特許第6203050号(P6203050)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6203050
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】液状発酵乳及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23C 9/123 20060101AFI20170914BHJP
【FI】
   A23C9/123
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-507414(P2013-507414)
(86)(22)【出願日】2012年3月21日
(86)【国際出願番号】JP2012057105
(87)【国際公開番号】WO2012133015
(87)【国際公開日】20121004
【審査請求日】2015年3月4日
(31)【優先権主張番号】特願2011-73819(P2011-73819)
(32)【優先日】2011年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006138
【氏名又は名称】株式会社明治
(74)【代理人】
【識別番号】100103539
【弁理士】
【氏名又は名称】衡田 直行
(72)【発明者】
【氏名】河合 良尚
(72)【発明者】
【氏名】山本 昌志
【審査官】 田中 耕一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−014706(JP,A)
【文献】 特開平06−022688(JP,A)
【文献】 特開平05−236873(JP,A)
【文献】 特開2011−004711(JP,A)
【文献】 特表2003−532376(JP,A)
【文献】 特開2006−345865(JP,A)
【文献】 特開2009−279012(JP,A)
【文献】 特開2002−125590(JP,A)
【文献】 特開平05−000043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01J 1/00−99/00
A23C 1/00−23/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
WPIDS/WPIX(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)増粘安定剤を含まない発酵乳の原料に乳酸菌を添加し発酵させて、pH5.4〜6.0のカードを調製するカード調製工程と、
(B)50〜100MPaの圧力下で上記カードの均質化処理を行ない、pH5.4〜6.0でかつ増粘安定剤を含まない液状発酵乳を得る均質化処理工程、
を含む液状発酵乳の製造方法。
【請求項2】
工程(B)の均質化処理を5〜50℃の温度下で行なう請求項に記載の液状発酵乳の製造方法。
【請求項3】
上記液状発酵乳の粘度が10mPa・s以下である請求項1又は2に記載の液状発酵乳の製造方法。
【請求項4】
上記液状発酵乳の酸度が0.5%以下である請求項1〜のいずれか1項に記載の液状発酵乳の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状発酵乳及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消費者の本物志向及びマイルド志向の中で、酸味が弱く、口当たりのマイルドな発酵乳が求められている。
酸味が弱い発酵乳の製造方法の一例として、乳脂肪分に対する無脂乳固形分の割合が重量比で2〜6である発酵乳ミックスを、10℃で14日間保存したときの液状発酵乳のpHの低下が0.3未満である乳酸菌を用いて、発酵終了時のpHが4.9〜5.3になるように培養した後、カードを液状化することを特徴とする液状発酵乳の製造法が、提案されている(特許文献1)。
酸味が弱い発酵乳の製造方法の他の例として、製品pHが5.4以上のビフィドバクテリウム属細菌含有発酵乳飲食品を製造する際に、原料乳の発酵を少なくともビフィドバクテリウム・ビフィダムを含む1種又は2種以上の乳酸菌又はビフィドバクテリウム属細菌により行い、当該発酵工程後の任意の段階で、飲食品中にアルカリ塩を添加することを特徴とするビフィドバクテリウム属細菌含有発酵乳飲食品の製造方法が、提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−14706号公報
