(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
地盤中に管ロッドを所定深度まで挿入し、挿入後、管ロッドに取り付けた特殊ヘッドの噴射ノズルから硬化材を高速高圧で噴射し、この硬化材の噴射エネルギーで地盤を切削しながら噴射した硬化材と地盤とを攪拌混合させ、地盤中に固結改良体を造成して地盤を改良する高圧噴射攪拌工法による地盤改良方法において、
特殊ヘッドに2個以上の複数の噴射ノズルを略横方向に離間して設け、この複数の噴射ノズルにおいてそれぞれ噴射方向を僅かにずらして噴射した先で硬化材が交差するように硬化材を交差噴射させると共に、この複数の噴射ノズルからの硬化材の交差噴射を所定の角度だけ回転して所定の範囲に上下に移動することなくあるいは上方に移動しながら行い、その後、管ロッドを所定の長さ上方に引き上げてからあるいは上方に移動したところから、複数の噴射ノズルからの硬化材の交差噴射を所定の角度だけ回転して所定の範囲に上下に移動することなくあるいは上方に移動しながら行い、これを上方に向かって繰り返し行うことにより、地盤中に壁形の固結改良体を造成するようにしたことを特徴とする高圧噴射攪拌工法による地盤改良方法。
複数の噴射ノズルからの硬化材の交差噴射を所定の角度だけ回転して所定の範囲に上下に移動することなくあるいは上方に移動しながら行い、これを上方に向かって繰り返し行う際、噴射ノズルからの硬化材の交差噴射における回転方向にあっては、一方向に回転したら、管ロッドを上方に引き上げた次はその逆の方向に回転するようにし、回転方向を交互に変えるようにしたことを特徴とする請求項1記載の高圧噴射攪拌工法による地盤改良方法。
前記ヘッド本体と攪拌翼とに設けた複数の噴射ノズルにあっては、そのそれぞれの角度を変更可能にし、噴射したセメントミルクの交差する位置を任意の位置に変更できるようにしたことを特徴とする請求項3記載の地盤改良方法に用いる特殊ヘッド。
前記ヘッド本体と攪拌翼とに設けた複数の噴射ノズルにあっては、ノズルボディの先端に設け、このノズルボディが当該ヘッド本体及び攪拌翼から突出するようにしたことを特徴とする請求項3及び4記載の地盤改良方法に用いる特殊ヘッド。
前記攪拌翼において、噴射ノズル及びノズルボディを設けた箇所の反対側に、噴射ノズル及びノズルボディあるいはバランサー部材を取り付けたことを特徴とする請求項5記載の地盤改良方法に用いる特殊ヘッド。
前記ヘッド本体に攪拌翼を上下に二つ取り付け、このヘッド本体と二つの攪拌翼との前後両側に複数の噴射ノズルをそれぞれ設けると共に、上の攪拌翼を取り付けた上部側と下の攪拌翼を取り付けた下部側とを回転自在につなげ、この上部側の前後両側に設けた複数の噴射ノズルと下部側の前後両側に設けた複数の噴射ノズルとを、異なる方向に向けるようにしたことを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項記載の地盤改良方法に用いる特殊ヘッド。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる従来の高圧噴射攪拌工法による地盤改良方法にあっては、地盤中に壁形の固結改良体を造成する際、縦向きの円柱状の固結改良体Tcを直線上に多数造成するようにしていたため、その施工する作業時間が大幅に長くなり、これによって、工期の長期化を招くおそれがあり、さらには、造成した壁形の固結改良体についても、多数の円柱状の固結改良体Tcを直線上に造成するようにしていたため、
図19において斜線で表わした箇所に示すように、不必要な部分も造成してしまい、これによって、硬化材を大量に使用することで、工費の高騰を招くるおそれもあった。さらに、既設構造物直下の地盤を改良する場合は、地盤中に縦向きの円柱状の固結改良体Tcを造成するため、既設構造物直下の奥の地盤まで固結改良体Tcを造成することができず、地盤を良好に改良することができないといったこともあった。
【0005】
