特許第6203209号(P6203209)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6203209早期結腸直腸癌の検出のための血漿マイクロRNA
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6203209
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】早期結腸直腸癌の検出のための血漿マイクロRNA
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/68 20060101AFI20170914BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20170914BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20170914BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20170914BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20170914BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   C12Q1/68 A
   C12Q1/68 Z
   C12N15/00 F
   C12N15/00 G
   C12N15/00 A
   G01N33/50 P
   G01N37/00 102
   G01N33/53 M
【請求項の数】4
【外国語出願】
【全頁数】56
(21)【出願番号】特願2015-43433(P2015-43433)
(22)【出願日】2015年3月5日
(62)【分割の表示】特願2014-536355(P2014-536355)の分割
【原出願日】2012年10月20日
(65)【公開番号】特開2015-128442(P2015-128442A)
(43)【公開日】2015年7月16日
【審査請求日】2015年3月24日
(31)【優先権主張番号】61/550,148
(32)【優先日】2011年10月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511096673
【氏名又は名称】ホスピタル クリニク デ バルセロナ
(73)【特許権者】
【識別番号】511096684
【氏名又は名称】セントロ デ インベスティガシオン バイオメディカ エン レド デ エンフェルメダデス ヘパティカス イ ディゲスティバス
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100122389
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 栄一
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100169971
【弁理士】
【氏名又は名称】菊田 尚子
(72)【発明者】
【氏名】ヒロネジャ,イ コス,マリトクセル
(72)【発明者】
【氏名】ロサノ サルバテジャ,ファン,ホセ
(72)【発明者】
【氏名】カステイス,イ ガランゴウ,アントニ
(72)【発明者】
【氏名】ヒラルデス,マリア,ドロレス
【審査官】 福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/076142(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/056337(WO,A1)
【文献】 特表2011−520454(JP,A)
【文献】 Br J Cancer, 2009, vol.101, no.4, pp.707-714
【文献】 Int J Cancer, 2010, vol.127, p.118-126
【文献】 Int J Onco, 2009, vol.34, p.1069-1075
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト被検体において進行した結腸直腸腺種を検出する方法であって、以下のステップ: 被検体の血漿サンプルまたは血清サンプからなる群より選択される1つ以上の生体サンプルから得られる1つ以上のマイクロRNAの全体の発現パターンまたはレベルを測定するステップであって、該マイクロRNAの少なくとも1つがmiR18aである、上記ステップ、および
進行した結腸直腸腺種に罹患している疑いのある被検体の生体サンプルからの1つ以上のマイクロRNAの全体の発現パターンを、正常な被検体の生体サンプルからの1つ以上のマイクロRNAの全体の発現パターンと比較するステップであって、上記正常な被検体が進行した結腸直腸腺種に罹患していない健康な被検体であり、miR18aの過剰発現が進行した結腸直腸腺種の指標となる、上記ステップ
を含む方法。
【請求項2】
正常な被検体からの発現と比較したmiR19a、miR19b、miR15b、miR29aまたはmiR335の少なくとも1つの分析を更に含み、miR19a、miR19b、miR15b、miR29aまたはmiR335の過剰発現が進行した結腸直腸腺種のさらなる指標となる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1つ以上の生体サンプルが血漿サンプルである、請求項1〜2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
1つ以上のマイクロRNAの発現レベルが、マイクロアレイ発現プロファイリング、PCR、逆転写酵素PCR、逆転写酵素リアルタイムPCR、定量的リアルタイムPCR、エンドポイントPCR、マルチプレックスエンドポイントPCR、COLD-PCR、ICE-COLD PCR、質量分析法、in situハイブリダイゼーション(ISH)、マルチプレックスin situハイブリダイゼーション、または核酸配列決定により測定される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2011年10月21日に出願された、米国特許仮出願第61/550,148号に対する優先権を主張するものであり、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の属する技術分野
本発明は、一般的に結腸直腸癌検出の分野に関連し、より詳細には、早期結腸直腸癌の検出のための血漿マイクロRNAに関するものである。
【背景技術】
【0003】
米国連邦政府資金援助研究の声明
なし。
【0004】
CDで出願された参考資料
なし。
【0005】
発明の背景
本発明の範囲を制限することなく、その背景を結腸直腸癌との関連において説明する。
【0006】
米国特許公開第20100317533号(Louら 2010年)は、炭酸脱水酵素-9(CAIX)、血管内皮細胞成長因子C(VEGF-C)、エフリンA5(EFNA5)、eph受容体B2(EPHB2)、トランスフォーミング増殖因子β3(TGF-β3)、ピルビン酸脱水素酵素キナーゼアイソザイム-3(PDK3)、炭酸脱水酵素12(CAXII)、ケラチン14(KRT14)、低酸素誘導因子1αサブユニット(HIF-1α)、またはテネイシンC(TNC)の任意の2つを含む癌転移のバイオマーカーのパネルを提供している。CAXII、KRT14、HIF-lα、またはTNCが高度の転移能の指標であるのに対し、CAIX、VEGF-C、EFNA5、EPHB2、TGF-β3またはPDK3は中度の転移能の指標となっている。また、上述したバイオマーカーを使用する腫瘍転移のリスクを判定する方法も提供している。これらのバイオマーカーは、診断、予後判定、治療選択において、または推定治療薬をテストするために使用される場合がある。このバイオマーカーは、悪性腫瘍、または乳癌などの低酸素領域を有している癌を評価するために使用される場合がある。
【0007】
米国特許公開第20100120898号(Croceら 2010年)は、肝細胞癌(HCC)の診断、予後判定および治療のための方法および組成物を開示している。また抗HCC薬を同定するための方法が提供されている。Croceの出願は、被検体が肝細胞癌(HCC)を有するか、または発症のリスクがあるかどうかを診断する方法を提供し、その被検体からのテストサンプルにおける少なくとも1つのmiR遺伝子産物のレベルを測定することを含み、ここで対照サンプルにおける対応するmiR遺伝子産物のレベルに対して、そのテストサンプルにおけるmiR遺伝子産物のレベルの変化が、HCCを有しているかまたは発症するリスクがあるかのいずれかの被検体の指標となる。
【0008】
Chungに対して発行された、米国特許第7,939,255号は、結腸直腸癌の診断方法に関するものである。簡単に説明すると、この特許は、結腸直腸癌(CRC)の診断に使用するための腫瘍抑制遺伝子を用いた結腸直腸癌(CRC)の予後評価のための診断方法およびキットを開示しており、染色体上の反復的に改変された領域(RAR)を同定すること、および当該のRARにおけるゲノム改変を検出することを含む。この発明は、結腸直腸癌(CRC)を含むさまざまな癌および腫瘍に関する早期診断および予後評価を実施することを可能にするものといえる。
【0009】
W02011076147号(発明の名称『結腸直腸の早期検出のための血漿ベースのマイクロRNAバイオマーカーおよび方法』、Liにより出願)には、結腸直腸癌を診断するおよび/または結腸直腸癌を治療するための治療効果を監視するための血液内分子マーカーの診断キットが開示されている。このキットは、複数の核酸分子を含み、そしてそれぞれの核酸分子がマイクロRNAバイオマーカーをコードし、その複数の核酸分子の1つ以上が、患者および健康対照者の血漿内で示差的に発現され、1つ以上の示差的に発現される核酸分子が一緒に結腸直腸癌の存在に関する指標である核酸発現バイオマーカーであると説明される。この発明は、結腸直腸癌を識別するためならびにそのような症状を予防または治療するためにこのような核酸発現バイオマーカーを使用する対応する方法を更に提供することが説明される。最後に、この発明は結腸直腸癌の予防および/または治療のための医薬組成物を提供する。
【0010】
W02011076142号(発明の名称『結腸直腸の血漿におけるマイクロRNA発現プロファイリングのための組成物および方法』、Liにより更に出願済み)は、結腸直腸癌の血漿におけるマイクロRNA(miRNA)発現プロファイリングのための組成物および方法を教示している。詳細には、この発明は、結腸直腸癌を診断するため、癌治療を監視するためおよび/または結腸直腸癌を治療するための血中の分子マーカーの診断キットに関し、これは、それぞれの核酸分子がマイクロRNA配列をコードしている複数の核酸分子を含み、その複数の核酸分子の1つ以上が結腸直腸癌の血漿および健康対照者の血漿において示差的に発現され、その1つ以上の示差的に発現される核酸分子が一緒に結腸直腸癌の存在に関する指標となる核酸発現の特徴である。この発明は、結腸直腸癌を識別するためならびにそのような症状を予防または治療するためにこのような核酸発現の特徴を使用する対応する方法に更に関連すると説明される。最後に、この発明は結腸直腸癌の予防および/または治療のための医薬組成物に関するものである。
