特許第6203337号(P6203337)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6203337ナノシリカコンポジット粒子およびその製造法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6203337
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】ナノシリカコンポジット粒子およびその製造法
(51)【国際特許分類】
   C08L 33/26 20060101AFI20170914BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20170914BHJP
   C08L 33/16 20060101ALI20170914BHJP
   C08F 220/56 20060101ALI20170914BHJP
   C08G 77/42 20060101ALN20170914BHJP
【FI】
   C08L33/26
   C08K3/36
   C08L33/16
   C08F220/56
   !C08G77/42
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-137273(P2016-137273)
(22)【出願日】2016年7月12日
(62)【分割の表示】特願2015-504392(P2015-504392)の分割
【原出願日】2014年3月6日
(65)【公開番号】特開2016-210996(P2016-210996A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2016年7月12日
(31)【優先権主張番号】特願2013-44078(P2013-44078)
(32)【優先日】2013年3月6日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-44080(P2013-44080)
(32)【優先日】2013年3月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502145313
【氏名又は名称】ユニマテック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504229284
【氏名又は名称】国立大学法人弘前大学
(74)【代理人】
【識別番号】100066005
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100114351
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 和子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 勝之
(72)【発明者】
【氏名】澤田 英夫
【審査官】 繁田 えい子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−144621(JP,A)
【文献】 特開2008−297482(JP,A)
【文献】 特開2007−023180(JP,A)
【文献】 特開平02−070713(JP,A)
【文献】 特開昭61−101577(JP,A)
【文献】 特開2009−102570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 33/26
C08F 220/56
C08K 3/36
C08L 33/16
C08G 77/42
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式
CnF2n+1(CH2)dOCOCR=CH2 〔I〕
(ここで、Rは水素原子またはメチル基であり、nは1〜10の整数であり、dは1〜6の整数である)で表されるフルオロアルキルアルコール(メタ)アクリル酸誘導体と一般式
CH2=CRCONR1R2 〔II〕
(ここで、Rは水素原子またはメチル基であり、R1、R2はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜6のアルキル基である)で表される(メタ)アクリル酸誘導体との共重合体であり、フルオロアルキルアルコール(メタ)アクリル酸誘導体〔I〕1〜20モル%および(メタ)アクリル酸誘導体〔II〕99〜80モル%の共重合割合を有し、数平均分子量Mnが3000以下で、粒子径200nm以下の微粉末状である含フッ素オリゴマーおよびアルコキシシランを、ナノシリカ粒子との縮合体として形成させたナノシリカコンポジット粒子。
