(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1補強部材及び前記第2補強部材は、前記第1作用点部及び前記第2作用点部が、前記補強締結部材による締結時において、前記被締結部に対し面接触するように、予め撓んで形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の補強治具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のフランジ補強装置は、フランジの径が異なる場合、フランジの径の大きさに応じて、スペーサ及びケースを作成しなければならず、汎用性が低いものとなる。
【0005】
ここで、フランジを簡易的に補強すべく、フランジを挟み込むクランプを仮設する場合がある。通常、クランプは、フランジに対して点接触するものが用いられ、この場合、クランプに対し接触等による物理的な干渉が生じると、クランプがフランジから外れてしまう可能性がある。また、クランプは、フランジに与える荷重を調整することが困難であることから、フランジに対して適切な荷重を与えることができず、フランジを好適に補強できない可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、締結部に与える荷重を適切に調整でき、締結部からの逸脱を抑制することができる補強治具及び坑口装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の補強治具は、被締結部を締結部材により締結することで構成される締結部を補強する補強治具であって、前記被締結部を挟んで、前記被締結部の一方側に設けられる第1補強部材と、前記被締結部を挟んで、前記被締結部の他方側に設けられる第2補強部材と、前記第1補強部材と前記第2補強部材を締結する補強締結部材と、を備え、前記第1補強部材は、力が与えられる部位となる第1力点部と、前記被締結部の一方側に接触して前記被締結部を押圧する部位となる第1作用点部とを含み、前記第2補強部材は、力が与えられる部位となる第2力点部と、前記被締結部の他方側に接触して前記被締結部を押圧する部位となる第2作用点部とを含み、前記補強締結部材は、前記第1力点部及び前記第2力点部を締結し、前記第1補強部材と前記第2補強部材とが連結されることで形成される支点部を中心にして、前記第1作用点部及び前記第2作用点部に力を働かせることで、前記第1補強部材及び前記第2補強部材により前記被締結部を挟み込み、前記第1補強部材及び前記第2補強部材は、前記締結部材によって位置が規制されることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、第1補強部材、第2補強部材及び補強締結部材によって、第1力点部及び第2力点部と、第1作用点部及び第2作用点部と、支点部とを設けることができる。このため、各力点部、各作用点部及び支点部との位置関係、及び各力点部に与える補強締結部材による締結力等を適宜設計することで、各作用点部において被締結部に与える荷重を調整することができる。よって、被締結部に与える荷重を調整することができるため、被締結部に対して適切な荷重を与えることができ、締結部を好適に補強することができる。また、締結部材を活用して、第1補強部材及び第2補強部材の位置を規制することができるため、物理的な干渉による逸脱を抑制することができる。なお、第1補強部材及び第2補強部材は、被締結部に対して面接触可能な剛性、つまり、補強締結部材による締結力に対して、変形しない厚さまたは剛性(曲げ剛性)とすることが好ましい。
【0009】
また、前記第1補強部材及び前記第2補強部材のそれぞれは、長手方向に延びて形成され、前記第1補強部材の長手方向の他端部と、前記第2補強部材の長手方向の他端部とは、接触して配置されることで前記支点部となり、前記第1補強部材は、長手方向の一端部が前記第1作用点部となり、長手方向の他端部が前記支点部となり、前記第1作用点部と前記支点部との間が前記第1力点部となり、前記第2補強部材は、長手方向の一端部が前記第2作用点部となり、長手方向の他端部が前記支点部となり、前記第2作用点部と前記支点部との間が前記第2力点部となることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、各補強部材の長手方向において、各力点部を挟んで、一方側を各作用点部とし、他方側を支点部とすることができる。このため、第1補強部材及び第2補強部材を、長手方向に沿ってほぼ平行に設けることができることから、簡易な構成とすることができる。
【0011】
