(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エンジンと、前記エンジンによって駆動される油圧ポンプと、前記油圧ポンプから吐出された作動油によって駆動される作業機と、前記エンジンによって駆動される走行装置と、前記エンジンからの駆動力を前記走行装置に伝達するトランスミッションと、油圧によって駆動されるブレーキ装置と、アクセル操作部材と、を備える作業車両の制御方法であって、
前記アクセル操作部材の操作量を検出するステップと、
車速を検出するステップと、
車両の加速度を検出するステップと、
前記トランスミッションの速度範囲を現在の速度範囲よりも低速の速度範囲にシフトダウンする自動シフトダウンを実行するステップと、
前記アクセル操作部材の操作量が所定のアクセル閾値より大きいこと、前記車速が所定の速度閾値未満であること、前記加速度が所定の加速度閾値以下であること、及び、前記ブレーキ装置に供給される作動油の油圧が所定のブレーキ閾値未満であることを含む自動シフトダウン条件に基づいて、前記自動シフトダウンの実行を判定するステップと、
を備える作業車両の制御方法。
エンジンと、前記エンジンによって駆動される油圧ポンプと、前記油圧ポンプから吐出された作動油によって駆動される作業機と、前記エンジンによって駆動される走行装置と、前記エンジンからの駆動力を前記走行装置に伝達するトランスミッションと、アクセル操作部材と、を備える作業車両の制御方法であって、
前記アクセル操作部材の操作量を検出するステップと、
車速を検出するステップと、
車両の加速度を検出するステップと、
前記トランスミッションの速度範囲を現在の速度範囲よりも低速の速度範囲にシフトダウンする自動シフトダウンを実行するステップと、
第1条件と第2条件とを含む自動シフトダウン条件に基づいて、前記自動シフトダウンの実行を判定するステップと、
を備え、
前記第1条件は、前記アクセル操作部材の操作量が所定の第1アクセル閾値より大きく、且つ、前記車速が所定の第1速度閾値未満であり、且つ、前記加速度が減速に相当する値であることを含み、
前記第2条件は、前記アクセル操作部材の操作量が前記第1アクセル閾値よりも大きい第2アクセル閾値より大きく、且つ、前記車速が所定の第2速度閾値未満であり、且つ、前記加速度が加速に相当する値であることを含む、
作業車両の制御方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のようにブームシリンダの油圧と、ブームの高さと、車速とによる自動シフトダウンの判定方法では、自動シフトダウンの実行に遅れが生じるという問題がある。例えば、誤判定を防止するためには、上記の所定速度は、できるだけ小さい値であることが望ましい。これにより、作業車両が掘削作業を開始するときに地山に突っ込むことで車速が低くなった状態を精度よく判定することができる。しかし、所定速度が小さな値に設定されると、車速が十分に低くなるまでは、自動シフトダウンの実行が決定されないことになる。このため、自動シフトダウンの実行に遅れが生じる。
【0006】
本発明の課題は、自動シフトダウンの誤判定を抑えると共に、迅速に判定を行うことができる作業車両及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る作業車両は、エンジンと、油圧ポンプと、作業機と、走行装置と、トランスミッションと、アクセル操作部材と、アクセル操作量検出部と、車速検出部と、加速度検出部と、制御部と、を備える。油圧ポンプは、エンジンによって駆動される。作業機は、油圧ポンプから吐出された作動油によって駆動される。走行装置は、エンジンによって駆動される。トランスミッションは、エンジンからの駆動力を走行装置に伝達する。アクセル操作量検出部は、アクセル操作部材の操作量を検出する。車速検出部は、車速を検出する。加速度検出部は、車両の加速度を検出する。制御部は、トランスミッションの速度範囲を現在の速度範囲よりも低速の速度範囲にシフトダウンする自動シフトダウンを実行する。制御部は、自動シフトダウン条件に基づいて、自動シフトダウンの実行を判定する。自動シフトダウン条件は、アクセル操作部材の操作量が所定のアクセル閾値以上であること、車速が所定の速度閾値未満であること、及び、加速度が所定の加速度閾値以下であることを含む。
