【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的は、特許請求の範囲の請求項1、ならびに他の請求項2および3に記載の特徴を有する本発明によって達成される。従属請求項の特徴は、本発明において有利な改善を提供する。
【0015】
本発明に係る透明電極は、好ましくは光リソグラフィーによって、蒸着および除去プロセスを用いて、ガラス基板、プラスチック基板、プラスチック(PET)フィルムのいずれであれ、適切な基板の表面に金属(好ましくは銅)格子で形成される。格子構造体の種類に応じて、提案された構造に適合するように湾曲された個々のワイヤーから等しく形成することが検討される。
【0016】
したがって、金属格子は、数多くの異なる使用法に適しているが、特に、透明ウィンドウ基板への集積化に特に適した導電性構造体を表す。
【0017】
最終状態において、これは、2つのガラス基板または硬質プラスチック基板間で、また、必要に応じてさらに他の機能層とともに、知られている方法により積層することによって組み合わせられてもよく、この詳細は後述する。
【0018】
格子の導電性トラックは、幅が約10μmであり、さらに、これらのトラックは視距離により人間の目では認識できない。
格子状ネットワークの導電線は、幅が5から20μmであり、1つの格子状ネットワークの導電線は、常に同じ幅、または局所的に異なる幅のいずれかで形成される。光学的に生成される効果をさらに改善し、あるいは知覚される光学的影響をさらに少なくするために、基板シートと金属導電線の間に濃いラッカーの層が塗布されることが好ましい。
【0019】
残りの金属表面(基板から離れている)は、表面処理を用いてより黒くするように、あるいはより濃い色でさらに着色されてもよい。
【0020】
1つの独自の特性として、本発明に係る格子の形成では特別な格子構造体を採用しているが、この格子構造体はプリズムパターンまたは回折パターンを防止するためにいくつかの変形によって修正されてもよい(これらのパターンは、「色付きの星」または「ちらつき現象」の形で光学的に表現されてもよく、規則的なパターンの場合、特にこれらのパターンが直角と直線で境界が定められた結合輪郭(linked outlines)を備えるときは避けられない)。
【0021】
一般的な形成では、格子構造体内にすべての導電線セグメントの方向(0°から180°)の(不規則な)均等分配が得られるように印刷されてもよく、その均等分配により、理想的な場合、全体として、格子構造体における各所望の点で円形の回折パターンを生じる。
【0022】
「回折パターン」という表現は、本明細書では、光が各導電線の「端縁」で回折されること、および人間の目が眩しいという確かな印象を受けるか、あるいは、いかなる場合でも光学的影響が生じることに由来する影響を意味するものと理解される。
【0023】
プリアンブルに記載された先行技術とは異なり、3本の導電線のみが各ノードに接続する場合の不規則な構造体を想到することが可能である。3成分ノードに基づくこのようなパターンの1つの長所は、ノードにおける2つの導電セクション間の角度が比較的大きく、いかなる場合も、ランダムパターンでは角度が平均して大きいという点である。したがって、より高い精度でコーナーを構成することが可能であり、電界強度のピークが回避されるので、形成が簡易化される。
【0024】
リンケージラインがノード間で円弧状に振動するという、先行技術とは異なる規則的な構造体が想到されてもよく、この場合、構造体は選択的に一方向のみの曲線を備えるか、または、波状の経路を等しく採用し得る。
【0025】
波状の経路の場合、好ましい実施形態は、四分円セグメントから、あるいは三分円セグメントから組み合わされる格子である。四分円セグメントの格子は別個の湾曲した金属ワイヤーからの前述の形成にも適しており、三分円セグメントの格子は各ノードで3本の導電線のみが接続する上記のルールに従うことになる。
【0026】
白色方向の回折円の着色構造体を改善するために(したがって、通常白いと認識される光に対して生じる光学的影響も減らすために)、いかなる場合も光学マスキングを確実に維持しながら、導体の明度を不規則にあるいは系統的に(例えば、10から20μm)変更することがさらに可能である。
【0027】
