(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6203043
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】キャニスタ
(51)【国際特許分類】
F02M 25/08 20060101AFI20170914BHJP
【FI】
F02M25/08 311D
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-268409(P2013-268409)
(22)【出願日】2013年12月26日
(65)【公開番号】特開2015-124644(P2015-124644A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000151209
【氏名又は名称】株式会社マーレ フィルターシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100096459
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 剛
(72)【発明者】
【氏名】荒瀬 雄治
(72)【発明者】
【氏名】大道 順平
(72)【発明者】
【氏名】蓮見 貴志
(72)【発明者】
【氏名】山碕 弘二
【審査官】
種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−011243(JP,A)
【文献】
特開2013−177889(JP,A)
【文献】
特開2013−133731(JP,A)
【文献】
特開2009−019572(JP,A)
【文献】
特表2005−510654(JP,A)
【文献】
特開2007−107518(JP,A)
【文献】
特開2009−220098(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース内の流れ方向に沿って直列に配置された複数の室内に吸着材が充填されるとともに、上記流れ方向の一端に燃料蒸気の流入・流出部、他端に大気開放口を備えたキャニスタにおいて、
上記複数の室のうち、少なくとも上記大気開放側の室内に充填される吸着材は、50nm未満の大きさの微視的細孔を有する活性炭の粉末に、焼成時に消失するメルタブルコアをバインダとともに加えて焼成することで、50nm以上の大きさの巨視的細孔を形成したものであり、
更に、この大気開放側の室内に充填される吸着材は、外径が4〜6mmの円柱状もしくは直径が4〜6mmの球形で、かつ各部の肉厚が0.6mm〜1.5mmとなるような中空形状をなすとともに、その吸着材における50nm以上の大きさの巨視的細孔のうち、500nm未満の大きさの巨視的細孔の容積比率が30〜70%である、ことを特徴とするキャニスタ。
【請求項2】
上記大気開放側の室内に充填される吸着材は、n−ブタン濃度が5容量%と50容量%の間でn−ブタン濃度の平衡吸着量の差分が35g/Lを超えるものである、ことを特徴とする請求項1に記載のキャニスタ。
【請求項3】
上記ケース内の流れ方向に沿って4つ以上の室が直列に配置され、
これら4つ以上の室のうち、上記大気開放側から1つ目の室と2つ目の室内に充填される吸着材は、50nm未満の大きさの微視的細孔を有する活性炭の粉末に、焼成時に消失するメルタブルコアをバインダとともに加えて焼成することで、50nm以上の大きさの巨視的細孔を形成したものであり、
更に、これら大気開放側から1つ目の室と2つ目の室内に充填される吸着材は、外径が4〜6mmの円柱状もしくは直径が4〜6mmの球形で、かつ各部の肉厚が0.6mm〜1.5mmとなるような中空形状をなすとともに、その吸着材における50nm以上の大きさの巨視的細孔のうち、500nm未満の大きさの巨視的細孔の容積比率が30〜70%である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のキャニスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば自動車用内燃機関の燃料蒸気の処理などに用いられ、吸着材として微視的細孔と巨視的細孔とを有する活性炭を用いたキャニスタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車用内燃機関においては、車両の燃料タンクから蒸発した燃料蒸気の外部への放出を防止するために、燃料蒸気の吸着および脱離が可能なキャニスタが設けられている。