【0008】
本態様に係る作業車両では、車速に加えて、アクセル操作部材の操作量と車両の加速度とによって、自動シフトダウンの実行が判定される。このため、作業車両の状態をより精度よく判定することができる。例えば、アクセル操作部材が大きく操作されているにも関らず、車両の加速度が小さいことは、作業車両が掘削作業を行うために地山に突っ込んだが、牽引力が不足しているために十分に加速できていない状態であることを意味している。本態様に係る作業車両では、このような場合に、適切に自動シフトダウンを実行することができる。また、アクセル操作部材の操作量と車両の加速度とによって自動シフトダウンの誤判定を抑えることができるため、誤判定を防止するために速度閾値を過度に小さな値に設定しなくてもよい。このため、自動シフトダウンの判定を迅速に行うことができる。
【0009】
好ましくは、自動シフトダウン条件は、作業機が所定の作業姿勢であることをさらに含む。この場合、低速の速度範囲が必要となる作業時に作業機がとり得る姿勢を所定の作業姿勢として設定することで、自動シフトダウンの実行をさらに精度よく判定することができる。
【0010】
好ましくは、作業車両は、油圧によって駆動されるブレーキ装置をさらに備える。自動シフトダウン条件は、ブレーキ装置に供給される作動油の圧力が所定のブレーキ閾値未満であることをさらに含む。この場合、オペレータがブレーキ装置を使用する意図が無いことを検出することで、自動シフトダウンの実行をさらに精度よく判定することができる。
【0011】
好ましくは、自動シフトダウン条件は、アクセル操作部材の操作量が所定の第1アクセル閾値以上であり、且つ、加速度が減速に相当する値であることを含む。例えば、加速に相当する値を正の値とすると、減速に相当する値は負の値である。例えば、所定の加速度閾値が負の値に設定され、加速度が所定の加速度閾値以下であるときに、加速度が減速に相当する値であると判定される。この場合、アクセル操作部材が操作されているにも関らず作業車両が減速している状態で、自動シフトダウンが実行される。このような状態は、例えば、アクセル操作部材を大きく操作せずに作業車両が地山に突っ込み始めたときに、牽引力が不足しているために作業車両が減速している状態を意味する。このように自動シフトダウンを実行する適切な状態を精度よく判定することができる。
【0012】
好ましくは、自動シフトダウン条件は、アクセル操作部材の操作量が第1アクセル閾値よりも大きい第2アクセル閾値以上であり、且つ、加速度が加速に相当する値であることを含む。この場合、例えば、所定の加速度閾値は正の値に設定される。加速度が加速に相当する値であるが所定の加速度閾値以下であることは、作業車両が減速してはいないが、十分に加速できていない状態を意味する。従って、アクセル操作部材が大きく操作されているにも関らず作業車両が十分に加速できていない状態で、自動シフトダウンが実行される。このような状態は、例えば、作業車両が地山に突っ込んでおり、アクセル操作部材を大きく操作しているにも関らず、牽引力が不足しているために作業車両が十分に加速していない状態を意味する。このように自動シフトダウンを実行する適切な状態を精度よく判定することができる。
【0013】
本発明の他の態様に係る作業車両の制御方法は、エンジンと、油圧ポンプと、作業機と、走行装置と、トランスミッションと、アクセル操作部材と、を備える作業車両の制御方法である。油圧ポンプは、エンジンによって駆動される。作業機は、油圧ポンプから吐出された作動油によって駆動される。走行装置は、エンジンによって駆動される。トランスミッションは、エンジンからの駆動力を走行装置に伝達する。本態様に係る制御方法は、第1〜第5ステップを備える。第1ステップでは、アクセル操作部材の操作量を検出する。第2ステップでは、車速を検出する。第3ステップでは、車両の加速度を検出する。第4ステップでは、トランスミッションの速度範囲を現在の速度範囲よりも低速の速度範囲にシフトダウンする自動シフトダウンを実行する。第5ステップでは、自動シフトダウン条件に基づいて、自動シフトダウンの実行を判定する。自動シフトダウン条件は、アクセル操作部材の操作量が所定のアクセル閾値以上であること、車速が所定の速度閾値未満であること、及び、加速度が所定の加速度閾値以下であることを含む。
