特許第6203164号(P6203164)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6203164
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】透明電極
(51)【国際特許分類】
   H01B 5/14 20060101AFI20170914BHJP
【FI】
   H01B5/14 A
   H01B5/14 B
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-241695(P2014-241695)
(22)【出願日】2014年11月28日
(62)【分割の表示】特願2009-524217(P2009-524217)の分割
【原出願日】2007年7月25日
(65)【公開番号】特開2015-92486(P2015-92486A)
(43)【公開日】2015年5月14日
【審査請求日】2014年12月26日
(31)【優先権主張番号】102006038347.8
(32)【優先日】2006年8月16日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102006045514.2
(32)【優先日】2006年9月27日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500374146
【氏名又は名称】サン−ゴバン グラス フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マルテイン・メルヒヤー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒヤエル・ラブロツト
(72)【発明者】
【氏名】ベノ・ドウンクマン
(72)【発明者】
【氏名】フイリツプ・ルトカール
(72)【発明者】
【氏名】ベルンハルト・ロイル
(72)【発明者】
【氏名】カール−ヨゼフ・オルフイツシユ
(72)【発明者】
【氏名】マルク・モーラー
【審査官】 渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−108467(JP,A)
【文献】 特開平02−224299(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/040498(WO,A1)
【文献】 特開2000−101114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リジッド支持基板上またはフレキシブル支持基板上の透明電極であって、
ノード(3)とリンクを備える極細導電線(2)の格子状ネットワークを備え、
3本の線が各ノードにおいて接続され、
各ノード(3)において接続する前記導電線(2)が、円弧状または波状に湾曲され、
前記格子状ネットワークの前記導電線(2)が、幅が5から20μmであり、1つの格子状ネットワークの導電線(2)が、常に同じ幅、または局所的に異なる幅のいずれかで形成されることを特徴とする、電極。
【請求項2】
前記格子状ネットワークが、複数の前記ノード(3)によって優先方向なしで形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の電極。
【請求項3】
各導電線が円弧状に湾曲されていることを特徴とする、請求項1に記載の電極。
【請求項4】
前記格子状ネットワークが、リジッド基板と表面結合するための少なくとも1つの接着層が設けられた基板(S)に形成されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の電極。
【請求項5】
前記格子状ネットワークを光学的にマスクすることを目的とする着色層(4)が透明な前記基板(S)と前記格子状ネットワークの前記導電線(2)およびノード(3)との間に配置されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の電極。
【請求項6】
前記格子状ネットワークの前記導電線(2)とノード(3)との表面が前記基板から離れて位置し、前記格子状ネットワークを光学的にマスクする着色層(5)が前記表面に配置されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の電極。
【請求項7】
前記格子状ネットワークが、光リソグラフィー工程によって形成されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の電極。
