特許第6203340号(P6203340)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6203340食品包装容器の二重シール密封方法および食品包装容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6203340
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】食品包装容器の二重シール密封方法および食品包装容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/34 20060101AFI20170914BHJP
   B65B 55/14 20060101ALI20170914BHJP
   B65D 77/20 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   B65D81/34 U
   B65B55/14
   B65D77/20 G
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-145923(P2016-145923)
(22)【出願日】2016年7月26日
【審査請求日】2016年8月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】593118933
【氏名又は名称】フジフーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074251
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100066223
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 政美
(72)【発明者】
【氏名】矢辺 啓司
【審査官】 佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−213483(JP,A)
【文献】 特開2009−120247(JP,A)
【文献】 特開2005−59860(JP,A)
【文献】 特表2012−505797(JP,A)
【文献】 特開2012−166851(JP,A)
【文献】 特開2001−63775(JP,A)
【文献】 特開平7−257662(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/013193(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/056690(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/34
B65B 55/14
B65D 77/20
B65B 55/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を収容した後に容器本体の開口部上縁に形成されたフランジ部の全周にわたって設けられた外側ヒートシール部および内側ヒートシール部に蓋フィルム材を接着することにより二重シールとなって密封され、両ヒートシール部の間にて上下方向に揺動可能となした開閉フラップ弁を備えた食品包装容器の二重シール密封方法であって、容器本体の内部に調理前もしくは調理後の食品が収容され、外側ヒートシール部に蓋フィルム材を熱融着で接着して密封する外側シール工程と、容器本体を電磁波加熱装置に収納して食品の加熱調理もしくは殺菌処理を行ない、食品から発生した蒸気の圧力が所定値以上になったところで開閉フラップ弁が開放されて蒸気を開閉フラップ弁から外部へ放出させる加熱調理・殺菌処理工程と、加熱調理と殺菌処理が終わった直後から食品に蓋フィルム材がシュリンクし、内部が陰圧になることで開閉フラップ弁が閉まり、外部と遮断した時点で内側ヒートシール部に蓋フィルム材を、外側ヒートシール部と蓋フィルム材との間の接着力よりも小さく設定した熱融着によって接着する内側シール工程とを備えることを特徴とする食品包装容器の二重シール密封方法。
【請求項2】
内側シール工程は、開閉フラップ弁の近傍のみにおいて、内側ヒートシール部と蓋フィルム材との接着力が外側ヒートシール部と蓋フィルム材との間の接着力よりも小さく設定した熱融着によって接着するものとした請求項1記載の食品包装容器の二重シール密封方法。
【請求項3】