そこで、本発明は、このような従来の高圧噴射攪拌工法による地盤改良方法における不具合に鑑み、地盤中に壁形の固結改良体を造成する際、この壁形の固結改良体の造成を容易なものにして、施工する作業時間を短くして工期の短縮を図ると共に、工費の低減も図る高圧噴射攪拌工法による地盤改良方法を提供することを、その課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一の発明は、地盤中に管ロッドを所定深度まで挿入し、挿入後、管ロッドに取り付けた特殊ヘッドの噴射ノズルから硬化材を高速高圧で噴射し、この硬化材の噴射エネルギーで地盤を切削しながら噴射した硬化材と地盤とを攪拌混合させ、地盤中に固結改良体を造成して地盤を改良する高圧噴射攪拌工法による地盤改良方法において、特殊ヘッドに2個以上の複数の噴射ノズルを略横方向に離間して設け、この複数の噴射ノズルにおいてそれぞれ噴射方向を僅かにずらして噴射した先で硬化材が交差するように硬化材を交差噴射させると共に、この複数の噴射ノズルからの硬化材の交差噴射を所定の角度だけ回転して所定の範囲に上下に移動することなくあるいは上方に移動しながら行い、その後、管ロッドを所定の長さ上方に引き上げてからあるいは上方に移動したところから、複数の噴射ノズルからの硬化材の交差噴射を所定の角度だけ回転して所定の範囲に上下に移動することなくあるいは上方に移動しながら行い、これを上方に向かって繰り返し行うことにより、地盤中に壁形の固結改良体を造成するようにした高圧噴射攪拌工法による地盤改良方法である。
【0007】
第二の発明は、第一の発明において、複数の噴射ノズルからの硬化材の交差噴射を所定の角度だけ回転して所定の範囲に上下に移動することなくあるいは上方に移動しながら行い、これを上方に向かって繰り返し行う際、噴射ノズルからの硬化材の交差噴射における回転方向にあっては、一方向に回転したら、管ロッドを上方に引き上げた次はその逆の方向に回転するようにし、回転方向を交互に変えるようにした高圧噴射攪拌工法による地盤改良方法である。
【0008】
第三の発明は、第一又は第二の発明の高圧噴射攪拌工法による地盤改良方法に用いる特殊ヘッドであって、縦に向かうヘッド本体を備えると共に、このヘッド本体に左右両側の横方向に突出する攪拌翼を取り付け、このヘッド本体と攪拌翼とに複数の噴射ノズルを設けるようにした地盤改良方法に用いる特殊ヘッドである。
【0009】
第四の発明は、第三の発明において、ヘッド本体と攪拌翼とに設けた複数の噴射ノズルにあっては、そのそれぞれの角度を変更可能にし、噴射したセメントミルクの交差する位置を任意の位置に変更できるようにした地盤改良方法に用いる特殊ヘッドである。
【0010】
第五の発明は、第三又は第四の発明において、ヘッド本体と攪拌翼とに設けた複数の噴射ノズルにあっては、ノズルボディの先端に設け、このノズルボディが当該ヘッド本体及び攪拌翼から突出するようにした地盤改良方法に用いる特殊ヘッドである。
【0011】
第六の発明は、第五の発明において、攪拌翼において、噴射ノズル及びノズルボディを設けた箇所の反対側に、噴射ノズル及びノズルボディあるいはバランサー部材を取り付けた地盤改良方法に用いる特殊ヘッドである。
【0012】
第七の発明は、第三、第四、第五のいずれかの発明において、ヘッド本体に攪拌翼を上下に二つ取り付け、このヘッド本体と二つの攪拌翼との前後両側に複数の噴射ノズルをそれぞれ設けると共に、上の攪拌翼を取り付けた上部側と下の攪拌翼を取り付けた下部側とを回転自在につなげ、この上部側の前後両側に設けた複数の噴射ノズルと下部側の前後両側に設けた複数の噴射ノズルとを、異なる方向に向けるようにした地盤改良方法に用いる特殊ヘッドである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、特殊ヘッドに設けた複数の噴射ノズルから噴射した先で硬化材が交差するように硬化材を交差噴射させると共に、これを所定の角度だけ回転して所定の範囲に上下に移動することなくあるいは上方に移動しながら行い、その後、管ロッドを所定の長さ上方に引き上げてからあるいは上方に移動したところから、複数の噴射ノズルからの硬化材の交差噴射を所定の角度だけ回転して所定の範囲に上下に移動することなくあるいは上方に移動しながら行い、これを上方に向かって繰り返し行うようにしたことで、地盤中に壁形の固結改良体を造成する際、従来のような縦向きの円柱状の固結改良体を直線上に多数造成するといったことを無くして、壁形の固結改良体を容易に造成することができ、これにより、施工する作業時間を短くして工期の短縮を図ることができると共に、工費の低減も図ることができる。しかも、既設構造物直下の地盤を改良する場合でも、既設構造物直下の奥の地盤まで壁形の固結改良体を造成することができ、既設構造物直下の地盤を良好に改良することができる。
