(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6203325
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】EGR制御システムを有する大型ターボ過給式2ストローク自己着火式内燃機関
(51)【国際特許分類】
F02M 26/05 20160101AFI20170914BHJP
F02M 26/34 20160101ALI20170914BHJP
F02M 26/46 20160101ALI20170914BHJP
F02B 37/00 20060101ALI20170914BHJP
F02B 25/02 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
F02M26/05
F02M26/34
F02M26/46 Z
F02B37/00 302F
F02B25/02
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-84946(P2016-84946)
(22)【出願日】2016年4月21日
(65)【公開番号】特開2016-211549(P2016-211549A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2017年2月13日
(31)【優先権主張番号】PA 2015 00282
(32)【優先日】2015年5月12日
(33)【優先権主張国】DK
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】597061332
【氏名又は名称】エムエーエヌ・ディーゼル・アンド・ターボ・フィリアル・アフ・エムエーエヌ・ディーゼル・アンド・ターボ・エスイー・ティスクランド
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【弁理士】
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】スベンセン ヘデラル キャスパー
(72)【発明者】
【氏名】ニールセン ボッダー クレン
【審査官】
北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−086869(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/026628(WO,A1)
【文献】
特表2016−531236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 26/05
F02B 25/02
F02B 37/00
F02M 26/34
F02M 26/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユニフロー型の大型ターボ過給式2ストローク自己着火式内燃機関であって、
複数の掃気ポート(17)をそれぞれの下端に有し、かつ排気弁(4)をそれぞれの上端に有する複数のシリンダ(1)と、
掃気ガスがそこを通って前記複数のシリンダ(1)に導入される吸気系であって、前記複数の掃気ポート(17)を介して前記複数のシリンダ(1)に接続された掃気受け(2)を備えた吸気系と、
前記複数のシリンダ内で発生した排気ガスがそこを通って排出される排気系であって、前記排気弁(4)を介して前記複数のシリンダに接続された排気受け(3)を備えた排気系と、
掃気流を前記掃気受けに送給する圧縮機(9)を駆動するタービン(8)を有するターボチャージャ(5)であって、前記圧縮機(9)は前記吸気系にあり、前記タービン(8)は前記排気系にある、ターボチャージャ(5)と、
燃料流を前記シリンダ(1)に送給するための燃料系と、
前記排気系からの排気ガス流を前記吸気系に送るEGRシステムであって、少なくとも1つのブロワ(22)を備えたEGRシステムと、
前記掃気受け(2)内の酸素濃度(Os)を表す信号を供給する第1センサ(27)と、
前記EGRシステムを通る前記排気ガスの流量を制御するように構成された制御装置(50)と、
を備え、
前記制御装置(50)は、前記第1センサからの前記信号をフィードバック制御に使用するように構成され、
前記制御装置(50)は、必要な再循環排気ガス流量の推定値をフィードフォワード制御に使用するように構成される、
機関において、
前記掃気受け(2)内の前記酸素含有量を設定点に近い値に維持するために、前記制御装置(50)は前記第1センサ(27)からの前記信号をフィードバック制御に使用するように構成され、
前記掃気受け(2)内の前記酸素含有量を前記設定点に近い値に維持するために、前記制御装置(50)は、燃料流、EGR流、および/または圧縮機流の流量測定値および/または推定値をフィードフォワード制御に使用するように構成される、機関。
【請求項2】
ユニフロー型の大型ターボ過給式2ストローク自己着火式内燃機関であって、
複数の掃気ポート(17)をそれぞれの下端に有し、かつ排気弁(4)をそれぞれの上端に有する複数のシリンダ(1)と、
掃気ガスがそこを通って前記複数のシリンダ(1)に導入される吸気系であって、前記複数の掃気ポート(17)を介して前記複数のシリンダ(1)に接続された掃気受け(2)を備えた吸気系と、
前記複数のシリンダ内で発生した排気ガスがそこを通って排出される排気系であって、前記排気弁(4)を介して前記複数のシリンダに接続された排気受け(3)を備えた排気系と、