食品を収容した容器本体の開口部上縁に設けられたフランジ部に蓋フィルム材を二重に接着することにより密封される食品包装容器であって、容器本体の開口部上縁のフランジ部全周にわたって設けられた断面凸状の外側ヒートシール部と、外側ヒートシール部からフランジ部の内側に位置させてフランジ部2全周にわたって連設され、外側ヒートシール部と蓋フィルム材との間の接着力よりも小さく設定し、加熱による容器本体内部の蒸気の圧力が所定値以上になったところで蓋フィルム材の接着が破壊されるものとした断面凸状の内側ヒートシール部と、両ヒートシール部の間にて上下方向に揺動可能となし、食品から発生した蒸気の圧力によって揺動開放させて蒸気を外部へ放出可能とし、加熱によって蒸気を外部へ放出させた後の容器本体の内部陰圧時には自体の弾性復元力によって揺動復帰し閉止させ外部との通気を遮断可能にした開閉フラップ弁とを備えたことを特徴とする食品包装容器。
【請求項4】
開閉フラップ弁は、容器本体の開口部上縁の前記フランジ部の180°対称位置にて当該フランジ部よりも幅広となって形成された区画部分における前記両ヒートシール部の間に設けられてなる請求項3記載の食品包装容器。
【請求項5】
内側ヒートシール部は、前記開閉フラップ弁を配した区画部分のみにおいて、外側ヒートシール部と蓋フィルム材との間の接着力よりも小さく設定してなる請求項3または4のいずれか記載の食品包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジ機器で加熱、再調理される各種の食品において、その製造、流通販売、購入、加熱調理、喫食の各段階で例えば1食分の分量で収納封入される食品包装容器によってそれぞれが個別処理されるに際し、製造段階から喫食段階に至るまで衛生的に処理でき、特に食品工場、加熱調理・殺菌処理工場等において食品を収容した食品包装容器の加熱料理・殺菌処理後の一時保管および例えばコンビニエンスストア、スーパーマーケットストア等への出荷・陳列販売時等で、食品包装容器の開口部上縁に蓋フィルム材を内外二重となって接着し密封されていることにより、保管・出荷上の衛生面での品質向上を図ることができ、また喫食加熱時での容器の破損等をも防止できる食品包装容器の二重シール密封方法および食品包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子レンジ機器等による食品加熱時の蒸気や、発酵食品等の保存時の炭酸ガスなどのように食品から発生する蒸気を外部に放出することのできる各種の食品包装容器が知られている。その中で特許文献1に開示されているように、容器本体の開口部上縁のフランジ部に上下方向に貫設した蒸気抜孔を備え、容器本体の内部の圧力が所定値以上になったところで蒸気抜孔と蓋フィルム材の下面との間のみで接着が破壊され、食品から発生した蒸気を蒸気抜孔から外部へ放出することができる包装容器が提案されている。
【0003】
この特許文献1によれば、容器本体の開口部上縁のフランジ部全周にわたって設けた開口部側ヒートシール部と、開口部側ヒートシール部の一部から容器本体の内側に位置させて連設した内側ヒートシール部とによって囲繞形成したフランジ部の区画部分内に蒸気抜孔を設けている。そして、加熱による容器本体の内部蒸気圧が所定値以上になると内側ヒートシール部上面と蓋フィルム材下面との接着のみを破壊し、食品から発生した蒸気を蒸気抜孔から外部へ放出できる構成にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−23682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記した特許文献1によれば、食品製造工場等の食品工場においては容器本体内に調理後もしくは調理前の食品を入れて樹脂フィルム材でシーリングし、例えばマイクロ波等の電磁波照射による加熱調理や殺菌処理等を行う必要がある。また、加熱処理時では樹脂フィルム材が膨張して蒸気抜孔から食品に発生した蒸気を逃がし、加熱調理や殺菌処理等の終了後には陰圧で両ヒートシール部に樹脂フィルム材が張り付いた状態となっている。このような陰圧による密封状態となっていても、食品工場における冷蔵・冷凍庫内での一時保管や例えばコンビニエンスストア、スーパーマーケットストア等への出荷・陳列販売の際には、常に開放されている蒸気抜孔の存在によって、食品の臭気に呼び寄せられた害虫等が蒸気抜孔から侵入し、内側ヒートシール部上面と蓋フィルム材下面との隙間から容器本体の内部に入り込み、食品を腐敗させてしまう虞がある。
【0006】
