特許第6203314号(P6203314)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6203314
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】燃料電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/02 20160101AFI20170914BHJP
   H01M 8/24 20160101ALI20170914BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20170914BHJP
【FI】
   H01M8/02 K
   H01M8/24 E
   !H01M8/12
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-55672(P2016-55672)
(22)【出願日】2016年3月18日
(65)【公開番号】特開2017-174499(P2017-174499A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2017年2月2日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】難波 匡玄
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 玄太
(72)【発明者】
【氏名】古賀 功一
(72)【発明者】
【氏名】松野 雄多
(72)【発明者】
【氏名】清水 壮太
(72)【発明者】
【氏名】大森 誠
【審査官】 佐藤 知絵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−358984(JP,A)
【文献】 特開2007−069395(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/02
H01M 8/24
H01M 8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガス流路が形成された絶縁性の支持基板と、
燃料極と、空気極と、前記燃料極と前記空気極の間に配置される固体電解質膜とをそれぞれ有し、前記支持基板上に配置された複数の発電部と、
を備え、
前記固体電解質膜は、前記支持基板上に配置され、前記支持基板から6μm以内の界面領域を有し、
前記界面領域は、YSZとTiを含有し、
前記界面領域におけるTiの平均含有量は、0.01wt%以上である、
横縞型の燃料電池。
【請求項2】
前記界面領域におけるTiの平均含有量は、5.1wt%以下である、
請求項1に記載の横縞型の燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料ガス流路が形成された絶縁性の支持基板と、支持基板上に形成される複数の発電部とを備える、いわゆる横縞型の燃料電池が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1では、固体電解質膜の構成材料として、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−94323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、固体電解質膜のうち支持基板と接触する部位が支持基板から剥離する場合がある。そこで、本発明者等が鋭意検討した結果、固体電解質膜の剥離は、固体電解質膜の強度不足に起因して支持基板との界面強度が脆弱になることが原因であるという新たな知見を得た。
【0005】
本発明は、このような新たな知見に基づいてなされたものであり、固体電解質膜の剥離を抑制可能な燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る横縞型の燃料電池は、絶縁性の支持基板と、複数の発電部とを備える。支持基板には、燃料ガス流路が形成される。複数の発電部それぞれは、燃料極と、空気極と、燃料極と空気極の間に配置される固体電解質膜とを有し、支持基板上に配置される。固体電解質膜は、支持基板上に配置され、支持基板から6μm以内の界面領域を有する。界面領域は、YSZとTiを含有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、固体電解質膜の剥離を抑制可能な燃料電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る燃料電池の構成を示す斜視図
図2図1のP−P断面図
図3図2の部分拡大図
【発明を実施するための形態】
【0009】
(燃料電池100の構成)
