(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記分離は、オーガーシャフトの上側部分の上方への移動によるオーガーシャフトの先端部分に対するオーガーシャフトの上側部分の分離、又は伝導軸の下方への移動によるオーガーシャフトの上側部分に対するオーガーシャフトの先端部分の分離からなる請求項1に記載のオーガー。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
地盤にオーガーで孔を掘削すると同時に、同じ装置を用いて地盤に振動を与えて地盤を締め固めることができれば、施工時間も短縮でき、有効かつ効率的である。
【0009】
本発明の目的は、地盤の締め固め等の振動による作用も与えるオーガー及び掘削方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成すべく、本発明は以下の手段を採用している。
【0011】
項1.先端部分と上側部分とを有するオーガーシャフトと、
モータ及び減速器と、加振器とに接続され、オーガーシャフトの内部をオーガーシャフトの長手方向に延びる伝導軸と、
を備え、前記オーガーシャフトの先端部分と前記オーガーシャフトの上側部分とが選択的に接続又は分離し、
前記オーガーシャフトの先端部分が前記オーガーシャフトの上側部分と接続した状態にある場合にモータ及び減速器を作動させることにより、前記オーガーシャフトの全体が回転し、
前記オーガーシャフトの先端部分が前記オーガーシャフトの上側部分と分離した状態にある場合に加振器を作動させることにより、前記オーガーの先端部分が振動する、オーガー。
【0012】
項2.前記分離は、オーガーシャフトの上側部分の上方への移動によるオーガーシャフトの先端部分に対するオーガーシャフトの上側部分の分離、又は伝導軸の下方への移動によるオーガーシャフトの上側部分に対するオーガーシャフトの先端部分の分離からなる項1に記載のオーガー。
【0013】
項3.先端部分を有するオーガーシャフトと、
モータ及び減速器に接続され、オーガーシャフトの内部をオーガーシャフトの長手方向に延びる伝導軸と、
加振器に接続されたオーガーシャフトの先端部分と、
を備え、
モータ及び減速器を作動させることにより、オーガーシャフトの先端部分が振動し、
加振器を作動させることにより、前記オーガーシャフトの先端部分が振動する、オーガー。
【0014】
項4.前記オーガーの先端部分が、オーガーの先端から15mまで(15mを含む)の範囲内にある項1〜3のいずれか一項に記載のオーガー。
【0015】
項5.前記伝導軸は、上部から投入された硬化材及び/又は止水材をオーガーの先端部まで送ることが可能な、オーガーシャフトを貫通して延びる中空軸である項1〜4のいずれか一項に記載のオーガー。
【0016】
項6.前記オーガーシャフトの先端部分が前記オーガーシャフトの上側部分に対して接続した状態で、地盤に孔を掘削すること、及び
前記オーガーシャフトの先端部分が前記オーガーシャフトの上側部分に対して分離した状態で、地盤を締め固めること、
を含む項1、2、4又は5に記載のオーガーを用いた掘削方法。
【0017】
項7.項1〜5のいずれか一項に記載のオーガーを用いて、地盤に孔を掘削すること、
前記孔に硬化材及び/又は止水材を投入すること、
項1〜5のいずれか一項に記載のオーガーを用いて、地盤と硬化材とを混合すること
を含む掘削方法。
【0018】
項8.前記孔に杭又は鉄筋を打設することをさらに含む項6又は7に記載の掘削方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、オーガーの全体又は一部、そして下端部が、加振器と接続されて加振器により振動されるため、オーガーによる掘削と、孔周囲の地盤の振動による締め固めが一つのオーガーででき、施工の時間が短縮でき効率的である。また、本発明のオーガーによれば、振動によるオーガー下部と周辺地盤の締め固め以外にも、地盤の土と硬化材及び/又は止水材を均質に混合したり、又、掘削土を地上に運び出すにも振動があるとオーガー下部の振動により下端地盤を緩まるため掘削土の上昇は容易になり掘削効率が上がる等、オーガーの振動による作用も加えることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明をオーガーに具体化した第1実施形態について
