(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。各図において、矢印Zは上下方向を示し、矢印X及びYは互いに直交する水平方向を示す。
【0013】
図1は本発明の一実施形態に係る位置決め装置2を備える製造装置Aの説明図である。製造装置Aは、環状コア101と環状コア101に装着された複数の導体セグメント102とを備えるステータ100を製造する装置であり、複数の導体セグメント102の隣接する端部対を溶接する装置である。製造装置Aは、溶接装置1と、位置決め装置2と、一対のレール3、3と、を備える。
【0014】
<溶接装置>
溶接装置1は、溶接ユニット11と、昇降ユニット12と、可動レール13と、一対の固定レール14、14と、複数の支柱15と、を備える。溶接ユニット11は、例えばプラス極の溶接部(溶接トーチ)を備え、複数の導体セグメント102の隣接する端部対をその上方から溶接する。
【0015】
昇降ユニット12は、溶接ユニット11を支持すると共に溶接ユニット11をZ方向に昇降する機構を備える。可動レール13はY方向に延設されており、昇降ユニット12を支持すると共に昇降ユニット12のY方向の移動を案内する。
【0016】
一対の固定レール14、14はそれぞれX方向に延設されており、可動レール13の端部をそれぞれ支持する。可動レール13は一対の固定レール14、14上に架設されて支持され、一対の固定レール14、14は可動レール13のX方向の移動を案内する。各固定レール14は、X方向に離間して配置された2つの支柱15によって水平に支持されている。
【0017】
係る構成からなる溶接装置1では、昇降ユニット12により溶接ユニット11をZ方向に移動可能であり、可動レール13の案内による昇降ユニット12の移動により溶接ユニット11をY方向に移動可能である。更に、一対の固定レール14、14の案内による可動レール13の移動により溶接ユニット11をX方向に移動可能である。こうして溶接ユニット11を3次元方向に移動することができ、溶接部位に移動することができる。
【0018】
なお、昇降ユニット12が溶接ユニット11を昇降する機構、可動レール13の案内による昇降ユニット12の移動機構、一対の固定レール14、14の案内による可動レール13の移動機構は、公知の機構を採用でき、例えば、モータ等の駆動源と、駆動源の駆動力を伝達する伝達機構(例えば、ベルト伝達機構、ボールネジ機構、ラック−ピニオン機構等)と、から構成することができる。また、これらの構成の移動量を検知するセンサを設けることで、これらの構成の位置制御が可能となる。なお、溶接ユニット11の移動機構は、このような直線動作機構に限られず、例えば、多関節ロボット等であってもよい。
【0019】
<位置決め装置>
図1〜
図3を参照して位置決め装置2について説明する。
図2は位置決め装置2の一部を示す説明図であり、
図3は位置決め装置2が備える移動機構241、251の説明図である。
【0020】
まず、
図1を参照してステータ100の支持構造について説明する。位置決め装置2は、ベース部材28と、回転機構29とを備える。ベース部材28は方形板状をなしており、その下面には複数のスライダ3aが設けられている。一対のレール3、3は互いにY方向に離間し、各レール3はX方向に延設されている。スライダ3aはレール3と係合し、レール3上をスライドする。これにより、ベース部材28はX方向に移動可能となっている。
【0021】
ベース部材28には不図示の移動機構が設けられており、X方向に往復移動される。ベース部材28は、例えば、溶接対象となる未処理のステータ100を搬入する場合、
図1におけるレール3の右端の位置に移動され、回転機構29にステータ100が搭載される。その後、
図1の位置に移動されて溶接作業が行われる。溶接作業が終了すると、再び
図1におけるレール3の右端の位置に移動され、ステータ100が搬出される。
【0022】
回転機構29は、ベース部材28に搭載されている。回転機構29は、Z方向に延びる回転中心aの周りに回転する回転部と、回転部を回転する駆動ユニット(例えばモータ等の駆動源と、歯車機構等の伝達機構)を備える。回転部の回転量を検知するセンサを設けることで、その回転量の制御が可能となる。
【0023】
環状コア101は回転部に搭載される。環状コア101は、その中心軸方向が回転中心aと同心で、かつ、上下方向となる姿勢で、回転部に支持される。回転部の回転により、矢印bで示すように、環状コア101も回転中心aの周りに双方向に回転可能である。
【0024】
次に、主に
図2及び
図3を参照して、位置決め装置2は、方形板状の支持部材21を備える。支持部材21は、その中央部に孔(開口)21aが形成されている。溶接ユニット11はこの孔21aを通過して支持部材21の下方へ進出可能である。
【0025】