そこで本発明は叙上のような従来存した諸事情に鑑み創出されたもので、その目的は、食品工場、加熱調理・殺菌処理工場等において食品を収容し加熱調理や殺菌処理等の終了後に、外側ヒートシール部の内側に位置させて連設した内側ヒートシール部上面と蓋フィルム材下面との隙間から容器本体内へ害虫等が侵入するのを防止できるものとし、食品工場等における冷蔵・冷凍庫内での一時保管や例えばコンビニエンスストア、スーパーマーケットストア等への出荷・陳列販売の際における衛生面での品質向上を図ることができると共に、喫食加熱調理時における蒸気圧による容器の破損・歪形等を防止できる食品包装容器の二重シール密封方法および食品包装容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、本発明に係る食品包装容器の二重シール密封方法にあっては、食品Qを収容した後に容器本体1の開口部上縁に形成されたフランジ部2の全周にわたって設けられた外側ヒートシール部4および内側ヒートシール部5に蓋フィルム材3を接着することにより二重シールとなって密封され、両ヒートシール部4,5の間にて上下方向に揺動可能となした開閉フラップ弁6を備えた食品包装容器の二重シール密封方法であって、容器本体1の内部に調理前もしくは調理後の食品Qが収容され、外側ヒートシール部4に蓋フィルム材3を熱融着で接着して密封する外側シール工程Bと、容器本体1を電磁波加熱装置に収納して食品Qの加熱調理もしくは殺菌処理を行ない、食品Qから発生した蒸気Gの圧力が所定値以上になったところで開閉フラップ弁6が開放され、蒸気Gを開閉フラップ弁6から外部へ放出させる加熱調理・殺菌処理工程Cと、加熱調理と殺菌処理が終わった直後から食品Qに蓋フィルム材3がシュリンクし、内部が陰圧になることで開閉フラップ弁6が閉まり、外部と遮断した時点で内側ヒートシール部5に蓋フィルム材3を、外側ヒートシール部4と蓋フィルム材3との間の接着力よりも小さく設定した熱融着によって接着する内側シール工程Dとを備えることを特徴とする。
内側シール工程Dは、開閉フラップ弁6の近傍のみにおいて、内側ヒートシール部5と蓋フィルム材3との接着力が外側ヒートシール部4と蓋フィルム材3との間の接着力よりも小さく設定した熱融着によって接着するものとすることができる。
また、本発明に係る食品包装容器にあっては、食品Qを収容した容器本体1の開口部上縁に設けられたフランジ部2に蓋フィルム材3を二重に接着することにより密封されるものとした食品包装容器であって、容器本体1の開口部上縁のフランジ部2全周にわたって設けられた断面凸状の外側ヒートシール部4と、外側ヒートシール部4からフランジ部2の内側に位置させてフランジ部2全周にわたって連設され、外側ヒートシール部4と蓋フィルム材3との間の接着力よりも小さく設定し、加熱による容器本体1内部の蒸気Gの圧力が所定値以上になったところで蓋フィルム材3の接着が破壊されるものとした断面凸状の内側ヒートシール部5と、両ヒートシール部4,5の間にて上下方向に揺動可能となし、食品Qから発生した蒸気Gの圧力によって下方向に揺動開放させて蒸気Gを外部へ放出可能とし、加熱によって蒸気Gを外部へ放出させた後の容器本体1の内部陰圧時には自体の弾性復元力によって揺動復帰し閉止させ外部との通気を遮断可能にした開閉フラップ弁6とを備えたことを特徴とする。
また、前記開閉フラップ弁6は、容器本体1の開口部上縁の前記フランジ部2の180°対称位置にて当該フランジ部2よりも幅広となって形成された区画部分7における前記両ヒートシール部4,5の間に設けられてなるものとすることができる。
内側ヒートシール部5は、前記開閉フラップ弁6を配した区画部分7のみにおいて、外側ヒートシール部4と蓋フィルム材3との間の接着力よりも小さく設定してなるものとすることができる。
【0008】
以上のように構成された本発明に係る食品包装容器の二重シール密封方法にあって、食品工場等での加熱調理・殺菌処理工程Cにおいて、容器本体1の食品Qから発生した加熱による蒸気Gの所定値以上の圧力によって開閉フラップ弁6を揺動開放させ、容器本体1の内部の蒸気Gを外部へ放出させる。また、加熱後の容器本体1の内部陰圧時には開閉フラップ弁6を自体の弾性復元力によって揺動復帰して閉止させ、外部との通気を遮断させる。
食品工場等での内側シール工程D後にコンビニエンスストア、スーパーマーケットストア等へ出荷され、顧客が購入し喫食される際に電子レンジ機器によって容器本体1を温めるとき、食品Qから発生した蒸気Gの圧力によって内側ヒートシール部5の上面と蓋フィルム材3の下面との間のみで接着が破壊されると同時に開閉フラップ弁6の揺動によって開放され、蒸気Gを外部へ放出させ、容器本体1を蒸気圧力によって破損・歪形させない。
