(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記液剤適用工程において、前記液剤を、粉体を含む化粧料が施された前記皮膚に形成された前記被膜上に施し、前記被膜の透明性を維持する請求項2又は3に記載の被膜の製造方法。
前記静電スプレー工程において、静電スプレー装置を用いて前記皮膚に前記組成物を静電スプレーして、繊維の堆積物からなる多孔性被膜を形成し、前記静電スプレー装置が、
前記組成物を収容する容器と、
前記組成物を吐出するノズルと、
前記容器中に収容されている前記組成物を前記ノズルに供給する供給装置と、
前記ノズルに電圧を印加する電源と、
を備える請求項1ないし5のいずれか一項に記載の被膜の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。本発明においては、粉体を含む化粧料が施された皮膚における、該化粧料が施された部位(以下、この部位のことを「化粧料適用部位」ともいう。)の上に、所定の成分を含む組成物を直接施して被膜を形成する。換言すれば、化粧料適用部位上に、いわゆるトップコートを施して、化粧料の表面を覆うことにより、該化粧料を保護している。これによって、化粧料適用部位が衣類等に擦過された場合であっても、衣類等への化粧料の色移りや付着が効果的に防止される。これに対して、先に背景技術の項で述べた特許文献1及び2に記載の技術は、静電スプレー法によって皮膚の表面に直接にファンデーションの被膜を形成することを開示するのにとどまり、形成されたファンデーションの被膜の保護に関しては何らの手当もなされていない。
【0011】
本発明においては、化粧料適用部位の全域にわたって被膜を形成することが、皮膚に接触する、衣類等の物体への化粧料の色移りや付着を確実に防止し、皮膚上に化粧料を保持させる観点から好ましい。しかし、場面に応じ、化粧料適用部位の一部にのみ被膜を形成してもよい。あるいは化粧料適用部位、及び化粧料を施していない部位の双方に跨がるように被膜を形成してもよい。
【0012】
本明細書において、「粉体を含む化粧料(以下、単に本発明における化粧料ともいう)」としては、メイクアップ化粧料、UV化粧料、美容液等の皮膚に好ましい効果を示す外用剤が挙げられる。メイクアップ化粧料としては、ベースメイクアップ化粧料、口唇化粧料、化粧下地、BBクリーム、CCクリーム等が挙げられる。ベースメイクアップ化粧料としては、ファンデーション、コンシーラー及び白粉が挙げられる。ベースメイクアップ化粧料は着色顔料や体質顔料等の粉体を含有し、その剤型、例えば液状、ジェル状、乳化物、又は固形であるかは本質的な相違にはならない。
【0013】
本発明において、粉体を含む化粧料中における粉体の含有量は、その目的に応じて異なるが、静電スプレー法によって形成された被膜と皮膚との密着性の向上の点から、0.1質量%以上が好ましく、100質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましい。また、本発明において、メイクアップ化粧料、UV化粧料、美容液等の皮膚に好ましい効果を提供する観点から、粉体は着色顔料やパール顔料であることが好ましい。本発明において、着色顔料とは、有色顔料と白色顔料を意味する。着色顔料の平均粒径は、同様の観点から、0.1μm以上のものが好ましく、0.1μmを超えるものがより好ましく、20μm以下のものが好ましく、15μm以下のものがより好ましい。なお、平均粒径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−910(堀場社製)で測定される個数平均粒径である。
【0014】
ベースメイクアップ化粧料に含有される着色顔料及び体質顔料としては、通常の化粧料に用いられるものであれば制限されない。例えば、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、タルク、セリサイト、マイカ、カオリン、ベンガラ、クレー、ベントナイト、雲母、チタン被膜雲母、オキシ塩化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化鉄、群青、酸化クロム、水酸化クロム、カラミン、カーボンブラック、チッ化ホウ素これらの複合体等の無機粉体;ポリアミド、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン、ビニル樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ケイ素樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ジビニルベンゼン・スチレン共重合体、シルクパウダー、セルロース、長鎖アルキルリン酸金属塩、N−モノ長鎖アルキルアシル塩基性アミノ酸、これらの複合体等の有機粉体;及び前記無機粉体と前記有機粉体との複合粉体などが挙げられる。これらの体質顔料や着色顔料は、着色しているか又は非着色(例えば、白色又は本質的に透明)であり、組成物又は皮膚に、着色、光の回折、油分吸収、半透明性、不透明性、光沢、光沢のない外観、すべすべ感などのうちの一つ以上の効果を提供し得る。
【0015】
また、本発明における化粧料に含有される着色顔料及び体質顔料としては、通常の化粧料に用いられるものであれば制限されない。例えば、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、タルク、セリサイト、マイカ、カオリン、ベンガラ、クレー、ベントナイト、雲母、チタン被膜雲母、オキシ塩化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化鉄、群青、酸化クロム、水酸化クロム、カラミン、カーボンブラック、チッ化ホウ素これらの複合体等の無機粉体;ポリアミド、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン、ビニル樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ケイ素樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ジビニルベンゼン・スチレン共重合体、シルクパウダー、セルロース、長鎖アルキルリン酸金属塩、N−モノ長鎖アルキルアシル塩基性アミノ酸、これらの複合体等の有機粉体;及び前記無機粉体と前記有機粉体との複合粉体などが挙げられる。これらの体質顔料や着色顔料は、着色しているか又は非着色(例えば、白色又は本質的に透明)であり、組成物又は皮膚に、着色、光の回折、油分吸収、半透明性、不透明性、光沢、光沢のない外観、すべすべ感などのうちの一つ以上の効果を提供し得る。
【0016】
なお、衣服への付着を効果的に防止できる観点から、化粧料として、着色顔料やパール顔料を含有する化粧料が好適であり、かかる着色顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、黄色酸化鉄、赤酸化鉄、黒酸化鉄、カーボンブラック、群青、紺青、紺青酸化チタン、黒色酸化チタン、酸化クロム、水酸化クロム、チタン・酸化チタン焼結物等の無機系顔料;赤色201号、赤色202号、赤色226号、黄色401号、青色404号等の有機顔料;赤色104号、赤色230号、黄色4号、黄色5号、青色1号等のレーキ顔料;有機顔料をポリメタクリル酸エステル等の高分子で被覆したものなどが挙げられる。また、パール顔料としては、雲母チタン、ベンガラ被覆雲母、オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化鉄被覆雲母チタン、有機顔料被覆雲母チタン、ケイ酸・チタン処理マイカ、酸化チタン被覆タルク、二酸化ケイ素・ベンガラ処理アルミニウム、酸化チタン被覆ガラス末等の無機粉体、薄片状のアルミニウム表面にポリエチレンテレフタレート等の有機樹脂を被覆したもの等が挙げられる。なお、これらの着色顔料、体質顔料、パール顔料としては、汗や皮脂に対する持続性等の観点から、フッ素化合物やシリコーン化合物により表面処理したものを用いることもできる。
【0017】
更に、衣服への付着を効果的に防止できる観点から、化粧料として、着色顔料やパール顔料を含有する化粧料が好適であり、かかる着色顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛等の無機系白色顔料、黄酸化鉄、赤酸化鉄、黒酸化鉄、カーボンブラック、群青、紺青、紺青酸化チタン、黒色酸化チタン、酸化クロム、水酸化クロム、チタン・酸化チタン焼結物等の無機系有色顔料;赤色201号、赤色202号、赤色226号、黄色401号、青色404号等の有機顔料;赤色104号、赤色230号、黄色4号、黄色5号、青色1号等のレーキ顔料;有機顔料をポリメタクリル酸エステル等の高分子で被覆したものなどが挙げられる。また、パール顔料としては、雲母チタン、ベンガラ被覆(酸化チタン・水酸化アルミニウム)混合物 、ベンガラ被覆雲母、オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化鉄被覆雲母チタン、有機顔料被覆雲母チタン、ケイ酸・チタン処理マイカ、酸化チタン被覆タルク、二酸化ケイ素・ベンガラ処理アルミニウム、酸化チタン被覆ガラス末等の無機粉体、薄片状のアルミニウム表面にポリエチレンテレフタレート、酸化チタン・黄酸化鉄・ベンガラ/メタクリル酸ラウリル・ジメタクリル酸EG共重合体混合物等の有機樹脂を被覆したもの等が挙げられる。
【0018】