【請求項8】
前記格子状ネットワークが、細い金属ワイヤーから形成されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の電極。
【請求項9】
前記電極が少なくとも1つの外部電気接続部を備えることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の電極。
【請求項10】
前記電極がさらに、前記電極の表面延長部の両側に2つの外部接続部を備えることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の電極。
【請求項11】
前記基板表面の少なくとも1つの部分には、前記格子状ネットワークの導電線(2)およびノード(3)がないことを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の電極。
【請求項12】
境界領域および/または高周波の電磁波が通過するように設計された領域には、前記格子状ネットワークの導電線(2)およびノード(3)がないことを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の電極。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の電極と表面結合によって組み合わせられる、透明基板。
【請求項14】
前記基板が、2枚のガラス基板および/またはプラスチック基板から積層基板として形成され、該基板間に、前記電極がこれらの基板に対して位置決めされ、接着層による表面結合によって前記基板と接続されることを特徴とする、請求項13に記載の透明基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求の範囲の請求項1のプリアンブルの特徴を有する透明電極に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第99/40481A1号パンフレットから、高い導電率を有する非周期的な格子状ネットワークとして設計される少なくとも1つの透明電極を備えるエレクトロクロミックシステムが知られている。
【0003】
電極が供給する電気的に制御可能な要素をきわめて高速で転流(commutation)することができる電極は、強く求められている対象である。電気的に制御可能な要素は、例えば、上記のようなエレクトロクロミック機能素子だけでなく、大きな領域にわたり、あるいは画素によって制御され得るエレクトロルミネッセント機能素子を含み得る。このような素子は、多くの場合、情報および画像の表示や表現(ディスプレイ、ディスプレイ画面など)に使用される。
【0004】
このような透明電極の知られている用途としては、他に、例えば、電気加熱システムおよび/またはアンテナシステムなどのシステムがある。
【0005】
これらの機能の大多数についての前提条件は、導電率が非常に高いこと、言い換えると、透明電極の表面抵抗が非常に低いことである。また、電極が透明ウィンドウのガラス基板に集積されるときには、これが建物、車両のいずれにあるかを問わず、他の条件、すなわち、基板が原因で、人間の目に知覚されて瞬きをさせるような光学的影響を最小限に抑えることが系統的に求められる。
【0006】
また、このような透明電極の使用は、電磁波を吸収すること、すなわち、画面のユーザを電磁波から保護することで知られている。この場合も、当然ながら、電極は、光線の通過に対する障害物をできる限り減らさなければならない。その一方で、保護の対象に関しては、連続通電している電極に頼ることが絶対に必要なことではない(独国特許第102004038448B3号明細書参照)。
【0007】
加熱されるというフロントガラスの特定の状況に照らすと、これまでの先行技術には2つの基本構造がある。これらの解決方法の1つは、均質な表面を有する透明な導電層を使用するものであるが、これは、表面抵抗が比較的高い(単位面積当たり2から4Ω)ために、内蔵の電気系統によってエネルギーが供給されうるようにするためにはコスト高となる(この問題に関しては、独国特許第102004050158B3号明細書参照)。このような均質層は、美的観点からはさほど魅力的でない。他の解決方法は、積層基板のプラスチック積層中間層でカプセル化された極細ワイヤー、通常、タングステンワイヤーに関する。これらのワイヤーによって生じる光学的影響の問題を軽減するために、長い間適用されている1つの一般的な方法は、積層中間層における規則的な波形(waviness)の有無にかかわらずこれらをカプセル化することにある(この問題に関しては、欧州特許第443691B1号明細書参照)。