図1〜4に従って説明する。
【0022】
図1の杭打システムにおいて、オーガー1は、中空のオーガーシャフト3と、オーガーシャフト3の下端に取り付けられた切削ヘッド5とを備えている。切削ヘッド5は、公知の切削ヘッドと同様の構造であってよい。
【0023】
オーガーシャフト3の長手方向軸の周囲に沿って、スパイラル翼4が設けられている。
【0024】
オーガーシャフト3の上部には、回転駆動装置としてのモータ10及び減速機12と、加振器14とが設けられている。加振器14としては、オーガー1を振動させることが可能な任意の加振器、例えば公知のバイブロハンマーを用いることができる。
【0025】
物理的に接続していなくても作用的に接続していることも含む。モータ10の駆動力は、減速機12にて減速されてスパイラル翼4を装着したオーガーシャフト3を回転させ、切削ヘッド5の下端の切削ブレード6にて地盤を掘削し、スパイラル翼4で掘削土を地上に排出する。
【0026】
オーガーシャフト3の上部(基部)に接続された加振器14は、オーガーシャフト3の内部を長手方向に延びる中空の伝導軸16と接続し、伝導軸16は加振器14により振動させられる。本実施形態では、伝導軸16の上端(基端)は加振器14に接続されており、伝導軸16はオーガーシャフト3の下端(先端)を貫通し、伝導軸16の下端16fは切削ヘッド5を貫通して終端する。この伝導軸16の内部空間を利用して硬化材及び/又は止水材をオーガー1の下端部まで送通できる。
【0027】
オーガーシャフト3は、切削ヘッド5と一体的に接続された先端部分3aと、先端部分3aよりも上の上側部分3bとを有する。先端部分3a及び上側部分3bを選択的に接続又は分離させるための吊上げ・吊り下げ・固定機構100について、以下に詳述する。吊上げ・吊り下げ・固定機構100は杭打システムを構成する。
【0028】
図2(a)において、中心部に孔を有する円板104が、減速機12の下面が装着(定着)され、オーガーシャフト3の上側部分3bの上端部には、それぞれ中心部に孔を有する上側円板105aと下側円盤105bとからなる円板アセンブリ105が配置され、ジャッキ101のピストン103の上端は円板104の下面に装着(定着)され、ジャッキ101の下端は上側円板105aの上面に装着(定着)されている。モータ10(
図1参照)及び減速機12は杭打機(非図示)の支柱と連結されており、回転しない構成となっている。また、減速機12と連結された円板104、ピストン103、ジャッキ101、上側円板105a、チャック13、及び加振器14も回転しない構成となっている。
【0029】
オーガーシャフト3の上側部分3bの上端部にはオーガーシャフト3を把持したり離したりするためのチャック102が取り付けられており、チャック102の上端部は下側円板105bに装着されている。チャック102のオーガーシャフト3への着脱は、無線、油圧式、電磁式等の任意の公知の方法で行うことができる。
【0030】
図2(a)の部分の詳細を
図2(b),(c),(d),(e)に示す。
【0031】
図2(b)及び
図2(c)にそれぞれ示されるように、ピストン103及びチャック102は周方向に沿って複数個(図では4個)配置されている。
図2(a)に示されるように、伝導軸16は、減速機12と接続した上側の第1部材16aと、フランジ16dを介して第1部材16aと接続する第2部材16bと、オーガーシャフト3の上側部分3bの内部に設けられたフランジ16eを介して第2部材16bと接続する第3部材16cとを備えている。フランジ16dで加振器14による第2部材16bの振動を遮断することで、第1部材16a、円板104、減速機12、ジャッキ101、チャック102、ピストン103、およびオーガーシャフト3の上側部分3bは振動しない構造となっている。第3部材16cの下端は、伝導軸16の下端16fまで直接延びるか、フランジ16d,16eと同一又は同様のフランジを介して伝導軸16の別の同様の部材と接続されて、伝導軸16の別の部材が1又は複数個連結された伝導軸16の下端16fまで延びていてもよい(
図3)。
図2(b)に示されるように、第2部材16bはチャック13により加振器14と選択的に接続又は分離される。
