(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
顕微鏡本体と、標本を載置するステージと、前記ステージの上方に配置される光源と、前記光源からの照明光を前記標本に集光するコンデンサと、前記光源および/または前記コンデンサを保持する支柱部と、を備えた顕微鏡装置において、
前記支柱部は、前記ステージに支持・接続される第1の支柱部と、前記顕微鏡本体または前記ステージに支持・接続される第2の支柱部とから構成され、
前記第2の支柱部は、検鏡者が観察を行う前記顕微鏡装置の前面側と前記照明光の光軸との間に配置されるとともに、前記第1の支柱部は、前記顕微鏡装置の背面側と前記照明光の光軸との間に配置され、
前記第2の支柱部は、前記ステージの上面と平行な面に把持部を備えることを特徴とする倒立顕微鏡装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような倒立顕微鏡のうち、特に細胞発現の確認を主目的とする小型の倒立顕微鏡では、検鏡者が研究室、クリーンベンチといった場所に移動して使用することが多く、軽くて、持ち運びに便利であることが求められている。
【0005】
しかしながら、上記のような倒立顕微鏡は、精度の観点から、ダイキャスト、金型鋳物などの高精度な型を用い、金属材料により顕微鏡本体部や照明支柱が作製されるため、軽量化の点で問題を有していた。照明支柱等の本体部品の軽量化のために、金属より軽量な材料、例えば、プラスチック材料等を使用して同一形状の部品を製造した場合、強度が弱いため、精度よい観察が困難となる。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、検鏡者の標本視認性や作業性を劣化させることなく、精度を保持しつつ軽量化が可能な顕微鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る
倒立顕微鏡装置は、顕微鏡本体と、標本を載置するステージと、前記ステージの上方に配置される光源と、前記光源からの照明光を前記標本に集光するコンデンサと、前記光源および/または前記コンデンサを保持する支柱部と、を備えた顕微鏡装置において、前記支柱部は、前記ステージに支持・接続される第1の支柱部と、前記顕微鏡本体または前記ステージに支持・接続される第2の支柱部とから構成され、前記第2の支柱部は、検鏡者が観察を行う前記顕微鏡装置の前面側と前記照明光の光軸との間に配置されるとともに、前記第1の支柱部は、前記顕微鏡装置の背面側と前記照明光の光軸との間に配置され
、前記第2の支柱部は、前記ステージの上面と平行な面に把持部を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る
倒立顕微鏡装置は、上記発明において、前記第2の支柱部は、前面側から光軸方向に貫通する開口部を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る
倒立顕微鏡装置は、上記発明において、前記支柱部はプラスチックから形成されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る
倒立顕微鏡装置は、上記発明において、前記
把持部は、前記ステージの上面と平行な面に
形成されたくぼみ形状であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る顕微鏡装置は、軽量であるため可搬性が良く、また十分な剛性を有するため高精度な観察が可能であり、検鏡者の標本視認性や作業性も良好であるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施の形態にかかる顕微鏡装置を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。さらに、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。さらにまた、図面は、模式的なものであり、各部材の厚みと幅との関係、各部材の比率等は、現実と異なることに留意する必要がある。また、図面の相互間においても、互いの寸法や比率が異なる部分が含まれている。
【0014】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1にかかる倒立顕微鏡装置の概略構成を示す図である。
図2は、
図1の倒立顕微鏡装置における照明支柱近傍の拡大図である。
【0015】