中でも、着色顔料として、少なくとも酸化チタン、黄酸化鉄、赤酸化鉄、黒酸化鉄を含むことで、メイクアップ効果に優れつつ、衣服への付着性を効果的に防止できる。なお、これらの着色顔料、パール顔料としては、汗や皮脂に対する持続性等の観点から、疎水化処理して用いることもできる。疎水化処理としては、フッ素化合物処理、シリコーン化合物処理、アルキル処理、アルキルシラン処理、金属石鹸処理、水溶性高分子処理、アミノ酸処理、N−アシルアミノ酸処理、レシチン処理、有機チタネート処理、ポリオール処理、アクリル樹脂処理、メタクリ樹脂処理、ウレタン樹脂処理等の表面処理が好ましく、中でも、フッ素化合物やシリコーン化合物により表面処理したものがより好ましい。
【0019】
着色顔料やパール顔料は、1種又は2種以上を用いることができ、衣服への付着を効果的に防止できる観点から、含有量は、全組成中に0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましく、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、25質量%以下が更に好ましい。また、着色顔料やパール顔料は、全組成中に0.1〜40質量%が好ましく、0.5〜30質量%がより好ましく、1〜25質量%が更に好ましい。
【0020】
更に、メイクアップ化粧料は、着色顔料や体質顔料等の粉体に加え、25℃において液体の油、あるいは25℃で固体のワックス等を含有してもよい。更にメイクアップ化粧料に、増粘剤、皮膜剤、界面活性剤、糖、多価アルコール、水溶性高分子、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、アミノ酸、有機アミン、pH調整剤、皮膚コンディショニング剤、ビタミン、酸化防止剤、香料、防腐剤等の通常の成分を、本発明の効果を損なわない範囲で適宜含有することができる。
【0021】
UV化粧料としては、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤等の紫外線防御能を有する成分を含有することが好ましい。紫外線吸収剤としては、例えばジヒドロキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸塩、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノンジスルホン酸塩等のベンゾフェノン誘導体、メトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル等のメトキシ桂皮酸誘導体、から選ばれる1種又は2種以上の有機系紫外線吸収剤が好ましく、メトキシケイ皮酸2−エチルヘキシルがより好ましい。紫外線散乱剤としては、例えば平均粒径が0.1μm以下の微粒子からなる酸化亜鉛、酸化チタン及びシリカ等が挙げられる。なお、本発明における化粧料を皮膚に塗布する前、又はその後に、本発明における化粧料以外の化粧料等を皮膚に施してもよい。
【0022】
本発明においては、化粧料適用部位上に被膜を形成する方法として、静電スプレー法を採用している。静電スプレー法は、組成物に正又は負の高電圧を印加して該組成物を帯電させ、帯電した該組成物を対象物に向けて噴霧する方法である。噴霧された組成物はクーロン反発力によって微細化を繰り返しながら空間に広がり、その過程で、又は対象物に付着した後に、揮発性物質である溶媒が乾燥することで、対象物の表面に被膜を形成する。
【0023】
本発明において静電スプレー法に用いられる組成物(以下、この組成物のことを「噴霧用組成物」ともいう。)は、静電スプレー法が行われる環境下において液体のものである。この組成物は、以下の成分(a)及び成分(b)を含んでいる。
(a)水、アルコール及びケトンからなる群より選択される1種又は2種以上の揮発性物質。
(b)被膜形成能を有するポリマー。
以下、各成分について説明する。
【0024】
成分(a)の揮発性物質は、液体の状態において揮発性を有する物質である。噴霧用組成物において成分(a)は、電界内に置かれた該噴霧用組成物を十分に帯電させた後、ノズル先端から皮膚に向かって吐出され、成分(a)が蒸発していくと、噴霧用組成物の電荷密度が過剰となり、クーロン反発によって更に微細化しながら成分(a)が更に蒸発していき、最終的に乾いた被膜を形成させる目的で配合される。この目的のために、揮発性物質はその蒸気圧が20℃において0.01kPa以上、106.66kPa以下であることが好ましく、0.13kPa以上、66.66kPa以下であることがより好ましく、0.67kPa以上、40.00kPa以下であることが更に好ましく、1.33kPa以上、40.00kPa以下であることがより一層好ましい。
【0025】
成分(a)の揮発性物質のうち、アルコールとしては例えば一価の鎖式脂肪族アルコールや、一価の環式脂肪族アルコールや、一価の芳香族アルコールが好適に用いられる。それらの具体例としては、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、フェニルエチルアルコール、プロパノール、ペンタノールなどが挙げられる。これらのアルコールは、これらから選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。
【0026】
成分(a)の揮発物質のうち、ケトンとしては例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。これらのケトンは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
成分(a)の揮発性物質は、より好ましくはエタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、及び水から選ばれる1種又は2種以上であり、より好ましくはエタノール、及びブチルアルコールから選ばれる1種又は2種以上であり、更に好ましくはエタノールである。
【0028】
噴霧用組成物は、成分(a)とともに、成分(b)である被膜形成能を有するポリマーを含有する。成分(b)である被膜形成能を有するポリマーは、一般に、成分(a)の揮発性物質に溶解することが可能な物質である。ここで、溶解するとは20℃において分散状態にあり、その分散状態が目視で均一な状態、好ましくは目視で透明又は半透明な状態であることをいう。
【0029】
被膜形成能を有するポリマーとしては、成分(a)の揮発性物質の性質に応じて適切なものが用いられる。具体的には、被膜形成能を有するポリマーは水溶性ポリマーと水不溶性ポリマーとに大別される。本明細書において「水溶性ポリマー」とは、1気圧・23℃の環境下において、ポリマー1gを秤量したのちに、10gのイオン交換水に浸漬し、24時間経過後、浸漬したポリマーの0.5g以上が水に溶解する性質を有するものをいう。一方、本明細書において「水不溶性ポリマー」とは、1気圧・23℃の環境下において、ポリマー1g秤量したのちに、10gのイオン交換水に浸漬し、24時間経過後、浸漬したポリマーの0.5g超が溶解しない性質を有するものをいう。
【0030】
水溶性である被膜形成能を有するポリマーとしては、例えばプルラン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ポリ−γ−グルタミン酸、変性コーンスターチ、β-グルカン、グルコオリゴ糖、ヘパリン、ケラト硫酸等のムコ多糖、セルロース、ペクチン、キシラン、リグニン、グルコマンナン、ガラクツロン酸、サイリウムシードガム、タマリンド種子ガム、アラビアガム、トラガントガム、大豆水溶性多糖、アルギン酸、カラギーナン、ラミナラン、寒天(アガロース)、フコイダン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の天然高分子、部分鹸化ポリビニルアルコール(架橋剤と併用しない場合)、低鹸化ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸ナトリウム等の合成高分子などが挙げられる。これらの水溶性ポリマーは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの水溶性ポリマーのうち、被膜の製造が容易である観点から、プルラン、並びに部分鹸化ポリビニルアルコール、低鹸化ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及びポリエチレンオキサイド等の合成高分子を用いることが好ましい。水溶性ポリマーとしてポリエチレンオキサイドを用いる場合、その数平均分子量は、5万以上300万以下であることが好ましく、10万以上250万以下であることが一層好ましい。
【0031】
一方、水不溶性である被膜形成能を有するポリマーとしては、例えば被膜形成後に不溶化処理できる完全鹸化ポリビニルアルコール、架橋剤と併用することで被膜形成後に架橋処理できる部分鹸化ポリビニルアルコール、ポリ(N−プロパノイルエチレンイミン)グラフト−ジメチルシロキサン/γ−アミノプロピルメチルシロキサン共重合体等のオキサゾリン変性シリコーン、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ツエイン(とうもろこし蛋白質の主要成分)、ポリエステル、ポリ乳酸(PLA)、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリメタクリル酸樹脂等のアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂などが挙げられる。これらの水不溶性ポリマーは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの水不溶性ポリマーのうち、被膜形成後に不溶化処理できる完全鹸化ポリビニルアルコール、架橋剤と併用することで被膜形成後に架橋処理できる部分鹸化ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール樹脂、ポリ(N−プロパノイルエチレンイミン)グラフト−ジメチルシロキサン/γ−アミノプロピルメチルシロキサン共重合体等のオキサゾリン変性シリコーン、水溶性ポリエステル、ツエイン等を用いることが好ましい。
