(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6203048
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】グラビア印刷用シリンダのメッキ層の除去装置及び除去方法
(51)【国際特許分類】
B41C 1/18 20060101AFI20170914BHJP
B41C 1/00 20060101ALI20170914BHJP
B23B 5/08 20060101ALI20170914BHJP
B23B 1/00 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
B41C1/18
B41C1/00
B23B5/08
B23B1/00 Z
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-272634(P2013-272634)
(22)【出願日】2013年12月27日
(65)【公開番号】特開2015-127105(P2015-127105A)
(43)【公開日】2015年7月9日
【審査請求日】2016年11月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593098554
【氏名又は名称】ツジカワ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】川田 裕之
(72)【発明者】
【氏名】広田 守一
(72)【発明者】
【氏名】辻川 豊
(72)【発明者】
【氏名】室田 勉
【審査官】
外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭54−089803(JP,A)
【文献】
特開平10−250251(JP,A)
【文献】
特開平10−152793(JP,A)
【文献】
実公昭48−023526(JP,Y1)
【文献】
特開2002−113936(JP,A)
【文献】
特公昭32−003499(JP,B2)
【文献】
実開昭55−179705(JP,U)
【文献】
米国特許第6401614(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41C 1/18
B23B 1/00
B23B 5/08
B41C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状部を有するシリンダベースと、前記シリンダベースの前記筒状部の表面に形成された下地層と、前記下地層よりも外側に形成されたメッキ層とを備え、前記下地層と前記メッキ層の界面から前記メッキ層を剥離可能なバラード方式のグラビア印刷用シリンダの前記メッキ層を除去するための装置であって、
前記シリンダの長手方向に延びる中心線を回転中心として前記シリンダを回転自在に支持するシリンダ支持部と、
前記シリンダ支持部に支持された状態の前記シリンダを回転させる回転機構と、
前記シリンダの長手方向に移動する旋削工具であって、当該旋削工具の先端が前記下地層と前記メッキ層の界面近傍であり且つ前記下地層に接触しない位置に配置される剥離用旋削工具と、
を備える除去装置。
【請求項2】
前記シリンダの長手方向に移動する旋削工具であって、前記剥離用旋削工具による剥離に先立って前記メッキ層にガイド用跡をつけるためのガイド跡形成用旋削工具を更に備える、請求項1に記載の除去装置。
【請求項3】
前記シリンダ支持部に支持された状態の前記シリンダの表面に対してレーザを照射することによって前記メッキ層にガイド用跡をつけるためのレーザ光源を更に備える、請求項1に記載の除去装置。
【請求項4】
前記シリンダの側面を削るための旋削工具を更に備える、請求項1〜3のいずれか一項に記載の除去装置。
【請求項5】
前記剥離用旋削工具は、剥離すべき前記メッキ層の表面と対向する第一の面と、前記第一の面とともに当該旋削工具の先端を構成する第二の面と、剥離作業時の移動方向の前方側に位置する第三の面と、剥離作業時の移動方向の後方側に位置する第四の面とを有し、
前記第一の面と前記第二の面の境界線は前記メッキ層の表面に対して傾斜しており、
前記第二の面は前記旋削工具本体部の一部をえぐるように湾曲して形成され且つ前記第三の面から前記第四の面に向けて傾斜している、請求項1〜4のいずれか一項に記載の除去装置。
【請求項6】
筒状部を有するシリンダベースと、前記シリンダベースの前記筒状部の表面に形成された下地層と、前記下地層よりも外側に形成されたメッキ層とを備え、前記下地層と前記メッキ層の界面から前記メッキ層を剥離可能なバラード方式のグラビア印刷用シリンダの前記メッキ層を除去するための方法であって、