燃料電池100の構成について図面を参照しながら説明する。図1は、燃料電池100の構成を示す斜視図である。図2は、図1のP−P断面図である。
【0010】
燃料電池100は、支持基板10、燃料極20、インターコネクタ30、固体電解質層40、反応防止膜50、空気極60及び空気極集電膜70を備える。燃料極20、固体電解質膜40、反応防止膜50及び空気極60によって発電素子部Aが構成されている。燃料電池100は、図1及び図2に示すように、4つの発電素子部Aが長手方向に所定間隔で配置された、いわゆる横縞型燃料電池である。支持基板10の両主面上に発電素子部Aが4つずつ配置されているが、各発電素子部Aの構成は同じであるため、以下においては1つの発電素子部Aの構成について主に説明する。
【0011】
支持基板10は、平板状の多孔体である。支持基板10は、長手方向に延びる複数の燃料ガス流路11を内部に有する。供給される燃料ガスは、複数の燃料ガス流路11それぞれを通過する。支持基板10の厚さは特に制限されないが、1mm〜5mmとすることができる。
【0012】
支持基板10の材料としては、例えば、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)、NiO(酸化ニッケル)−YSZ(例えば、8YSZ)、NiO−Y(イットリア)、MgO(酸化マグネシウム)−MgAl(マグネシアアルミナスピネル)が挙げられる。
【0013】
支持基板10は、燃料ガスの改質反応を促す触媒(炭化水素系のガスの改質触媒)として機能し得る遷移金属を含有していてもよい。このような遷移金属としてはNiが好適である。支持基板10は、NiをNiO(酸化ニッケル)の形態で含有していてもよい。
【0014】
支持基板10がMgO−MgAlの複合材料によって構成される場合、支持基板10はTiOを含有していてもよい。支持基板10におけるTiの平均含有量は、0.01wt%超であることが好ましい。これによって、Tiの平均含有量が0mol%超0.01wt%以下である場合に比べて、支持基板10の強度を顕著に向上させることができる。支持基板10におけるTiの平均含有量は、5.5wt%以下であることが好ましい。これによって、支持基板10の気孔率の低下を抑制できるため、支持基板10のガス透過性を確保することができる。
【0015】
支持基板10におけるTiの平均含有量は、支持基板10の断面において、支持基板10の板面に垂直な厚み方向において均等に離れた3箇所で測定されるTiの含有量を算術平均した値である。支持基板10の断面におけるTiの含有量は、日本電子株式会社製の電界放射型分析電子顕微鏡付属の電界放出型電子線マイクロアナライザ(FE−EPMA)を用いた元素分析法によって測定することができる。
【0016】
燃料極20は、支持基板10の主面に形成された凹部12内に配置される。燃料極20は、燃料極集電部21と燃料極活性部22を有する。燃料極集電部21は、電子伝導性を有する物質を含む。燃料極集電部21は、例えば、NiO−YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、NiO−Y(イットリア)、NiO−CSZ(カルシア安定化ジルコニア)などによって構成することができる。燃料極活性部22の厚みは特に制限されないが、5μm〜30μmとすることができる。燃料極活性部22は、燃料極集電部21の凹部21a内に配置される。燃料極活性部22は、例えば、NiO−YSZ、NiO−GDC(ガドリニウムドープセリア)などによって構成することができる。燃料極集電部21の厚みは特に制限されないが、50μm〜500μmとすることができる。
【0017】
インターコネクタ30は、燃料極集電部21の凹部21b内に配置される。インターコネクタ30は、燃料極20と面一で形成される。インターコネクタ30は、電子伝導性を有する緻密材料によって構成することができる。インターコネクタ30は、例えば、LaCrO3(ランタンクロマイト)や(Sr,La)TiO3(ストロンチウムチタネート)などによって構成することができる。インターコネクタ30の厚みは特に制限されないが、10μm〜100μmとすることができる。
【0018】
固体電解質膜40は、燃料極20と空気極60の間に配置される。固体電解質膜40は、燃料極20とインターコネクタ30の一部を覆う。燃料極20がインターコネクタ30と固体電解質膜40に覆われることによって、燃料ガスと空気との混合が防止される。固体電解質膜40の厚みは特に制限されないが、3μm〜50μmとすることができる。
【0019】
ここで、図3は、図2の部分拡大図である。固体電解質膜40のうち支持基板10と接触する部位は、界面領域41と離間領域42とを有する。界面領域41は、支持基板10と直接的に接触する。界面領域41は、支持基板10との界面40aから厚み方向に6μm以下の領域である。離間領域42は、支持基板10との界面40aから厚み方向に6μm超離れた領域である。界面領域41と離間領域42は、一体的に形成される。