【0032】
図2(c)に示されるように、第3部材16cから放射線に複数(図では4本)のリブ16gがオーガーシャフト3の内周面に向かって延びており、モータ10から減速機12を介して生じる伝導軸16の回転運動をチャック102を介してオーガーシャフト3の上側部分3bに伝える役割を果たす。
【0033】
図2(d),2(e)に示されるように、伝導軸16には、第2部材16b及び第3部材16cの上下振動が第1部材16a及びリブ16gに伝わることを防止するための振動遮断機構が設けられている。振動遮断機構は、リブ16gと連結された略円筒状の管部材16hと、第3部材16cから径方向外側に延びる突出部16i(図では4つ)とを備え、管部材16hには径方向内側に突出部16h1が設けられている。リブ16gと伝導軸16の第3部材16cとは、オーガー1の垂直方向において突出部16h1と突出部16iとが互いに水平方向で噛み合う接続状態と、突出部16h1と突出部16iとがオーガー1の垂直方向にずれることができる。
【0034】
オーガーシャフト3の先端部分3aが、先端部分3aより上側(基部側)の上側部分3bに対して接続、具体的には連結した状態(
図3(a))と、オーガーシャフト3の先端部分3aが上側部分3bに対して分離、具体的には離脱した状態(
図3(b))とを選択的に取ることができる。また、オーガーシャフト3の先端部分3aが上側部分3bに対して接続状態と分離状態を取る時に、リブ16gと伝導軸16の第3部材16cも接続状態と分離状態を取ることができる。なお、突出部16h1と突出部16iに代替して、後述の遮蔽部材7aとその突出部7a1並びに接続部材7bとその凹部7b1を用いてオーガーシャフト3の先端部分3aの上側部分3bに対する接続状態及び分離状態を実現してもよい。
【0035】
ジャッキ101、チャック102、ピストン103、円板104、円盤105は先端部分3a及び上側部分3bを選択的に接続又は分離させるための吊上げ・吊り下げ・固定機構100を構成するが、このような各要素101,102,103,104,105の構成は公知である。吊上げ・吊り下げ・固定機構100は通常、杭打機に装備されている。
【0036】
以上の構成により、
図2(a)においてモータ10、減速機12、及びオーガーシャフト3の先端部分3aの位置を杭打機又はクレーン等の外部装置(
図1の符号50)により固定した状態で、ピストン103を短縮すると、ジャッキ101及びチャック102を介してピストン103と連結しているオーガーシャフト3の上側部分3bが上昇する。
【0037】
図3(a),(b)に示すように、本発明のオーガー1は
図2に示す吊上げ・吊り下げ・固定機構100を備えているため、オーガーシャフト3は、オーガーシャフト3の先端部分3aが、先端部分3aより上側(基部側)の上側部分3bに対して接続、具体的には連結した状態(
図3(a))と、オーガーシャフト3の先端部分3aが上側部分3bに対して分離、具体的には離脱した状態(
図3(b))とを選択的に取ることが可能である。なお、
図3(a)〜(c)においてスクリュー翼4の図示は説明の都合上省略している。
【0038】
図3(a)の接続状態では、先端部分3aと上側部分3bが接し、先端部分3aの上端部からはプレート状の遮蔽部材7aが、オーガーシャフト3の内部を上側部分3bへ向かって、先端部分3a及び上側部分3bの内周面に沿って円環状に延びている。また、上側部分3bの内周面からは接続部材7bが下方に向かって断面逆L字状に延びている。遮蔽部材7aと接続部材7bとは、遮蔽部材7aに設けられた略半球状の突出部7a1が接続部材7bに設けられた対応する凹部7b1と水平回転にて嵌合することにより接続している。このようにオーガーシャフト3の先端部分3aが上側部分3bに対して接続した状態にある場合(
図3(a)の状態に)モータ10を作動させると、モータ10の動力は減速機12を介して伝導軸16に伝わり、伝導軸16が回転し、その回転がリブ16gとチャック102とを介してオーガーシャフト3に伝えられ、又遮蔽部材7a及び接続部材7bの連結による伝導軸16の回転伝達によりオーガーシャフト3の全体が回転振動する。
【0039】