支持部材21は、昇降体22により水平姿勢で支持されている。昇降体22は昇降機構23によってZ方向に移動する機構である。支持部材21の下面には、X方向に離間して移動機構241、251が支持されている。移動機構241は、Y方向に離間した可動体242、242を互いに近接又は離間する方向に移動する機構である。移動機構251は、移動機構241と同様の機構である。移動機構251は、Y方向に離間した可動体252、252を互いに近接又は離間する方向に移動する機構である。
【0026】
2つの可動体242の一方には、スペーサ244を介して支持板243が水平姿勢で支持されており、2つの可動体242の他方には、支持板243が水平姿勢で直接支持されている。このため、2つの支持板243は、スペーサ2244の高さ分だけZ方向にずれたオフセット配置となっている。
【0027】
2つの可動体252の一方には、スペーサ254を介して支持板253が水平姿勢で支持されており、2つの可動体252の他方には、支持板253が水平姿勢で直接支持されている。このため、2つの支持板253は、スペーサ2254の高さ分だけZ方向にずれたオフセット配置となっている。
【0028】
2つの支持板243におけるY方向一方側(
図2中では前方側、
図3中では左側)と、2つの支持板253におけるY方向一方側(
図2中では前方側)とには、導体セグメント102の端部列を位置決めする位置決め部材26が支持されている。また、2つの支持板243におけるY方向他方側(
図2中では後方側、
図3中では右側)と、2つの支持板253におけるY方向他方側(
図2中では後方側)とには、導体セグメント102の端部列を位置決めする位置決め部材27が支持されている。位置決め部材26、27はX方向に延びる板状の部材であり、X方向の両端部が支持板243、253に支持されている。言い換えると、Y方向一方側(又はY方向他方側)における支持板243から支持板253に亘って、位置決め部材26(又は位置決め部材27)が設けられる。
【0029】
既に述べたとおり、2つの支持板243は、Z方向にずれたオフセット配置となっており、また、2つの支持板253も、Z方向にずれたオフセット配置となっている。位置決め部材26は、下側に位置する支持板243、253の上面に支持されており、位置決め部材27は、上側に位置する支持板243、253の下面に支持されている。こうして位置決め部材26、27は、互いにZ方向にずれて配置されており、位置決め部材26が下側に、位置決め部材27が上側に配置される。
【0030】
移動機構241、251の駆動により、位置決め部材26、27はY方向に移動可能である。
図3はその移動態様を示している。状態ST1は2つの可動体252がY方向に最も離れた状態を示している。移動機構241、251は同期的に駆動され、状態ST1では、図示していない2つの可動体242もY方向に最も離れた状態となる。状態ST2は2つの可動体252がY方向に最も近接した状態を示している。移動機構241、251は同期的に駆動され、状態ST2では、図示していない2つの可動体242もY方向に最も近接した状態となる。
【0031】
可動体242、252の移動により、位置決め部材26、27はY方向に平行移動する。状態ST1では位置決め部材26と位置決め部材27との重なりが最も小さくなり、状態ST2では位置決め部材26と位置決め部材27との重なりが最も大きくなる。位置決め部材26、27を移動させることで導体セグメント102の端部列の位置決めを行うが、その詳細は後述する。
【0032】
なお、本実施形態では、位置決め部材26、27を互いに平行移動する構成としたが、これらを回動する構成としてもよい。昇降機構23、移動機構241及び251は、公知の機構を採用でき、例えば、エアーなどの流体で駆動するアクチュエータ機構である。或いは、モータ等の駆動源と、駆動源の駆動力を伝達する伝達機構(例えば、ベルト伝達機構、ボールネジ機構、ラック−ピニオン機構等)と、から構成する駆動機構とすることができる。また、これらの構成の移動量を検知するセンサを設けることで、これらの構成の位置制御が可能となる。
【0033】
次に、
図3及び
図4を参照して位置決め部材26、27について説明する。
図4は位置決め部材26、27の説明図である。
【0034】
位置決め部材26は、本体部261を備える。本体部261はX方向に長い、外形が方形の板状の部材であり、その中央部には開口部261aが形成されている。開口部261aは本実施形態の場合、その周囲が閉じられた方形の孔であって本体部261をその厚み方向に貫通している。開口部261aはこのような貫通孔とする他、その周囲の一部が開いたC字型やU字型の切欠きであってもよい。開口部261aは後述する端部列LNを挿入可能な大きさを有している。
【0035】