【特許文献2】特開2002−204655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1に記載された製造法によると、pH5.0付近でも保存安定性が良好で、ペクチン等の安定剤を使用しなくても離水・沈殿が少なく、また、ペクチン等の安定剤を使用しないため糊状感がなく食感が良好であり、さらにはpHが通常よりも高いため低酸度で口当たりのマイルドな液状発酵乳を製造することができる。
しかし、本発明者が、特許文献1に記載された製造法の製造条件を検討したところ、発酵終了時のpHが5.3を超えるように発酵乳ミックスのカードを調製した場合、カードの液状化(換言すると、均質化処理)の後の最終製品である液状発酵乳としての保存中に、液状発酵乳中の成分の凝集による沈殿物が生じ、外観及び食感が劣化することがあるとの知見を得た。
本発明の目的は、酸味が弱く、口当たりがマイルドで、保存中に沈殿物が生じて外観、風味及び食感が劣化することのない液状発酵乳、及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、発酵終了後のカードのpHが通常よりも高い5.0〜6.0であっても、従来の10〜15MPaよりも高い30〜100MPaの圧力下で均質化処理を行なえば、酸味が弱く、口当たりがマイルドな液状発酵乳を得ることができるとともに、液状発酵乳の保存中に、沈殿物が生じないか、あるいは、生じたとしてもその量が非常に少量であることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[6]を提供するものである。
[1] (A)発酵乳の原料に乳酸菌を添加し発酵させて、pH5.0〜6.0のカードを調製するカード調製工程と、(B)30〜100MPaの圧力下で上記カードの均質化処理を行ない、pH5.0〜6.0の液状発酵乳を得る均質化処理工程、を含むpH5.0以上の液状発酵乳の製造方法。
[2] 前記[1]に記載の液状発酵乳の製造方法によって得られた液状発酵乳。
[3] 粘度が10mPa・s以下である前記[2]に記載の液状発酵乳。
[4] 酸度が1.0%以下である前記[2]又は[3]に記載の液状発酵乳。
[5] 酸度が0.5%以下である前記[2]又は[3]に記載の液状発酵乳。
[6] 増粘安定剤を含まない前記[2]〜[5]のいずれかに記載の液状発酵乳。
【発明の効果】
【0007】
本発明の液状発酵乳は、特定の圧力下で均質化処理を行なうとともに、均質化処理後のpHが5.0〜6.0であるため、酸味が弱く、マイルド(まろやか)な口当たりを、pH5.0以上の間で維持することができる。また、酸味が弱いため、酸味が強いときに添加が必要になる砂糖等の甘味料の使用量をゼロまたは少量に抑えることができ、健康志向の消費者の好みに合致する。
また、本発明の液状発酵乳は、30〜100MPaの圧力下で均質化処理を行なっているので、長期の保存期間に亘って、成分の分離及び凝固が発生せず、沈殿物(固形分)を生じることがなく、液状発酵乳としての良好な外観、風味及び食感を維持することができる。
また、本発明の液状発酵乳は、保存中の沈殿物の生成を抑制するためにペクチン、カルボキシメチルセルロース(CMC)等の増粘安定剤を添加する必要がなく、糊状感のない良好なのど越しを与えることができる。この場合、本発明の液状発酵乳は、無添加の本物志向の消費者の好みにも合致する。
さらに、本発明の液状発酵乳は、従来と同じ工程数及び製造時間で、容易に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のpH5.0以上の液状発酵乳の製造方法は、(A)発酵乳の原料に乳酸菌を添加し発酵させて、pH5.0〜6.0のカードを調製するカード調製工程と、(B)30〜100MPaの圧力下で上記カードの均質化処理を行ない、pH5.0〜6.0の液状発酵乳を得る均質化処理工程、を含む。以下、各工程を詳しく説明する。
【0009】
[工程(A);カード調製工程]
工程(A)は、発酵乳の原料に乳酸菌を添加し発酵させて、pH5.0〜6.0のカードを調製する工程である。
本明細書において、発酵乳の原料とは、少なくとも原料乳を含むものをいう。
ここで、原料乳の例としては、牛乳等の獣乳や、その加工品(例えば、脱脂乳、脱脂粉乳、れん乳、乳清、クリーム等)や、大豆由来の豆乳等の植物性乳等が挙げられる。