掃気流を前記掃気受けに送給する圧縮機(9)を駆動するタービン(8)を有するターボチャージャ(5)であって、前記圧縮機(9)は前記吸気系にあり、前記タービン(8)は前記排気系にある、ターボチャージャ(5)と、
燃料流を前記シリンダ(1)に送給するための燃料系と、
前記排気系からの排気ガス流を前記吸気系に送るEGRシステムであって、少なくとも1つのブロワ(22)を備えたEGRシステムと、
前記掃気受け(2)内の酸素濃度(Os)を表す信号を供給する第1センサ(27)と、
前記EGRシステムを通る前記排気ガスの流量を制御するように構成された制御装置(50)と、
を備え、
前記制御装置(50)は、前記第1センサからの前記信号をフィードバック制御に使用するように構成され、
前記制御装置(50)は、必要な再循環排気ガス流量の推定値をフィードフォワード制御に使用するように構成される、
機関において、
前記機関の定常運転状態においては前記フィードバック制御が支配的であり、前記機関の遷移運転状態においては前記フィードフォワード制御が支配的である、機関。
【請求項3】
ユニフロー型の大型ターボ過給式2ストローク自己着火式内燃機関であって、
複数の掃気ポート(17)をそれぞれの下端に有し、かつ排気弁(4)をそれぞれの上端に有する複数のシリンダ(1)と、
掃気ガスがそこを通って前記複数のシリンダ(1)に導入される吸気系であって、前記複数の掃気ポート(17)を介して前記複数のシリンダ(1)に接続された掃気受け(2)を備えた吸気系と、
前記複数のシリンダ内で発生した排気ガスがそこを通って排出される排気系であって、前記排気弁(4)を介して前記複数のシリンダに接続された排気受け(3)を備えた排気系と、
掃気流を前記掃気受けに送給する圧縮機(9)を駆動するタービン(8)を有するターボチャージャ(5)であって、前記圧縮機(9)は前記吸気系にあり、前記タービン(8)は前記排気系にある、ターボチャージャ(5)と、
燃料流を前記シリンダ(1)に送給するための燃料系と、
前記排気系からの排気ガス流を前記吸気系に送るEGRシステムであって、少なくとも1つのブロワ(22)を備えたEGRシステムと、
前記掃気受け(2)内の酸素濃度(Os)を表す信号を供給する第1センサ(27)と、
前記EGRシステムを通る前記排気ガスの流量を制御するように構成された制御装置(50)と、
を備え、
前記制御装置(50)は、前記第1センサからの前記信号をフィードバック制御に使用するように構成され、
前記制御装置(50)は、必要な再循環排気ガス流量の推定値をフィードフォワード制御に使用するように構成される、
機関において、
前記第1センサ(27)の前記信号は前記掃気受け(2)内の酸素濃度(Os)の実際の変化に対して遅延を有し、燃料流、EGR流、および/または圧縮機流の流量測定値および/または推定値は瞬時に測定または判定可能である、機関。
【請求項4】
ユニフロー型の大型ターボ過給式2ストローク自己着火式内燃機関であって、
複数の掃気ポート(17)をそれぞれの下端に有し、かつ排気弁(4)をそれぞれの上端に有する複数のシリンダ(1)と、
掃気ガスがそこを通って前記複数のシリンダ(1)に導入される吸気系であって、前記複数の掃気ポート(17)を介して前記複数のシリンダ(1)に接続された掃気受け(2)を備えた吸気系と、
前記複数のシリンダ内で発生した排気ガスがそこを通って排出される排気系であって、前記排気弁(4)を介して前記複数のシリンダに接続された排気受け(3)を備えた排気系と、
掃気流を前記掃気受けに送給する圧縮機(9)を駆動するタービン(8)を有するターボチャージャ(5)であって、前記圧縮機(9)は前記吸気系にあり、前記タービン(8)は前記排気系にある、ターボチャージャ(5)と、
燃料流を前記シリンダ(1)に送給するための燃料系と、
前記排気系からの排気ガス流を前記吸気系に送るEGRシステムであって、少なくとも1つのブロワ(22)を備えたEGRシステムと、
前記掃気受け(2)内の酸素濃度(Os)を表す信号を供給する第1センサ(27)と、
前記EGRシステムを通る前記排気ガスの流量を制御するように構成された制御装置(50)と、
を備え、
前記制御装置(50)は、前記第1センサからの前記信号をフィードバック制御に使用するように構成され、
前記制御装置(50)は、必要な再循環排気ガス流量の推定値をフィードフォワード制御に使用するように構成される、
機関において、
前記フィードフォワード制御は遷移性能を向上させ、前記フィードバック制御は定常状態において制御誤差を最小化する、機関。
【請求項5】
ユニフロー型の大型ターボ過給式2ストローク自己着火式内燃機関であって、
複数の掃気ポート(17)をそれぞれの下端に有し、かつ排気弁(4)をそれぞれの上端に有する複数のシリンダ(1)と、
掃気ガスがそこを通って前記複数のシリンダ(1)に導入される吸気系であって、前記複数の掃気ポート(17)を介して前記複数のシリンダ(1)に接続された掃気受け(2)を備えた吸気系と、
前記複数のシリンダ内で発生した排気ガスがそこを通って排出される排気系であって、前記排気弁(4)を介して前記複数のシリンダに接続された排気受け(3)を備えた排気系と、
掃気流を前記掃気受けに送給する圧縮機(9)を駆動するタービン(8)を有するターボチャージャ(5)であって、前記圧縮機(9)は前記吸気系にあり、前記タービン(8)は前記排気系にある、ターボチャージャ(5)と、
燃料流を前記シリンダ(1)に送給するための燃料系と、
前記排気系からの排気ガス流を前記吸気系に送るEGRシステムであって、少なくとも1つの可変速ブロワ(22、23)を備えたEGRシステムと、
前記掃気受け(2)内の酸素濃度(Os)を表す信号を供給する第1センサ(27)と、