顕微鏡装置100は、顕微鏡本体1と、標本3が載置されるステージ2と、ステージ2の上方に配置される光源5と、光源5からの照明光を標本3に集光するコンデンサ6と、光源5とコンデンサ6とを保持する照明支柱4と、を備える。実施の形態1に係る顕微鏡装置100は、ステージ2上方に配置された光源5からの照明光をコンデンサ6により標本3に照射し、標本を透過した観察像をステージ2の下部に配置された対物レンズ7により拡大観察する倒立顕微鏡である。
【0016】
顕微鏡本体1は、ステージ2を支持する前側固定部1aと、後側固定部1bとを有するとともに、倍率の異なる複数の対物レンズ7(図面では1本のみ図示し、他の図示を省略している)をレボルバ8を介して保持する保持部1cを備える。レボルバ8は、回転操作可能であり、複数本の対物レンズ7を択一的に光軸O1上に位置させる。焦準ハンドル9の操作により、保持部1cおよびレボルバ8は光軸O1に沿って上下動する。これにより、ステージ3上の標本2と対物レンズ7との相対距離が変化し、ピント調整が行われる。
【0017】
光軸O1上のレボルバ8の下方には、反射ミラー10が配置される。反射ミラー10は、標本3を透過し、対物レンズ7により拡大された観察像をO2方向(水平に対し45°の角度方向)に反射させる。反射ミラー10により反射された観察像は、図示しないリレー光学系でリレーされ、観察鏡筒11に取り付けられた接眼レンズ12に入射されて、検鏡者が観察像を目視観察する。
【0018】
照明支柱4は、顕微鏡装置100の背面側と光軸O1との間に配置される第1の支柱部4aと、顕微鏡装置100の前面側と光軸O1との間に配置される第2の支柱部4bとから構成される。照明支柱4は、第1の支柱部4aと第2の支柱部4bは、プラスチック材料から形成され、図示しないビス等で固定されている。照明支柱4をプラスチック材料により形成することにより軽量化を可能とするとともに、光源5を第1の支柱部4aと第2の支柱部4bにより保持することにより、剛性が低下することもない。実施の形態1では、別体である第1の支柱部4aと第2の支柱部4bとを固定して照明支柱4としているが、第1の支柱部4aと第2の支柱部4bとを一体成形してもよい。また、照明支柱4を構成する材料は、軽量化と剛性とを両立できればプラスチック材料に限定される必要はない。第1の支柱部4aと第2の支柱部4bは、ステージ2上に設けられ、それぞれステージ2に対して図示しないビス等により固定されている。なお、本明細書において、検鏡者が観察のために位置する側を顕微鏡装置100の前面側、前面と対向する側を顕微鏡装置100の背面側とする。
【0019】
第2の支柱部4bには、前面側から光軸方向に貫通する開口部4cが設けられている。開口部4cは、
図1に示すように、検鏡者はAに示す眼球位置で、接眼レンズ12を通して通常の顕微鏡観察を行い、標本3の観察場所を変えたい場合に、通常の眼球位置Aからわずかに情報の位置Bに眼球位置を移動させて、ステージ2上の標本3の位置をずらし、再度、位置Aで接眼レンズ12を覗きながら、視野内に観察対象が来るように調整する。したがって、開口部4cは、位置Bで検鏡者が標本3を観察可能な位置、すなわち位置B近傍から標本3まで結ぶ線13を遮らない位置に設けられる。
【0020】
また、第2の支柱部4bのステージ2の上面と平行な面には、検鏡者が顕微鏡装置100を把持するための把持部4dが設けられる。把持部4dは、検鏡者の持ちやすさを考慮し、第2の支柱部4bに凹状のくぼみ、または手をにぎりしめた際の形状に対応する形状に形成され、把持部4dの近傍には、検鏡者に把持部4dの位置を示すマーカー4eが設けられる。把持部4dは、その中心位置が顕微鏡装置100の重心と略同じ位置(または、重心を含む鉛直線上の位置)に形成されることが好ましく、これにより、検鏡者が把持部4dを把持する際、顕微鏡装置100が傾くおそれがなく、容易に顕微鏡装置100を移動させることができる。実施の形態1にかかる顕微鏡装置100は、照明支柱4を第1の支柱部4aと第2の支柱部4bから構成し、かつ、顕微鏡装置100の重心と略同じ位置(または、重心を含む鉛直線上の位置)に把持部4dを形成できるため、顕微鏡装置100の把持や移動がより容易となる。
【0021】
光源5は、透過照明用の光源であり、ハロゲンランプや水銀ランプ等が用いられる。また、照明支柱4は、光軸O1上に配置されるようにコンデンサ6を保持し、照明支柱4により保持されたコンデンサ6は、光源5からの照明光を標本3に集光する。
【0022】
