特許第6203052号(P6203052)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6203052
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】消火性芯材
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/02 20060101AFI20170914BHJP
【FI】
   C09J7/02 Z
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-526141(P2013-526141)
(86)(22)【出願日】2011年8月25日
(65)【公表番号】特表2013-538273(P2013-538273A)
(43)【公表日】2013年10月10日
(86)【国際出願番号】US2011049064
(87)【国際公開番号】WO2012027530
(87)【国際公開日】20120301
【審査請求日】2014年8月13日
【審判番号】不服2016-11369(P2016-11369/J1)
【審判請求日】2016年7月28日
(31)【優先権主張番号】61/376,918
(32)【優先日】2010年8月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】313011456
【氏名又は名称】ボスティック,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(72)【発明者】
【氏名】ボイル,ジェイムズ,ティー.
(72)【発明者】
【氏名】パッキン,ケビン
(72)【発明者】
【氏名】ペレ,キャサリン
【合議体】
【審判長】 佐々木 秀次
【審判官】 馳平 裕美
【審判官】 天野 宏樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−255687(JP,A)
【文献】 特開2001−288430(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/047915(WO,A1)
【文献】 特開平11−246830(JP,A)
【文献】 特開平9−176591(JP,A)
【文献】 特表2008−519891(JP,A)
【文献】 特開2003−13026(JP,A)
【文献】 特開2004−115608(JP,A)
【文献】 特開平9−221639(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 7/00-7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空宇宙分野の機体内装用消火性接着皮膜であって、
剥離ライナーと、
前記剥離ライナーの一側面上に接着剤を含む一次機能層と、
前記一次機能層上に位置する消火性芯材であって、前記消火性芯材は6〜20重量%のポリウレタン樹脂および39〜55重量%の難燃性顔料を含み、前記難燃性顔料は12〜20重量%のエチレンビステトラブロモフタルイミド、20〜25重量%のアルミナ三水和物および7〜10重量%の五酸化アンチモンを含み、前記樹脂および前記難燃性顔料が合着マトリックスを形成する、消火性芯材と、
前記消火性芯材の上に層化される接着剤を含む二次機能層と
を含む、航空宇宙分野の機体内装用消火性接着皮膜。
【請求項2】
前記消火性芯材の樹脂が、溶媒和化されるかまたは押出成形され得る、そして前記合着マトリックス内に少なくとも50重量%の難燃性顔料をその乾燥形態で保持することもできる請求項1記載の消火性接着皮膜。
【請求項3】
前記消火性芯材の樹脂が、溶媒和化されるかまたは押出成形され得る、そして前記合着マトリックス内に少なくとも70重量%の難燃性顔料をその乾燥形態で保持することもできる請求項1記載の消火性接着皮膜。
【請求項4】