このキャニスタは、周知のように、ケース内に吸着材が充填されており、流れ方向一端側には大気開放口が設けられ、他端側には燃料タンクに連通する燃料蒸気の流入部(チャージポート)と内燃機関の吸気通路に連通する燃料蒸気の流出部(パージポート)とが設けられている。車両停止後等に発生する燃料蒸気は、流入部を通して燃料タンクからキャニスタへ導入されて、吸着材に一時的に吸着される。その後の運転中に、内燃機関の吸気サイクルにおいて大気開放口から大気が流入して流出部より流出する空気の流れが生じ、この吸気流れにより吸着材に吸着されていた燃料成分を新気とともに脱離させて流出部から内燃機関の吸気通路を経由して燃焼室内で燃焼処理するようになっている。
【0003】
このようなキャニスタにおいて、吸着脱離を効率的に行えるように、例えば特許文献1では、キャニスタのケース内に、吸着材が充填される複数の室を流れ方向に沿って直列に配置し、大気開放側の室には、熱容量の大きい吸着材を配置することが開示されている。
【0004】
また、特許文献2では、昼夜呼吸損失エミッション(Diurnal Bleathing Loss;DBL)を大幅に低減する技術として、キャニスタに充填される吸着材を、n−ブタン濃度が5容積%と50容積%との間でのn−ブタン濃度の平衡吸着量の差分が35g/Lを超える活性炭(以下、「A炭」と呼ぶ)と、35g/L以下の活性炭(以下、「B炭」と呼ぶ)の二種類に区分し、流入・流出部側の室にはA炭を用いた吸着材を充填し、大気開放側の室にはB炭を用いた吸着材を充填している。このように、大気開放側に平衡吸着量の差分が小さい活性炭、つまり有効吸着量(吸着時と脱離後の吸着量の差分)が少ないものの脱離性能に優れたB炭を配置することで、大気開放側への燃料蒸気の排出を抑制し、昼夜呼吸損失エミッション(DBL)の低減を図るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−19572号公報
【特許文献1】特表2005−510654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したように有効吸着量が少ないB炭を用いた吸着材を大気開放側に配置すると、所定の有効吸着量を確保するために必要な活性炭の容量(体積)が増加し、キャニスタの大型化や重量増加が問題となる。
【0007】
そこで本発明は、大気開放側に有効吸着量の大きい活性炭を用いた吸着材を配置した場合であっても、脱離性能に優れ、昼夜呼吸損失エミッション(DBL)を十分に低減することが可能な新規なキャニスタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るキャニスタは、ケース内の流れ方向に沿って直列に配置された複数の室内に吸着材が充填されるとともに、上記流れ方向の一端に燃料蒸気の流入・流出部、他端に大気開放口を備えている。
【0009】
上記複数の室のうち、少なくとも上記大気開放側の室内に充填される吸着材は、50nm未満の大きさの微視的細孔を有する活性炭の粉末に、焼成時に消失するメルタブルコアをバインダとともに加えて焼成することで、50nm以上の大きさの巨視的細孔を形成したものである。
【0010】
また、この大気開放側の室内に充填される吸着材は、外径が4〜6mmの円柱状もしくは直径が4〜6mmの球形で、かつ各部の肉厚が0.6mm〜1.5mmとなるような中空形状をなし、吸着材における50nm以上の大きさの巨視的細孔のうち、500nm未満の大きさの巨視的細孔の容積比率が30〜70%の範囲内にある。言い換えると、500nmを超える大きさの巨視的細孔の容積比率が70〜30%の範囲内にある。
【0011】
このように本発明では、キャニスタの大気開放側の室に充填される吸着材が、その外形寸法が4〜6mmと比較的大きいため、キャニスタ内に充填したときに、その通気抵抗が小さい。そして、中空形状とすることで外形寸法に比して各部の肉厚が比較的小さく設定されるために、脱離性能にも優れている。
【0012】
そして、本発明者等は、大気開放側に充填される吸着材の巨視的細孔の大きさに着目し、500nm未満の大きさの巨視的細孔の容積の割合が30〜70%の範囲にある場合の有効性を見い出した。つまり巨視的細孔の大きさが500nm付近を基準・平均として分布するように細孔構造を設定することで、上述した吸着材の大きさや形状(中空形状及びその肉厚)との組み合わせによって、キャニスタとして重要な通気抵抗を低く維持する一方で、吸着性能と脱離性能とを両立させている。