実施の形態1に係る顕微鏡装置100において、検鏡者は、標本3をステージ2面に配置し、顕微鏡本体1に設けられた図示しないスイッチの入力により、光源5を点灯させて標本3を照明し、接眼レンズを覗きながら焦準ハンドル9を操作し、レボルバ8および対物レンズ7を昇降させてピント合わせを行う。
【0023】
視野内の所望の位置に観察対象がない場合、検鏡者は、眼球位置を接眼レンズ12の位置Aと、開口部4cから標本3が目視できる位置Bとに交互に移動させて、標本3の位置を確認しながら、視野内に観察対象物がくるように調整する。上記操作において、
図1にからも明らかなように、検鏡者は、眼球位置をわずかに移動させるだけで(AB間)、標本3の目視と接眼レンズ12内の観察像を確認することができるため、検鏡者の作業性が低下することがない。
【0024】
また、顕微鏡装置100を細胞発現の確認等に使用する場合、標本3は、通常シャーレ、ウエルプレート、フラスコなどの培養容器内にあり、標本3をステージ2上に配置する際、容器内の培養液をこぼさないよう慎重に載置する必要がある。実施の形態1に係る顕微鏡装置100は、照明支柱4を構成する第1の支柱部4aと第2の支柱部4bとを、光軸O1より顕微鏡装置100の前面側、および光軸O1より顕微鏡装置100の後方側に配置するため、ステージ2上の標本3の左右方向の空間を確保でき、標本3等の載置や位置合わせ、ならびに標本3への試薬の投入の際にも、作業性を損なうことがない。
【0025】
さらに、実施の形態1に係る顕微鏡装置100は、光源5およびコンデンサ6を第1の支柱部4aと第2の支柱部4bとにより強固に支えているため、照明光軸がずれによる観察像の劣化のおそれがない。また、長時間の使用により光源5が発熱した場合も、空冷や、第1の支柱部4aと第2の支柱部4bとによる伝熱が可能であるため、温度上昇を抑えることができ、照明支持4の熱変形量小さくできる。
【0026】
さらにまた、実施の形態1に係る顕微鏡装置100は、第1の支柱部4aと第2の支柱部4bとをプラスチック材料とするため、軽量化可能であり、移動を容易に行うことができる。また、第2の支柱部4bには把持部4dが形成され、検鏡者は把持部4dを把持して顕微鏡装置100を移動することができ、把持部4dを顕微鏡装置100の重心位置近傍に形成することにより、把持部4dを介して顕微鏡装置100を把持した際も、顕微鏡装置100が傾かず、より容易に運搬可能となる。
【0027】
実施の形態1では、開口部4cを設けることにより検鏡者が標本3を直接観察可能とするが、第2の支柱部の一部または全部を透明なプラスチック材料で形成すれば、開口部4cを設ける必要はない。また、第2の支柱部4bの開口部4cにレンズを配置してもよい。開口部4cにレンズを配置した場合、標本3を拡大して視認できるため、検鏡者の作業性を向上できる。
【0028】
実施の形態1では、第1の支柱部4aと第2の支柱部4bをステージ2上に配置しているが、第2の支柱部は顕微鏡本体1に取り付けられた観察鏡筒11に接続してもよい。
図3は、本発明の実施の形態1の変形例1にかかる倒立顕微鏡装置の概略構成を示す図である。変形例1に係る顕微鏡装置100Aにおいて、照明支柱4Aは、顕微鏡装置100の背面側と光軸O1との間に配置される第1の支柱部4aと、顕微鏡装置100の前面側と光軸O1との間に配置される第2の支柱部4b’とから構成される。第2の支柱部4b’は、観察鏡筒11上に支持、固定され、第2の支柱部4b’の前面側から光軸方向に貫通する開口部4c’が設けられている。開口部4c’は、実施例1と同様に、位置Bで検鏡者が標本3を観察可能な位置、すなわち位置B近傍から標本3まで結ぶ線14を遮らない位置に設けられる。変形例1のような構成とすることにより、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。なお、第2の支柱部4b’が接続される観察鏡筒11は、顕微鏡本体1と別体であってもよく、また、顕微鏡本体1と一体であるものでもよい。
【0029】
(実施の形態2)
実施の形態2にかかる顕微鏡装置は、検鏡者の標本3の目視を担保するために、第2の支柱部の一部が幅狭に形成される。
図4は、本発明の実施の形態2にかかる照明支柱近傍の拡大図である。実施の形態2において、照明支柱は、顕微鏡装置100の背面側と光軸O1との間に配置される第1の支柱部4aと、顕微鏡装置100の前面側と光軸O1との間に配置される第2の支柱部40とから構成される。第2の支柱部40は、顕微鏡本体またはステージ上から立設する土台部40aと、ステージと平行をなす光源保持部40bとからなる。
図4に示すように、土台部40aは、検鏡者が標本3を観察可能とするために、光源保持部40b側から幅が狭まるように形成される。