前記シリンダの長手方向に延びる中心線を回転中心として前記シリンダを回転させる工程と、
前記下地層と前記メッキ層の界面近傍であって前記下地層に接触しない位置に剥離用旋削工具の先端を配置した状態で、前記剥離用旋削工具を前記シリンダの長手方向に移動させることによって前記メッキ層を剥離させる工程と、
を備える除去方法。
【請求項7】
前記剥離用旋削工具によって前記メッキ層を剥離させる工程に先立って、前記メッキ層にガイド用跡をつける工程を更に備える、請求項6に記載の除去方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の除去装置を使用して前記メッキ層を除去する、除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラビア印刷用シリンダのメッキ層の除去装置及び除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グラビア印刷用シリンダのタイプの一つとしてバラード方式のシリンダが知られている。この方式のシリンダは、シリンダベースの表面をなす下地層と、この下地層の表面上にメッキ処理によって形成されるメッキ層とを備える。メッキ層は、一般に下地層の表面上に形成される彫刻形成層と、これを保護するための保護層とを有する。
【0003】
バラード方式のタイプのシリンダは、その製作過程において、下地層の表面にバラード液と称される液を塗布した後、その上に彫刻形成層と保護層とを順次形成することで、下地層からメッキ層(彫刻形成層及び保護層)を比較的容易に剥離させることができる。これにより、グラビア印刷の終了後、シリンダベースを再利用するため、シリンダベース側に下地層を残したまま、メッキ層を剥離することが可能となる。
【0004】
特許文献1に記載の発明はグラビア版の製作方法に関し、その
図3には第一の工程として「使用済みの印刷ロールのクロムメッキと亜鉛メッキの除去」が記載されている。特許文献1の段落[0015]には「使用済みの印刷ロールを脱クロムタンクに貯留された希硫酸に浸漬回転して溶解する処理である。」と記載されている。なお、特許文献1にはバラード液に関する記載がなく、またクロムメッキ及び亜鉛メッキを剥離することが記載されていないことから、特許文献1に記載の印刷ロールはいわゆる直版方式に分類されると認められる。
【0005】
特許文献2に記載の発明は製版方法に関し、その段落[0002]には「従来技術」として「バラードメッキ形のグラビア製版方法」において「1)バラードメッキをタガネとペンチを用いて人手により切り裂き除去」することが記載されている。段落[0003]には「直版形のグラビア製版方法」について記載されている。特許文献3には、グラビア印刷用シリンダを再生するための装置が記載されている。特許文献3に記載のシリンダ再生装置は、印刷用の凹部を有する銅メッキ部表面を平坦にするための工具(切削工具及び研削工具)と、平坦になった銅メッキ部表面に新たな印刷用の凹部を形成するための彫刻針とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−80027号公報
【特許文献2】特開2001−105562号公報
【特許文献3】特開2004−58347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、バラード方式のグラビア印刷用シリンダを製作する作業はほとんどの工程が自動化されているにも関わらず、シリンダベースを再利用するために使用済みシリンダからメッキ層(彫刻形成層及び保護層)を取り除く作業は依然として手作業で行われているのが実情である。特許文献1,2に記載のとおり、使用済みのシリンダを液体に浸漬することによってメッキ層を溶解させる方法はメッキ層の除去に比較的長い時間を要するとともに、メッキ層のみを溶かすことが困難であり、その下のシリンダベースの表面(下地層)にも影響が及ぼされる点で広く採用されるに至っていないのが実情である。特許文献3のシリンダ再生装置にあっては銅メッキ部の表面全体を切削及び研削する必要があるため、再生処理に長時間を要する点において改善の余地があった。
【0008】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、バラード方式のグラビア印刷用シリンダからメッキ層を除去する作業の自動化を実現するのに有用な除去装置及び除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、バラード方式のグラビア印刷用シリンダ、すなわち筒状部を有するシリンダベースと、シリンダベースの筒状部の表面に形成された下地層と、下地層よりも外側に形成されたメッキ層とを備え、下地層とメッキ層の界面からメッキ層を除去するための装置を提供する。本発明に係る除去装置は、上記シリンダの長手方向に延びる中心線を回転中心としてシリンダを回転自在に支持するシリンダ支持部と、シリンダ支持部に支持された状態のシリンダを回転させる回転機構と、シリンダの長手方向に移動する旋削工具であって当該旋削工具の先端が下地層とメッキ層の界面近傍であり且つ下地層に接触しない位置に配置される剥離用旋削工具とを備える。
