(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリマー(F)が、5Kgの負荷下で372℃においてASTM D1238に従って測定されたときに1.5〜5.5g/10分、好ましくは2.0〜5.0g/10分の間に含まれるメルトフローインデックスを有する、請求項1または2に記載のケーブル。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ポリマー(F)の降伏強度は、そこでポリマー(F)が可塑的に変形し始める、加えられる最大応力の尺度である。降伏が生じる応力は、変形速度(歪速度)と、より有意には、変形が生じる温度との両方に依存している。
【0017】
ポリマー(F)のクリープ歪は、加えた応力の影響下で可塑的に変形するその傾向の尺度である。それは、材料の降伏強度未満の高レベルの応力への長時間暴露の結果として生じる。この変形速度は、材料性質、暴露時間、暴露温度および適用された構造負荷の関数である。
【0018】
本発明の目的のために、「塑性変形」という用語は、ポリマー(F)の永久的および不可逆的な変形を意味することが本明細書によって意図される。
【0019】
したがって、ポリマー(F)の降伏強度およびクリープ歪は、特に、高い作業温度および/または高い負荷において、外圧衝撃の影響下で可塑的に変形するその傾向およびケーブルの外装シェルからはみ出すその傾向の尺度である。
【0020】
ケーブルの耐熱衝撃性は、破損が生じるまで急速かつ著しい温度変化に耐えるその能力の尺度である。
【0021】
ケーブルは、任意のワイヤ、伝送線または例えば陸上または海洋石油掘削などの掘削作業において使用されてもよい同様な構造物であってもよい。
【0022】
絶縁導体には、電荷、光の移動を助長し得る任意の材料または任意の産業において使用されてもよい任意の他の通信媒体が含まれてもよい。絶縁導体には、任意の導体材料、例えば銅、銅−ニッケル合金、アルミニウム、合金、電気ファイバーハイブリッド材料、光ファイバー材料、撚り線導体または織導体または産業においては公知の他の材料が含まれてもよい。
【0023】
絶縁導体は、デバイスに電力供給し得るエネルギーの移動を促進するかまたはデバイス間の通信または制御信号を促進することができる場合がある。
【0024】
絶縁導体は1つまたは複数の絶縁導体を含有してもよい。
【0025】
絶縁導体を囲む絶縁コーティングは、任意のタイプの絶縁材料を含有してもよい。これは、アクリル、エポキシまたはプラスチックなどの熱硬化性または熱可塑性絶縁コーティング材料を含有してもよい。好ましくは、各々の絶縁導体は個々に絶縁コーティングで絶縁され、それによって1つの絶縁導体内の任意の通信または信号が別の絶縁導体内の通信または信号から分離される。しかしながら、2つ以上の絶縁導体が1つの絶縁コーティングによって封入されてもよい。例えば、異なったタイプの絶縁導体が1つのケーブル内で使用される場合、各々のタイプの絶縁導体は、個別の絶縁コーティング層を必要とする場合があるが、一般的なタイプの絶縁導体は単一絶縁導体によって絶縁されてもよい。2つ以上の絶縁導体が使用されるとき、絶縁コーティング層は好ましくは、互いに異なっており、そこで各々の絶縁導体は個々に識別できる。
【0026】
本発明のケーブルは好ましくは、第2の保護層をさらに含む。
【0027】
第2の保護層は、熱硬化性または熱可塑性ポリマー(thermopolymer)材料から形成されるか、または少なくとも含む層であってもよい。
【0028】
適した第2の保護層の非限定的な例には、特に、半結晶質フルオロポリマー、例えばエチレン−クロロトリフルオロエチレンおよびエチレン−テトラフルオロエチレンフルオロポリマーなどが含まれる。
【0029】
外装シェルは、絶縁コーティングの外部に配置されて絶縁導体を囲むシースまたは外部用コーティングまたは層である。この構成は、外装シェルが絶縁導体およびそれに付着された絶縁コーティング層などのケーブルの内部成分を保護することを可能にする。ケーブルの外面に配置され、ケーブルを保護することができる任意の材料、物質または層は、外装シェルと考えられてもよい。外装シェルは、強靭な材料、例えばステンレス鋼、ニッケル系合金、または耐腐蝕性合金から構成されてもよく、それは、掘削プロセスからの破壊屑など、ケーブルを貫通する異物からケーブルを保護する。また、外装シェルは、任意の織材料、固体、粒子ベースおよび層状保護材料を含有してもよい。
【0030】
外装シェルは絶縁導体部分に略同心状であってもよく、またはそれは、ケーブルの想定軸から中心を外れていてもよい。例えば、いくつかの用途において、絶縁導体を外装シェルの中心に配置させるのが望ましい場合があるが、他の用途は、絶縁導体が外装シェルの内面に直接接して配置されることを必要とする場合がある。