食品工場等での内側シール工程Dにおいて、内側ヒートシール部5と外側ヒートシール部4と蓋フィルム材3との間の接着力よりも小さく設定した内側ヒートシール部5が開閉フラップ弁6の近傍のみにおいて形成されることで、購入後の喫食の段階で電子レンジ機器によって容器本体1を温めるとき、開閉フラップ弁6の近傍以外での外側ヒートシール部4と内側ヒートシール部5との強い二重シールによって、食品Qから発生した蒸気Gの圧力に対する強靭性を向上させる。
本発明に係る食品包装容器にあって、開閉フラップ弁6は、購入後の喫食の段階で電子レンジ機器によって容器本体1を温めるとき、容器本体1の食品Qから発生した加熱による蒸気Gの所定値以上の圧力によって揺動開放され、フランジ部2の区画部分7において容器本体1の内部の蒸気Gを外部へ放出させる。また、加熱後の容器本体1の内部陰圧時には開閉フラップ弁6を自体の弾性復元力によって揺動閉止させ、外部との通気を遮断させる。
また、容器本体1の内部陰圧時での開閉フラップ弁6の閉止方向への弾性復帰により、食品工場等から例えばコンビニエンスストア、スーパーマーケットストア等への出荷・陳列販売等に際し、食品Qが外部に漏れ出ることを防止させると共に、内側ヒートシール部5上面と蓋フィルム材3下面との隙間から容器本体1内へ害虫等が侵入するのを防止させる。
さらに、容器本体1の開口部上縁のフランジ部2の180°対称位置の当該フランジ部2よりも幅広な区画部分7に設けられた開閉フラップ弁6は、高圧の蒸気Gをフランジ部2の180°対称位置から円滑、均等にしかも効率良く外部に排気させ、また、蒸気圧力による容器本体1の破損・歪形等を防止させる。
内側ヒートシール部5は、前記開閉フラップ弁6を配した区画部分7のみにおいて、外側ヒートシール部4と蓋フィルム材3との間の接着力よりも小さく設定してなることで、購入後の喫食の段階で電子レンジ機器によって食品Qを温めるとき、区画部分7における内側ヒートシール部5から蓋フィルム材3が剥離されると同時に開閉フラップ弁6が開放され、これによってフランジ部2の区画部分7において容器本体1の内部の蒸気Gを外部へ放出させるための通気路を形成させると同時に食品Qから発生した蒸気Gの圧力による区画部分7以外の内外シール部の強靭性を向上させ、しかも過剰な蒸気の排出によって容器本体1自体の破損等をも防止させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は以上説明したように構成されているため、食品工場、加熱調理・殺菌処理工場等において食品Qを収容し加熱調理や殺菌処理等の終了後に、外側ヒートシール部4の内側に位置させて連設した内側ヒートシール部5上面と蓋フィルム材3下面との隙間から容器本体1内へ害虫等が侵入するのを防止できる。また、例えば食品工場等における冷蔵・冷凍庫内での一時保管や例えばコンビニエンスストア、スーパーマーケットストア等への出荷・陳列販売の際における衛生面での品質向上を図ることができ、喫食時の電子レンジ等による加熱調理時には、内部で発生した過剰な蒸気を容器外にスムーズに排気でき、容器自体の損傷、歪形等を防止することができる。
【0010】
すなわちこれは本発明に係る食品包装容器の二重シール密封方法が、容器本体1の内部に調理前もしくは調理後の食品Qが収容され、外側ヒートシール部4に蓋フィルム材3を熱融着で接着して密封する外側シール工程Bと、容器本体1を電磁波加熱装置に収納して食品Qの加熱調理もしくは殺菌処理を行ない、食品Qから発生した蒸気Gの圧力が所定値以上になったところで開閉フラップ弁6が開放され、食品Qから発生した蒸気Gを開閉フラップ弁6から外部へ放出させる加熱調理・殺菌処理工程Cと、加熱調理と殺菌処理が終わった直後から食品Qに蓋フィルム材3がシュリンクし、内部が陰圧になることで開閉フラップ弁6が閉まり、外部と遮断した時点で内側ヒートシール部5に蓋フィルム材3を、外側ヒートシール部4と蓋フィルム材3との間の接着力よりも小さく設定した熱融着によって接着する内側シール工程Dとを備えたからである。これによって、蓋フィルム材3を破断させずに開閉フラップ弁6を介して加熱による高圧の蒸気Gを外部に容易に逃がすことができ、加熱終了後には自体の弾性復元力によって揺動復帰し閉止させ、外部との通気を遮断させることで容器本体1内への害虫等の侵入を確実に阻止し、また過剰な蒸気圧力による容器本体1の破損・歪形等をも防止することができる。
【0011】