【0014】
また、噴射ノズルからの硬化材の交差噴射における回転方向を、一方向に回転したら、管ロッドを上方に引き上げた次はその逆の方向に回転するようにし、回転方向を交互に変えるようにしたことで、作業の効率が非常に良くなり、これにより、さらなる工期の短縮を図ることができる。
【0015】
本発明によれば、特殊ヘッドにおいて、縦に向かうヘッド本体を備えると共に、このヘッド本体に左右両側の横方向に突出する攪拌翼を取り付け、このヘッド本体と攪拌翼とに複数の噴射ノズルを設けるようにしたことで、地盤中に所望の横幅及び大きさの壁形の固結改良体を容易に造成することができる。
【0016】
また、複数の噴射ノズルにあって、そのそれぞれの角度を変更可能にし、噴射したセメントミルクの交差する位置を任意の位置に変更できるようにしたことで、地盤中に造成する固結改良体の大きさを所望の大きさに変更することができる。また、複数の噴射ノズルをノズルボディの先端に設け、このノズルボディがヘッド本体及び攪拌翼から突出するようにしたことで、ノズルボディ内の管路の長さを長くすることができ、これにより、噴射ノズルから噴射した硬化材の直進性を高め、地盤中において噴射した硬化材が周囲に拡散するのを抑えることができ、硬化材の噴射を良好に行うことができる。また、攪拌翼において、噴射ノズル及びノズルボディを設けた箇所の反対側に、噴射ノズル及びノズルボディあるいはバランサー部材を取り付けたことで、特殊ヘッドを地盤中で回転させるとき、特殊ヘッドにおける前後の力学的バランスが保たれるようになり、これにより、特殊ヘッド及び管ロッドを地盤中にて良好に回転させることができる。また、ヘッド本体に攪拌翼を上下に二つ取り付け、上の攪拌翼を取り付けた上部側と下の攪拌翼を取り付けた下部側とを回転自在につなげ、この上部側の前後両側に設けた複数の噴射ノズルと下部側の前後両側に設けた複数の噴射ノズルとを、異なる方向に向けるようにしたことで、一度の作業によって、特殊な形の壁形の固結改良体を地盤中に容易にかつ簡単に造成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の高圧噴射攪拌工法による地盤改良方法において使用する高圧噴射攪拌機の説明図である。
【
図2】本発明の地盤改良方法に用いる特殊ヘッドの正面図である。
【
図3】本発明の地盤改良方法に用いる特殊ヘッドの側面図である。
【
図4】本発明の地盤改良方法に用いる特殊ヘッドの平面図である。
【
図5】本発明の地盤改良方法に用いる特殊ヘッドの噴射ノズルについての説明図である。
【
図6】(a)本発明の高圧噴射攪拌工法による地盤改良方法の作業工程の説明図である。(b)本発明の高圧噴射攪拌工法による地盤改良方法の作業工程の説明図である。(c)本発明の高圧噴射攪拌工法による地盤改良方法の作業工程の説明図である。
【
図7】(d)本発明の高圧噴射攪拌工法による地盤改良方法の作業工程の説明図である。(e)本発明の高圧噴射攪拌工法による地盤改良方法の作業工程の説明図である。(f)本発明の高圧噴射攪拌工法による地盤改良方法の作業工程の説明図である。
【
図8】本発明の高圧噴射攪拌工法による地盤改良方法においてセメントミルクを交差噴射させたときの状態説明図である。
【
図9】本発明の高圧噴射攪拌工法による地盤改良方法において地盤中に造成する壁形の固結改良体の斜視図である。
【
図10】本発明の地盤改良方法に用いる特殊ヘッドの別の例の正面図である。
【
図11】本発明の地盤改良方法に用いる特殊ヘッドの別の例の正面図である。
【
図12】本発明の地盤改良方法に用いる特殊ヘッドの別の例の平面図である。
【
図13】本発明の高圧噴射攪拌工法による地盤改良方法において地盤中に造成する壁形の固結改良体の説明図である。
【
図14】本発明の地盤改良方法に用いる特殊ヘッドの別の例の正面図である。
【