発酵乳の原料の一例として、発酵乳原料ミックスと呼ばれるものが挙げられる。
発酵乳原料ミックスは、原料乳及び他の成分を含む混合物であり、例えば、原料乳、砂糖、砂糖以外の糖類、高感度甘味料、香料、水等の、発酵乳の製造に常用される原料を加温して溶解し、混合することによって得ることができる。
なお、原料乳および乳の加工品の乳脂肪分や無脂乳固形分(乳タンパク質、乳糖、灰分)などの組成は獣の個体差や飼育環境、気候などで変動があり、実際に使用する原料の組成に応じて原料乳や乳の加工品を選定し都度適切な配合比を設定できることは言うまでもない。
発酵乳の原料(例えば、牛乳等の獣乳)は、予め、加熱して殺菌することができる。この場合、殺菌方法の例としては、120〜130℃で数秒間殺菌するUHT(超高温殺菌)や、90〜95℃で数十分間殺菌するHTST(高温殺菌)等が挙げられる。
【0010】
乳酸菌としては、ヨーグルト等の発酵乳で使用される菌株であれば特に限定されない。後述の実施例の実証内容に菌株が限定されることはなく、特に、冷蔵保存中の酸度上昇の少ない乳酸菌を適宜選択して用いれば、液状発酵乳の保存期間を延ばすことができる。例えば、本発明の製造方法で液状発酵乳を調製し、冷蔵保存中にpH5.0まで達するのに15日間かかる場合には、15日間の保存期間(本発明の液状発酵乳として消費可能な期間)を設定することができる。また、本発明の製造方法で液状発酵乳を調製し、冷蔵保存中にpH5.0まで達するのに30日間かかる場合には、30日間の保存期間を設定することができる。すなわち、冷蔵保存中における本発明の液状発酵乳の酸度上昇及び/又はpH低下が少なければ少ないほど、本発明の効果を製造後長期間享受することができる。
また、ここでの液状発酵乳の保存開始時とは、均質化処理の終了後に液状発酵乳の液温を保存温度(例えば、10℃)に調整した時点(保存温度が10℃であり、かつ、均質化処理を10℃で行なった場合は、均質化処理の終了時)である。
【0011】
本発明における乳酸菌の菌株の使用の可否は、液状発酵乳の成分組成等の影響を受けることがある。例えば、発酵乳の原料として、pHが低下しにくい成分組成を有するものを用いる場合には、「冷蔵保存中での発酵乳のpHが5.0以上」の条件を満たし易くなるので、本発明で使用可能な乳酸菌の菌株の種類の数は、多くなる。
【0012】
発酵温度は、良好な風味の発酵乳を効率的に得る観点から、30〜48℃、好ましくは35〜48℃、より好ましくは38〜45℃である。
発酵時間は、後述のpHを有しかつ良好な風味の発酵乳を得る観点から、例えば、ラクトバチルス・ブルガリカスとストレプトコッカス・サーモフィルスを使用する場合、好ましくは0.5〜10時間、より好ましくは1〜8時間、さらに好ましくは1〜5時間、特に好ましくは1〜3時間である。
発酵乳の原料は、発酵が進むと凝固して、カード(固形状のもの)になる。
発酵の終了時のカードのpHは、5.0〜6.0、好ましくは5.2〜6.0、より好ましくは5.3〜5.9、特に好ましくは5.4〜5.9である。該pHが5.0未満では、液状発酵乳の酸味が保存中に強くなることがある。該pHが6.0を超えると、良好な風味の発酵乳を得ることが困難であり、また、液状発酵乳の保存中にタンパク質が凝集して沈殿物が生じることがある。
発酵の終了後、後工程である工程(B)における均質化処理のために、カードの温度を、後述の均質化処理時の温度まで低下させることもできるし、あるいは、カードの温度を低下させずに、均質化処理後の液状発酵乳の温度を保存温度(例えば、10℃)まで低下させることもできる。このように、温度の低下の時期は、特に限定されるものではない。
【0013】
[工程(B);均質化処理工程]
工程(B)は、30〜100MPaの圧力下で、工程(A)で得られたカードの均質化処理を行ない、pH5.0〜6.0の液状発酵乳を得る工程である。
均質化処理は、均質機(ホモゲナイザー)を用いることによって行なうことができる。
均質化処理の圧力は、30〜100MPa、好ましくは40〜100MPa、より好ましくは50〜100MPa、特に好ましくは60〜100MPaである。該圧力が30MPa未満では、液状発酵乳の保存中に沈殿物が生じることがある。該圧力が100MPaを超えると、均質化処理のための加圧手段として、高性能の装置を用いる必要があり、不経済である。この経済性の観点からは、該圧力の上限値は、好ましくは90MPa、より好ましくは80MPaである。