本体部261のY方向の両側部には、凸部261c、261cが一体的に形成され、凸部261c、261c間には凹部261bが形成されている。本体部261は、例えば、金属などの導電性を有する部材から構成することができ、その端部(例えば環状コア101の中心軸側の端部)には、溶接ユニット11のプラス極と共に使用されるアース電極が接続される接続部(例えばネジ孔)261dを設けることができる。この接続部261dに接続されるアース電極には、例えば、
図2に示す破線の描写のように這わせられた配線4aを接続することができる。これにより、位置決め部材26自体をアース電極として利用することができる。
【0036】
本体部261の凸部261c、261cにおける開口部261aの部分には、共にY方向の一方側(
図4中では後方側)に向いて開口する位置決め部262、263が一体的に設けられている。位置決め部262は、第1の凸部261cにおける開口部261aの内縁に形成されている。より具体的には、位置決め部262は、開口部261aの4辺のうち、X方向と平行な1辺に形成されている。位置決め部263は、第2の凸部261cにおける開口部261aの内縁とは反対側(つまり、第2の凸部261cの外縁に)形成されている。より具体的には、位置決め部263は、本体部261の外縁をなす4辺のうち、X方向と平行で、かつ、位置決め部262が形成されている辺とは反対側の1辺に形成されている。
【0037】
位置決め部262、263は、後述する端部対PEを位置決めする複数のガイド部2621、2631を備える。本実施形態の場合、各ガイド部2621、2631は、Y方向に開口した切欠き部であり、X−Y平面における断面形状がV字状をなしている。このV字は、底面BSと一対の斜面SSとから形成されている。一対の斜面SSは、深さ方向で見て、互いに徐々に接近するように傾斜しており、底面BSは一対の斜面SSの最深部を直線的に接続する平坦面をなしている。
【0038】
ガイド部2621を形成した結果、隣接するガイド部2621間にはY方向に突出した突出部が形成され、この突出部はX方向に間隔を開けて複数形成される。
【0039】
なお、ガイド部2621、2631の形状は、断面V字状に限定するものではなく、例えば、U字型、角型であってもよい。
【0040】
位置決め部材27は、位置決め部材26と異なる形状であってもよいが、本実施形態の場合、同じ形状の部材としている。これは、製造コスト等の面で有利である。簡単に説明すると、位置決め部材27は、位置決め部材26と同様に、本体部271、開口部271a、凹部271b、凸部271c、位置決め部272、273を備え、位置決め部272、273は複数のガイド部2721、2731を備えている。位置決め部材27もアース電極の接続部271dを中心軸側の端部に設けることができ、この接続部271dに接続されるアース電極には、例えば、
図2に示す破線の描写のように這わせられた配線4bを接続することができる。
【0041】
位置決め部262、263は、それぞれ、凸部261c、261cよりも大きく突出させて設けられる。同様に、位置決め部272、273は、それぞれ、凸部271c、271cよりも大きく突出させて設けられる。これにより、位置決め部材26、27を
図4の姿勢、すなわち凸部261c及び凸部271cにおける突出側の面を向かい合わせた状態で重ね合わせた場合、位置決め部262と位置決め部273及び位置決め部263と位置決め部272とが互いに対向するように位置させることができる。本実施形態の場合、法線方向における位置決め部の厚みは同じ厚み寸法で形成される。また、それぞれの位置決め部材26,27の外縁に形成される位置決め部263、273は、他方位置決め部材の開口部261a、271aに挿通可能に径方向に延設して形成される。
【0042】
<制御ユニット>
図5は製造装置Aの制御ユニット5のブロック図である。制御ユニット5は製造装置A全体の制御を行う。
【0043】
制御ユニット5は、CPU等の処理部51と、RAM、ROM等の記憶部52と、外部デバイス(入力デバイス55、出力デバイス54、ホストコンピュータ)と処理部51とをインターフェースするインターフェース部53と、を含む。インターフェース部53には、I/Oインターフェースの他、ホストコンピュータとの通信を行う通信インターフェースも含まれる。ホストコンピュータは、例えば、製造装置Aが配備された設備全体を制御するコンピュータである。
【0044】
処理部51は記憶部52に記憶されたプログラムを実行し、入力デバイス(例えば、各種のセンサ)55の検出状態管理や、出力デバイス54(例えば、各種のアクチュエータ)54の動作を制御する。入力デバイス55には、上述した各種のセンサが含まれ、出力デバイス54には上述した各種駆動源が含まれる。
【0045】
<位置決め例>
位置決め部材26、27による導体セグメント102の端部列の位置決め例について