【0032】
噴霧用組成物における成分(a)の含有量は、50質量%以上であることが好ましく、55質量%以上であることが更に好ましく、60質量%以上であることが一層好ましい。また98質量%以下であることが好ましく、96質量%以下であることが更に好ましく、94質量%以下であることが一層好ましい。噴霧用組成物における成分(a)の配合割合は、50質量%以上98質量%以下であることが好ましく、55質量%以上96質量%以下であることが更に好ましく、60質量%以上94質量%以下であることが一層好ましい。この割合で噴霧用組成物中に成分(a)を配合することで、静電スプレー法を行うときに噴霧用組成物を十分に揮発させることができる。
【0033】
一方、噴霧用組成物における成分(b)の配合割合は、2質量%以上であることが好ましく、4質量%以上であることが更に好ましく、6質量%以上であることが一層好ましい。また50質量%以下であることが好ましく、45質量%以下であることが更に好ましく、40質量%以下であることが一層好ましい。噴霧用組成物における成分(b)の配合割合は、2質量%以上50質量%以下であることが好ましく、4質量%以上45質量%以下であることが更に好ましく、6質量%以上40質量%以下であることが一層好ましい。この割合で噴霧用組成物中に成分(b)を配合することで、目的とする被膜を首尾よく形成することができる。
【0034】
噴霧用組成物中には、上述した成分(a)及び成分(b)のみが含まれていてもよく、あるいは成分(a)及び成分(b)に加えて他の成分が含まれていてもよい。他の成分としては、例えば成分(b)の被膜形成能を有するポリマーの可塑剤、着色顔料、体質顔料、染料、界面活性剤、UV防御剤、香料、忌避剤、酸化防止剤、安定剤、防腐剤、各種ビタミン等が挙げられる。噴霧用組成物中に他の成分が含まれる場合、当該他の成分の配合割合は、0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上20質量%以下であることが更に好ましい。
【0035】
静電スプレー法を行う場合、噴霧用組成物として、その粘度が、25℃において、好ましくは1mPa・s以上、更に好ましくは10mPa・s以上、一層好ましくは50mPa・s以上であるものを用いる。また粘度が、25℃において、好ましくは5000mPa・s以下、更に好ましくは2000mPa・s以下、一層好ましくは1500mPa・s以下であるものを用いる。噴霧用組成物の粘度は、25℃において、好ましくは1mPa・s以上5000mPa・s以下であり、更に好ましくは10mPa・s以上2000mPa・s以下であり、一層好ましくは50mPa・s以上1500mPa・s以下である。この範囲の粘度を有する噴霧用組成物を用いることで、静電スプレー法によって多孔性被膜、特に繊維の堆積物からなる多孔性被膜を首尾よく形成することができる。多孔性被膜の形成は、皮膚の蒸れ防止等の観点から有利なものである。噴霧用組成物の粘度は、E型粘度計を用いて25℃で測定される。E型粘度計としては例えば東京計器株式会社製のE型粘度計を用いることができる。その場合のローターとしては、ローターNo.43を用いることができる。
【0036】
噴霧用組成物は静電スプレー法によって、対象物であるヒトの皮膚における化粧料適用部位に直接噴霧される。静電スプレー法は、静電スプレー装置を用い、皮膚に噴霧用組成物を静電スプレーする工程を含む。
図1には、本発明で好適に用いられる静電スプレー装置の構成を表す概略図が示されている。同図に示す静電スプレー装置10は、低電圧電源11を備えている。低電圧電源11は、数Vから十数Vの電圧を発生させ得るものである。静電スプレー装置10の可搬性を高める目的で、低電圧電源11は1個又は2個以上の電池からなることが好ましい。また、低電圧電源11として電池を用いることで、必要に応じ取り替えを容易に行えるという利点もある。電池に代えて、ACアダプタ等を低電圧電源11として用いることもできる。
【0037】
静電スプレー装置10は、高電圧電源12も備えている。高電圧電源12は、低電圧電源11と接続されており、低電圧電源11で発生した電圧を高電圧に昇圧する電気回路(図示せず)を備えている。昇圧電気回路は一般にトランス、キャパシタ及び半導体素子等から構成されている。
【0038】
静電スプレー装置10は、補助的電気回路13を更に備えている。補助的電気回路13は、上述した低電圧電源11と高電圧電源12との間に介在し、低電圧電源11の電圧を調整して高電圧電源12を安定的に動作させる機能を有する。更に補助的電気回路13は、後述するマイクロギヤポンプ14に備えられているモータの回転数を制御する機能を有する。モータの回転数を制御することで、後述する噴霧用組成物の容器15からマイクロギヤポンプ14への噴霧用組成物の供給量が制御される。補助的電気回路13と低電圧電源11との間にはスイッチSWが取り付けられており、スイッチSWの入り切りによって、静電スプレー装置10を運転/停止できるようになっている。
【0039】
静電スプレー装置10は、ノズル16を更に備えている。ノズル16は、金属を初めとする各種の導電体や、プラスチック、ゴム、セラミックなどの非導電体からなり、その先端から噴霧用組成物の吐出が可能な形状をしている。ノズル16内には噴霧用組成物が流通する微小空間が、該ノズル16の長手方向に沿って形成されている。この微小空間の横断面の大きさは、直径で表して100μm以上1000μm以下であることが好ましい。ノズル16は、管路17を介してマイクロギヤポンプ14と連通している。管路17は導電体でもよく、あるいは非導電体でもよい。また、ノズル16は、高電圧電源12と電気的に接続されている。これによって、ノズル16に高電圧を印加することが可能になっている。この場合、ノズル16に人体が直接触れた場合に過大な電流が流れることを防止するために、ノズル16と高電圧電源12とは、電流制限抵抗19を介して電気的に接続されている。
【0040】
管路17を介してノズル16と連通しているマイクロギヤポンプ14は、容器15中に収容されている噴霧用組成物をノズル16に供給する供給装置として機能する。マイクロギヤポンプ14は、低電圧電源11から電源の供給を受けて動作する。また、マイクロギヤポンプ14は、補助的電気回路13による制御を受けて所定量の噴霧用組成物をノズル16に供給するように構成されている。
【0041】
マイクロギヤポンプ14には、フレキシブル管路18を介して容器15が接続されている。容器15中には噴霧用組成物が収容されている。容器15は、カートリッジ式の交換可能な形態をしていることが好ましい。
【0042】
以上の構成を有する静電スプレー装置10は、例えば
図2に示すように使用することができる。
図2には、片手で把持できる寸法を有するハンディタイプの静電スプレー装置10が示されている。同図に示す静電スプレー装置10は、
図1に示す構成図の部材のすべてが円筒形の筐体20内に収容されている。筐体20の長手方向の一端10aには、ノズル(図示せず)が配置されている。ノズルは、その組成物の吹き出し方向を、筐体20の縦方向と一致させて、肌側に向かい凸状になるように該筐体20に配置されている。ノズル先端が筐体20の縦方向においてに肌に向かい凸状になるように配置されていることによって、筐体に噴霧用組成物が付着しにくくなり、安定的に被膜を形成することができる。
【0043】
静電スプレー装置10を動作させるときには、使用者、すなわち静電スプレーによって自己の化粧料適用部位上に被膜を形成する者が該装置10を手で把持し、ノズル(図示せず)が配置されている該装置10の一端10aを、静電スプレーを行う化粧料適用部位に向ける。
図2では、使用者の前腕部内側に静電スプレー装置10の一端10aを向けている状態が示されている。この状態下に、装置10のスイッチをオンにして静電スプレー法を行う。装置10に電源が入ることで、ノズルと皮膚との間には電界が生じる。
図2に示す実施形態では、ノズルに正の高電圧が印加され、皮膚が負極となる。ノズルと皮膚との間に電界が生じると、ノズル先端部の噴霧用組成物は、静電誘導によって分極して先端部分がコーン状になり、コーン先端から帯電した噴霧用組成物の液滴が電界に沿って、皮膚に向かって空中に吐出される。空間に吐出され且つ帯電した噴霧用組成物から溶媒である成分(a)が蒸発していくと、噴霧用組成物表面の電荷密度が過剰となり、クーロン反発力によって微細化を繰り返しながら空間に広がり、皮膚に到達する。この場合、噴霧用組成物の粘度を適切に調整することで、噴霧された該組成物を液滴の状態で化粧料適用部位に到達させることができる。あるいは、空間に吐出されている間に、溶媒である揮発性物質を液滴から揮発させ、溶質である被膜形成能を有するポリマーを固化させつつ、電位差によって伸長変形させながら繊維を形成し、その繊維を化粧料適用部位に堆積させることもできる。例えば、噴霧用組成物の粘度を高めると、該組成物を繊維の形態で化粧料適用部位に堆積させやすい。これによって、繊維の堆積物からなる多孔性被膜が化粧料適用部位の表面に形成される。繊維の堆積物からなる多孔性被膜は、ノズルと皮膚との間の距離や、ノズルに印加する電圧を調整することでも形成することが可能である。
【0044】
静電スプレー法を行っている間は、ノズルと皮膚との間に高い電位差が生じている。しかし、インピーダンスが非常に大きいので、人体を流れる電流は極めて微小である。例えば通常の生活下において生じる静電気によって人体に流れる電流よりも、静電スプレー法を行っている間に人体に流れる電流の方が数桁小さいことを、本発明者は確認している。
【0045】