【0013】
本発明によれば、典型的には、上記大気開放側の室内に充填される吸着材として、ブタン濃度が5容量%とブタン濃度が50容量%との間のn−ブタンの平衡吸着量の差分が35g/Lを超えるA炭を使用することができ、このように有効吸着量が多いA炭を用いることで、吸着材の容積や重量を抑制し、キャニスタの小型化・軽量化を図ることができる。このようなA炭を用いた場合であっても、上述したように吸着材の大きさ,形状,更には巨視的細孔の大きさの分布を適正化することで、十分な脱離性能を確保し、昼夜呼吸損失エミッション(DBL)を十分に低減することが可能である。
【0014】
また、上記ケース内の流れ方向に沿って4つ以上の室が直列に配置されたキャニスタにおいては、好ましくは、これら4つ以上の室のうち、上記大気開放側から1つ目の室と2つ目の室内に充填される吸着材として、上述した大きさ,形状及び巨視的細孔の大きさの分布を有する構造の吸着材を充填することで、2つの室により燃料蒸気の大気開放口からの排出を更に確実に低減することができ、昼夜呼吸損失エミッション(DBL)を大幅に低減することができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、吸着材の外形寸法を十分に大きくすることで通気抵抗の低減を図りつつ、吸着材を中空形状として各部の肉厚を制限し、かつ巨視的細孔の大きさを500nm付近を基準に分布させることで、燃料蒸気の吸着性能と脱離性能を両立した上で、吸着材の容量を抑制し、軽量かつコンパクトなキャニスタを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】大気開放側の室に充填される吸着材の側面図(a)および正面図(b)。
【
図3】吸着材として使用され得る5つの活性炭の各データを示す表。
【
図5】
図3の5つの活性炭の巨視的細孔の大きさの分布を示すグラフ。
【
図6】3つの活性炭の巨視的細孔の大きさの分布を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明に係るキャニスタ1の一実施例を示している。このキャニスタ1は、合成樹脂製のケース2によって二重のUターン形状に流路が形成されているものであって、流れ方向の一端に、燃料蒸気の流入部となるチャージポート3と、燃料蒸気の流出部となるパージポート4と、が設けられており、流れ方向の他端に、大気開放口となる大気ポート5が設けられている。上記チャージポート3は例えば図示しない自動車の燃料タンクに接続され、上記パージポート4は例えば内燃機関の吸気系に接続される。
【0018】
上記ケース2内には、吸着材を収容する室として、上記チャージポート3およびパージポート4の側から順に、第1室6、第2室7、第3室8及び第4室9が直列に設けられている。第1室6および第2室7には、後述する活性炭A−1もしくは活性炭A−3からなる相対的に粒径の小さい吸着材10が充填されている。第3室8及び第4室9には、後述する活性炭A−2からなる相対的に粒径の大きな吸着材11が充填されている。これにより、キャニスタ1の流路の中で特に大気ポート5に近い部分での通気抵抗の低減が達成され、キャニスタ1全体としての脱離性能が向上する。上記第1室6、第2室7、第3室8及び第4室9の間は、例えば通気性を有する多孔板やフィルタによって互いに区画されている。
【0019】
上記吸着材10,11は、活性炭そのものの微視的細孔(直径が2nm以上50nm未満の細孔)に加えて、燃料蒸気の通路となる巨視的細孔(直径が50nm以上100000nm未満の細孔)を有するものであり、例えば、粉末状の活性炭に、常温で固体でありかつ後述する焼成時の温度で気化、昇華または分解するメルタブルコアをバインダとともに加えて成形した上で、焼成し、所定の大きさの粒状としたものである。
【0020】
活性炭は、例えば、市販されている石炭系、木質系等の活性炭を粉砕して粒子径が350μm以下(42メッシュパス)の粉末状のものである。バインダは、粉末状のベントナイト、木節粘土、シリカゾル、アルミナゾルなどの粉体あるいはゾルの固形分を用いることができる。メルタブルコアは、常温で固体でありかつ焼成時の温度で気化、昇華または分解し、さらには製造時の媒体とする水に溶けにくい粉末状(好ましくは粒子径が0.1μm〜1mm)の材料、例えば、昇華性有機化合物(ナフタレン、パラジクロロベンゼンなど)や、融点が高く、分解しやすいポリマ(ポリエチレンなど)や、繊維状の材料(φ0.1μm〜100μm×繊維長1mm以下)の材料、例えばナイロン、ポリエステル、ポリプロピレンなどを用いることができる。