【0010】
上記除去装置によれば、下地層に接触しない位置に配置された剥離用旋削工具で下地層からメッキ層を剥離させることで、下地層が損傷を受けるのを十分に抑制できる。
【0011】
上記除去装置は、シリンダの長手方向に移動する旋削工具であって上記剥離用旋削工具による剥離に先立ってメッキ層にガイド用跡をつけるためのガイド跡形成用旋削工具を更に備えてもよい。あるいは、上記除去装置は、シリンダ支持部に支持された状態のシリンダの表面に対してレーザを照射することによってメッキ層にガイド用跡をつけるためのレーザ光源を更に備えてもよい。これらの構成を採用することにより、剥離用旋削工具による作業をより効率的且つ安定的に実施することができる。ガイド用跡は、メッキ層を剥離するときのガイドの役目を果たすもので、メッキ層を貫通した線状や点線状の切り込み又は線状や点線状のハーフカットで構成されている。
【0012】
上記除去装置はシリンダの側面を削るための旋削工具を更に備えてもよい。かかる構成を採用することにより、シリンダの側面に付着したメッキ層をより確実に取り除くことができる。
【0013】
上記剥離用旋削工具として、剥離すべきメッキ層の表面と対向する第一の面と、第一の面とともに当該旋削工具の先端を構成する第二の面と、剥離作業時の移動方向の前方側に位置する第三の面と、剥離作業時の移動方向の後方側に位置する第四の面とを有し、第一の面と第二の面の境界線はメッキ層の表面に対して傾斜しており、第二の面は旋削工具本体部の一部をえぐるように湾曲して形成され且つ第三の面から第四の面に向けて傾斜したものを採用することができる。第一の面と第二の面の境界線がメッキ層の表面に対して傾斜していることで、当該工具の先端部の角でメッキ層を剥離させることができる。また、第二の面が湾曲していることで、当該工具の先端部を鋭い角度とすることでき、更に第二の面が傾斜していることで剥離したメッキ層を傾斜した方向によりスムーズに送り出すことができる。
【0014】
本発明は、バラード方式のグラビア印刷用シリンダのメッキ層を除去するための方法を提供する。本発明に係る除去方法は、シリンダの長手方向に延びる中心線を回転中心としてシリンダを回転させる工程と、下地層とメッキ層の界面近傍であって下地層に接触しない位置に剥離用旋削工具の先端を配置した状態で、剥離用旋削工具をシリンダの長手方向に移動させることによってメッキ層を剥離させる工程とを備える。
【0015】
上記除去方法によれば、下地層に接触しない位置に配置された剥離用旋削工具で下地層からメッキ層を剥離させることで、下地層が損傷を受けるのを十分に抑制できる。
【0016】
上記除去方法は、剥離用旋削工具によってメッキ層を剥離させる工程に先立って、メッキ層にガイド用跡をつける工程を更に備えてもよい。剥離のためのガイド用跡をメッキ層に事前につけておくことで、その後の剥離用旋削工具による作業をより効率的且つ安定的に実施することができる。なお、ガイド用跡の形成は、ガイド跡形成用旋削工具を用いて行ってもよく、レーザ光源を用いて行ってもよい。
【0017】
本発明の除去方法は、上記除去装置を使用してメッキ層を除去するものであってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、バラード方式のグラビア印刷用シリンダからメッキ層を除去する作業の自動化を実現するのに有用な除去装置及び除去方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】バラード方式のグラビア印刷用シリンダの一例を示す断面図である。
【
図2】本発明に係る除去装置の一実施形態の一部の構成を模式的に示す斜視図である。
【
図3】ガイド跡形成用旋削工具によってメッキ層にガイド用跡をつける工程を実施している様子を模式的に示す斜視図である。
【
図4】剥離用旋削工具によってメッキ層を剥離する作業の準備を行っている様子を模式的に示す斜視図である。
【
図5】剥離用旋削工具によってメッキ層を剥離する工程を実施している様子を模式的に示す断面図である。
【
図8】本発明に係る除去装置の他の実施形態の一部の構成を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0021】