【0014】
本態様に係る作業車両の制御方法では、車速に加えて、アクセル操作部材の操作量と車両の加速度とによって、自動シフトダウンの実行が判定される。このため、作業車両の状態をより精度よく判定することができる。例えば、アクセル操作部材が大きく操作されているにも関らず、車両の加速度が小さいことは、作業車両が掘削作業を行うために地山に突っ込んだが、牽引力が不足しているために十分に加速できていない状態であることを意味している。本態様に係る作業車両では、このような場合に、適切に自動シフトダウンを実行することができる。また、アクセル操作部材の操作量と車両の加速度とによって自動シフトダウンの誤判定を抑えることができるため、誤判定を防止するために速度閾値を過度に小さな値に設定しなくてもよい。このため、自動シフトダウンの判定を迅速に行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る作業車両及びその制御方法では、自動シフトダウンの誤判定を抑えると共に、迅速に判定を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る作業車両1の側面図である。
図1に示すように、作業車両1は、車体フレーム2と、作業機3と、走行輪4,5と、運転室6とを有している。作業車両1は、ホイールローダであり、走行輪4,5が回転駆動されることにより走行する。作業車両1は、作業機3を用いて掘削等の作業を行うことができる。
【0018】
車体フレーム2には、作業機3および走行輪4,5が取り付けられている。作業機3は、後述する第1油圧ポンプ31(
図2参照)からの作動油によって駆動される。作業機3は、ブーム11とバケット12とを有する。ブーム11は、車体フレーム2に装着されている。作業機3は、ブームシリンダ13とバケットシリンダ14とを有している。ブームシリンダ13とバケットシリンダ14とは、油圧シリンダである。ブームシリンダ13の一端は車体フレーム2に取り付けられている。ブームシリンダ13の他端はブーム11に取り付けられている。ブームシリンダ13が第1油圧ポンプからの作動油によって伸縮することによって、ブーム11が上下に回動する。バケット12は、ブーム11の先端に取り付けられている。バケットシリンダ14の一端は車体フレーム2に取り付けられている。バケットシリンダ14の他端はベルクランク15を介してバケット12に取り付けられている。バケットシリンダ14が、第1油圧ポンプ31からの作動油によって伸縮することによって、バケット12が上下に回動する。
【0019】
車体フレーム2には、運転室6が取り付けられている。運転室6は、車体フレーム2上に載置されている。運転室6内には、オペレータが着座するシートや、後述する操作装置50(
図3参照)などが配置されている。車体フレーム2は、前フレーム16と後フレーム17とを有する。前フレーム16と後フレーム17とは互いに左右方向に回動可能に取り付けられている。
【0020】
作業車両1は、ステアリングシリンダ18を有している。ステアリングシリンダ18は、前フレーム16と後フレーム17とに取り付けられている。ステアリングシリンダ18は、油圧シリンダである。ステアリングシリンダ18が、後述する第2油圧ポンプ32からの作動油によって伸縮することによって、作業車両1の進行方向が左右に変更される。
【0021】
図2は、作業車両1の駆動系を示す模式図である。
図2に示すように、作業車両1は、エンジン21と、動力取り出し装置22(以下、「PTO22」と呼ぶ)と、トランスミッション23と、走行装置24とを有している。
【0022】
エンジン21は、例えばディーゼルエンジン21である。エンジン21の出力は、エンジン21のシリンダ内に噴射する燃料量を調整することにより制御される。燃料量の調整は、エンジン21に取り付けられた燃料噴射装置25を後述する制御部26(