【0030】
実施の形態2において、視野内の所望の位置に観察対象がない場合、検鏡者は土台部40aの幅が狭くなっている左右の空間と接眼レンズ12とを交互に覗きながら、標本3の位置を確認し、視野内に観察対象物がくるように調整する。土台部40aの幅は小さいため、幅狭に形成された左右の空間を用いることにより、検鏡者は視点を大きくずらすことなく標本3の目視が可能となる。
【0031】
さらに、実施の形態2は、第2の支柱部40の土台部40aが幅狭であるものの、光源5およびコンデンサ6を、第1の支柱部4aと第2の支柱部40で両側から強固に支えるため、照明光軸のずれによる観察像の劣化のおそれがない。また光源5が発熱した場合も、空冷や、第1の支柱部4aと第2の支柱部40とによる伝熱が可能であるため、温度上昇を抑えることができ、照明支持の熱変形量小さくできる。
【0032】
さらにまた、実施の形態2は、第1の支柱部4aと第2の支柱部40とをプラスチック材料とするため、軽量化可能であり、移動を容易に行うことができる。また、第2の支柱部40に実施の形態1と同様の把持部を形成した場合、検鏡者は把持部により顕微鏡装置を容易に移動することができる。
【0033】
また、実施の形態2では、開口部4cを設けることにより検鏡者が標本3を直接観察可能とするが、第2の支柱部の一部または全部を透明なプラスチック材料で形成すれば、開口部4cを設ける必要はない。また、第2の支柱部4bの開口部4cにレンズを配置してもよい。開口部4cにレンズを配置した場合、標本3を拡大して視認できるため、検鏡者の作業性を向上できる。さらに、照明支柱を構成する第1の支柱部4aと第2の支柱部40とを、実施の形態1と同様に、光軸より顕微鏡装置の前面側、および光軸より顕微鏡装置の後方側に配置するため、ステージ2上の標本3の左右方向の空間を確保でき、標本3等の載置や位置合わせ、ならびに標本3への試薬の投入の際にも、作業性を損なうことがない。
【0034】
(実施の形態3)
実施の形態3にかかる顕微鏡装置は、観察鏡筒および接眼レンズに替えて、表示部を備える。
図5は、本発明の実施の形態3にかかる倒立顕微鏡装置の概略構成を示す図である。図中、実施の形態1の顕微鏡装置100と同一の構成には、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0035】
実施の形態3に係る顕微鏡装置200において、顕微鏡本体21は、観察鏡筒11および接眼レンズ12に替えて、液晶等から構成される表示部22を備える。
【0036】
実施の形態3では、光軸O1上のレボルバ8の下方に撮像素子23が配置される。撮像素子23は、標本3を透過し、対物レンズ7により拡大された観察像を撮像して電子信号を生成する。撮像素子23が生成した電子信号は、図示しないが蔵書リブにより画像処理されて、表示部22に表示される。検鏡者は、表示部22に表示された観察像を目視観察する。
【0037】
表示部22の所望の位置に観察対象がない場合、検鏡者は、視線を表示部22の方向15から開口部4cから標本3が目視できる方向14に交互に移動させて、標本3の位置を確認しながら、表示部22の所望の位置に観察対象物がくるように調整する。上記操作において、
図5からも明らかなように、検鏡者は、眼球位置をほとんど移動させることなく、視線方向を変えるだけで標本3の目視と表示部22の観察像を確認することができるため、検鏡者の作業性が低下することがない。
【0038】
また、実施の形態3は、実施の形態1と同様に、光源5およびコンデンサ6を、第1の支柱部4aと第2の支柱部4bで両側から強固に支えるため、照明光軸のずれによる観察像の劣化のおそれがなく、光源5が発熱した場合も、温度上昇を抑えることができ、照明支持4の熱変形量小さくできる。
【0039】
さらに、実施の形態3は、照明支柱4をプラスチック材料とするため、軽量化可能であり、移動を容易に行うことができる。また、把持部4dにより、検鏡者は顕微鏡装置200をより容易に移動することができる。
【0040】
さらにまた、実施の形態3において、第2の支柱部の一部または全部を透明なプラスチック材料で形成してもよく、また、第2の支柱部の開口部にレンズを配置してもよい。さらに、照明支柱を構成する第1の支柱部4aと第2の支柱部4bとを、実施の形態1と同様に、光軸O1より顕微鏡装置200の前面側、および光軸O1より顕微鏡装置200の後方側に配置するため、ステージ2上の標本3の左右方向の空間を確保でき、標本3等の載置や位置合わせ、ならびに標本3への試薬の投入の際にも、作業性を損なうことがないという効果を奏する。