<バラード方式のグラビア印刷用シリンダ>
図1はバラード方式のグラビア印刷用シリンダの一例を示す断面図であり、シリンダ10の長手方向に直交する面における断面を示したものである。同図に示すとおり、シリンダ10は、シリンダベース1と、シリンダベース1の表面に設けられた下地層2と、下地層2の外側に設けられたメッキ層5とを備える。メッキ層5は、彫刻形成層5aと保護層5bとを備え、これらの層が下地層2側からこの順で形成されている。グラビア印刷の終了後、シリンダベース1を再利用するため、シリンダベース1側に下地層2を残したまま、メッキ層5を剥離できるように構成されている。
【0022】
下地層2の表面2fと彫刻形成層5aの裏面5fとの界面において、下地層2からメッキ層5が剥離するように、シリンダ10の製作過程において下地層2の表面2fにバラード液と称される液を塗布した後、その上に彫刻形成層5a及び保護層5bがメッキ処理によって順次形成される。バラード液としては、例えば無水亜硫酸ナトリウム、硝酸銀又はチオ硫酸の水溶液あるいは水を使用できる。
【0023】
シリンダベース1は、例えば長さ300〜5000mm、外径100〜1500mmの筒状部材である。シリンダベース1の材質として、例えばアルミニウム、鉄などが挙げられる。
【0024】
下地層2は、シリンダベース1の表面を覆うように形成された層である。下地層2の材質として、例えば銅、亜鉛、スズ、ニッケル及びこれらの合金ならびにステンレス及びその他の合金などが挙げられる。
【0025】
彫刻形成層5aは、バラード液が塗布された下地層2の表面を覆うように形成されている。彫刻形成層5aはメッキ処理によって形成され、その厚さは例えば60〜300μm程度である。彫刻形成層5aの材質として、例えば銅、亜鉛、スズ及びこれらの合金ならびにステンレス及びその他の合金などが挙げられる。彫刻形成層5aはメッキ処理によって形成され、その後、レーザなどによってグラビア印刷用の凹部が彫刻される。
【0026】
保護層5bは、彫刻形成層5aに形成された版を保護するためのものであり、彫刻形成層5aの表面を覆うように形成されている。保護層5bはメッキ処理によって形成され、その厚さは例えば5〜8μm程度である。保護層5bの材質として、例えばクロム、ニッケル、亜鉛及びこれらの合金などが挙げられる。
【0027】
<除去装置>
図2〜7を参照しながら、除去装置の実施形態について説明する。
図2に示す除去装置100は、シリンダ10における下地層2とメッキ層5の界面からメッキ層5を取り除くためのものである。除去装置100は、シリンダ10の長手方向に延びる中心線Cを回転中心としてシリンダ10を回転自在に支持するシリンダ支持部20と、シリンダ支持部20に支持された状態のシリンダ10を回転させる回転機構(不図示)とを備える。回転機構によってシリンダ10を
図2の矢印Rの方向に回転させることができる。シリンダ支持部20と、後述の旋削工具30,40を移動させる構成とを備える装置として、例えば旋盤を使用できる。
【0028】
図3に示すとおり、除去装置100はガイド跡形成用旋削工具30(以下、単に「旋削工具30」という。)を備える。旋削工具30は
図3の矢印Aの方向(シリンダ10の長手方向)に移動する。シリンダ10を矢印Rの方向に回転させるとともに、旋削工具30をメッキ層5の表面に接触させた状態で矢印Aの方向に移動させることで、メッキ層5にガイド用跡5cをつけることができる。このとき、旋削工具30の先端は、下地層2を傷付けないように、下地層2の表面に接触しない位置であることが好ましい。ガイド用跡5cは、メッキ層5を剥離するときのガイドの役目を果たすものである。ここでは、ガイド用跡5cとしてメッキ層5を貫通した線状の跡を例示したが、ガイド用跡5cは点線状の切り込み、又は線状や点線状のハーフカットで構成されていてよい。
【0029】
図4に示すとおり、除去装置100は、下地層2からメッキ層5を剥離するための剥離用旋削工具40(以下、単に「旋削工具40」という。)を備える。旋削工具40も矢印Aの方向に移動する。シリンダ10を矢印Rの方向に回転させるとともに、旋削工具40の先端をメッキ層5と下地層2の界面近傍であって下地層2に接触しない位置に配置した状態で矢印Aの方向に移動させることで、メッキ層5を剥離させることができる。
【0030】
メッキ層5は、下地層2との界面に塗布されたバラード液の影響によってもともと下地層2から剥離しやすくなっている。これに加え、旋削工具30によって予めメッキ層5にガイド用跡5cをつけておくことで、旋削工具40によって効率的且つ安定的にメッキ層5を剥離することができる。
【0031】