前記消火性芯材が、接着剤の一次および二次機能層間に位置する皮膜層である請求項1記載の消火性接着皮膜。
【請求項5】
下塗り剤の1つ以上の層が、消火性芯材層と接着剤の一次または二次機能層との間に位置する請求項4記載の消火性接着皮膜。
【請求項6】
乾燥状態の前記消火性芯材が、1〜2重量%のブロック化イソシアネートをさらに含む請求項1記載の消火性接着皮膜。
【請求項7】
前記消火性芯材の原材料として、溶媒、ポリウレタンおよび溶媒を含むポリウレタン溶液、難燃性顔料ならびに有効量の界面活性剤を含む製造溶液を含有することを特徴とする、請求項1記載の消火性接着皮膜。
【請求項8】
前記製造溶液にブロック化イソシアネートも含む請求項7記載の消火性接着皮膜。
【請求項9】
前記溶媒が、4〜20重量%の2−ブトキシエタノール、2〜10重量%のメチルエチルケトンおよび3〜10重量%のトルエンからなり;
前記ポリウレタン溶液が、3〜6重量%のメチルエチルケトン、20〜30重量%のトルエンおよび6〜20重量%のポリウレタンからなり;
前記難燃性顔料が、12〜20重量%のエチレンビステトラブロモフタルイミド、20〜25重量%のアルミナ三水和物および7〜10重量%の五酸化アンチモンからなり;そして
前記ブロック化イソシアネートは、1〜2重量%含まれる、
請求項8記載の消火性接着皮膜。
【請求項10】
前記製造溶液の前記成分が、以下の量:8.1重量%の2−ブトキシエタノール、3.6重量%のメチルエチルケトン、6.62重量%のトルエン、35.54重量%のポリウレタン溶液、14.45重量%のエチレンビステトラブロモフタルイミド、21.69重量%のアルミナ三水和物、8.7重量%の五酸化アンチモンおよび1.21重量%のブロック化イソシアネートならびに有効量の界面活性剤:で配合される請求項9記載の消火性接着皮膜。
【請求項11】
前記一次機能層および二次機能層の前記接着剤が感圧性アクリル系接着剤である請求項1記載の消火性接着皮膜。
【請求項12】
感圧性接着剤の二次機能層の上に二次剥離ライナーをさらに含む請求項11記載の消火性接着皮膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火性芯材に、特に、高濃度の難燃性顔料を含有する消火性芯材を有する皮膜に関する。本発明は、消火性接着皮膜が優れた接着性能および難燃特性を示すのを可能にする。
【背景技術】
【0002】
難燃剤を添加された接着皮膜は、当該技術分野で既知である。当該商品は、普通は、ロール成形型の固体であり、別の製品、例えば装飾壁面外被に接着されて、装飾壁面コーティングおよび壁面難燃剤を下塗りするよう意図される。ロール成形物は、層全体に均質に分散され、剥離層上に被覆される難燃剤を伴う接着剤の層を含有する。接着剤の層は、その最終使用のために、接着皮膜を最終生成物と接触させることにより、そして接着皮膜を最終生成物に接着して、剥離ライナーを除去することにより、別の生成物に、例えば装飾壁面外被の裏面に移される。いくつかの難燃性接着皮膜は感圧性接着剤を使用し、いくつかは熱活性化接着剤を使用するが、しかし他の型の接着剤も難燃剤とともに用いられる。
【0003】
これらの従来技術系では、難燃性顔料は、接着性樹脂に付加され、接着剤全体に均一に難燃性物質を分布するために配合される。化学的難燃剤は、火炎の広がりを遅くするか、または火炎の温度を下げるか、または火炎を完全に消す化学反応を開始することにより、物質の可燃性を低減する。多数の異なる型の化学的難燃剤が存在する。ポリマーとともに用いられる最も一般的な型のうちの1つは、臭素化難燃剤である。他の2つの一般的難燃剤は、アルミナ三水和物および五酸化アンチモンである。
【0004】
しかしながら、接着剤中に難燃剤を用いると、接着性能が低減する。一般的状況では、難燃性顔料が接着剤に付加されると、それに比例して接着特性は多少減少する。この理由のために、現存する難燃性接着皮膜は、典型的には16重量%以下の難燃性顔料を用いており、そしていくつかの市販の難燃性接着皮膜は、接着性能を改良するためにはるかに少ない難燃剤を含む。