【請求項2】
さらに、一般式
(CH2=CRCO)mR′
(ここで、Rは水素原子またはメチル基であり、mは1、2または3であり、R′はm=1のときOH基、あるいは炭素数2〜3のアルキレン基を有するアルキレングリコールまたはポリアルキレングリコール基から導かれた1価の基であり、m=2または3のときジオールまたはトリオールから導かれた2価または3価の有機基である)で表される(メタ)アクリル酸誘導体を共重合させた含フッ素オリゴマーが用いられた請求項1記載のナノシリカコンポジット粒子。
【請求項3】
アルコキシシランが、一般式
(R1O)pSi(OR2)q(R3)r 〔III〕
(ここで、R1、R3はそれぞれ水素原子、炭素数1〜6のアルキル基またはアリール基であり、R2は炭素数1〜6のアルキル基またはアリール基であり、ただしR1、R2、R3は共にアリール基であることはなく、p+q+rは4であり、ただしqは0ではない)で表わされるシラン誘導体である請求項1記載のナノシリカコンポジット粒子。
【請求項4】
請求項1記載の含フッ素オリゴマーとアルコキシシランとを、ナノシリカ粒子の存在下で、アルカリ性または酸性触媒を用いて反応させることを特徴とするナノシリカコンポジット粒子の製造法。
【請求項5】
ナノシリカ粒子100重量部に対し、含フッ素オリゴマーが10〜100重量部およびアルコキシシランが0.1〜100重量部の割合で用いられた請求項4記載のナノシリカコンポジット粒子の製造法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノシリカコンポジット粒子およびその製造法に関する。さらに詳しくは、フッ素系過酸化物開始剤を用いることなく共重合反応させて得られた含フッ素オリゴマー用いたナノシリカコンポジット粒子およびその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、一般式
Rf〔CH2CH(Si(OR)3)〕nRf
等で表される含フッ素系化合物を含むナノ物質が記載されており、これに特定のシランカップリング剤をさらに含有させたナノコンポジットが記載されている。この含フッ素系化合物は、相応するオレフィン系モノマーをRf基(パーフルオロアルキル基)を有する有機過酸化物の存在下で反応させる方法によって製造されると述べられている。
【0003】
また、特許文献2には、一般式
R1〔CH2CR3(COZ)〕nR2
で表されるフルオロアルキル基含有オリゴマーの存在下にアニリンの酸化を行ってポリアニリン含有ナノコンポジット粒子を得る方法が記載されており、該フルオロアルキル基含有オリゴマーは、過酸化フルオロアルカノイル化合物とアクリル酸等を反応させることにより得られると述べられている。
【0004】
しかしながら、これらの方法で使用されているパーフルオロアルカノイル過酸化物は、非常に不安定であって、分解や爆発の危険性をはらんでいるため、特別な安全措置が必要になる。また、フッ素系過酸化物を用いる方法は量産化に適さないことが特許文献3にも記載されている。さらに、含フッ素オリゴマー中の含フッ素官能基は、重合開始剤のパーフルオロアルカノイル過酸化物由来の基としてオリゴマー両末端にのみ結合されているため、フッ素基含量のコントロールが困難であるばかりではなく、フッ素由来の撥油性能が発生され難いという問題もみられる。
【0005】
さらに、特許文献3には、フッ素系過酸化物を使用することなく、シリカナノ粒子、一般式
QOSO2RfT
で表されるフッ素含有界面活性剤および官能性アルコキシシラン加水分解混合物またはその脱水縮合物を含むフッ素含有シリカコンポジット粒子が記載されており、このシリカコンポジット粒子はシリカの化学的、熱的安定性とフッ素化合物のすぐれた撥水撥油性、防汚性、触媒特性を活かす材料であると述べられている。
【0006】
しかしながら、ここで用いられているフッ素化合物は、スルホン基SO2を含む界面活性剤であって、それの製造は電解フッ素化法によるとされており、この電解フッ素化法では反応に際し無水フッ化水素を多量に使用するため、安全面での十分な対策が必要であり、また反応の特性上大量生産には向かず、得られるフッ素化合物は非常に高価なものとなるといった問題点がみられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−138156号公報
【特許文献2】特開2011−190291号公報
【特許文献3】特開2010−209280号公報