前記EGRシステムを通る前記排気ガスの流量を制御するように構成された制御装置(50)と、
を備え、
前記制御装置(50)は、前記第1センサからの前記信号をフィードバック制御に使用するように構成され、
前記制御装置(50)は、必要な再循環排気ガス流量の推定値をフィードフォワード制御に使用するように構成される、
機関において、前記制御装置(50)が、
可変速ブロワ(22、23)のマップと、前記可変速ブロワの速度と、前記可変速ブロワ(22、23)の上流および下流の圧力とに基づき、必要なEGR流量を推定するように構成されると共に、負荷信号(uload)に基づくか、または燃料指数(Yf)及び機関速度(ωeng)信号に基づいて、燃料流量推定値を得るように構成される、機関。
【請求項6】
前記掃気受け(2)内の前記酸素レベルを酸素濃度設定点に近い値に維持するために、前記制御装置(50)は、前記EGRシステムを通る前記排気ガス流量を制御するように構成される、請求項1から5のいずれかに記載の機関。
【請求項7】
前記制御装置(50)は、前記EGRシステムのモデルから導出された制御則を使用する、請求項1〜6の何れか1項に記載の機関。
【請求項8】
前記可変速ブロワ(22、23)のマップは無次元パラメータである、請求項5に記載の機関。
【請求項9】
前記制御装置(50)は、前記下流の圧力を圧力センサから推定し、前記可変速ブロワ(22、23)の上流または下流における前記EGRシステムのEGR弁(24、25)にわたる弁圧力降下信号を形成するように構成される、請求項5又は8に記載の機関。
【請求項10】
前記制御装置(50)は、前記下流の圧力と可変速ブロワ(22、23)の圧力上昇測定値とから前記上流の圧力を推定するように構成される、請求項5、8、9のいずれかに記載の機関。
【請求項11】
前記燃料流量推定値の計算に比例定数が用いられる、請求項5,8−10のいずれかに記載の機関。
【請求項12】
前記制御装置(50)は、前記排気系から前記吸気系への前記排気ガスの流量を制御するために、前記第1センサ(27)からの前記信号と、圧縮機速度(ωt)と、前記可変速ブロワ(22、23)の速度(ωb)と、掃気圧(pscav)と、弁圧力降下(Δpv)と、可変速ブロワ(22、23)の圧力上昇(Δpb)とを使用する、請求項5又は11に記載の機関。
【請求項13】
前記制御装置(50)は、前記EGRシステムを通る前記排気ガスの流量を制御するために、前記可変速ブロワ(22、23)の速度を調整するように構成される、請求項1〜12の何れか1項に記載の機関。
【請求項14】
前記EGR弁(24、25)は調整可能弁であり、前記制御装置(50)は、前記EGRシステムを通る前記排気ガスの流量を制御するために、前記EGR弁(24、25)の開度を調整するように構成される、請求項1〜13の何れか1項に記載の機関。
【請求項15】
ユニフロー型の大型ターボ過給式2ストローク自己着火式内燃機関の排気系から吸気系への排気ガスの流量を制御する方法であって、
前記機関の複数のシリンダが発生させた排気ガスの一部を再循環させることと、
掃気受け内の酸素レベルを酸素濃度設定点に近い値に維持するために、再循環させる排気ガスの流量を制御することと、
前記掃気受け内で測定された酸素含有量をフィードバック制御に使用することと、
必要な再循環排気ガス流量の推定値をフィードフォワード制御に使用することと、
を含み、
更に、定常状態において前記制御誤差を最小化するために前記フィードバック制御を使用することと、遷移性能を向上させるために前記フィードフォワード制御を使用することとを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、大型ターボ過給式2ストローク自己着火式内燃機関用の排気ガス再循環(EGR:exhaust gas recirculation)システムに関し、より具体的にはEGRシステムの動作の制御に関する。
【0002】
大型ターボ過給式2ストローク自己着火式内燃機関は、一般に、大型船舶の推進システムとして、または発電所の原動機として、使用されている。これら機関の高さは一般には重大でないので、ピストンへの横荷重を回避するために、これら機関はクロスヘッドを用いて構成されている。一般に、これら機関は、重油または燃料油で運転される。
【0003】
環境への影響に対する意識により、船舶用ディーゼル機関からの排気は規制を受ける。特定海域における船舶用ディーゼルからのNO
x排出を制限する3次規制は、国際海事機関(International Maritime Organization)によって提示された(2013)ように、2016年に導入される。これは、船舶業界がNO
x排出を減らす技術を開発する動機付けとなった。このような技術の1つは、自動車業界では数十年にわたって4ストローク機関に適用されてきた排気ガス再循環(EGR)である。
【0004】
EGRの原理は、排気ガスの一部を再循環させて機関の掃気マニホールドに戻すことである。これにより、掃気ガス中の酸素レベルが低下し、ひいては燃焼中のNOxガスの発生が減る。残念なことに、掃気ガスの酸素含有量を下げると、燃焼効率にも影響が及ぶ。掃気中の酸素レベルが過度に低いと、望ましくない可視煙が発生する。
【0005】
最近まで、これら大型ターボ過給式2ストローク自己着火式内燃機関は、EGR無しで運転されていた。この状況は、ますます厳しくなる排出規制のために、特に排気ガス内のNOx含有量を減らすための規制のために、変わってきている。EGRは、はるかに小型の4ストローク自己着火式内燃機関の分野から周知の方策である。ただし、小型の4ストローク機関のEGR技術は、以下に挙げるさまざまな理由により、はるかに大型の2ストローク機関には簡単に適用できない。