【0011】
W02011088226号(発明の名称『胃腸障害の検出』、Christineにより出願)は、疾患または疾患進行の指標であるマイクロRNA、ベシクル、またはバイオマーカーを検出することにより表現型を特徴付けるための方法およびシステムを教示しているといえる。この疾患は、結腸直腸癌のような胃腸障害である可能性がある。このマイクロRNA、ベシクル、またはバイオマーカーは体液内で検出できる。
【0012】
W02010004562号(発明の名称『結腸直腸癌を検出する方法および組成物』、Baruchにより出願済み)は、結腸直腸癌と関連したマイクロRNA分子ならびにこれに関連したまたはそれから派生するさまざまな核酸分子を使用することによる、結腸直腸癌および/または結腸直腸癌前駆体細胞の低侵襲性早期検出を実施する方法を教示しているといえる。
【0013】
最後に、W02011012136号(発明の名称『ヒト細胞サンプルを癌性としての分類する方法』、Fogらにより出願済み)は、癌サンプルと非癌サンプルとを区別する方法を教示しているといえる。この方法は、miR-21、miR-34aおよびmiR-141から構成されるMir-グループIから選択される少なくとも1つのマイクロRNA(miR)のレベルを検出すること、テスト細胞サンプルにおいてmiR-126、miR-143およびmiR-145から構成されるmiRグループIIから選択される少なくとも1つのmiRのレベルを検出すること、テスト細胞サンプルにおける選択したmiRの発現レベルを、以前に記録済みのテストセットにおける同一の選択したmiRNAの発現レベルと比較することを含むものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許公開第20100317533号
【特許文献2】米国特許公開第20100120898号
【特許文献3】米国特許第7,939,255号
【特許文献4】W02011076147号
【特許文献5】W02011076142号
【特許文献6】W02011088226号
【特許文献7】W02010004562号
【特許文献8】W02011012136号
【発明の概要】
【0015】
一実施形態において、本発明は、ヒト被検体において結腸直腸新生物を診断または検出する方法であって、結腸直腸新生物に罹患している疑いのある被検体から1つ以上の生体サンプルを採取するステップ、被検体の1つ以上の生体サンプルから得られる1つ以上のマイクロRNAの全体の発現パターンまたはレベルを測定するステップ、結腸直腸新生物に罹患している疑いのある被検体の生体サンプルからの1つ以上のマイクロRNAの全体の発現パターンを、正常な被検体の生体サンプルからの1つ以上のマイクロRNAの全体の発現パターンと比較するステップであって、正常な被検体が結腸直腸新生物に罹患していない健康な被検体であり、miR19aおよびmiR19b、またはmiR19aおよびmiR19bおよびmiR15bの組み合わせの過剰発現が結腸直腸癌の指標となる、上記ステップ、を含む方法を含む。一態様において、この方法は、正常な被検体からの発現と比較した場合の、miR18a、miR29a、またはmiR335の少なくとも1つの分析を更に含み、これが結腸直腸新生物の指標となる。別の態様において、この方法は、miR29a、miR92aまたはmiR141の少なくとも1つの分析を更に含む。別の態様において、1つ以上の生体サンプルは、1つ以上の体液、血漿サンプル、血清サンプル、血液サンプル、組織サンプル、または糞便サンプルからなる群より選択される。別の態様において、この方法は、早期CRC(I〜II)を、進行したCRC(ステージII〜III)、右側の腫瘍および左側病変と同程度に正確に検出することができる。別の態様において、この方法は、90、91、92、93、94、または95%を超える信頼区間を含む。別の態様において、この方法は、結腸直腸新生物において過少発現され、以下から選択されるマイクロRNAの発現レベルを測定することを更に含む。
【表1】
【0016】
別の態様において、この方法は、結腸直腸新生物において過剰発現され、以下から選択されるマイクロRNAの発現レベルを測定することを更に含む。
【表2】
【0017】
別の態様において、1つ以上のマイクロRNAの発現レベルは、マイクロアレイ発現プロファイリング、PCR、逆転写酵素PCR、逆転写酵素リアルタイムPCR、定量的リアルタイムPCR、エンドポイントPCR、マルチプレックスエンドポイントPCR、COLD PCR、ICE-COLD PCR、質量分析法、in situハイブリダイゼーション(ISH)、マルチプレックスin situハイブリダイゼーション、または核酸配列決定により測定される。別の態様において、この方法は、結腸直腸新生物のリスクがあるまたはそれに罹患している患者を治療するため、結腸直腸新生物のリスクがあるまたはそれに罹患している患者のための抗新生物薬治療を選択するため、結腸直腸新生物のサブグループに対してまたは結腸直腸新生物治療臨床試験について患者を階層化するため、結腸直腸新生物治療レジメンに対する抵抗性または応答性を判定するため、結腸直腸新生物の診断用キットを開発するため、あるいはこれらの任意の組み合わせのために使用される、別の態様において、表2、3、4および5から選択される4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、25、30、35、40、45、50、55または60のマイクロRNAの全体の発現パターンまたはレベルを測定し、これらのマイクロRNAが結腸直腸新生物の判定、診断または検出の特異性を増加させる。別の態様において、この方法は、結腸直腸新生物の予後判定、治療ガイダンスまたは治療に対する応答の監視のためにマイクロRNAの全体の発現パターンまたはレベルを使用するステップを更に含む。
【0018】
本発明のまた別の実施形態は、結腸直腸新生物の疾患進行、転移、またはこれらの両方に関するバイオマーカーであって、1つ以上のマイクロRNAを含み、正常な結腸直腸新生物細胞または同一の患者からより早い時点において採取された結腸直腸新生物細胞における1つ以上のマイクロRNAの全体の発現と比較した場合の、患者から採取された結腸直腸新生物細胞における1つ以上のマイクロRNAの全体の発現の変化が結腸直腸疾患の進行の指標となり、miR19aおよびmiR19b、またはmiR19aおよびmiR19bおよびmiR15bの組み合わせの過剰発現が結腸直腸癌の指標となる、上記バイオマーカーを含む。一態様において、この方法は、以下のマイクロRNA、miR29a、miR92a、miR141、miR18a、miR19a、miR19b、miR15b、miR29aまたはmiR335の1つ以上の分析を更に含む。別の態様において、バイオマーカーは、結腸直腸新生物において過少発現され、以下から選択されるマイクロRNAを更に含む。
【表3】
【0019】
別の態様において、バイオマーカーは、結腸直腸新生物において過剰発現され、以下から選択されるマイクロRNAを更に含む。
【表4】
【0020】
別の態様において、バイオマーカーは、結腸直腸新生物において過少発現され、以下から選択されるマイクロRNAを更に含む。
【表5】
【0021】
別の態様において、バイオマーカーは、結腸直腸新生物において過剰発現され、以下から選択されるマイクロRNAを更に含む。
【表6】
【0022】
当業者は、最も頻繁には、生体特徴(アッセイ)が過剰発現されるマイクロRNAおよび過少発現されるマイクロRNAの両方の組み合わせを含むことになることを理解する。これを受けて、本発明は、一態様において、各マイクロRNAから過剰発現されるマイクロRNAおよび過少発現されるマイクロRNAの両方の組み合わせを含む。別の態様において、生体サンプルは、1つ以上の体液、血漿サンプル、血清サンプル、血液サンプル、組織サンプル、または糞便サンプルからなる群より選択される。別の態様において、この方法は、早期CRC(I〜II)を、進行したCRC(ステージII〜III)、右側の腫瘍および左側病変と同程度に正確に検出することができる。別の態様において、表2、3、4、および5から選択される4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、25、30、35、40、45、50、55または60のマイクロRNAの全体の発現パターンまたはレベルを測定し、これらのマイクロRNAが結腸直腸新生物の判定、診断または検出の特異性を増加させる。
【0023】
本発明のまた別の実施形態は、結腸直腸新生物の診断用キットであって、miR19aおよびmiR19b、またはmiR19aおよびmiR19bおよびmiR15bのマイクロRNAの示差的な発現レベルを測定するためのバイオマーカー検出試薬を含み、miR19aおよびmiR19b、またはmiR19aおよびmiR19bおよびmiR15bの組み合わせの過剰発現が結腸直腸新生物の指標となり、結腸直腸癌に関する信頼区間が90%またはそれ以上である、上記キットを含む。一態様において、このキットは、miR18a、miR29a、またはmiR335の少なくとも1つの検出および分析のための試薬を更に含む。一態様において、このキットは、miR29a、miR92a、またはmiR141の少なくとも1つの検出および分析のための試薬を更に含む。別の態様において、このキットは、結腸直腸新生物のリスクの診断に使用するための説明書を更に含み、この説明書は、結腸直腸新生物を有する疑いのある被検体から採取されたサンプルの発現を測定する場合に、マイクロRNAの発現レベルを、正常な被検体から採取されたサンプルの発現レベルと比較するための段階的な指示事項を含み、ここで正常な被検体は、結腸直腸新生物に罹患していない健康な被検体である。別の態様において、このキットは、1つ以上の体液、血漿サンプル、血清サンプル、血液サンプル、組織サンプル、または糞便サンプルからなる群より選択される、被検体からサンプルを採取するために必要なツール、容器および試薬を更に含む。別の態様において、このキットは、結腸直腸新生物において過少発現され、以下より選択されるマイクロRNAの分析のための試薬を更に含む。
【表7】
【0024】
別の態様において、このキットは、結腸直腸新生物において過剰発現され、以下より選択されるマイクロRNAの分析のための試薬を更に含む。
【表8】
【0025】
別の態様において、このキットは、結腸直腸新生物を診断または検出するために、表2、3、4および5のマイクロRNAから選択される4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、25、30、35、40、45、50、55または60のマイクロRNAに関する発現パターンまたは発現レベルの検出および分析のための試薬を更に含む。
【0026】