図3参照)が制御することで行われる。作業車両1は、エンジン回転速度検出部27を備えている。エンジン回転速度検出部27は、エンジン回転速度を検出し、エンジン回転速度を示す検出信号を制御部26へ送る。
【0023】
作業車両1は、第1油圧ポンプ31と第2油圧ポンプ32と第3油圧ポンプ33とを有する。PTO22(Power Take Off)は、これらの油圧ポンプ31,32,33に、エンジン21からの駆動力の一部を伝達する。すなわち、PTO22は、これらの油圧ポンプ31,32,33とトランスミッション23とにエンジン21からの駆動力を分配する。
【0024】
第1油圧ポンプ31は、エンジン21からの駆動力によって駆動される。第1油圧ポンプ31から吐出された作動油は、作業機制御弁34を介して、上述したブームシリンダ13とバケットシリンダ14とに供給される。
【0025】
第1油圧ポンプ31は、可変容量型の油圧ポンプである。第1油圧ポンプ31の斜板或いは斜軸の傾転角が変更されることにより、第1油圧ポンプ31の吐出容量が変更される。第1油圧ポンプ31には、第1容量制御装置35が接続されている。第1容量制御装置35は、制御部26によって制御され、第1油圧ポンプ31の傾転角を変更する。これにより、第1油圧ポンプ31の吐出容量が制御部26によって制御される。
【0026】
第2油圧ポンプ32は、エンジン21からの駆動力によって駆動される。第2油圧ポンプ32から吐出された作動油は、ステアリング制御弁36を介して、上述したステアリングシリンダ18に供給される。
【0027】
第2油圧ポンプ32は、可変容量型の油圧ポンプである。第2油圧ポンプ32の斜板或いは斜軸の傾転角が変更されることにより、第2油圧ポンプ32の吐出容量が変更される。第2油圧ポンプ32には、第2容量制御装置37が接続されている。第2容量制御装置37は、制御部26によって制御され、第2油圧ポンプ32の傾転角を変更する。これにより、第2油圧ポンプ32の吐出容量が制御部26によって制御される。
【0028】
第3油圧ポンプ33は、エンジン21からの駆動力によって駆動される。第3油圧ポンプ33から吐出された作動油は、ブレーキ制御弁38を介して、ブレーキ装置39に供給される。第3油圧ポンプ33は、可変容量型の油圧ポンプである。第3油圧ポンプ33の斜板或いは斜軸の傾転角が変更されることにより、第3油圧ポンプ33の吐出容量が変更される。第3油圧ポンプ33には、第3容量制御装置40が接続されている。第3容量制御装置40は、制御部26によって制御され、第3油圧ポンプ33の傾転角を変更する。これにより、第3油圧ポンプ33の吐出容量が制御部26によって制御される。
【0029】
PTO22は、エンジン21からの駆動力の一部をトランスミッション23に伝達する。トランスミッション23は、エンジン21からの駆動力を走行装置24に伝達する。トランスミッション23は、エンジン21からの駆動力を変速して出力する。
【0030】
トランスミッション23は、例えば、遊星歯車機構と、遊星歯車機構の回転要素に接続される電動モータとを有するEMT(電気−機械式変速装置)である。或いは、トランスミッション23は、遊星歯車機構と、遊星歯車機構の回転要素に接続される油圧モータとを有するHMT(油圧−機械式変速装置)であってもよい。EMT及びHMTにおいてはモータを制御することで、トランスミッション23の速度比を連続的に変更することができる。或いは、トランスミッション23は、トルクコンバータと多段式の変速装置とを有するトルクコンバータ式のトランスミッションであってもよい。或いは、トランスミッション23は、HST(Hydro Static Transmission)であってもよい。
【0031】
走行装置24は、アクスル41と、走行輪4,5とを有する。アクスル41は、トランスミッション23からの駆動力を走行輪4,5に伝達する。これにより、走行輪4,5が回転する。作業車両1は、車速検出部42を備えている。車速検出部42は、トランスミッション23の出力軸の回転速度(以下、「出力回転速度」と呼ぶ)を検出する。出力回転速度は車速に対応しているため、車速検出部42は、出力回転速度を検出することで車速を検出する。また、車速検出部42は、トランスミッション23の出力軸の回転方向を検出する。出力軸の回転方向は、作業車両1の進行方向に対応しているため、車速検出部42は、出力軸の回転方向を検出することで作業車両1の進行方向を検出する進行方向検出部として機能する。車速検出部42は、出力回転速度及び回転方向を示す検出信号を制御部26に送る。