【特許文献4】WO 2009/034773 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、フッ素系過酸化物開始剤を用いることなく共重合反応させて得られた含フッ素オリゴマー用いたナノシリカコンポジット粒子およびその製造法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によって、一般式
CnF2n+1(CH2)dOCOCR=CH2 〔I〕
(ここで、Rは水素原子またはメチル基であり、nは1〜10の整数であり、dは1〜6の整数である)で表されるフルオロアルキルアルコール(メタ)アクリル酸誘導体と一般式
CH2=CRCONR1R2 〔II〕
(ここで、Rは水素原子またはメチル基であり、R1、R2はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜6のアルキル基である)で表される(メタ)アクリル酸誘導体との共重合体であり、フルオロアルキルアルコール(メタ)アクリル酸誘導体〔I〕1〜20モル%および(メタ)アクリル酸誘導体〔II〕99〜80モル%の共重合割合を有し、数平均分子量Mnが3000以下で、粒子径200nm以下の微粉末状である含フッ素オリゴマーおよびアルコキシシランを、ナノシリカ粒子との縮合体として形成させたナノシリカコンポジット粒子が提供される。
【0010】
ここで、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸またはメタクリル酸を指している。
【0011】
かかるナノシリカコンポジット粒子は、上記含フッ素オリゴマーとアルコキシシランとを、ナノシリカ粒子の存在下で、アルカリ性または酸性触媒を用いて反応させることにより製造される。
【発明の効果】
【0012】
本発明で用いられる含フッ素オリゴマーは、フッ素系過酸化物開始剤を用いることなく製造することができ、ナノシリカコンポジット粒子などの製造に有効に用いられる。また、モノマーとして重合性官能基を有する含フッ素モノマーを使用することで、含フッ素オリゴマー中の含フッ素含量の調節やナノシリカコンポジット粒子中のフッ素含量の調節も容易であるという利点もみられる。
【0013】
また、この含フッ素オリゴマーを用いて製造された含フッ素ナノシリカコンポジット粒子は、平均粒子径およびその変動幅が小さいばかりではなく、耐熱重量減の点においてもすぐれているといった効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
含フッ素オリゴマーは、一般式
CnF2n+1(CH2)dOCOCR=CH2 〔I〕
R:H、メチル基
n:1〜10、好ましくは2〜8、さらに好ましくは2〜6
d:1〜6、好ましくは2
で表されるフルオロアルキルアルコール(メタ)アクリル酸誘導体および一般式
CH2=CRCONR1R2 〔II〕
R:H、メチル基
R1、R2:H、炭素数1〜6のアルキル基
で表される(メタ)アクリル酸誘導体を、炭化水素系過酸化物またはアゾ化合物重合開始剤の存在下で共重合反応させることにより製造される。
【0015】
フルオロアルキルアルコール(メタ)アクリル酸誘導体〔I〕は、例えば特許文献4に記載されており、次のような一連の工程を経て合成される。
まず、一般式
CnF2n+1(CF2CF2)b(CH2CH2)cI
n:1〜6
a:1〜4
b:0〜3
c:1〜3
で表されるフルオロアルキルアイオダイド、例えば
CF3(CH2CH2)I
C2F5(CH2CH2)I
C2F5(CH2CH2)2I
C3F7(CH2CH2)I
C3F7(CH2CH2)2I
C4F9(CH2CH2)I
C4F9(CH2CH2)2I
C2F5(CF2CF2)(CH2CH2)I
C2F5(CF2CF2)(CH2CH2)2I
C2F5(CF2CF2)2(CH2CH2)I
C2F5(CF2CF2)2(CH2CH2)2I
C2F5(CF2CF2)3(CH2CH2)I
C4F9(CF2CF2)(CH2CH2)I
C4F9(CF2CF2)2(CH2CH2)I
C4F9(CF2CF2)(CH2CH2)2I
C4F9(CF2CF2)2(CH2CH2)2I
C4F9(CF2CF2)3(CH2CH2)I
をN-メチルホルムアミド HCONH(CH3)と反応させ、フルオロアルキルアルコールとそのギ酸エステルとの混合物とした後、酸触媒の存在下でそれに加水分解反応させ、フルオロアルキルアルコール
CnF2n+1(CF2CF2)b(CH2CH2)cOH
を形成させる。得られたフルオロアルキルアルコールをアクリル酸またはメタクリル酸とエステル化反応させることにより、フルオロアルキルアルコール(メタ)アクリル酸誘導体を得る。