【0005】
航空宇宙産業では、機体内装の構築は要求された可燃性標準を満たすための有効難燃剤の使用を要する連邦国家の航空規則を満たさなければならない。オハイオ州立大学は、FAAにより用いられる発熱速度および総発熱量を決定するための標準化試験を開発した。60kW/mより下の発熱速度は、60kW/mより低い発熱レベルを保持することが火炎を拡大しないと決定されている限りにおいて、FAA標準を満たす。120秒での総発熱量に関するFAA規定は、100kW分/mより低い。難燃性接着皮膜は、材料の組合せがFAA標準を満たすよう、装飾性ポリフッ化ビニル壁面コーティングの裏面に、ならびに飛行機内の客室の内装を構成する合成壁に接着される。
【0006】
本発明の目的は、装飾性ポリフッ化ビニル壁面コーティングとともに用いられると、FAA標準を凌駕する、そしてより少ない材料および重量の使用をも可能にする消火性接着皮膜を提供することである。上記のように、現存の難燃性接着皮膜に関しては、難燃剤は総重量の約16%までを含む。50μ厚を有する難燃性接着皮膜は約67.7g/mの重量であり、したがって、約10.85g/mの難燃度を生じる。航空機の重量を低減し、燃料コストを節約するために、できれば、皮膜重量を低減するのが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一態様において、本発明は、積層接着皮膜中の消火性芯材に関する。消火性芯材は、好ましくは、高濃度の難燃性物質を添加された一層の結合樹脂を含む。消火性芯材は、接着剤の2つの機能性層間に、例えば感圧性接着剤の2つの層の間に存在する。接着剤の層は難燃性添加物を含む必要はなく、したがって、これらの層の接着特性は弱められない。使用に際して、消火性接着皮膜は、装飾壁面コーティングのような材料に適用されて、装飾壁面コーティングを難燃性にさせる。本発明は、接着剤全体に難燃剤を配合する従来技術の系と比較して、高レベルの難燃剤の使用を可能にする。皮膜芯材中の難燃性顔料の全部またはほとんどを濃縮すると、顔料対配合物比をより高くできる。さらにまた、外部コーティングから難燃剤の全部または一部を除去すると、それに比例して外部コーティングの性能が改善される。
【0008】
消火性芯材は、物理的に妥協することなく高濃度の難燃性顔料を保持し得る結合樹脂を含む。本発明を実行するために意図される樹脂としては、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリアミド等が挙げられる。溶媒和化されるかまたは押出成形され得る任意の樹脂は、それが、高濃度の難燃性顔料を添加される場合、その物理的完全性も保持し、そして機能性層、例えば接着性層と接着し得る限り、候補樹脂である。
【0009】
本発明は、種々の型の難燃剤の使用を意図するが、例示的実施形態では、難燃性顔料はエチレンビステトラブロモフタルイミド、アルミナ三水和物および五酸化アンチモンの混合物を包含する。例示的実施形態では、難燃性顔料は、好ましくは、溶媒、架橋剤、界面活性剤も含めて、ポリウレタン溶液中で物理的に混合される。
【0010】
一実施形態では、本発明は、積層消火性感圧性接着皮膜の製造方法において具体化される。一次溶媒ベースの接着層は、例えば皮膜ラインコーティングヘッドを用いて、液体形態でシリコーン被覆剥離ライナーに適用される。溶媒除去は、当該技術分野で既知であるように、液体接着剤被覆剥離ライナーを、適温で制御気流で、一連の加熱帯域に通すことにより、成し遂げられる。当該工程におけるこのステップは、被覆剥離ライナー上の固体の感圧性接着剤の均一層を生じる。次に、消火性樹脂溶液は、例えばこれもまた皮膜ラインコーティングヘッドを用いて、適用される。再度、溶媒除去は、被覆剥離ライナーを、適切な温度および速度で、制御気流で、一連の加熱帯域に通すことにより成し遂げられる。次いで、二次感圧性接着層が、剥離ライナー上の他の層の上に被覆され、そして再度、被覆剥離ライナーを、適切な温度および速度で、制御気流で一連の加熱帯域に通すことにより、溶媒が除去される。接着剤の外層、ならびに剥離ライナー上の高濃度の難燃剤を添加された内部芯材を有する三層構築物は、貯蔵およびその最終使用の場所への輸送のために一巻きに巻かれる。二次剥離ライナーは、所望により、巻き取る前に接着剤を被覆するために用いられ得る。
