(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記選択された光学出力部以外の前記光学出力部における前記回折次数のうちの前記他の回折次数のうちの1つの半値全幅(FWHM)のスポットサイズは、前記選択された光学出力部における前記ルーティングされる回折次数のFWHMのスポットサイズの少なくとも2倍である請求項3に記載の装置。
前記波面の修正補償がない場合に、前記回折次数のうちの前記ルーティングされる回折次数が前記選択された光学出力部において焦点外れになるように構成され、前記キノフォームは、前記焦点外れを補償するレンズパワーを含む請求項1、2、3、または4に記載の装置。
前記光学出力部は、光ファイバーの光キャリアへの光ファイバーの入力部を備え、前記光ファイバーの入力部は、3D空間領域にわたって分配される請求項11または12に記載の装置。
前記SLMに対する前記ドライバは、ビーム選択データ入力部と、前記SLMに結合されたドライバ出力部と、前記キノフォームを前記SLM上に表示して、入力ビーム選択データに応答して1つまたは複数の前記光学出力部を選択するためにキノフォームデータを提供する、前記ビーム選択データ入力部と前記ドライバ出力部との間に結合された不揮発性メモリおよびデータプロセッサのうちの一方または両方とを備える請求項1から13のいずれか一項に記載の装置。
ROADMスイッチとして構成され、前記少なくとも1つの光学入力部および前記複数の光学出力部は光ファイバーを含み、前記SLMはLCOS(液晶オンシリコン)SLMである、請求項1から14のいずれか一項に記載の装置。
波長分割多重(WDM)光学スイッチとして構成され、前記SLMは、複数の前記キノフォームを、それぞれの波長について1つずつ表示し、前記SLM上の異なる空間領域は、異なる前記キノフォームを表示する請求項1から15のいずれか一項に記載の装置。
前記SLMとの間の前記光学経路は、第1の線集束素子および第2の線集束素子を備え、それぞれの前記線集束素子は、光を実質的に線焦点に集束させるように構成され、前記第1の線集束素子および前記第2の線集束素子の前記線焦点は、実質的に相互に直交する請求項16に記載の装置。
前記修正するステップは、前記光学出力部の焦点を外すステップを含み、前記キノフォームは、焦点外れを補償するようにレンズパワーを符号化するために使用される請求項20に記載の方法。
前記キノフォームは、波面の修正パターンを表示し、前記修正するステップは、前記波面の修正パターンに対する整合フィルターを形成するステップを含む請求項20または21に記載の方法。
異なる前記光学出力部に対して異なる前記整合フィルターを形成するステップと、1つまたは複数の対応する前記光学出力部を選択するときに前記異なる整合フィルターのうちの1つまたは複数を補償するために前記キノフォームを使用するステップとをさらに含む請求項22に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1a】本発明の一実施形態による、完全にアライメントされたシステムを示す光学ビームルーティング装置の概略図である。
【
図1b】本発明の一実施形態による、波面符号化を使用する焦点外れシステムを示す光学ビームルーティング装置の概略図である。
【
図1c】本発明の一実施形態による、波面符号化を使用する例示的な光学ビームルーティング装置を示す光学ビームルーティング装置の概略図である。
【
図2a】2つのSLMを使用する波長分割多重(WDM)光学スイッチの一例を示す図であり、システムは、直線的入力ファイバーアレイ/光学素子および逆多重化光学素子、空間スイッチとして機能する2つのSLMスイッチング平面および関係する光学素子、最大N個のまでの波長を再度組み合わせる多重化光学素子、ならびにスイッチからのデータを結合する直線的出力ファイバーアレイ/光学素子を備える。
【
図2b】空間的に分離されたブレーズド回折格子がSLM上に表示される、WDMスイッチの第2の一例を示す図である。
【
図2c】異なるスイッチングされた波長が異なるキノフォームを表示するSLM上の空間的に異なる領域によって回折される、本発明の一実施形態による波面符号化を使用するWDM光学スイッチを示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態による、焦点外しを使用するゼロ次フィルタリングを組み込んだ光学ビームルーティング装置を示す図である。
【
図4】可視光を使用して波面および符号化をテストするための実験システムを示す図である。
【
図5】測定データを0dBmの入力パワーに正規化した、位置4(-22.5μmの周期)に偏向するブレーズド回折格子に対するパワースペクトルを示すグラフである。
【
図6】ブレーズド回折格子(左側バー)および等価な波面符号化パターン(右側バー)に対するそれぞれのターゲット位置への回折効率を示すグラフである。
【
図7】12個すべてのブレーズド回折格子および波面符号化パターンに対してSLMが循環する位置12で得られた典型的な結果を例示する
図6の実験に対する測定された性能(信号およびクロストーク)を示すグラフである(左側バーはブレーズド回折格子であり、右側バーは波面符号化である)。
【
図8】ブレーズド回折格子および波面符号化パターンに対する12のターゲット位置のそれぞれにおける最大クロストークを示すグラフである(バーの塗りつぶし部分は波面符号化パターンに対応し、塗りつぶされていない部分はブレーズド回折格子パターンに対応している)。
【
図9a】デバイスの全体を覆うブレーズド回折格子(1組の真っ直ぐな水平線)を示すLCOS SLM上に表示される例示的なキノフォームパターンを示す図である。
【
図9b】500×500ピクセルの波面符号化パターン(1組の同心円のセグメントに類似する1組の円弧、
図9aの水平線はここでは湾曲している)を示すLCOS SLM上に表示される例示的なキノフォームパターンを示す図である。
【
図10】ターゲットファイバーは入力軸から35μm離れ、上側のプロットは
図1aの配置構成を示し、下側のプロットは
図1bに示されているタイプの波面符号化システムを示している、単一モードファイバーが回折次数m=0、±1、2、および3について+1の次数の焦点面(平面F
1または平面F
2)にそって平行移動するときの理論的結合効率変動を示すグラフである。
【
図11】出力ビーム位置に対するスイッチの結合効率の依存関係を示す、ファイバー平面における単一ビームの位置(ミクロン単位)による結合効率(%)の変動を示すグラフである。
【
図12】より高次の次数を強調するため10%の位相誤差の軸外レンズを表示する500×500ピクセルのSLMの+1の次数の焦点面における計算されたリプレイフィールドを示す図である(強度プロファイルは、10log
10(強度)としてプロットされる)。
【
図13】Lohmann type I非整数次フーリエ変換光学系の数理解析で使用される幾何学および変数を示す図である。
【
図14】等価な3レンズ光学的表現に基づくLohmann type I非整数次フーリエ変換光学系の数理解析で使用される幾何学および変数を示す図である。
【
図15a】キノフォームを表示するために使用されるデバイス上に入射する非平面波面を有する非整数次フーリエ変換システムの数理解析で使用される幾何学および弁数を示す図である。
【
図15b】キノフォームを表示するために使用されるデバイス上に入射する非平面波面を有する非整数次フーリエ変換システムの数理解析で使用される幾何学および弁数を示す図である。
【
図16a】それぞれ、完全なリプレイ(下側曲線)および10%の位相誤差(上側曲線)を有するブレーズド回折格子のリプレイフィールド、および対応する位相プロファイルを示すGerchberg-Saxton(GS)アルゴリズムを使用して最適化された回折格子パターンを示すグラフである。
【
図16b】それぞれ、完全なリプレイ(下側曲線)および10%の位相誤差(上側曲線)を有するブレーズド回折格子のリプレイフィールド、および対応する位相プロファイルを示すGerchberg-Saxton(GS)アルゴリズムを使用して最適化された回折格子パターンを示すグラフである。
【
図17a】それぞれ、完全なリプレイ(下側曲線)および10%の位相誤差(上側曲線)を有するブレーズド回折格子のリプレイフィールド、および対応する位相プロファイルを示す修正GSアルゴリズムを使用して最適化された波面符号化システムに対する回折格子キノフォームパターンを示すグラフである。
【
図17b】それぞれ、完全なリプレイ(下側曲線)および10%の位相誤差(上側曲線)を有するブレーズド回折格子のリプレイフィールド、および対応する位相プロファイルを示す修正GSアルゴリズムを使用して最適化された波面符号化システムに対する回折格子キノフォームパターンを示すグラフである。
【
図18a】それぞれフーリエ平面における強度(これらのいずれかの側への2つのピークおよびクロストークに留意する)および対応するキノフォーム位相パターン(2つの重ね合わされたパターン)を示す、回折格子を使用するマルチキャストを示すグラフである。
【