また、前記第1補強部材及び前記第2補強部材のそれぞれは、長手方向に延びて形成され、前記第1補強部材の長手方向の中央と前記第2補強部材の長手方向の中央とは、交差して配置されることで前記支点部となり、前記第1補強部材は、長手方向の一端部が前記第1作用点部となり、長手方向の他端部が前記第1力点部となり、前記第1作用点部と前記第1力点部との間が前記支点部となり、前記第2補強部材は、長手方向の一端部が前記第2作用点部となり、長手方向の他端部が前記第2力点部となり、前記第2作用点部と前記第2力点部との間が前記支点部となることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、各補強部材の長手方向において、支点部を挟んで、一方側を各作用点部とし、他方側を各力点部とすることができる。このため、各補強部材の支点部と各力点部の間の長さを調整して、各作用点部における荷重を調整できることから、補強締結部材の締結力が小さい場合であっても、各作用点部における荷重を適切に設計することができる。
【0013】
また、前記第1力点部は、前記第1補強部材の長手方向に沿って複数並べて設けられ、前記第2力点部は、前記第2補強部材の長手方向に沿って複数並べて設けられ、前記補強締結部材は、前記各第1力点部及び前記各第2力点部を締結するように、長手方向に沿って複数並べて設けられることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、各補強部材の長手方向に沿って、複数の補強締結部材を並べて設けることができるため、複数の補強締結部材による締結力を大きくすることができる。換言すれば、補強締結部材を複数設けることができる分、各補強締結部材の締結力を小さくできることから、補強締結部材の強度の増大を図る必要がない。
【0015】
また、前記第1補強部材には、前記被締結部から突出する前記締結部材の一部を収容する第1収容孔が形成され、前記第2補強部材には、前記被締結部から突出する前記締結部材の一部を収容する第2収容孔が形成されることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、第1収容孔及び第2収容孔に締結部材の一部を収容することで、第1補強部材及び第2補強部材の位置が締結部材によって位置規制される。このため、第1補強部材及び第2補強部材の締結部からの逸脱をより好適に抑制することができる。
【0017】
また、前記被締結部には、前記締結部材が複数締結され、前記第1補強部材は、前記第1力点部が複数設けられると共に、複数の前記締結部材に亘って配置され、前記第2補強部材は、前記第2力点部が複数設けられると共に、複数の前記締結部材に亘って配置され、前記補強締結部材は、前記各第1力点部及び前記各第2力点部を締結するように、複数設けられることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、第1補強部材及び第2補強部材を、被締結部に締結される複数の締結部材に亘って配置することができる。このため、第1補強部材及び第2補強部材を、被締結部の広い範囲に亘って配置できることから、被締結部に対する第1補強部材及び第2補強部材の設置数を低減でき、部品点数を少なくすることができる。また、第1補強部材及び第2補強部材を広い範囲に亘って配置することから、第1補強部材及び第2補強部材の任意の位置に複数の補強締結部材を配置できる。このため、複数の補強締結部材による締結力を大きくすることができる。
【0019】
また、前記第1補強部材及び前記第2補強部材は、前記第1作用点部及び前記第2作用点部が、前記補強締結部材による締結時において、前記被締結部に対し面接触するように、予め撓んで形成されていることが好ましい。
【0020】
この構成によれば、第1補強部材及び第2補強部材の曲げ剛性を考慮して、予め撓ませて形成することで、被締結部に対し第1補強部材及び第2補強部材を、好適に面接触させることができる。
【0021】
本発明の坑口装置は、隣接して設けられる複数の弁と、隣接する一方の前記弁に設けられるフランジと、隣接する他方の前記弁に設けられるフランジとを合わせて被締結部とし、締結部材によって前記被締結部が締結された締結部を補強する、上記の補強治具と、を備えることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、補強治具により、締結部を補強することができるため、地震等の振動によって、隣接する弁同士が離れることを抑制でき、耐震健全性を向上させることができる。
【0023】
また、前記補強治具は、合わされた前記フランジ同士の周囲に沿って、所定の間隔を空けて複数配置されていることが好ましい。
【0024】
この構成によれば、補強治具をフランジの周囲に沿って複数配置することで、フランジを全周に亘ってバランスよく補強することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明に係る実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能であり、また、実施例が複数ある場合には、各実施例を組み合わせることも可能である。