【0016】
これらのフルオロアルキルアルコール(メタ)アクリル酸誘導体〔I〕と(メタ)アクリル酸誘導体 CH2=CRCONR1R2〔II〕には、さらに一般式
(CH2=CRCO)mR′
R:H、メチル基
m:1、2または3
R′:m=1のとき、OH基、あるいは炭素数2〜3のアルキ
レン基を有するアルキレングリコールまたはポリ
アルキレングリコール基から導かれた1価の基
m=2または3のとき、ジオールまたはトリオールか
ら導かれた2価または3価の有機基
で表される(メタ)アクリル酸誘導体を共重合させることもできる。
【0017】
これら各単量体の共重合反応は、第3ブチルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,2′-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、アゾビス(イソブチロニトリル)等の炭化水素系過酸化物またはアゾ化合物重合開始剤の存在下で、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、後記AK-225等の有機溶媒中での溶液重合法として行われる。これらの重合開始剤は、モノマー混合物重量に対して約0.1〜50重量%、好ましくは約5〜20重量%の割合で用いられる。
【0018】
得られた含フッ素オリゴマー中の含フッ素モノマー〔I〕の共重合量は、約0.1〜50モル%、好ましくは約1〜20モル%であり、数平均分子量Mnが約3000以下、好ましくは約500〜3000のオリゴマーであって、その粒子径は200nm以下であり、各種溶媒にこの含フッ素オリゴマー白色微粉末を分散させたときの分散性も炭化水素溶媒以外は良好である。
【0019】
このようにして得られた含フッ素オリゴマーは、ナノシリカ粒子の存在下で、アルコキシシランとアルカリ性または酸性の触媒を用いて反応させることにより、ナノシリカコンポジット粒子を形成させる。
【0020】
ナノシリカ粒子としては、平均粒径(動的光散乱法による測定値)が5〜200nm、好ましくは10〜100nmであって、その一次粒子径が40nm以下、好ましくは5〜30nm、さらに好ましくは10〜20nmのオルガノシリカゾルが用いられる。実際には、市販品である日産化学工業製品メタノールシリカゾル、スノーテックスIPA-ST(イソプロピルアルコール分散液)、スノーテックスEG-ST(エチレングリコール分散液)、スノーテックスMEK-ST(メチルエチルケトン分散液)、スノーテックスMIBK-ST(メチルイソブチルケトン分散液)等が用いられる。
【0021】
また、前記アルコキシシランとしては、一般式
(R1O)pSi(OR2)q(R3)r 〔III〕
R1、R3:H、C1〜C6のアルキル基またはアリール基
R2:C1〜C6のアルキル基またはアリール基
ただし、R1、R2、R3は共にアリール基であることは
ない
p+q+r:4 ただし、qは0ではない
で表されるアルコキシシラン、例えばトリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリメトキシメチルシラン、トリエトキシメチルシラン、トリメトキシフェニルシラン、トリエトキシフェニルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等が用いられる。
【0022】
これらの各成分は、ナノシリカ粒子100重量部に対し、含フッ素オリゴマーが約10〜100重量部、好ましくは約20〜80重量部の割合で、またアルコキシシランが約0.1〜100重量部、好ましくは約20〜80重量部の割合で用いられる。含フッ素オリゴマーの使用割合がこれよりも少ないと撥水撥油性が低くなり、一方これよりも多い割合で使用されると溶媒への分散性が低くなる。
【0023】
これら各成分間の反応は、触媒量のアルカリ性または酸性触媒、例えばアンモニア水あるいは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物の水溶液、または塩酸、硫酸等の存在下で、約0〜100℃、好ましくは約10〜50℃の温度で約0.5〜48時間、好ましくは約1〜10時間程度反応させることにより行われる。
【0024】