【0031】
また、ケーブルは、絶縁導体が配置される位置に変化があってもよい。例えば、外装シェルは、ケーブルの長さに沿って1つの場所において絶縁導体に略同心状に配置されてもよく、そしてケーブルの別の場所において中心を外れた位置に配置されてもよい。
【0032】
第1の保護層の使用によって、高い構造的結合性を有するケーブルがもたらされることが見出されたが、それによって、絶縁導体などのケーブルの内部成分は、特にケーブルがほぼ垂直な向きに配置される時に外装シェル内に保持され得る。これは、外装シェル内のケーブルの成分の移動を防ぎ、それによって、例えばダウンホール掘削作業において受ける応力条件などの高い応力条件においてそれを使用することを可能にする。
【0033】
この構成は、ケーブルの結合性または実用性を損なわずにそして絶縁導体上にかかる圧縮力を必要とせずに水平方向および垂直方向の両方のために使用できるケーブルを可能にする。また、この構成は、例えば280℃まで、好ましくは300℃までの全ての温度を含めて様々な温度においてケーブルを使用することを可能にする。
【0034】
本発明の第1の実施形態によって、ケーブルは、孔内に略垂直に配置される。ケーブルのこの向きは、ケーブルが地中または海洋などの水域内の掘削されるかまたは穿孔された孔内に少なくとも部分的に配置される作業において必要とされる場合がある。ケーブルの外装シェルは、地面に近接して配置されてもよいが、それは岩、土砂、土、水、またはそれらの組合せなどの材料を含有する場合がある。外装シェルは、地中の物品がケーブルを貫通したり、ケーブル内の成分に損傷を与えるのを防ぐ場合がある。例えば、外装シェルは、ケーブルが孔内に置かれている間、岩または他の物体がそれに損傷を与えるのを防ぐ場合がある。
【0035】
さらに、外装シェルを使用して、1つまたは複数の固定用構造物への取り付けによってケーブルを特定の位置に固定してもよい。固定用構造物は、ケーブルの上端にまたは底部または中央部など、ケーブルの任意の部分に沿って配置されてもよい。
【0036】
さらに、外装シェルはまた、2つの固定用構造物の間にまたは孔内の任意の位置にケーブルを支持してもよい。この配列の仕方は引張力または圧縮力を可能にし、それらの多くは、ケーブルの重量から生じて、絶縁導体ではなく外装シェルに移行される場合がある。絶縁導体に付着された絶縁コーティング層上に識別マーキングが含有されてもよい。識別マーキングは、特定の線構成、色、文章またはテクスチュア要素など、ケーブル上で一般に使用される任意のタイプのマーキングを含めてもよい。
【0037】
作業において、ケーブルは、ケーブルの一方の端部がケーブルの他方の端部の実質的に上にある位置にくるようにして配置されてもよい。
【0038】
本発明の第2の実施形態によって、ケーブルは、任意の水平方向の長さだけにわたるかまたは垂直方向の長さと組合せるように配置される。例えば、ケーブルは、地殻中に掘削された孔内に吊るされてもよく、そこでケーブルの一方の端部は地殻より上に配置され、他方の端部は地殻の下方に配置される。ケーブルは、任意の時間にわたってこの位置に保持されてもよく、したがって、ケーブルは、絶縁導体上に作用する重力によって生じた引く力に対して耐性がなければならない。
【0039】
当業者は理解するように、ケーブル、またはその任意の成分について多くの変型、構成および設計を含めてもよく、それらの全てが、本開示の範囲内であると考えられる。
【0040】
略円筒形層(使用される材料および構造物および適正な製造制約条件を考慮して可能な限り円筒形である層)を画定する同心層を好ましくは有する得られたケーブル構造物は、加圧下で円筒形形状からの変形に対して比較的耐性であり、したがって、高圧環境において使用するために特に適しているケーブルを形成する。例えば、このような高圧用途において使用するために特に適したこの実施形態によるケーブルにおいて、円筒形コアの維持は、1つの重要な特徴であり、そのコアを囲む更なる層、そして特に外側のシースが、広範な用途および30000psiを超える可能性がある高圧への暴露時にも、できる限りそれらの略円筒形の形態を保持することを確実にする。
【0041】
さらに、付加的な層、例えば付加的な保護層または付加的な導電性構造物が提供されてもよい。
【0042】
いくつかの場合、付加的な層、例えば特にPTFEテープなどのテープ層を使用することが望ましい場合がある。いくつかの場合、このようなテープ層は、ケーブルの構成を容易化する場合がある。他方、他の実施形態において、PTFEテープ層は、層間の相対運動を助長する場合があり、好ましくない歪みをケーブル内に引き起こさずにケーブルの繰返し曲げを容易にする。
【0043】