【0011】
この構築物に関しては、接着皮膜は、難燃性顔料が接着剤全体に混合される慣用的従来技術の接着皮膜の1.5倍の量の難燃剤を単位面積当たりで含有し得る。さらに、接着性能は、慣用的消火性接着皮膜と比較して、剥がし粘着力の点で有意に改良される。
【0012】
接着層は難燃性顔料を保持しないのが普通は好ましいが、いくつかの用途においては、接着層の一方または両方に多少の難燃性顔料を添加するのが望ましいことがある。さらに、本発明のある態様の広範な実行において、機能性層は、感圧性接着剤である必要はないし、または全く接着性でなくてもよいが、しかし他の機能性コーティング、例えば下塗り剤、塗料、織物等であり得る。
【0013】
本発明のその他の目的および特徴は、図面ならびにそれについての以下の説明を検討することにより当業者に明らかになり得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の例示的実施形態に従って製造された消火性芯材を伴う接着皮膜の横断面である。
図2】慣用的難燃性皮膜接着剤と比較した場合の、本発明に従って製造された消火性芯材を伴う皮膜接着剤の一例に関する燃焼熱量計データを示すプロットである。
図3A】本発明に従って製造された消火性芯材を伴う皮膜接着剤の検体に関する発熱データをプロットしている。
図3B】本発明に従って製造された消火性芯材を伴う皮膜接着剤の検体に関する発熱データをプロットしている。
図3C】本発明に従って製造された消火性芯材を伴う皮膜接着剤の検体に関する発熱データをプロットしている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
詳細な説明
【0016】
本発明に特に有用な一用途は、前記のように、航空機の内装に用いられる装飾壁面コーティングのための難燃性接着取付皮膜と関連して存在する。本出願の譲受人は、現在、化粧板のための取付皮膜として航空宇宙産業で用いるために主に意図された難燃性熱可塑性皮膜接着剤を販売している。前記のように、難燃性皮膜接着剤は、難燃性顔料を液体接着剤中に配合し、液体接着剤を剥離紙上に皮膜を成形し、これを次に、完成ロール成形物に転換することにより製造される。航空宇宙産業において、難燃性接着皮膜は、普通は、装飾壁面コーティング(ポリフッ化ビニル皮膜製)ならびにその下にある機体表面(粉砕芯材パネル製)に接着される。
【0017】
難燃性接着皮膜は、160℃〜169℃で熱活性化され、その温度で、装飾層の裏側面に留め付けられ得る。接着剤を裏に付けた装飾層は、次に、同一温度で、1.4Kg/cm〜3.52Kg/cmで粉砕芯材パネルに真空成形される。難燃性熱可塑性皮膜接着剤の使用は、FAA標準を遵守する装飾性コーティング、接着皮膜および粉砕芯材パネルの組合せを生じる。譲渡人により販売されるこの難燃性接着皮膜では、難燃性顔料は、約16重量%の添加で接着剤全体に均質に混合される。より多くの難燃性顔料が接着剤に付加される場合、接着性能は許容不可能なレベルに減少する。難燃性皮膜接着剤の製造は、シリコーン被覆剥離ライナーまたは他の支持体への接着剤溶液(難燃性顔料付加を伴う)の適用と、その後の徐々の硬化を包含する。難燃性顔料は、剥離ライナーへの適用前に、接着剤溶液と混合される。典型的には、当該生成物は、2.5cm〜152cmの幅を有するロール成形物で末端消費者に提供される。乾燥皮膜厚は、典型的には、主に所定用途のために必要な難燃剤の量によって、40μ〜250μの範囲である。
【0018】