【0008】
2つのシステムは、一般的に、側端縁において低インピーダンスを有する帯状電極を用いて電源電圧に接続される。
【0009】
包括的に述べると、特に、加熱しながら(スクリーン印刷によって)印刷される導電性トラックを備える基板を加熱する第3のシステムがあり、このシステムはトラックの光学的影響のために後部ウィンドウにおいてのみ使用される。導電性トラックの幅の改善においては著しい進歩がなされているものの、前述のタングステンワイヤーはスクリーン印刷機によって形成された従来の極細導電線よりもさらに卓越した細さを有する(独国実用新案第20019445U1号明細書)。
【0010】
導入部に記載された先行技術(国際公開第99/40481A1号パンフレット)は、効率の良い電極であって、当該電極から生じる光学的影響が超低インピーダンスの導電材料を用いて大幅に低減された、該電極を提供することを既に目的としており、また、一実施形態において、物理的モデルを用いて説明された非周期的なネットワークを構築することも提案している。格子は、リジッド基板にもフレキシブル基板(ウィンドウ、薄膜)にも形成され得る。この先行技術によると、この格子の非周期性は、主として、規則的な格子を変形させることによって実現され、この場合、モデルに関しては、2つの隣接するノード間の最小間隔と最大間隔を超えて決定される限界値の条件の下で種々の剛性の4個の引張バネが各ノードに接続される。
【0011】
このパターンでは、平行に重ね合わせられた2つの格子構造体上でのモアレ効果の形成が阻止され、このパターンからは、主張されるように、周期的格子の場合よりも小さい光学的影響が生じるという結果になる。同時に、この電極の表面効果は満足できるものであり、エレクトロクロミック層を切り替える瞬間において均質性の欠陥がないことが示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第99/40481A1号パンフレット
【特許文献2】独国特許第102004038448B3号明細書
【特許文献3】独国特許第102004050158B3号明細書
【特許文献4】欧州特許第443691B1号明細書
【特許文献5】独国実用新案第20019445U1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、透明度が高く、ひいては表面被覆率が低く、併せて生じる光学的影響が可能な限り小さい導電性の格子構造体を有する別の透明電極を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的は、特許請求の範囲の請求項1、ならびに他の請求項2および3に記載の特徴を有する本発明によって達成される。従属請求項の特徴は、本発明において有利な改善を提供する。
【0015】
本発明に係る透明電極は、好ましくは光リソグラフィーによって、蒸着および除去プロセスを用いて、ガラス基板、プラスチック基板、プラスチック(PET)フィルムのいずれであれ、適切な基板の表面に金属(好ましくは銅)格子で形成される。格子構造体の種類に応じて、提案された構造に適合するように湾曲された個々のワイヤーから等しく形成することが検討される。
【0016】
したがって、金属格子は、数多くの異なる使用法に適しているが、特に、透明ウィンドウ基板への集積化に特に適した導電性構造体を表す。
【0017】
最終状態において、これは、2つのガラス基板または硬質プラスチック基板間で、また、必要に応じてさらに他の機能層とともに、知られている方法により積層することによって組み合わせられてもよく、この詳細は後述する。
【0018】
格子の導電性トラックは、幅が約10μmであり、さらに、これらのトラックは視距離により人間の目では認識できない。格子状ネットワークの導電線は、幅が5から20μmであり、1つの格子状ネットワークの導電線は、常に同じ幅、または局所的に異なる幅のいずれかで形成される。光学的に生成される効果をさらに改善し、あるいは知覚される光学的影響をさらに少なくするために、基板シートと金属導電線の間に濃いラッカーの層が塗布されることが好ましい。
【0019】
残りの金属表面(基板から離れている)は、表面処理を用いてより黒くするように、あるいはより濃い色でさらに着色されてもよい。
【0020】