本発明のケーブルの第1の保護層のポリマー(F)は典型的に、水性乳化重合または水性懸濁重合プロセスによって製造される。
【0044】
ポリマー(F)は好ましくは、水性乳化重合によって製造される。
【0045】
水性乳化重合は典型的に、無機水溶性ラジカル開始剤、例えば過酸化物、過炭酸塩、過硫酸塩またはアゾ化合物などの存在下で水性媒体中で実施される。開始剤の分解をより容易にするために還元剤を添加することができる。適した還元剤の非限定的な例には、鉄塩などがある。使用される開始剤の量は、反応温度および反応条件に依存する。重合プロセスは、典型的に50℃〜90℃の間、好ましくは70℃〜80℃の間に含まれる温度において実施される。また、連鎖移動剤を重合反応の間に導入してもよい。適した連鎖移動剤の非限定的な例には、エタン、メタン、プロパン、クロロホルム等が含まれる。重合は、フッ素化界面活性剤の存在下で、例えばペルフルオロアルキル−カルボン酸塩(例えばペルフルオロカプリル酸アンモニウム、ペルフルオロオクタン酸アンモニウム)または他の化合物、例えば1986年6月11日に出願された欧州特許第184459A号明細書(E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY)に記載されているような、例えばペルフルオロアルコキシベンゼンスルホン酸塩などの存在下で実施されてもよい。重合プロセスにおいて使用され得るいくつかの他のフッ素化界面活性剤は、1966年9月6日に出願された米国特許第3271341号明細書(E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY)、2007年1月25日に出願された国際公開第2007/011631号パンフレット(3M INNOVATIVE PROPERTIES COMPANY)および2010年1月14日に出願された国際公開第2010/003929号パンフレット(SOLVAY SOLEXIS S.P.A.)に記載されている。ペルフルオロポリエーテルの存在下で水性相において重合を実施するのが特に有利であり、それは、1987年12月2日に出願された欧州特許第247379A号明細書(AUSIMONT S.P.A.)に記載されているように、適した分散助剤の存在下で水性エマルションの形態で、または、好ましくは、1989年9月5日に出願された米国特許第4864006号明細書(AUSIMONT S.P.A.)に記載されているように、水性ミクロエマルションの形態で反応媒体に添加され得る。
【0046】
次に、このように得られたラテックスを凝固させ、回収された固体を乾燥させ、粗砕する。粒体は、従来の溶融加工技術によって押出される。
【0047】
本発明のケーブルの第1の保護層のポリマー(F)は有利には溶融加工可能である。
【0048】
「溶融加工可能な」という用語は、従来の溶融加工技術によって加工され得るポリマー(F)を意味することが本明細書によって意図される。
【0049】
メルトフローインデックスは、規定負荷重量を使用して規定温度において、ASTM D1238標準試験法に従って、ダイを通して押し出され得るポリマーの量を測定する。したがって、メルトフローインデックスは、ポリマー(F)を溶融加工するための適性の尺度である。これは典型的に、メルトフローインデックスが、5Kgの負荷下で372℃においてASTM D1238に従って測定されたときに0.1g/10分より大きいことを必要とする。
【0050】
本発明のポリマー(F)のケーブルの第1の保護層は、5Kgの負荷下で372℃においてASTM D1238に従って測定されたときに1.0〜6.0g/10分の間に含まれるメルトフローインデックスを有することが重要である。
【0051】
ポリマー(F)のメルトフローインデックスが、5Kgの負荷下で372℃においてASTM D1238に従って測定されたときに1.0g/10分より低いとき、公知の溶融加工技術を使用してポリマー(F)を溶融加工することによってケーブルを容易に製造することができないことが見出された。
【0052】
他方、ポリマー(F)のメルトフローインデックスが、5Kgの負荷下で372℃においてASTM D1238に従って測定されたときに6.0g/10分より高いとき、そこから得られたケーブルは、高温および高圧条件下で必要とされる性能に準拠しないことが見出された。
【0053】
本発明のケーブルの第1の保護層のポリマー(F)は好ましくは、5Kgの負荷下で372℃においてASTM D1238に従って測定されたときに1.5〜5.5g/10分の間、より好ましくは2.0〜5.0g/10分の間に含まれるメルトフローインデックスを有する。
【0054】
ポリマー(F)の式(I)の過フッ素化アルキルビニルエーテルは好ましくは、以下の式(II):
CF
2=CF−O−R’
f(II)
[式中、R’
fが直鎖または分岐C