静電スプレー法によって繊維の堆積物を形成する場合、該繊維の太さは、円相当直径で表した場合、10nm以上であることが好ましく、50nm以上であることが更に好ましい。また3000nm以下であることが好ましく、1000nm以下であることが更に好ましい。繊維の太さは、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)観察によって、繊維を10000倍に拡大して観察し、その二次元画像から欠陥(繊維の塊、繊維の交差部分、液滴)を除き、繊維を任意に10本選び出し、繊維の長手方向に直交する線を引き、繊維径を直接読み取ることで測定することができる。
【0046】
前記の繊維は、製造の原理上は無限長の連続繊維となるが、少なくとも繊維の太さの100倍以上の長さを有することが好ましい。本明細書においては、繊維の太さの100倍以上の長さを有する繊維のことを「連続繊維」と定義する。そして、静電スプレー法によって製造される被膜は、連続繊維の堆積物からなる多孔性の不連続被膜であることが好ましい。このような形態の被膜は、集合体として1枚のシートとして扱えるだけでなく、非常に柔らかい特性をもっており、それに剪断力が加わってもばらばらになりにくく、身体の動きへの追従性に優れるという利点がある。また、皮膚から生じた汗の放散性に優れるという利点もある。更に、被膜の剥離が容易であるという利点もある。これに対して、細孔を有さない連続被膜は剥離が容易でなく、また汗の放散性が非常に低いので、皮膚に蒸れが生じやすい。
【0047】
繊維状となった噴霧用組成物は、帯電した状態で化粧料適用部位に到達する。先に述べたとおり皮膚も帯電しているので、繊維は静電力によって化粧料適用部位に密着する。皮膚の表面には肌理等の微細な凹凸が形成されているので、その凹凸によるアンカー効果と相まって繊維は化粧料適用部位の表面に一層密着する。このようにして静電スプレーが完了したら、静電スプレー装置10の電源を切る。これによってノズルと皮膚との間の電界が消失し、皮膚の表面は電荷が固定化される。その結果、被膜の密着性が一層発現する。
【0048】
以上の説明は、被膜として繊維の堆積物からなる多孔性被膜についてのものであったが、被膜の形態はこれに限られず、細孔を有さない連続被膜を形成してもよく、繊維の堆積物以外の形態を有する多孔性被膜、例えば連続被膜に不規則に又は規則的に複数の貫通孔が形成されてなる多孔性被膜、すなわち不連続被膜を形成してもよい。上述のとおり、噴霧用組成物の粘度、ノズルと皮膚との間の距離、及びノズルに印加する電圧などを制御することで任意の形状の被膜を形成することができる。
【0049】
ノズルと皮膚との間の距離は、ノズルに印加する電圧にも依存するが、50mm以上、150mm以下であることが、被膜を首尾よく形成する観点から好ましい。ノズルと皮膚との間の距離は、一般的に用いられる非接触式センサ等で測定することができる。
【0050】
静電スプレー法によって形成された被膜が多孔性のものであるか否かを問わず、被膜の坪量は、0.1g/m
2以上であることが好ましく、1g/m
2以上であることが更に好ましい。また30g/m
2以下であることが好ましく、20g/m
2以下であることが更に好ましい。例えば被膜の坪量は、0.1g/m
2以上30g/m
2以下であることが好
ましく、1g/m
2以上20g/m
2以下であることが更に好ましい。被膜の坪量をこのように設定することで、被膜が過度に厚くなることに起因する該被膜の剥離を防止しつつ、化粧料適用部位のベースメイクアップ化粧料の色移りを効果的に防止することができる。
【0051】
なお、皮膚に組成物を直接に静電スプレーして被膜を形成する静電スプレー工程とは、前記化粧料が施された皮膚(単に皮膚ともいう)に静電スプレーして、皮膜を形成する工程を意味する。組成物を皮膚以外の場所に静電スプレーして繊維からなるシートを作製し、そのシートを皮膚に塗布する工程は、前記静電スプレー工程とは異なる。また、前記化粧料を皮膚に塗布する前、又はその後に、前記化粧料以外の化粧料を施してもよい。
【0052】
本発明においては、上述した静電スプレーによって化粧料適用部位上に被膜を形成する静電スプレー工程の前に、若しくはその後に、又はその前後に、水、ポリオール及び20℃で液体の油から選ばれる1種又は2種以上を含有する液剤を、化粧料が施された前記皮膚に施す液剤適用工程を行ってもよい。液剤適用工程を行うことで、静電スプレー工程で形成される被膜が、化粧料適用部位になじみやすくなり、該被膜が皮膚に高密着化することが可能となり、透明化することもできる。例えば、被膜の端部と皮膚との間に段差が生じにくくなり、それによって被膜と皮膚との密着性が向上する。その結果、被膜の剥離や破れ等が生じにくくなる。また、メイクアップ化粧料の色彩が隠蔽されにくくなり、より自然な外観、被膜の存在を視認しにくくすることができる。より好ましい態様である、被膜が繊維の堆積物からなる多孔性被膜である場合、高い空隙率であるにもかかわらず皮膚との密着性が高く、また大きな毛管力が発生しやすい。更に、繊維が微細である場合には多孔性被膜を高比表面積化することが容易となる。
【0053】
特に、静電スプレー工程において繊維の堆積物からなる多孔性被膜を形成した後に、液剤適用工程を行うことにより、該多孔性被膜を形成する繊維間、及び/又は繊維表面に該液剤が存在する保湿液剤担持被膜が形成される。これによって、被膜の密着性が向上し、目視における被膜の透明性が維持又は向上する。特に被膜が無色透明あるいは有色透明である場合には、より被膜を視認しにくくなることによって、自然な皮膚のように見せることができる。また、被膜が有色透明である場合には、被膜に透明感が出るため、皮膚の一部のように見せることができる。
【0054】
液剤適用工程において用いられる液剤が水を含む場合、該液剤としては、例えば水、水溶液及び水分散液等の液体、増粘剤で増粘されたジェル状物、極性油、極性油を10質量%以上含有する油剤、極性油を含む乳化物(O/Wエマルジョン、W/Oエマルジョン)などが挙げられる。
【0055】
液剤適用工程において用いられる液剤がポリオールを含む場合、該ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール等のアルキレングリコール類;ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン等のグリセリン類等が挙げられる。これらのうち、塗布時の滑らかさなどの使用感の点から、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ジグリセリンが好ましく、更にプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、グリセリンがより好ましく、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオールが一層好ましい。
【0056】
一方、液剤適用工程において用いられる液剤が20℃において液体の油(以下、この油のことを「液体油」ともいう。)を含む場合、該20℃において液体の油としては、例えば流動パラフィン、軽質イソパラフィン、流動イソパラフィン、スクワラン、スクワレン等の直鎖又は分岐の炭化水素油;ホホバ油、オリーブ油等の植物油、液状ラノリン等の動物油、モノアルコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル等のエステル油;ジメチルポリシロキサン、ジメチルシクロポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、高級アルコール変性オルガノポリシロキサン等のシリコーン油などが挙げられる。これらのうち、塗布時の滑らかさなどの使用感の点から、炭化水素油と、エステル油、トリグリセライド等を含有する植物油、シリコーン油等の極性油が好ましく、炭化水素油、エステル油及びトリグリセライドがより好ましい。また、これらから選ばれる液体油を1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0057】
前記炭化水素油としては、流動パラフィン、スクワラン、スクワレン、n−オクタン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、軽質イソパラフィン、流動イソパラフィン等が挙げられ、使用感の観点から流動パラフィン、スクワランが好ましい。また、静電噴霧された被膜を皮膚に密着させる観点から、炭化水素油の30℃における粘度は、好ましくは10mPa・s以上であり、より好ましくは30mPa・s以上である。かかる観点から、30℃において粘度が10mPa・s未満である、イソドデカン、イソヘキサデカン、水添ポリイソブテンの液剤中の合計の含有量は、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、更に好ましくは1質量%以下であり、より更に好ましくは0.5質量%以下であり、含有しなくてもよい。
同様に、静電噴霧された被膜を皮膚に密着させる観点から、エステル油及びシリコーン油の30℃における粘度は、好ましくは10mPa・s以上であり、より好ましくは30mPa・s以上である。
ここでの粘度は、30℃においてBM型粘度計(トキメック社製、測定条件:ローターNo.1、60rpm、1分間)により測定される。
なお、同様の観点から、セチル−1,3−ジメチルブチルエーテル、ジカプリルエーテル、ジラウリルエーテル、ジイソステアリルエーテル等のエーテル油の液剤中の合計の含有量は、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、更に好ましくは1質量%以下である。
【0058】
また、前記液体油として、20℃において液体の極性油も好ましく用いることができ、その例としてはエステル油、エステル油を含む植物油(トリグリセライド)、分岐脂肪酸あるいは不飽和脂肪酸の高級アルコール、防腐剤、シリコーン油等が挙げられる。これらの液体油は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0059】