具体的には、先ず外側シール工程Bにおいて、容器本体1の内部に調理前もしくは調理後の具材等の食品Qが収容され、外側ヒートシール部4に蓋フィルム材3を熱融着で接着して密封しておき、加熱調理・殺菌処理工程Cにおいて、容器本体1を電磁波加熱装置に収納して加熱調理もしくは殺菌処理等を行うと、食品Qから発生した蒸気Gの圧力が所定値以上になったところで開閉フラップ弁6は例えば略U字状の切り込み部分を介して揺動し開放され、食品Qから発生した蒸気は当該食品Qを蒸らしながら開閉フラップ弁6から外部へ放出させることができる。これにより、容器本体1の熱変形や蓋フィルム材3の破損はなく、食品Qに熱が充分に廻った状態とすることができる。
【0012】
そして、加熱が終了すると、容器本体1の内部陰圧時には開閉フラップ弁6を自体の弾性復元力によって揺動復帰して閉止させ、外部との通気が遮断されることによって、容器本体1内への害虫等の侵入防止と共に、食品Qの外部への漏出を未然に防止することができる。
【0013】
また加熱終了の直後には、内側シール工程Dにおいて、内側ヒートシール部5に蓋フィルム材3を熱融着で接着する。このとき、内側ヒートシール部5に対する蓋フィルム材3の接着力が外側ヒートシール部4の接着力よりも小さく設定されているため、最終的に喫食する際に電子レンジ等によって容器本体1を温めるとき、食品Qから発生した蒸気Gの圧力によって内側ヒートシール部5の上面と蓋フィルム材3の下面との間のみで接着が破壊されると同時に開閉フラップ弁6はその揺動によって開放され、蒸気Gを外部へ円滑に放出することができる。
【0014】
内側シール工程Dは、開閉フラップ弁6の近傍のみにおいて、内側ヒートシール部5と蓋フィルム材3との接着力が外側ヒートシール部4と蓋フィルム材3との間の接着力よりも小さく設定した熱融着によって接着するものとしたので、開閉フラップ弁6の近傍においてのみ内側ヒートシール部5だけが弱シールで、開閉フラップ弁6の近傍以外は外側ヒートシール部4と内側ヒートシール部5とが二重の強シールとなって、食品Qから発生した蒸気Gの圧力に対する強靭性を向上させることができる。
【0015】
また、本発明に係る食品包装容器においては、容器本体1の開口部上縁のフランジ部2全周にわたって設けられた断面凸状の外側ヒートシール部4と、外側ヒートシール部4からフランジ部2の内側に位置させてフランジ部2全周にわたって連設され、外側ヒートシール部4と蓋フィルム材3との間の接着力よりも小さく設定し、加熱による容器本体1内部の蒸気Gの圧力が所定値以上になったところで蓋フィルム材3の接着が破壊されるものとした断面凸状の内側ヒートシール部5と、両ヒートシール部4,5の間にて上下方向に揺動可能となし、食品Qから発生した蒸気Gの圧力によって揺動開放させて蒸気Gを外部へ放出可能とし、加熱によって蒸気Gを外部へ放出させた後の容器本体1の内部陰圧時には自体の弾性復元力によって揺動復帰し閉止させ外部との通気を遮断可能にした開閉フラップ弁6とを備えたので、蓋フィルム材3を破断させずに開閉フラップ弁6を介して加熱による高圧の蒸気Gを外部に容易に逃がすことができ、加熱終了後には自体の弾性復元力によって上方向に揺動復帰し閉止させ、外部との通気を遮断させることで容器本体1内への害虫等の侵入を確実に防止することができると共に、食品Qが外部に漏れ出てしまうのを未然に防止することができる。
【0016】
さらに、前記開閉フラップ弁6は、容器本体1の開口部上縁の前記フランジ部2の180°対称位置にて当該フランジ部2よりも幅広となって形成された区画部分7における前記両ヒートシール部4,5の間に設けられてなるので、高圧の蒸気Gをフランジ部2の180°対称位置から円滑、均等にしかも効率良く外部に逃がすことができる。
【0017】
内側ヒートシール部5は、前記開閉フラップ弁6を配した区画部分7のみにおいて、外側ヒートシール部4と蓋フィルム材3との間の接着力よりも小さく設定してなるので、区画部分7においてのみ内側ヒートシール部5だけは弱シールで、区画部分7以外は外側ヒートシール部4と内側ヒートシール部5とが二重の強シールとなることから、購入後の喫食の段階で電子レンジ機器によって容器本体1を温めるとき、食品Qから発生した蒸気Gの圧力による区画部分7以外での内外シール部の破断を確実に防止することができ、過剰な蒸気の外部への排気によって容器本体1を破損させたり、歪形させたりさせず、これらを防止することができる。
【0018】