特に、前述の不規則パターンにおいて、ワイヤーの太さは電流の分布がより均一でかつ同時に回折パターンの色が和らげられるように適合されてもよい。光リソグラフィーによる形成工程では、いったん最適化された「ランダム」構造体を忠実に再現することができる。最適化そのものは、コンピュータでシミュレーションプログラムを用いて実行されてもよい。
【0028】
傾斜の大きいフロントガラス基板に使用される格子は、「観察方向」に対する格子間隔が垂直投影において規則性を保つように垂直方向に延ばされることが好ましい。
【0029】
「ホットガラス」において、したがって、電気的に加熱され得るウィンドウ用基板において、電極は、必要に応じて、追加機能なしで単なる加熱抵抗器として使用される。両側に形成された2個の電気的コネクタ(バスバー)に電圧を印加中に、基板の加熱(除氷、除霧)が開始される。このような用途は、当然ながら、除雪用として加熱明り窓(heated skylights)や太陽電池に利用されてもよい。
【0030】
本発明に係る実施形態の範囲内で、以下の長所または具体的な可能性が提供される。
− 自動車用の基板を加熱する一用途において、格子構造体のメッシュ開口は、所望の加熱電力(およそ6W/dm
2)が内蔵電圧(DC12から14V)の印加中に実現されるように設計されてもよい。この場合、導電体(バスバー)を基板の短辺に形成することができ(したがって、格子のメッシュ開口はさらに見えにくくするようにより小さいものが選択されてもよく)、または、基板の長辺に形成することができる(したがって、格子のメッシュ開口は、光分散と光透過率の値を改善するようにより大きなものが選択されてもよい)。
− 格子は、赤外線に対して透明であり、このため、内蔵カメラを遮るものがない。
− ワイヤー加熱と比較して、導電体間の間隙を小さくすると(⇒より均一な熱分布)ちらつき効果が著しく減少する。
− 熱分布が均一になると、プラスチック基板を使用することが可能になる。
− 格子は、日照調整用の層、すなわち光透過率の最小許容値を超えることなく赤外線を反射する層と組み合わされてもよい。
【0031】
特に、光リソグラフィー工程または同様の工程によって基板上に格子を形成する場合、以下の新たな可能性がある。
− 台形面の場合にも均一な加熱が得られるように、あるいは目標を定めて電力を分配できるように、基板の高さよりも高いところでメッシュ開口を変更させることができる。
− 目標を定めた不連続要素(スリット)によって金属格子をアンテナとして使用することができる。
− 形成される格子の密度を増加し、および/またはウィンドウガラスの枠に近いエッチングゾーンに形成される格子のメッシュ開口をなくし、必要に応じて、電気絶縁性および同様の基準などの制限のある条件が考慮されて満たされる限り、端縁が一般には黒色のスクリーン印刷に取って代わることができる。
− 格子が「サンバイザーストリップ」とも呼ばれる一体型アンチグレアフィルタとしての機能を果たすことができるように、格子の密度を上端縁に向かって徐々に高くすることができる。
【0032】
工程に従って、外部からの色の印象が内部から見た透明度と独立に選択することができるように、格子−基板間のラッカーの色、またはPETフィルムの色を他の表面とは独立に選択することができる。
【0033】
このような構成を形成する場合、平坦なすずめっき銅導体はそれ自体が既知である方法で導電体として使用されることが好ましい。これらは、はんだ付け工具を使ってはんだ付けによって直接溶着されてもよく、(接着剤のスポットまたは粘着テープ、導電接着剤、スポット溶接により)単に固定されてもよく、そして、積層後に誘導的に溶接されてもよい。もちろん、超音波溶接や誘導溶接など、別の種類の接合方法が用いられてもよい。ろう付けなどの接合方法に関しては、溶接結果があまり良好でないことで知られるタングステンワイヤーよりもはるかに有利な材料の組合せがある。同様に、光リソグラフィーによって得られる格子は、知られている薄膜系に対して、接合中の耐性がより良好であり、したがって、接合面の損傷に対する脆さが改善される。導電体(バスバー)の接続領域において、黒化(blackening)、曇り(obscuring)、および非導電金属で作られる表面層を除去する必要があり、除去しなければ、表面処理の前に、これらの領域は被覆されなければならない。
【0034】