図18b】それぞれフーリエ平面における強度(これらのいずれかの側への2つのピークおよびクロストークに留意する)および対応するキノフォーム位相パターン(2つの重ね合わされたパターン)を示す、回折格子を使用するマルチキャストを示すグラフである。
【
図19a】それぞれ
図16aに類似のパターン、および対応するキノフォーム位相パターンを示す、FrFFT[E
H(x),a]を使用して計算された、リプレイ平面における強度分布を示す、「ピンポンアルゴリズム」を使用する波面符号化によるマルチキャストを示すグラフである(2つのピークに対応する2つの異なる斜面勾配と、符号化されたレンズパワーに対応する湾曲の組み合わせを示す)。
【
図19b】それぞれ
図16aに類似のパターン、および対応するキノフォーム位相パターンを示す、FrFFT[E
H(x),a]を使用して計算された、リプレイ平面における強度分布を示す、「ピンポンアルゴリズム」を使用する波面符号化によるマルチキャストを示すグラフである(2つのピークに対応する2つの異なる斜面勾配と、符号化されたレンズパワーに対応する湾曲の組合せを示す)。
【
図20a】信号ビームを平面ではなく立体の中に偏向し、中間のレンズレットアレイを使用してファイバーアレイの対称性を破り、それぞれのレンズファセットはマルチキャストの際にクロストークを低減するため異なる焦点距離を有する、本発明の一実施形態によりマルチキャストを実装するための
図1cの光学ビームルーティング装置の一修正形態を示す図である。
【
図20b】信号ビームを平面ではなく立体の中に偏向し、中間のレンズレットアレイを使用してファイバーアレイの対称性を破り、それぞれのレンズファセットはマルチキャストの際にクロストークを低減するため異なる焦点距離を有する、本発明の一実施形態によりマルチキャストを実装するための
図1cの光学ビームルーティング装置の一修正形態を示す図である。
【
図21a】信号ビームを立体の中に偏向する、本発明の一実施形態によりマルチキャストを実装するための
図1cの光学ビームルーティング装置の一修正形態を示す図である。
【
図21b】信号ビームを立体の中に偏向する、本発明の一実施形態によりマルチキャストを実装するための
図1cの光学ビームルーティング装置の一修正形態を示す図である。
【
図22a】光をファイバーアレイ内に結合する、平面波面がレンズレットアレイの前に集束する対称システムを示す「錠と鍵」または整合フィルターでフィルタリングされた波面符号化を示す図である。
【
図22b】波面に収差を意図的に引き起こし、したがって+1の次数がその対応するファイバー内に結合し、このレンズレットのみが収差を補正する(他の次数は焦点外れとなる)、システムの一実施形態を示す「錠と鍵」または整合フィルターでフィルタリングされた波面符号化を示す図であり、したがって、本発明によるマルチキャスト光学ビームルーティング装置の一実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
位相変調空間光変調器を使用して通信信号をルーティングするときの主要な目標は、スイッチが挿入損失仕様を満たすこと、およびリプレイ平面内の他のファイバーに結合されたパワーが所望のクロストーク仕様を満たすことを確実にする十分な効率で、信号ビーム(+1の次数)を1つまたは複数の入力ファイバーから出力ファイバー平面内の特定の位置に偏向することである。ここで、クロストークを、1つまたは複数の他のファイバー位置に意図的でなく結合される意図されたファイバー位置に偏向したい光として定義する。
【0033】
波面誤差をシステム内に意図的に導入し、この誤差を、最適化されたキノフォームをSLM上に表示し、それにより、ファイバー内に結合される光の量を最大化することによって補正する技術について説明する。ホログラムの対称性条件により、+1の次数に対してこの収差を補正する場合、他のすべての次数はさらに収差を含む。その結果、スイッチ内のクロストークを低減することができる。
【0034】
空間可変および空間不変のスイッチング方式
LCOS技術に基づく光学スイッチは、空間不変光学的構成に基づく光学系を使用することができ、そこでは、入力アレイおよび出力アレイは共役フーリエ面、または平面の間で微小ビームが偏向される空間可変サブホログラムの2つの平面にあり、サブホログラムは回折格子パターンを表示する。
【0035】
第1の場合について説明するために、
図1aに示されているような、入力/出力ファイバーアレイ102、レンズなどの集束素子104、および2f(または4f)システム内に配置構成されるLCOS SLM106に基づくLCOSスイッチ10について考察する。ファイバーから放射される光学ビームは、集束素子によってコリメートされ、周期Tの回折格子を表示する平面状(およびこの例では、反射型)SLMを照射し、これにより、sin(θ)=λ/Tとなる角度θに入射平行ビームを偏向する。レンズを通って戻る光回折行程は、ファイバー平面Q
1に集束し、F
1は光軸からの距離d=f×tan(θ)である(近軸光学理論が有効であると仮定する)。このことは、入力ファイバー平面または出力ファイバー平面の前のレンズレットアレイなどの後続の集束光学素子の追加、または円柱レンズなどのアナモルフィック光学素子の使用を排除しないことに留意されたい。アナモルフィック光学素子が使用される場合、1つの平面でしか偏向が生じず、この平面は波面が平面状である場合のものである。しかし、この平面内では、システムは、それでも空間不変である。回転対称集束素子および/またはアナモルフィック素子に基づくシステムの両方の場合において、LCOS位相パターンは、それでも本明細書で説明されているキノフォーム設計方法を使用して最適化されうる。
【0036】
一連の空間不変光学系から構成されるシステムは、回折格子、体積ホログラム、または薄膜ベースのフィルターなどの分散素子がビームの逆多重化および多重化を行うために使用されるWDM(波長分割多重化)システム、ならびに屈折光学素子と反対に反射体を使用するシステムにも使用することができる。
【0037】
そのため、第2のタイプのLCOSベースのスイッチ200では、光学系は、
図2に示されているようなサブホログラム206、210の2つの平面を備える。ファイバーアレイ202から入射した光信号は、ある種の事前定義されたルーティングパターンに従って個別の微小ビームとして進行する。
図2において、波長の異なるビームを、R、G、B、およびP(赤、緑、青、および紫を示す)のラベルを付けた異なる「色」で表す。入射WDMビームは、逆多重化光学素子204によって逆多重化され、1組のサブホログラムを、空間スイッチ光学素子208を介してSLM2 210上に偏向するSLM1 206上に照射する。次いで、SLM2は、それぞれのビームが多重化光学素子212によって多重化され、出力ファイバーアレイ214内に効率的に結合されうるように光を導く。入力段および出力段は、空間不変であるか、または空間可変のいずれかである。この設計では、すべての可能な入力波長/位置は、それ自体のサブホログラムを有し、中心の相互接続段は空間可変であり、任意の相互接続パターンを実装することができる。
【0038】
波面符号化の詳細
空間的に非周期的な位相パターンを表示する、キノフォームのアプローチを使用することで、2D平面ではなく3D立体への偏向が可能になり、諸実施形態では、これを波面符号化に使用する。このアプローチでは、光学系への焦点外れなどの波面誤差の意図的な導入を利用して、出力ポートに結合されるクロストークパワーの量を低減する。この収差を補正するために、動的ホログラム上に表示されるパターンは、所望の出力ポートへの+1の回折次数の最適な結合が確実に行われるように調節され、その結果、ノイズ次数の焦点外れが生じる。
【0039】
図1aおよび
図1bは、焦点外れに基づく波面符号化の考え方を示している。
図1aの2fの光学配置構成は、この例では、単一の入力ファイバー102aおよび複数の出力ファイバー102bを備える入力/出力ファイバーアレイ102を備える。アレイ102は、平面F
1に位置決めされ、装置は、反射型空間光変調器106、およびフーリエ変換レンズ104(すでに説明されているような)も備える。中心のファイバー102aを介してシステム内に入り始める、入力信号はコリメートされ、次いで、SLM106上に入射し、そこで量子化された位相のみのブレーズド回折格子が表示される。入射ビームは、多数の次数に回折され、それぞれにおけるパワーP
mは平面Q
1に集束する位相パターンの正確な性質に依存する。このシステムの対称性により、平面Q
1およびF
1は一致し、集束ビームは同じスポットプロファイルを有するが、ピーク強度は異なる。これは、クロストークをもたらす可能性があり、+1の次数を出力ファイバーの1つに導く場合、他の次数で残っている光は、他のファイバーの1つまたは複数の中に結合しうる。この問題に対処するために、ファイバーアレイを平面F
1から平面F
2まで距離sだけ意図的に戻し、レンズ機能を回折格子に加えることによって焦点外れ効果を補償する。これは、例えば、軸外レンズを表示することによって行うことができる。回折格子とレンズとを組み合わせると、結果として、回折次数が異なる平面に集束される。
【0040】
次に
図1bを参照すると、本発明の一実施形態による波面符号化を使用する焦点外れ光学ビームルーティング装置100の概略図が示されている。