【0032】
図3は、作業車両1が備える制御系を示すブロック図である。
図3に示すように、作業車両1は、操作装置50と制御部26とを有する。操作装置50は、オペレータによって操作される。操作装置50は、アクセル操作装置51と、作業機操作装置52と、変速操作装置53と、前後進操作装置54(以下、「FR操作装置54」)と、ステアリング操作装置55と、ブレーキ操作装置56と、設定装置57とを有する。
【0033】
アクセル操作装置51は、アクセル操作部材51aと、アクセル操作検出部51bとを有する。アクセル操作部材51aは、エンジン21の目標回転速度を設定するために操作される。アクセル操作部材51aが操作されることにより、エンジン21の回転速度が変更される。アクセル操作検出部51bは、アクセル操作部材51aの操作量(以下、「アクセル操作量」と呼ぶ)を検出する。アクセル操作検出部51bは、アクセル操作量を示す検出信号を制御部26へ送る。
【0034】
作業機操作装置52は、作業機操作部材52aと作業機操作検出部52bとを有する。作業機操作部材52aは、作業機3を動作させるために操作される。作業機操作検出部52bは、作業機操作部材52aの位置を検出する。作業機操作検出部52bは、作業機操作部材52aの位置を示す検出信号を制御部26に出力する。作業機操作検出部52bは、作業機操作部材52aの位置を検出することで、作業機操作部材52aの操作量(以下、「作業機操作量」と呼ぶ)を検出する。
【0035】
変速操作装置53は、変速操作部材53aと変速操作検出部53bとを有する。オペレータは、変速操作部材53aを操作することにより、トランスミッション23の速度範囲を選択することができる。変速操作検出部53bは、変速操作部材53aの位置を検出する。変速操作部材53aの位置は、第1速及び第2速など複数の速度範囲に対応している。例えば、本実施形態のトランスミッション23では、第1速から第4速までの速度範囲を選択可能である。変速操作検出部53bは、変速操作部材53aの位置を示す検出信号を制御部26に出力する。
【0036】
変速操作装置53は、キックダウンスイッチ53cをさらに含む。変速操作検出部53bはキックダウンスイッチ53cが操作されたことを示す検出信号を制御部26に出力する。
【0037】
FR操作装置54は、前後進操作部材54a(以下、「FR操作部材54a」)と、前後進位置検出部54b(以下、「FR位置検出部54b」)とを有する。オペレータは、FR操作部材54aを操作することにより、作業車両1の前進と後進とを切り換えることができる。FR操作部材54aは、前進位置(F)と中立位置(N)と後進位置(R)とに選択的に切り換えられる。FR位置検出部54bは、FR操作部材54aの位置を検出する。FR位置検出部54bは、FR操作部材54aの位置を示す検出信号を制御部26に出力する。
【0038】
ステアリング操作装置55は、ステアリング操作部材55aを有する。ステアリング操作装置55は、ステアリング操作部材55aの操作に基づきパイロット油圧をステアリング制御弁36に供給することにより、ステアリング制御弁36を駆動する。なお、ステアリング操作部材55aはステアリング操作部材55aの操作を電気信号に変換してステアリング制御弁36を駆動してもよい。オペレータは、ステアリング操作部材55aを操作することにより、作業車両1の進行方向を左右に変更することができる。
【0039】
ブレーキ操作装置56は、ブレーキ操作部材56aとブレーキ操作検出部56bとを有する。オペレータは、ブレーキ操作部材56aを操作することにより、作業車両1の制動力を操作することができる。ブレーキ操作検出部56bは、ブレーキ操作部材56aの操作量(以下、「ブレーキ操作量」と呼ぶ)を検出する。ブレーキ操作検出部56bは、ブレーキ操作量を示す検出信号を制御部26に出力する。
【0040】