前記エステル油としては、直鎖又は分岐鎖の脂肪酸と、直鎖又は分岐鎖のアルコール又は多価アルコールからなるエステルが挙げられる。具体的には、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12−ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジ2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリット、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2−エチルヘキサノエート、2−エチルヘキシルパルミテート、ナフタレンジカルボン酸ジエチルヘキシル、安息香酸(炭素数12〜15)アルキル、セテアリルイソノナノエート、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリン、(ジカプリル酸/カプリン酸)ブチレングリコール、トリラウリン酸グリセリル、トリミリスチン酸グリセリル、トリパルミチン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリ2−ヘプチルウンデカン酸グリセリル、トリベヘン酸グリセリル、トリヤシ油脂肪酸グリセリル、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、パルミチン酸2−ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ2−ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ2−エチルヘキシル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸ジ2−エチルヘキシル、クエン酸トリエチル、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、ジピバリン酸トリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0060】
これらの中でもでは、静電噴霧された被膜を皮膚に密着させる観点及び皮膚に塗布した際の感覚に優れる点から、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、セテアリルイソノナノエート、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸ジ2−エチルヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、安息香酸(炭素数12〜15)アルキル、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリンから選ばれる少なくとも1種が好ましく、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、安息香酸(炭素数12〜15)アルキル、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリンから選ばれる少なくとも1種がより好ましく、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、安息香酸(炭素数12〜15)アルキル、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリンから選ばれる少なくとも1種が更に好ましい。
【0061】
トリグリセライドとしては、脂肪酸トリグリセライドが好ましく、例えばオリーブ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、メドフォーム油、ヒマシ油、紅花油、ヒマワリ油、アボカド油、キャノーラ油、キョウニン油、米胚芽油、米糠油などに含まれる。
【0062】
高級アルコールとしては、炭素数12〜20の液状の高級アルコールが挙げられ、具体的にはイソステアリルアルコール、オレイルアルコール等が挙げられる。
【0063】
防腐剤としてはフェノキシエタノール、パラオキシ安息香酸メチル、パラアミノ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ベンジル、エチルヘキサンジオール等が挙げられる。
【0064】
シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、ジメチルシクロポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、高級アルコール変性オルガノポリシロキサン等が挙げられる。
25℃におけるシリコーン油の動粘度は、静電噴霧された被膜を皮膚に密着させる観点から、3mm
2/sが好ましく、4mm
2/sがより好ましく、5mm
2/s以上が更に好ましく、30mm
2/s以下が好ましく、20mm
2/s以下がより好ましく、10mm
2/s以下が更に好ましい。
これらの中でもでは、静電噴霧された被膜を皮膚に密着させる観点から、ジメチルポリシロキサンを含むことが好ましい。
【0065】
液剤は液体油を含有することが好ましく、該液剤中の液体油の含有量は、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上であり、更に好ましくは5質量%以上である。また、好ましくは100質量%以下である。液剤中における液体油の含有量は、好ましくは0.1質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上100質量%以下である。
【0066】
特に、液剤が極性油を含有する場合、該液剤は、水と極性油を含有することが、被膜の皮膚への密着性を高める観点から好ましく、水と極性油を合計で40質量%以上100質量%以下含有することが好ましい。また安定性の観点から、液剤は、界面活性剤、ポリマー、増粘剤を含有するものであってもよく、皮膚への密着性、被膜への保湿性能を向上する観点から、ワセリン、セタノール、ステアリルアルコール、セラミド等の30℃で固体の油剤を含有するものであってもよい。
同様に、液剤がポリオールを含有する場合、該液剤は、水とポリオールを含有することが、被膜の皮膚への密着性を高める観点から好ましく、水とポリオールを合計で40質量%以上100質量%以下含有することが好ましい。また安定性の観点から、液剤は、界面活性剤、ポリマー、増粘剤を含有するものであってもよく、皮膚への密着性、被膜への保湿性能を向上する観点から、ワセリン、セタノール、ステアリルアルコール、セラミド等の30℃で固体の油剤を含有するものであってもよい。
【0067】
液剤が水、ポリオール及び液体油のうちのいずれを用いる場合であっても、液剤は、25℃において5000mPa・s程度以下の粘性を有することが、静電スプレー法によって形成された被膜と化粧料適用部位との密着性の向上の点から好ましい。液体の粘度の測定方法は、上述したとおりである。
また、液剤中の着色顔料の含有量は、静電スプレー法によって形成された被膜と皮膚との密着性の向上の点から、0.1質量%未満が好ましく、0.05質量%以下がより好ましく、0.01質量%以下が好ましく、0.001質量%以下が好ましい。本発明において、着色顔料とは、透明な顔料を含まないことを意味し、白色の顔料は着色顔料に含まれるものである。
【0068】
水、ポリオール又は液体油を含む液剤を皮膚に施すには種々の方法を用いることができる。例えば、滴下や振りかけ等の方法によって液剤を皮膚に施し、該液剤を塗り広げる工程を備えることにより、皮膚又は被膜になじませることが可能となり、該液剤の薄層を形成することができる。液剤を塗り広げる工程は、例えば使用者本人の指や、アプリケータ等の道具を用いた擦過などの方法を採用することができる。液剤を単に滴下したり振りかけたりしただけでもよいが、塗り広げる工程を備えることにより、皮膚又は被膜になじませることが可能となり、被膜の密着性を十分に向上させることができる。別法として、液剤を皮膚に噴霧して該液剤の薄層を形成することもできる。この場合には、別途の塗り広げは格別必要ないが、噴霧後に塗り広げの操作を行うことは妨げられない。なお、被膜の形成後に液剤を施す場合には、十分な液剤を皮膚に適用し、余分の液剤はシート材を液剤の施した範囲に接触させる工程により、余剰の液剤を除去することができる。
【0069】
液剤を皮膚に施す量は、皮膚と被膜との密着性が向上するのに必要十分な量とすればよい。液剤中に液体油が含まれている場合には、皮膚と被膜との密着性を確実にする観点から、液剤を皮膚に施す量は、液体油の坪量が好ましくは0.1g/m
2以上であり、より好ましくは0.2g/m
2以上となるような量とし、好ましくは40g/m
2以下であり、より好ましくは35g/m
2以下となるような量とする。例えば、液剤を皮膚に施す量は、液体油の坪量が好ましくは0.1g/m
2以上40g/m
2以下、より好ましくは0.2g/m
2以上35g/m
2以下となるような量とする。
また、液剤を皮膚に、又は被膜に施す量は、皮膚と被膜の密着性を向上させる観点、透明性を向上させる観点から、好ましくは5g/m
2以上であり、より好ましくは10g/m
2以上であり、更に好ましくは15g/m
2以上であり、好ましくは50g/m
2以下であり、より好ましくは45g/m
2以下である。
更に、前記液剤を皮膚に塗布する前、又はその後に、前記液剤以外の化粧料を皮膚に施してもよい。
【0070】
以上のとおりの被膜製造方法は、人体の手術、治療又は診断方法を目的としない各種の美容方法として有用なものである。例えば本発明の被膜製造方法を、美容の目的で、化粧料適用部位における皮膚の美白、皮膚のシミの隠蔽、皮膚のくすみ・くまの隠蔽、皮膚の皺の隠蔽、皮膚のぼかし、紫外線からの皮膚の保護、皮膚の保湿に適用することができる。