図1aのものと似た素子は、類似の参照番号で示されている。
図1bでは、キノフォームはレンズパワーを組み込み、したがって、真っ直ぐではなく湾曲した「フリンジ」を有する。そのため、入力ファイバー102aからの入力ビーム110は反射型LCOS SLM106によって回折され、出力ビーム112を発する。SLMパターン(キノフォーム)を、出力ビーム112aの+1の次数が平面F
2に集束されるように最適化する場合、その次数に対して最適な結合効率のみが得られ、他のすべての次数(一例としてゼロ次の次数112bの破線を参照)は、P
2に関してもはや同じ平面内にない、新しい表面Q
2上に集束され、すなわち、
図1bでは平面Q
2は傾斜していることに留意されたい。ゼロ次の次数は、例えば、アレイ102の平面から離れる方向に変位された、位置114に焦点を有する。(当業者であれば、
図1bの配置構成を使用することは本質的でないことを理解するであろう。ただし、SLMは、レンズ104の背後に1焦点距離だけ離れており、例えば、レンズ104はSLMに付着されていることも可能である。)
【0041】
幾何光学を使用することで、m次の焦点外れd(m)は、
【0043】
で与えられ、ただし、sは、焦点からの出力の変位であり、fは、フーリエ変換レンズの焦点距離であり、f
Hは、ホログラム(キノフォーム)上のレンズの焦点距離である。m=+1の次数がsの与えられた焦点外れの値に対して出力ファイバー平面に集束されるという条件は、
【0046】
ファイバー平面の+1のビームの位置p
Bは、軸外れレンズオフセットp
Lの関数として
【0049】
図1cは、本発明による、波面符号化を使用する光学ビームルーティング装置150の単純だが実用的な実施形態を示している。ここでもまた、
図1bのものと似た素子は、類似の参照番号で示されている。
図1cの装置は、1つまたは複数の入力ビームの操縦先となる1つ(または複数)の出力部を選択するための出力部選択データを受け取る選択入力部162を有するデータプロセッサ160を備える。データプロセッサ160は、選択されたキノフォームデータでSLM106を駆動するドライブ出力部164、およびi)出力ビームを選択された出力部にルーティングするため、およびii)選択された出力部に対して波面修正補正を施すために表示用のキノフォームを格納する不揮発性メモリ166も備える。
【0050】
次に
図2cを参照すると、これは、WDMスイッチング構造に施される、本発明で説明している波面符号化技術の一実施形態を示している。
図2cの動作を説明するため、まず最初に
図2bを考察するが、これは1つの入力ファイバーから多数の出力ファイバーに光をルーティングするため独立した空間的に分離されている周期的ブレーズド回折格子がSLM上に表示されるWDMスイッチ220を示している。
【0051】
このシステムは、直線単一モード入力/出力ファイバーリボンアレイ222、実質的に同一の焦点距離のファイバーアレイおよびレンズレットと同じピッチを有するレンズレットアレイ228、焦点距離f
1のコリメーティングレンズ230、WDM波長を角度に関して分散する静的透過型回折格子(マルチプレクサ/デマルチプレクサ)232、焦点距離(f
1)/2の円柱レンズ234、および反射型空間光変調器236を備える。
【0052】
図2bにおいて、それぞれの波長について、それ自体の部分回折格子238がSLM236上に表示される。これは、本質的に、フーリエ変換ベースの相互接続であり、入力/出力平面は、レンズの前焦点面に置かれ、SLMは後焦点面に置かれる。入力データ224は、出力部226にルーティングされ、入力データの異なる波長成分は、異なる選択された出力部にルーティングされうる。
【0053】
光は、中心のファイバーを介して左側から入り、対応するレンズレットが、入力モードフィールド半径をスイッチ入力平面P
1において5.2μmから50μmのビームウェストに変換する。このモード変換を行うのは、スイッチに入るビームが、SLMビーム操縦能力、静的逆多重化回折格子の制限された分散角度、および効率的な回折を行うのに十分な数のSLMピクセルをカバーする要件と整合する発散を有することを確実にするためである。入力ビームは、コリメーティングレンズによってコリメートされ、静的回折格子によって、角偏向を直ちに得られるSLM上の楕円ビームのアレイ内に円柱レンズによって集束される波長の線形拡散に逆多重化される。構成される一配置構成では、ビームは、y方向にピクセルを400個、x方向にピクセルを5個覆う。偏向は、yz平面内にある。次いでビームはそのステップを引き返し、回折格子によって多重化され、SLMで達成した角度変位が、レンズレットアレイにおける位置変位に変換される。次いで、光は、それぞれのファイバーの前のレンズレットによって下方に集束され、結合効率を最大化する。したがって、個別の波長は、最初の特許で説明されている技術を使用して、必要に応じてブレーズド回折格子を表示する(1つのファイバーにルーティングする)ことによって、またはホログラムによって、1つまたは複数のファイバーに独立してルーティングされる。
【0054】
好ましくは、確実にそれぞれのファイバー内に発射された光がそのファイバーの法線方向となるようにするために、およびSLM平面上に集束される波長がそれぞれの波長についてSLMの法線方向となるようにするために、光学素子が二重にテレセントリックになるようにシステムを配置構成する。このために、平面P
1からコリメーティングレンズまでの距離=f
1、コリメーティングレンズからSLM平面までの距離=f
1、コリメーティングレンズから円柱レンズまでの距離=(f
1)/2、したがって円柱レンズからSLMまでの距離=(f
1)/2である必要がある。
【0055】
円柱レンズは、それぞれの波長をx方向のビームウェストに集束し、その一方で光はy方向にコリメートされたままである。したがって、
図2bのシステムは、回折次数がすべて平面に集束されるときに
図1aに示されているシステムと似たクロストーク特性を有する。
【0056】
次に
図2cを参照すると、これは、収差が第2の円柱レンズによって導入される、本発明の一実施形態による波面符号化を使用するWDMスイッチ250の一例を示す。
【0057】
クロストークを低減するために、光の意図的な焦点外れをzy平面内に、
図2cに示されているように元の円柱レンズに直交するように整列された焦点距離f
2の第2の円柱レンズ252を置くことによって導入する。これは、xz平面内の光の集束には影響を及ぼさないが、第2の円柱レンズの厚さを補償するためにSLMの位置を局所的z方向にシフトする(第2の円柱レンズ252は第1の円柱レンズ234の前に置くこともできることに留意されたい)。しかし、yz平面内の光は、もはやコリメートされず、収束する。ブレーズド回折格子を表示したとすると、ファイバー平面に収束される光は、非点収差を有し、もはや出力ファイバー内に効率的に結合することはない。しかし、非周期的キノフォームを表示するのであれば、この場合、正しい焦点距離の軸外円柱レンズとして、ターゲットの次数は、もはや、非点収差を有せず、したがって、ターゲットのファイバー内に効率的に結合する。しかし、軸外円柱レンズの他の回折次数は、さらに収差を含み、結合は非効率的である。そこで、円柱レンズを加えて入力光に収差を入れ、補償されたキノフォームを表示することによって、スイッチ内のクロストークを低減することができる。それぞれの波長は、それ自体の個別の部分キノフォームを有する(およびこれらは、本発明者らの同時係属中の英国特許出願第1102715.8号で説明されている技術を使用して最適な性能となるように最適化されうる)。
【0058】
図3は、
図1bのものと似た、ただし空間フィルター182を組み込んだ光学ビームルーティング装置180を例示している。これは、ゼロ次の焦点114の位置に光ブロックを構成してゼロ次を減衰する。当業者であれば、類似の空間フィルタリングを本発明の他の実施形態に組み込むことができることを理解するであろう。それに加えて、当業者であれば、このアプローチを使用することで、相互接続パターンの変更時に生じる一時的クロストークを低減することができることを理解するであろう。位相格子が周期T
1から周期T
2に再構成される場合、LCOS SLM上に表示される回折格子が変更されたパターンの周期性により変更されるときに光パワーがすべての出力位置に回折されうる。これは、ステップ毎の再構成を使用して軽減することが可能であるが(位相パターンはクロストークが最小になるように有限回数のステップで変更される)、これは全体的な再構成時間を増やすことになる。しかし、一時的クロストークは、波面符号化アプローチを使用すると軽減されうる。パターンは変化しつつあるが、パターンはスイッチングされるので対称性の欠如により出力ファイバーのところに光パワーの局在化はない。
【0059】
波面符号化の実験検証
図4は、波面符号化の概念をテストするために使用された実験システム400を示している。ファイバー結合674nmダイオードレーザー404からの平行ビーム402は、ビームスプリッタ408、およびレンズL
2(f=100mm)およびレンズL