1つの独自の特性として、本発明に係る格子の形成では特別な格子構造体を採用しているが、この格子構造体はプリズムパターンまたは回折パターンを防止するためにいくつかの変形によって修正されてもよい(これらのパターンは、「色付きの星」または「ちらつき現象」の形で光学的に表現されてもよく、規則的なパターンの場合、特にこれらのパターンが直角と直線で境界が定められた結合輪郭(linked outlines)を備えるときは避けられない)。
【0021】
一般的な形成では、格子構造体内にすべての導電線セグメントの方向(0°から180°)の(不規則な)均等分配が得られるように印刷されてもよく、その均等分配により、理想的な場合、全体として、格子構造体における各所望の点で円形の回折パターンを生じる。
【0022】
「回折パターン」という表現は、本明細書では、光が各導電線の「端縁」で回折されること、および人間の目が眩しいという確かな印象を受けるか、あるいは、いかなる場合でも光学的影響が生じることに由来する影響を意味するものと理解される。
【0023】
プリアンブルに記載された先行技術とは異なり、3本の導電線のみが各ノードに接続する場合の不規則な構造体を想到することが可能である。3成分ノードに基づくこのようなパターンの1つの長所は、ノードにおける2つの導電セクション間の角度が比較的大きく、いかなる場合も、ランダムパターンでは角度が平均して大きいという点である。したがって、より高い精度でコーナーを構成することが可能であり、電界強度のピークが回避されるので、形成が簡易化される。
【0024】
リンケージラインがノード間で円弧状に振動するという、先行技術とは異なる規則的な構造体が想到されてもよく、この場合、構造体は選択的に一方向のみの曲線を備えるか、または、波状の経路を等しく採用し得る。
【0025】
波状の経路の場合、好ましい実施形態は、四分円セグメントから、あるいは三分円セグメントから組み合わされる格子である。四分円セグメントの格子は別個の湾曲した金属ワイヤーからの前述の形成にも適しており、三分円セグメントの格子は各ノードで3本の導電線のみが接続する上記のルールに従うことになる。
【0026】
白色方向の回折円の着色構造体を改善するために(したがって、通常白いと認識される光に対して生じる光学的影響も減らすために)、いかなる場合も光学マスキングを確実に維持しながら、導体の明度を不規則にあるいは系統的に(例えば、10から20μm)変更することがさらに可能である。
【0027】
特に、前述の不規則パターンにおいて、ワイヤーの太さは電流の分布がより均一でかつ同時に回折パターンの色が和らげられるように適合されてもよい。光リソグラフィーによる形成工程では、いったん最適化された「ランダム」構造体を忠実に再現することができる。最適化そのものは、コンピュータでシミュレーションプログラムを用いて実行されてもよい。
【0028】
傾斜の大きいフロントガラス基板に使用される格子は、「観察方向」に対する格子間隔が垂直投影において規則性を保つように垂直方向に延ばされることが好ましい。
【0029】
「ホットガラス」において、したがって、電気的に加熱され得るウィンドウ用基板において、電極は、必要に応じて、追加機能なしで単なる加熱抵抗器として使用される。両側に形成された2個の電気的コネクタ(バスバー)に電圧を印加中に、基板の加熱(除氷、除霧)が開始される。このような用途は、当然ながら、除雪用として加熱明り窓(heated skylights)や太陽電池に利用されてもよい。
【0030】
本発明に係る実施形態の範囲内で、以下の長所または具体的な可能性が提供される。
− 自動車用の基板を加熱する一用途において、格子構造体のメッシュ開口は、所望の加熱電力(およそ6W/dm)が内蔵電圧(DC12から14V)の印加中に実現されるように設計されてもよい。この場合、導電体(バスバー)を基板の短辺に形成することができ(したがって、格子のメッシュ開口はさらに見えにくくするようにより小さいものが選択されてもよく)、または、基板の長辺に形成することができる(したがって、格子のメッシュ開口は、光分散と光透過率の値を改善するようにより大きなものが選択されてもよい)。
− 格子は、赤外線に対して透明であり、このため、内蔵カメラを遮るものがない。
− ワイヤー加熱と比較して、導電体間の間隙を小さくすると(⇒より均一な熱分布)ちらつき効果が著しく減少する。
− 熱分布が均一になると、プラスチック基板を使用することが可能になる。
− 格子は、日照調整用の層、すなわち光透過率の最小許容値を超えることなく赤外線を反射する層と組み合わされてもよい。
【0031】
特に、光リソグラフィー工程または同様の工程によって基板上に格子を形成する場合、以下の新たな可能性がある。