原則として、既に述べたように、このような導電性の格子は、所与の(高周波)電磁波(電波)に対する保護機能を有する。このような電波の送信が電波(GPS、通行料金支払など)で動作する一定の電子機器にとって必要である場合、格子に蒸着されたPETフィルムの切抜き(cutout)を除去することによって通信ウィンドウをきれいにすることができる。空気の混入を防止するために、格子のない、同じ厚さのPETフィルムが自由状態の隙間に蒸着されてもよい。
【0035】
他の変形形態では、基板上において格子配置の自由な隙間(格子のない)を提供する。
【0036】
しかし、これら2つの手段は、表面全体を導電性コーティングで覆う車両のフロントガラスの構成で既に知られている。
【0037】
防食のために、およそ1から2cmの端縁が自由状態のままである。これは、PETフィルム+格子の全体(金属格子がフィルムのちょうど端縁にまで届くとき)のサイズを変更することによって、あるいは、PETフィルムに自由端縁が残るように格子配置を選択することによって実施されるが、しかし、PETフィルムそのものはガラスの端縁まで延びており、さもなければ、格子はPETフィルムの端縁まで延びているが、(例えば、レーザを当てることによって)円周ラインに沿って遮断される。
【0038】
PETフィルムが防食用または通信ウィンドウ用のいずれの切抜きを有しないときは、その厚さが選択されてもよく(例えば、通常の厚さ50μmの代わりに125μm)、これによって基板の端縁における曲率半径を増大させる。
【0039】
基板に特有の要素(通信ウィンドウ、自由状態端縁)が格子の配置において提供されないとき、格子はエンドレスストリップの形で形成されてもよい。特に、格子が光リソグラフィーによって形成されるとき、各種の基板に対してフォトマスクを提供する必要がない。したがって、コストが削減される。
【0040】
格子の配置が基板に特有の要素を提供しないとき、格子はシートごとに、または端と端を合わせた形のエンドレスストリップ(ロール)として形成されてもよい。
【0041】
エンドレスストリップ(ロール)としての工業生産は、比較的容易であり、特に、これは連続ロール形成工程におけるプレラミネート(PVB+PET/銅+PVB)の形成を簡易化するが、この場合、導電体の蒸着は事前に行わなければならない。フィルムは、このように形成された後、切断することができる。
【0042】
金属格子が機能層(エレクトロクロミー、エレクトロルミネッセンス、フラットランプ、有機発光ダイオード(OLED)、アンテナ)との接合に使用されるとき、ここでも以下の少なくとも2つの実施形態が可能である。
− 容量性接合:金属格子は、直接的な電気(直流)接触を防止するために、機能層とともに接着中間層としてのPVBを有するガラス基板に形成される。
− 機能層は、直接電気接触を有するように、ガラス基板に形成されるのではなく金属グリッドの機能性PETフィルムに形成される。
− 機能層はガラス基板またはプラスチック基板に形成された格子上で分かれている。したがって、ここでも、直接電気接触がある。
【0043】
例えばITO(インジウムスズ酸化物)で作られた透明層に対し、本明細書で提示される格子構造体の主な長所は、(表面)オームインピーダンス(>0.03Ω/□)が極めて低いレベルであり、そのため光透過率(>0.90%)が優れていることである。
【0044】
一定の集合体用の透明電流源としての用途において、格子は、非常に簡単にケーブルの一部に取って代わることができ、あるいは、基板に集積された電子的要素(表示部、センサ、発光体など)の接点と電流の供給に使用されてもよい。
【0045】
最後に、故障識別用などのアラームシステムにおける他の用途(閉回路、停電中の信号)も考えられる。
【0046】
さらに、本発明に係る格子構造体を「純粋な」全域蒸着と組み合わせることが可能であり、これは、例えば、そのアセンブリ内のウィンドウ基板の日照調整(赤外反射)を増加させるために使用されてもよい。このようなコーティングは、例えば格子構造体と基板の間などで格子構造体と直接接していてもよく、格子構造体を介在させて基板から分離されていてもよい。また、コーティングは、積層基板の全く別の平面内の位置にあってもよい。
【0047】
本発明の主題の他の詳細および長所は、以下の例示的な実施形態の図面とその詳細な説明とから明らかになるであろう。
【0048】
図面は、正確な縮尺ではなく切抜図によって簡易化されて表されている。