3〜C
5過フッ素化アルキル基である]に従う。
【0055】
式(II)の適した過フッ素化アルキルビニルエーテルの非限定的な例には、特に、R’
fが−C
3F
5、−C
4F
7または−C
5F
9基である過フッ素化アルキルビニルエーテルが含まれる。
【0056】
ポリマー(F)の式(I)の過フッ素化アルキルビニルエーテルは、より好ましくはペルフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)である。
【0057】
本発明のポリマー(F)のケーブルの第1の保護層は、上に規定されたように式(I)を有する少なくとも1つの過フッ素化アルキルビニルエーテルから誘導された反復単位0.8重量%〜2.5重量%を含むことが重要である。
【0058】
式(I)を有する少なくとも1つの過フッ素化アルキルビニルエーテルから誘導された反復単位の量が0.8重量%未満であるとき、そこから得られたケーブルは、高温および高圧条件下で必要とされる性能に準拠しないことが見出された。
【0059】
他方、式(I)を有する少なくとも1つの過フッ素化アルキルビニルエーテルから誘導された反復単位の量が2.5重量%より高いとき、ポリマー(F)は、高い作業温度において特に、外圧衝撃の影響下で塑性変形を受けることが見出された。
【0060】
本発明のケーブルの第1の保護層のポリマー(F)は好ましくは、上に規定されたように式(I)を有する少なくとも1つの過フッ素化アルキルビニルエーテルから誘導された反復単位0.9重量%〜2.4重量%、より好ましくは1.0重量%〜2.2重量%、さらにより好ましくは1.3重量%〜1.9重量%を含む。
【0061】
本発明のケーブルの第1の保護層のポリマー(F)は好ましくは、上に規定されたように式(I)を有する少なくとも1つの過フッ素化アルキルビニルエーテルから誘導された反復単位0.9重量%〜2.4重量%、より好ましくは1.0重量%〜2.2重量%、さらにより好ましくは1.3重量%〜1.9重量%を含み、5Kgの負荷下で372℃においてASTM D1238に従って測定されたときに好ましくは、1.5〜5.5g/10分の間、より好ましくは2.0〜5.0g/10分の間に含まれるメルトフローインデックスを有する。
【0062】
本発明のケーブルの第1の保護層のポリマー(F)は好ましくは、上に規定されたように式(II)を有する少なくとも1つの過フッ素化アルキルビニルエーテルから誘導された反復単位0.9重量%〜2.4重量%、より好ましくは1.0重量%〜2.2重量%、さらにより好ましくは1.3重量%〜1.9重量%を含み、5Kgの負荷下で372℃においてASTM D1238に従って測定されたときに、好ましくは1.5〜5.5g/10分、より好ましくは2.0〜5.0g/10分の間に含まれるメルトフローインデックスを有する。
【0063】
ペルフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)から誘導された反復単位0.9重量%〜2.4重量%、好ましくは1.0重量%〜2.2重量%、さらにより好ましくは1.3重量%〜1.9重量%を含み、5Kgの負荷下で372℃においてASTM D1238に従って測定されたときに1.5〜5.5g/10分、より好ましくは2.0〜5.0g/10分の間に含まれるメルトフローインデックスを有するポリマー(F)を使用して良い結果が得られた。
【0064】
本発明のケーブルの第1の保護層のポリマー(F)は、上に規定されたように式(I)を有する過フッ素化アルキルビニルエーテルと異なった1つまたは複数のフッ素化コモノマー(F)から誘導された反復単位をさらに含んでもよい。
【0065】
「フッ素化コモノマー(F)」という用語は、少なくとも1個のフッ素原子を含むエチレン性不飽和コモノマーを意味することが本明細書によって意図される。
【0066】
適したフッ素化コモノマー(F)の非限定的な例には、特に、以下:
(a)C
2〜C
8フルオロ−および/またはペルフルオロオレフィン、例えばテトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフロオロプロピレン(HFP)、ペンタフルオロプロピレンおよびヘキサフルオロイソブチレン、
(b)C
2〜C
8水素化モノフルオロオレフィン、例えばフッ化ビニリデン(VDF)、フッ化ビニル、1,2−ジフルオロエチレンおよびトリフルオロエチレン、
(c)式CH
2=CH−R
f0[式中、R
f0がC
1〜C
6ペルフルオロアルキル基である]のペルフルオロアルキルエチレン、
(d)クロロ−および/またはブロモ−および/またはヨード−C
2〜C
6フルオロオレフィン、例えばクロロトリフルオロエチレン(CTFE)、
(e)式CF
2=CFOR
f1[式中、R
f1がC