反応の結果得られたナノシリカコンポジット粒子は、ナノシリカ粒子表面に存在する水酸基にシロキサン結合を介して含フッ素オリゴマーが結合し、あるいはシロキサン骨格を有する殻内に含フッ素オリゴマーが包接されているものと考えられ、したがってシリカの化学的、熱的安定性と含フッ素オリゴマーのすぐれた撥水・撥油性、防汚性などが有効に発揮されており、実際に800℃での重量減を少なくするなどの効果がみられる。また、ナノシリカコンポジット粒子の粒径およびそのバラツキも小さい値を示している。なお、ナノシリカコンポジット粒子は、このように含フッ素オリゴマーおよびシラン誘導体とナノシリカ粒子との縮合反応によって形成されるが、この発明の目的を阻害しない限り他の成分の混在も許容される。
【実施例】
【0025】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0026】
参考例
イソプロパノール50ml中に、
CF3(CF2)3(CH2)2OCOCH=CH2〔FAAC-4〕 3.00g
CH2=CHCON(CH3)2〔DMAA〕 27.37g
を仕込み、これらのイソプロパノール溶液を攪拌しながら、開始剤である
2,2′-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル) 3.04g
(和光純薬製品V-65)
を添加し、窒素をバブリングして溶存酸素を置換した後、内温が50℃になる迄加熱し、この温度を保ちながら5時間反応させた。
【0027】
反応混合物をn-ヘキサン中に投入し、生成した含フッ素オリゴマーをロ過して分離し、白色粉末の含フッ素オリゴマー30g(収率90.0%)を得た。この含フッ素オリゴマーの分子量をGPCによって測定すると、数平均分子量Mnが801、分子量分布を示すMn/Mwが1.74という結果が得られた。また、得られた含フッ素オリゴマーの共重合割合を1H-NMRで測定すると、FAAC-4:DMAA=2:98(モル%)という結果が得られた。
【0028】
参考例2〜6、参考例1116
参考例1において、含フッ素モノマー〔I〕およびそのコモノマー〔II〕の種類および使用量(単位:g)、重合開始剤(V-65)の使用量(単位:g)を種々変更し、下記表1(参考例1〜6)および表2(参考例11〜16)に示されるような結果を得た。なお、表1には、参考例1の結果も併記されている。また、PDE 100を共重合させた含フッ素オリゴマーは、GPC移動相に不溶性のため、Mnの測定ができない。
(含フッ素モノマー)
FAAC-6:CF3(CF2)5(CH2)2OCOCH=CH2
FAAC-8:CF3(CF2)7(CH2)2OCOCH=CH2
DTFAC:CF3(CF2)3CH2(CF2)5(CH2)2OCOCH=CH2
DTFMAC:CF3(CF2)3CH2(CF2)5(CH2)2OCOC(CH3)=CH2
(コモノマー)
PDE 100:ジエチレングリコールジメタクリレート
ACA:アクリル酸
【0029】
また、表1〜2には、生成した含フッ素オリゴマー白色粉末について、動的光散乱法で測定した粒子径(単位:nm)およびその分布、各種溶媒に1重量%で分散させたときの分散性を目視で観察し、下記評価基準にしたがって評価した。なお、溶媒分散性は、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジメチルスルホキシドに対してはいずれも○、トルエン、n-ヘキサンについてはいずれも×であるので、その記載を省略している。
○:均一に分散して、分散液は透明である
△:やや分散して、分散液は白濁である
×:分散せず、分散媒中に沈殿する
表1
参考例
〔モノマー、開始剤〕
含フッ素モノマー
FAAC-4 3.00 − − − − −
FAAC-6 − 3.02 − 3.05 − −
FAAC-8 − − 3.08 − 3.07 3.17
コモノマー
DMAA 27.37 27.07 27.01 27.05 − −
PDE 100 − − − 5.0 − 5.07
ACA − − − − 27.12 27.04
重合開始剤
V-65 3.04 3.11 3.27 3.00 3.33 3.20
〔含Fオリゴマー〕
収率 (%) 90.0 87.3 77.8 71.0 106.5 97.1
Mn 801 2078 2202 − 1032 −
Mn/Mw 1.74 1.01 1.03 − 1.02 −
共重合割合 (モル%)
含フッ素モノマー 2 13 6 3 3 5
DMAA 98 87 94 93 − −
PDE100 − − − 4 − 12
ACA − − − − 97 83
粒子径
平均値 64.5 87.0 106 17.2 41.9 76.7
平均値± 9.8 11.4 17.6 2.4 4.2 9.8
溶媒分散性
アセトン ○ ○ ○ ○ △ ○
テトラヒドロフラン ○ ○ ○ ○ ○ ○
酢酸エチル ○ ○ ○ ○ × △