設定装置57は、作業車両1の各種の設定を行うための装置である。設定装置57は、例えばタッチパネル式の表示入力装置である。或いは、設定装置57は、ハードキーとディスプレイとを備える装置であってもよい。設定装置57は入力された設定を示す入力信号を制御部26に出力する。また、設定装置57は、制御部26からの指令信号に応じて、作業車両1の各種の情報を表示する。
【0041】
作業車両1は、ブーム位置検出部61とバケット位置検出部62とを有する。ブーム位置検出部61は、ブーム11の位置を検出する。例えば、ブーム位置検出部61は、ブーム11の角度を検出することでブーム11の位置を検出する。ブーム位置検出部61は、ブーム11の角度を直接的に検出するセンサであってもよい。或いは、ブーム位置検出部61は、ブームシリンダ13のストローク量を検出することで、ブーム11の角度を検出してもよい。ブーム位置検出部61は、ブーム11の位置を示す検出信号を制御部26に出力する。
【0042】
バケット位置検出部62はバケット12の位置を検出する。例えば、バケット位置検出部62は、バケット12の角度を検出することでバケット12の位置を検出する。バケット位置検出部62は、バケット12の角度を直接的に検出するセンサであってもよい。或いは、バケット位置検出部62は、バケットシリンダ14のストローク量を検出することで、バケット12の角度を検出してもよい。バケット位置検出部62は、バケット12の位置を示す検出信号を制御部26に出力する。
【0043】
作業車両1は、ブーム圧検出部63を有する。ブーム圧検出部63は、ブームシリンダ13のボトム圧を検出する。ブームシリンダ13のボトム圧は、ブームシリンダ13のボトム側の油室内の作動油の圧力である。ブームシリンダ13が伸長するときには、ブームシリンダ13のボトム側の油室に作動油が供給される。ブームシリンダ13が収縮するときには、ブームシリンダ13のボトム側の油室から作動油が排出される。なお、ブーム11が保持状態であるときには、ブーム11を保持するための負荷に応じた油圧がブームシリンダ13のボトム側の油室に作用する。ブーム圧検出部63は、ブームシリンダ13のボトム圧を示す検出信号を制御部26に入力する。
【0044】
作業車両1は、ブレーキ圧検出部64を有する。ブレーキ圧検出部64は、ブレーキ圧を検出する。ブレーキ圧は、ブレーキ装置39に供給される作動油の圧力である。ブレーキ圧検出部64は、ブレーキ圧を示す検出信号を制御部26に入力する。
【0045】
制御部26は、CPUなどの演算装置と、RAM及びROMなどのメモリとを有しており、作業車両1を制御するための処理を行う。例えば、制御部26は、アクセル操作量に応じたエンジン21の目標回転速度が得られるように、指令スロットル値を示す指令信号を燃料噴射装置25に送る。制御部26は、作業機操作検出部52bからの検出信号に基づいて作業機制御弁34を制御することにより、ブームシリンダ13とバケットシリンダ14に供給される油圧を制御する。これにより、ブームシリンダ13とバケットシリンダ14が伸縮して、作業機3が動作する。制御部26は、ブレーキ操作量に応じてブレーキ装置39に供給される油圧を制御する。これにより、ブレーキ装置39による制動力が調整される。
【0046】
また、制御部26は、各検出部からの検出信号に基づいて、トランスミッション23を制御する。例えば、制御部26は、FR操作装置54の位置に応じて、トランスミッション23の出力軸の回転方向を切り換える。制御部26は、変速操作部材53aの位置に応じて、トランスミッション23の速度範囲を切り換える。また、キックダウンスイッチ53cが操作されると、制御部26は、トランスミッション23の速度範囲を第1速にシフトダウンする。
【0047】
制御部26は、所定の自動シフトダウン条件が満たされたときに、自動シフトダウンを実行する。自動シフトダウンとは、トランスミッション23の速度範囲を第1速にシフトダウンすることを意味する。以下、自動シフトダウンに関する処理について説明する。
【0048】
図4は、自動シフトダウンに関する処理を示すフローチャートである。