【0021】
そして、これら3者を、適宜な配合比でもって、適宜に水を加えて混合し、押出成形により直径が4〜6mmで長さが2〜12mm程度(望ましくは直径とほぼ等しい長さ)の円柱状に成形する。そして、この成形体をロータリーキルンなどを使用して不活性ガス雰囲気下にて650℃〜1000℃で3〜4時間焼成して、粒状の吸着材11(活性炭A−2)を得る。
【0022】
上記のメルタブルコアは、焼成の際に消失し、これによって、活性炭そのものの微視的細孔(直径が2nm以上50nm未満の細孔)に加えて燃料蒸気の通路となる巨視的細孔(直径が50nm以上100000nm未満の細孔)が形成される。つまり、得られた吸着材11は、巨視的細孔からなるいわゆるマクロポーラス構造を有すると同時に、燃料蒸気の分子を捕捉する微視的細孔からなるいわゆるメソポーラス構造を有するものとなる。
【0023】
そして、吸着材11の巨視的細孔の大きさは、主に、使用する活性炭によって定まるが、メルタブルコアの割合等によって調整可能である。本実施例では、吸着材11における直径が50nm以上100000nm未満の巨視的細孔の容積のうち、30〜70%が500nm未満である。なお、巨視的細孔の容積や大きさの分布は、例えば「ISO 15901−1」で規定される水銀圧入法によって測定できる。
【0024】
また、吸着材11は、
図2に示すような断面形状を有する。すなわち、外側の円筒壁11Aと、この円筒壁11Aの中心部に設けられた十字形の放射状壁11Bと、を有する中空円筒状をなす。そして、各部の肉厚は、0.6mm以上で1.5mm以下の範囲内にある。例えば、円筒壁11Aの外径D1は、4.5mmであり、内径D2は、3.0mmである。また放射状壁11Bの各々の肉厚dは、例えば0.8mmであり、円筒壁11Aの肉厚(半径方向の厚さ)は、例えば0.8mmである。また、軸方向の長さLは4mmである。但し、これらの寸法は、実際の切断加工の際に生じるばらつきが大きい。
【0025】
なお、吸着材11の外径は球形であってもよく、また放射状壁11Bとしては、上記のような十字形のほか、3方向へ延びる放射状のもの、あるいは2方向へ延びるI字形のもの、など種々の形状が可能である。
【0026】
キャニスタ1の通気抵抗の抑制の上では、吸着材11の大きさが大きいことが有利となる。しかし、それに伴って吸着材11の肉厚(単純な球形の場合はその直径が肉厚に相当する)が厚くなると、吸着材としての吸着脱離性能とりわけ脱離性能が悪化する。従って、特に大気開放側の第3室8及び第4室9に充填される吸着材11は、中空形状とされており、各部の肉厚が薄いものとされている。
【0027】
図3は、吸着材に用いられる5つの活性炭A−1,A−2,A−3,B−1,B−2の各種のデータを示す表である。上述したように、上記実施例では活性炭A−1(もしくはA−3)を用いた吸着材10が第1室6及び第2室7に充填され、活性炭A−2を用いた吸着材11が第3室8及び第4室9に充填されている。活性炭A−1,A−3及びB−1は、
図4(A)に示すように、中空の無い円柱形状をなす吸着材10に成形されるものであり、その外径(粒径)は2mmである。活性炭A−2は、上記の
図2及び
図4(B)に示すように、十字形の放射状壁11Bを有する中空円筒状をなす吸着材11に成形されるものである。活性炭B−2は、
図4(C)に示すように、キャニスタ1の一つの室内に挿入・配置される一つの大きなハニカム状に成型した吸着材13に用いられるものであり、外側の円筒壁13Aと、この円筒壁13Aの内側に設けられた格子状壁13Bと、を有する中空円筒状をなし、格子状壁13Bによって円筒壁13Aの内部が通路長手方向に延びる複数の空間に仕切られている。円筒壁13Aの外径は30mm、格子状壁13Bの厚みは0.3mmである。
【0028】
活性炭A−1,A−2及びA−3は、n−ブタン濃度が5容積%(vol%)と50容積%との間のn−ブタン濃度の平衡吸着量の差分が35g/Lを超えるものであり、上述した「A炭」に相当する。活性炭B−1及びB−2は、ブタン濃度が5容積%(vol%)と50容積%との間のn−ブタン濃度の平衡吸着量の差分が35g/L以下のものであり、上述した「B炭」に相当する。