− 台形面の場合にも均一な加熱が得られるように、あるいは目標を定めて電力を分配できるように、基板の高さよりも高いところでメッシュ開口を変更させることができる。
− 目標を定めた不連続要素(スリット)によって金属格子をアンテナとして使用することができる。
− 形成される格子の密度を増加し、および/またはウィンドウガラスの枠に近いエッチングゾーンに形成される格子のメッシュ開口をなくし、必要に応じて、電気絶縁性および同様の基準などの制限のある条件が考慮されて満たされる限り、端縁が一般には黒色のスクリーン印刷に取って代わることができる。
− 格子が「サンバイザーストリップ」とも呼ばれる一体型アンチグレアフィルタとしての機能を果たすことができるように、格子の密度を上端縁に向かって徐々に高くすることができる。
【0032】
工程に従って、外部からの色の印象が内部から見た透明度と独立に選択することができるように、格子−基板間のラッカーの色、またはPETフィルムの色を他の表面とは独立に選択することができる。
【0033】
このような構成を形成する場合、平坦なすずめっき銅導体はそれ自体が既知である方法で導電体として使用されることが好ましい。これらは、はんだ付け工具を使ってはんだ付けによって直接溶着されてもよく、(接着剤のスポットまたは粘着テープ、導電接着剤、スポット溶接により)単に固定されてもよく、そして、積層後に誘導的に溶接されてもよい。もちろん、超音波溶接や誘導溶接など、別の種類の接合方法が用いられてもよい。ろう付けなどの接合方法に関しては、溶接結果があまり良好でないことで知られるタングステンワイヤーよりもはるかに有利な材料の組合せがある。同様に、光リソグラフィーによって得られる格子は、知られている薄膜系に対して、接合中の耐性がより良好であり、したがって、接合面の損傷に対する脆さが改善される。導電体(バスバー)の接続領域において、黒化(blackening)、曇り(obscuring)、および非導電金属で作られる表面層を除去する必要があり、除去しなければ、表面処理の前に、これらの領域は被覆されなければならない。
【0034】
原則として、既に述べたように、このような導電性の格子は、所与の(高周波)電磁波(電波)に対する保護機能を有する。このような電波の送信が電波(GPS、通行料金支払など)で動作する一定の電子機器にとって必要である場合、格子に蒸着されたPETフィルムの切抜き(cutout)を除去することによって通信ウィンドウをきれいにすることができる。空気の混入を防止するために、格子のない、同じ厚さのPETフィルムが自由状態の隙間に蒸着されてもよい。
【0035】
他の変形形態では、基板上において格子配置の自由な隙間(格子のない)を提供する。
【0036】
しかし、これら2つの手段は、表面全体を導電性コーティングで覆う車両のフロントガラスの構成で既に知られている。
【0037】
防食のために、およそ1から2cmの端縁が自由状態のままである。これは、PETフィルム+格子の全体(金属格子がフィルムのちょうど端縁にまで届くとき)のサイズを変更することによって、あるいは、PETフィルムに自由端縁が残るように格子配置を選択することによって実施されるが、しかし、PETフィルムそのものはガラスの端縁まで延びており、さもなければ、格子はPETフィルムの端縁まで延びているが、(例えば、レーザを当てることによって)円周ラインに沿って遮断される。
【0038】
PETフィルムが防食用または通信ウィンドウ用のいずれの切抜きを有しないときは、その厚さが選択されてもよく(例えば、通常の厚さ50μmの代わりに125μm)、これによって基板の端縁における曲率半径を増大させる。
【0039】
基板に特有の要素(通信ウィンドウ、自由状態端縁)が格子の配置において提供されないとき、格子はエンドレスストリップの形で形成されてもよい。特に、格子が光リソグラフィーによって形成されるとき、各種の基板に対してフォトマスクを提供する必要がない。したがって、コストが削減される。
【0040】
格子の配置が基板に特有の要素を提供しないとき、格子はシートごとに、または端と端を合わせた形のエンドレスストリップ(ロール)として形成されてもよい。
【0041】
エンドレスストリップ(ロール)としての工業生産は、比較的容易であり、特に、これは連続ロール形成工程におけるプレラミネート(PVB+PET/銅+PVB)の形成を簡易化するが、この場合、導電体の蒸着は事前に行わなければならない。フィルムは、このように形成された後、切断することができる。
【0042】