1〜C
2フルオロ−またはペルフルオロアルキル基、例えば−CF
3、−C
2F
5である]の(ペル)フルオロアルキルビニルエーテル、
(f)式CF
2=CFOX
0[式中、X
0がC
1〜C
12オキシアルキル基であるかまたは1個または複数のエーテル基を有するC
1〜C
12(ペル)フルオロオキシアルキル基、例えばペルフルオロ−2−プロポキシ−プロピル基である]の(ペル)フルオロ−オキシアルキルビニルエーテル、
(g)式CF
2=CFOCF
2OR
f2[式中、R
f2がC
1〜C
6フルオロ−またはペルフルオロアルキル基、例えば−CF
3、−C
2F
5、−C
3F
7であるかまたは1個または複数のエーテル基を有するC
1〜C
6(ペル)フルオロオキシアルキル基、例えば−C
2F
5−O−CF
3である]のフルオロアルキル−メトキシ−ビニルエーテル、
(h)式:
[式中、R
f3、R
f4、R
f5およびR
f6の各々が、等しいかまたは互いに異なっており、が独立にフッ素原子、場合により1個または複数の酸素原子を含む、C
1〜C
6フルオロ−またはペル(ハロ)フルオロアルキル基、例えば−CF
3、−C
2F
5、−C
3F
7、−OCF
3、−OCF
2CF
2OCF
3である]のフルオロジオキソールなどが含まれる。
【0067】
1つまたは複数のフッ素化コモノマー(F)が存在している場合、本発明のポリマー(F)は、典型的に、前記フッ素化コモノマー(F)から誘導された反復単位0.8重量%〜2.5重量%を含む。
【0068】
それにもかかわらず、ポリマー(F)が、前記付加的なコモノマー(F)から誘導された反復単位を含有しない実施形態が好ましい。
【0069】
前記好ましい実施形態において、本発明のポリマー(F)のケーブルの第1の保護層が、
− 上に規定されたように式(I)を有する少なくとも1つの過フッ素化アルキルビニルエーテルから誘導された反復単位0.8重量%〜2.5重量%と、
− TFEから誘導された反復単位97.5重量%〜99.2重量%と
から本質的になる。
【0070】
鎖末端、欠陥または他の微量の不純物成分がポリマー(F)中に含まれてもよく、これはポリマー(F)の挙動に実質的に影響を与えない。
【0071】
本発明のケーブルの第1の保護層のポリマー(F)は、より好ましくは、
− 上に規定されたように式(I)を有する少なくとも1つの過フッ素化アルキルビニルエーテルから誘導された反復単位0.9重量%〜2.4重量%、好ましくは1.0重量%〜2.2重量%、さらにより好ましくは1.3重量%〜1.9重量%と、
− TFEから誘導された反復単位97.6重量%〜99.1重量%、好ましくは97.8重量%〜99.0重量%、さらにより好ましくは98.1重量%〜98.7重量%と
から本質的になる。
【0072】
したがって、
− ペルフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)から誘導された反復単位0.9重量%〜2.4重量%、好ましくは1.0重量%〜2.2重量%、さらにより好ましくは1.3重量%〜1.9重量%と、
− TFEから誘導された反復単位97.6重量%〜99.1重量%、好ましくは97.8重量%〜99.0重量%、さらにより好ましくは98.1重量%〜98.7重量%と
から本質的になり、
5Kgの負荷下で372℃においてASTM D1238に従って測定されたときに1.5〜5.5g/10分、より好ましくは2.0〜5.0g/10分の間に含まれるメルトフローインデックスを有するポリマー(F)を使用してすぐれた結果が得られた。
【0073】
本発明のケーブルの第1の保護層のポリマー(F)は有利には熱可塑性である。
【0074】
「熱可塑性」という用語は、それが半結晶質である場合その融点未満、室温(25℃)で存在し、非晶質である場合そのT
g未満で存在しているポリマー(F)を意味することが本明細書によって意図される。これらのポリマーは、明らかな化学変化なしに、加熱されると軟化し、冷却されると再び硬くなる性質を有する。このような定義は、例えば、1989年にElsevier Applied Scienceによって出版された、百科事典“Polymer Science Dictionary”,Mark S.M.Alger,London School of Polymer Technology,Polytechnic of North London,UKに見出すことができる。
【0075】
本発明のケーブルの第1の保護層のポリマー(F)は好ましくは半結晶質である。
【0076】
「半結晶質」という用語は、ASTM D 3418に従って10℃/分の加熱速度で示差走査熱分析(DSC)によって測定した場合に、1J/gより大きい融解熱を有するポリマーを意味することが本明細書によって意図される。
【0077】