【0071】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば前記実施形態においては、自己の皮膚に被膜を形成させたい者が静電スプレー装置10を把持し、該装置10の導電性ノズルとその者の皮膚との間に電界を生じさせたが、両者間に電界が生じる限り、自己の皮膚に被膜を形成させたい者が静電スプレー装置10を把持する必要はない。
【0072】
上述した実施形態に関し、本発明は更に以下の被膜の製造方法を開示する。
<1>
粉体を含む化粧料が施された皮膚の表面に組成物を直接に静電スプレーして、該皮膚上に被膜を形成する静電スプレー工程を具備し、
前記組成物が、以下の成分(a)及び成分(b)を含む、被膜の製造方法。
(a)水、アルコール及びケトンから選ばれる1種又は2種以上の揮発性物質。
(b)被膜形成能を有するポリマー。
【0073】
<2>
水、ポリオール及び20℃で液体の油から選ばれる1種又は2種以上を含有する液剤を、化粧料が施された前記皮膚に施す液剤適用工程を更に具備し、
前記静電スプレー工程の後に前記液剤適用工程を備える前記<1>に記載の被膜の製造方法。
<3>
液剤適用工程において用いられる液剤が水を含む場合、前記液剤として、水、水溶液及び水分散液等の液体、増粘剤で増粘されたジェル状物、極性油、極性油を10質量%以上含有する油剤、極性油を含む乳化物(O/Wエマルジョン、W/Oエマルジョン)から選ばれる1種又は2種以上を用いる前記<2>に記載の被膜の製造方法。
<4>
液剤適用工程において用いられる液剤が20℃において液体の油を含む場合、該油としては、例えば流動パラフィン、軽質イソパラフィン、流動イソパラフィン、スクワラン、スクワレン等の直鎖又は分岐の炭化水素油;ホホバ油、オリーブ油等の植物油、液状ラノリン等の動物油、モノアルコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル等のエステル油;ジメチルポリシロキサン、ジメチルシクロポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、高級アルコール変性オルガノポリシロキサン等のシリコーン油などが挙げられ、これらのうち、好ましくは炭化水素油と、エステル油、トリグリセライド等を含有する植物油、シリコーン油等の極性油、より好ましくは炭化水素油、エステル油及びトリグリセライドから選ばれる1種又は2種以上である前記<2>又は<3>に記載の被膜の製造方法。
<5>
前記炭化水素油としては、流動パラフィン、スクワラン、スクワレン、n−オクタン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、軽質イソパラフィン、流動イソパラフィンから選ばれる1種又は2種以上であり、より好ましくは流動パラフィン、スクワランから選ばれる1種又は2種以上である前記<4>に記載の被膜の製造方法。
<6>
エステル油としては、直鎖又は分岐鎖の脂肪酸と、直鎖又は分岐鎖のアルコール又は多価アルコールからなるエステルが挙げられ、具体的には、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12−ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジ2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリット、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2−エチルヘキサノエート、2−エチルヘキシルパルミテート、ナフタレンジカルボン酸ジエチルヘキシル、安息香酸(炭素数12〜15)アルキル、セテアリルイソノナノエート、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリン、(ジカプリル酸/カプリン酸)ブチレングリコール、トリラウリン酸グリセリル、トリミリスチン酸グリセリル、トリパルミチン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリ2−ヘプチルウンデカン酸グリセリル、トリベヘン酸グリセリル、トリヤシ油脂肪酸グリセリル、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、パルミチン酸2−ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ2−ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ2−エチルヘキシル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸ジ2−エチルヘキシル、クエン酸トリエチル、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、ジピバリン酸トリプロピレングリコール等が挙げられる前記<4>に記載の被膜の製造方法。
【0074】
<7>
トリグリセライドとしては、脂肪酸トリグリセライドが好ましく、オリーブ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、メドフォーム油、ヒマシ油、紅花油、ヒマワリ油、アボカド油、キャノーラ油、キョウニン油、米胚芽油、米糠油などが挙げられる前記<4>に記載の被膜の製造方法。
<8>
高級アルコールとしては、炭素数12〜20の液状の高級アルコールが挙げられ、具体的にはイソステアリルアルコール、オレイルアルコール等が挙げられる前記<4>に記載の被膜の製造方法。
<9>
防腐剤としてはフェノキシエタノール、パラオキシ安息香酸メチル、パラアミノ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ベンジル、エチルヘキサンジオール等が挙げられる前記<4>に記載の被膜の製造方法。
<10>
シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、ジメチルシクロポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、高級アルコール変性オルガノポリシロキサン等が挙げられる前記<4>に記載の被膜の製造方法。
<11>
前記液剤は液体油を含有することが好ましく、該液剤中の液体油の含有量は、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上であり、更に好ましくは5
質量%以上である。また、好ましくは100質量%以下である。液剤中における液体油の含有量は、好ましくは0.1質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは0.5
質量%以上100質量%以下である前記<2>ないし<10>のいずれか1に記載の被膜の製造方法。
【0075】
<12>
前記液剤が極性油を含有する場合、前記液剤は、水と極性油を含有し、水と極性油を合計で40質量%以上100質量%以下含有することが好ましい前記<2>ないし<11>のいずれか1に記載の被膜の製造方法。
<13>
前記液剤は、界面活性剤、ポリマー、増粘剤を含有するものであってもよく、ワセリン、セタノール、ステアリルアルコール、セラミド等の30℃で固体の油剤を含有するものであってもよい前記<2>ないし<12>のいずれか1に記載の被膜の製造方法。
【0076】
<14>
前記静電スプレー工程において繊維の堆積物からなる多孔性被膜を形成し、次いで
前記液剤適用工程において、前記液剤を、粉体を含む化粧料が施された前記皮膚に形成された前記被膜上に施し、該被膜を構成する繊維間及び/又は繊維表面に該保湿液剤が存在する保湿液剤担持被膜を形成する前記<2>ないし<13>に記載の被膜の製造方法。
<15>
前記液剤適用工程において、前記液剤を、粉体を含む化粧料が施された前記皮膚に形成された前記被膜上に施し、前記被膜の透明性を維持する前記<2>ないし<14>に記載の被膜の製造方法。
<16>
前記静電スプレー工程において、前記皮膚に前記組成物を静電スプレーして多孔性被膜を形成する前記<1>ないし<15>のいずれか1に記載の被膜の製造方法。
【0077】
<17>
前記静電スプレー工程において、静電スプレー装置を用いて前記皮膚に前記組成物を静電スプレーして、繊維の堆積物からなる多孔性被膜を形成し、前記静電スプレー装置が、
前記組成物を収容する容器と、
前記組成物を吐出するノズルと、
前記容器中に収容されている前記組成物を前記ノズルに供給する供給装置と、
前記ノズルに電圧を印加する電源と、
を備える前記<1>ないし<16>のいずれか1に記載の被膜の製造方法。
<18>
成分(a)の揮発性物質はその蒸気圧が20℃において0.01kPa以上、106.66kPa以下であることが好ましく、0.13kPa以上、66.66kPa以下であることがより好ましく、0.67kPa以上、40.00kPa以下であることが更に好ましく、1.33kPa以上、40.00kPa以下であることがより一層好ましい前記<1>ないし<17>のいずれか1に記載の被膜の製造方法。
<19>
成分(a)の揮発性物質がアルコールであり、該アルコールとして一価の鎖式脂肪族アルコール、一価の環式脂肪族アルコール、及び一価の芳香族アルコールが好適に用いられ、これらのアルコールは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができ、
前記アルコールとして、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、フェニルエチルアルコール、プロパノール、及びペンタノールが特に好適に用いられる前記<1>ないし<18>のいずれか1に記載の被膜の製造方法。