【実施例1】
【0027】
図1は、実施例1に係る補強治具が設けられる坑口装置の模式図である。
図2は、実施例1に係る補強治具の側面図である。
図3は、実施例1に係る補強治具の平面図である。
図4は、フランジ周りに配置される補強治具の一例を示す平面図である。
図5は、実施例1に係る補強治具を設計して、据え付けるまでのフローチャートである。
図6は、実施例1に係る補強治具の設計条件を設定するフローチャートである。
図7は、実施例1に係る補強治具を製作するフローチャートである。
図8は、実施例1に係る補強治具を据え付けるフローチャートである。
【0028】
図1に示すように、坑口装置1は、坑井の坑口に取り付けられており、地上に設けられるクリスマスツリー部10を備えている。クリスマスツリー部10は、流量調整弁及び開閉弁等の複数の弁11を組み合わせることで構成され、坑井を流通する油等の流体をコントロールしている。各弁11は、その両側に、円板形状のフランジ(被締結部)12が設けられる。そして、隣接する一方の弁11に設けられるフランジ12と、隣接する他方の弁11に設けられるフランジ12とが、締結ボルト(締結部材)13によって締結されることで、締結部14となる(
図2参照)。
【0029】
図2及び
図3に示すように、この坑口装置1は、締結部14を補強する複数の補強治具20を備えている。補強治具20は、フランジ12同士が対向する方向に、締結部14を両側から挟み込むことで、締結部14に両側から荷重を与えている。以下、補強治具20について、具体的に説明する。
【0030】
補強治具20は、第1補強部材21と、第2補強部材22と、補強ボルト(補強締結部材)23と、を備えている。第1補強部材21は、締結部14の一方側の面(
図2の上面)に設けられ、円板形状となるフランジ12の径方向を長手方向として、長手方向に延在して形成されている。第1補強部材21は、長手方向に長い板状に形成されており、長手方向の一方側(
図2の左側)が締結部14の上面に当接し、長手方向の他方側(
図2の右側)が第2補強部材22に当接する。また、第1補強部材21には、長手方向の一方側の部位、すなわち、締結部14の上面に当接する部位に、円形状の第1収容孔25が貫通形成されている。第1収容孔25は、フランジ12から突出する締結ボルト13の一部を収容する。なお、第1収容孔25は、締結ボルト13の形状と相補的な形状となるように形成してもよく、例えば、正六角形状に形成してもよい。第1補強部材21には、長手方向において、締結部14の上面に接触する部位と、第2補強部材22に接触する部位との間に、補強ボルト23を挿通するための第1ボルト挿通穴26が形成される。
【0031】
このように形成された第1補強部材21は、締結部14の上面に接触する部位が第1作用点部となる。そして、第1作用点部において、第1補強部材21は、締結部14の上面に対し面接触する。また、第1補強部材21は、第2補強部材22に接触する部位が支点部となる。さらに、第1補強部材21は、第1ボルト挿通穴26に挿通される補強ボルト23と第1補強部材21とが接触する部位が、第1力点部となる。
【0032】
第2補強部材22は、締結部14の他方側の面(
図2の下面)に設けられ、円板形状となるフランジ12の径方向を長手方向として、長手方向に延在して形成されている。具体的に、第2補強部材22は、長手方向に長い長手部22aと、長手部22aに対して長手方向に直交する直交方向に突出して設けられる突出部22bとで、L字状に形成されている。長手部22aは、長手方向の一方側(
図2の左側)が締結部14の下面に当接し、長手方向の他方側(
図2の右側)に突出部22bが設けられている。長手部22aは、第1補強部材21と対向して配置されることで、第1補強部材21と対向する方向に並んで設けられ、第1補強部材21と長手部22aとは、ほぼ平行に設けられる。長手部22aは、長手方向の一方側の部位、すなわち、締結部14の下面に当接する部位に、円形状の第2収容孔27が貫通形成されている。第2収容孔27は、フランジ12から突出する締結ボルト13の一部を収容する。なお、第2収容孔27は、締結ボルト13の形状と相補的な形状となるように形成してもよく、例えば、正六角形状に形成してもよい。長手部22aには、長手方向において、締結部14の上面に接触する部位と、突出部22bとの間に、補強ボルト23を挿通するための第2ボルト挿通穴28が形成される。このとき、第1ボルト挿通穴26と第2ボルト挿通穴28とは対向して形成される。突出部22bは、長手部22aから第1補強部材21に向かって突出しており、その先端部が第1補強部材21に当接する。