図4に示すように、ステップS101では、トランスミッション23の速度範囲が、変速操作部材53aによって選択された速度範囲に設定される。ここでは、第2速以上の速度範囲が設定されているものとする。
【0049】
ステップS102では、自動シフトダウン条件の第1条件を満たすか否かを判定する。
図5は、第1条件を示す図である。
図5に示すように、第1条件は、自動シフトダウン設定が有効であること(条件a1)を含む。設定装置57によって、自動シフトダウン設定が有効に設定されている場合には、自動シフトダウン設定が有効であると判定される。
【0050】
第1条件は、FR操作部材54aが前進位置であること(条件a2)、ブレーキ圧が所定のブレーキ閾値Pth_br未満であること(条件a3)、減速が所定の第1時間閾値Ta1以上継続していること(条件a4)、車速が所定の第1速度閾値Vth1未満であること(条件a5)、アクセル操作量が所定の第1アクセル閾値Ath1より大きいこと(条件a6)を含む。
【0051】
なお、
図3に示すように、制御部26は、加速度検出部26aを有する。加速度検出部26aは、車速検出部42が検出した車速から作業車両1の加速度を算出する。なお、加速度センサが作業車両1に備えられている場合には、加速度センサが加速度検出部として作業車両1の加速度を検出してもよい。作業車両1の加速度が所定の第1加速度閾値以下である場合には、作業車両1が減速していると判定される。第1加速度閾値は、負の値である。
【0052】
また、第1条件は、前進が所定の第1前進時間閾値Tb1以上継続しており、且つ、作業機3が自動シフトダウン姿勢であること(条件a7)を含む。ブーム11の位置が地上付近であり、且つ、バケット12が水平であるときに、作業機3が自動シフトダウン姿勢であると判定される。ブーム11の位置が地上付近であるとは、ブーム位置検出部61が検出したブーム11の位置が、地上付近に相当する所定の高さ範囲内にあることを意味する。バケット12が水平であるとは、バケット12の角度が、
図1に示すようにバケット12の底面が概ね水平となるような角度範囲内であることを意味する。
【0053】
第1条件は、作業車両1が掘削状態であること(条件a8)を含む。ブーム11の高さが所定の高さ閾値以下であり、且つ、ブームシリンダ13のボトム圧が所定の圧力閾値以上であるときに、作業車両1が掘削状態であると判定される。
【0054】
上述した(条件a1)且つ(条件a2)且つ(条件a3)且つ(条件a4)且つ(条件a5)且つ(条件a6)且つ(条件a7又は条件a8)が満たされているときに、第1条件が満たされていると判定される。
図4に示すステップS102において第1条件が満たされているときには、ステップS103においてトランスミッション23の速度範囲が第1速にシフトダウンされる。すなわち、自動シフトダウンが実行される。ステップS102において第1条件が満たされていないときには、ステップS104に進む。
【0055】
ステップS104では、自動シフトダウン条件の第2条件を満たすか否かを判定する。
図6は、第2条件を示す図である。
図6に示すように、第2条件は、自動シフトダウン設定が有効であること(条件b1)FR操作部材54aが前進位置であること(条件b2)、ブレーキ圧が所定のブレーキ閾値Pth_br未満であること(条件b3)を含む。これらの条件b1〜b3は、上述した第1条件のa1〜a3と同様である。
【0056】
第2条件は、加速不足が所定の第2時間閾値Ta2以上継続していること(条件b4)、車速が所定の第2速度閾値Vth2未満であること(条件b5)、アクセル操作量が所定の第2アクセル閾値Ath2より大きいこと(条件b6)を含む。加速不足は、加速度が、0以上、且つ、所定の第2加速度閾値以下である状態を意味する。第2加速度閾値は正の値である。第2時間閾値Ta2は、第1条件の第1時間閾値Ta1よりも大きい。第2速度閾値Vth2は、第1条件の第1速度閾値Vth1より小さい。第2アクセル閾値Ath2は、第1条件の第1アクセル閾値Ath1より大きい。
【0057】
また、第2条件は、前進が所定の第2前進時間閾値Tb2以上継続しており、且つ、作業機3が自動シフトダウン姿勢であること(条件b7)、作業車両1が掘削状態であること(条件b8)を含む。第2前進時間閾値Tb2は、第1条件の第1前進時間閾値Tb1より小さい。