尚、上記の課題を解決するための手段、発明の効果の項それぞれにおいて付記した符号は、図面中に記載した構成各部を示す部分との参照を容易にするために付した。本発明は、これらの記載、図面中の符号等によって示された構造・形状等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明を実施するための最良の形態における食品包装容器の二重シール密封方法の一例を示すもので食品工場、加熱処理・殺菌処理工場等での作業手順の一例を示す工程図である。
図2】食品包装容器の一例を示す分解斜視図である。
図3】同じく食品包装容器の一部切欠平面図である。
図4図2中におけるX−X線断面図である。
図5】同じく図2中におけるX−X線の一部を省略した断面図を示し、(a)は外側シール工程での食品包装容器の外側ヒートシール部に蓋フィルム材を接着して封じた状態の断面図、(b)は加熱調理・殺菌処理工程での食品包装容器の内圧が上昇して開放された開閉フラップ弁から蒸気を放出している状態の断面図、(c)は内側シール工程での食品包装容器の内側ヒートシール部に蓋フィルム材を接着した状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の一形態を説明すると、図において示される符号1は、食品工場、加熱処理・殺菌処理工場等において例えば加熱調理や殺菌処理等のために例えばマイクロ波等の不図示の電磁波加熱装置等を利用する際に、蒸気Gを発生する食材、惣菜等や、炭酸ガス等を発生する可能性のある発酵食品等の各種の食品Qが収容される本発明の食品包装容器を構成する容器本体であり、容器本体1自体で、加熱調理前の食品Qを収納した状態で加熱調理・殺菌処理の他に、加熱調理・殺菌処理後の冷却保管・出荷・陳列販売、さらには購入後の電子レンジ機器による再度の加熱等が行われるようになっている。
【0021】
すなわち、図1に示すように、食品工場等において、用意された容器本体1内に未調理(加熱することで喫食可能な状態となっている)の具材、あるいは調理済み食品等である食品Qを投入する食品投入工程Aと、食品Qの投入後に樹脂フィルム製の蓋フィルム材3にて施蓋し、この蓋フィルム材3を容器本体1の後述する開口部上縁に設けたフランジ部2の外側ヒートシール部4に熱融着で強力に接着して密閉する外側シール工程Bと、外側シール工程B後の容器本体1を例えばマイクロ波等の電磁波加熱装置に収納して食品Qの加熱調理もしくは殺菌処理等を行う加熱調理・殺菌処理工程Cと、加熱調理・殺菌処理工程C後において、前記フランジ部2の外側ヒートシール部4内側に設けた内側ヒートシール部5に蓋フィルム材3を熱融着で外側シールよりも弱く接着する内側シール工程Dと、内側シール工程D後に冷蔵あるいは冷凍状態で倉庫等に一時保管する冷却保管工程Eと、例えばコンビニエンスストア、スーパーマーケットストア等で陳列販売されるように、冷蔵あるいは冷凍状態を維持したままで所定箇所に出荷(運搬・輸送)される運搬・輸送工程Fとを有している。
【0022】
なお、食品Qの容器本体1内への投入に際し、それらは後日、単に加熱すればそのまま喫食可能なように盛り付けられていることが望ましく、例えば茶碗蒸し、炊き込みご飯等の形態として提供されるように、所要の食品Qが加熱調理前の状態で、また所定の味付けがなされるように収納しておく。前記容器本体1を使用した一連の処理工程においては、これが多数にして一括して処理されるように例えば不図示のベルトコンベアによって搬送されるものとしてある。また、本例においては加熱調理・殺菌処理工程Cでマイクロ波による電磁波加熱装置を使用しているが、この他、スチーム(加熱蒸気)装置を使用しても良い。
【0023】
容器本体1は、喫食する際の例えば1食分の分量の食品Qを収納するに足りる容量を有するボックス・器状の耐熱性、耐冷性、例えば−30℃〜+120℃の温度変化に耐え得る一定以上の剛性を有する素材で、所定肉厚の合成樹脂にて形成されている。具体的には容器本体1は例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂等のプラスチックの平均肉厚が約1.5mm程度の射出成形品であり、成形性・剛性・ヒートシール性等の観点からポリプロピレンが特に好適に使用される。このとき、耐熱性が要求される場合にはタルクなどの無機フィラーを配合したポリプロピレンを使用することが好ましく、これによって殺菌処理も可能となる。
【0024】
容器本体1の開口部上縁は、図2および図3に示すように、平面からみて例えば略楕円形状に形成されており、開口部上縁の全周からは水平方向に向けて所定幅のフランジ部2が突設されている。このフランジ部2の外縁全周に沿って上向き断面凸状の外側ヒートシール部4が形成されており、図4および図5(a)に示すように、容器本体1内に食品Qを収容してから外側ヒートシール部4に蓋フィルム材3を接着して密封されるものとしてある。