【0033】
このように形成された第2補強部材22は、締結部14の下面に接触する部位が第2作用点部となる。そして、第2作用点部において、第2補強部材22は、締結部14の下面に対し面接触する。また、第2補強部材22は、第1補強部材21に接触する部位が支点部となる。さらに、第2補強部材22は、第2ボルト挿通穴28に挿通される補強ボルト23と第2補強部材22とが接触する部位が、第2力点部となる。
【0034】
補強ボルト23は、第1ボルト挿通穴26及び第2ボルト挿通穴28に挿通され、第1補強部材21と第2補強部材22とを近づける方向に締結する。このため、第1力点部及び第2力点部には、補強ボルト23による締結力が与えられる。なお、実施例1では、補強ボルト23を適用したが、第1補強部材21と第2補強部材22とを締結する補強締結部材であればいずれであってもよく、特に限定されない。
【0035】
このような補強治具20において、補強ボルト23により第1力点部及び第2力点部に締結力が与えられると、てこの原理により、第1補強部材21と第2補強部材22との接触部分である支点部を中心にして、第1作用点部及び第2作用点部において締結部14を挟持するような荷重が与えられる。締結部14は、その両側において、補強治具20によって荷重が与えられることで、地震等の振動によって、フランジ12同士が離れることが抑制される。
【0036】
図4に示すように、この補強治具20は、フランジ12の周囲に沿って、複数設けられている。具体的に、フランジ12同士を締結する締結ボルト13は、フランジ12の周方向に沿って複数(実施例1では、例えば8本)設けられ、周方向に等間隔に設けられている。補強治具20は、この複数の締結ボルト13に応じて複数設けられている。つまり、補強治具20は、複数の締結ボルト13の全てに取り付けられている。よって、複数の補強治具20は、フランジ12の周方向に沿って等間隔に設けられている。このとき、各補強治具20は、その長手方向がフランジ12の径方向となるように配置されることから、複数の補強治具20は、放射状に配置される。
【0037】
次に、
図5から
図8を参照して、補強治具20を製作して、フランジ12に据え付ける作業手順について説明する。
図5に示すように、作業手順は、大きく分けて、補強治具20の設計条件を設定する工程(ステップS1)と、設定した設計条件に基づいて、補強治具20を製作する工程(ステップS2)と、製作した補強治具20を据え付ける工程(ステップS3)とからなる。
【0038】
図6に示すように、補強治具20の設計条件を設定する工程S1では、まず、坑口装置1のクリスマスツリー部10における耐震解析を行う(ステップS11)。この後、耐震解析の解析結果に基づいて、補強治具20によって締結部14に与える荷重(必要荷重)を設定する(ステップS12)。
【0039】
図7に示すように、補強治具20を製作する工程S2では、まず、工程S1において設定した必要荷重を与えることが可能な補強治具20の構造を選定する(ステップS21)。続いて、補強治具20の構造が選定されると、第1補強部材21及び第2補強部材22の板厚と、補強ボルト23の強度と、各力点部、支点部及び各作用点部の位置関係とを含む、補強治具20の設計パラメータを設定する(ステップS22)。そして、設定された設計パラメータに基づいて、補強治具20の詳細設計を行う(ステップS23)。この後、詳細設計に基づいて、補強治具20を製作する(ステップS24)。つまり、ステップS24では、詳細設計に基づいて、第1補強部材21、第2補強部材22及び補強ボルト23をそれぞれ製作する。
【0040】
図8に示すように、製作した補強治具20を据え付ける工程S3では、まず、製作した第1補強部材21及び第2補強部材22を、第1収容孔25及び第2収容孔27にフランジ12から突出した締結ボルト13が収容されるように、締結部14に取り付ける(ステップS31)。続いて、各力点部、支点部及び各作用点部が、設計された位置関係となるように、第1補強部材21及び第2補強部材22の位置を調整して設置する(ステップS32)。そして、第1補強部材21の第1ボルト挿通穴26及び第2補強部材22の第2ボルト挿通穴28に、補強ボルト23を挿入する(ステップS33)。この後、補強ボルト23が、設計された締結力となるように締め付けて、補強ボルト23を第1補強部材21及び第2補強部材22に固定する(ステップS34)。
【0041】
以上のように、実施例1によれば、第1補強部材21、第2補強部材22及び補強ボルト23によって、第1力点部及び第2力点部と、第1作用点部及び第2作用点部と、支点部とを設けることができる。このため、各力点部、各作用点部及び支点部との位置関係、及び各力点部に与える補強ボルトによる締結力等を適宜設計することで、各作用点部において締結部14に与える荷重を調整することができる。よって、締結部14に与える荷重を調整することができるため、締結部14に対して適切な荷重を与えることができ、締結部14を好適に補強することができる。