金属格子が機能層(エレクトロクロミー、エレクトロルミネッセンス、フラットランプ、有機発光ダイオード(OLED)、アンテナ)との接合に使用されるとき、ここでも以下の少なくとも2つの実施形態が可能である。
− 容量性接合:金属格子は、直接的な電気(直流)接触を防止するために、機能層とともに接着中間層としてのPVBを有するガラス基板に形成される。
− 機能層は、直接電気接触を有するように、ガラス基板に形成されるのではなく金属グリッドの機能性PETフィルムに形成される。
− 機能層はガラス基板またはプラスチック基板に形成された格子上で分かれている。したがって、ここでも、直接電気接触がある。
【0043】
例えばITO(インジウムスズ酸化物)で作られた透明層に対し、本明細書で提示される格子構造体の主な長所は、(表面)オームインピーダンス(>0.03Ω/□)が極めて低いレベルであり、そのため光透過率(>0.90%)が優れていることである。
【0044】
一定の集合体用の透明電流源としての用途において、格子は、非常に簡単にケーブルの一部に取って代わることができ、あるいは、基板に集積された電子的要素(表示部、センサ、発光体など)の接点と電流の供給に使用されてもよい。
【0045】
最後に、故障識別用などのアラームシステムにおける他の用途(閉回路、停電中の信号)も考えられる。
【0046】
さらに、本発明に係る格子構造体を「純粋な」全域蒸着と組み合わせることが可能であり、これは、例えば、そのアセンブリ内のウィンドウ基板の日照調整(赤外反射)を増加させるために使用されてもよい。このようなコーティングは、例えば格子構造体と基板の間などで格子構造体と直接接していてもよく、格子構造体を介在させて基板から分離されていてもよい。また、コーティングは、積層基板の全く別の平面内の位置にあってもよい。
【0047】
本発明の主題の他の詳細および長所は、以下の例示的な実施形態の図面とその詳細な説明とから明らかになるであろう。
【0048】
図面は、正確な縮尺ではなく切抜図によって簡易化されて表されている。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】透明電極または導電線格子からなる導電性表面構造の第1の実施形態の切抜図であり、導電線格子の導電線は、高い規則性の存在下で光の屈折パターンが所望の形で全く同様に定められるように、四分円として形成される。
図2】導電線格子を有する第2の実施形態の切抜図であり、2つのノードの間毎に延びる導電線格子の導電線は、三分円として形成される。
図3】優先方向を持たない導電線格子を有する第2の実施形態の切抜図である。
図4】本発明に係る電極の概略断面図である。
図5a】点光源を、先行技術に係る正長方形格子上で透過した光の屈折パターンである。
図5b】点光源を、本発明を適用して構成された格子上で透過した光の屈折パターンである。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図1によると、透明電極1は、一方向の他方向に対する角度が外側V、Vの方向を指す斜めの矢印によって表される2つの優先方向に沿って延びる細導電線(波状導電線)2の格子から形成される。ここでは、角度が直角であるが、これは必須ではない。
【0051】
ノード3においてそれぞれ交差するこれらの導電線は、例えば、光リソグラフィーによって、線径をできる限り細くした適切な工程を用いて、ガラスまたはプラスチック基板、あるいはプラスチックフィルムなどの透明基板に形成される。これらの導電線は、例えば、金属銅、銀、またはその他の材料に基づく良い電気伝導を有する材料から構成される。この実施形態の格別な長所は、知られている薄膜系の比較的高い表面抵抗に頼らずとも、1つのほぼ連続的な層が十分の数mmのメッシュ開口を有する格子の密なメッシュによって近似されることにある。同様に、純粋に機械的な観点から、これらの格子構造体は知られている薄膜系よりも堅固である。
【0052】
図1に示される実施形態において、導電線2は湾曲方向が絶えず変化する四分円の連続として形成され、ここで、連結点、すなわちノード3は、ちょうど方向が変化する点に位置する。これにより、四分弧のみによって区切られる規則的なメッシュが現れる。
【0053】
図2は、本発明に係る透明電極1の別の実施形態の切抜図を示す。ここで、格子線2は、2つのノード3間で常に三分円となるように形成され、ここで、各メッシュはメッシュの中心に対して外側に湾曲するそれぞれ3本の導電線と、メッシュの中心に対して内側に湾曲するそれぞれ3本の導電線とによって区切られ、これらの導電線は交互に隣接して接続する。これに基づき、矢印V、V、およびVで示される3つの優先方向が存在することになる。