【0006】
これら理由の1つは、大型ターボ過給式2ストロークディーゼル機関用に開発されたEGR制御システムの場合と、自動車業界におけるEGRシステムの場合とでは、EGR制御装置のコミッショニングのために利用可能な取り組みに違いがあることである。自動車用機関の各設計は、大規模生産用に公開される前にテストベンチで徹底的にテストされる。これに対して、特定の大型2ストローク機関の設計は製作数が極めて少なく、最初の機関が製作されるまでテストされない場合もあり、テストされたとしても試運転コストが極めて高いため、利用可能なテスト時間が極めて限られている。更に、大型2ストローク機関は、その運転期間中に再構成されることもあり得る。これら現実的な問題の結果として、個々の設計に対して手動調整を適用できず、先験データに基づくオブザーバ設計は実用的でない。すなわち、制御設計は、システム挙動の変化に対しても、更には不正確な設計データに対しても、堅牢である必要がある。
【0007】
別の理由は、4ストローク機関の排気側と吸気側との間には正圧差があるという事実である。すなわち、この正圧差によって排気ガスが再循環されて吸気側に流れるので、ブロワなどを必要としない。ただし、大型ターボ過給式2ストローク機関では排気側と吸気側との間に負圧差が存在する。したがって、小型の4ストローク機関で行われているように吸気側と排気側との間に単純な導管が構築されると、給気は排気側に向かって流れることになる。したがって、2ストローク機関のEGRシステムは、排気ガスの一部を強制的に給気に混入させるために、ブロワまたはポンプを必要とする。すなわち、大型ターボ過給式2ストロークディーゼル機関では、排気系と吸気系との間の圧力差に打ち勝つために複数のブロワと複数の弁との組み合わせを使用することによって、排気ガスを再循環させる。
【0008】
更に、重油を使用するため、大型2ストローク機関の排気ガスは、重油の高硫黄含有量により排気ガス中に硫酸が相対的に高い濃度で存在するので、4ストローク機関の場合より、はるかに攻撃的である。これは、排気系の構成要素に、およびEGRの場合はEGRシステムおよび吸気系の構成要素に、問題をもたらす。
【0009】
NOxおよび煤の両方の排出規制を満たすために、掃気受け内の酸素濃度を正確に制御する必要がある。その理由は、酸素濃度が低すぎると煤の形成が許容限度を超え、酸素濃度が高すぎるとNOx排出が許容限度を超えるからである。
【0010】
負荷依存の掃気酸素濃度(O
s)設定点が事前に規定される。実際の酸素濃度O
sを測定し、この測定値のフィードバック制御によって、EGRブロワの速度とEGR弁の開度とをアクチュエータとして用いて、この設定点に到達させる。
【0011】
したがって、EGR流量を正確に制御するには、掃気ガス中の酸素(O2)含有量を正確かつ迅速に知る必要がある。測定された酸素含有量に基づき、閉制御ループによって、排気ガスの再循環量、ひいては掃気ガス中の酸素含有量、を調整できる。
【0012】
ただし、現在利用可能なセンサ技術による掃気ガス中の酸素濃度の測定は、掃気受け内の過酷な条件のため、低速である。これは、定常運転状態では問題でないが、過渡運転状態では、例えば、船を加速または減速する必要があるときは、重大な問題を引き起こす。測定が低速であると、高フィードバックゲイン時に、望ましくない変動をフィードバック制御ループに引き起こし得る。ただし、低フィードバックゲインでは、システムは、燃料流量の変化(負荷の変化)などの外乱に対して脆弱である。従来技術のシステムにおいては、変動および外乱の阻止の間で折り合いを付ける必要がある。
【0013】
本発明の目的は、上記の課題を克服する、または少なくとも低減する、EGRシステムを有するユニフロー型の大型ターボ過給式2ストローク自己着火式内燃機関を提供することである。
【0014】
上記および他の目的は、独立請求項の特徴によって達成される。更なる具現化形態は、従属請求項、本明細書、および図から明らかである。
【0015】
第1の態様によると、ユニフロー型の大型ターボ過給式2ストローク自己着火式内燃機関が提供される。本機関は、複数の掃気ポートを下端に有し、かつ排気弁を上端に有する複数のシリンダと、掃気ガスがそこからシリンダに導入される吸気系であって、前記複数の掃気ポートを介して前記複数のシリンダに接続された掃気受けを備えた吸気系と、前記複数のシリンダ内で発生した排気ガスがそこから排出される排気系であって、前記排気弁を介して前記複数のシリンダに接続された排気受けを備えた排気系と、掃気流を掃気受けに送給する圧縮機を駆動するタービンを有するターボチャージャであって、前記圧縮機は前記吸気系にあり、前記タービンは前記排気系にあるターボチャージャと、燃料流を前記複数のシリンダに送給するための燃料系と、前記排気系からの排気ガス流を前記吸気系に送るためのEGRシステムであって、少なくとも1つのブロワを備えたEGRシステムと、前記掃気受け内の酸素濃度O
sを表す信号を供給する第1センサと、前記EGRシステムを通る排気ガス流量を制御するように構成された制御装置であって、前記第1センサからの信号をフィードバック制御に使用するように構成され、かつ必要な再循環排気ガス流量の推定値をフィードフォワード制御に使用するように構成された制御装置とを備える。
【0016】
推定値に基づくフィードフォワード制御と相対的に低速のセンサを使用するフィードバック制御とを組み合わせて提供することによって、定常状態で高精度を維持しながら、遷移性能を著しく向上させることができる。
【0017】