【0020】
界面領域41は、YSZ(例えば、8YSZ)とTiを含有する。YSZは、酸素イオン伝導性を有しかつ電子伝導性を有さない緻密材料である。界面領域41は、YSZを主成分として含有する。界面領域41におけるYSZの平均含有量は、91.5wt%以上100wt%未満とすることができる。
【0021】
界面領域41は、Tiを副成分として含有する。これによって、界面領域41の強度を向上させることができるため、支持基板10との界面強度が脆弱になることを抑制できる。その結果、固体電解質膜40が支持基板10から剥離することを抑制できる。界面領域41おいて、TiはYSZに固溶していてもよい。
【0022】
界面領域41におけるTiの平均含有量は、0.01wt%以上であることが好ましい。これによって、界面領域41の強度を十分向上させることができるため、固体電解質膜40が支持基板10から剥離することを十分に抑制できる。
【0023】
界面領域41におけるTiの平均含有量は、5.1wt%以下であることが好ましい。これによって、界面領域41が電子伝導性を発現することを抑えることができるため、燃料電池100の出力低下を抑制できる。
【0024】
離間領域42は、YSZ(例えば、8YSZ)を主成分として含有する。離間領域42におけるYSZの平均含有量は特に制限されないが、91.5wt%以上100wt%以下とすることができる。
【0025】
離間領域42は、Tiを副成分として含有していてもよい。離間領域42において、TiはYSZに固溶していてもよい。離間領域42におけるTiの平均含有量は、界面領域41におけるTiの平均含有量よりも少なくてもよい。離間領域42におけるTiの平均含有量は特に制限されないが、例えば0.01wt%以上5.1wt%以下とすることができる。
【0026】
界面領域41におけるYSZ及びTiそれぞれの平均含有量は、固体電解質膜40の断面において、支持基板10との界面40aに垂直な厚み方向において2μm間隔で均等に離れた複数箇所で測定されるYSZ及びTiそれぞれの含有量を算術平均した値である。固体電解質膜40の断面におけるYSZ及びTiそれぞれの含有量は、日本電子株式会社製の電界放射型分析電子顕微鏡付属の電界放出型電子線マイクロアナライザ(FE−EPMA)を用いた元素分析法によって測定することができる。
【0027】
離間領域42におけるYSZ及びTiそれぞれの平均含有量は、界面領域41におけるYSZ及びTiそれぞれの平均含有量と同じ手法で測定することができる。
【0028】
反応防止膜50は、固体電解質膜40と空気極60の間に配置される。反応防止膜50は、固体電解質膜40が含有するYSZと空気極60が含有するSrとが反応して電気抵抗層が形成されることを抑制する。反応防止膜50は、例えば、GDC(ガドリニウムドープセリア)などによって構成することができる。反応防止膜50の厚みは特に制限されないが、3μm〜50μmとすることができる。
【0029】
空気極60は、反応防止膜50上に配置される。空気極60は、電子伝導性を有する多孔質材料によって構成される。空気極60は、例えば、LSCF(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)、LSF(ランタンストロンチウムフェライト)、LNF(ランタンニッケルフェライト)、LSC(ランタンストロンチウムコバルタイト)などによって構成することができる。空気極60は、LSCFによって構成される下層とLSCによって構成される上層の二層構造であってもよい。空気極60の厚みは特に制限されないが、10μm〜100μmとすることができる。
【0030】
空気極集電膜70は、固体電解質膜40と空気極60を覆う。空気極集電膜70は、LSCF、LSC、Ag(銀)、Ag−Pd(銀パラジウム合金)などによって構成することができる。空気極集電膜70の端部は、隣接する他の発電素子部Aのインターコネクタ30に接続される。これにより隣接する発電素子部Aどうしが電気的に直列に接続される。
【0031】
(燃料電池100の製造方法)
次に、燃料電池100の製造方法燃料電池100の製造方法の一例を説明する。
【0032】
まず、支持基板の成形体を作製する。支持基板の成形体は、例えば、支持基板材料の粉末にバインダー等が添加されたスラリーを用いた押出成形法で平板体を作製した後に、切削法で平板体の両板面に凹部12を形成することによって作製できる。
【0033】
次に、支持基板の成形体の両板面に形成された凹部12に、燃料極集電部21の成形体を埋設する。そして、燃料極集電部21の成形体の表面に形成された凹部21aに、燃料極活性部22の成形体を埋設する。燃料極集電部21及び燃料極活性部22それぞれの成形体は、例えば、燃料極20の材料粉末(例えば、NiとYSZ)にバインダー等が添加されたスラリーを用いた印刷法等で作製することができる。