図15】本発明の地盤改良方法に用いる特殊ヘッドの別の例の平面図である。
【
図16】本発明の高圧噴射攪拌工法による地盤改良方法において地盤中に造成する特殊な形の壁形の固結改良体の説明図である。
【
図17】本発明の高圧噴射攪拌工法による地盤改良方法において既設構造物直下の地盤を改良するときの説明図である。
【
図18】従来の高圧噴射攪拌工法による地盤改良方法の説明図である。
【
図19】従来の高圧噴射攪拌工法による地盤改良方法において地盤中に造成する壁形の固結改良体の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の高圧噴射攪拌工法による地盤改良方法及びこの地盤改良方法に用いる特殊ヘッドの一実施形態について説明する。
まず、この高圧噴射攪拌工法による地盤改良方法において使用する高圧噴射攪拌機について説明すると、
図1に示すように、地盤中に管ロッド2を所定深度まで挿入あるいは引き上げるための施工機械1を備え、この施工機械1はたとえば自走可能な小型の杭打ち機である。ただし、施工機械1としては小型の杭打ち機に限定されるものではなく、地盤改良の施工深度等の改良規模に応じてボーリングマシンや他の機械でも良い。そして、この施工機械1にあっては、マスト3を立設し、このマスト3に沿って管ロッド2を縦に向けて取り付けると共に、マスト3の上部に管ロッド2を地盤中に挿入したり引き抜いたりする昇降装置4と管ロッド2を回転させる回転装置5をそれぞれ設ける。管ロッド2はその内側を硬化材や圧縮空気等が通るようになる中空状の鋼管であり、その下端である先端に特殊ヘッド6を取り付けている。
【0019】
また、高圧噴射攪拌機における施工機械1の周辺設備としては、施工機械1に取り付けた管ロッド2及び特殊ヘッド6に硬化材や圧縮空気等を供給するための設備である。硬化材はセメントミルクであるが、このセメントミルクに各種の添加剤等を混ぜ合わせるようにしても良い。そして、圧縮空気を供給するための設備としては、コンプレッサー11であり、流量計12を介してコンプレッサー11から管ロッド2に圧縮空気を供給する。また、硬化材を供給するための設備としては、混合装置14を備え、この混合装置14において、セメントサイロ15からセメント原料を流入すると共に、水中ポンプ16を設けた水槽17から水を流入し、これらを混合して硬化材であるセメントミルクを生成する。そして、このセメントミルクを流量計18を介して高圧ポンプ19から成る硬化材供給装置20に供給し、この硬化材供給装置20から管ロッド2にセメントミルクを供給する。なお、各装置は図示していない発電機によって作動するようになる。
【0020】
一方、管ロッド2の下端である先端に取り付けた特殊ヘッド6については、
図2、
図3、
図4に示すように、先端側に多数のビット31を設けた縦に向かう略円柱状のヘッド本体30を備えると共に、このヘッド本体30に左右両側の横方向に突出する横向きの略角柱状の攪拌翼32を取り付け、この攪拌翼32の下部にもビット33を設ける。この攪拌翼32の横の長さとしては、たとえば400〜1000mm程度である。なお、ヘッド本体30及び攪拌翼32は、その内部に硬化材であるセメントミルクや圧縮空気等が通るための通路が形成されている。なお、この圧縮空気の通路については、後述するエアノズル35につながるようにしている。また、攪拌翼32は、その形状を横向きの略角柱状のものにしていたが、これに限定されるものではなく、横向きの略円柱状のものなどでも良い。
【0021】
そして、ヘッド本体30と攪拌翼32とには、その前側において前方に向かう噴射ノズル34を3個設け、この噴射ノズル34は、ノズルボディ38の先端に設けると共に管ロッド2の内側に連通し、ここから硬化材であるセメントミルクを噴射する。また、3個の噴射ノズル34及びノズルボディ38はヘッド本体30に設けると共に、攪拌翼32の左右にそれぞれ設けて、各噴射ノズル34が略横方向に離間するように配置する。この3個の噴射ノズル34の略横方向への離間する距離としては、たとえば200〜500mm程度である。なお、この噴射ノズル34については、3個に限定されるものではなく、2個、4個、あるいは5個、6個というように2個以上の複数の噴射ノズル34を略横方向に離間して設けるようにしても良い。また、2個以上の複数の噴射ノズル34については、略横方向に離間して設けるようにしたものであれば、上下方向において多少の上下差があっても良い。