第1の態様の第1の可能な具現化形態において、前記制御装置は、前記掃気受け内の酸素レベルを酸素濃度設定点に近い値に維持するために、前記EGRシステムを通る排気ガス流量を制御するように構成される。
【0018】
第1の態様の別の可能な具現化形態において、前記制御装置は、掃気受け内の酸素含有量を設定点に近い値に維持するために、前記第1センサからの信号をフィードバック制御に使用するように構成される。前記制御装置は、掃気受け内の酸素含有量を前記設定点に近い値に維持するために、燃料流、EGR流、および/または圧縮機流の流量測定値および/または推定値をフィードフォワード制御に使用するように構成される。
【0019】
第1の態様の別の可能な具現化形態において、前記フィードバック制御は前記機関の定常運転状態において支配的であり、前記フィードフォワード制御は前記機関の遷移運転状態において支配的である。
【0020】
第1の態様の別の可能な具現化形態において、前記第1センサの信号は、前記掃気受け内の酸素濃度O
sの実際の変化に対して遅延があり、燃料流、EGR流、および/または圧縮機流の流量測定値および/または推定値は瞬時に測定または判定可能である。
【0021】
第1の態様の別の可能な具現化形態において、前記フィードフォワード制御は遷移性能を向上させ、前記フィードバック制御は定常状態における制御誤差を最小化する。
【0022】
第1の態様の別の可能な具現化形態において、前記制御装置は、EGRシステムのモデルから導出された制御則を使用する。
【0023】
第1の態様の別の可能な具現化形態において、前記制御装置は、好ましくは無次元パラメータの、可変速ブロワのマップと、可変速ブロワの上流および下流の圧力と、可変速ブロワの速度とに基づき、必要なEGR流量を推定するように構成される。
【0024】
第1の態様の別の可能な具現化形態において、前記制御装置は、前記下流の圧力を圧力センサから推定し、前記可変速ブロワの上流または下流の前記EGRシステムのEGR弁にわたる弁圧力降下信号を形成するように構成される。
【0025】
第1の態様の別の可能な具現化形態において、前記制御装置は、前記上流の圧力を前記下流の圧力および可変速ブロワの圧力上昇測定値から推定するように構成される。
【0026】
第1の態様の別の可能な具現化形態において、前記燃料流量推定値は、負荷信号u
loadまたは燃料指数Y
fおよび機関速度ω
eng信号に基づき、好ましくはそれぞれの比例定数に更に基づく。
【0027】
第1の態様の別の可能な具現化形態において、前記制御装置は、排気系から吸気系への排気ガス流量を制御するために、前記第1センサからの信号と、負荷u
loadまたは燃料指数Y
fおよび機関の速度ω
cと、圧縮機の速度ω
tと、可変速ブロワの速度ω
bと、掃気圧p
scavと、弁の圧力降下Δp
vと、可変速ブロワの圧力上昇Δp
bとを使用する。
【0028】
第1の態様の別の可能な具現化形態において、前記制御装置は、前記EGRシステムを通る排気ガス流量を制御するために、前記可変速ブロワの速度を調整するように構成される。
【0029】
第1の態様の別の可能な具現化形態において、前記EGR弁は調整可能弁であり、前記制御装置は、前記EGRシステムを通る排気ガス流量を制御するために、前記EGR弁の開度を調整するように構成される。
【0030】
第1の態様の可能な別の具現化形態において、ブロワは可変速ブロワである。
【0031】
第2の態様によると、ユニフロー型の大型ターボ過給式2ストローク自己着火式内燃機関の排気系から吸気系への排気ガス流量を制御するための方法が提供される。前記方法は、機関の複数のシリンダが発生させた排気ガスの一部を再循環させることと、掃気受け内の酸素レベルを酸素濃度設定点に近い値に維持するために再循環排気ガス流量を制御することと、前記掃気受け内の酸素含有量の測定値をフィードバック制御に使用することと、必要な再循環排気ガス流量の推定値をフィードフォワード制御に使用することと、を含む。
【0032】
第2の態様の第1の可能な具現化形態において、本方法は、定常状態における制御誤差を最小化するために前記フィードバック制御を使用することと、遷移性能を向上させるために前記フィードフォワード制御を使用することと、を更に含む。
【0033】
本発明の上記および他の態様は、以下に説明する各実施形態から明らかになるであろう。
【0034】
本開示の以下の詳細な説明の部分においては、図面に示されている各例示的実施形態を参照して本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】一例示的実施形態による大型2ストロークディーゼル機関の正面図である。
【
図2】
図1の大型2ストローク機関の側面図である。
【
図3】
図1による大型2ストローク機関の断面概略図である。
【
図4】吸気系、排気系、およびEGRシステムをより詳細に示す、
図1の機関の概略図である。
【
図5】吸気系、排気系、およびEGRシステムをより詳細に示す、
図1の機関の別の実施形態の概略図である。
【
図6】
図1の機関に使用される制御装置の一例示的実施形態の概略図である。
【0036】
以下の詳細な説明においては、大型の低速2ストロークターボ過給式自己着火式内燃機関を各例示的実施形態によって説明する。
図1〜3は、クランクシャフト42と複数のクロスヘッド43とを有する大型の低速ターボ過給式2ストロークディーゼル機関を示す。
図3は、大型の低速ターボ過給式2ストロークディーゼル機関をその吸気および排気系と共に断面で示す概略図である。この例示的実施形態において、機関は、6つのシリンダ1を一列状に有する。例えば、機関は単1列のシリンダ群である。単に説明のために、