本発明のまた別の実施形態は、直腸結腸新生物を有すると診断された患者のための癌治療を選択する方法であって、結腸直腸新生物を有している被検体からサンプルを採取するステップ、正常な被検体の生体サンプルの発現レベルと比較した場合の、miR18a、miR19a、miR19b、miR15b、miR29aおよびmiR335の発現レベルを測定するステップであって、正常な被検体が結腸直腸新生物に罹患していない健康な被検体であり、それらのマイクロRNAの過剰発現が結腸直腸癌の指標となる、上記ステップ、患者における結腸直腸新生物の判定を基にした癌治療を選択するステップを含む方法を包含する。
【0027】
更に本発明の別の実施形態は、疾患症状の治療に有効であると考えられる候補薬剤を評価するための臨床試験を実施する方法であって、(a)患者群から得られたマイクロRNAのレベルを測定するステップであって、該マイクロRNAが、miR19aおよびmiR19b、またはmiR19aおよびmiR19bおよびmiR15bから選択される1つ以上のマイクロRNAから選択される、上記ステップ、(b)候補薬剤を患者の第1部分集団に投与する;及びプラセボを患者の第2部分集団に投与するか、比較薬剤を患者の第2部分集団に投与するか、または候補薬剤と別の活性物質の組み合わせ薬剤を患者の第2部分集団に投与するステップ、(c)上記候補薬剤、またはプラセボ、比較薬剤もしくは組み合わせ薬剤の投与の後にステップ(a)を繰り返すステップ、ならびに(d)上記候補薬剤が、マイクロRNAの発現の変化を有する結腸直腸新生物細胞の数を、患者の第2部分集団において生じている変化と比較して統計学的に有意に低減するかどうかを判定するステップであって、統計学的に有意な低減は上記候補薬剤が上記疾患症状の治療に有効であることを示す、上記ステップを含む方法を包含する。
【0028】
更に本発明の別の実施形態は、ヒト被検体において結腸直腸新生物を診断または検出する方法であって、以下のステップ:結腸直腸新生物に罹患しているまたは罹患していることが疑われるヒト被検体を同定するステップ、被検体から1つ以上の生体サンプルを採取するステップであって、生体サンプルが、1つ以上の体液、血漿サンプル、血清サンプル、血液サンプル、組織サンプル、または糞便サンプルから選択される、上記ステップ、miR18a、miR19a、miR19b、miR15b、miR29aおよびmiR335の全体の発現パターンまたはレベルを測定するステップ、ならびに結腸直腸新生物に罹患している疑いのある被検体の生体サンプルからの1つ以上のマイクロRNAの全体の発現パターンを、正常な被検体の生体サンプルからの1つ以上のマイクロRNAの全体の発現パターンと比較するステップであって、正常な被検体が結腸直腸新生物に罹患していない健康な被検体であり、マイクロRNA、miR18a、miR19a、miR19b、miR15b、miR29aおよびmiR335の過剰発現が結腸直腸癌の指標となる、上記ステップを含む方法を包含する。
【0029】
更に本発明の別の実施形態は、ヒト被検体において結腸直腸新生物を診断または検出する方法であって、以下のステップ:結腸直腸新生物に罹患しているまたは罹患していることが疑われるヒト被検体を同定するステップ、被検体から1つ以上の生体サンプルを採取するステップであって、生体サンプルが、1つ以上の体液、血漿サンプル、血清サンプル、血液サンプル、組織サンプル、または糞便サンプルから選択される、上記ステップ、以下から選択される1つ以上のマイクロRNAの全体の発現パターンまたはレベルを測定するステップ、ならびに結腸直腸新生物に罹患している疑いのある被検体の生体サンプルから得られる1つ以上のマイクロRNAの全体の発現パターンを、正常な被検体の生体サンプルからの1つ以上のマイクロRNAの全体の発現パターンと比較するステップであって、正常な被検体が結腸直腸新生物に罹患していない健康な被検体であり、被検体の生体サンプルにおける1つ以上のマイクロRNAの全体の発現パターンの変化は結腸直腸新生物の指標となる、上記ステップを含む方法を包含する:
【表9】
【0030】
[表中、ROCが曲線下面積(AUC)パラメーターであり、CIが95%信頼区間であり、Sが感度であり、およびSpが特異性である]。一態様において、マイクロRNAは、結腸直腸新生物において過少発現され、以下より選択される:
【表10】
【0031】
一態様において、マイクロRNAは、結腸直腸新生物において過剰発現され、以下より選択される:
【表11】
【0032】
別の態様において、1つ以上のマイクロRNAの発現レベルは、マイクロアレイ発現プロファイリング、PCR、逆転写酵素PCR、逆転写酵素リアルタイムPCR、定量的リアルタイムPCR、エンドポイントPCR、マルチプレックスエンドポイントPCR、COLD PCR、ICE-COLD PCR、質量分析法、in situハイブリダイゼーション(ISH)、マルチプレックスin situハイブリダイゼーション、または核酸配列決定により測定される。
【0033】
別の態様において、この方法は、結腸直腸新生物のリスクがあるまたはそれに罹患している患者を治療するため、結腸直腸新生物のリスクがあるまたはそれに罹患している患者のための抗新生物薬治療(例:核酸架橋剤、小分子、標的および非標的の対象の両方で、細胞致死有効成分を含有/非含有のモノクローナル抗体のような生物学的製剤)を選択するため、結腸直腸新生物のサブグループに対してまたは結腸直腸新生物治療臨床試験について患者を階層化するため、結腸直腸新生物治療レジメンに対する抵抗性または応答性を判定するため、結腸直腸新生物の診断用キットを開発するため、あるいはこれらの任意の組み合わせのために使用される。別の態様において、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、25、30、35、40、45、50、55または60のマイクロRNAの全体の発現パターンまたはレベルを測定して、結腸直腸新生物を診断または検出する。
【0034】
本発明の特徴および利点のより完全な理解のため、添付の図面を参照しながら本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1A図1Aおよび1Bは、セット1(図1A)からのCRCを有する患者と対照の間、およびAAを有する患者と対照の間(図1B)、のマイクロアレイによる示差的なmiRNA発現を示す。このヒートマップはその最高のFCを有する50個の有意に脱調節されたmiRNAを示す。緑色のピクセルが減少したmiRNAレベルを示すのに対し、赤色のピクセルはその指示される血漿サンプルにおけるmiRNAの増加した存在度に対応する。
図1B図1Aおよび1Bは、セット1(図1A)からのCRCを有する患者と対照の間、およびAAを有する患者と対照の間(図1B)、のマイクロアレイによる示差的なmiRNA発現を示す。このヒートマップはその最高のFCを有する50個の有意に脱調節されたmiRNAを示す。緑色のピクセルが減少したmiRNAレベルを示すのに対し、赤色のピクセルはその指示される血漿サンプルにおけるmiRNAの増加した存在度に対応する。
図2図2はグループ間分析(BGA)プロットで、miRNA発現プロファイリングを基にしたサンプルクラスタリングを示す。健康対照者(C)、結腸直腸癌を有する患者(CRC)、進行した腺種を有する患者(AA)。
図3図3は箱ひげ図を示し、qRT-PCRにより測定されたCRCセット2における血漿miRNA発現を示す。miRNAの発現レベルはmiR16に対して正規化され、-dCt値として表される。これらの各箱内の線が中央値を表す。これらの箱は25パーセンタイルと75パーセンタイルの区間を標記する。
図4】図 4Aおよび図4Bは、CRCセット1におけるマイクロアレイプロファイリングおよびCRCセット2におけるqRT-PCRデータから得られた結果に従うこれらの2つの血漿miRNAの特徴:miR19a+miR19b(図4A)および3つの血漿miRNAの特徴:miR19a+miR19b+miR15b(図4B)に関する受信者操作特性(ROC)分析である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明のさまざまな実施形態の製造および利用が以下で詳細に説明されるが、本発明が特定の状況の広範な多様性において具現化できる多数の適用可能な発明的な概念を提供することを正しく認識すべきである。本明細書において説明されるこの特定の実施形態は本発明を製造および利用するための具体的な方法の単なる例示であり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0037】
本発明を理解することを促進するために、いくつかの用語を以下で定義する。本明細書において定義される用語は、本発明に関連のある分野における当業者により一般的に理解される意味を有する。「1つ」、「1個」および「この」などの用語は1つの単一の構成要素のみを参照することを意図しておらず、具体的な例が例示のために使用される場合の当該の一般分類を含む。本明細書で使用される専門用語は本発明の特定の実施形態を記述するために使用されるが、特許請求の範囲において概説されるものを除いて、それらの用法は本発明を限定するものではない。
【0038】
略語:進行した腺種、AA。ROC曲線下面積、AUC。グループ間分析、BGA。結腸直腸癌、CRC。倍率変化、FC。マイクロアレイに関する直線モデル、LIMMA。マイクロRNA、miRNA、受信者操作特性曲線、ROC曲線。
【0039】
本明細書において使用されるように、用語「結腸直腸癌」および「結腸直腸新生物」は、結腸直腸癌を当該の小腸下の腸管の細胞の癌を特徴とする医学的症状として結腸直腸癌を定義する一般的に認められている医学的定義を含み(即ち、盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S字結腸、および直腸を含む、大腸(結腸直腸))、そして前癌(更に進行した腺種として本明細書において参照される)、早期、および後期の癌を含む。加えて、本明細書で使用されるように、用語「結腸直腸癌」はまた、更に十二指腸および小腸(空腸および回腸)の細胞の癌を特徴とする医学的症状を含む。
【0040】
本明細書で使用されるように、用語「組織サンプル」(用語「組織」は用語「組織サンプル」と相互交換可能で使用される)は、個々にまたは任意の基質と複合するかもしくは任意の化学物質と関連するかのいずれかで、1つ以上の細胞から構成される任意の物質を含むことを指す。この定義は、任意の生物学的または有機的な物質および任意の細胞の一部分、産物またはこれらの副産物を含んでいることになる。「組織サンプル」の定義は、精子、卵、胚および血液成分を含むことが理解されるが、これらに限定されるものではない。また、本発明の目的に関する「組織」の定義以内に含まれるものは、細胞性の起源を有するが細胞性として既に特性付けられない皮膚の皮膚層等の特定の無細胞構造も定義する。用語「大便」は本明細書において使用され、ヒトにより排泄された糞便を参照する臨床的用語である。
【0041】