図3(b)の分離状態では、オーガーシャフト3の上側部分3bが上昇し、遮蔽部材7aの突出部7a1が接続部材7bの凹部7b1から外れ、遮蔽部材7aと接続部材7bは分離(接続解離)し、先端部分3aと上側部分3bは分離する。この先端部分3aが上側部分3bに対して分離した状態で、加振器14を作動させると、加振器14の振動は振動遮断機構としたフランジ16dの位置においてその上方の第1部分16aへは伝わらず、伝導軸16の第2部分16b、第3部分16c及び下端16fへは伝わり、オーガーシャフト3の先端部分3aのみが、上側部分3bとは独立して振動する。また、上側部分3bが上昇したときに、
図2(d),(e)に示した振動遮断機構は突出部16h1と突出部16iとが互いに垂直方向に噛み合わない分離状態をとるため、第2部分16b、第3部分16cを介してリブ16gに伝わることはない。なお、
図3(b)の分離状態でも、遮蔽部材7aは先端部分3a及び上側部分3bに跨って延びているため、掘削中にオーガーシャフト3の中へ土砂等が侵入するのを防ぐことができる。
【0040】
また、
図3(b)の分離状態から、
図2(a)においてピストン103を伸長させると、オーガーシャフト3の上側部分3bが下方に移動し、オーガーシャフト3の先端部分3aと上側部分3bは
図3(a)の接続状態に戻る。
【0041】
本実施形態では、伝導軸16の下端16fは切削ヘッド5を貫通して終端しているため、オーガーシャフト3が
図3(b)の分離状態にある場合、加振器14からの振動は伝導軸16を長手方向に沿って伝導軸16の下端部に伝わり、オーガー1の先端部分8のみ(
図3(a)参照)、つまりオーガーシャフト3の先端部分3a及び切削ヘッド5のみが共に振動する。なお、本実施形態では、加振器14は伝導軸16を介してオーガーシャフト3の先端部分3aと接続され、加振器14による振動が伝導軸16を通じてオーガーシャフト3の先端部分3aに伝わり、オーガー1の先端部分8が振動するが、本明細書において、「加振器に接続されたオーガーシャフトの先端部分」とは、オーガーシャフトの先端部分が直接加振器に連結される場合のみならず、別の部材を介して加振器に接続されることも含む。
【0042】
先端部分8の長さは特に限定されないが、オーガー1の全長の半分未満、好ましくはオーガー1の下端(先端)から15mまで(15mを含む)の範囲内にあることが好ましい。一つの実施形態では、先端部分8の長さが、オーガー1の下端から10mまで(10mを含む)である。別の実施形態では、先端部分8の長さが、オーガー1の下端から5mまで(5mを含む)である。また別の実施形態では、オーガーシャフト3の先端部分3aの長さがオーガーシャフト3の下端(0m)〜15mの範囲内にあり(つまり全長15m以内)、オーガーシャフト3の下端(0m)から5mまで(5mを含む)の範囲内(つまり全長5m以内)に設けられている。例えば、オーガーシャフト3の先端部分3aが、オーガー1の下端(0m)から3mまで(3mを含む)の範囲内(つまり全長3m以内)に設けられてもよいし、オーガー1の下端から0.5〜2mの範囲内(つまり全長0.5〜2m以内)に設けられてもよい。
【0043】
一つの実施形態では、オーガーシャフト3が
図3(b)の分離状態にある場合、オーガー1は、オーガー1の先端から15mまで(15mを含む)の範囲が振動する。別の実施形態では、オーガー1は、オーガー1の下端から10mまで(10mを含む)の範囲が振動する。別の実施形態では、オーガー1は、オーガー1の下端から5mまで(5mを含む)の範囲が振動する。別の実施形態では、オーガー1は、オーガー1の下端から5mまで(5mを含む)の範囲が振動する。別の実施形態では、オーガー1は、オーガー1の下端から3mまで(3mを含む)の範囲が振動する。別の実施形態では、オーガー1は、オーガー1の下端から0.5〜2mの範囲が振動する。これらの選択は土質、杭径、杭長により当業者が適宜決定できる。
【0044】
加振器14はモータ10及び減速機12とは独立して作動可能であり、オーガーシャフト3を
図3(b)の分離状態に設定すると、オーガー1による地盤の掘削前、地盤の掘削中、及び/又は地盤の掘削後の任意のタイミングでのオーガーシャフト3の先端部分3aと切削ヘッド5(つまりオーガー1の先端部分8)とを振動させることができる。特には、本発明のオーガー1は、地盤の掘削の最中にオーガー1の先端部分8を振動させることにより、目的の位置及び/又は深さで地盤の締め固めを行うことができる点で有利である。