図1は、6つのシリンダ1を有する機関を示す。なお、実質的に他の何れの数のシリンダ1でも、本発明の各態様から逸脱することなく、採用され得ることが明らかであろう。大型ターボ過給式2ストロークディーゼル機関は、一般に、機関フレーム45によって担持された4〜16の間の数のシリンダを一列状に有する。この機関は、例えば、大型外航船における主機関として、または発電所において発電機を作動させるための定置機関として、使用され得る。この機関の総出力は、例えば、5,000〜110,000kWにわたり得る。
【0037】
機関は、吸気系と排気系とを有する。ターボ過給は、吸気系の圧縮機9を駆動するタービン8を排気系に有するターボチャージャ5によってもたらされる。機関は、燃料をシリンダに送給する燃料系を有する。
【0038】
機関は、複数の掃気ポート17を各シリンダ1の下方領域に有し、かつ排気弁4を各シリンダ1の頂部に有する2ストロークユニフロー型のディーゼル(自己着火式)機関である。機関は、さまざまな種類の燃料、例えば、船舶用ディーゼル、重油、またはガス(LPG、LNG、メタノール、エタノール)など、で作動させることができる。
【0039】
掃気受け2からの掃気ガスは、個々のシリンダ1の各掃気ポート17に送られる。各シリンダ1内のピストン41が掃気ガスを圧縮し、各シリンダ1の頂部の燃料弁(図示せず)から燃料が噴射され、その後に燃焼が起こり、排気ガスが発生する。排気弁4が開弁すると、排気ガスは当該シリンダ1に対応付けられた排気管路6を通って排気受け3に流入し、そこから排気導管33を通ってターボチャージャ5のタービン8に達し、そこから排気ガスは排気導管7を通って流出する。ターボチャージャ5のタービン8は、シャフト12を介して、圧縮機9を駆動し、吸気口10から供給された掃気を加圧する。圧縮機9は、加圧された掃気を掃気受け2に通じる掃気導管11に送給する。機関は、当該技術分野で周知のように、複数のターボチャージャ5を有することができる。
【0040】
掃気受け2は、中空円筒体を形成するために、例えば板金製の、細長い中空円筒体と基本的に円形の断面輪郭とを有する。掃気受け2は、機関の全長に沿って延在し、全てのシリンダ1に掃気を供給する。掃気受け2は、かなりの断面直径と大きな総容積とを有する。これは、個々のシリンダ1の掃気ポート17の開口および掃気ガスの取り込みによって引き起こされる圧力変動を防止するために、すなわち、個々のシリンダ1による掃気の不規則な消費にも拘らず、掃気受け2内にほぼ一定の圧力を保証するために、必要とされる。一般に、掃気受け2の直径は、ピストン41の直径より大きい。
【0041】
一実施形態において、例えば、総機関長が長く多数のシリンダ1を有する極めて大型の機関の場合は、2つの掃気受け2を機関に設け得る。各掃気受け2はそれぞれ専用のハウジングを有し、一方の掃気受け2はシリンダ1列の一端の約半数のシリンダ1をカバーし、もう一方の掃気受け2はシリンダ1列の他端の約半数のシリンダ1をカバーする。この実施形態において、EGRシステム/ストリングの数は、好ましくは相応に増やされるので、この実施形態による機関は、4つのEGRブロワ、すなわち、EGRストリング毎に2つのブロワ、を備えることができる。
【0042】
排気受け3は、例えば板金製の、細長い中空円筒体と基本的に円形の断面輪郭とを有する。板金は、熱損失を回避するために、断熱材料層によって覆われる。排気受け3は、機関の全長に沿って延在し、全てのシリンダ1からの排気ガスを、排気受け3内まで延在する個々の排気管路6を介して、受け入れる。排気受け3は、かなりの断面直径と大きな容積とを有する。これは、個々のシリンダ1の排気弁4の開弁および排気受け3内への排気ガスの高速噴射によって引き起こされる圧力変動を最小化するために、すなわち、個々のシリンダ1による排気ガスの断続的送給にも拘らず、排気受け3内にほぼ一定の圧力を保証するために、必要とされる。一般に、排気受け3の直径は、ピストン41の直径より大きい。
【0043】
一実施形態において、例えば、総機関長が長く多数のシリンダ1を有する極めて大型の機関の場合、2つの排気受け3を機関に設け得る。一方の排気受け3は、シリンダ1列の一端の約半数のシリンダ1をカバーし、もう一方の排気受け3は、シリンダ列の他端の約半数のシリンダ1をカバーする。
【0044】
次に
図4を参照すると、機関の吸気系、排気系、およびEGRシステムがより詳細に示されている。
【0045】
掃気は、吸気導管10経由でターボチャージャ5の圧縮機9に送られる。圧縮機9は掃気を圧縮し、掃気導管11は圧縮された掃気を掃気受け2に送る。最大約200℃で圧縮機9を出た圧縮掃気を5℃と80℃の間の温度に冷却するために、導管11内の掃気はインタークーラ(図示せず)を通過する。冷却された掃気は、低または部分負荷状態では、駆動モータによって駆動されて掃気流を加圧する補助ブロワ16を介して、掃気受け2に進む。より高い負荷において、圧縮機9は十分に圧縮された掃気を送給する。この場合、掃気は逆止弁(図示せず)を通り、補助ブロワを迂回する。
【0046】
掃気導管11は、EGRシステムからの再循環された排気ガスを掃気に追加する合流点28を通過し、再循環された排気ガスと掃気との混合物を掃気受け2の入口に導く。掃気と再循環された排気ガスとの混合物は、掃気受け2からシリンダ1内での燃焼プロセスに寄与する。こうしてシリンダ1内で発生した排気ガスは、排気受け3に受け入れられる。このように、再循環された排気ガスと掃気との混合物を用いて燃焼プロセスが実施されるので、NOx排出レベルを下げることができる。
【0047】