図5〜7に示すとおり、旋削工具40は、メッキ層5の表面と対向する第一の面41と、第一の面41とともに旋削工具40の先端40aを構成する第二の面42と、剥離作業時の移動方向(矢印Aの方向)の前方側に位置する第三の面43と、剥離作業時の移動方向(矢印Aの方向)の後方側に位置する第四の面44とを有する。なお、
図7の(a)は旋削工具40の平面図であり、(b)は正面図であり、(c)は側面図である。
【0032】
図7の(a)に示すとおり、先端40a(第一の面41と第二の面42の境界線)はメッキ層5の表面に対して傾斜している。これにより、旋削工具40の先端40aの角40bでメッキ層5を剥離させることができる。旋削工具40の角40bと、下地層2との間隔(クリアランス)は好ましくは0.001〜0.300mm程度である(
図5参照)。
【0033】
図7の(b)に示すとおり、第二の面42は工具本体部40cの一部をえぐるように湾曲して形成されている。第二の面42が湾曲部42aを有していることで、旋削工具40の先端40aを鋭い角度とすることできる。また、第二の面42は、第三の面43から第四の面44に向けて傾斜している。より具体的には、第二の面42が上向きになるように旋削工具40を配置したとき、第二の面42は第三の面43から第四の面44に向けて低くなるように傾斜している。第二の面42が傾斜していることで剥離したメッキ層5を第四の面44側によりスムーズに送り出すことができる(
図5参照)。
【0034】
<除去方法>
次に、使用済みのシリンダ10からメッキ層5を除去する方法について説明する。本実施形態に係る方法は、シリンダ10の長手方向に延びる中心線Cを回転中心としてシリンダ10を回転させた状態において、旋削工具40によるメッキ層5の剥離に先立って旋削工具30によってメッキ層5にガイド用跡5cをつける工程と、下地層2とメッキ層5の界面近傍であって下地層2に接触しない位置に旋削工具40の先端40aを配置した状態で旋削工具40を矢印Aの方向に移動させることによってメッキ層5を剥離させる工程とを備える。
【0035】
上記除去方法によれば、剥離のためのガイド用跡5cをメッキ層5に事前につけておくことで、その後の旋削工具40による剥離作業をより効率的且つ安定的に実施することができる。ガイド用跡5cはシリンダ10の全体(一方の端部側から他方の端部側まで)に形成してもよく、あるいは、作業時間の短縮の観点から、
図4に示すようにシリンダ10の一方の端部側から途中までのみに形成してもよい。メッキ層5の剥離が一旦開始されると、バラード液の性能等によってはガイド用跡5cがなくても旋削工具40によってメッキ層5の全体を剥離させることも可能である。
【0036】
また、上記除去方法によれば、下地層2に接触しない位置に配置された旋削工具40で下地層2からメッキ層5を剥離させることで、下地層2が損傷を受けるのを十分に抑制できる。本実施形態に係る装置及び方法はバラード方式のグラビア印刷用シリンダ10からメッキ層5を除去する作業の自動化を実現するのに有用である。
【0037】
<他の実施形態>
上記実施形態に係る除去装置100,200は、シリンダ10の側面10aを削るための旋削工具(不図示)を更に備えてもよい。かかる構成を採用することにより、側面10aに付着したメッキ層をより確実に取り除くことができる。側面10aを削るための旋削工具を装備した除去装置100,200を使用してメッキ層5の除去処理を行う場合、まず、旋削工具30によってメッキ層5にガイド用跡5cをつけた後、側面10aを削り、その後、旋削工具40によってメッキ層5を剥離することが好ましい。側面10aを削る前にガイド用跡5cを付けることによって、ガイド用跡5cを付ける際にメッキ層5が意図しないタイミングで剥離することを抑制できる。
【0038】
上記実施形態においては、メッキ層5にガイド用跡5cをつけるために旋削工具30を採用する場合を例示したが、旋削工具30の代わりにレーザ光源を採用してもよい。
図8は、矢印A方向に移動する光源35から発せられるレーザLによってメッキ層5にガイド用跡5dをつける作業を実施している様子を示す図である。光源35としては、例えば波長1056nm以下のレーザLを照射できるものを採用すればよい。また、光源35はレーザLの出力を調整可能なものが好ましく、例えば15W以上の範囲で調整可能なものを採用すればよい。
【符号の説明】
【0039】
1…シリンダベース、2…下地層、5…メッキ層、5a…彫刻形成層、5b…保護層、5c,5d…ガイド用跡、10…グラビア印刷用シリンダ、10a…側面、20…シリンダ支持部、30…ガイド跡形成用旋削工具、35…光源、40…剥離用旋削工具、40a…先端、40b…角、40c…工具本体部、41…第一の面、42…第二の面、42a…湾曲部、43…第三の面、44…第四の面、100,200…除去装置、C…中心線、L…レーザ。