図3、
図6及び
図7を参照して説明する。
図6及び
図7は位置決め動作例の説明図であり、位置決め途中の状態を示している。まず、
図6を参照して本実施形態が想定している、導体セグメント102の一般的な配置態様について説明する。
【0046】
環状コア101は、その内周面に開口した複数のスロット101aが放射状に形成されている。スロット101aは環状コア101を中心軸方向に貫通している。導体セグメント102は、その原形が略U字型をなしており、その2本の脚部が隣接するスロット101a、101a間の歯部101bを挟んで挿入される。導体セグメント102の端部Eは、環状コア101の端面から突出し、環状コアの101の周方向に隣接する別々の導体セグメント102の端部E、Eが端部対PEを構成する。この端部対PEは、環状コア101の径方向に配列されて端部列LNを構成する。端部列LNは、隣接するスロット101a間(言い換えると、歯部101b上)に一つ形成され、放射状に複数列形成されることになる。
【0047】
位置決め部材26、27は、端部列LN毎に端部対PEの位置決めを行う。
図6及び
図7を参照して、本実施形態の場合、隣接する2列の端部列LNが同時に位置決めされる。位置決め部材26、27は、
図3、
図6に示すように、環状コア101の中心軸方向(Z方向)に重ねて配置される。特に
図3に示すように、位置決め部材26の一方(
図3中では右方)の凸部261cは、位置決め部材27の凹部271bと重なり、位置決め部材27の一方(
図3中では左方)の凸部271cは、位置決め部材26の凹部261bと重なる。本実施形態の場合、これらは接しているが、接していなくてもよい。
【0048】
位置決め部材26、27と、ステータ100とは、開口部261a、271aの真下に端部列LNが位置するように、互いに相対位置関係が予め設定されている。
図7に示すように、位置決め部材26の内縁に形成された各ガイド部262は、位置決め部材27の外縁に形成された各ガイド部273と環状コア101の周方向で対向するように配設されており、特に、互いの底面BSが対向するように配設されている。同様に、位置決め部材26の外縁に形成された各ガイド部263は、位置決め部材27の内縁に形成された各ガイド部272と環状コア101の周方向で対向するように配設されており、特に、互いの底面BSが対向するように配設されている。
【0049】
次に、端部対PEの溶接手順について
図8を参照して説明する。
図8は位置決め、溶接手順例の説明図である。まず、溶接対象とする、環状コア101の周方向に隣接する2つの端部列LNの周方向における位置が、状態ST11で示すように、位置決め部材26、27の真下の位置にくるように移動させる。移動は、回転機構29によりステータ100を回転させることにより行う。
【0050】
次に、昇降機構23により支持部材21を降下させる。これにより、状態ST12に示すように、位置決め部材26、27が降下し、溶接対象の2つの端部列LNのうち、第1(
図8中では左方)の端部列LNが開口部261aに、第2(
図8中では右方)の端部列LNが開口部271aにそれぞれ挿入される。なお、位置決め部材26、27の各開口部261a、271aは、位置決め部材26、27の重なり具合によって開口量が変化する。端部列LNの挿入前の各開口部261a、271aの開口量は、開口部261a、271aの開口量が最大となるよう、
図3の状態ST1に示したように、事前に可動体242、242及び可動体252、252をそれぞれ最も離間した位置で設定しておくことが好ましい。
【0051】
次に、移動機構241、251を駆動して可動体242、242及び可動体252、252をそれぞれ近接させる。これにより位置決め部材26、27がY方向に互いに重なる方向で移動する。
図6、
図7はその途中の状態を示し、
図8の状態ST13は移動が完了した状態(挟み込み位置となる位置決め位置に位置決め部材26、27が位置している状態)を示す。
【0052】
移動機構241、251の駆動前では、位置決め部262と位置決め部273は、開口部261a、271aに挿入された端部列LNと離間している。移動機構241、251の駆動により、位置決め部262と位置決め部273との間隔が徐々に狭まる。同様に、位置決め部263と位置決め部272との間隔が徐々に狭まる。これにより、開口部261aおよび開口部271aに挿入されたそれぞれの端部列LNは、位置決め部262と位置決め部273及び位置決め部263と位置決め部272によって、環状コア101の周方向両側(ここではY方向両側)から挟まれてその位置が規定される。環状コア101の周方向で見て、位置決め部262は第1の端部列LNの一方側(
図8中では左側)に当接し、位置決め部273は第1の端部列LNの他方側(
図8中では左側)に当接する。また、位置決め部263は第2の端部列LNの一方側(
