実際に、図6に見られるように、動作周波数において、例えば2つの隣接する行L及び行LI+1の上に位置する2つの押圧に対応する受電電圧は、呼び出された行を簡単に決定することを可能にしない、単一の電圧の谷を与えるであろう。2つの押圧の重心を決定することだけが可能である。他方で、識別周波数においては、2つの押圧のうちの1つに対応する電圧の谷が減衰させられる。ここで今、2つの押圧のうちの1つに対応する第一の行、例えばLを、曖昧さを残さずに決定出来るようにする単一の電圧の谷だけが残る。この第一の押圧の重心位置と、2つの押圧の重心位置とを一緒に知れば、第二の押圧に対応する第二の行LI+1を決定することが容易となる。
【0036】
上記のように、本発明による触覚デバイスにおいて実施される電子的手段は単純であり、そして投影型の容量検出における主要な問題を効果的に解決すること、すなわち架空の押圧検出、近接した押圧の検出、そして同期検出並びに、高調波の無い純粋な正弦波信号の使用を通じ、電子的環境において妨害が存在しないことに起因する、外部の電磁妨害に対する非感受性を可能にする。
【符号の説明】
【0037】
1 装置
10 タッチパッド
11 導電性の行
12 導電性の列
20 解析手段
30 高周波の正弦波発生器
31 デジタル−アナログ変換器
32 増幅器
33 注入コンデンサ
40 マルチプレクサ
50 電子的処理チェーン
51 バッファメモリ
52 デジタル−アナログ変換器
53 同期復調器
54 電子的フィルタリング手段
60 送受信手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6