【0045】
次に、
図4(a)〜(e)を参照しながら
図1のオーガー1による地盤の掘削、締め固め、硬化材及び/又は止水材注入及び杭設置の工程を説明する。
【0046】
まず、
図4(a)に示すように、切削ヘッド5が地面25に対面するようにオーガー1を所定の位置に配置する。次に、モータ10及び減速機12によりオーガー1を駆動し、スパイラル翼4を装着したオーガーシャフト3を回転させる。
図4(b)に示すように、オーガー1を下方に進め、地中に掘削孔18を設ける。このとき、オーガーシャフト3は
図3(a)の接続状態にある。掘削時に生じる土砂19はオーガーシャフト3(及びスパイラル翼4)により矢印で示すように上昇する。上昇した土砂19は、掘削孔18から上方に移動して通常は外で回収するが、掘削孔18に一部残し、切削ヘッド5を含むオーガー1の先端部分8で、オーガー1の振動と逆方向の回転で掘削孔18の下方と周囲の土を締め固めるために用いてもよい。
【0047】
目的の位置及び深さに達したら、オーガー1の回転を停止し、杭打機又はクレーン等の外部装置50の力を反力にしてピストン103を短縮することによりオーガー1の上側部分3bを上昇させ、オーガーシャフト3を
図3(b)の分離状態とし(
図4(c))、加振器14によりオーガー1の先端部分8(オーガーシャフト3の先端部分3a及び切削ヘッド5)のみを振動させる。振動を終了させた後は、オーガーシャフト3を
図3(a)の接続状態に戻してもよいし、
図3(b)の分離状態のままでもよい。オーガー1を引き上げるときに、オーガー1の回転を掘削のときと同方向又は逆方向に回転させ、又はオーガー1の回転を停止することも、又再び振動させることもできる。
【0048】
切削ヘッド5は掘削孔18の孔壁に接し、切削ヘッド5の振動は掘削孔18の孔の長手方向(すなわち軸方向)と長手方向に垂直な径方向とに伝わるため、切削ヘッド5を掘削孔18の長手方向に沿って移動させれば、掘削孔18の延びる方向に沿って掘削孔18周囲の土(砂)を締め固めることができる。土(砂)に振動を長時間振動を加え続けると土砂の標準貫入試験N値は15〜25にほぼ一定になるため、本発明のオーガー1による締め固めにより、例えば液状化の可能性のあるN値が10以下程度の緩い土(砂)を、N値が15〜25程度の締まった土(砂)にし、液状化を防止することができ、また、N≧25(例えばN=40〜50)の締まった土(砂)に振動を与えることにより、N=15〜25程度に緩めて掘削を容易にすることもできる。
【0049】
任意選択で、
図4(b)又は
図4(c)の工程の後で、掘削孔18に硬化材及び/又は止水材20を注入又は投入してもよい(
図4(d))。硬化材としては例えばコンクリート、生コン、セメントミルク、スラグ、土砂等が挙げられ、止水材は地水流を止める材料であり、例えば早強セメントミルク、水ガラス、親水性合成樹脂等が挙げられる。
【0050】
図4(d)において、硬化材及び/又は止水材20は、掘削孔18に直接投入してもよいし、オーガー1を掘削孔18内に配置したまま行ってもよいし、オーガー1を掘削孔18から撤去した後でもよいが、本実施形態では、オーガー1を掘削孔18内に配置したまま、流動性の硬化材及び/又は止水材20を伝導軸16内から上部に注入し、伝導軸16の内部を通じてオーガー1の先端部(下端部)まで送ることにより注入する。掘削孔18に投入された硬化材及び/又は止水材20は、オーガー1の切削ヘッド5により振動させることにより、土と均質に混合したり、締め固めたりすることができる。
【0051】
さらに、
図4(d)において硬化材及び/又は止水材20を投入する前、投入している最中、又は投入した後に、
図4(e)に示すように、オーガー1を公知の杭打機の吊上げ機構(クレーン)等を用いて掘削孔18から撤去し、既製杭22又は鉄筋を設置して場所打杭を造成してもよい。
【0052】
ここで、本発明の第1実施形態の効果を説明する。
【0053】
○第1実施形態のオーガー1は、モータ10、減速器12、及び伝導軸16を備えるのみならず、伝導軸16と接続する加振器14も備えているため、回転、掘削だけでなく、振動による地盤の締め固めも行うことができる。
【0054】