本発明のケーブルの第1の保護層のポリマー(F)は有利には、311℃〜321℃の間、好ましくは312℃〜318℃の間に含まれる融点を有する。
【0078】
313℃〜317℃の間に含まれる融点を有するポリマー(F)を使用して非常に良好な結果が得られた。
【0079】
本発明のケーブルの第1の保護層の好ましいポリマー(F)は、式(II)を有する少なくとも1つの過フッ素化アルキルビニルエーテルから誘導された反復単位1.0重量%〜2.2重量%を含み、
− 5Kgの負荷下で372℃においてASTM D1238に従って測定されたときに1.5〜5.5g/10分の間に含まれるメルトフローインデックスを有し、そして
− 312℃〜318℃の間に含まれる融点を有する。
【0080】
さらに、本発明のケーブルの第1の保護層のより好ましいポリマー(F)は
− 式(II)を有する少なくとも1つの過フッ素化アルキルビニルエーテルから誘導された反復単位1.0重量%〜2.2重量%と、
− TFEから誘導された反復単位、97.8重量%〜99.0重量%と
から本質的になり、
− 5Kgの負荷下で372℃においてASTM D1238に従って測定されたときに1.5〜5.5g/10分の間に含まれるメルトフローインデックスを有し、そして
− 312℃〜318℃の間に含まれる融点を有する。
【0081】
本発明のケーブルの第1の保護層は典型的に、溶融押出などの公知の溶融加工技術で上に規定されたポリマー(F)を溶融加工することによって製造される。
【0082】
本発明のケーブルの第1の保護層は有利には、高分子量PTFEまたは低分子量PTFEのどちらも、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含有しない。
【0083】
「高分子量PTFE」という用語は、溶融加工可能でないTFEホモポリマーを意味することが本明細書によって意図される。
【0084】
「低分子量PTFE」という用語は、溶融加工可能なTFEホモポリマーを意味することが本明細書によって意図される。
【0085】
前述のように、前記第1の保護層は少なくとも前記ポリマー(F)を含むが好ましくは、から製造される。このようにポリマー(F)を他の成分と混合して前記第1の保護層を提供する実施形態は本発明によって包含されるが、前記第1の保護層は好ましくは前記ポリマー(F)から製造され、ポリマー(F)の性質に実質的に影響を与えないかまたは性質を変化させないことを条件に、添加剤、顔料、滑剤等の微量の成分が前記ポリマー(F)の第1の保護層にさらに含まれてもよいことが一般に理解される。
【0086】
出願人は、驚くべきことに、ポリマー(F)の有利な固有の機械的性質のために、本発明のケーブルは高圧ダウンホール環境において良好に使用することができ、280℃までの温度、好ましくは300℃までの温度に良好に耐えることを発見した。
【0087】
本発明の別の目的は、ダウンホール井戸においての本発明のケーブルの使用である。
【0088】
本発明の第1の実施形態によって、ダウンホール井戸において使用するためのケーブルは、井戸の底部と井戸の頂部との間で信号を送る通信ケーブルである。
【0089】
通信ケーブルは、検層工具および掘削孔(wellbores)内のその他のタイプの装置などのためのセンサーを含んでもよい。
【0090】
本発明の第2の実施形態によって、ダウンホール井戸において使用するためのケーブルは、電気力を井戸の底部に提供する電力ケーブルである。
【0091】
参照により本明細書に援用される一切の特許、特許出願、および刊行物の開示が、用語を不明確にさせ得る程度まで本出願の説明と矛盾する場合は、本説明が優先するものとする。
【0092】
ここで以下の実施例を参照しながら本発明を説明するが、これらの実施例は単に例示を目的とするものであって、本発明を限定するものではない。
【0093】
メルトフローインデックスの測定(MFI)
5Kgの負荷下で372℃においてASTM D1238標準試験法に従ってMFIの定量を実施した。
【0094】
第2の融解温度(T(II)融点)の測定
第2の融解温度をASTM D4591標準試験法に従って測定した。第2の加熱時間において観察された融点を記録し、これによってポリマーの融点と称する。
【0095】
ポリマー中の過フッ素化アルキルビニルエーテル(I)の重量百分率の測定
過フッ素化アルキルビニルエーテルモノマーの定量をFT−IR分析によって実施し、重量パーセントとして表わす。過フッ素化アルキルビニルエーテルモノマー(I)の含有量を以下の条件下で定量した:994cm
−1の帯域光学濃度(OD)を以下の式によって2365cm
−1の帯域光学濃度(OD)によって正規化した。
モノマー(I)[重量%]=(994cm
−1の光学濃度)/(2365cm