図8中では左側)に当接し、位置決め部272は第2の端部列LNの他方側(
図8中では右側)に当接する。この時、端部列LNを構成する個々の端部対PEは、傾斜面SSの案内により環状コア101の径方向の位置決めがなされ、底面BSとの当接によって環状コア101の周方向の位置決めがなされる。
【0053】
次に、各端部対PEが位置決めされた状態で、溶接装置1によって溶接作業を行う。溶接ユニット11を各端部対PEに順次移動させて端部対PEを溶接する。溶接作業の順番としては、例えば、端部列LN単位で、各端部対PEを順次溶接してもよい。一列終了後、次の一列に溶接作業が移るので、溶接済みの列の冷却時間を確保し易くなる。
【0054】
2列分の端部列LNの全端部対PEの溶接が完了すると、次の2列分の端部列LNの溶接作業に移る。そのため、まず、溶接ユニット11を退避させる。作業完了の端部列LNの位置決めを解除するため、移動機構241、251を駆動して位置決め部材26、27を移動し、位置決め部262、263および位置決め部272、273を2列の端部列LNから離間させる。昇降機構23により支持部材21を上昇させると、位置決め部材26、27が上昇し、
図8の状態ST11に戻る。そして、回転機構29によりステータ100を2列分回転させ、次の溶接対象とする2つの端部列LNを位置決め部材26、27の真下の位置に移動する。これにより、溶接対象となる端部列LNを入れ替えることができる。以降、同様の手順で全端部列LNの端部対PEの位置決め、溶接を行って作業が完了する。
【0055】
本実施形態では、端部列LNを挟み込む各位置決め部262、263、272、273の組み合わせを、開口部の内縁のもの(262、272)と、位置決め部材外縁のもの(263、273)とにしている。この結果、位置決め対象となる1つの端部列LNが挿通する開口部は1つ(開口部261a又は開口部271a)である。端部列LNに対して、開口部の大きさに余裕を持たせることができ、対向する位置決め部間の近接−離間距離もより大きくとれる。したがって、各端部列LNの位置がある程度ばらついても、端部列LNを両側から挟み込んでその位置決めを行うことができる。
【0056】
また、1つの端部列LNが挿通する開口部を一つとすることができるため、位置決め装置2による位置決め前の前工程における端部列LNの位置精度の許容範囲を大きく設定することができる。つまり、前工程におけるステータの組立て品質の許容範囲、言い換えると環状コアに装着可能な導体セグメントの許容範囲を広くすることができ、ステータ製造システム全体におけるステータの製造効率を向上することができる。
【0057】
また、本実施形態は、回転機構29による溶接対象の入れ替えによって、一部の端部列LN毎に順次位置決め、溶接作業を行う構成である。これも、全端部列LNの位置決めを同時に行う構成に対して、各端部列LNの位置のばらつきに対応することができる。
【0058】
なお、本実施形態では、溶接対象を入れ替える際、回転機構29によってステータ100側を移動(回転)させたが、端部列LNと位置決め部材26、27との相対的な変位を生じさせることができればよく、したがって、位置決め部材26、27側を移動する構成としてもよい。また、昇降機構23により位置決め部材26、27側を昇降する構成としたが、端部列LNと位置決め部材26、27との相対的な変位を生じさせることができればよく、したがって、ステータ100側を昇降する構成としてもよい。
【0059】
<位置決め部材の他の例>
上述した実施形態では、隣接する2列の端部列LNの位置決めを同時に行うように構成したが、環状コア101の周方向で見て、複数列離れた2列の端部列LNの位置決めを同時に行うように構成してもよい。
図9、
図10はその一例を示す。同図に示す位置決め部材26’、27’の各構成のうち、上述した位置決め部材26、27に対応する構成については同じ符号を付しており、説明を省略する。以下異なる構成を説明する。
【0060】
位置決め部材26’は、位置決め部材26よりもY方向の幅が幅広に構成されており、開口部261aも幅広に形成されている。位置決め部材27’は位置決め部材26’と同じ形状である。開口部261a、271aがより大きくなるので、各端部列LNの位置のばらつきに対する対応力が向上する。また、隣接する端部列LN間の間隔がより狭く設計されたステータにおける端部列LNの位置決めにも対応できる。
【0061】
端部列LNの位置決めの際には、溶接対象となる2列の端部列LNの間に、今回は溶接対象としない別の端部列LNが存在する態様となる。別の端部列LNは開口部261a、271aの双方に挿入されることになる。溶接対象の入れ替えの際の回転機構29によるステータ100の回転量は、端部列LNで見て、例えば、1列分→2列分→1列分→2列分...となる。