本明細書で使用されるように、用語「遺伝子」は機能タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドをコードするユニットを指す。当業者には明らかなように、この機能的用語は、ゲノム配列、cDNA配列、若しくは断片またはこれらの組み合わせ、ならびに遺伝子産物を含み、人工的に改変されているものをも含んでいる。精製された遺伝子、核酸、タンパク質などは、それが普通に関連している少なくとも1つの混入核酸またはタンパク質から識別されて分離されている場合に、これらの実体を指すために使用される。用語「対立遺伝子」または「対立形質」は、当該の同一の機能タンパク質をコードするが、当該の同一の遺伝子の別の形態に対応するヌクレオチド配列に差異を含む遺伝子の別の形態を指す。
【0042】
本明細書で使用されるように、用語「マイクロRNA」(「miRNA」または「miR」)は、成熟「miRNA」がダイサー等により切断されることで、その前駆体RNA転写産物が小型のステムループを形成できる内因性非コード遺伝子産物を含むRNA(またはRNAアナログ)を指す。「miRNA」は、これらがその発現を制御するmRNAとは異なる遺伝子内でコードされる。
【0043】
本明細書で使用されるように、「核酸」または「核酸分子」は、 デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)、オリゴヌクレオチド、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により生成される断片、およびライゲーション、切断、エンドヌクレアーゼ作用、およびエキソヌクレアーゼ作用のいずれかにより生成される断片を含む、ポリヌクレオチドを指す。核酸分子は、天然ヌクレオチド(DNAおよびRNA等)、または天然ヌクレオチドのアナログ(例:天然ヌクレオチドのα-エナンチオマー型)、または両方の組み合わせであるモノマーから構成されうる。修飾型ヌクレオチドは、糖部分および/またはピリミジンもしくはプリン塩基部分において修飾を有し得る。糖修飾としては、例えば、1つ以上のヒドロキシル基のハロゲン、アルキル基、アミン、およびアジド基による置き換えが挙げられ、あるいは糖はエーテルまたはエステルとして官能化されてもよい。その上、全体の糖部分が、アザ糖および炭素環糖アナログのような立体的および電子的に等価な構造に置換できる。塩基部分における修飾の例としては、アルキル化したプリンまたはピリミジン、アシル化したプリンまたはピリミジン、あるいはその他の既知の複素環式置換体を含む。核酸モノマーは、ホスホジエステル結合またはこのような結合のアナログにより結合される。ホスホジエステル鎖のアナログとしては、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホルアニリデート、ホスホルアミデートなどがある。用語「核酸分子」はまた、ポリアミド骨格に結合する天然のまたは改変型の核酸塩基を含む、所謂「ペプチド核酸」も含む。核酸は、1本鎖または2本鎖のいずれであってもよい。
【0044】
様々な実施形態において本明細書において使用される用語「バイオマーカー」は、疾患の進行または治療の効果を診断および測定するために有効とする特定の分子特徴を有する身体内の特定の生化学を指す。例えば、個人の呼吸内で見つかる共通の代謝物質またはバイオマーカー、およびこのような代謝物質を提供している当該の個人の関連する診断的症状は以下に示すようなものを含むがこれらに限定されるものではない。アセトアルデヒド(産生源:エタノール、X-スレオニン、診断:中毒)、アセトン(産生源:アセトアセテート、診断:食事法/糖尿病)、アンモニア(産生源:アミノ酸の脱アミノ反応、診断:尿毒症および肝臓病)、CO(一酸化炭素)(産生源:CH2Cl2、%COHbの上昇、診断:室内の大気汚染)、クロロホルム(産生源:ハロゲン化化合物)、ジクロルベンゼン(産生源:ハロゲン化化合物)、ジエチルアミン(産生源:塩素、診断:10腸内細菌過剰繁殖)、H(水素)(産生源:腸、診断:乳糖不耐症)、イソプレン(産生源:脂肪酸、診断:代謝ストレス)、メタンチオール(産生源:メチオニン、診断:腸内細菌過剰繁殖)、メチルエチルケトン(産生源:脂肪酸、診断:室内の大気汚染/食事法)、オルトトルイジン(産生源:癌代謝物質、診断:気管支癌)、ペンタン硫化物および硫化物(産生源:脂質過酸化反応、診断:心筋梗塞)、H2S(産生源:代謝、診断:歯周病/排卵)、MeS(産生源:代謝、診断:肝硬変)、およびMe2S(産生源:感染、診断:塹壕口腔炎)。
【0045】
用語「統計学的に有意な」(研究されたグループ間の)差異は、適切な統計学的分析(例:χ二乗検定、t検定等)を使用する場合に、同一である群の確率が5%未満、例:p<0.05、である状態を指す。言い換えれば、完全にランダムな基準において同一の結果を取得する確率は100回の試行回数中の5回未満である。
【0046】
用語「キット」または「試験キット」は、分析のために要求される試薬および補助剤の組み合わせを意味する。試験キットはほとんどに場合においていくつかのユニットで構成されるとしても、個別の分析要素としても利用可能であり、それは複数の試験キットとして同様にみなされうる。
【0047】
本明細書で使用される用語「ポリメラーゼ連鎖反応」(PCR)は、クローニングまたは精製無しでゲノムDNAの混合物における標的配列のセグメントの濃度を高める方法を説明する、K.B. Mullis、米国特許第4,683,195号、第4,683,202号、および第4,965,188号(参照により本明細書に組み込まれる)の方法を指す。その対象配列を増幅するためのプロセスは、所望の対象配列を含んでいるDNA混合物に対して2つのオリゴヌクレオチドプライマーを大過剰に導入し、DNAポリメラーゼの存在下で熱サイクルの精密なシーケンスを行うことを含む。この2つのプライマーはその二本鎖対象配列のそれぞれの鎖に対して相補的である。増幅を達成するには、その混合物が変性され、プライマーがその対象分子内でそれらの相補配列に対してアニーリングする。アニーリングに続き、それらのプライマーはポリメラーゼにより伸長され、それにより新しい相補鎖対を形成できることとなる。変性、プライマーのアニーリングおよびポリメラーゼ伸長の手順は、その所望の対象配列の増幅断片の高濃度を達成するために多数回反復できる(すなわち変性、アニーリングおよび伸長は1つの「サイクル」を構成し、多数の「サイクル」が存在できることとなる)。この所望の対象配列の増幅断片の長さはそれぞれに関してのそれらのプライマーの相対位置により決定され、そしてそれゆえに、この長さは制御可能なパラメーターである。このプロセスを反復することの態様の効力により、この方法は「ポリメラーゼ連鎖反応」(以降、PCR)と呼ばれる。
【0048】
本明細書で使用されるように、1つ以上のマイクロRNAは、マイクロアレイ発現プロファイリング、PCR、逆転写酵素PCR、逆転写酵素リアルタイムPCR、定量的リアルタイムPCR、エンドポイントPCR、マルチプレックスエンドポイントPCR、ICE-COLD PCR、質量分析法、in situハイブリダイゼーション(ISH)、マルチプレックスin situハイブリダイゼーション、または核酸配列決定により測定することができる。しかしながら、マイクロRNAの発現を測定する他の技法、例えば表面プラスモン共鳴法、蛍光共鳴効果(移動、クエンチングおよびこれらの変異効果)、または上記に列挙される技法および組み合わせの任意の次世代の技法であって、本発明の範囲以内であるもののすべて等を使用することができる。1つ以上のマイクロRNAの全体の発現レベルは、結腸直腸新生物の存在の判定の感度および品質を向上させるために使用できる。例えば、感度の増大は測定されるマイクロRNAの数の増加に関連する、例:より多数のマイクロRNAを測定する(例:2対8または15対30)と、発現レベルの領域において当業者に周知であるように、当該測定の品質が同時に増加する。当業者は、最も頻繁には生体特徴(アッセイ)が過剰発現されるマイクロRNAおよび過少発現されるマイクロRNAの両方の組み合わせを含むことになることを理解する。これを受けて、本発明は、一態様において、各マイクロRNAから過剰発現されるマイクロRNAおよび過少発現されるマイクロRNAの両方の組み合わせを含む。
【0049】
本発明は、予後判定、治療ガイダンス、治療に対する応答の監視、臨床試験における使用、研究およびこれらの組み合わせを含むかまたは拡張可能な、患者の診断および治療のために使用される場合がある。当業者には、本明細書で同定されるマイクロRNAの検出が任意のこれらの使用のために使用される場合があることが理解される。
【0050】
マイクロRNA(miRNA)は、遺伝子発現の制御因子として機能する、進化的に保存された、内因性の、20〜22個のヌクレオチドの小型非コードRNA分子である。最近の知見は、miRNAが、発生、分化、増殖および細胞死等の、様々な決定的な細胞プロセスを調節していることを示す。これらはヒト癌の開始および進行において重要な役割を担うことが考えられており、発癌遺伝子または腫瘍抑制因子として作用している。
【0051】
さまざまな組織におけるmiRNAの発現プロファイルの変化は癌を含む種々のヒト病理において観察されている。今日まで、miRNA組織プロファイリングにより分析されたあらゆるタイプの腫瘍は同一の組織からの正常な細胞に比較して有意に異なるmiRNAプロファイルを示している[2〜4]。その上、いくつかの最近の報告は、miRNAが、ヒトおよびその他の動物の血漿および血清において存在することを実証している[5〜7]。miRNAの循環レベルは全く安定で、再現可能であり、同一の種の個体間で一環している[5]。それゆえに、循環miRNAの発現プロファイリングは癌およびその他の疾患の診断のための新規の非侵襲性手法として重大な期待を示す。
【0052】
結腸直腸癌(CRC)は西側諸国において2番目に一般的な疾患であり、癌関連死亡の第2の主因となっている[8]。幸いに、平均リスクの個体のスクリーニングが早期の癌発見および癌前駆体病変の切除により死亡率および発症率減少をもたらす証拠が存在する[9]。確かに、スクリーニングプログラムの目標は、浸潤病変への進行の高リスクに関連付けられる前癌性病変である、早期ステージCRCおよび進行した腺種(AA)の検出である。
【0053】
現在、CRCスクリーニングのために最適で、普遍的に認められる手法は存在せず[10、11]、糞便ベース試験はこれらの限られた感度により阻害されており、結腸内視鏡は侵襲性の手法を含む[12]。それゆえに、現在の手法を補完でき、改善できる新しいアプローチが緊急に必要とされている。そういう意味で、以前の研究は、いくつかのmiRNAがCRCを有する患者からの血漿中で増大していることを発見しており、非侵襲性バイオマーカーとしての可能性ある役割を示唆する[13〜16]。
【0054】