【0029】
図5は、これら5つの活性炭の巨視的細孔の大きさ(Pore Diameter)の分布を示したものである。この
図5に示すように、5つの活性炭のうち、活性炭A−2と活性炭A−3とが、50〜100000nmの巨視的細孔の全容積に対し、50〜500nm(つまり、500nm未満)の大きさをもつ巨視的細孔の容積の比率(500nm未満の大きさの巨視的細孔の容積/巨視的細孔の全容積×100)が30〜70%の範囲内にある。言い換えると、容積比率で巨視的細孔の70〜30%が500nmを超える大きさの細孔構造となっている。より具体的には、
図3に示すように、500nm未満の容積比率が活性炭A−2は54%,活性炭A−3は52%となっている。つまり、500nmの付近を基準あるいは平均値とした巨視的細孔の大きさの分布をもつ細孔構造となっている。
【0030】
一方、活性炭A1及び活性炭B1は、巨視的細孔に占める500nm未満の容積比率がそれぞれ27%、20%と30%よりも低くなっており、平均的に500nmよりもはるかに大きな細孔が多くを占める細孔構造となっている。また、活性炭B−2は、巨視的細孔に占める500nm未満の容積比率が82%であり、つまり70%よりも高く、500nmよりも小さな細孔が大部分を占める細孔構造となっている。
【0031】
図6及び
図7を参照して、活性炭A−4と活性炭A−5は、本実施例で大気開放側の室7,8に充填される吸着材11に用いられる活性炭A−2に対し、形状や大きさは同じであるが、その巨視的細孔の大きさの分布を異ならせたものである。特に、本実施例で用いられる活性炭A−2や活性炭A−4では、500nm未満の大きさの巨視的細孔の容積比率が47%、54%であるのに対し、活性炭A−5ではその容積比率が90%を超えるものとなっている。
【0032】
図7は、これらの活性炭A−2,A−4,A−5のDBLテスト時の破過量を示す特性図であり、図中、上側にいくほど破過量が多く、つまり脱離性能が悪いことを表している。同図に示すように、巨視的細孔の全容積に対する500nm未満の大きさの巨視的細孔の容積比率が30−70%の活性炭A−2及び活性炭A−4では、上記容積比率が90%を超える活性炭A−5に比して、破過量が十分に抑制され、脱離性能に優れていることが確認された。
【0033】
なお、図示していないが、巨視的細孔の全容積に対する500nm未満の大きさの巨視的細孔の容積比率が30−70%の活性炭では、上記容積比率が30%未満の活性炭に比して、脱離性能がはるかに優れていることも同様に確認された。
【0034】
このように本実施例では、大気開放側の第3室7及び第4室8に充填される吸着材(活性炭A−2)として、外径が4〜6mmと比較的大きな中空の円柱又は球形をなす形状を採用することで、吸着材としての強度を確保しつつ、通気抵抗を低減することができる。そして、巨視的細孔に占める500nm未満の大きさの巨視的細孔の容積比率が30〜70%とし、つまり500nm付近を基準とした巨視的細孔の大きさの分布をもつ細孔構造を組み合わせることで、脱離性能を大幅に向上することができる。
【0035】
このように脱離性能が向上することから、平衡吸着量の差分が大きく有効吸着量の大きい活性炭A−2等のA炭を用いることが可能となり、所期の吸着・脱離性能を確保しつつ、活性炭の容量を抑制し、キャニスタ1のコンパクト化,軽量化を図ることができる。
【0036】
特に、本実施例のようにケース2内の流れ方向に沿って4つ以上の室5〜8が直列に配置されたキャニスタ1においては、大気開放側から1つ目の第4室8と2つ目の第3室7の双方に充填される吸着材について、その形状・大きさや容積比率を上述したものとすることで、2つの室8,7により燃料蒸気の大気開放ポート5からの排出を更に確実に低減することができ、昼夜呼吸損失エミッション(DBL)を大幅に低減するすることができる。
【0037】
以上のように本発明を具体的な実施例に基づいて説明してきたが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、種々の変形・変更を含むものである。例えば、上記実施例ではキャニスタ内を4つの室に区画しているが、3つの室に分割し、最も大気開放側の室に上述した吸着材を充填するようにしても良い。
【符号の説明】
【0038】
1…キャニスタ
2…ケース
3…チャージポート(流入部)
4…パージポート(流出部)
5…大気ポート(大気開放口)
6,7,8,9…室
10,11…吸着材