○第1実施形態のオーガー1によれば、加振器14の作動によりオーガー1の先端部分8のみを振動させることができる。このため、掘削孔18周囲の土(砂)をオーガー1の先端部分8及び切削ヘッド5を用いて効果的に均等に締め固めることができる。
【0055】
○伝導軸16がオーガー1の下で終端し、オーガーシャフト3が先端部分3aと上側部分3bとに分離できるため、オーガー1の先端部分8、つまりオーガー1の切削ヘッド5とオーガーシャフト3の先端部分3aのみが振動する。このため、オーガー1の全長及び採掘孔18の深さが10m〜40,50mと長くても、地盤を局所的に効率よく締め固めながら全域を締め固めることができる。なお、オーガー1と伝達軸16を継ぐ方法は公知である。
【0056】
○切削ヘッド5を掘削孔18の長手方向に沿って移動させれば、掘削孔18の延びる方向に沿って掘削孔18底面と周囲の土(砂)を締め固めることができる。
【0057】
○掘削孔18にコンクリート、生コン、セメントミルク、スラグ、土砂等の硬化材及び/又は止水材20を投入した場合に、第1実施形態のオーガー1の先端部分8(特に切削ヘッド5)を振動させることにより、硬化材及び/又は止水材20を杭周と先端の土と均質に混合したり、締め固めたりすることができる。
【0058】
○根固めは上部反力を杭打機で取って杭先端及び根固め部を振動・加圧する。これにより杭の支持力が大きくなる。
【0059】
ここまで本発明を第1実施形態を例にとって説明してきたが、本発明はこれに限られず、以下のような種々の変形が可能である。
【0060】
○加振器14の位置はオーガーシャフト3の基端側(上側)に限定されず、オーガーシャフト3に対して任意の位置に取り付けられてもよい。
【0061】
○切削ヘッド5は省略されてもよい。この場合、オーガーシャフト3の先端部分3aの最も先端側(下側)に切削ブレードを設け、オーガーシャフト3の先端部分3aが切削ヘッドの役割を兼ねてもよい。
【0062】
○オーガーシャフト3の先端部分3a及び上側部分3bの構成は
図3(a)〜(c)に示す実施形態に限定されない。例えば、
図5(a)に示すように、オーガーシャフト3には、先端部分3aの上端部に、接続部材7cが、オーガーシャフト3の内周の数か所(図では4か所)にほぼ等間隔に間を空けて先端部分3a及び上側部分3bの内周面に沿って延び、接続部材7cは
図5(c)に示すようにオーガーシャフト3aの断面において隣接する接続部材7cと互いに中心角90°の角度をなして設けられていてもよい。接続部材7cの数は限定されず、3つの場合、互いに中心角120°の角度をなす。なお、
図5(a)〜(d)においてスクリュー翼4の図示は説明の都合上省略している。
【0063】
上側部分3bの内周面からは、2組の接続部材7dが一つの接続部材7cを挟むよう各接続部材7dが延び、それぞれ接続部材7cの上端部と複数個所で接続している。このようにオーガーシャフト3の先端部分3aが上側部分3bに対して接続した状態にある場合に加振器14を作動させると、先端部分3aと上側部分3bは連結しているため、オーガーシャフト3の全体が振動する。次に、オーガー1の上側部分3bのみを吊上げ・吊り下げ・固定機構100で上方に移動させ、接続部材7cと接続部材7dを分離させ、先端部分3aと上側部分3bを分離させ、
図5(b)の状態で先端部分3aが上側部分3bに対して分離した状態で加振器14を作動させると、オーガーシャフト3の先端部分3aが、上側部分3bとは独立して振動する。
【0064】
このような構成にして、オーガーシャフト3の先端部分3aが上側部分3bに対して接続した状態(
図5(a))と、オーガーシャフト3の先端部分3aが上側部分3bに対して分離した状態(
図5(b))とを選択的に取ることが可能となる。なお、先端部分3a及び上側部分3bの内周面に沿って、円環状に延びる遮蔽部材7eをさらに設けてもよい。遮蔽部材7eは先端部分3a及び上側部分3bに跨って延びているため、掘削中にオーガーシャフト3の中へ土砂等が侵入するのを防ぐことができる。
【0065】
○
図3(a)〜(c)や
図5(a)〜(d)の実施形態以外にも、オーガーシャフト3の上側部分3bと先端部分3aが選択的に接続又は分離できる構成であれば本願発明の範囲に包含される。