【0034】
次に、燃料極集電部21の成形体の表面に形成された凹部21bに、インターコネクタ30の成形体を埋設する。インターコネクタ30の成形体は、例えば、インターコネクタ30の材料粉末(例えば、LaCrO)にバインダー等が添加されたスラリーを用いた印刷法等で作製することができる。
【0035】
次に、燃料極20及びインターコネクタ30それぞれの成形体が埋設された支持基板10の成形体上に固体電解質膜40のうち界面領域41の成形体を形成する。界面領域41の成形体は、例えば、YSZ(例えば、8YSZ)粉末とTiO(チタニア)粉末の複合材料にバインダー等が添加されたスラリーを用いた印刷法やディッピング法等で作製することができる。
【0036】
次に、界面領域41の成形体上に固体電解質膜40のうち離間領域42の成形体を形成することによって、固体電解質膜40の成形体を完成させる。離間領域42の成形体は、例えば、YSZ(例えば、8YSZ)粉末にバインダー等が添加されたスラリーを用いた印刷法やディッピング法等で作製することができる。離間領域42の成形体の作製には、YSZ粉末とTiO(チタニア)粉末の複合材料を用いてもよい。
【0037】
次に、固体電解質膜40の成形体上に反応防止膜50の成形体を形成する。反応防止膜50の成形体は、例えば、反応防止膜50の材料粉末(例えば、GDC)にバインダー等が添加されたスラリーを用いた印刷法等で作製することができる。
【0038】
次に、支持基板10、燃料極20、インターコネクタ30、固体電解質膜40及び反応防止膜50それぞれの成形体の積層体を焼成(大気雰囲気、1300℃〜1600℃、2時間〜20時間)する。
【0039】
次に、反応防止膜50上に空気極60の成形体を形成する。空気極60の成形体は、例えば、空気極60の材料粉末(例えば、LSCF)にバインダー等が添加されたスラリーを用いた印刷法等で作製することができる。
【0040】
次に、空気極60の成形体とインターコネクタ30とを跨ぐように、空気極集電膜70の成形体を形成する。空気極集電膜70の成形体は、例えば、空気極集電膜70の材料粉末(例えば、LSCF)にバインダー等が添加されたスラリーを用いた印刷法等で作製することができる。
【0041】
次に、空気極60と空気極集電膜70それぞれの成形体を焼成(大気雰囲気、1000〜1100℃、1〜10時間)する。以上によって、本実施形態に係る燃料電池100が完成する。
【0042】
なお、燃料電池100の製造方法の詳細は、特開2015−035418号公報に開示されている。本実施形態では、燃料電池100の製造方法として特開2015−035418号公報の内容を援用する。
【0043】
(他の実施形態)
上記実施形態において、燃料電池100は、反応防止膜50を備えることとしたが、反応防止膜50を備えていなくてもよい。
【0044】
上記実施形態において、燃料電池100は、空気極集電膜70を備えることとしたが、空気極集電膜70を備えていなくてもよい。この場合には、空気極60がインターコネクタ30と電気的に接続されていればよい。
【0045】
上記実施形態において、固体電解質膜40は、界面領域41と離間領域42を有することとしたが、固体電解質膜40の厚みが6μm以下の場合には、離間領域42を有していなくてよい。この場合、固体電解質膜40の全体が界面領域41となる。
【実施例】
【0046】
以下において本発明に係る燃料電池の実施例について説明するが、本発明は以下に説明する実施例に限定されるものではない。
【0047】
(サンプルNo.1)
まず、MgO粉末とMgAl粉末の複合材料にバインダーとしてセルロースを添加したスラリーを用いた押出成形法で平板体を作製した後、切削法で平板体の両板面に凹部を形成することによって支持基板の成形体(2mm×200mm×200mm)を形成した。
【0048】
次に、NiO粉末とYSZ粉末の複合材料(NiO粉末:YSZ粉末=50vol%:50vol%)にバインダーとしてセルロースを添加したスラリーを用いた印刷法によって、2つの凹部を有する燃料極集電部の成形体を支持基板の成形体に形成された凹部に埋設した。
【0049】
次に、NiO粉末とYSZ粉末の複合材料(NiO粉末:YSZ粉末=50vol%:50vol%)にバインダーとしてセルロースを添加したスラリーを用いた印刷法によって、燃料極集電部の成形体に形成された一方の凹部に燃料極活性部の成形体を埋設した。
【0050】
次に、LaCrO粉末にバインダーとしてセルロースを添加したスラリーを用いた印刷法によって、燃料極集電部の成形体に形成された他方の凹部にインターコネクタの成形体を埋設した。
【0051】
次に、8YSZ粉末にバインダーとしてセルロースを添加したスラリーを用いた印刷法によって、燃料極及びインターコネクタそれぞれの成形体が埋設された支持基板の成形体上に固体電解質膜の成形体を形成した。