【0025】
蓋フィルム材3は、二軸延伸ポリプロピレンからなる基材層とポリアクリロニトリル樹脂からなる酸素バリア樹脂層とポリエチレン樹脂からなるヒートシール層とがこの順番に積層されたものであり、全体の厚みは0.09mmである。そして、このポリエチレン樹脂からなる面が容器本体1の外側ヒートシール部4に接するようにヒートシールされる。
【0026】
また、フランジ部2の外側ヒートシール部4に対応してこの内側には、開口部上縁に沿うようフランジ部2全周にわたって断面凸状の内側ヒートシール部5が連設され、開口部上縁の180°対称位置には平面からみて略矩形状の幅広な区画部分7が形成されている。前記外側ヒートシール部4はこの区画部分7の外縁に沿って略コ字状に延びており、これによって区画部分7の上面は両ヒートシール部4,5によって囲繞された状態となっている。この幅広な区画部分7内の両ヒートシール部4,5によって囲繞された略中央には例えば略U字状等の切り込み線によって形成されてなる開閉フラップ弁6を設けてあって、この開閉フラップ弁6は図示のように容器本体1に設けられたり、あるいは図示を省略したが蓋フィルム材3に設けられたりする。
【0027】
この開閉フラップ弁6は、容器本体1の食品Qから発生した加熱による内部蒸気圧が所定値以上の圧力に達したときに略U字状の切り込み部分を介して、容器本体1に設けられたときは下方向に、蓋フィルム材3に設けられたときは上方向に揺動開放し、フランジ部2の区画部分7において容器本体1内部の蒸気Gを外部へ放出させるものとしてある。また、加熱調理や殺菌処理後の容器本体1の内部陰圧時には開閉フラップ弁6を自体の弾性復元力によって略U字状の切り込み線を介して、容器本体1に設けられたときは上方向に、蓋フィルム材3に設けられたときは下方向に揺動復帰し閉止させ、外部との通気を遮断するものとしてある。
【0028】
そして、図5(c)に示すように、内側ヒートシール部5と蓋フィルム材3との間の接着力が、外側ヒートシール部4と蓋フィルム材3との間の接着力よりも小さく設定されている。こうすることで、容器本体1の内部圧力が所定値以上になったところで内側ヒートシール部5の上面と蓋フィルム材3の下面との間のみで接着が破壊され、食品Qから発生した蒸気Gを開閉フラップ弁6から外部へ放出させるようにしてある。
【0029】
このように、開閉フラップ弁6は、例えば平面でU字形を呈する切り込み線によって形成され、区画部分7に連続する基部を支点として蒸気圧によって揺動開閉し、開放時には容器本体1外へ蒸気を放出させるようになっている。なお、この開閉フラップ弁6の形状は図示のようなU字形に限らず、ほぼ円形状であったり、ほぼ矩形状であったり、その他の形状であったりしても良く、特に限定されるものではない。
【0030】
また、前記開閉フラップ弁6を配した区画部分7のフランジ部2の周方向に沿っての幅に対応した内側ヒートシール部5のみが、外側ヒートシール部4と蓋フィルム材3との間の接着力よりも小さく設定しても良い。すなわち、開閉フラップ弁6のある区画部分7においてのみ内側ヒートシール部5だけが弱シールで、区画部分7以外では内側ヒートシール部5と外側ヒートシール部4とが二重の強シールとなっている。これによって、購入後の喫食の段階で電子レンジ機器によって容器本体1を温めるとき、区画部分7以外での外側ヒートシール部4と内側ヒートシール部5との強力な二重シール性を維持しつつ、区画部分7における内側ヒートシール部5から蓋フィルム材3が内部の蒸気Gの圧力で容易に剥離されると同時に開閉フラップ弁6が開放され、フランジ部2の区画部分7において容器本体1の内部の蒸気Gを外部へ放出させるための通気路が形成されるものとしている。
【0031】
なお、フランジ部2の両ヒートシール部4,5と蓋フィルム材3とを接着する方法としては特に熱融着に限定されないが、生産性や衛生性の観点からは熱または超音波等によってフィルム材料と容器材料とを融着させる方法が好ましく採用される。この蓋フィルム材3により密封する際に、内側ヒートシール部5に対する蓋フィルム材3の接着力を、外側ヒートシール部4に対する蓋フィルム材3の接着力よりも小さくなるように、蓋フィルム材3の熱シールの際に例えばシール温度またはシール圧力を設定する。
【0032】
また、蓋フィルム材3は単層フィルムであっても良いし、本例のように多層フィルムであっても良い。本例のように二軸延伸された樹脂層とヒートシール層とからなる積層体が、電子レンジ加熱に対する寸法精度とヒートシール性に優れて好適である。その厚みは容器形状等に対応して適当に設定されるが、弁機能を効率的に発揮するためには、容器本体1よりも肉薄であることが必要であり、好適には0.2mm以下、より好適には0.1mm以下である。