EGRシステムは排気系と吸気系との間に延在する。EGRシステムは、排気ガスの一部を吸気系に送るEGR導管20を有する。本実施形態においてはEGR導管20が排気受け3に接続されるが、排気ガスをシリンダ1から直接取ることも、または、例えば排気導管33から分岐させて、ターボチャージャ5のタービン8の上流の排気系の何れか他の部分から排気ガスを取ることも可能であることを理解されたい。
【0048】
大型ターボ過給式2ストローク自己着火式内燃機関においては、燃料の硫黄含有量が高いため、排気ガスは有害物質、例えば硫酸など、を比較的多量に含有する。
【0049】
したがって、EGRシステムは、再循環させる排気ガスを洗浄するための洗煙塔21をEGR導管20に含む。洗煙塔21は、湿式洗煙塔でもよい。この目的は、汚染された汚れた再循環排気ガスがシリンダ1に再導入されることを回避すること、および洗煙塔21の下流のEGRシステム、ならびに掃気受け2および補助ブロワ16、の汚染を回避することである。最大の効果を得るために、洗煙塔は、EGRシステムの上流部に載置される。
【0050】
通常、大型ターボ過給式2ストローク自己着火式内燃機関においては、シリンダ1の入口側における掃気ガスの圧力は、当該シリンダ1の出口側における排気ガスの圧力より高くなる。さもないと、圧力によって決まる流れの方向が誤って吸気側に向かうことになるので、掃気を行うことができない。この態様の大型ターボ過給式2ストローク内燃機関においては、ブロワなどの助けなしには、排気ガスの再循環のために、排気ガスを排気系からEGR導管経由で吸気系に単純に流すことは不可能である。したがって、EGRシステムは、排気系からの排気ガスをEGRシステム経由で吸気系に送るために、少なくとも1つのブロワ22、23を含む。
【0051】
本実施形態において、EGR導管20は洗煙塔21の下流で2つのストリングに分岐される。各ストリングは可変速または固定速EGRブロワ22、23を含む。各ストリングは調整可能なEGR弁24、25を含む。
【0052】
掃気受け2内の実際の酸素濃度が所定の酸素濃度設定点にできる限り近い値に維持されるように、EGRシステムを通る流量を制御するための制御装置50が設けられる。
【0053】
各EGRブロワ22、23の速度は制御装置50(
図6)によって個別に制御され、および/または各EGR弁24、25の設定は制御装置50によって制御される。EGR弁24、25の上流および/または下流の圧力は、センサによって測定されて制御装置50に伝達される。制御装置50がEGRブロワ22、23の速度を、例えばフィードバック制御ループで、制御できるように、EGRブロワ22、23の速度が測定されて制御装置50に伝達されることが好ましい。それぞれのブロワ22、23にわたる圧力上昇Δp
bが測定されて制御装置50に伝達される。
【0054】
掃気受け2内の酸素含有量O
sが第1センサ27によって測定される。第1センサ27の信号が制御装置50に伝達される。第1センサ27は、掃気受け2内の過酷な条件に対応できる堅牢な、しかし極めて低速(高い遅延)の、センサである。
【0055】
圧縮機8の速度ω
tを決定するために、ターボチャージャシャフト12の速度が測定される。
【0056】
フィードバック制御は、燃料流量の変化などの外乱に対して脆弱である。ただし、燃料流量は、制御システムにおいて利用可能な複数の信号(例えば負荷信号)から推定される。
【0057】
制御装置50の包括的原理は、O
s測定値および以下の流量の推定値または測定値の両方を用いてEGRシステムを制御することである。
【0059】
流量測定/推定値は、遷移性能を向上させるために、制御装置50が使用する制御則においてフィードフォワードとして使用される、O
s測定値の積分フィードバックは、定常状態において制御誤差をゼロに維持する。
【0060】
この制御装置50は、上で説明した包括的原理に基づく特定の制御則を使用する。制御設計は、EGRシステムの(簡略化された)制御用モデルを使用する。
【0061】
安定度解析は、制御誤差の指数関数的収斂を示している。これは、モデル化されていない動力学(単純モデルと現実との間の差)に対する堅牢性の良好な指標である。安定度解析は、ここでは詳細に提示しない。
【0062】
燃料流量推定値は、負荷信号(u
load)または燃料指数(Y
f)および機関速度(ω
eng)信号のどちらか一方、ならびにそれぞれの比例定数に基づく。以下の推定値のどちらか一方のみが用いられる。
【0064】
EGR流量推定値は、無次元パラメータ(流量係数および揚程係数)であるEGRブロワマップと、可変速ブロワ22、23の速度と、可変速ブロワ22、23の上流および下流の圧力とに基づく。
【0065】
下流の圧力は、掃気圧および弁圧力降下測定信号から推定される。
p
ds=p
scav+Δp
v
【0066】
上流の圧力は、下流の圧力およびブロワ圧力上昇測定値から算出される。
p
us=p
ds−Δp
b
【0067】
したがって、圧力比は次のように求められる。
Π
b=P
ds/P
us
【0068】
揚程係数(ψ
b)は、圧力比、ブロワ速度(ω
b)、および近似定数、更には比熱(c
p)、上流の温度(Τ
us)、比熱比(γ)、およびブロワ半径(R
b)、から算出される。
【0070】
EGRブロワマップ(c
0,c
1,c
2)は、揚程係数を流量係数(φ
b)に変換する。
【0072】
EGR流量は、次のように算出される(R
sはガス定数)。
【0074】
EGR流量は、ブロワ流量の和として算出される。
【0076】
圧縮機マップからの推定は不可能である。その理由は、全ての作動点をカバーするマップは実際には各機関について入手できないからである。代わりに、圧縮機速度(ω