図2(a)の吊上げ・吊り下げ・固定機構100において、伝導軸16とオーガーシャフト3の位置とに上下差が生じると、上側部分3bと先端部分3aとを選択的に接続又は分離できる。例えば、上記第1実施形態のようにオーガーシャフト3の上側部分3bが上方に移動することにより上側部分3bと先端部分3aが分離する代わりに、オーガーシャフト3の先端部分3aが下方に移動することにより上側部分3bと先端部分3aが分離してもよい。この場合、伝導軸16の先端部の先端抵抗よりもモータ10及び減速機12の重力が大きいように吊上げ・吊り下げ・固定機構100で下方押えの力を加えれば、伝導軸16が下方に移動し、オーガーシャフト3の先端部分3aが下方に移動して先端部分3aと分離する。このような構成は当業者には容易に理解される。
【0066】
○
図2(d),(e)で突出部16h1と突出部16iを接続または分離させる振動遮断機構も、
図2(d),(e)で説明した以外に当業者には公知の振動遮断機構の構成を適用してもよい。
【0067】
○
図4(b)又は
図4(c)の工程で、
図6に示すように、掘削孔18に略円筒形又は矩形を初めとする任意の形の外管24を施してもよい。外管24は掘削孔18の空間を確保するのみでなく、外管24内に硬化材及び/又は止水材20を投入したときの硬化材及び/又は止水材20の形状を保持する型枠としても機能する。また、このような外管24を設けることにより、オーガー1を横向けにして、横孔オーガーとして使用しても有用である。さらに、外管24を加振器と接続し、外管24を振動させることにより掘削孔18の延びる方向に沿って掘削孔18の底面と周囲の土(砂)を締め固めることと、硬化材及び/又は止水材を均等に固めることができる。
【0068】
○本発明のオーガー1は、外管24が無い場合でも、横孔オーガーとして使用することができる。横孔の掘進時に振動を与えれば、オーガー1が受ける抵抗を小さくすることができて振動の強い方向に曲げることもできる。このため、杭打設に本発明のオーガー1に適用すると、任意の斜杭を施工できる。
【0069】
○本発明のオーガー1の作用として、加振器14と伝導軸16からなる振動機構は、硬い地盤を緩めるためにも使用することができるため、下端土(砂)が硬かったり、石が邪魔でオーガー1による掘削が困難な場合に、加振器14と伝導軸16による振動機構により、オーガーの掘進を容易にすることができる。
【0070】
○加振器14と伝導軸16からなる振動機構によりオーガー1を振動させることで、掘削土(砂)の摩擦抵抗が小さくなり、又掘削土(砂)の流動性が大きくなり、オーガーの掘進を容易にすることができる。
【0071】
○加振器14と伝導軸16からなる振動機構により同一振動を土(砂)に加えることで、土(砂)の強度及び/又は密度を均一にし、上部の建物の水平抵抗すなわち耐震性を増し、そして不等沈下を防ぐことができる。
【0072】
次に、本発明の第2実施形態のオーガーを備えた杭打システムについて説明する。なお、第1実施形態と同じ部材についての説明は省略する。
【0073】
図7に示すように、本発明の第2実施形態のオーガー1を備えた杭打システムでは、オーガーシャフト3は先端部分3aを備えているが、先端部分3aよりも上側(基部側)の部分を有しない。つまり、第2実施形態のオーガー1には、第1実施形態のオーガーシャフト3の上側部分3bが存在しない。オーガーシャフト3の先端部分3aの長手方向軸の周囲に沿ってスパイラル翼4が設けられている。また、伝導軸16の長手方向に沿って、伝導軸16の水平曲げ剛性を大きくするための複数の円盤状の羽根17が離間して設けられている。
【0074】
また第2実施形態の杭打システムでは、第1実施形態の吊上げ・吊り下げ・固定機構100も存在しない。オーガー1はモータ10及び減速機12に接続され、モータ10及び減速機12より回転駆動される。また、加振器14は伝導軸16を介してオーガーシャフト3の先端部分3aと接続され、加振器14による振動が伝導軸16を通じてオーガーシャフト3の先端部分3aに伝わり、オーガー1の先端部分8、つまりオーガーシャフト3の先端部分3a及び切削ヘッド5が振動する。
【0075】
オーガー1の先端部分8及びオーガーシャフト3の先端部分3aの長さは第1実施形態で説明したのと同様である。
【0076】