【0022】
そして、ヘッド本体30と攪拌翼32とに設けた3個の噴射ノズル34にあっては、
図5に示すように、ヘッド本体30に設けた中央の噴射ノズル34は真っ直ぐ前方に向かうものの、攪拌翼32の左右に設けた両側の噴射ノズル34はそれぞれが中央側に僅かにずれて向くようにしており、これにより、3個の噴射ノズル34においてそれぞれ噴射方向を僅かにずらすことにより、噴射した先の一点で噴射したセメントミルクが交差するように、すなわち、セメントミルクを交差噴射させる。
【0023】
また、この3個の噴射ノズル34については、そのそれぞれの角度(向き)を変更可能にしている。ただし、3個の噴射ノズル34にあっては、角度を変更しても、常に、噴射した先で噴射したセメントミルクを交差させるようにする。これにより、
図5において点線で表わしたように、噴射したセメントミルクの交差する位置を任意の位置に変更できるようにし、地盤中に造成する固結改良体の大きさを所望の大きさに変更することができる。
【0024】
また、噴射ノズル34の周囲には複数のエアノズル35を設けており、このエアノズル35から噴射した圧縮空気によって噴射ノズル34から噴射したセメントミルクを包み込むようにすることで、地盤中に噴射したセメントミルクをより遠くまで到達させることができるようにしている。
【0025】
さらに、噴射ノズル34を先端に設けたノズルボディ38にあっては、ヘッド本体30及び攪拌翼32から前方に突出するようにしており、このノズルボディ38の突出する寸法としては、100〜300mm程度である。そして、この突出したノズルボディ38の外側にはガードカバー36を取り付け、このガードカバー36は上下左右それぞれにパネルを設けた構成となるものであって、このガードカバー36により突出したノズルボディ38を保護するようにし、これにより、ノズルボディ38が摩耗したり損傷したりするのを防止している。このように、ノズルボディ38を前方に突出するようにしたことにより、その先端に設けた噴射ノズル34から噴射するセメントミルクの直進性を高め、地盤中において噴射した硬化材が周囲に拡散するのを抑えることができ、硬化材の噴射を良好に行えるようにしている。
【0026】
また、攪拌翼32にあっては、その前側に噴射ノズル34及びノズルボディ38を設けた左右の箇所において、その反対側の後側に前記ガードカバー36と略同形のバランサー部材37をそれぞれ取り付ける。この攪拌翼32の左右の後側に取り付けたバランサー部材37によって、特殊ヘッド6を地盤中で回転させるとき、このバランサー部材37と前側に設けたノズルボディ38及びガードカバー36とにおいて前後の力学的バランスが保たれるようになり、これにより、特殊ヘッド6及び管ロッド2を地盤中にて良好に回転させることができる。
【0027】
次に、このような構成となる特殊ヘッド及び高圧噴射攪拌機を用いて行う本発明の高圧噴射攪拌工法による地盤改良方法について説明する。
【0028】
図6(a)に示すように、施工機械1に管ロッド2を取り付ける。そして、
図6(b)に示すように、施工機械1にて管ロッド2を回転させながら地盤中に挿入して行く。そして、管ロッド2の下端に取り付けた特殊ヘッド6にて地盤を掘削するが、このとき、地盤中への挿入が困難な場合は、管ロッド2の挿入を補助するため、特殊ヘッド6の噴射ノズル34やエアノズル35から水や圧縮空気などを噴射しながら行うようにする。そして、
図6(c)に示すように、管ロッド2を所定深度まで挿入する。
【0029】
そして、特殊ヘッド6に設けた3個の噴射ノズル34から噴射した先で硬化材であるセメントミルクが交差するようにセメントミルクを交差噴射させる。このとき同時に、その周囲に設けた複数のエアノズル35からも圧縮空気を噴射させる。これにより、噴射したセメントミルク及び圧縮空気の噴射エネルギーで地盤を切削しながら噴射したセメントミルクと地盤とを攪拌混合させ、地盤中に壁形の固結改良体Tを造成する作業を行う。
【0030】
これは、