【0042】
また、実施例1によれば、各補強部材21,22の長手方向において、各力点部を挟んで、一方側を各作用点部とし、他方側を支点部とすることができる。このため、第1補強部材21及び第2補強部材22の長手部22aを、長手方向に沿ってほぼ平行に設けることができることから、補強治具20を簡易な構成とすることができる。
【0043】
また、実施例1によれば、第1収容孔25及び第2収容孔27に、フランジ12から突出する締結ボルト13の一部をそれぞれ収容することで、第1補強部材21及び第2補強部材22の位置を、締結ボルト13を活用して、位置規制することができる。このため、第1補強部材21及び第2補強部材22に物理的な干渉があっても、締結部14からの第1補強部材21及び第2補強部材22の逸脱を好適に抑制することができる。
【0044】
また、実施例1によれば、補強治具20により、締結部14を補強することができるため、地震等の振動によって、隣接する弁11同士が離れることを抑制でき、坑口装置1の制振性を向上させることができる。
【0045】
また、実施例1によれば、補強治具20をフランジ12の周囲に沿って複数配置することで、フランジ12を全周に亘ってバランスよく補強することができる。
【0046】
なお、実施例1では、第1補強部材21を板状とし、第2補強部材22をL字状としたが、この構成に限定されない。例えば、第1補強部材21を、長手部と突出部とによりL字状に形成し、第1補強部材21の突出部と、第2補強部材22の突出部22bとを突き合せて支点部を形成してもよい。
【0047】
また、実施例1の補強治具20において、第1補強部材21と第2補強部材22とが接触する部分に、第1補強部材21と第2補強部材22との位置決めを行う位置決め部を形成してもよい。この構成によれば、位置決め部により、第1補強部材21と第2補強部材22との位置決めを簡単に精度良く行うことが可能となる。
【0048】
また、実施例1では、第1補強部材21及び第2補強部材22の厚さについて、特に限定しなかったが、例えば、
図9に示す変形例1の構成としてもよい。
図9は、実施例1の変形例1における補強治具の側面図である。
図9に示すように、第1補強部材21及び第2補強部材22は、締結部14に対して面接触可能な剛性、つまり、補強ボルト23の締結力に対して、変形しない剛性(曲げ剛性)となるように、その厚さが厚肉となっている。具体的に、第1補強部材21及び第2補強部材22の長手部22aは、その厚さが、突出部22bの厚さに比して厚くなるように形成されている。
【0049】
また、実施例1では、フランジ12に締結される複数の締結ボルト13の全てに、補強治具20を取り付けたが、この構成に限定されず、例えば、
図10に示す変形例2の構成としてもよい。
図10は、実施例1の変形例2における、フランジ周りに配置される補強治具の一例を示す平面図である。
図10に示すように、変形例2では、複数の締結ボルト13の一部に対し、補強治具20を取り付けている。具体的に、8本の締結ボルト13が周方向に45°ずつ位相を異ならせて等間隔に設けられている場合、8本の締結ボルト13のうち、周方向に90°ずつ位相が異なる4本の締結ボルト13に補強治具20が取り付けられている。このように、複数の締結ボルト13の一部に対し、補強治具20を取り付ける構成としてもよい。
【実施例2】
【0050】
次に、
図11及び
図12を参照して、実施例2に係る補強治具50について説明する。
図11は、実施例2に係る補強治具の側面図である。
図12は、実施例2に係る補強治具の平面図である。なお、実施例2では、重複した記載を避けるべく、実施例1と異なる部分について説明し、実施例1と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。
【0051】
図11及び
図12に示すように、実施例2の補強治具50は、第1補強部材51と、第2補強部材52と、複数の補強ボルト23とを備えている。第1補強部材51は、実施例1の第1補強部材21に比して長手方向に長く形成されている。また、第1補強部材51には、補強ボルト23が挿通される第1ボルト挿通穴26が、長手方向に沿って複数形成されている。なお、第1補強部材51は、上記の以外の構成については、実施例1の第1補強部材21と同様であるため、説明を省略する。
【0052】