図1は、本発明に従って製造される消火性皮膜接着剤10に関する横断面を示す。皮膜接着剤10は、接着剤の一次機能性層12、および接着剤の二次機能性層14、ならびに難燃性芯材16を包含する。ほとんどの用途において、機能性層12および14の材料は同一であるが、しかし本発明の態様は、異なる接着性材料から作られている層12および14を用いて実行され得る。接着層12、14の好ましい厚みは、普通は、25〜250μの範囲である;しかしながら、本発明はこれらの厚みに限定されない。消火性芯材16は所望の難燃特性によって任意の実厚を有し得るが、しかしほとんどの場合、厚みは25〜250μの範囲である。本発明に従って、難燃性芯材16は、高濃度の難燃性顔料、例えば少なくとも約50重量%の難燃性顔料を添加された結合樹脂を含む。好ましくは、消火性芯材16は、10〜15重量%の樹脂および50〜90重量%の難燃剤を含む。機能性接着層12および14は、好ましくは難燃性材料を含有しない;しかしながら、機能性接着層12および14は、所望により低レベルの難燃性材料を含有し得る。層化消火性皮膜10は、普通は、剥離ライナー、例えばシリコーン被覆剥離ライナー18上に製造され、供給される。
【0019】
消火性芯材は、本発明を有効に実行するために、高濃度の難燃性顔料を保持することができなければならない。本発明は、約50重量%という低い難燃性顔料濃度を有する芯材16を用いて実行され得るが、しかし樹脂は少なくとも70重量%の難燃性顔料を保持し得るのが好ましい。以下の樹脂は、少なくとも70%の難燃性顔料を保持し得ることが判明しており、さらに、使用中である場合、処理加工および構造的健全性に必要な十分な引張強さおよび皮膜特性を保持する:ポリウレタン、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニルおよびポリアミド。溶媒和化されるかまたは押出成形され得る他の樹脂は、同様に芯材樹脂のための理にかなった候補である。ある樹脂は、難燃剤添加に関して他の樹脂より感受性である、ということが判明している。本発明による試験は、ポリウレタン樹脂が他の列挙された樹脂より多くの難燃性顔料を保持し、さらに皮膜完全性および引張強さを保持し得る、ということを示している。最大難燃剤添加で種々の樹脂に関して実行された応力試験は、ポリアミドおよびコポリエステル樹脂と比較して、ポリウレタンがより多くの圧力に耐え得る、ということを示した。さらに、硬化(熱硬化)ポリウレタン樹脂マトリックスは非硬化ポリウレタン樹脂マトリックスより強力である、ということを試験は示している。以下で考察される本発明の例示的実施形態では、消火性芯材16は、少量の添加物、例えば架橋剤および界面活性剤と一緒に全体に亘って混合される高濃度の難燃性顔料を含有する熱硬化ポリウレタンを含む。
【0020】
難燃性顔料に関する粒子サイズは、適正な配合を促すために、かなり小さい(例えば75μ未満)。本発明は、種々の型の難燃剤を用いて実行され得るが、しかし化学的遅燃剤が選択される。化学的遅燃剤は、ポリマー分子中に化学的に挿入されるかまたはポリマー中に物理的に配合されて、一材料を通しての炎の拡大を抑制し、低減し、遅延し、または改質し得る物質である。いくつかのクラスの化学的遅燃剤が存在し、例としては、ハロゲン化炭化水素、例えば臭化難燃剤、無機遅燃剤、例えば酸化アンチモンおよびアルミナ三水和物、ならびにリン含有化合物が挙げられる。以下の実施例の節で詳述するように、好ましい難燃剤としては、臭化遅燃剤、五酸化アンチモンおよびアルミナ三水和物が挙げられる。臭化難燃剤は、燃焼熱の下で遊離基状態で臭素を放出する。臭素遊離基は、水素および酸素に対する大きな親和性を有し、したがって燃焼を弱める。五酸化アンチモンの主目的は、反応を冷却し、発熱を低下させることである。
【0021】