図7(d)に示すように、特殊ヘッド6に設けた3個の噴射ノズル34を施工する地盤に向けてから、管ロッド2及び特殊ヘッド6を回転させながら3個の噴射ノズル34からセメントミルクを交差噴射させ、この3個の噴射ノズル34からのセメントミルクの交差噴射を所定の角度だけ回転して所定の範囲に上下に移動することなく行う。この回転方向は一方向のみであって、たとえば左方向に回転させて行き、この左方向とは上方から見たときの時計回り方向である。
【0031】
このセメントミルクの交差噴射における回転については、
図8に示すように、3個の噴射ノズル34を地盤中に造成しようとする壁形の固結改良体Tの右端部に向けてから、3個の噴射ノズル34からセメントミルクを交差噴射する。それから左方向である上方から見たときの時計回り方向に回転させて行く。そして、3個の噴射ノズル34が地盤中に造成しようとする壁形の固結改良体Tの左端部に向かって、ここまでセメントミルクを交差噴射する。
【0032】
なお、このときの回転の所定の角度としては、3個の噴射ノズル34の離間する距離によって異なるものの、地盤中に造成する壁形の固結改良体Tにおいて、その横幅を500mm以上にしようとすると、たとえば3〜30度程度である。
【0033】
そして、管ロッド2及び特殊ヘッド6を回転させながら3個の噴射ノズル34からセメントミルクを交差噴射させ、この交差噴射を所定の角度だけ回転して所定の範囲に上下に移動することなく行った後、管ロッド2及び特殊ヘッド6を所定の長さ上方に引き上げる。この上方への引き上げる長さとしては、30〜200mm程度である。また、管ロッド2及び特殊ヘッド6を上方に引き上げるときは、回転することなく引き上げる。
【0034】
そして、
図7(e)に示すように、管ロッド2及び特殊ヘッド6を上方に引き上げてから、管ロッド2及び特殊ヘッド6を回転させながら3個の噴射ノズル34からセメントミルクを交差噴射させ、この交差噴射を所定の角度だけ回転して所定の範囲に上下に移動することなく行う。このときの回転方向は、先程とは逆の方向で、右方向である上方から見たときの反時計回り方向である。
【0035】
その後、管ロッド2及び特殊ヘッド6を所定の長さ上方に引き上げる。そして、管ロッド2及び特殊ヘッド6を上方に引き上げてから、管ロッド2及び特殊ヘッド6を回転させながら3個の噴射ノズル34からセメントミルクを交差噴射させ、この交差噴射を所定の角度だけ回転して所定の範囲に上下に移動することなく行う。このときの回転方向は、また逆の方向となる左方向である上方から見たときの時計回り方向である。
【0036】
このように、管ロッド2及び特殊ヘッド6を回転させながら3個の噴射ノズル34からセメントミルクを交差噴射させる際の回転方向にあっては、一方向である左方向に回転したら、管ロッド2を上方に引き上げた次はその逆の方向である右方向に回転するようにし、回転方向を交互に変えるようする。
【0037】
そして、この管ロッド2及び特殊ヘッド6を回転させながら3個の噴射ノズル34からセメントミルクを交差噴射させ、これを所定の角度だけ回転して所定の範囲に上下に移動することなく行う一連の作業を、上方に向かって繰り返し行う。これにより、管ロッド2及び特殊ヘッド6を上方に引き上げながら、前述の一連の作業を行うことで、
図7(f)に示すように、上方に向かって壁形の固結改良体Tが段階的に造成されるようになる。なお、固結改良体Tが段階的に造成されるが、下側の固結改良体Tが固まる前に上側に固結改良体Tを造成することで、上下に位置する固結改良体Tが分断されることなく一体的なものにすることができる。
【0038】
そして、前述の一連の作業を、上方に向かって繰り返し行って、所定の深度まで壁形の固結改良体Tを造成したら、管ロッド2及び特殊ヘッド6を回転させながら3個の噴射ノズル34からセメントミルクを交差噴射させる作業を停止し、地盤中に挿入した管ロッド2及び特殊ヘッド6を地上に引き抜く。これによって、
図9に示すような壁形の固結改良体Tを地盤中に造成することにより、地盤の改良が行われる。
【0039】
一方、本発明の高圧噴射攪拌工法による地盤改良方法及びこの地盤改良方法に用いる特殊ヘッドについては、前述の一実施形態にて説明したものに限定されるものではなく、その他のものでも良い。