3(f=150mm)を備える4fリレーシステムを介して反射型ネマチックLCOS SLM406上に入射した。これら2つのレンズは、本明細書で説明されている技術にとって必要なものではないが、テスト目的に使用され、ビームがSLM上に入射する位置を制御することが可能であった(レンズの同時平行移動によりデバイス上をビームでスキャンした)。レンズL
2およびレンズL
3により、中間平面410でSLM平面を撮像し、これらは、縮小光学素子を備える(回折光の角度発散を増大させる)。
【0060】
SLMの入射したビームは、2.4mmのガウスビーム半径(1/e
2の強度)を有していた。入射光は、SLM上に表示された位相パターンによって回折され、この回折光の一部が、ビームスプリッタによって反射され、L
4(f=200mm)によってリプレイ平面に集束され、そこで、一度に1つの回折次数を通すために寸法120μm×155μmの矩形開口を使用し、また大面積の光検出器を使用して、結果として得られるパワーを測定した。SLMは、15μm×15μmのピクセルサイズを有し、デッドスペースは0.5μmであった。これらのパターンは、0から2πまでの範囲内の25個の離散位相レベルを使用して500×500のピクセルにわたって表示された。
【0061】
最初に、リプレイ平面F
1上の12個のターゲット位置のうちの1つに+1の次数を偏向した1組のブレーズド回折格子が画成された。理論的、および測定された、ビーム半径はそれぞれ26.8μmおよび31μmであった。これらのターゲット位置は、光軸から±200、±400、±600、±800、±1000、および±1200μmのところに配置された。ブレーズド回折格子に対して、偏向先位置δと周期Tとの関係は、(波長λに関して)
【0064】
ターゲットの数と物理的位置との間の関係をTable 1(表1)に示す。この関係では、リレーレンズL
2およびリレーレンズL
3の効果を考慮しており、これらは中間のSLM平面410にSLM位相パターンの縮小像を形成する。
【0066】
これらの非周期的回折格子を特徴付けるために、SLMを循環させて+1の次数を12個すべてのターゲット位置に偏向させてそれぞれのテスト位置におけるパワーを測定し、結果として12×12のパワー行列を形成した。
図5は、そのような非周期的ブレーズド回折格子(周期=22.5ピクセル)に対する典型的なパワースペクトルを示している。これからわかるように、ターゲットの+1の次数以外の次数の著しい光がまだある。すでに述べているように、高いクロストーク値は、非理想的位相パターンを生じる位相量子化誤差、時間ゆらぎ、およびピクセルエッジ効果などの効果による。
【0067】
空間的に非周期的な位相パターンに基づく1組の波面符号化ホログラムも計算し、+1の次数を平面F
2内の同じ横断位置に偏向させた。このテストのため、パターンは、焦点距離f
H=1.0メートルの軸外レンズとして単純に定義され、距離p
Lでオフセットされた。この結果、+1の次数に対するリプレイ平面は、距離s=90mmだけL
4の方へシフトされた。
【0068】
図4では、レンズL
iは、焦点距離L
iを有する。再び前の式を参照すると、
図4の配置構成において、L
4は、フーリエ変換レンズの焦点距離fに対応することがわかる。以下の式において、ホログラム平面内の軸外レンズのオフセット(変位)は、y
Hで表され、前の項p
Lに対応する。中間のSLM像面410において、対応する変位はy
H2で表され、ホログラムの実効焦点距離f
Hは、縮小後に、f
H2となる。その場合、m次の焦点外れd(m)および+1の次数の横断位置p
Bに対する幾何光学の設計方程式は、
【0071】
y
H2およびf
H2の項は、
図4に示されている中間のSLM平面における縮小軸外レンズの実効焦点距離およびレンズオフセットを表し、元の軸外レンズ焦点距離f
Hおよびオフセットy
H(p
L)に
【0076】
したがって、リレーシステムレンズL
2およびL
3を考慮した場合、元のSLMキノフォームパターンの縮小は、焦点外れを増大する。テスト開口をこの新しい平面に移動して、測定を繰り返した。理論的(ガウスビームモデルを使用して計算される)ビーム半径および測定ビーム半径は、それぞれ、27.8μmおよび39.5μmである。
【0077】
図6は、ブレーズド回折格子または波面符号化パターンのいずれかを使用して12個のターゲット位置に偏向されたときに+1の次数で回折されるパワーの変動を示している。これからわかるように、回折効率に著しい変化はなく、ブレーズド回折格子の回折効率および波面符号化ホログラムの回折効率の測定値はそれぞれ86.5±4.0%および88.4±2.8%であった。
図7は、サンプル偏向位置(位置12)に対するクロストーク行列を示している。これらの場合の1つを除くすべてにおいて波面符号化システムを使用する場合にクロストークパワー(SLMが光を別の位置に偏向するように構成されている場合に位置12に意図的でなく偏向される光)の著しい抑制がある。ここで、最悪のブレーズド回折格子の性能と波面符号化システムの性能との間の差として定義される、クロストーク抑制は、12.6dB(正確な値)を大幅に上回ることが観察される。
【0078】
図8は、ブレーズド回折格子パターンおよび等価な波面符号化パターンの両方に対するそれぞれのテスト位置における最大クロストークを示しており、これは焦点外れが施されるときにクロストークが常に抑制されることを意味している。実験的には、波面符号化システムは、等価なブレーズド回折格子パターンに比べて12.6dB低い最大クロストークを有する。しかし、スポットサイズは、27.3%だけ高いものとして測定されたが、それは、軸外レンズのより高い空間周波数を表示するのが困難であり、また出力平面におけるさまざまな次数の間に干渉があるからである。
【0079】
ファイバーベースのスイッチにおける波面符号化の適用
ファイバーの用途に対するこの技術の潜在的可能性を実証するために、
図1に示されている設計に基づきモデルを構成した。これは、1550nmにおける5.2μmのガウスモード半径、25mmの焦点距離のレンズ、および位相のみのパターンが表示される反射型SLMを有する単一モードファイバーに基づくものであった。これらのパターン、1組のブレーズド回折格子、および焦点距離f
H=-1.0メートルの1組の空間的に非周期的である軸外回折レンズは、出力ポート分離距離35μmに対して最適化され、8個の出力ポートが入力部の周りに対称的に配置構成されている。これにより、導波路コンポーネントを使用してファイバーリボンの250μmのピッチを35μmに変換することが可能になった。したがって、波面符号化システムの場合、0.31mmの焦点外れsが、(1)〜(3)の設計方程式に基づき使用される。光のガウスビーム伝搬特性を考慮するためわずかな修正を加えることができる。
【0080】
ガウスビームの計算を使用して
図1(b)のシステムの解析することができるが、ただし、η
mtは、t次のファイバーまたは導波路へのm次の(理論的)結合効率である。η
mtが、焦点外れにどのように依存しているかを示すために、レイトレーシングパッケージZemaxを使用してモードオーバーラップ積分解析を実行し、プローブファイバーが出力平面上に平行移動されるときにプローブファイバー内に回折次数がどのように結合するかを示した。これらの結果は、光軸から35μmのターゲット位置に+1の次数を偏向するように最適化されたホログラムについて
図10にプロットされている。一番上および下側のサブプロットは、標準のシステムおよび波面符号化システムの各挙動を例示している。ブレーズド回折格子に基づくシステムの場合、それぞれの次数は、プローブファイバーがファイバー平面上でスキャンされるときに効率よく結合され、最大損失はテストファイバーが光軸から正確に±140μmであったときに-0.45dBである。波面符号化システムの場合、+1の次数のみが効率よく結合され、損失は-0.72dBである。8個の出力ファイバーすべてにわたる最大損失は、-0.77dBと計算された(
図11)。これは、入射ビームがもはや焦点外れシステム内のファイバーの光軸に平行でないという事実と、非フーリエ変換配置構成におけるレンズを使用することによって導入される収差とを考慮する。この例では、波面符号化により、ノイズ次数に対するη
mtが少なくとも13.5dBだけ低減される。
【0081】
実際のクロストークパワーを計算するために、これらの次数における光パワーをさらに考慮すべきである。実験研究結果に基づき、波面符号化パターンの最大クロストークは、ゼロ次による(これは、全パワーの3.9%を含むが、これは相対的に、SLMが反射防止コーティングされていたからである)。これは、
図8において検証されており、最高のクロストークは、ゼロ次に最も近い位置(位置6および位置7)で生じることがわかる。(しかし、好適な反射防止コーティングを使用すれば、ゼロ次のパワーが低減され、液晶材料特性を考慮した反復アルゴリズムを使用し(本発明者らの英国特許出願第1102715.8号)、および/または空間フィルタリング技術を使用することによって、
図3を参照しつつ説明されているように、さらなる低減を得ることができる)。同じゼロ次のパワーを波面符号化ファイバースイッチに補外することによって、最大クロストークは、[10log