<20>
成分(a)の揮発性物質が、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、及び水から選ばれる1種又は2種以上であり、より好ましくはエタノール、及びブチルアルコールから選ばれる1種又は2種であり、更に好ましくはエタノールである前記<1>ないし<19>のいずれか1に記載の被膜の製造方法。
<21>
成分(b)の被膜形成能を有するポリマーは、成分(a)の揮発性物質に溶解することが可能な物質であり、水溶性ポリマーと水不溶性ポリマーとを含み、ここで、溶解するとは20℃において分散状態にあり、その分散状態が目視で均一な状態、好ましくは目視で透明又は半透明な状態であることをいう前記<1>ないし<20>のいずれか1に記載の被膜の製造方法。
【0078】
<22>
水溶性である被膜形成能を有するポリマーとしては、プルラン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ポリ−γ−グルタミン酸、変性コーンスターチ、β-グルカン、グルコオリゴ糖、ヘパリン、ケラト硫酸等のムコ多糖、セルロース、ペクチン、キシラン、リグニン、グルコマンナン、ガラクツロン酸、サイリウムシードガム、タマリンド種子ガム、アラビアガム、トラガントガム、大豆水溶性多糖、アルギン酸、カラギーナン、ラミナラン、寒天(アガロース)、フコイダン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の天然高分子、部分鹸化ポリビニルアルコール(架橋剤と併用しない場合)、低鹸化ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸ナトリウムから選ばれる1種又は2種以上の水溶性の高分子であり、より好ましくはプルラン、並びに部分鹸化ポリビニルアルコール、低鹸化ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及びポリエチレンオキサイドから選ばれる1種又は2種以上の水溶性の高分子である前記<21>に記載の被膜の製造方法。
<23>
水不溶性である被膜形成能を有するポリマーとしては、被膜形成後に不溶化処理できる完全鹸化ポリビニルアルコール、架橋剤と併用することで被膜形成後に架橋処理できる部分鹸化ポリビニルアルコール、ポリ(N−プロパノイルエチレンイミン)グラフト−ジメチルシロキサン/γ−アミノプロピルメチルシロキサン共重合体等のオキサゾリン変性シリコーン、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ツエイン(とうもろこし蛋白質の主要成分)、ポリエステル、ポリ乳酸(PLA)、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリメタクリル酸樹脂等のアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂から選ばれる1種又は2種以上の水不溶性ポリマーであり、より好ましくは、被膜形成後に不溶化処理できる完全鹸化ポリビニルアルコール、架橋剤と併用することで被膜形成後に架橋処理できる部分鹸化ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール樹脂、ポリ(N−プロパノイルエチレンイミン)グラフト−ジメチルシロキサン/γ−アミノプロピルメチルシロキサン共重合体等のオキサゾリン変性シリコーン、水溶性ポリエステル、ツエインから選ばれる1種又は2種以上の水不溶性ポリマーである前記<21>に記載の被膜の製造方法。
<24>
前記組成物における成分(a)の含有量は、50質量%以上であることが好ましく、55質量%以上であることが更に好ましく、60質量%以上であることが一層好ましく、また98質量%以下であることが好ましく、96質量%以下であることが更に好ましく、94質量%以下であることが一層好ましく、前記組成物における成分(a)の配合割合は、50質量%以上98質量%以下であることが好ましく、55質量%以上96質量%以下であることが更に好ましく、60質量%以上94質量%以下であることが一層好ましい前記<1>ないし<23>のいずれか1に記載の被膜の製造方法。
<25>
前記組成物における成分(b)の含有量は、2質量%以上であることが好ましく、4質量%以上であることが更に好ましく、6質量%以上であることが一層好ましく、また50質量%以下であることが好ましく、45質量%以下であることが更に好ましく、40質量%以下であることが一層好ましく、前記組成物における成分(b)の配合割合は、2質量%以上50質量%以下であることが好ましく、4質量%以上45質量%以下であることが更に好ましく、6質量%以上40質量%以下であることが一層好ましい前記<1>ないし<24>のいずれか1に記載の被膜の製造方法。
<26>
前記組成物中に、成分(a)及び成分(b)のみが含まれているか、あるいは成分(a)及び成分(b)に加えて他の成分が含まれおり、
前記他の成分として、成分(b)の被膜形成能を有するポリマーの可塑剤、着色顔料、体質顔料、染料、界面活性剤、UV防御剤、香料、忌避剤、酸化防止剤、安定剤、防腐剤、各種ビタミンが用いられる前記<1>ないし<25>のいずれか1に記載の被膜の製造方法。
【0079】
<27>
前記組成物中に他の成分が含まれる場合、当該他の成分の配合割合は、0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上20質量%以下であることが更に好ましい前記<26>に記載の被膜の製造方法。
<28>
前記組成物は、その粘度が、25℃において、好ましくは1mPa・s以上、更に好ましくは10mPa・s以上、一層好ましくは50mPa・s以上であり、好ましくは5000mPa・s以下、更に好ましくは2000mPa・s以下、一層好ましくは1500mPa・s以下であり、前記組成物の粘度は、25℃において、好ましくは1mPa・s以上5000mPa・s以下であり、更に好ましくは10mPa・s以上2000mPa・s以下であり、一層好ましくは50mPa・s以上1500mPa・s以下である前記<1>ないし<27>のいずれか1に記載の被膜の製造方法。
<29>
静電スプレー法を静電スプレー装置を用いて行い、
前記静電スプレー装置はノズルを備えており、
前記ノズルは、金属を初めとする各種の導電体、又はプラスチック、ゴム、セラミックなどの非導電体からなり、その先端から前記組成物の吐出が可能な形状をしている前記<1>ないし<28>のいずれか1に記載の被膜の製造方法。
<30>
静電スプレー法を静電スプレー装置を用いて行い、
前記静電スプレー装置はノズル及び筐体を備えており、
前記筐体の長手方向の一端に、前記ノズルが配置されており、
前記ノズルは、前記組成物の吹き出し方向を、前記筐体の縦方向と一致させて、肌側に向かい凸状になるように該筐体に配置されている前記<1>ないし<29>のいずれか1に記載の被膜の製造方法。
<31>
噴霧された該組成物を、溶媒である揮発性物質を液滴から揮発させ、溶質である被膜形成能を有するポリマーを固化させつつ、電位差によって伸長変形させながら繊維を形成する前記<1>ないし<30>のいずれか1に記載の被膜の製造方法。
【0080】
<32>
静電スプレー法を静電スプレー装置を用いて行い、
前記静電スプレー装置はノズルを備えており、
前記ノズルと皮膚との間の距離を、50mm以上、150mm以下にする前記<1>ないし<31>のいずれか1に記載の被膜の製造方法。
<33>
静電スプレー法によって形成された被膜の坪量は、0.1g/m
2以上であることが好ましく、1g/m
2以上であることが更に好ましく、30g/m
2以下であることが好ましく、20g/m
2以下であることが更に好ましく、被膜の坪量は、0.1g/m
2以上30g/m
2以下であることが好ましく、1g/m
2以上20g/m
2以下であることが更に好ましい前記<1>ないし<32>のいずれか1に記載の被膜の製造方法。
<34>
液剤適用工程において用いられる液剤が水を含む場合、該液剤としては、水、水溶液及び水分散液等の液体、増粘剤で増粘されたジェル状物、極性油、極性油を10質量%以上含有する油剤、極性油を含む乳化物(O/Wエマルジョン、W/Oエマルジョン)から選ばれる1種又は2種以上である前記<2>ないし<33>のいずれか1に記載の被膜の製造方法。
<35>
液剤適用工程において用いられる液剤が20℃において液体の油を含む場合、該油としては、例えば流動パラフィン、軽質イソパラフィン、流動イソパラフィン、スクワラン、スクワレン等の直鎖又は分岐の炭化水素油;ホホバ油、オリーブ油等の植物油、液状ラノリン等の動物油、モノアルコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル等のエステル油;ジメチルポリシロキサン、ジメチルシクロポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、高級アルコール変性オルガノポリシロキサン等のシリコーン油などが挙げられ、これらのうち、好ましくは炭化水素油と、エステル油、トリグリセライド等を含有する植物油、シリコーン油等の極性油、より好ましくは炭化水素油、エステル油及びトリグリセライドから選ばれる1種又は2種以上である前記<2>ないし<34>のいずれか1に記載の被膜の製造方法。
<36>
前記液剤は液体油を含有することが好ましく、該液剤中の液体油の含有量は、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上であり、更に好ましくは5
質量%以上である。また、好ましくは100質量%以下である。液剤中における液体油の含有量は、好ましくは0.1質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは0.5