均質化処理時の温度は、好ましくは5〜50℃、より好ましくは5〜45℃である。該温度が5℃未満では、発酵温度からの温度の低下の程度が大きいため、冷却装置の運転上の負荷が大きくなり、不経済である。該温度が50℃を超えると、均質化処理の終了までに発酵が進んで、液状発酵乳のpHがカードのpHよりも大きく低下するおそれがあるため、均質化終了後速やかに冷却する工程を必要とする。
均質化処理によって、最終製品である液状発酵乳が得られる。
【0014】
均質化処理によって得られる液状発酵乳の物性(10℃等の所定の保存温度での保存下における値)は、以下のとおりである。なお、以下の値は、少なくとも、液状発酵乳の調製時(均質化処理の終了後に液状発酵乳の液温を保存温度(例えば、10℃)に調整した時点)に満たされることが好ましく、液状発酵乳の調製時及び所定の保存期間内で満たされることが、より好ましい。
液状発酵乳のpHは、5.0〜6.0、好ましくは5.2〜6.0、より好ましくは5.3〜5.9、特に好ましくは5.4〜5.9である。該pHが5.0未満では、液状発酵乳の保存中に、酸味が強くなり、粘度が増大し、沈殿物が生じることがある。該pHが6.0を超えると、液状発酵乳としての風味が劣る。
液状発酵乳の粘度は、糊状感のない良好なのど越しを与える観点から、好ましくは10mPa・s以下、より好ましくは7.5mPa・s以下、さらに好ましくは5mPa・s以下である。
液状発酵乳の粘度は、B型粘度計を用いて測定することができる。。
【0015】
液状発酵乳の酸度は、酸味が弱い、マイルドな風味を与える観点から、好ましくは1.0%以下、より好ましくは0.8%以下、さらに好ましくは0.75%以下、特に好ましくは0.5%以下である。該酸度の下限値は、特に限定されないが、通常、0.2%である。
液状発酵乳の酸度は、液状発酵乳中の酸を乳酸に換算した重量百分率で表される。酸度は、例えば、試料9gを水で2倍に希釈した後、フェノールフタレイン指示薬を添加し、次いで、0.1Nの水酸化ナトリウム溶液で中和滴定を行ない、30秒間微紅色の消失しない点を終点とし、終点における滴定量から試料100g中の乳酸量を算出し、得られた値を%で示すことによって得ることができる。
液状発酵乳中の成分(カゼインミセル)の粒子径は、液状発酵乳の保存中の沈殿物の生成を抑制する観点から、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下、さらに好ましくは1.5μm以下、特に好ましくは1.0μm以下である。
該粒子径とは、50%重量累積粒子径(平均粒子径)をいう。該粒子径は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、島津製作所社製の製品「SALD−2100」)を使用して、液状発酵乳中の成分の粒度分布を測定することによって得ることができる。
【0016】
本発明の液状発酵乳は、例えば、食品容器に充填され、ドリンクヨーグルト等の最終製品の形態で所定の保存温度(例えば、10℃以下)に冷蔵保存された後、飲用に供される。
調製時から所定の保存温度(例えば、10℃)で所定期間、液状発酵乳を保存したときの当該液状発酵乳のpHの低下の程度は、液状発酵乳の保存中の沈殿物の生成を抑制するとともに、酸味の増大を抑制し、マイルドな風味を維持する観点から、0.5以下、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.3以下、特に好ましくは0.2以下である。
本発明の液状発酵乳は、糊状感を与えない観点から、ペクチン、カルボキシメチルセルロース(CMC)等の増粘安定剤を含まないことが好ましい。なお、ペクチンは、乳タンパク質の等電点であるpH4.6よりも低いpH3.5〜4.4でなければ、液状発酵乳中の沈殿物の生成の抑制効果を発揮することができないため、本発明の液状発酵乳のpHである5.0〜6.0の範囲内では、利用価値が低い。また、カルボキシメチルセルロースも、pH4.2〜4.8の範囲内で好適に用いられるものであるため、本発明の液状発酵乳のpHである5.0〜6.0の範囲内では、利用価値が低い。
【実施例】
【0017】
以下、実施例によって本発明を詳しく説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例中の「%」及び「部」は、特に断らない限り、重量基準である。
[実施例1]