しかしながら、これらのすべては少数のmiRNAの分析に限定されていた。従って、高スループット技術により血漿miRNAプロファイリングを更に特徴付け、CRCおよび/または癌前駆体病変を有する個体の検出におけるそのパフォーマンス特性を評価することは必須である。本研究において、我々は、CRCまたはAAを有する患者、および健康な個体のセット(群)においてマイクロアレイにより血漿miRNAプロファイリングを実施して、高度な判定可能能力で結腸直腸新生物を有する患者を検出することができるmiRNAのグループを同定した。個体の独立コホートにおける検証および異なる技術の使用によって、CRCの非侵襲性診断のための非常に有望なバイオマーカーとして6個の血漿miRNAを確認することができた。
【0055】
循環miRNAは、癌およびその他の疾患の診断のための新規バイオマーカーとして重大な期待を示す。結腸直腸癌(CRC)スクリーニングのための現在の手法を補完でき、改善できる新しい非侵襲性のアプローチが緊急に必要とされている。ゲノムワイド血漿miRNA発現プロファイリングが、CRCまたは進行した結腸直腸腺種(AA)等の前癌状態の病変を有する患者、健康な被検者を含む個体のセット(n=61)においてマイクロアレイにより実施された。リアルタイムqRT-PCRを、別の病院からの患者(n=135)の独立したコホートにおいて選択されたmiRNAの発現を検証するために使用した。CRCまたはAAを有する患者は対照と比較して有意に異なる血漿miRNA発現プロファイルを示した。13個のmiRNAの群は患者の独立したコホートにおいて検証するために選択されて、これらの中の6個がCRCグループにおいて有意に過剰発現されることが確認されて、高度に判別可能な精度を示していた。6個のmiRNAの中の1個は、またAAを有する患者において、中程度に判別可能な精度を持ち、有意に過剰発現もすることも確認された。
【0056】
2つの病院(スペイン、カタルーニャ州、Hospital Clinic of Barcelonaおよびスペイン、ギプスコア県、Hospital of Donostia)からの合計で273人の被検者が、それぞれこの研究に含まれた。これらの内、77人は、彼らが以下の基準に合致したため除外された。家族性大腸腺腫症またはリンチ症候群の臨床診断、10個を超過する結腸直腸腺種の存在、選抜時にその他の部位における癌の診断、炎症性腸疾患を発症中、血液サンプリング時に化学療法または放射線療法で治療中、不完全な腸検査、結腸内視鏡検査時の不適切な術前腸管処理法、または血漿サンプル中の溶血の存在。最後に、以下の196人の個体を含めた。123人の患者が新たに散発性結腸直腸新生物を有すると診断され(CRCを有する63人およびAAを有する40人)および任意の癌の個体既往歴を持たず、最近の結腸内視鏡が結腸直腸の腫瘍性病変の欠如を確認している73人の健康な個体だった。AAを有する患者は、少なくとも10mmのサイズを有している腺種を有する患者かまたは組織学的に高グレードの形成を有しているかまたは≧20%の絨毛状腺種成分を有しているかだった。これらの個体は、2つの異なるおよび無関係な以下のセットに分割された。セット1、ゲノムワイド血漿マイクロRNA発現プロファイリングを実施するために採用された、Hospital Clinic of Barcelonaからの61人の被検体、およびセット2、セット1において収集された結果を更に検証するために募集された、Hospital of Donostiaからの135人の被検体だった。参加者の特徴を表1に示す。血液サンプルはすべての個体において内視鏡検査または外科手術に先立ち採取された。
【表12】
【0057】
この研究はHospital Clinic of Barcelonaの組織倫理委員会により承認され(承認日:03/26/2009)、書面によるインフォームドコンセントがヘルシンキ宣言に準拠してすべての参加者たちから取得された。
【0058】
血漿サンプルからのRNA抽出。それぞれの参加者からの全血の20mlをEDTAチューブ内に採取した。血液サンプルは血漿分離まで4℃で放置されて、血漿はその血液採取の6時間以内に冷凍した。簡潔に、サンプルは血液細胞を沈降させるために4℃で10分間にわたり1,600 x gで遠心分離され、血漿は新しいチューブに移されて、完全に細胞成分を除去するために4℃で10分間にわたり16,000 x gで更に遠心分離された。血漿は分注されてから、使用するまで-80℃で保管した。小型RNAを含んでいる全RNAは、以下の変更を加えた製造元のプロトコールに従って、Trizol LS試薬(Invitrogen、Carlsbad、CA)およびmiRNeasy Mini Kit(Qiagen、Hilden、Germany)を使用して550μlの血漿から分離した。Trizol LS試薬は容量測定比2:1において血漿サンプルに添加された。クロロホルム添加および遠心分離による相分離の後、水相を新しいチューブに分離し、1容量のTrizol LSを更に添加した。この第二層分離の後、1.5容量の100%エタノールをこの水相に添加して、製造元の説明書に従って、この混合物をmiRNeasyカラムに装着した。DNase処理(Qiagen)をあらゆる混入DNAを除去するために実施した。この最終溶出容量は30μlだった。RNA濃度はすべてのサンプルにおいてNanoDrop 1000(Nanodrop社、Wilmington、DE)を使用して定量化されて、それは3〜5 ng/μlの範囲だった。この抽出プロセスは次のステップのために十分なRNA量を採取するまでそれぞれのサンプルに関して繰り返された。
【0059】
マイクロアレイによるゲノムワイド血漿miRNAプロファイリング。miRNA発現プロファイリングはSAM-Bead Arrayプラットフォーム(Illumina、Inc.社、San Diego、CA)を基にしたマイクロRNA発現プロファイリングを使用してセット1からのすべてのサンプルにおいて実施した。このマイクロアレイは、743個の検証済みmiRNAを含む1,146個のプローブを装備しており、miRBase Sanger v.12.0のデータベースにおいて注釈済みヒトmiRNAの約97%を検出する。このmiRNAマイクロアレイアッセイはサンプル当たり200ngの全RNAを使用して実施した。すべての手順は、以前に記載されている[13、14]ように、製造元のプロトコールに従って実施した。データはBeadStudioデータ分析ソフトウェアを使用して抽出し、対数底が2のスケールに変換した。すべてのサンプルからのマイクロアレイデータをLumiバイオコンダクターパッケージ[15]を使用して4分位に正規化した。
【0060】
リアルタイムqRT-PCRによるmiRNA発現の分析。miRNA発現をマルチプレックス事前増幅プロセスを有するリアルタイムqRT-PCRにより分析した。簡潔に、21ngの血漿RNAをMegaplex RT Primers(Applied Biosystems Inc.社、Foster City、CA)の混合物により逆転写し、Megaplex PreAmp PrimersおよびTaqMan PreAmp MasterMix(Applied Biosystems Inc.社)により14サイクルにわたり事前増幅した。それぞれのmiRNAの発現は、TaqMan miRNA Assays(Applied Biosystems Inc.社)を使用してViia7 Real-Time PCR System(Applied Biosystems Inc.社)においてqPCRにより評価した。複数の推定ハウスキーピング小型核RNAを我々のサンプルにおいて最適なものを判定するために分析した(RNU6B、miR16、miR423-5p、RNU48、miR544、miR103、miR525、miR451)。miR16は最高の安定度および存在度を示したが、それゆえに、miRNAの発現レベルを、その他の刊行物[16、17]に調和する内部対照としてmiR16に対して正規化した。Ct値は閾値自動検出から算出した。テンプレート対照は何の増幅も示さなかった。qPCRのそれぞれのポイントについて3回の技術的複製物を含めた。選択されたmiRNAの相対発現レベルをΔCt値としてそれぞれのサンプルに関して算出した[ΔCt = 対象miRNAのCt - 内部対照miRNAのCt]。
【0061】
統計学的分析。マイクロアレイデータに関する線形モデル(LIMMA)をグループ間で示差的に発現されるmiRNAを同定するために使用した。LIMMAは線形モデルならびに経験的ベイズ対合調整(paired moderated)t-統計およびF-統計を使用する[18]。F-統計を使用した最も有意なmiRNAを、made4パッケージに含まれる群間分析(BGA)関数に実装される関連性分析を実施するために使用した[19]。この方法は、その第1および第2軸におけるサンプルスコアの推定二項分布の95%を表す楕円形により区切られる面積の2Dグラフにおいて高次元データ(複数の発現測定値等)を視覚化する能力がある[20]。ベン図は絶対倍率変化が1.5倍を超過し、調整された(moderate)p-値<0.05(LIMMAパッケージからのベン計数およびベン図)を有するmiRNAのみヒットとみなすものとして作成された。定量変数はスチューデントの検定を使用して分析した。両側p値<0.05は有意であるとみなした。個別のmiRNAおよび異なるmiRNAの組み合わせの予見性の評価は、年齢および性別により調整されて、ロジスティック回帰(GLM二項分布)を使用して算出した。全体の精度パラメーターを含む、ROC分析プロットおよび導出済みカットポイントはDiagnosisMed R-パッケージを使用して算出された。この感度および特異性は、そのROC曲線および上側左隅間の最小距離に関連する最適カットポイントから算出された。
【0062】
結腸直腸癌を有する患者からの血漿サンプルにおけるゲノムワイドmiRNAプロファイリング。血漿miRNAの発現は健康な個体と結腸直腸癌を有する患者を区別する。CRCを有する患者と健康な個体の間の示差的循環miRNA発現プロファイリングを評価するために、miRNAマイクロアレイ実験を、CRCを有する21人の患者および20人の健康対照者の血漿サンプルから得られた全RNAにおいて実施した。変化したmiRNAの発現パターンが結腸直腸癌前駆体病変を有する患者において見つかったかどうかを更に調査するために、miRNAマイクロアレイ実験が、進行した結腸直腸腺種(AA)を有する20人の患者からの血漿RNAにおいても実施された。
【0063】
LIMMAを活用した初の比較統計学的分析によって、健康対照者と比較してCRC患者において合計93個のmiRNAが有意に脱調節され(p<0.05)、そしてAA患者を健康対照者と比較した場合の125個のmiRNAが得られた。すべてのマイクロアレイデータはGEO(アクセッション番号:GSE 25609)において利用可能である。図1Aおよび1Bは、CRC患者と対照者の間(図1A)、およびAA患者と対照者の間(図1B)の最大の有意な倍率変化を有する50個のmiRNAを含むヒートマップを示す。CRCまたはAAにおけるこれらのmiRNAに関する対応する、倍率変化およびp-値、ならびに予見性パラメーターが、それぞれ表2〜3および表4〜5に示される。BGAグラフが、血漿miRNA発現に従って、CRCまたはAAを有する患者と対照者の間で近接性を視覚的に表すために実施された。図2おいて図解されるように、CRCまたはAAを有する患者および健康な個体は3つに明確に分離された各グループとして現れた。それぞれの新生物性病変のそれぞれのタイプのmiRNA発現の特異性を、更に分析した。即ち、ベン図分析を使用して、CRCおよびAAを対照サンプルと比較した(図2)。両方のタイプの新生物の患者が24個の有意に上方調節されたmiRNAを共有した一方で、21および28のmiRNAの部分集団がCRCおよびAAを有する患者において、それぞれが、独占的かつ有意に上方調節されることが明らかになった。それゆえに、それぞれの結腸直腸新生物病変は特定のmiRNA発現プロファイルを持つが、これらの両方は、更に、共通の血漿miRNA特徴を基にした1つの単一試験を使用して両方の病変を識別することを可能にしうる、脱調節miRNAの重要な数も共有する。