【0040】
たとえば、本発明の高圧噴射攪拌工法による地盤改良方法において、前述のものでは、管ロッド2及び特殊ヘッド6を回転させながら3個の噴射ノズル34からセメントミルクを交差噴射させ、この3個の噴射ノズル34からのセメントミルクの交差噴射を所定の角度だけ回転して所定の範囲に上下に移動することなく行うようにしていたが、この代わりに、3個の噴射ノズル34からのセメントミルクの交差噴射を所定の角度だけ回転して所定の範囲に上方に少しずつ移動しながら行い、その後、上方に移動したところから、3個の噴射ノズル34からの硬化材の交差噴射を所定の角度だけ回転して所定の範囲に上方に少しずつ移動しながら行い、これを上方に向かって繰り返し行うといったようにしても良い。このように3個の噴射ノズル34からのセメントミルクの交差噴射を所定の角度だけ回転して所定の範囲に上方に移動しながら行うようにした場合、前述のものではセメントミルクの交差噴射を所定の角度だけ回転して所定の範囲に行った後に、管ロッド2及び特殊ヘッド6を所定の長さ上方に引き上げる作業が必要になるが、この作業をなくすことができ、作業時間を短縮することができる。
【0041】
また、本発明の高圧噴射攪拌工法による地盤改良方法において、前述のものでは、管ロッド2及び特殊ヘッド6を回転させながら3個の噴射ノズル34からセメントミルクを交差噴射させ、セメントミルクの交差噴射を所定の角度だけ回転して所定の範囲に行うようにしているが、この代わりに、3個の噴射ノズル34からセメントミルクを交差噴射させる際、管ロッド2及び特殊ヘッド6の回転を停止して、回転停止状態にて、3個の噴射ノズル34からセメントミルクを交差噴射させ、これを複数回にわたって所定の角度だけ段階的に回転させることにより、所定の範囲に行うようにしても良い。このように回転停止状態にてセメントミルクを噴射させると、噴射したセメントミルクの到達する距離を延ばすことができ、これにより、噴射した先の一点で噴射したセメントミルクが交差する交差位置を遠くにすることができ、地盤中に長手方向の長さが長い壁形の固結改良体Tを造成することができる。
【0042】
さらに、前述のものでは、3個の噴射ノズル34からの交差噴射を所定の角度だけ回転して所定の範囲に行い、これを上方に向かって繰り返し行う際、噴射ノズル34からの交差噴射における回転方向を、一方向である左方向に回転したら、管ロッド2及び特殊ヘッド6を上方に引き上げた次はその逆の方向である右方向に回転するようにし、回転方向を交互に変えるようにしているが、この代わりに、3個の噴射ノズル34からの交差噴射を所定の角度だけ回転して所定の範囲に行った後、管ロッド2を上方に引き上げるときに、管ロッド2及び特殊ヘッド6を元に戻す方向に回転し、上方において、3個の噴射ノズル34から交差噴射を行うときの回転方向を、先程と同じ方向に回転するようにし、このように回転方向を交互に変えるのではなく、常に同じ方向にするようにしても良い。ただし、このように回転方向を常に同じ方向にすると、管ロッド2を上方に引き上げるときあるいは引き上げる前後において元に戻す作業が必要となり、作業の効率が少し低下するおそれがある。
【0043】
また、特殊ヘッド6については、前述のものでは、ヘッド本体30を備え、このヘッド本体30に攪拌翼32を取り付けて、このヘッド本体30と攪拌翼32とに複数の噴射ノズル34を先端に設けたノズルボディ38を設けた構成としていたが、たとえば、
図10に示すように、攪拌翼32を取り付けることなく、ヘッド本体30のみの構成とし、このヘッド本体30を少し大径にすることで、ここに複数の噴射ノズル34を略横方向に離間して設けるようにしても良い。
【0044】
また、特殊ヘッド6は、ヘッド本体30と攪拌翼32とからなり、ここに略横方向に離間して複数の噴射ノズル34を設けるようにしていたが、この複数の噴射ノズル34にあっては、ヘッド本体30と攪拌翼32とに上下二段にわたって設けるようにしても良く、さらには、