第2補強部材52は、長手部52aと突出部52bとで、L字状に形成されている。第2補強部材52の長手部52aは、実施例1の第2補強部材22の長手部22aに比して長手方向に長く形成されている。また、第2補強部材52の長手部52aには、補強ボルト23が挿通される第2ボルト挿通穴28が、長手方向に沿って複数形成されている。なお、第2補強部材52は、上記の以外の構成については、実施例1の第2補強部材22と同様であるため、説明を省略する。
【0053】
複数の補強ボルト23は、各第1ボルト挿通穴26及び各第2ボルト挿通穴28にそれぞれ挿通され、第1補強部材51と第2補強部材52とを近づける方向に締結する。このため、第1補強部材51には、補強ボルト23により締結力が与えられる第1力点部が複数形成され、また、第2補強部材52には、補強ボルト23により締結力が与えられる第2力点部が複数形成される。
【0054】
以上のように、実施例2によれば、各補強部材51,52の長手方向に沿って、複数の補強ボルト23を並べて設けることができるため、複数の補強ボルト23による締結力を大きくすることができる。換言すれば、補強ボルト23を複数設けることができる分、各補強ボルト23の締結力を小さくできることから、各補強ボルト23の強度を増大させる必要がない。
【実施例3】
【0055】
次に、
図13及び
図14を参照して、実施例3に係る補強治具60について説明する。
図13は、実施例3に係る補強治具の側面図である。
図14は、実施例3に係る補強治具の平面図である。なお、実施例3でも、重複した記載を避けるべく、実施例1及び2と異なる部分について説明し、実施例1及び2と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。
【0056】
図13及び
図14に示すように、実施例3の補強治具60は、第1補強部材61と、第2補強部材62と、補強ボルト23とを備えている。第1補強部材61と第2補強部材62とは、交差して配置されている。なお、補強ボルト23は、実施例1と同様であるため、説明を省略する。
【0057】
第1補強部材61は、フランジ12の径方向を長手方向として延在して形成されており、長手方向の一方側(
図13の左側)が締結部14の上面に当接している。第1補強部材61は、長手方向の一方側の部位となる第1当接部61aと、第1当接部61aに連なる第1交差部61bと、第1交差部61bに連なる長手方向の他方側の部位となる第1固定部61cとで、一体に形成されている。第1当接部61aは、長手方向の一方側(
図13の左側)が締結部14の上面に当接し、長手方向の他方側(
図13の右側)に第1交差部61bが接続されている。第1当接部61aは、締結部14の上面に当接する部位に、円形状の第1収容孔25が貫通形成されている。第1交差部61bは、第1当接部61aから締結部14の下面側に向かって傾斜している。第1交差部61bは、後述する第2補強部材62の第2交差部62bが挿通されるスリット65が貫通形成されている。第1固定部61cは、長手方向の一方側(
図13の左側)が第1交差部61bに接続され、第1補強部材61と第2補強部材62とが対向する方向において、締結部14の下面側に配置されている。このため、第1当接部61aは、締結部14の上面側に配置される一方で、第1固定部61cは、締結部14の下面側に配置され、第1当接部61aと第1固定部61cとは、ほぼ平行に設けられる。また、第1固定部61cには、補強ボルト23を挿通するための第1ボルト挿通穴26が形成される。
【0058】
このように形成された第1補強部材61は、締結部14の上面に接触する部位が第1作用点部となる。そして、第1作用点部において、第1補強部材61は、締結部14の上面に対し面接触する。また、第1補強部材61は、第2補強部材62と交差する部位(スリット65が形成される部位)が支点部となる。さらに、第1補強部材61は、第1ボルト挿通穴26が形成される部位が第1力点部となる。
【0059】
第2補強部材62は、フランジ12の径方向を長手方向として延在して形成されており、長手方向の一方側(
図13の左側)が締結部14の下面に当接している。第2補強部材62は、長手方向の一方側の部位となる第2当接部62aと、第2当接部62aに連なる第2交差部62bと、第2交差部62bに連なる長手方向の他方側の部位となる第2固定部62cとで、一体に形成されている。第2当接部62aは、長手方向の一方側(
図13の左側)が締結部14の下面に当接し、長手方向の他方側(
図13の右側)に第2交差部62bが接続されている。第2当接部62aは、締結部14の下面に当接する部位に、円形状の第2収容孔27が貫通形成されている。第2交差部62bは、第2当接部62aから締結部14の上面側に向かって傾斜している。第2交差部62bは、第1補強部材61の第1交差部61bに形成されるスリット65に挿通される。このため、第2交差部62bは、スリット65とほぼ同じ幅となり、第1交差部61bの幅よりも狭く形成される。第2固定部62cは、長手方向の一方側(