t)のみが近似のためにかなり不正確なモデルに使用される。
【0078】
パラメータaは既定であり、θは連続的に推定される(適応部については後述)。
【0079】
制御則に使用されるモデルは、定常状態では以下のO
sモデルに基づく。
【0085】
このモデルの反転式が関数h(θ,d,O
s)として定義される。
【0087】
O
sセンサ27およびガス混合の動力学は、時定数τおよび時間遅延τ
delayが既知の一次系としてひとまとめにされる。この動力学は、次のように表すことができる。
【0089】
O
sの測定値およびモデルの両方を有する冗長性は、僅かに変動すると予期されるパラメータθを連続的に推定するために使用される。以下の非線形パラメータ推定量が使用される(制御装置の各更新時)。なお、調整用パラメータkに注目されたい。
【0093】
、既知のベクトル信号dおよび掃気酸素設定点を使用した、モデルh(θ,d,O
s)の静的部分の反転に基づく。
【0095】
制御則に表されているように、直接反転hは、アクチュエータの限界外の値を返し得る。特殊な場合、未定義値を返すこともあり得る。値がアクチュエータの限界内にない場合、制御装置50は必ず最大EGR流量を選択する。実際的な目的のために、未定義値は、hの計算中、分母をチェックすることによって処理できる。
【0096】
パラメータ推定部は、制御装置の一体部分を表す。パラメータ推定部は、定常状態中、O
s誤差をゼロに収斂することによって、明示的な過渡的検出なしに、制御則を可能にする。
【0097】
以下は、制御装置50が使用できる信号の非網羅的一覧である。
・掃気酸素測定値(O
s)
・負荷(u
load)または燃料指数(Y
f)および機関速度(ω
c)
・圧縮機速度(ω
t)
・EGRブロワ速度(ω
b)
・掃気圧(p
scav)
・EGR弁圧力降下(Δp
v)
・EGRブロワ圧力上昇(Δp
b)
【0098】
制御装置50は、上記信号の全て、またはいくつか、を使用できる。掃気酸素測定は低速であるので、掃気受け内の酸素濃度の推定値を即座に得ることができるその他の信号のうちの少なくとも1つがサーバベースの(フィードフォワード)制御に使用される。
【0099】
以下は、制御装置50の調整に使用可能な調整用パラメータの非網羅的一覧である。
・パラメータ推定量ゲイン(k)
・酸素時定数(τ)
・酸素遅延(τ
delay)
・圧縮機流量の近似指数(a)
【0100】
制御装置50は、当該機関に固有の上記調整用パラメータの全て、またはいくつか、を使用できる。
【0101】
以下は、制御装置50が使用できる基本パラメータの非網羅的一覧である。
・燃料比例(k
loadまたはk
Y)
・EGRブロワ上流の温度(Τ
us)
・EGRブロワ比熱(c
p)
・EGRブロワの比熱比(γ)
・EGRブロワのガス定数(R
s)
・EGRブロワの半径(R
b)
・EGRブロワマップ(c
0,c
1,c
2)
・周囲酸素の割合(O
a)
・化学量論的酸素・燃料比(k
f)
・最大EGR流量
【0103】
本実施形態において、外側制御ループは、実際のアクチュエータ値(EGRブロワの速度およびEGR弁の開度)ではなく、外側のEGR流量を指定する。したがって、制御装置(50)は、例えば可変速ブロワ(単数または複数)22、23の速度および/またはEGR弁24、25の開度を調整することによって、EGR流量を制御する内側ループを更に含む。一実施形態において、内側ループは、基本的なフィードバック方法を使用することもできる。
【0104】
図5は、EGR導管20が2つのストリングに分岐していない、すなわちシステムは単一のブロワ20と単一のEGR弁24とで足りる、以外は、
図4の実施形態と基本的に同じ一実施形態を示す。
【0105】
図6は、フィードバックおよびフィードフォワードに基づくOs制御装置と、流量制御装置と、流量推定部とを含む制御装置50の概略図を示す。
【0106】
図6は、フィードバックおよびフィードフォワードに基づくOs制御装置への所望の酸素濃度(Os設定点)の入力を示す。フィードバックおよびフィードフォワードに基づくOs制御装置は、機関負荷、圧縮機速度、および測定Osを表す信号を更に受信する。
【0107】
フィードバックおよびフィードフォワードに基づくOs制御装置は、流量推定値を示す信号を流量推定部から更に受信する。
【0108】
フィードバックおよびフィードフォワードに基づくOs制御装置は、これら受信信号に基づき、流量設定点を決定する。流量制御装置は、フィードバックおよびフィードフォワードに基づくOs制御装置によって決定された流量設定点を受信する。流量制御装置は、EGRブロワ速度設定点および/またはEGR弁開度設定点を出力する。
【0109】
本願明細書のさまざまな実施形態と併せて本発明を説明してきた。ただし、当業者は、開示されている実施形態の他の変形例を図面、本開示、および添付の請求項の検討から理解し、本発明の実施において実行できる。特許請求の範囲において、単語「を備えた/含む(comprising)」は他の要素またはステップを排除せず、不定冠詞「a」または「an」は複数形を排除しない。特許請求の範囲に記載のいくつかの項目の機能は、単一のプロセッサまたは他のユニットによって実行され得る。いくつかの方策が互いに異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これら方策の組み合わせを有利に使用できないということを示すものではない。特許請求の範囲に使用されている参照符号は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。