【表13】

【0064】
【表14】

【0065】
【表15】

【0066】
【表16】

【0067】
リアルタイムqRT-PCRによる血漿miRNA発現の評価。マイクロアレイに基づく血漿miRNA発現の結果は技術的に再現可能である。最初に、リアルタイムqRT-PCRを、セット1からランダムに選択された28のサンプル(結腸直腸新生物を有する19人の患者および9人の健康対照者)におけるマイクロアレイの結果を確認するために実施した。これらの各研究に関して、合計で14個の候補miRNAが選択された。12個の候補miRNA(miR17-5p、miR92a、miR19b、miR18a、miR29a、miR302a、miR23a、miR27a、miR24、miR335、miR424およびmiR15b)は、CRCおよび/またはAAにおいて上位50の脱調節されたmiRNAが存在するため、そして対数底が2のマイクロアレイ強度>8を有するために選択された。2つの追加miRNA(miR19a、およびmiR20a)は、これらがその以前の基準を満足しなかったとしても、最良の特徴付けられた発癌性miRNAクラスターの1つである、miR17-92クラスターの部分であるためにも選択された。全体として、qRT-PCRおよびマイクロアレイの結果は、qRT-PCRによりいかなる増幅も示さず、それゆえに後続の分析から排除されたmiR424を除外して、相関していた。
【0068】
6つの血漿マイクロRNAは1つの独立コホートからのCRC患者において過剰発現されていることが確認された。第2に、その以前のフェーズにおいて適切な増幅を示した13個の候補miRNA(miR92a、miR17-5p、miR18a、miR19a、miR19b、miR20a、miR15b、miR29a、miR302a、miR23a、miR27a、miR24およびmiR335)は、リアルタイムqRT-PCRにより我々の結果を検証するために、CRCを有する42人の患者および53人の健康対照者の1つの独立したセットの血漿において分析した。
【0069】
興味深いことに、miR18a、miR19a、miR19b、miR15b、miR29aおよびmiR335はCRCを有する患者において有意に上方調節された(図3)。加えて、miR-24は、またこのグループの患者において過剰発現されたが、統計学的有意性(p=0.08)に到達しなかった。顕著には、この第2セットにおける検証済みmiRNAはまた0.8(95% CI:0.71〜0.89)〜0.7(95% CI:0.59〜0.80)の範囲のROC曲線下面積(AUC)を有する健康対照者からCRCを判別することにおいて高度な精度を達成した。次に、我々は、これらのmiRNAの任意の組み合わせが、それぞれの患者個体に関してCRCを検出することにおいてその判別精度を向上させるかどうかを確認することを模索した。その組み合わせの間で、強調される最高の判別可能性を示したのは特徴miR19a + miR19b、およびmiR19a + miR19b + miR15b(表6、図4)であった。最後に、我々は早期の(TNM I〜II)および進行した(TNMIII〜IV)のCRC患者におけるこれらの各特徴の予見能力を調査した。表2において明確であるように、両方の特徴が早期および進行した症例において高度な判別精度を示した。同様に、我々は、これらの特徴が、右側の腫瘍を、左側の腫瘍と同程度に正確に検出可能であったか、そしてそれが両方の症例であるかどうかを確認した(表2)。
【表17】
【0070】
各ROC曲線パラメーター(曲線下面積(AUC)および95%信頼区間(CI)は、異なる各腫瘍ステージ(I/IIおよびIII/IV)および各部位(左結腸曲に関して、右側および左側)に関するものを含めすべてのCRC症例に関して示される)。
【0071】
1つの血漿マイクロRNAは、進行した結腸直腸腺種を有する患者において増加することが確認された。CRC患者の両方のセットにおいて過剰発現されたことが見出された血漿miRNAのいずれかが癌前駆体病変を有する患者においても増加しているかを評価するため、AAを有する40人の患者および53人の健康対照者の独立コホートからの血漿サンプルにおけるリアルタイムqRT-PCRにより分析した。このmiR18aは、第1のセットであったのと同様に、対照との比較においてAA患者の第2のセットにおいて有意に過剰発現されることが確認された(図1B)。しかしながら、このmiRNAはAA患者の第2のセットにおいて良好な識別能力を示したが(AUC:0.84、95%CI:0.72-0.96)、S:80%、Sp:80%)、このパラメーターは患者の第2セットにおいては低かった(AUC:0.64、95%CI:0.52-0.75、S:72%、Sp:57%)。
【0072】
この研究において、本発明者は、CRCまたはAAを有する患者および健康な個体からの血漿サンプルにおいてマイクロアレイによるゲノムワイドmiRNAプロファイリングを実施した。これらの結果は、血漿miRNA発現が結腸直腸新生物を有する患者と対照被検者とを区別できることを示し、これらの病変の非侵襲検出のための潜在的な価値を示唆する。我々の知っている限り、これは高スループット技術によるCRCおよびAAを有する患者における血漿miRNAのゲノムワイド発現を分析する最初の報告であり、それから、その結果を外部の、独立したコホートにおいて検証する。この高スループット分析を基にして、我々は、CRCまたはAAを有する患者を検出するために有用な多数の推定血漿miRNAバイオマーカーを同定した。その上、我々は、異なるコホートにおいて、および異なる技術を使用して、6つの血漿マイクロRNAについてCRCと健康な個体とを区別する高度な能力を確認する。これらのmiRNAの中の5個(即ち、miR19a、miR19b、miR18a、miR15b、およびmiR335)が、以前に報告されていない新規のバイオマーカーであることを言及することは重要である。
【0073】
血漿およびその他の液体における安定したmiRNAの最近の発見は、これらの分子を疾患のバイオマーカーとして利用する可能性を開いており、複数の研究がこの手法を異なる設定において評価する。ヒト癌において、このアプローチは真に期待がもたれている。なぜなら腫瘍関連の循環miRNAがおそらく非侵襲的に新生物を検出できる可能性があるからである。しかしながら、癌におけるほとんどのmiRNA発現プロファイリング研究は組織サンプルを使用して実施され、わずかな数の研究だけが診断および予後判定における循環miRNAの潜在的な価値に焦点を当てていた[21〜23]。顕著には、miRNAのバイオマーカーとしての利用が、RNAseの存在下でさえ、これらの分子の高度な安定性に依存しているRNAマーカーまたはタンパク質マーカーよりもより良好な手法となるように思われる[23]。
【0074】
これまで、少数の研究のみがCRCにおけるいくつかの候補血漿miRNAの発現を分析している。最初に、Ngらが、2個の血漿miRNA(即ちmiR17-3p、およびmiR92a)が対照被検体と比較してCRC患者において有意に上昇していたことをqRT-PCRにより発見した。しかしながら、彼らの当初の分析は10個の血漿サンプル中(5人のCRC患者および5人の健康な個体)における95個のmiRNAに限られていた。より重要なのは、この研究がCRCの診断において、前駆体病変の同定においてではなく、血漿miRNAの潜在的な用途のみを評価したことである[24]。この直後に、Huangらが、CRCおよびAAの両方を有する患者を検出するために2個の血漿miRNA(miR29aおよびmiR92a)の潜在的な用途を報告した。しかしながら、このqRT-PCR分析は以前の報告を基にして選択された12個のmiRNAに限定された。Puらは、CRC患者からの血漿サンプルにおける3個のmiRNAの発現をqRT-PCRにより分析して、miR221の有意な過剰発現を報告しているが、AAを有する患者はこの研究に含まれていなかった[25]。最後に、Chengらは、3個のmiRNAの発現を分析した後、転移性CRCの患者におけるmiR141血漿レベルの有意な上方調節を報告した[26]。
【0075】
本研究は、これらの病変(CRCおよびAA)を有する患者の診断のためのバイオマーカーとしての潜在的な用途のある血漿miRNAを同定するために、CRCおよびAAを有する患者において高スループット技術を使用することにより循環miRNAの完全なプロファイリングを実施するためであった。分析された743個のmiRNAのうち、我々は、CRCを有する患者において有意に異常調節された95個の循環miRNA、およびAAを有する患者において125個を発見して、これらの一部が良好な判別能力を示していた。マイクロアレイ分析において有意に上方調節されたmiRNAの中で、本発明者は、miR29a、miR92aおよびmiR141のような以前の研究においてCRCに関連する血漿miRNAを確認しただけでなく、またCRC癌化に潜在的な関与を持つ新しいmiRNAも報告した。その上、過剰発現されるmiRNAの中で、我々はmiR17〜92クラスターのすべてのメンバー(miR17、miR92a、miR19a、miR19b、miR18a、およびmiR20a)、ならびに哺乳類におけるmiR17〜92に対してあまり広範には特徴付けられていないクラスターパラログであるmiR106b〜25クラスターの2個のメンバー(miR-25およびmiR93)を発見した。これらの知見は、miR17〜92のクラスターを結腸直腸癌化における中心的な原因として強調する。miR17〜92のクラスターはまた、最良に特徴付けられた発癌性miRNAクラスターの1つであるoncomiR-1と命名されている[27、28]。そういう意味で、染色体不安定性の増大は、腺種から悪性腺腫への進行の原因であり、腫瘍遺伝子の上方調節へと導くのみならず、またmiR17〜92のクラスターを含む重要なmiRNAの過剰発現をも引き起こすことを示唆する[29]。
【0076】