選択接着剤が消火性芯材16に良好に接着する限り、本発明を実行するために広範な種々の接着剤が用いられ得る。いくつかの場合、適正な接着を助長するために、下塗り剤を用いることが必要であり得る。他の場合、例えばシリコーン接着剤が用いられる場合、シリコーン接着剤はポリウレタンと良好に接着しないため、消火性芯材に関して異なる樹脂を用いること、例えばポリウレタン樹脂の代わりにシリコーン樹脂を用いることが必要であり得る。航空宇宙用途のための好ましい接着剤は、市販の感圧性エラストマー接着剤 Bostik LADH 7583である。本発明を実行するためのその他の特に望ましい接着剤としては、アクリル系感圧性接着剤、コポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド系熱可塑性および熱硬化性接着剤が挙げられる。
【0022】
以下の例示的実施形態において、接着層は、難燃剤を含有しない。これは、下層の消火性皮膜芯材中の難燃剤が有効になるために発熱反応を必要とするため、ほとんどの状況で有益であると考えられる。難燃剤が接着剤中に存在する場合、それは接着層の燃焼を遅らせる。接着層が純接着剤である場合、接着剤の燃焼は急速になりがちで、これが、消火性芯材16中の高濃度の難燃剤の反応を加速し、難燃剤が放出され、他の構成成分の燃焼を遅くするために利用可能である速度を加速する。他方で、本発明は、望ましい場合、接着層中に混合される難燃剤を用いて実行され得る。
【0023】
従来技術を上回る本発明の利点の1つは、本発明に従って製造される皮膜がより多くの難燃剤(1平方メートル当たり)を生じ得るし、さらにより良好な接着性能を提供する、という点である。例えば、各接着層が19μで、難燃剤を含有せず、そして消火性芯材層が12.7μで80重量%の難燃剤を含有する場合、収率は接着皮膜の難燃剤 17.6g/mであって、これは、従来技術における難燃剤の量(面積当たり)の約1.6倍である。さらにまた、接着層中に難燃剤が存在しないため、接着剤の引き剥がし強度は弱められない。
実施例
【0024】
本発明の例示的一実施形態では、消火性接着皮膜10は、感圧性接着剤製の、特に約19μの乾燥皮膜厚を有する上記のBostik LADH 7583製の機能性接着層12および14を含む。接着層12、14は、この実施例では難燃剤を含有しない。約12.7μの乾燥皮膜厚を有する消火性皮膜芯材16は、接着皮膜層12、14の間に存在する。この例示的実施形態では、消火性芯材16のための均質化溶液を生成するために、以下の成分が剪断混合により配合される:
【表1】
【0025】
表1の第一列目は、例示的実施形態における各成分の量(重量%)を列挙している。第二列目は、本発明のこの実施形態を実行するのに有用であるよう意図された各成分の範囲を重量%で列挙している。しかしながら、難燃性顔料(エチレンビステトラブロモフタルイミド、アルミナ三水和物、五酸化アンチモン)対結合樹脂(ポリウレタン)の重量パーセンテージ比は、7:1を超えるべきでない。
【0026】
消火性接着皮膜10の層は、押出成形といったような他の技法により製造され得るが、例示的実施形態では、積層消火性皮膜10は、シリコーン被覆剥離ライナー18の基本ロール成形物上に接着溶液の一次層12を被覆し、次いで、168°F(75.5℃)の温度で、4,000cfm(113,267リットル/分)の流量で、当該ウェブを20フィート/分(6.1m/分)で温風に通して、接着層12から溶媒を除去することにより製造される。乾燥条件は、当該技術分野で既知であるように、特定接着剤の量によって、所望により変更され得る。次いで、表1に列挙された消火性芯材溶液は、被覆され、剥離ライナー18上の接着層12の上全面を乾燥される。次に、接着剤溶液14の上部層が被覆され、消火性芯材層16の上全面を乾燥されて、上部接着層14を形成する。乾燥皮膜は、例えば、幅60インチ(154cm)×長さ300ヤード(274.32m)のロール成形物で巻かれる。
【0027】
例示的実施形態では、ブロック化イソシアネートは、ポリウレタンのための架橋剤である。顧客が、消火性芯材を有する接着皮膜を装飾コーティングに積層する場合、それは、約160℃に皮膜を加熱する真空法を用いて実施する。この温度で、イソシアネートは活性化されて、ポリウレタンを架橋し、より高い分子量のウレタン構造を作って、これが順次、生成物をより堅くする。