図13の左側)が第2交差部62bに接続され、第1補強部材61と第2補強部材62とが対向する方向において、締結部14の上面側に配置されている。このため、第2当接部62aは、締結部14の下面側に配置される一方で、第2固定部62cは、締結部14の上面側に配置され、第2当接部62aと第2固定部62cとは、ほぼ平行に設けられる。また、第2固定部62cには、補強ボルト23を挿通するための第2ボルト挿通穴28が形成される。
【0060】
このように形成された第2補強部材62は、締結部14の下面に接触する部位が第2作用点部となる。そして、第2作用点部において、第2補強部材62は、締結部14の下面に対し面接触する。また、第2補強部材62は、第1補強部材61と交差する部位(スリット65が形成される部位)が支点部となる。さらに、第2補強部材62は、第2ボルト挿通穴28が形成される部位が第1力点部となる。
【0061】
このような補強治具60において、補強ボルト23により第1力点部及び第2力点部に締結力が与えられると、てこの原理により、第1補強部材61と第2補強部材62との交差部分である支点部を中心にして、第1作用点部及び第2作用点部において締結部14を挟持するような荷重が与えられる。締結部14は、その両側において、補強治具60によって荷重が与えられることで、地震等の振動によって、フランジ12同士が離れることが抑制される。
【0062】
以上のように、実施例3によれば、各補強部材61,62の長手方向において、支点部を挟んで、一方側を各作用点部とし、他方側を各力点部とすることができる。このため、各補強部材61,62の支点部と各力点部の間の長さを調整して、各作用点部における荷重を調整できることから、補強ボルト23の締結力が小さい場合であっても、各作用点部における荷重を適切に設計することができる。
【実施例4】
【0063】
次に、
図15及び
図16を参照して、実施例4に係る補強治具70について説明する。
図15は、実施例4に係る補強治具の側面図である。
図16は、実施例4に係る補強治具の平面図である。なお、実施例4でも、重複した記載を避けるべく、実施例1から3と異なる部分について説明し、実施例1から3と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。
【0064】
図15及び
図16に示すように、実施例3の補強治具70は、第1補強部材71と、第2補強部材72と、複数の補強ボルト23とを備えている。なお、補強ボルト23は、実施例1と同様であるため、説明を省略する。
【0065】
第1補強部材71は、締結部14の一方側の面(
図15の上面)に設けられ、フランジ12に設けられる複数の締結ボルト13に亘って設けられている。具体的に、第1補強部材71は、平板状に形成され、フランジ12の半周分の範囲に亘って設けられている。そして、第1補強部材71は、8本の締結ボルト13のうち、4本の締結ボルト13に亘って設けられている。第1補強部材71は、フランジ12の径方向の内側が締結部14の上面に当接し、フランジ12の径方向の外側が第2補強部材72に当接する。また、第1補強部材71には、径方向の内側の部位、すなわち、締結部14の上面に当接する部位に、円形状の第1収容孔25が複数(例えば、4つ)貫通形成されている。複数の第1収容孔25は、フランジ12から突出する複数の締結ボルト13の一部を収容する。第1補強部材71には、その面内において、締結部14の上面に接触する部位と、第2補強部材72に接触する部位との間に、補強ボルト23を挿通するための第1ボルト挿通穴26が複数形成される。
【0066】
このように形成された第1補強部材71は、締結部14の上面に接触する部位が第1作用点部となる。そして、第1作用点部において、第1補強部材71は、締結部14の上面に対し面接触する。また、第1補強部材71は、第2補強部材72に接触する部位が支点部となる。さらに、第1補強部材71は、複数の第1ボルト挿通穴26が形成される部位が複数の第1力点部となる。
【0067】
第2補強部材72は、締結部14の一方側の面(
図15の下面)に設けられ、フランジ12に設けられる複数の締結ボルト13に亘って設けられている。具体的に、第2補強部材72は、平板状に形成される平板部72aと、平板部72aに対して直交する直交方向に突出して設けられる突出部72bとで、L字状に形成されている。平板部72aは、フランジ12の半周分の範囲に亘って設けられている。そして、平板部72aは、8本の締結ボルト13のうち、4本の締結ボルト13に亘って設けられている。この平板部72aは、第1補強部材71と対向して配置され、第1補強部材71と平板部72aとは、ほぼ平行に設けられる。平板部72aは、フランジ12の径方向の内側が締結部14の下面に当接し、フランジ12の径方向の外側に突出部72bが設けられている。平板部72aには、径方向の内側の部位、すなわち、締結部14の下面に当接する部位に、円形状の第2収容孔27が複数(例えば、4つ)貫通形成されている。複数の第2収容孔27は、フランジ12から突出する複数の締結ボルト13の一部を収容する。平板部72aには、その面内において、締結部14の下面に接触する部位と、突出部72bとの間に、補強ボルト23を挿通するための第2ボルト挿通穴28が複数形成される。このとき、複数の第1ボルト挿通穴26と複数の第2ボルト挿通穴28とはそれぞれ対向して形成される。突出部72bは、平板部72aから第1補強部材71に向かって突出しており、その先端部が第1補強部材71に当接する。