【0058】
上述した(条件b1)且つ(条件b2)且つ(条件b3)且つ(条件b4)且つ(条件b5)且つ(条件b6)且つ(条件b7又は条件b8)が満たされているときに、第2条件が満たされていると判定される。
図4に示すステップS104において第2条件が満たされているときには、ステップS103においてトランスミッション23の速度範囲が第1速にシフトダウンされる。すなわち、自動シフトダウンが実行される。ステップS104において第2条件が満たされていないときには、ステップS101に戻る。すなわち、トランスミッション23の速度範囲が、変速操作部材53aによって選択されている速度範囲に維持される。
【0059】
次に、ステップS105において、変速操作部材53aの位置が中立位置又は後進位置であるか否かが判定される。変速操作部材53aの位置が中立位置又は後進位置であるときには、ステップS101に戻る。従って、変速操作部材53aの位置が前進位置から中立位置又は後進位置に変更されたときには、ステップS101に戻る。
【0060】
また、ステップS106において、車速が所定の解除速度以上であるか否かが判定される。解除速度は、上述した第1車速閾値Vth1より大きい。また、解除速度は、上述した第2車速閾値Vth2より大きい。車速が所定の解除速度以上であるときには、ステップS101に戻る。
【0061】
以上のように、本実施形態に係る作業車両1では、車速に加えて、アクセル操作量と作業車両1の加速度とによって、自動シフトダウンの実行が判定される。このため、作業車両1の状態を精度よく判定することができる。
【0062】
具体的には、第1条件は、減速が所定の第1時間閾値Ta1以上継続していること(条件a4)、車速が所定の第1速度閾値Vth1未満であること(条件a5)、アクセル操作量が所定の第1アクセル閾値Ath1より大きいこと(条件a6)を含む。このような状態は、例えば、アクセル操作部材51aを大きくは操作せずに作業車両1が地山に突っ込み始めたときに、牽引力が不足しているために作業車両1が減速している状態である。本実施形態に係る作業車両1では、このような状態を精度よく判定して、自動シフトダウンを実行することができる。
【0063】
また、第2条件は、加速不足が所定の第2時間閾値Ta2以上継続していること(条件b4)、車速が所定の第2速度閾値Vth2未満であること(条件b5)、アクセル操作量が所定の第2アクセル閾値Ath2より大きいこと(条件b6)を含む。このような状態は、例えば、作業車両1が地山に突っ込んでおり、アクセル操作部材51aを大きく操作しているにも関らず、牽引力が不足しているために作業車両1が十分に加速していない状態を意味する。本実施形態に係る作業車両1では、このような状態を精度よく判定して、自動シフトダウンを実行することができる。
【0064】
また、アクセル操作量と作業車両1の加速度とを考慮することによって自動シフトダウンの誤判定を抑えることができるため、誤判定を防止するために速度閾値Vth1,Vth2を過度に小さな値に設定しなくてもよい。このため、自動シフトダウンの判定を迅速に行うことができる。
【0065】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0066】
本発明は、上述したホイールローダに限らず、ブルドーザ、トラクタ、フォークリフト、或いはモータグレーダ等の他の種類の作業車両に適用されてもよい。
【0067】
自動シフトダウンでは、第1速以外の速度範囲にシフトダウンされてもよい。例えば、自動シフトダウンにおいて現在の速度範囲から1段階低速の速度範囲にシフトダウンされてもよい。
【0068】
上述した第1条件及び第2条件に含まれる各種の条件の一部が省略或いは変更されてもよい。或いは、第1条件及び第2条件にさらに別の条件が追加されてもよい。
【0069】
トランスミッションの速度範囲は、第1速から第4速までに限らない。例えば、トランスミッションの速度範囲は、第1速から第3速までであってもよい。或いは、トランスミッションの速度範囲は、第1速から第4速以上の速度範囲までであってもよい。