【0054】
図3は、優先方向を有していない別の実施形態を示しており、ここでも、各ノードにつき3本の導電線のみが接続するノードを有する構成のメッシュ構造が一方で形成される。しかし、この場合、個々の導電セクションが非常に密であるので、拡大せずに裸眼では、導電セクションは4つの成分を有するノードとして見え得る。所望のマスキング効果の実現性は、系統的ではないものの、すべてのノードにおいて3本の導電線のみが接続するということに依存し、最も重要な点は、これがノードの総数の大部分に対して当てはまり、かつ、全体的には優先方向をもたらさないことである。
【0055】
このような格子構造体は、以下のアルゴリズムを用いて分散状態を使うことによって形成されてもよい。
【0056】
このとき、所望数のメッシュ中心の座標がランダムに選択される。リンケージラインは、各メッシュ中心から周囲の中心に向かって定められる。中心の垂線が、各リンケージラインに下ろされ、結果として得られた導電線は隣接する中心の垂線による断面の点で切断される。
【0057】
なお、この構造的な要件の実現は、上記のアルゴリズムによって実行可能となる物理的モデルに関するアナロジーによって説明されてもよい。
【0058】
格子構造体は、多くのランダムな点の1つの始点でバブルが生じるときに得られる二次元の分散構造に対応し、このバブルは、このとき、他の隣接するバブルに接触するまで全方向に等しく成長する。そして、バブル間に隔壁が配列されて、優先方向を持たない直線からなるランダムパターンとなる。
【0059】
最後に、図4は、上部に格子構造体の導電線2が配列された基板Sの大きく拡大した断面を概略的に示す。カラーコントラスト4を有する着色層が基板Sと導電線2の間に配置されていることが明確に分かる。この着色層は、特に、導電線2と点3をマスキングする目的で問題のある光学的影響を特に大幅に低減したい環境において使用される。このため、着色層は、観察方向の格子構造体の前に置かれることが好ましく、いかなる場合もシンチレーション作用を有しない。
【0060】
車両のフロントガラス基板では、着色層4は、車両の搭乗者と運転者の視界のために格子構造体よりも近くにあってもよい。当然ながら、このような下部にある着色層は、金属格子構造体の電気接触を妨げるものではない。
【0061】
他の着色層5が点線で示されており、この層も格子構造体の光学マスキングに使用される。この着色層5は、導電性でないとき、例えば、プリアンブルで述べた導電体(バスバー)の領域で、格子構造体が電気的に接触するように少なくとも局所的に、当然排除されなければならない。
【0062】
従来の実施形態(正長方形)に対応する格子構造体と本発明に係る格子構造体との光学的な違いは、回折パターンによって説明される。回折パターンは、様々なメッシュの直線部分の端縁で(別の状況では不透明な表面におけるスリットの端縁におけるように)格子構造体から放射される光の回折によって生成される。回折効果は、個々の(直線)ワイヤーに関して、ワイヤーの方向に垂直に生じる。すべてのワイヤーの回折パターンが透過光に加えられる。
【0063】
図5aは正長方形または正方形メッシュを有する格子の実施形態に関する回折パターンを示し、図5bは本発明に係る格子の実施形態における回折パターンを示す。これらの回折パターンは、格子を通る白色光源の直接観察のシミュレーションから得られるが、これらは正確に、基本回折パターンの実際に写真撮影されたものを表す。図5aと図5bの違いは明確に見ることができる。図5aの従来の長方形格子において、回折パターンは輪郭がはっきりした十字形で生成される。これは、正確に直角に隣接する2方向のみのワイヤー上の光の回折のためであると説明され、この場合、透視図において存在する各ワイヤーの方向によって、ワイヤーに垂直な回折線(または、横断バー)が生じる。
【0064】
これに対して、本発明に係る構造は、図1および図2のような格子構造体で吸収される円形の回折パターン(図5b)を生成するのに都合がよい。
【0065】
規則的な(円形パターンの弧)分布または不規則な(散乱)分布で現れ得るあらゆるワイヤーの向きによって、2つのバーのみの上への回折強度の集中、ひいては、関連する強度のピークが回避される。
【0066】
得られる円弧状の回折パターンは、強度のピークが存在しないことを説明しており、このため、本発明に係る格子構造体は回折された透過光として人間の目に見えにくい。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b