質量%以上100質量%以下である前記<2>ないし<35>のいずれか1に記載の被膜の製造方法。
【0081】
<37>
前記液剤が極性油を含有する場合、該液剤は、水と極性油を含有することが好ましく、水と極性油を合計で40質量%以上100質量%以下含有することが好ましい前記<2>ないし<36>のいずれか1に記載の被膜の製造方法。
<38>
前記液剤は、界面活性剤、ポリマー、増粘剤を含有するものが好ましく、ワセリン、セタノール、ステアリルアルコール、セラミド等の30℃で固体の油剤を含有するものが好ましい前記<2>ないし<37>のいずれか1に記載の被膜の製造方法。
<39>
前記液剤中に液体油が含まれている場合には、液剤を皮膚に施す量は、液体油の坪量が好ましくは0.1g/m
2以上であり、より好ましくは0.2g/m
2以上となるような量であり、好ましくは40g/m
2以下であり、より好ましくは35g/m
2以下となるような量であり、また、好ましくは0.1g/m
2以上40g/m
2以下、より好ましくは0.2g/m
2以上35g/m
2以下となるような量であり、
また、液剤を皮膚に、又は被膜に施す量は、好ましくは5g/m
2であり、より好ましくは10g/m
2以上であり、更に好ましくは15g/m
2以上であり、好ましくは50g/m
2以下であり、より好ましくは45g/m
2以下である前記<2>ないし<38>のいずれか1に記載の被膜の製造方法。
【実施例】
【0082】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。
【0083】
[試験例1]
〔実施例1〕
(1)ベースメイクアップ化粧料の塗布
以下の表1に示すパウダーファンデーションを用いた。このファンデーションを、ヒトの手の甲に塗布した。
(2)噴霧用組成物の調製
噴霧用組成物の成分(a)として99.5%エタノールを用いた。成分(b)としてポリビニルブチラールを用いた。その他成分としてラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)(味の素株式会社製、エルデュウPS−203)を用いた。各成分の配合割合は、成分(a)のエタノールを80%、成分(b)を14%とし、他の成分のラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)を6%とした。
(2)静電スプレー工程
図1に示す構成を有し、
図2に示す外観を有する静電スプレー装置10を用い、化粧料適用部位に向けて静電スプレー法を20秒間行った。静電スプレー法の条件は以下に示すとおりとした。
・印加電圧:10kV
・導電性ノズルと皮膚との距離:100mm
・噴霧用組成物の吐出量:5ml/h
・環境:25℃、30%RH
この静電スプレーによって、化粧料適用部位の全域に繊維の堆積物からなる多孔性被膜が形成された。被膜は直径約4cmの円であり、質量は約5.5mgであった。上述した方法で測定された繊維の太さは506nmであった。
【0084】
〔実施例2〕
ベースメイクアップ化粧料として、表1に示すクリームファンデーションを用いた。これ以外は実施例1と同様にして、繊維の堆積物からなる多孔性被膜を得た。
【0085】
〔実施例3〕
ベースメイクアップ化粧料として、表1に示すリキッドファンデーションを用いた。リキッドファンデーションの塗布後、すぐに静電スプレーした。噴霧用組成物の成分(b)として表2に示すものを用いた。これ以外は実施例1と同様にして、繊維の堆積物からなる多孔性被膜を得た。
【0086】
〔実施例4〕
ベースメイクアップ化粧料として、表1に示すコンシーラーを用いた。また、噴霧用組成物の成分(b)として表2に示すものを用いた。これ以外は実施例1と同様にして、繊維の堆積物からなる多孔性被膜を得た。
【0087】
〔実施例5〕
実施例1において、静電スプレー工程によって、化粧料適用部位の表面に繊維の堆積物からなる多孔性被膜を形成した後、液剤を施す液剤適用工程を行った。液剤適用工程では、液剤として化粧乳液Aを80mg用いた。この化粧乳液Aの組成を表4に示す。この化粧乳液Aを、直径4cm以上6cm未満(直径5cm)の面積に指で塗り広げてなじませて、被膜の上に薄層を形成した。滴下量は80mgであり、広げた領域が濡れている、あるいはしっとりしている、若しくは質感が相違する等により、化粧乳液Aの存在を目視、あるいは感触により理解することができる程度の量を適用した。その結果、化粧乳液Aを皮膚に施す量は、該化粧乳液Aの坪量が40.8g/m
2であり、該化粧乳液Aに含まれる液体油の総坪量が15.3g/m
2となるような量となった。
【0088】
〔実施例6ないし16〕
実施例2なし4において、静電スプレー工程によって、化粧料適用部位の表面に繊維の堆積物からなる多孔性被膜を形成した後、液剤を施す液剤適用工程を行った。液剤適用工程では、液剤として、実施例5と同じ化粧乳液Aを用いた。それ以外は実施例5と同様とした。
【0089】
〔実施例17〕
実施例17は、実施例5において、99.5%エタノール水溶液の代わりに、100%エタノールと、水を使用したものである。これ以外は実施例5と同様にして、繊維の堆積物からなる多孔性被膜を得た。
【0090】
〔比較例1ないし4〕
本比較例では、実施例1ないし4において静電スプレー工程を行わず、化粧料適用部位を露出させたままにした。
【0091】
〔比較例5〕
(1)ベースメイクアップ化粧料の塗布
以下の表1に示すパウダーファンデーションを用いた。このファンデーションを、ヒトの手の甲に塗布した。
(2)噴霧用組成物の調製
噴霧用組成物の成分(a)として99.5%エタノール、1−ブタノールを用いた。成分(b)としてポリビニルブチラールを用いた。両成分の配合割合は、成分(a)のエタノールを62%、1−ブタノールを24%、成分(b)のポリビニルブチラールを14%とした。
(3)静電スプレー工程によるシートの作製
図1に示す構成を有し、
図2に示す外観を有する静電スプレー装置10を用い、ステンレス鋼板に向けて静電スプレー法を20秒間行った。静電スプレー法の条件は以下に示すとおりとした。
・印加電圧:10kV
・ノズルと皮膚との距離:100mm
・噴霧用組成物の吐出量:5ml/h
・環境:25℃、30%RH
この静電スプレーによって、ステンレス鋼板の表面に繊維の堆積物からなる多孔性被膜が形成された。被膜は直径約4cmの円であり、質量は約5.5mgであった。上述した方法で測定された繊維の太さは506nmであった。
(4)シートの貼布工程
(3)の静電スプレー工程で得られたシートを、ステンレス鋼板から剥離し、工程(1)による、ファンデーションが塗布された皮膚の上に静かにのせ軽く押さえた。
(5)液剤適用工程
(4)シートの貼布工程に続いて、液剤を施す液剤適用工程を行った。液剤適用工程では、液剤として化粧乳液Aを80mg用いた。この化粧乳液Aの組成を表3に示す。この化粧乳液Aを、直径4cm以上6cm未満(直径5cm)の面積に指で塗り広げてなじませて、被膜の上に薄層を形成した。滴下量は80mgであり、広げた領域が濡れている、あるいはしっとりしている、若しくは質感が相違する等により、化粧乳液Aの存在を目視、あるいは感触により理解することができる程度の量を適用した。その結果、化粧乳液Aを皮膚に施す量は、該化粧乳液Aの坪量が40.8g/m
2であり、該化粧乳液Aに含まれる液体油の総坪量が15.3g/m
2となるような量となった。
【0092】
〔比較例6ないし8〕
比較例6ないし8は、比較例5において、噴霧用組成物を表2に示すものを用いた。これ以外は比較例5と同様にして、繊維の堆積物からなる多孔性被膜を得た。
【0093】
〔比較例9ないし12〕
比較例9ないし12は、比較例5ないし8において、液剤適用工程と、シートの貼布工程との順序を逆にしたものである。これ以外は比較例5と同様にして、繊維の堆積物からなる多孔性被膜を得た。
【0094】
〔評価〕
実施例及び比較例における被膜形成部位の衣類への化粧料の色移り(有色化粧料の付着)防止効果を評価した。評価は、化粧料適用部位の中央を日本製紙クレシア株式会社製の紙ワイパーである「ケイドライ」で5回擦り、紙ワイパーへのベースメイクアップ化粧料の色移りの程度を目視により判断し、以下の基準で評価した。実施例5ないし8では、液剤を施す後処理工程の完了後、5分経過した後に評価を行った。その結果を表2及び表3に示す。4:紙ワイパーに化粧料の色が確認されなかった
3:紙ワイパーに化粧料の色がうっすらと確認された。
2:ムラはあるものの紙ワイパーが着色されている。
1:紙ワイパーに化粧料の色が十分に確認された。
【0095】
【表1】
【0096】
【表2】
【0097】
【表3】
【0098】
【表4】
【0099】
表2及び表3に示す結果から明らかなとおり、各実施例の方法によって形成された被膜は、比較例の方法によって形成された被膜に比べて、メイクアップ化粧料の色移りの防止効果が高いことが判る。
【0100】
[試験2−1]
液剤と塗布量を表5に示すとおりに変更した以外は、前記と同様にして色移り防止を評価した。噴霧用組成物は実施例1と同じ組成物を使用した。
【0101】
【表5】
【0102】
表5に示す結果から明らかなとおり、液剤に使用する油やポリオールの種類を変えても、メイクアップ化粧料の色移りの防止効果が高いことが判る。
【0103】
[試験2−2]
試験2−1と同様、液剤と塗布量を表5によるものに変え、同様にして色移り防止を評価した。本試験では、静電スプレーを10秒間実施した場合と、2秒間した場合とについて、それぞれを色移り防止を評価した。
【0104】
表5に示す結果から明らかなとおり、液剤に使用する油やポリオールの種類を変えても、メイクアップ化粧料の色移りの防止効果が高いことが判る。また、油を含む液剤を使用する方法の方が、油を含まない液剤を使用する方法よりも、メイクアップ化粧料の色移りの防止効果が高いことが判る。