材料として、牛乳2496g、脱脂粉乳210g、ぶどう糖果糖液糖96gを混合することによって、無脂乳固形分8.4%、乳脂肪分2.0%、ぶどう糖果糖液糖2.0%及び水(残部;87.6%)を含む還元乳を得た後、この還元乳を殺菌処理して、発酵乳の原料を調製した。
次に、調製した発酵乳の原料100部に、スターターとして、「明治ブルガリアヨーグルト」(商品名:明治乳業社製)より分離したラクトバチルス・ブルガリカス及びストレプトコッカス・サーモフィラスを接種し、43℃の液温を保ちつつ、2時間、発酵させ、発酵乳の原料が発酵してなるカードを得た。このカードのpHは、5.62であった。
その後、得られたカードを10℃まで冷却させた。
【0018】
次に、この冷却させたカードについて、10℃の温度を保ちつつ、ホモゲナイザー(三和機械社製)を用いて60MPaの圧力下で均質化処理を行ない、液状発酵乳を得た。得られた液状発酵乳のpHは、5.62であった。
次に、この液状発酵乳を、10℃の液温を保ったまま保存し、保存開始時から、1日後、4日後、8日後、11日後の各時点において、pH、酸度、粘度、粒子径の各物性を測定し、かつ、目視によって沈殿物の有無と液状発酵乳の状態を調べた。結果を表1に示す。
なお、酸度は、上述のとおり、フェノールフタレイン指示薬を添加した後、水酸化ナトリウム溶液で中和滴定を行なう方法によって算出した。粘度は、B型粘度計を用いて測定した。粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所社製の製品「SALD−2100」)を使用して得た粒度分布に基づいて得た。
【0019】
【表1】
【0020】
表1中、液状発酵乳のpHが4.95である「10℃で8日間保存」までは、本発明の効果は見られたが、pHが4.85である「10℃で11日間保存」時以降は、粘度と粒子径が増大し、液状発酵乳の状態が乳の凝集により固体化し、本発明の効果は見られなかった。従って、均質化処理の圧力を60MPaに定め、かつ、液状発酵乳の冷蔵保存中のpHが5.0以上であれば、本発明の効果が見られることがわかった。
【0021】
[実施例2]
均質化処理の圧力を60MPaから30MPaに変更した以外は実施例1と同様にして実験した。その結果、カードのpHは5.62、液状発酵乳のpHは5.62であった。また、実施例1と同様に冷却させた液状発酵乳を、10℃の液温を保ったまま保存し、保存開始時から、1日後、3日後、6日後の各時点において、pH、酸度、粘度、粒子径の各物性を測定し、かつ、目視によって沈殿物の有無と液状発酵乳の状態を調べた。結果を表2に示す。
【0022】
【表2】
【0023】
表2中、液状発酵乳のpHが5.0以上である「10℃で3日間保存」までは本発明の効果は見られたが、pHが4.80である「10℃で6日間保存」時以降は、粘度と粒子径が増大し、液状発酵乳の状態が乳の凝集により固体化し、本発明の効果は見られなかった。従って、均質化処理の圧力を30MPaに定め、かつ、液状発酵乳の冷蔵保存中のpHが5.0以上であれば、本発明の効果が見られることがわかった。
【0024】
[比較例1]
均質化処理の圧力を60MPaから0MPaに変更した以外は実施例1と同様にして実験した。また、実施例1と同様に冷却させた液状発酵乳を、10℃の液温を保ったまま保存し、保存開始時から、1日後、4日後、5日後の各時点において、pH、酸度、粘度、粒子径の各物性を測定し、かつ、目視によって沈殿物の有無と液状発酵乳の状態を調べた。結果を表3に示す。
【0025】
【表3】
【0026】
表3中、液状発酵乳のpHが4.94である「10℃で4日間保存」でも、粘度と粒子径が増大し、液状発酵乳は底部に固形化しつつある糊状の形状となり、沈殿が発生し、本発明の効果は見られなかった。均質化処理の圧力が60MPaである実施例1では、pH4.95の液状発酵乳でも本発明の効果が見られたが、均質化処理の圧力が0MPaである比較例1では、本発明の効果が見られなかった。pHが4.76である「10℃で5日間保存」時以降は、粘度と粒子径が増大し、液状発酵乳の状態が乳の凝集により固体化し、本発明の効果は見られなかった。
従って、本発明の効果を得るためには、発酵乳を均質化処理(液状化)する際に30MPa以上の圧力で均質化処理を行ない、pH5.0以上の液状発酵乳を得ることが必要であることが、実施例1、実施例2及び比較例1で実証された。冷蔵保存中にpH5.0に到達するまでの期間が長い乳酸菌を使用すれば、保存期間を長くすることも可能である。