本発明者は、CRC患者の第1セットにおける上方調節されたmiRNAのいくつか(即ち、miR18a、miR19a、miR19b、miR15b、miR29aおよびmiR335)がまた独立コホートにおいて過剰発現されることも実証した。際立って、これらの検証されたmiRNAは、CRCに関する高度な判別可能精度を示して、これらのmiRNAのいくつかの組み合わせはこれらのmiRNA単体のいずれの判定可能能力を向上させた。更に、これらは、右側の腫瘍および左側病変と同程度に正確に検出することを含め、早期CRC(I〜II)を進行したCRC(ステージII〜III)と同程度に正確に検出することができた。これらの結果は、これらの血漿miRNAをCRC診断のための新規な非侵襲性バイオマーカーとしての潜在的な用途を指摘する。
【0077】
結腸直腸癌前駆体病変に関連して、我々は、CRCにおいて過剰発現した6個のmiRNA中の1個(miR-18a)のみがAAを有する患者の2つの独立コホートにおいて有意に過剰発現されることが確認されたことを発見した。miR-18aが患者の第1セットにおいて完全に良好な判定可能能力を示したとしても、この能力は第2コホートにおいては中程度だった。事実、Huangらにより分析されたAAを有する患者のコホートにおいて、2個の血漿miR(miR-29aおよびmiR-92a)が対照からのAAの区別において完全に良好な精度を示している[16]。これらの2個の血漿miRNAは、AA患者の我々の第1コホートにおいても有意に過剰発現されたが、第2セットにおいては否であった。患者の両方のセットの間のこの相違に関する可能性のある説明は、患者の第2コホートにおけるAAのやや進行した特性である可能性がある。考え合わせると、これらの結果は、AAを有する患者における血漿マイクロRNAの有効性の評価が関心のある研究系統を含み、更なる調査に値する、ということを示す。現在、AAの検出は非侵襲性CRCスクリーニング手法のための主要な挑戦として残っている。実際に、平均的リスク集団において非侵襲性CRCスクリーニングに関して現在受け入れられている手法である免疫化学的便潜血検査は、CRCの診断に関して良好な実績を示すが、AAのほとんど50%を見落としており、それは我々のグループの研究において最近実証されている[12]。
【0078】
興味深いことに、この研究におけるすべての検証済みmiRNAは、CRC患者からの組織サンプルにおいて過剰発現することが以前に報告されている[30〜34]。従って、CRCがこれらの血漿miRNAの産生源を含むことを仮定できる。それゆえに、我々の結果は、miR29a、miR15b、miR19a、miR-19b、miR-18aおよびmiR-335がCRC診断のための強力なバイオマーカーであることを指摘するだけではなく、また結腸直腸の癌化におけるこれらの関与もまた強調される。その上、これらのmiRNAの潜在的な発癌性の役割を考慮して、我々の結果はこれらの分子の阻害に焦点を置いた新しい標的化治療の将来設計の可能性を開く。
【0079】
列挙されるマイクロRNAおよびマイクロRNAのファミリーに加えて、その他のマイクロRNAが結腸直腸癌の検出を向上させるために追加される場合がある。例えば、この方法は結腸直腸新生物において過少発現され、以下から選択されるマイクロRNAの発現レベルを測定することを更に含む場合がある。
【表18】
【0080】
この方法は、結腸直腸新生物において過剰発現され、以下から選択されるマイクロRNAの発現のレベルを測定することを更に含む場合がある。
【表19】
【0081】
更に別の生体特徴またはアッセイは、例えば、本明細書において上で列挙したまたは本明細書において開示された、過剰発現されるマイクロRNAおよび過少発現されるマイクロRNAの両方の組み合わせを含むことになる。これを受けて、本発明は、一態様において、特定の列挙されるマイクロRNAおよびマイクロRNA(または同時発現する)のファミリーと共にまたは無しで、各マイクロRNAから過剰および過少に発現されるマイクロRNAの両方の組み合わせを含む。
【0082】
要約すると、CRCおよびAAを有する患者は、健康な個体と比較して有意に異なる血漿mRNAプロファイルを示す。これらの腫瘍関連循環miRNAは新規のバイオマーカーを構成し、非侵襲性の早期診断のための潜在的手法となる。この研究において、我々はCRC検出に関して6個の有望な候補血漿miRNAを同定する。それにもかかわらず、このアプローチは、スクリーニング設定におけるそれぞれの効果および潜在能力を評価するために、より大きな患者のコホートにおいて更に検証される必要がある。
【0083】
本明細書において解説される実施形態はいずれも、本発明の任意の方法、キット、試薬、または組成物に対して実施することができ、およびその逆も可能であることが想定される。更に、本発明の組成物は本発明の方法を達成するために使用できる。
【0084】
本発明において説明される特定の実施形態は、例示目的で示されており、本発明の限定ではないことと解釈される。本発明の主要な特徴は、本発明の範囲から逸脱することなくさまざまな実施形態において利用されることができる。当業者であれば、本明細書において説明される特定の手順に対する通常の実験、多数の均等物にすぎないことを、理解し、また確認することができる。このような均等物は、本発明の範囲内であることとみなされ、特許請求の範囲に包含される。
【0085】
本明細書のおいて言及されるすべての刊行物および特許出願は、本発明に関連する分やの当業者のレベルを示す。すべての刊行物および特許出願は、それぞれの個々の刊行物または特許出願が参照により含まれることが具体的かつ個別に示される程度に参照により本明細書に組み込まれる。
【0086】
特許請求の範囲および/または明細書において用語「含む」と関連して使用される場合、単語「1つ(a、an)」の使用は「1つ」を意味する場合があるが、それはまた「1つ以上の」、「少なくとも1つの」および「1つまたは1つ以上の」の意味と一致する。特許請求の範囲における用語「または」の使用は、本開示が代替物のみおよび「および/または」を指す定義を支持するとしても、代替物に限定して指すことが明示的に示されるかまたは代替物が相互に限定的でない限り、「および/または」と意味するために使用される。本出願を通じて、用語「約」は、数値が、その数値を決定する装置および方法に関する固有の誤差の変動、または研究の対象物の間に存在する変動を含むことを示すために使用される。
【0087】
本明細書および特許請求の範囲において使用されるように、単語「含む(comprising)」(ならびに「comprise」および「comprises」等の含むの任意の書式)、「有する(having)」(ならびに「have」および「has」等の有するの任意の書式)、「含む(including)」(ならびに「includes」および「include」等の含むの任意の書式)または「含む(containing)」(ならびに「contains」および「contain」等の含むの任意の書式)は、包括的または制限無しであり、追加の列挙されていない要素または方法の手順を排除するものではない。本明細書で使用されるように、成句「から本質的になる」は、当指定される物質またはステップおよび特許請求の範囲に記載の発明の基本的かつ新規な特徴(複数)に影響しないものに対して特許請求の範囲を制限する。本明細書で使用されるように、成句「からなる」は、例えば、要素または限定に一般的に関連する不純物等を除いて、特許請求の範囲において特定されていない要素、ステップまたは成分を除外するものである。
【0088】
本発明で使用される、用語「またはこれらの組み合わせ」は当該の用語に先立つ列挙される項目のすべての置換および組み合わせを指す。例えば、「A、B、C、またはこれらの組み合わせ」は以下の少なくとも1つを含むことを意図する。A、B、C、AB、AC、BC、またはABC、および特定の状況において順番が重要な場合、また、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC、またはCAB。この例に継続して、明示的に含まれるものは、BB、AAA、AB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABB、およびその他の、1つ以上の項目または用語の繰り返しを含む組み合わせである。当業者は、それ以外で当該の状況から明白に逸脱しない限り、任意の組み合わせにおいて項目および用語の数において一切制限が存在しないことを理解することとなる。
【0089】
本明細書で使用されるように、制限無しで、「約」、「実質的な」または「実質的に」等の概算の言語は、このように修正されたものが絶対または完璧であることが必要でないことが理解されているが、提示されているように、当該の条件を指定していることを保証する当該の技法におけるこれらの通常の技能に対して十分に近接していると考慮される。当該の説明が変更する限度は、変更の程度に依存することになり、および当該の変更された機能を当該の未変更(未修飾)の機能の要求される特徴および能力を依然として有しているような当該の変更(修飾)された機能を認識する技法における通常の技能を依然として有することとなる。一般に、上述の議論に依存するが、「約」等の近似の言語により修正される数値は記述される値から少なくとも±1、2、3、4、5、6、7、10、12または15%変動する場合がある。
【0090】
本明細書において開示されるおよび特許請求の範囲に記載されるすべての組成物および/または方法は本開示に照らして過度の実験無しで製造および実施できる。本発明の構成および方法が好ましい実施形態に関して説明されているが、本発明の概念、精神および範囲から逸脱することなく本明細書において説明される構成および/または方法に対しておよびその手順においてまたは当該の方法の手順のシーケンスにおいて、変更が適用される場合があることは当業者には明白である。この技法におけるこれらの当業者たちに対して明白であるすべてのこのように同様な代替物および改良は、添付の特許請求の範囲により定義されるように、本発明の精神、範囲および概念の以内であるとみなされる。
【0091】
参考文献




【0092】
実施形態:
1.ヒト被検体において結腸直腸新生物を診断または検出する方法であって、以下のステップ:
結腸直腸新生物に罹患していることが疑われる被検体から1つ以上の生体サンプルを採取するステップ、
該被検体の1つ以上の生体サンプルから得られる1つ以上のマイクロRNAの全体の発現パターンまたはレベルを測定するステップ、および
結腸直腸新生物に罹患している疑いのある被検体の生体サンプルからの1つ以上のマイクロRNAの全体の発現パターンを、正常な被検体の生体サンプルからの1つ以上のマイクロRNAの全体の発現パターンと比較するステップであって、上記正常な被検体が結腸直腸新生物に罹患していない健康な被検体であり、miR19aおよびmiR19b、またはmiR19aおよびmiR19bおよびmiR15bの組み合わせの過剰発現が結腸直腸癌の指標となる、上記ステップ
を含む方法。
2.正常な被検体からの発現と比較したmiR18a、miR29a、またはmiR335の少なくとも1つの分析を更に含み、miR18a、miR29a、またはmiR335の過剰発現が結腸直腸新生物の指標となる、実施形態1に記載の方法。
3.miR29a、miR92a、またはmiR141の少なくとも1つの分析を更に含む、実施形態1に記載の方法。
4.1つ以上の生体サンプルが、1つ以上の体液、血漿サンプル、血清サンプル、血液サンプル、組織サンプル、または糞便サンプルからなる群より選択される、実施形態1に記載の方法。