【0033】
次に、以上のように構成された最良の形態についての食品工場等における作業工程の一例について、図1および図4を参照して詳細に説明する。先ず、図1および図5(a)に示すように、食品投入工程Aにおいて、容器本体1の内部に調理後もしくは調理前の食品Qが収容され、外側シール工程Bにおいて外側ヒートシール部4に蓋フィルム材3を熱融着で接着して密封する。このとき、蓋フィルム材3による融着密封に際し、場合によっては容器本体1の内部の気体を不活性ガス等に置換する。
【0034】
加熱調理・殺菌処理工程Cにおいて、容器本体1を不図示の電磁波加熱装置に収納して食品Qの加熱調理もしくは殺菌処理等を行う。例えば水分を含んだ食品を食品Qとして収容した容器本体1を例えばマイクロ波等の電磁波加熱装置で加熱した場合には、図5(b)に示すように、容器本体1の内部において食品Qから発生した蒸気Gの圧力が所定値以上になったところで開閉フラップ弁6は略U字状の切り込み線を介して揺動し開放され、食品Qから発生した蒸気Gは当該食品Qを蒸らしながら開閉フラップ弁6から外部へ放出される。これにより、容器本体1の熱変形や蓋フィルム材3の破損はなく、熱が充分に廻ったところで電磁波加熱装置から容器本体1を取り出せば良い。
【0035】
加熱が終了すると、蒸気Gの凝縮および蓋フィルム材3の収縮等により容器本体1の内部空間の気圧が減少して大気圧よりも低い気圧となる。このように容器本体1の内部陰圧時には食品Qに蓋フィルム材3がシュリンクし、同時に開閉フラップ弁6を自体の弾性復元力によって略U字状の切り込み線を介して揺動復帰し閉止させ、外部との通気が遮断される。これにより、容器本体1内への害虫等の侵入防止と共に、食品Qの外部への漏出が防止される。
【0036】
図1および図5(c)に示すように、加熱終了の直後には、内側シール工程Dにおいて、内側ヒートシール部5に蓋フィルム材3を熱融着で接着する。このとき、内側ヒートシール部5に対する蓋フィルム材3の接着力を外側ヒートシール部4の接着力よりも小さくなるよう例えばシール温度またはシール圧力を設定する。これにより、両ヒートシール部4,5の二重のシールによって容器本体1の気密度の精度が増すものとなる。そして、冷却保管工程Eにおいて、冷蔵あるいは冷凍状態で倉庫等に一時保管される。
【0037】
図1に示すように、運搬・輸送工程Fにおいて、冷蔵あるいは冷凍状態を維持したまま食品工場等から例えばコンビニエンスストア、スーパーマーケットストア等へ出荷され、店内にて陳列販売される。
【0038】
購入後の喫食の段階では電子レンジ機器によって容器本体1を温める。このとき、食品Qから発生した蒸気Gの圧力によって内側ヒートシール部5の上面と蓋フィルム材3の下面との間のみで接着が破壊されると同時に開閉フラップ弁6の揺動によって開放され、蒸気Gを外部へ放出する。これにより、容器本体1の熱変形や蓋フィルム材3の破損はなく、熱が充分に廻ったところで電子レンジ機器から容器本体1を取り出し、最終的には蓋フィルム材3を剥がして喫食するものとなる。
【符号の説明】
【0039】
A…食品投入工程 B…外側シール工程
C…加熱調理・殺菌処理工程 D…内側シール工程
E…冷却保管工程 F…運搬・輸送工程
Q…食品 G…蒸気
1…容器本体 2…フランジ部
3…蓋フィルム材 4…外側ヒートシール部
5…内側ヒートシール部 6…開閉フラップ弁
7…区画部分
【要約】
【課題】加熱調理や殺菌処理等の終了後に内側ヒートシール部上面と蓋フィルム材下面との隙間から容器本体内へ害虫等が侵入するのを防止する。
【解決手段】食品Qを収容した容器本体1の外側ヒートシール部4に蓋フィルム材3を熱融着で接着して密封する外側シール工程と、容器本体1を電磁波加熱装置に収納して食品Qの加熱調理もしくは殺菌処理を行ない食品Qから発生した蒸気Gの圧力が所定値以上になったところで開閉フラップ弁6が開放し食品Qから発生した蒸気を開閉フラップ弁6から外部へ放出可能にした加熱調理・殺菌処理工程と、加熱調理と殺菌処理が終わった直後から食品Qに蓋フィルム材3がシュリンクし内部が陰圧になることで開閉フラップ弁6が閉まり、外部との通気を遮断した時点で内側ヒートシール部5に蓋フィルム材3を熱融着によって弱く接着する内側シール工程とを備える。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5