10(0.039)-13.5]dB=-27.6dBとなる。しかし、
図10(b)および
図12を見るとわかるように、ビーム焦点外れにより、光は平面P
2上ですべてのノイズ次数から拡散する。そのため、クロストークは、すべての次数のフィールドをコヒーレントに総和し、モードオーバーラップ計算を適用することによって決定されるべきである。それに加えて、ファイバースイッチの挿入損失も、ファイバーの基本モードに結合しているときに出力スポットサイズに依存する。674nmにおいて、27.3%の等価なブレーズド回折格子位相パターンと比較してスポットサイズの増大を測定した。1550nmで同じ広がりを仮定した場合、挿入損失は-0.3dBだけ上昇する。非整数次高速フーリエ変換(次のセクションで説明する)を使用してt次のファイバーまたは導波路内に結合されたパワーを計算し、ファイバー平面におけるパワー分布を決定することができる。モードオーバーラップ積分を適用すると、クロストークを決定することができる。非整数次高速フーリエ変換を使用するリプレイフィールドの計算例が、
図12に示されている。
【0082】
キノフォームパターンの最適化
リプレイフィールドがレンズのフーリエ面に配置されたときにGerchberg-Saxtonルーチンなどの反復アルゴリズムを使用してビーム操縦スイッチ用にキノフォームを設計するためにフーリエ変換を使用することができる。焦点外れの意図的な導入に基づく波面符号化システムでは、リプレイフィールドはリプレイレンズのフーリエ面に位置決めされることはもはやないが、z
2=f+sとなるように距離sだけ縦方向にシフトされたいくつかの代替平面に位置決めされる。そのため、いくつかの他の変換を使用してキノフォーム平面のフィールドをリプレイ平面に関係付けるべきである。このようなアルゴリズムの1つが、非整数次フーリエ変換である。(代替的計算アプローチでは、1つまたは複数の光学出力部を点源とみなし、キノフォームに達するまで、これらから波を伝搬させて戻し、所望の位相および振幅を選択された平面において画定する)。
【0083】
非整数次フーリエ変換
数学的観点
非整数次フーリエ変換は、光学素子、信号処理、および量子力学において使用されているよく知られている関数である。純粋数学の観点から、これは
【0088】
項A
φは、単にシステム定数であり、a=1のときに標準のフーリエ変換となる。調べた後、式(9、10)の形式は、フーリエ変換に加えられる二次位相係数、レンズが光フィールドに与える同じ種類の係数によるものであると推論できる。
【0089】
光学の観点から
フーリエ変換は、入力フィールドをそのフィールドを構成する空間周波数成分に直接関連付ける。非整数次フーリエ変換を、同じ入力フィールドを空間素子と周波数素子との組合せを含むものとして記述されうる中間平面に関連付けるものとして説明する文献が多数ある(例えば、H. M. OzaktasおよびD. Mendlovic、「Fractional Fourier optics」、J. Opt. Soc. Am. A、12、743〜748頁(1995)、およびL. M. Bernardo、「ABCD matrix formalism of fractional Fourier optics」、Opt. Eng. 35、732〜740頁(1996)を参照)。
【0090】
入力平面、出力平面、および1組の光学素子を間に備える光学系は、ABCD行列を使用して表すことができる(レイトレーシングおよびガウスビーム伝搬理論で使用される)。S. A. Collins、「Lens-System Diffraction Integral Written in Terms of Matrix Optics」、J. Opt. Soc. Am、60、1168〜1177頁(1970)によれば、レンズ系を通る回折は、ABCD行列に関して定義することができ、その結果、入力フィールドおよびABCD行列係数に関する出力フィールドの全体的表現が
【0093】
ABCD行列が、いくつかの対称条件を満たしている場合(前掲書、Collinsを参照)、式(13)を式(9〜12)と同じ形式に書き換えることができる。したがって、非整数次フーリエ変換が得られる。2つの標準的な構成、Lohmann type IとLohmann type IIの幾何学がある(A. W. Lohmann、「Image rotation, Wigner rotation, and the fractional Fourier transform」、J. Opt. Soc. Am A、10、2181〜2186頁(1993))。焦点外れを使用して波面符号化の表現に最も近くなった時点において、関心を持つ最初のもの(入力平面と出力平面との間の中程に位置決めされたレンズ)である。これは、SLMから集束レンズまでの距離、および集束レンズからリプレイ面(+1の次数の焦点面)までの距離は、両方ともf+sに等しいことを必要とし、fは集束レンズの焦点距離であり、sは焦点外れである。これがその場合であれば、φを
【0096】
図13に示されているように、単一のレンズを備える非整数次フーリエ変換システムがあり、入力フィールドE
H(x,y)はこの平面の前の距離z
1のところに位置決めされ、出力平面はレンズの背後の距離z
2=z
1のところに位置決めされ、フィールドE
I(u,v)が生成されると仮定する。一般性に関して、z
1=f+sと設定する。変換x'=x/ξ、y'=y/ξ、u'=u/ξ、v'=v/ξを使用して入力フィールドおよびリプレイフィールドの横軸スケールをsに関連付ける、スケーリング係数ξ。これは値
【0099】
そこで、s=0ならば、a=1、ξ
2=λfとなり、式(9)は簡素化されて、
図1aのタイプの光学系に対する標準フーリエ変換関係が得られる。
【0101】
非整数次フーリエ変換を使用する利点の1つは、高速フーリエ変換に関して表すことができるということにあり、それにより、Ozaktasら、(H. M. Ozaktas、O. Arikan、M. A. Kutay、およびG. Bozdagi、「Digital computation of the fractional Fourier transform」、IEEE Transactions on Signal Processing、44、2141〜2150頁(1996))によって説明されているようにリプレイフィールドの高速な計算および最適化が可能になる。この高速非整数次フーリエ変換のアプローチによる回折素子の設計は、Zhangら、(Y. Zhang、B. Z. Dong、B. Y Gu、およびG. Z. Yang、"Beam shaping in the fractional Fourier transform domain"、J. Opt. Soc. A、15、1114〜1120頁(1998))、およびZalevskyら、(Z. Zalevsky、D. Mendlovic、およびR. G. Dorsch、"Gerchberg-Saxton algorithm applied to the fractional Fourier or the Fresnel domain"、Optics Letters 21、842〜844頁(1996))によって報告されている。これらの解析結果から、リプレイフィールドの正確な表現を確実に行えるようにするためにいくつかのサンプリング基準が満たされているべきであることがわかった。このような問題を回避するために、Testorf、(M. Testorf、「Design of diffractive optical elements for the fractional Fourier transform domain: phase-space approach」、Appl. Opt.45、76〜82頁(2006))によって開発された等価な光学系のアプローチを使用することができる。これにより、非整数次数に対するリプレイフィールドの計算が可能になる。Testorfの解析結果において、
図13のLohmann type Iシステムは、
図14に示されているような等価な3レンズ系で置き換えられた。入力平面は第1のレンズの直前にあり、出力レンズは最後のレンズの直後にある。第1のレンズから中央のレンズまでの距離はf
fであり、中央レンズからの距離も同様にf
fである。第1のレンズおよび最後のレンズは、f
1の焦点距離を有し、中央のレンズは、f
fの焦点距離を有する。このシステムは、f
Fおよびf
1に対する値を
f
F=f sin
2φ (17a)
【0103】
のように設定した場合に適用される非整数次フーリエ変換に対する必要な対称性を持つABCD行列を有し、ただし、fは、
図1bのレンズの焦点距離であり、φは、式(14)で与えられる。
【0104】
論文L. Bernardo、「ABCD matrix formalism of fractional Fourier optics」(前掲書)において、入力平面(SLM平面)を照射するビームが非整数次FFTに関して平面状でない光学系を記述する仕方が示されている。これは、上で説明されている焦点外れに基づく波面符号化システムに対する状況である。
【0105】