5.早期CRC(I〜II)を、進行したCRC(ステージII〜III)、右側の腫瘍および左側病変と同程度に正確に検出することができる、実施形態1に記載の方法。
6.90、91、92、93、94、または95%またはそれを超過する信頼区間を含む、実施形態1に記載の方法。
7.結腸直腸新生物において過少発現され、以下から選択されるマイクロRNAの発現レベルを測定することを更に含む、実施形態1に記載の方法。
8.結腸直腸新生物において過剰発現され、以下から選択されるマイクロRNAの発現レベルを測定することを更に含む、実施形態1に記載の方法。
9.1つ以上のマイクロRNAの発現レベルが、マイクロアレイ発現プロファイリング、PCR、逆転写酵素PCR、逆転写酵素リアルタイムPCR、定量的リアルタイムPCR、エンドポイントPCR、マルチプレックスエンドポイントPCR、COLD-PCR、ICE-COLD PCR、質量分析法、in situハイブリダイゼーション(ISH)、マルチプレックスin situハイブリダイゼーション、または核酸配列決定により測定される、実施形態1に記載の方法。
10.結腸直腸新生物のリスクがあるまたはそれに罹患している患者を治療するため、結腸直腸新生物のリスクがあるまたはそれに罹患している患者のための抗新生物薬治療を選択するため、結腸直腸新生物のサブグループに対してまたは結腸直腸新生物治療臨床試験について患者を階層化するため、結腸直腸新生物治療レジメンに対する抵抗性または応答性を判定するため、結腸直腸新生物の診断用キットを開発するため、あるいはこれらの任意の組み合わせのために使用される、実施形態1に記載の方法。
11.表2、3、4および5から選択される4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、25、30、35、40、45、50、55または60のマイクロRNAの全体の発現パターンまたはレベルであり、該マイクロRNAが結腸直腸新生物の判定、診断または検出の特異性を増加させる、実施形態1に記載の方法。
12.結腸直腸新生物の予後判定、治療ガイダンス、または治療に対する応答の監視のためにマイクロRNAの全体の発現パターンまたはレベルを使用するステップを更に含む、実施形態1に記載の方法。
13.結腸直腸新生物の疾患進行、転移、またはこれらの両方に関するバイオマーカーであって、1つ以上のマイクロRNAを含み、正常な結腸直腸新生物細胞または同一の患者からより早い時点において採取された結腸直腸新生物細胞における1つ以上のマイクロRNAの全体の発現と比較した場合の、患者から採取された結腸直腸新生物細胞における1つ以上のマイクロRNAの全体の発現の変化が、結腸直腸新生物の進行の指標となり、miR19aおよびmiR19b、またはmiR19aおよびmiR19bおよびmiR15bの組み合わせの過剰発現が結腸直腸癌の指標となる、上記バイオマーカー。
14.以下のマイクロRNA、miR29a、miR92a、miR141、miR18a、miR19a、miR19b、miR15b、miR29aまたはmiR335の1つ以上の分析を更に含む、実施形態13に記載のバイオマーカー。
15.以下から選択される結腸直腸新生物において過少発現されるマイクロRNAを更に含む、実施形態13に記載のバイオマーカー。
16.以下から選択される結腸直腸新生物において過剰発現されるマイクロRNAを更に含む、実施形態13に記載のバイオマーカー。
17.マイクロRNAが、結腸直腸新生物において過少発現され、以下から選択される、実施形態13に記載のバイオマーカー。
18.マイクロRNAが、結腸直腸新生物において過剰発現され、以下から選択される、実施形態13に記載のバイオマーカー。
19.生体サンプルが、1つ以上の体液、血漿サンプル、血清サンプル、血液サンプル、組織サンプル、または糞便サンプルからなる群より選択される、実施形態13に記載のバイオマーカー。
20.上記方法が、早期CRC(I〜II)を、進行したCRC(ステージII〜III)、右側の腫瘍および左側の病変と同程度に正確に検出することができる、実施形態13に記載のバイオマーカー。
21.結腸直腸新生物を診断または検出するために、表2、3、4および5のマイクロRNAから選択される4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、25、30、35、40、45、50、55または60のマイクロRNAに関する発現パターンまたは発現レベルの検出および分析を更に含む、実施形態13に記載のバイオマーカー。
22.結腸直腸新生物の診断用キットであって、
マイクロRNAの示差的な発現レベルを測定するためのバイオマーカー検出試薬を含み、miR19aおよびmiR19b、またはmiR19aおよびmiR19bおよびmiR15bの組み合わせの過剰発現が結腸直腸新生物の指標となり、結腸直腸癌に関する信頼区間が90%またはそれ以上である、上記キット。
23.miR18a、miR29a、またはmiR335の少なくとも1つの検出および分析のための試薬を更に含む、実施形態22に記載のキット。
24.miR29a、miR92aまたはmiR141の少なくとも1つの検出および分析のための試薬を更に含む、実施形態22に記載のキット。
25.結腸直腸新生物のリスクの診断に使用するための説明書を更に含み、該説明書が、結腸直腸新生物を有する疑いのある被検体から採取されたサンプルの発現を測定する場合に、マイクロRNAの発現レベルを、正常な被検体から採取されたサンプルの発現レベルと比較するための段階的な指示事項を含み、上記正常な被検体は、結腸直腸新生物に罹患していない健康な被検体である、実施形態22に記載のキット。
26.1つ以上の体液、血漿サンプル、血清サンプル、血液サンプル、組織サンプル、または糞便サンプルからなる群より選択されるサンプルを被検体から採取するために必要なツール、容器および試薬を更に含む、実施形態22に記載のキット。
27.結腸直腸新生物において過少発現され、以下から選択される、マイクロRNAの分析のための試薬を更に含む、実施形態22に記載のキット。
28.結腸直腸新生物において過剰発現され、以下から選択される、マイクロRNAの分析のための試薬を更に含む、実施形態22に記載のキット。
29.3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、25、30、35、40、45、50、55または60のマイクロRNAの全体の発現パターンまたはレベルが、結腸直腸新生物を診断または検出するために測定される、実施形態22に記載のキット。
30.直腸結腸新生物を有すると診断された患者のための癌治療を選択する方法であって、
結腸直腸新生物を有している被検体からのサンプルを得るステップ、
正常な被検体の生体サンプルの発現レベルと比較した場合の、miR18a、miR19a、miR19b、miR15b、miR29aおよびmiR335の発現レベルを測定するステップであって、上記正常な被検体が結腸直腸新生物に罹患していない健康な被検体であり、上記マイクロRNAの過剰発現が結腸直腸癌の指標となる、上記ステップ、
患者における結腸直腸新生物の判定を基にした癌治療を選択するステップ
を含む方法。
31.疾患症状の治療に有効であると考えられる候補薬剤を評価するための臨床試験を実施する方法であって、
(a)患者群から得られたマイクロRNAのレベルを測定するステップであって、該マイクロRNAが、miR19aおよびmiR19b、またはmiR19aおよびmiR19bおよびmiR15bから選択される1つ以上のマイクロRNAから選択される、上記ステップ、
(b)候補薬剤を患者の第1部分集団に投与する;及び
プラセボを患者の第2部分集団に投与するか、
比較薬剤を患者の第2部分集団に投与するか、または
候補薬剤と別の活性物質の組み合わせ薬剤を患者の第2部分集団に投与するステップ、
(c)上記候補薬剤、またはプラセボ、比較薬剤もしくは組み合わせ薬剤の投与の後にステップ(a)を繰り返すステップ、ならびに
(d)上記候補薬剤が、マイクロRNAの発現の変化を有する結腸直腸新生物細胞の数を、患者の第2部分集団において生じている変化と比較して統計学的に有意に低減するかどうかを判定するステップであって、統計学的に有意な低減は上記候補薬剤が上記疾患症状の治療に有効であることを示す、上記ステップ
を含む方法。
32.ヒト被検体において結腸直腸新生物を診断または検出する方法であって、以下のステップ:
結腸直腸新生物に罹患しているまたは罹患していることが疑われるヒト被検体を同定するステップ、
上記被検体から1つ以上の生体サンプルを採取するステップであって、該生体サンプルが、1つ以上の体液、血漿サンプル、血清サンプル、血液サンプル、組織サンプル、または糞便サンプルから選択される、上記ステップ、
miR18a、miR19a、miR19b、miR15b、miR29aおよびmiR335の全体の発現パターンまたはレベルを測定するステップ、ならびに
結腸直腸新生物に罹患している疑いのある被検体の生体サンプルからの1つ以上のマイクロRNAの全体の発現パターンを、正常な被検体の生体サンプルからの1つ以上のマイクロRNAの全体の発現パターンと比較するステップであって、上記正常な被検体が結腸直腸新生物に罹患していない健康な被検体であり、マイクロRNAのmiR18a、miR19a、miR19b、miR15b、miR29aおよびmiR335の過剰発現が結腸直腸癌の指標となる、上記ステップ
を含む方法。
33.マイクロRNAが、結腸直腸新生物において過少発現され、以下から選択されるものである、実施形態32記載の方法。
34.マイクロRNAが、結腸直腸新生物において過剰発現され、以下から選択されるものである、実施形態32記載の方法。
35.1つ以上のマイクロRNAの発現レベルが、マイクロアレイ発現プロファイリング、PCR、逆転写酵素PCR、逆転写酵素リアルタイムPCR、定量的リアルタイムPCR、エンドポイントPCR、COLD PCR、ICE-COLD PCR、質量分析法、in situハイブリダイゼーション(ISH)、マルチプレックスin situハイブリダイゼーション、または核酸配列決定により測定される、実施形態32に記載の方法。
36.結腸直腸新生物のリスクがあるまたはそれに罹患している患者を治療するため、結腸直腸新生物のリスクがあるまたはそれに罹患している患者のための抗新生物薬治療を選択するため、結腸直腸新生物のサブグループに対してまたは結腸直腸新生物治療臨床試験について患者を階層化するため、結腸直腸新生物治療レジメンに対する抵抗性または応答性を判定するため、結腸直腸新生物の診断用キットを開発するため、あるいはこれらの任意の組み合わせのために使用される、実施形態32に記載の方法。
37.2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、25、30、35、40、45、50、55または60のマイクロRNAの全体の発現パターンまたはレベルを測定して、結腸直腸新生物を診断または検出する、実施形態32に記載の方法。
図1A
図1B
図2
図3
図4