【0028】
消火性芯材のためのポリウレタン溶液中の粘着性付与樹脂の使用は、皮膜形成のために必要というわけではない、ということが判明している。実際、粘着性付与樹脂を除去すると、高濃度の難燃剤を保持するポリウレタン樹脂の能力が増大する。86重量%またはそれよりわずかに高い難燃剤添加は、粘着性付与樹脂を有さないポリウレタン樹脂において達成可能であるということを、しかし約70重量%だけの添加は、粘着性付与溶液がポリウレタン配合物に付加される場合に達成可能である、ということを本発明人等による試験は見出している。
【0029】
選択される界面活性剤は、非反応性シリコーングリコールコポリマー界面活性剤のDow Corning 添加物#57であり、これは顔料分散を手助けすることが既知である。ポリウレタン樹脂が実質的に連続した合着マトリックスを形成するよう難燃剤粒子の完全コーティングを促すため、界面活性剤の使用は重要である。合着マトリックスを形成することは、消火性芯材16の必要な引張強さおよび構造的完全性を達成するために重要である。小平均粒子サイズを有する難燃剤を提供することも、強い連続ポリウレタンマトリックスの形成のために重要である、ということが判明している。50μの平均粒子サイズが適切であることが判明しているが、しかしポリウレタン樹脂における構造的性能の改善、そしておそらくはより高い難燃剤添加濃度は、さらに小さい粒子サイズで達成され得る。いずれにしても、表1における消火性芯材樹脂16は、芯材16中に86重量%の濃度の難燃剤を提供する。
【0030】
難燃剤添加を増大すると、FAA、FAR 25.853a.パート1、補遺Fにより必要とされる第62回垂直燃焼試験に関して、本発明は非常に良好に実施することができる。特に、燃焼の長さは従来技術と全く同じであるが、しかし燃焼時間は、5秒よりわずかにしたから、2秒よりわずかに下に実質的に低減される、ということを試験は示している。さらにまた、滴は生成されず、これは従来技術と同様である。
【0031】
図2は、従来技術の難燃性接着皮膜(20)を本発明の例示的実施形態10に従って製造される消火性芯材接着皮膜(22)と比較する微小規模燃焼熱量計データを示す。本発明は、約260ワット/gの値から約185ワット/gの値への最大レベルの放熱率を低減する、ということが図2から分かる。さらに、熱は、本発明を用いて、より高い温度で放出される。
【0032】
図3A、3B、3Cは、例示的実施形態に従って製造された3つの検体に関するオハイオ州発熱データを示す。各プロットにおいて、オハイオ州プロトコールにより適用される条件下での検体に関する発熱速度および総発熱量が、時間に関してプロットされている。すべての場合において、最大発熱速度(x軸)は、実質的に60kW/mというFAA標準より下である、ということが分かる。さらにまた、各検体に関して、120秒での総発熱量は、FAA標準である100kW分/mというレベルより実質的に低い、ということが分かる。
【0033】
消火性ポリウレタン樹脂は、多数の他の用途のために有用であり得る、と当業者は理解するであろう。例えば消火性樹脂の別の使用は、非接着性エンボス加工樹脂、例えばある種の壁面コーティングの三次元構造テクスチャに用いられるものとしてである。さらにまた、消火性ポリウレタン芯材が積層構造における一層として設置される、という必要はない。消火性ポリウレタン芯材は、接着皮膜内の押出レーンのような他の構造形態をとり得る。
【0034】
前記の説明において、ある種の用語は、簡潔、明快および理解のために用いられている。このような用語は記述目的のために用いられており、講義に解釈されるべきものと意図されているため、不要な限定は、従来技術の要件以外、それらから推論されるべきでない。本明細書中に記載される異なる形状、系および方法段階は、単独で、または他の形状、系および方法段階と組合せて用いられ得る。種々の等価物、代替物および修正は、添付の特許請求の範囲内で可能である、と予測されるべきである。
図1
図2
図3A
図3B
図3C