図1bのスイッチが透過システム内に展開されている状況を示し、光学系のパラメータが非整数次フーリエ変換の公式に及ぼす影響をより明確に関係付ける
図15aを考察する。入力ファイバーは、平面P
INに位置決めされ、その一方で、出力ファイバーは、平面P
Rに位置決めされる(両方とも
図1bのF
2に等価である)。レンズL
1およびレンズL
2は同一であり、fの焦点距離を有する。sが正でz
2=f+sである場合を考えよう。したがって、Σ
H上に入射する波面は、収束性を有し、ビームは、図示されているようにレンズから距離d
0のところに集束した。Σ
Hから焦点面までの距離は、d
H=d
0-z
1で与えられる。その結果、Σ
Hにおける入射ビームの曲率半径ρ
H=-d
Hは、
【0107】
で与えられ、ただし、ρ
Hは、ホログラムに入射するビームがΣ
Hの右に収束する場合に負であり、正は、仮想焦点からΣ
Hの左に来るように見える。式(18)は、薄いレンズの公式を
図15bに適用することによって導かれる。BernardoおよびSoares、(L. M. BernardoおよびO. D. Soares、「Fractional Fourier transforms and imaging」、J. Opt. Soc. Am. A、11、2622〜2626頁(1994))の解析結果によれば、ホログラム平面が非平面波面によって照射されたときに非整数次フーリエ変換が有効となるように、z
2はz
1およびρ
Hに
【0109】
によって関係付けられていなければならない。
【0110】
そこで、
図15(a)のシステムが式(18)と式(19)とを組み合わせ、結果として得られる二次方程式を解いてz
1=f+2sを与えることによって非整数次フーリエ変換を実行するようにz
1の最適値を決定することができる。この条件を満たした場合、
図15のシステム(SLM上に入射する非平面状ビーム)は、
図13に示されている場合(SLM上に入射する平面上ビーム)に帰着する。しかし、z
1=z
2=f+2sが得られ、aは、
【0112】
の修正されたレンズの焦点距離f
pを使用して式(14)によって与えられる。
【0113】
このスケーリングされた焦点距離およびφの新しい値では、ホログラム平面上に入射する非平面状ビームの性質を考慮し、これらの新しいパラメータにより、すでに説明されている等価モデル表現を使用して波面符号化スイッチ内の量子化されたSLMのリプレイフィールドを計算することができる。
図15(a)を参照すると、リプレイ平面に曲率半径-ρ
Hで入射波面を集束させるのに必要なホログラフィックレンズの焦点距離f
HはSLMを出る+1の次数の曲率の波面も-ρ
Hとなるような値でなければならない。これにより、SLMから回折される光は、出力ファイバー内に最適に集束されることが確実である。そこで、幾何光学から
f
H=-(1/2)ρ
H (21)
となる。
【0114】
上記の解析は、透過型SLMの場合に有効であることに留意されたい。
図3の反射型SLMの場合には、必要な焦点距離は、式(21)を負にしたものである。
【0115】
キノフォームの最適化の観点から
例に示されているように、非整数次FFTは、「ピンポン」アルゴリズムに直接的に適応する。(大まかに言って、「ピンポン」アルゴリズムは、キノフォームに対する位相分布を、例えば、ランダムに、または初期ターゲットリプレイフィールドに基づき初期化することと、キノフォームのリプレイフィールドを計算することと、リプレイフィールドの振幅分布を修正するが位相分布を保持することと、この修正されたリプレイフィールドを更新されたキノフォームに変換することと、次いで、この計算および修正を繰り返して所望のターゲットリプレイフィールド上に収束させることとを含む)。
【0116】
フーリエ変換は、高速であり、したがって、リプレイフィールドの計算および標準フーリエ面システムにおけるキノフォーム位相パターンの最適化に適している。Ozaktasら、(H. M. Ozaktas、O. Arikan、M. A. Kutay、およびG. Bozdagi、「Digital computation of the fractional Fourier transform」、IEEE Transactions on Signal Processing、44、2141〜2150頁(1996))によれば、式(9〜12)を標準FFTおよびIFFTを使用する形式に変換することが可能である。波面符号化システムにおけるリプレイフィールドを計算するために使用することができる他のアルゴリズムがある(例えば、直接フレネル積分)。しかし、Ozaktasらによれば、フレネル積分に基づく解法を使用する場合は、O[N
2]の計算を使用するが、その実装を使用すれば、O[N×log(N)]個のステップで済む。これは、幾何光学に対する関連する制限が許容されるのであれば他のアプローチに比べて高速である。
【0117】
Testorfによって開発されたのと同等の方法を使用して、4ステップのみ使用してリプレイフィールドE
I(u,v)を計算する。最初に、E
in(x,y)として表し、振幅プロファイルを考慮する平面の波面が、SLM上に入射する(
図3に透過で示されている)。ピクセル化されたLCOS SLMは、α(x,y)、0≦α(x,y)<2πで表される位相のみのホログラムを表示すると仮定される。その結果得られる透過波面E
H(x,y)は、これらの2つの項の積である。ステップ2において、
図13の第1のレンズf
1は、E
H(x,y)上に二次位相曲率を与える。ステップ3において、中心レンズf
1は、レンズf
1を出る波面にフーリエ変換を実行する。最後に、
図13の最後のレンズf
2は、出力フィールドE
I(u,v)が
【0119】
で与えられるように波面上に二次位相曲率を付与し、ただし、f
1=f
2である。これをE
1(u,v)=FrFFT(E
H(x,y))と書き直す。実際の計算では、ステップ3に対してFFTを使用し、空間サンプリングはSLM平面のN×N個のピクセルに対応する。そのため、すべての平面におけるフィールドは、N×Nグリッド上で一様に空間的サンプリングされ、サンプリングされたu座標は、
【0121】
で与えられ、ただし、Δは、ピクセルサイズであり、nは、-N/2からN/2まで変化する整数である。同じスケーリング係数がvをyに関連付ける。
図12に示されているように、この技術は、二次元キノフォームおよびリプレイ平面を取り扱うように修正されうる。
【0122】
図3のシステムの場合、入射ビームが非平面的である場合に、z
1=f+2sおよびz
2=f+sを設定する。これを
図14のモデルに変換するために、実効焦点距離f
pを、式20を使用して計算する。f=f
pを設定し、式14、17a、および17bを使用してφ、f
F、およびf
1を計算する。これで、ホログラム平面における波面は、平面として処理されるが、振幅分布、例えば、ガウスは元のままである。これにより、キノフォームの最適化に必要に応じて、リプレイを計算することができる。
【0123】
非整数次フーリエ変換に関するさらなる背景情報については、H. M. Ozaktas、「The Fractional Fourier Transform: with Applications in Optics and Signal Processing」、John Wiley & Sons (2001)、A. W. Lohmann、「Image rotation, Wigner rotation, and the fractional Fourier transform」、J. Opt. Soc. Am A、10、2181〜2186頁(1993)、I. Moreno、J. A. Davis、およびK. Crabtree、「Fractional Fourier transform optical system with programmable diffractive lenses」、Appl. Opt. 42、6544〜6548頁(2003)、D. PalimaおよびV. R. Daria、「Holographic projection of arbitrary light patterns with a suppressed zeroth-order beam」、Appl. Opt. 46、4197〜4201頁(2007)、S-C PeiおよびM-H Yeh、「Two dimensional fractional Fourier transform」、Signal Processing 67、99〜108頁(1998)、ならびにX. Y. Yang、Q. Tan、X Wei、Y Xiang、Y. Yan、およびG. Jin、「Improved fast fractional-Fourier-transform algorithm」、J. Opt. Soc. Am. A、21、1677〜1681頁(2004)を参照されたい。非整数次高速フーリエ変換のコードは、1Dコードについてはウェブサイトwww2.cs.kuleuven.be/〜nalag/research/software/FRFT/、2Dコードについてはウェブサイトwww.ee.bilkent.edy.tr/〜haldun/fracF.mを参照されたい。
【0124】