図11に示すように、ヘッド本体30に攪拌翼32を上下に二つ取り付けて、このヘッド本体30と上下二つの攪拌翼32とに複数の噴射ノズル34を上下二段にわたって設けるようにしても良い。なお、この複数の噴射ノズル34を上下二段にわたって設けるのを、三段以上の複数段にしても良い。このように、複数の噴射ノズル34を上下複数段にわたって設けることにより、1回のセメントミルクの交差噴射によって上下方向に厚みのある大きな固結改良体Tを造成することができ、これにより、上方に向かって固結改良体Tを造成するスピードを早くすることができ、効率の良い作業を行うことができる。
【0045】
また、複数の噴射ノズル34にあっては、ヘッド本体30及び攪拌翼32から前方に突出するようにしていたが、噴射ノズル34からの硬化材であるセメントミルクの噴射において、所望の直進性を有するようになるのであれば、ヘッド本体30及び攪拌翼32から前方に噴射ノズル34を突出させることなく、ヘッド本体30及び攪拌翼32の側面から直接噴射するようにしても良い。
【0046】
さらに、特殊ヘッド6にあっては、その複数の噴射ノズル34をヘッド本体30及び攪拌翼32の前側に前方に向けて設けていたが、この代わりに、
図12に示すように、攪拌翼32の左右の後側に設けたバランサー部材37を無くし、ヘッド本体30及び攪拌翼32において、前側に設けた複数の噴射ノズル34と同じ位置に同じ形状の複数の噴射ノズル34をヘッド本体30及び攪拌翼32の後側に後方に向けて設けるようにし、また、ガードカバー36も同様に設けるようにする。これにより、
図13に示すように、管ロッド2及び特殊ヘッド6を中心にして前後両側に同時に、壁形の固結改良体Tを地盤中に造成することができ、作業効率の大幅な向上を図ることができるようになる。
【0047】
また、特殊ヘッド6にあっては、ヘッド本体30に攪拌翼32を上下に二つ取り付け、このヘッド本体30と二つの攪拌翼32との前後両側に3個の噴射ノズル34及びノズルボディ38をそれぞれ設ける。そして、
図14に示すように、上の攪拌翼を取り付けた上部側と下の攪拌翼を取り付けた下部側との間に回転機構部39を設け、この回転機構部39によって、上部側と下部側とを回転自在につなげる。そして、この上部側の前後両側に設けた3個の噴射ノズル34と下部側の前後両側に設けた3個の噴射ノズル34とを、回転機構部39にて回転し、異なる方向に向けるようにする。これは、たとえば、
図15に示すように、上部側と下部側とを90度、異なる方向に向ける。
【0048】
これにより、一度の作業によって、
図16に示すように、十字状となる壁形の固結改良体Tを地盤中に造成することができるようになり、十字状といった特殊な形の壁形の固結改良体Tを容易にかつ簡単に造成することができる。なお、上部側と下部側とにおける異なる方向としては、90度に限定されるものではなく、30度や45度等の他の角度でも良い。
【0049】
また、本発明の高圧噴射攪拌工法による地盤改良方法にあっては、既設構造物K直下の地盤を改良する場合でも、地盤中に壁形の固結改良体Tを造成することで、既設構造物K直下の奥の地盤まで壁形の固結改良体Tを造成することができ、既設構造物K直下の地盤を良好に改良することができる。これは、
図17に示すように、既設構造物Kの近傍に管ロッド2を挿入し、ここで地盤中に壁形の固結改良体Tを既設構造物Kの奥まで造成する。これを多数行うことで、既設構造物K直下の地盤中に壁形の固結改良体Tを多数造成することができ、これにより、既設構造物K直下の地盤を改良するようにしている。
【0050】
また、本発明の高圧噴射攪拌工法による地盤改良方法にあっては、地盤中に壁形の固結改良体Tを造成して地盤を改良するだけのものに適用されるものではなく、これ以外にも、地盤中に縦に向かう板状の遮水板を設置し、その周囲に壁形の固結改良体Tを造成することによって、地盤を遮水板及び壁形の固結改良体Tによって分断して地盤を改良するようにしたもの、具体的には、地盤中に汚染物質が有する汚染土壌が存在する地盤において、汚染土壌の周囲に遮水板及び壁形の固結改良体Tを造成することにより、汚染土壌をその内部に封じ込めて周辺の地盤に汚染土壌の汚染物質が流出するのを防止する、あるいは調整池や河川の堤防において、調整池や河川の周囲に遮水板及び壁形の固結改良体Tを造成することにより、内部に水等を封じ込めて周囲に流出するのを防止するといった地盤改良方法にも適用することができる。