【0052】
次に、GDC粉末にバインダーとしてセルロースを添加したスラリーを用いた印刷法によって、固体電解質膜の成形体上に反応防止膜の成形体を形成した。
【0053】
次に、支持基板、燃料極、インターコネクタ、固体電解質膜及び反応防止膜それぞれの成形体の積層体を焼成(大気雰囲気、1400℃、2時間)した。固体電解質膜の厚みは、20μmであった。
【0054】
次に、LSCF粉末にバインダーとしてセルロースを添加したスラリーを用いた印刷法によって、反応防止膜上に空気極の成形体を形成した。
【0055】
次に、LSCF粉末にバインダーとしてセルロースを添加したスラリーを用いた印刷法によって、空気極の成形体とインターコネクタとを繋ぐように空気極集電膜の成形体を形成した。
【0056】
次に、空気極と空気極集電膜それぞれの成形体を焼成(大気雰囲気、1400℃、2時間)した。
【0057】
(サンプルNo.2〜8)
固体電解質膜の成形体の作製工程以外は上述したサンプルNo.1と同じ工程にて、サンプルNo.2〜8に係る燃料電池を作製した。具体的には、以下に説明するように、燃料極及びインターコネクタそれぞれの成形体が埋設された支持基板の成形体上に、固体電解質膜の界面領域及び離間領域それぞれの成形体を順次形成した。
【0058】
まず、8YSZ粉末とTiO粉末の複合材料にバインダーとしてセルロースを添加したスラリーを用いた印刷法によって、支持基板の成形体上に界面領域の成形体を形成した。この際、TiO粉末の添加量を調整することによって、表1に示すように、界面領域におけるTiの平均含有量を調整した。
【0059】
次に、8YSZ粉末にバインダーとしてセルロースを添加したスラリーを用いた印刷法によって、界面領域の成形体上に離間領域の成形体を形成した。この際、TiO粉末の添加量を調整することによって、表1に示すように、離間領域におけるTiの平均含有量を調整した。
【0060】
そして、固体電解質膜の成形体上に反応防止膜の成形体を形成した後、支持基板、燃料極、インターコネクタ、固体電解質膜及び反応防止膜それぞれの成形体の積層体を焼成(大気雰囲気、1400℃、2時間)した。固体電解質膜のうち界面領域の厚みは6μmであり、離間領域の厚みは15μmであり、全体厚みは21μmであった。
【0061】
(界面領域及び離間領域におけるTi含有量)
各サンプルの厚み方向における断面において、固体電解質膜の界面領域を厚み方向に2μm間隔で均等に離れた複数箇所で測定されるTiの含有量を算術平均して平均含有量を算出した。固体電解質膜の断面におけるTiの含有量の測定には、日本電子株式会社製の電界放射型分析電子顕微鏡付属の電界放出型電子線マイクロアナライザ(FE−EPMA)を用いた。
【0062】
(固体電解質膜の剥離)
各サンプルの厚み方向における断面を電子顕微鏡で観察することによって、支持基板と固体電解質膜の界面に剥離が発生しているかどうか確認した。表1では、各サンプル10個ずつの燃料電池において、300μm以上の剥離が1つ以上確認された燃料電池の数が示されている。
【0063】
(燃料電池の出力)
サンプルNo.2〜8に係る燃料電池の初期出力を測定した。なお、サンプルNo.1では、支持基板から固体電解質膜が剥離したため、燃料電池の初期出力を測定することができなかった。
【0064】
まず、各サンプルにおいて、燃料極側に窒素ガス、空気極側に空気を供給しながら750℃まで昇温し、750℃に達した時点で燃料極に水素ガスを供給しながら還元処理を3時間行った。
【0065】
次に、各サンプルにおいて、温度750℃で定格電流密度0.2A/cm2における出力密度を測定した。測定結果を表1にまとめて示す。表1では、出力密度が0.15W/cm以上であるサンプルが◎と評価され、0.15W/cm未満0.12W/cm以上であるサンプルが○と評価されている。
【0066】
【表1】
【0067】
表1に示すように、固体電解質膜のうち支持基板と接触する界面領域にTiを含有するサンプルNo.2〜8では、固体電解質膜が支持基板から剥離することを抑制できた。これは、界面領域にTiを含有させることによって、界面領域の強度を向上させることができたためである。
【0068】
また、表1に示すように、界面領域におけるTiの平均含有量を5.1wt%以下としたサンプルNo.2〜7では、燃料電池の出力低下を抑制することができた。これは、界面領域におけるTiの平均含有量を抑えることによって、酸素分圧が低くなりやすい界面領域における電子伝導性の発現を抑えることができたためである。
【符号の説明】
【0069】
100 燃料電池
10 支持基板
11 燃料ガス流路
20 燃料極
21 燃料極集電部
22 燃料極活性部
30 インターコネクタ
40 固体電解質膜
41 界面領域
42 離間領域
50 反応防止膜
60 空気極
70 空気極集電膜
図1
図2
図3