ケース1 - Gerchberg Saxtonアルゴリズムを使用するフーリエ面システム内のキノフォームの最適化
図16aはリプレイフィールドを示し、
図16bは、Gerchberg Saxtonアルゴリズムを使用して位相パターンを最適化するときの、その後のキノフォームパターンを示す。これは、「ピンポン」アルゴリズムの一例である。キノフォームを生成するために使用されるプログラムは、Matlabコードに基づいており、これは以下の基本形式を有する。
gin=入力フィールドの振幅分布(ガスプロファイルが仮定される)
grossout=所望の出力フィールド(ターゲット関数)。例えば、GN個のアドレッシング可能な出力点を有するならば、
grossout=zeros(GN);
grossout(位置1)=1;
grossout(位置2)=1;
2点を、等しい振幅を有し、他の点はゼロ振幅を有するように設定する
gprime=キノフォーム位相パターン
ite=1:200の場合、
ite==1ならば、
% 幾何学的レイトレーシングの結果から開始する(初期開始点、すなわち、入力フィールドのFFT)
ftg=fftshift(fft(fftshift(gin)));
そうでなければ、
% 他のすべての反復において、これを使用する(入力フィールドのFFT×exp(i*ホログラムの位相))
ftg=fftshift(fft(fftshift(gin.*exp(i.*gprime))));
終了
% ftgの位相を計算する(振幅情報をダンプする)
angle_ftg=angle(ftg);
% 次いで、ホログラムの位相を得るために、以下を乗算したターゲット関数のIFFTをとる
exp(i*angle_ftgの位相)
prime=angle(fftshift(ifft(fftshift(grossout.*exp(i.*angle_ftg)))));
終了
【0125】
この計算のために、SLMは、ピクセルサイズ15μmのピクセル400個からなる直線配列を含み、SLMは1550nmの波長のビーム半径2mmのコリメートされたガウスリプレイフィールドによって照射された。リプレイ位置は、光軸から-0.75mmのところに配置され、位相値は、0から2πまでの範囲内の値をとることが許された。
【0126】
図16aは、理想的なリプレイ(下側曲線)の状況、およびすべてのピクセルにわたって均一に適用されるブレーズド回折格子内に10%の誤差がある(上側曲線)場合を示している。これからわかるように、クロストークはより高い、対称的な次数に関連する位置で増大する。典型的には、ファイバーベースのスイッチでは、ファイバーは、均一なピッチの低コストのファイバーリボンが入手可能であるためこれらの配置に位置決めされる。
【0127】
ケース2 - 修正されたGerchberg Saxtonアルゴリズムを使用する焦点外れシステム内のキノフォームの最適化
FrFFT[field, a]と書かれる、次数aの非整数次FFTを使用してリプレイフィールドを最適化するために、Gerchberg Saxton「ピンポン」アルゴリズムを以下のように修正することができる(他のアルゴリズムも、特に他の「ピンポン」アルゴリズムも代替えとして使用することができる)。
gin=入力フィールドの振幅分布(ガスプロファイルが仮定される)
grossout=所望の出力フィールド(ターゲット関数)。例えば、GN個のアドレッシング可能な出力点を有するならば、
grossout=zeros(GN);
grossout(位置1)= 1;
grossout(位置2)=1;
2点を、等しい振幅を有し、他の点はゼロ振幅を有するように設定する
gprime=キノフォーム位相パターン
ite=1 :200である場合、
ite==1ならば、
% 幾何学的レイトレーシングの結果から開始する(初期開始点、すなわち、入力フィールドのFFT)
ftg=FrFFT(gin, a);
そうでなければ、
% 他のすべての反復において、これを使用する(入力フィールドのFFT×exp(i*ホログラムの位相))
ftg=FrFFT(gin.*exp(i.*gprime, a);
終了
% ftgの位相を計算する(振幅情報をダンプする)
angle_ftg=angle(ftg);
% 次いで、ホログラムの位相を得るために、以下を乗算したターゲット関数のIFFTをとる
exp(i*angle_ftgの位相)
gprime=angle(FrFFT(grossout.*exp(i.*angle_ftg), 2-a);
【0128】
ここで、非整数次フーリエ変換FrFFTは、市販のコードで利用可能な標準FFTを使用して実装することができる。ここでは、FrFFT[field, a]の逆FrFFTは、FrFFT[field, 2-a]を使用して計算できるという事実を使用する(例えば、Ozaktas,前掲書を参照)。
【0129】
図17aはリプレイフィールドを示し、
図17bは、この修正されたアルゴリズムを使用して位相パターンを最適化するときの、その後のキノフォームパターンを示す。計算では、ケース1に対して使用されているのと同じシステムパラメータを仮定し、位相値は0から2πまでの範囲内の値をとる。これからわかるように、リプレイフィールドは、完全なパターンについてケース1の場合とほとんど同じである(青色曲線)。
図17aは、キノフォーム内の10%の誤差がすべてのピクセルにわたって均一に適用される状況も示す(上側曲線)。これからわかるように、クロストークは増大するが、リプレイフィールド上で拡散される。どれくらいの光がファイバー内に実際に結合されるかを決定するために使用されるモードオーバーラップ積分を考慮する場合、クロストークは、数桁抑制されうる。
【0130】
FrFFTによるマルチキャスティング
図18は、
図1aのシステムに適用されるマルチキャスティングを示しており、キノフォームはケース1のアルゴリズムを使用して最適化され、連続位相が0から2πまでの範囲内であると仮定している。
図18(a)は、2つの離散位置にマルチキャストする場合のフーリエ面におけるリプレイフィールドを示している(光軸から-0.25mmおよび-0.5mm)。
図18bは、キノフォームの対応する位相プロファイルを示している。
図18aから、光はもっぱら所望の位置に偏向されるが、より高い次数の位置に著しいパワーが出現することがわかる。このパワーを低減するために、本発明者らの同時係属中の英国特許出願第1102715.8号で説明されているようなさらなる最適化技術を適用することができる。
【0131】
図19は、ケース2のアルゴリズムを使用し、連続位相が0から2πまでの範囲内であると仮定して波面符号化パターンによりマルチキャスティングを実装するときの同様の性能を示す。システムパラメータは、すでに与えられているものであった(f=200mm、s=40mmなど)。
図19aは出力平面におけるリプレイフィールドを示し、
図19bはキノフォームの位相パターンを示す。これからわかるように、性能は、ほとんど同一である(
図18aおよび19a)。したがって、波面符号化は、この状況では、クロストークがまだ同じ点で生じるときに利点をもたらさないと考えられる。本質的に、波面符号化キノフォームは、リプレイ体積(±1、±2、±3、…)の焦点面内の多数の平面において基礎となるマルチキャスティングパターンを複製している。しかし、非理想的SLMの場合、ここで説明している技術は、それでも、すでに述べたように、SLMのさまざまな非理想的な態様からの一般的な回折された光「ノイズ」を軽減しうる。
【0132】
錠と鍵のアプローチを使用するマルチキャスティング
上述の問題点を解消するために、平面ではなく、3D立体への相互接続を考えることができる。ファイバーリボンは平たく、ファイバーはぎっしり詰まっているので、1つのアプローチでは、「錠と鍵」のアプローチを実施するために
図20に示されているようにそれぞれのレンズレットファセットが異なる焦点距離を有する平たいファイバーリボンおよびレンズレットアレイを使用する。
【0133】
図20を参照すると、これは、発明の一実施形態によるマルチキャスティング出力段800を実現する
図1cの装置の出力部分の一修正形態を示している。出力段は、レンズレットアレイ804が光学出力部経路内で先行するファイバーアレイ802を備え、アレイのそれぞれのレンズは異なる焦点距離を有する。そこで、レンズレットアレイの前に+1の次数が集束される中間平面(P1、P2)を選択することによって、キノフォーム上に符号化された(軸外)レンズパワーを選択することによって、選択された出力部にだけ効率的結合がなされる。
【0134】
単一ファイバーおよび焦点距離f
1のレンズレット1考える。例示的なシステムでは、SLMからのビームは、レンズレットから距離z
1のところに集束し、w
1のビームウェストを有する。ファイバーからレンズレットまでの距離はdであり、出力ファイバーにおける所望のビームウェストはw
fである。z
1、f
1、およびw
1と出力ウェスト(z
2)およびウェストサイズ(w
2)の位置との関係は、よく知られている関数である。ビームのクリッピングがない場合(レンズレットの開口<ビームの直径)、
【0136】
である。最大結合効率に関して、z
2=d、およびw
2=w