【0068】
このように形成された第2補強部材72は、締結部14の下面に接触する部位が第2作用点部となる。そして、第2作用点部において、第2補強部材72は、締結部14の下面に対し面接触する。また、第2補強部材72は、第1補強部材71に接触する部位が支点部となる。さらに、第2補強部材72は、複数の第2ボルト挿通穴28が形成される部位が複数の第2力点部となる。
【0069】
このような補強治具70において、複数の補強ボルト23により各第1力点部及び各第2力点部に締結力がそれぞれ与えられると、てこの原理により、第1補強部材71と第2補強部材72との接触部分である支点部を中心にして、第1作用点部及び第2作用点部において締結部14を挟持するような荷重が与えられる。締結部14は、その両側において、補強治具70によって荷重が与えられることで、地震等の振動によって、フランジ12同士が離れることが抑制される。また、
図16に示すように、この補強治具70は、フランジ12の半周分に亘って設けられることから、フランジ12を挟んで、2つ設けられている。
【0070】
以上のように、実施例4によれば、第1補強部材71及び第2補強部材72を、フランジ12に締結される複数の締結ボルト13に亘って配置することができる。このため、第1補強部材71及び第2補強部材72を、フランジ12の広い範囲に亘って配置できることから、フランジ12に対する第1補強部材71及び第2補強部材72の設置数を低減でき、部品点数を少なくすることができる。また、第1補強部材71及び第2補強部材72を広い範囲に亘って配置することから、第1補強部材71及び第2補強部材72の任意の位置に複数の補強ボルト23を配置できる。このため、複数の補強ボルト23による締結力を大きくすることができる。
【実施例5】
【0071】
次に、
図17を参照して、実施例5に係る補強治具80について説明する。
図17は、実施例5に係る補強治具の側面図である。なお、実施例5でも、重複した記載を避けるべく、実施例1から4と異なる部分について説明し、実施例1から4と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。
【0072】
図17に示すように、実施例5の補強治具80は、第1補強部材81と、第2補強部材82と、補強ボルト23とを備えている。なお、補強ボルト23は、実施例1と同様であるため、説明を省略する。
【0073】
第1補強部材81は、実施例1の第1補強部材21と同様に形成されている。このとき、第1補強部材81は、第1作用点部が締結部14に対して面接触するように、補強ボルト23による締結力を考慮して、予め撓んで形成されている。具体的に、第1補強部材81は、第2補強部材82と対向する方向において、外側に凸となるように撓んで形成されている。第1補強部材81の撓みは、補強ボルト23による締結力が与えられると、第1補強部材81の第1作用点部が、締結部14の上面に対して面接触するような撓みとなっている。なお、第1補強部材81は、上記の以外の構成については、実施例1の第1補強部材21と同様であるため、説明を省略する。
【0074】
第2補強部材82は、実施例1の第2補強部材22と同様に形成され、長手部82aと突出部82bとを有している。このとき、第2補強部材82の長手部82aは、第1補強部材81と同様に、第2作用点部が締結部14に対して面接触するように、補強ボルト23による締結力を考慮して、予め撓んで形成されている。具体的に、長手部82aは、第2補強部材82と対向する方向において、外側に凸となるように撓んで形成されている。長手部82aの撓みは、補強ボルト23による締結力が与えられると、第2補強部材82の第2作用点部が、締結部14の下面に対して面接触するような撓みとなっている。なお、第2補強部材82は、上記の以外の構成については、実施例1の第2補強部材22と同様であるため、説明を省略する。
【0075】
以上のように、実施例5によれば、第1補強部材81及び第2補強部材82の曲げ剛性を考慮して、予め撓ませて形成することで、締結部14に対し第1補強部材81及び第2補強部材82を、好適に面接触させることができる。