−1の光学濃度)×0.99
【0096】
引張特性の測定
降伏強度:ASTM D3307標準試験法において報告されているように微小引張試験片を使用してInstron 4203装置によって引張試験を実施した。試験片を1.5mmの厚さを有する圧縮成形シートからホロー・パンチによって切り分け、必要とされる温度において15分の状態調節時間の後に50mm/分に等しい速度において伸長した。降伏応力は、応力−歪曲線上の最初のゼロ勾配点においての公称応力として評価された。降伏応力値がより高くなると、ポリマーの塑性変形に対する耐性がより高くなる。
【0097】
クリープ歪:1000時間後にASTM D2990標準試験法に従って引張クリープ実験を実施したが、ISO 527−1Aに記載された試験片の寸法を使用した。伸び計は使用されなかったが、良い歪み評価を得るために試験片の形状補正が使用された。全ての試験片を1.5mmに等しい厚さを有する圧縮成形シートからのホロー・パンチによって切り分けた。クリープ歪値がより低くなると、ポリマーの塑性変形に対する耐性がより高くなる。
【0098】
ケーブルの加工
1mmの直径を有する赤銅の導体を使用してワイヤ・ケーブル線上でケーブル被覆のいくつかの実験が実施された(AWG20ケーブル)。
ダイ設定は、約120のドローダウン比(DDR)を有するように選択された。最終ケーブル直径は約1.5mmである。
押出機の温度分布は一般に、以下のように、ホッパーからヘッドまで様々なヒーターバンドに設定される:
260、340、370、390、410℃。
これは、押出機の滞留時間および剪断加熱およびもちろんポリマーのメルトフローインデックス(MFI)に応じて、約420〜450℃の範囲の溶融ポリマーについて測定される温度をもたらす。
導体を約120℃に予備加熱した。
ポリマーの粘度に応じて、15〜25rpmの範囲のスクリュー回転速度、30〜60mt/分の線速度で実験が行われた。
ダイから出た後、コートされたケーブルをダイから約10〜20cm離れた水槽内で冷却した。
2つの直交した方向で直径を測定することによっておよび火花試験機によって最終ケーブルをオンライン制御した。また、シャークスキンの発生時の表面平滑性も、試験された。シャークスキンはもちろん、試験される材料のメルトフローインデックス(MFI)に関連しており、ダイの出口の溶融温度によって影響され得る。
【実施例】
【0099】
実施例1:TFE/PPVE99.1/0.9(重量比)
400rpmにおいて運転する攪拌機を備えたAISI 316鋼縦形22リットルオートクレーブ内に、真空を形成した後、連続して導入した:
− 13.9リットルの脱塩水、
− 18.0gのペルフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)、
− 1989年9月5日に出願された米国特許第4864006号明細書(AUSIMONT S.P.A.)の実施例1に従って調製された、約7.5のpHを有するミクロエマルション138.0g。
次に、オートクレーブを60℃の反応温度まで加熱し、この温度に達するとき、0.72バールのエタンを導入した。
圧縮機によって99.6/0.4の公称モル比のTFE/PPVEの気体混合物を、21バールの圧力に達するまで添加した。
(GC分析によって測定されたときに)オートクレーブヘッドに存在している気体混合物の組成は、示されたモル百分率の以下の化合物から形成された:95.9%のTFE、1.3%のPPVE、2.8%のエタン。
次に、計量型ポンプによって、0.035Mの過硫酸アンモニウム溶液100mlを供給した。
上述のモノマー混合物を供給することによって重合圧力を一定に維持した。8.8gの混合物を供給したとき、モノマーの供給を中断した。反応器を室温に冷却し、ラテックスを放出し、HNO
3(65重量%)で凝固させ、ポリマーをH
2Oで洗浄し、約220℃において乾燥させた。
得られたポリマーの定量:
組成(IR分析):PPVE:0.9重量%
MFI:5.0g/10分
第2の融解温度(T(II)融点):320℃
【0100】
実施例2:TFE/PPVE98.6/1.4(重量比)
次の点以外は、実施例1に詳述したものと同じ手順に従った。
− 25.0gのPPVEを供給した。
− 0.62バールのエタンを供給した。
− 99.4/0.6の公称モル比のTFE/PPVEの気体混合物を添加した。
(GC分析によって測定されたときに)オートクレーブヘッドに存在している気体混合物の組成は、示されたモル百分率の以下の化合物から形成された:94.1%のTFE、3.4%のPPVE、2.5%のエタン。
得られたポリマーの定量:
組成(IR分析):PPVE:1.4重量%
MFI:5.0g/10分
第2の融解温度(T(II)融点):317℃
【0101】