クロロホルム ○ ○ ○ ○ × ×
ClCH2CH2Cl ○ ○ ○ ○ △ ×
AK-225 ○ △ ○ ○ × △

表2
参考例 11 12 13 14 15 16
〔モノマー、開始剤〕
含フッ素モノマー
DTFAC 3.10 3.02 3.31 − 3.27 −
DTFMAC − − − 3.21 − 3.04
コモノマー
DMAA 27.22 27.14 − − − −
PDE 100 − 5.04 − − 5.21 5.04
ACA − − 27.45 27.09 27.06 27.04
重合開始剤
V-65 3.07 3.06 3.02 3.01 3.06 3.04
〔含Fオリゴマー〕
収率 (%) 99.3 107.5 112.7 93.8 105.8 95.2
Mn 2107 − 1142 667 − −
Mn/Mw 1.09 − 1.00 1.82 − −
共重合割合 (モル%)
含フッ素モノマー 7 3 1 16 1 4
DMAA 93 93 − − − −
PDE100 − 4 − − 5 2
ACA − − 99 84 94 94
粒子径
平均値 35.4 41.1 41.8 126 54.6 33.0
平均値± 8.0 11.7 3.8 13.1 12.4 9.7
溶媒分散性
アセトン ○ ○ △ △ ○ △
テトラヒドロフラン ○ ○ ○ ○ ○ ○
酢酸エチル ○ ○ △ △ × △
クロロホルム ○ ○ △ △ × △
ClCH2CH2Cl ○ ○ △ △ × △
AK-225 ○ ○ △ △ × △
注1)AK-225:AGC社製品:1,1-ジクロロ-2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロパ
ンと1,3-ジクロロ-1,2,2,3,3-ペンタフルオロプ
ロパンとの等量混合物
注2)収率100%以上のものには、溶媒が含有されていると考えられる
【0030】
実施例
参考例3で得られた含フッ素オリゴマー(FAAC-8-DMAA共重合体)0.25gに、シリカゾル(日産化学製品メタノールシリカゾル;30重量%ナノシリカ含有、平均粒子径11nm)1.67g(ナノシリカとして0.50g)およびメタノール20mlを加え、さらにテトラエトキシシラン(東京化成製品;密度0.93g/ml)0.25mlおよび25重量%アンモニウム水0.25mlを攪拌条件下で加えて、5時間反応させた。
【0031】
白色の溶液である反応混合物からエパポレータを用いてメタノールおよびアンモニウム水を除去し、取り出された白色粉末をメタノール10mlを加えて一夜再分散させ、これを遠心分離した後メタノールでリンスを行い、得られた粉末を70℃のオーブン中で乾燥させ、次いで50℃で真空乾燥した。ナノシリカコンポジット粒子である白色粉末0.507g(収率62%)が得られた。
【0032】
得られた白色粉末について、白色粉末1gを1Lのメタノールに分散させた状態で、動的光散乱(DLS)法により粒子径を測定すると共に、重量減を次のような方法で測定した。すなわち、TGA(ブルカー・AXS社製TG-DTA2000SA)により、昇温速度10℃/分で800℃迄加熱した際の重量減少率(初期重量に対する減少重量の百分比)を測定した。
【0033】
比較例
実施例において、含フッ素オリゴマーとして参考例5で得られた含フッ素オリゴマー(FAAC-8-ACA共重合体オリゴマー)が同量(0.25g)用いられた。
【0034】
参考例21
実施例において、含フッ素オリゴマーとして参考例11で得られた含フッ素オリゴマー(DTFAC-DMAA共重合体オリゴマー)が同量(0.25g)用いられた。
【0035】
参考例22
実施例において、含フッ素オリゴマーとして参考例13で得られた含フッ素オリゴマー(DTFAC-ACA共重合体オリゴマー)が同量(0.25g)用いられた。
【0036】
参考例23
実施例において、含フッ素オリゴマーとして参考例14で得られた含フッ素オリゴマー(DTFMAC-ACA共重合体オリゴマー)が同量(0.25g)用いられた。
【0037】
以上の実施例、比較例および参考例21〜23で得られた測定結果は、ナノシリカコンポジット粒子の生成量および収率と共に、次の表3に示される。
表3
ナノシリカコンポジット粒子
生成量(g) 収率(%) 粒子径(nm) 重量減(%)
実施例 0.507 62 49.6±12.4 19
比較例 0.572 70 45.3±10.4 8
参考例21 0.646 79 51.9±14.4 10
〃 22 0.507 62 30.9± 6.4 20
〃 23 0.580 71 41.2±18.0 13