fである。結合されるパワーの実際の割合は、ファイバーに対するモードオーバーラップ積分を使用して計算されうる。
【0137】
N個の出力ファイバーとN個の出力レンズレットファセットがあり、それぞれf
nの異なる焦点距離を有し、次いで、n番目のファイバー内に効率よく結合する場合、z
1(n)の所望の値のところに位置する入射ビームを有するべきである。これは、
図20を参照することによって最もよくわかる。ここに、5つの入射ビームがあり、すべてレンズレットアレイの前の中間の平面P1に集束される。それぞれのレンズレットファセットは異なる焦点距離f
nを有するので、ビームは、ファイバーアレイに関して異なる位置に集束する(実線の光線)。その結果、1つのビームのみが効率よく結合される(一番上のチャネル)。しかし、SLMが異なる中間平面P2に光を集束する位相パターンを表示する場合(破線の光線)、底部チャネルは、高い効率で結合する。したがって、2つのファイバーnおよびn'にマルチキャストする場合には、2つの焦点外れ値z
1(n)およびz
1(n')を使用して、レンズレットの焦点距離f
nおよびf
n'を整合させる。ファイバーnおよびn'に接続するために、異なる焦点距離の2つのレンズ関数を使用する。基礎となる考え方は、より高い次数は、焦点外れのときに効率的に結合しないというものである。そのため、3D立体への相互接続および非対称的レンズレットアレイの使用は、マルチキャスティングのときにクロストークを低減するべきである(クリッピング損失を無視する)。また、ファイバーから実質的に完全に逸れる円形焦点に入射ガウスビームを変換するレンズレットアレイの後に位置決めされる他の部分、例えば、追加の回折アキシコンアレイ(アキシコンは円錐に等価な位相プロファイルを有する素子である)も考えることができる。
【0138】
図21は、開口の代替的実施形態900を示しており、アレイ802のファイバーの位置は、量Δx
ijだけ互いに関して食い違い配置になっており、例えば、2つの(または複数の)平面を画成する。ファイバーアレイのファイバーを食い違い配置にすることで、光学系の対称性が破られ、マルチキャスティングの際にクロストークが低減される。最適化されたキノフォームを使用して、+1(または-1)の回折次数を所望のターゲットファイバーに集束させる。ファイバーの縦方向の食い違い配置により、他の出力位置へのクロストークを最小化することができ、より具体的には、ファイバーの位置決めは、規則正しくなくてもよく、クロストークが最小になるように最適化することができる。このアプローチは、マルチキャスティングを行う用途にも有益である(複数の出力ファイバーにルーティングする)。それに加えて、レンズレットアレイまたは空間フィルターなどの中間光学素子を適宜使用して、クロストークの抑制を高めることができる。
【0139】
一般化された波面符号化
図22は、クロストークを軽減するために本特許においてすでに説明されているキノフォーム設計方法を使用してビーム操縦スイッチに対して焦点外れの意図的な適用をどのように行うかを示している。このアプローチは、円柱レンズまたはレンズレットアレイなどのアナモルフィック光学素子に基づくスイッチにも適用可能である。さらに、
図20に例示されている波面符号化を実装するために焦点外れの代わりに任意の波面歪みを使用することができる。今まで、本発明者らの組み込みシステム収差として、最低次数の収差、すなわち焦点外れを使用してきた。例えば、ゼルニケ多項式の総和で表すことができる、より高次の収差または収差の組合せも使用することができる。例えば、光が単純に広がらず、ファイバーの芯から離れる方向にリダイレクトされるようにカスタム設計のレンズレットアレイとともに一般化された誤差を使用することができる。この方法を一般化された波面符号化技術として定義することができる。
【0140】
これを例示するために、
図22aに示されているスイッチ900を参照する。
図22aおよび
図22bにおいて、すでに説明されているものと類似の要素は、類似の参照番号で示される。
図22aのシステムは、入力/出力ファイバーアレイ902およびそれぞれのレンズレットは実質的に同一のパラメータを有する整合レンズレットアレイ904を備える出力段910、およびSLM 106を有する。この対称的システムでは、レンズレットは、ファイバーによって放射される光の発散を光学系と整合する値に変換するように設計される。
【0141】
図22bのシステム950は、
図20を参照しつつ説明されているものと似ている出力段800を組み込むが、より概括的には、レンズレットアレイ804は、整合フィルターで置き換えることができる。したがって、
図22bに示されているスイッチ950は、入力/出力ファイバーアレイ952およびレンズレットアレイ954を備える出力段960を有する。しかし、
図22bでは、対称的なレンズレットアレイを、事前に計算した波面誤差が集束関数に加えられたレンズレットアレイ954で置き換える。この波面誤差は、位相マスク956を使用して実装され、誤差は、ファセット間で異なりうる。これは、キノフォーム上に表示される整合位相マスク(直線956で概念的に示されている)によって補償されうる。そこで、SLMからの回折光が特定のファイバー内に効率的に結合されようにするために、SLMでは、「錠と鍵」のアプローチでレンズレットの組み込まれた収差を相殺するように入射ビームに収差を生じさせるべきである。
図22bでは、収差を含む+1の次数、無変更のゼロ次の次数、および+1の次数の複素共役は、それぞれ、参照番号954a、参照番号954b、参照番号954cによって示されている。諸実施形態では、それぞれのレンズレットは、ルーティングされた(+1)回折次数だけを集束させるように符号化される。
【0142】
他の可能な波面符号化のシナリオも企図され、これはフーリエ変換レンズの直前または後に置かれた静的または再構成可能な位相歪み発生マスクが波面を歪ませるために使用される幾何学的形状を含む。したがって、このような場合のビーム操縦ホログラムも、補償位相プロファイルを回折格子または軸外レンズパターンに加えて、最終的な信号ビームがガウスであることを保証すべきである。対称条件により、他のホログラムの次数はさらに収差を含む。
【0143】
要約
大まかに言って、焦点外れなどの、波面誤差を光学系の設計に意図的に導入することによってLCOS SLMに基づくWDMスイッチの性能を改善する方法について説明してきた。この設計収差を補償するために、組み込み誤差を補償し、それにより、+1の次数を所望の出力ファイバー内に効率よく集束させる最適化されたキノフォームを表示する。その一方で、より高い回折次数は収差を含み、ファイバー内に効率的に結合することに失敗する。この補償は、2πを法とするアルゴリズムを使用して計算されたキノフォームの形態をとる。限定はしないが焦点外れなどの、収差を光学系に意図的に導入することによって、前の方の、
図3で示されているようにクロストークパワーを著しく低減することができる。本発明では、この技術を波面符号化と称し、全体的性能を改善するために収差または波面誤差を光学系に設計で特に組み込む。この誤差を補償するために、キノフォームを、波面誤差を相殺するように適合する。そうする際に、より高い回折次数はより多くの収差を含み、出力ファイバーへの結合の効率は低下し、それによりクロストークが減じる。波面符号化は、非周期的なのでキノフォーム位相パターンに適している。さらに、焦点外れを光学系に意図的に導入することによって、前の方の、
図3に例示されているように、ゼロ次の次数の焦点面にブロックする開口を置くことによって残りのゼロ次の次数のパワーを除去することができる。やはり、これは、非周期的なのでキノフォーム位相パターンに適している。
【0144】
2D平面上ではなく3D立体内への相互接続を使用することについて説明してきたが、この場合、スイッチ内のそれぞれのビームは平面内の特定の点とは反対に空間内の特定の点に集束される。ファイバーアレイの前に位置決めされたレンズレットアレイを使用することによって、それぞれのレンズレットが異なる焦点距離を有する場合に、空間の体積内の特定の位置に集束される光のみが特定のファイバー内に効率的に結合されることを保証することができる。これにより、マルチキャスティングが円滑になる。この技術の実施形態は、収差回折パターンをレンズレットアレイの基本集束関数に加えることによって実施することもできる。
【0145】
さらに、諸実施形態では、動的効果によるクロストークの低減がある。限定はしないが焦点外れなどの、収差を光学系に意図的に導入することによって、ホログラフィックパターンが異なる相互接続パターンの間で切り替えられるときに生じるクロストークパワーを著しく低減することができる。
【0146】
諸実施形態では、ここで説明した技術は特に光信号ビームのルーティングに関するものであり、特に遠隔通信cバンド(1.5ミクロンの波長範囲)において、近赤外線で動作する通信デバイスを生産することができる。
【0147】
当業者であれば、多くの有効な代替的手段を思いつくであろうことは疑う余地がない。本発明は説明されている実施形態に限定されず、本明細書に添付の特許請求の範囲の範囲内に収まる当業者にとって明らかな修正形態を包含することは理解されるであろう。