実施例3:TFE/PPVE98.2/1.8(重量比)
次の点以外は、実施例1に詳述したものと同じ手順に従った。
− 32.0gのPPVEを供給した。
− 0.6バールのエタンを供給した。
− 99.2/0.8の公称モル比のTFE/PPVEの気体混合物を添加した。
(GC分析によって測定されたときに)オートクレーブヘッドに存在している気体混合物の組成は、示されたモル百分率の以下の化合物から形成された:95.9%のTFE、2.0%のPPVE、2.1%のエタン。
得られたポリマーの定量:
組成(IR分析):PPVE:1.8重量%
MFI:5.0g/10分
第2の融解温度(T(II)融点):314℃
【0102】
実施例4:TFE/PPVE98.2/1.8(重量比)
次の点以外は、実施例1に詳述したものと同じ手順に従った。
− 32.0gのPPVEを供給した。
− 0.40バールのエタンを供給した。
− 99.2/0.8の公称モル比のTFE/PPVEの気体混合物を添加した。
(GC分析によって測定されたときに)オートクレーブヘッドに存在している気体混合物の組成は、示されたモル百分率の以下の化合物から形成された:96.6%のTFE、1.5%のPPVE、1.9%のエタン。
得られたポリマーの定量:
組成(IR分析):PPVE:1.8重量%
MFI:2.0g/10分
第2の融解温度(T(II)融点):314℃
【0103】
実施例5:TFE/PPVE98.6/1.4(重量比)
次の点以外は、実施例1に詳述したものと同じ手順に従った。
− 25.0gのPPVEを供給した。
− 0.50バールのエタンを供給した。
− 99.4/0.6の公称モル比のTFE/PPVEの気体混合物を添加した。
(GC分析によって測定されたときに)オートクレーブヘッドに存在している気体混合物の組成は、示されたモル百分率の以下の化合物から形成された:96.9%のTFE、1.55%のPPVE、1.55%のエタン。
得られたポリマーの定量:
組成(IR分析):PPVE:1.4重量%
MFI:3.0g/10分
第2の融解温度(T(II)融点):317℃
【0104】
実施例6:TFE/PPVE98.3/1.7(重量比)
次の点以外は、実施例1に詳述したものと同じ手順に従った。
− 28.0gのPPVEを供給した。
− 0.50バールのエタンを供給した。
− 99.3/0.7の公称モル比のTFE/PPVEの気体混合物を添加した。
(GC分析によって測定されたときに)オートクレーブヘッドに存在している気体混合物の組成は、示されたモル百分率の以下の化合物から形成された:96.5%のTFE、2.0%のPPVE、1.5%のエタン。
得られたポリマーの定量:
組成(IR分析):PPVE:1.7重量%
MFI:4.0g/10分
第2の融解温度(T(II)融点):315℃
【0105】
実施例7:TFE/PPVE98.6/1.4(重量比)
次の点以外は、実施例1に詳述したものと同じ手順に従った。
− 25.0gのPPVEを供給した。
− 0.40バールのエタンを供給した。
− 99.4/0.6の公称モル比のTFE/PPVEの気体混合物を添加した。
− 0.035Mの過硫酸アンモニウム溶液150mlを供給した。
(GC分析によって測定されたときに)オートクレーブヘッドに存在している気体混合物の組成は、示されたモル百分率の以下の化合物から形成された:96.2%のTFE、1.7%のPPVE、2.1%のエタン。
得られたポリマーの定量:
組成(IR分析):PPVE:1.5重量%
MFI:2.0g/10分
第2の融解温度(T(II)融点):316℃
【0106】
以下の表1に示されるように、上に詳述した手順によって得られたAWG20ケーブルについて6時間の熱サイクル後にVDE 0472−608標準試験法に従って280℃において熱衝撃試験を実施した。本発明による実施例1〜6のポリマー(F)を使用して亀裂は観察されなかった。
【0107】
【0108】
以下の表2に示されるように、280℃においての降伏強度試験の結果を報告すると、本発明によるポリマー(F)は有利には、比較例1および3の市販製品と比較したとき280℃までの温度において改良された降伏応力値を示した。
【0109】
【0110】
以下の表3に示されるように、クリープ歪試験の結果を報告すると、本発明によるポリマー(F)は有利には、比較例1〜3の市販製品と比較したときより低いクリープ歪値を示す。
【0111】
【0112】
このように、本発明によるポリマー(F)を少なくとも含むが、しかし好ましくは、から製造される第1の保護層を含む本発明のケーブルは有利には、300℃の温度まで高圧ダウンホール環境に耐え、外圧衝撃の影響下で可塑的に変形することおよびケーブルの外装シェルからはみ出すことに改良された耐性を示し、したがって、掘削作業に使用するために特に適していることが見出された。