このように、先端部分3aのみを備えたオーガー1の構成であっても、地盤にオーガーで孔を掘削すると同時に、同じ装置を用いて地盤に振動を与えて地盤を締め固めるという本発明の効果を奏する。
【0077】
本発明の第2実施形態は、以下のような種々の変形が可能である。
【0079】
○スパイラル翼4が、オーガーシャフト3の先端部分3aよりも上側まで延びていてもよい。例えば、伝導軸16の長手方向の実質的部分、伝導軸16の全長の半分以上、好ましくは80%以上にわたって延びていてもよい。
【0080】
○
図8に示すように、第2実施形態のオーガー1に、
図6に示したのと同様な外管24を施してもよい。
【0081】
○
図9に示すように、加振器14を伝導軸の基端部の側ではなく、オーガーシャフト3の先端部分3a内に設けてもよい。加振器14の数は限定されないが、例えば1、2、3、又は4個とする。また、加振器14の配置も特に限定されないが、例えば複数個の加振器14を設ける場合、伝導軸16の周囲に水平方向に同じ高さに等間隔を空けて配置する。このような場合も、加振器14は先端部分3aと接続され、加振器14によりオーガーシャフト3の先端部分8は振動させられる。
【0082】
○さらには、加振器14を
図9におけるようにオーガーシャフト3の先端部分3a内に設ける代わりに、切削ヘッド5内に設けてもよい。
【0083】
○第1実施形態の変形例のうち適用可能なものは第2実施形態に適用してもよい。
【0084】
次に、本発明の第3実施形態のオーガーを備えた杭打システムについて説明する。なお、第1及び第2実施形態と同じ部材についての説明は省略する。
【0085】
図10に示すように、本発明の第3実施形態のオーガー1を備えた杭打システムでは、オーガーシャフト3は第1実施形態の先端部分3aも上側部分3bも備えておらず、先端部分3aの代わりに中空円筒状の振動体34を備えている。
【0086】
この実施形態でも、先端部分8の長さは、オーガー1の全長の半分未満、好ましくはオーガー1の下端(先端)から15mまで(15mを含む)の範囲内にあることが好ましく、一つの実施形態では、オーガー1の下端から10mまで(10mを含む)であり、さらに好ましくはオーガー1の下端から5mまで(5mを含む)である。また別の実施形態では、振動体34の長さがオーガーシャフト3の下端(0m)〜15mの範囲内にあり(つまり全長15m以内)、オーガーシャフト3の下端(0m)から5mまで(5mを含む)の範囲内(つまり全長5m以内)に設けられている。例えば、振動体34が、オーガー1の下端(0m)から3mまで(3mを含む)の範囲内(つまり全長3m以内)に設けられてもよいし、オーガー1の下端から0.5〜2mの範囲内(つまり全長0.5〜2m以内)に設けられてもよい。
【0087】
オーガー1はモータ10及び減速機12に接続され、モータ10及び減速機12より回転駆動される。また、加振器14と振動体34は、伝導軸16の長手方向に沿って延びる長尺板状の振動伝達軸33(図では2個を図示)と接続されており、加振器14による振動は振動伝達軸33を通じて振動体34に伝わり、オーガー1の先端部分8、つまりオーガーシャフト3の振動体34及び切削ヘッド5が振動する。
【0088】
このように、振動伝達軸33及び振動体34を備えたオーガー1の構成であっても、地盤にオーガーで孔を掘削すると同時に、同じ装置を用いて地盤に振動を与えて地盤を締め固めるという本発明の効果を奏する。
【0089】
本発明の第3実施形態は、以下のような種々の変形が可能である。
【0090】
○振動伝達軸33を省略し、第1実施形態と同様に、チャックの着脱により加振器14による振動を伝導軸16を介して振動体34に伝えてもよい。
【0091】
○
図11(a)及び(b)に示すように、加振器14を伝導軸の基端部の側ではなく、オーガーシャフト3の振動体34上に設けてもよい。例えば
図11(b)に示すように、加振器としての棒状バイブレーター35を振動体34の周囲方向に離間させて複数個配置してもよく、バイブレーター35の長手方向がオーガー1の長手方向と略平行になるように配置し、バイブレーター35は振動体34の外周面に設けられた凹みまたは溝36に嵌め込まれてもよい。
【0092】
○第1及び第2実施形態の変形例のうち適用可能なものは第3実施形態に適用してもよい。